特許第6561861号(P6561861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561861
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20190808BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L33/52
   H01L33/50
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-15240(P2016-15240)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-201531(P2016-201531A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-79395(P2015-79395)
(32)【優先日】2015年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】小関 健司
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−171557(JP,A)
【文献】 特開2014−072414(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/043519(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/029695(WO,A1)
【文献】 特表2010−538453(JP,A)
【文献】 特開2004−343059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する基体を準備する工程と、
前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と、
第1部材を前記凹部内に滴下し、前記第1部材により前記発光素子の上面及び前記凹部の内壁を連続して被覆する工程と、
前記第1部材の本硬化前に、前記第1部材よりも比重が大きい第2部材を前記凹部内に滴下する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを本硬化させる工程と、を有し、
前記第2部材を滴下する工程は、前記第2部材の滴下と前記第1部材仮硬化とを同時に行うことを含む発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2部材は前記第1部材と同じ樹脂材料を用いて形成される請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2部材は前記第1部材よりも高い耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成される請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2部材に蛍光体が含まれている請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2部材を滴下する工程において、前記第2部材を前記発光素子の直上から前記凹部内に滴下する請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1部材に蛍光体が含まれている請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1部材と前記第2部材とに蛍光体が含まれ、
前記第1部材に含まれる蛍光体には前記第2部材に含まれる蛍光体とは組成が異なる物質が用いられる請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
凹部を有する基体を準備する工程と、
前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と、
第1部材を前記凹部内に滴下し、前記第1部材により前記発光素子の上面及び前記凹部の内壁を連続して被覆する工程と、
前記第1部材の本硬化前に、前記第1部材よりも比重が大きい第2部材を前記凹部内に滴下する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを本硬化させる工程と、を有し、
前記第1部材を滴下する前に、前記第1部材及び前記第2部材よりも光反射性が高い光反射部材を前記凹部内に滴下し、前記光反射部材により前記凹部の底面及び前記凹部の側面を被覆し、
前記第2部材を滴下する工程は、前記第2部材の滴下と前記第1部材の仮硬化とを同時に行うことを含む発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記光反射部材は前記発光素子と離間している請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子上に第一の波長変換層を塗布し硬化させる第一の工程と、発光素子が載置されたキャビティ全体に第二の波長変換層を充填・塗布し硬化させる第二の工程と、を有する半導体発光装置の製造方法が提案された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−135300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の製造方法では、第一の波長変換層と第二の波長変換層とが別々に硬化されるため、第一の波長変換層と第二の波長変換層との間に界面が形成されてしまい、発光素子から出射した光が当該界面にて全反射され発光装置の光取り出し効率が低下するという虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、例えば、次の手段により解決することができる。
【0006】
凹部を有する基体を準備する工程と、前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と、第1部材を前記凹部内に滴下し、前記第1部材により前記発光素子の上面及び前記凹部の内壁を連続して被覆する工程と、前記第1部材の本硬化前に、前記第1部材よりも比重が大きい第2部材を前記凹部内に滴下する工程と、前記第1部材と前記第2部材とを本硬化させる工程と、を有し、前記第2部材を滴下する工程は前記第1部材を仮硬化させる工程を含む発光装置の製造方法。
【0007】
凹部を有する基体を準備する工程と、前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と、第1部材を前記凹部内に滴下し、前記第1部材により前記発光素子の上面及び前記凹部の内壁を連続して被覆する工程と、前記第1部材の本硬化前に、前記第1部材よりも比重が大きい第2部材を前記凹部内に滴下する工程と、前記第1部材と前記第2部材とを本硬化させる工程と、を有し、前記第1部材を滴下する前に、前記第1部材及び前記第2部材よりも光反射性が高い光反射部材を前記凹部内に滴下し、前記光反射部材により前記凹部の底面及び前記凹部の側面を被覆する発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
上記した発光装置の製造方法によれば光取り出し効率に優れた発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】実施形態1に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図1B】実施形態1に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図1C】実施形態1に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図1D】実施形態1に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図1E】実施形態1に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図2A】実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図2B】実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図2C】実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図2D】実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図2E】実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図2F】実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図2G】実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図3A】実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図3B】実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図3C】実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図3D】実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図3E】実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図3F】実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
図3G】実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態1に係る発光装置100]
図1Eに示すように、実施形態1に係る発光装置100は、凹部Xを有する基体10と、凹部Xの底面に載置された発光素子12と、発光素子12を被覆し、凹部X内に充填される部材(第1部材14、第2部材16)とを含み、凹部Xの底面に載置された発光素子12近傍に蛍光体22が配置された発光装置である。蛍光体22は凹部X内にて均等に分散せずに、より多くの蛍光体22が発光素子12の周囲に偏って配置されている。実施形態1に係る発光装置100は第1部材14と第2部材16との間に界面を有しない。実施形態1に係る発光装置100によれば、発光素子12から出射された光が第1部材14と第2部材16との間の界面で反射されることが無い光取り出し効率に優れた発光装置を提供することができる。
【0011】
[実施形態1に係る発光装置の製造方法]
図1Aから図1Eは実施形態1に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。以下、図1Aから図1Eを参照しつつ、説明する。
【0012】
(第1工程)
まず、図1Aに示すように、凹部Xを有する基体10を準備する。凹部Xは基体10の上面側に設けられる。凹部Xは、主に底面と底面から基体10の上面に連続する内壁面からなり、その底面には例えば、リードフレームや金属部材などからなる配線が設けられる。凹部Xの底面には発光素子12が載置され、凹部X内の発光素子12は、第1部材14および第2部材16によって封止される。
【0013】
基体10は、例えば、樹脂材料やセラミックスなどの絶縁性材料を用いて構成される。凹部Xの形状は特に限定されない。例えば底面および上面の平面形状は円、楕円、正方形、長方形、多角形及びこれらの変形(例えば角を丸めた又は切欠きした形状)があげられる。内壁面の傾斜は、底面に対して垂直であってもよいが、発光装置の配光等を調節するために底面から上面側に近づくに従って広がるテーパ形状であってもよい。
【0014】
凹部Xの内壁の高さは凹部X内に載置される発光素子12の上面よりも高いことが好ましい。これにより、後の工程にて、第2部材16が第1部材14の下方へ移動しやすくなり、第2部材16が発光素子12の近傍に配置されやすくなる。
【0015】
(第2工程)
次に、凹部Xの底面に発光素子12を載置する。図1Bに示すように、発光素子12は凹部Xの底面中央近傍に載置される。発光素子12は凹部Xの底面に露出された配線と接続される。発光素子12は、半導体発光素子であり、いわゆる発光ダイオードと呼ばれる素子であればどのようなものでもよい。例えば、サファイア基板やGaN基板などの成長用基板上に、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等、種々の半導体によって、発光層を含む積層構造が形成されたものが挙げられる。発光素子12の発光波長は特に限定されず、紫外領域から赤外領域まで任意の波長のものを選択することができる。発光素子12は、例えば、p側電極及びn側電極を同一面側に備えていてもよいし、あるいは対向するように備えていてもよい。発光素子12の配線に対する実装方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ワイヤボンディングやフリップチップ方式により行うことができる。なお、図1Bでは凹部X内に1つの発光素子が載置されているが、凹部X内に載置される発光素子の数は特に限定されず、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0016】
(第3工程)
次に、図1Cに示すように、第1部材14を凹部X内に滴下し、第1部材14により発光素子12の上面及び凹部Xの内壁を連続して被覆する。連続して被覆するとは、発光素子12の上面を被覆する第1部材14と凹部Xの内壁を被覆する第1部材14とが繋がるよう被覆することをいう。
【0017】
第1部材14は主として樹脂材料からなる部材である。樹脂材料には蛍光体20や光拡散材等のフィラーが含有されていてもよく、この場合は、樹脂材料とこれに含有されるフィラーとが第1部材14を形成することになる。第1部材14に用いられる樹脂材料は、特に限定されないが、絶縁性を有し、発光素子12から出射される光を透過可能であり、硬化前は流動性を有する材料であればよい。具体的にはエポキシ樹脂、エポキシ変性樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの樹脂を1種類以上含むハイブリッド樹脂等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂が好ましく、絶縁性や耐候性に優れたシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂がより好適に利用できる。
【0018】
第1部材14は、発光素子12の上面を覆うように凹部X内に充填される。第1部材14の充填量は、後の工程で滴下される第2部材16の量を考慮して、凹部X内を満たす全充填量(本実施形態では第1部材14の充填量と第2部材16の充填量の和)から第2部材16の充填量を差し引いて決定される。凹部X内を満たす全充填量より少ない量の第1部材14が凹部X内に充填されるため、凹部X内に充填された第1部材14は凹部Xの下方側に配置される。この際、第1部材14は表面張力により凹部Xの内壁を這い上がるため、凹部X内に充填された第1部材14の上面は凹形状となっている。なお、第1部材14や第2部材16の充填量は、それぞれに用いられる樹脂材料の選択やそれぞれに含まれるフィラー(例:蛍光体)の濃度等により定まり、第1部材14や第2部材16がフィラーを含有する場合は、樹脂材料の量だけではなく、当該含有するフィラーの量も含めた第1部材14全体及び第2部材16全体の量で判断する。
【0019】
(第4工程)
次に、図1Dに示すように、第1部材14の本硬化前に、第1部材14より比重が大きい第2部材16を凹部X内に滴下する。第2部材16は主として樹脂材料からなる部材である。樹脂材料には蛍光体22や光拡散材等のフィラーが含有されていてもよく、この場合は、樹脂材料とこれに含有されるフィラーとが第2部材16を形成することになる。
【0020】
第1部材14と第2部材16の比重は、それぞれに用いられる樹脂材料の選択やそれぞれに含まれるフィラー(例:蛍光体)の濃度や粒径等により定まり、第1部材14や第2部材16がフィラーを含有する場合は、樹脂材料だけではなく、当該含有するフィラーも含めた第1部材14全体及び第2部材16全体で判断する。具体的には、例えば、次の(1)から(3)は、第2部材16の比重が第1部材14の比重よりも大きい場合の一例となる。
(1)第1部材14と第2部材16とに用いられる樹脂材料自体の比重が異なるため、第2部材16全体の比重が第1部材14全体の比重よりも大きくなる場合。
(2)第1部材14と第2部材16とに用いられる樹脂材料自体の比重は同じであるが、第1部材14と第2部材16とに含まれる蛍光体20、22等のフィラーの比重が異なるため(あるいは、第2部材16には蛍光体22等のフィラーが含まれるが、第1部材14には蛍光体20等のフィラーが含まれないため)、第2部材16全体の比重が第1部材14全体の比重よりも大きくなる場合。
(3)第1部材14と第2部材16とに用いられる樹脂材料自体の比重が同じであり、第1部材14と第2部材16とに含まれる蛍光体20、22等のフィラーの比重も同じであるが、第2部材16に第1部材14より多くのフィラーが含まれるため(すなわち、第2部材16におけるフィラーの濃度が第1部材14におけるフィラーの濃度より大きいため)、第2部材16全体の比重が第1部材14全体の比重よりも大きくなる場合。
【0021】
第1部材14がすでに充填された凹部X内に、第1部材14より比重が大きい第2部材16を滴下することにより、第2部材16は第1部材14の下方側へ移動しようとする。具体的には、第1部材14の上面に滴下された第2部材16は、第1部材14の上面側から凹部Xの下方側へ向かって移動し、第1部材14を凹部Xの上方側へ押し上げる。つまり、第2部材16は、第1部材14の中を潜り込むように移動して凹部Xの下方側に配置される。
【0022】
第2部材16は、発光素子12が凹部Xの底面中央近傍に載置される場合、平面視で凹部Xの中央上方から滴下することが好ましい。第2部材16を凹部Xの中央上方から滴下することにより、第2部材16を凹部Xの底面中央近傍に選択的に配置することが可能となり、第2部材16を第1部材14よりも先に滴下する場合と比べると、凹部Xの内壁面における第2部材16の這い上がりを抑制できる。他方、第2部材16は、発光素子12が凹部Xの底面中央近傍以外に載置される場合、発光素子12の上方(例:発光素子12の直上)から滴下することが好ましい。第2部材16を発光素子12の直上から滴下することにより、第2部材16を発光素子12近傍に選択的に配置することが可能となる。なお、凹部X内に複数の発光素子12が載置されている場合は、複数の発光素子群の略中央の上方から第2部材16を滴下することが好ましい。第2部材16を複数の発光素子12の上方から滴下することにより、第2部材16を複数の発光素子群近傍に配置することが可能となる。
【0023】
前記したとおり、第1部材14や第2部材16は主として樹脂材料からなる部材であるが、樹脂材料には蛍光体22や光拡散材等のフィラーが含有されていてもよく、この場合は、樹脂材料とこれに含有されるフィラーとが第1部材14や第2部材16を形成することになる。蛍光体20、22としては、発光素子12の光により励起されて発光素子12の光とは異なる波長の光を発する当該分野で公知の物質を用いることができる。具体的には、セリウムで賦活されたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、セリウムで賦活されたLAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、ユーロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al−SiO)系蛍光体、ユーロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)SiO)系蛍光体、βサイアロン蛍光体、クロロシリケート蛍光体、CASN系又はSCASN系蛍光体などの窒化物系蛍光体、希土類金属窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、KSF(KSiF:Mn)系蛍光体、硫化物系蛍光体などを蛍光体20、22の一例として挙げることができる。これらの物質を蛍光体20、22として用いれば、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色系)を出射する発光装置、紫外光の一次光に励起されて可視波長の二次光を出射する発光装置を提供することができる。特に、発光素子12として青色発光素子を用いる場合には、青色光により励起されて黄色のブロードな発光を示す蛍光体を蛍光体20、22として用いることが好ましい。なお、蛍光体20、22は、一種の物質からなるものであってもよいし、組成が異なる二種以上の物質を組み合わせてなるものであってもよい。この場合は、二種以上の物質の配合比を調整することにより、所望の演色性や色再現性を実現することができる。
【0024】
蛍光体20、22としては、例えば、いわゆるナノクリスタル、量子ドットと称される発光物質を用いることもできる。このような発光物質としては、半導体材料、例えば、II−VI族、III−V族又はIV−VI族の半導体、具体的には、CdSe、コアシェル型のCdSXSe1−X/ZnS、GaP、InAs等のナノサイズの高分散粒子を挙げることができる。また、このような発光物質としては、例えば、粒径が1〜100nm、好ましくは1〜20nm程度(原子10〜50個程度)のものを挙げることができる。このような発光物質を蛍光体20、22として用いることにより、内部散乱を抑制することができ、色変換された光の散乱を抑制し、光の透過率をより一層向上させることができる。
【0025】
蛍光体20、22としては有機系の発光材料を用いることもできる。有機系の発光材料として代表的なものとしては、有機金属錯体を用いた発光材料を挙げることができる。これらの発光材料には透明性の高い発光材料が多いため、蛍光体20、22として有機系の発光材料を用いた場合には、量子ドット蛍光体を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0026】
光拡散材には、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0027】
樹脂材料に含有させるフィラーとしては、上記蛍光体および光拡散材の他、ガラスファイバー、ワラストナイトなどの繊維状フィラー、カーボンブラック等の無機フィラー、放熱性の高い材料(例えば窒化アルミ、窒化ホウ素等)等のフィラーを一例として挙げることができる。
【0028】
第2部材16を滴下する工程は第1部材14を仮硬化させる工程を含んでいることが好ましい。具体的に説明すると、第1部材14は第2部材16の滴下と同時に仮硬化させること、換言すれば、第2部材16は第1部材14を仮硬化させながら滴下することが好ましい。
【0029】
(第5工程)
次に、図1Eに示すように、第1部材14と第2部材16とを本硬化させる。このように、第2部材16の滴下完了後に第1部材14と第2部材16とを同時に本硬化させることにより、第2部材16が必要以上に水平方向へ移動することを防止して、所望の位置(例:発光素子12の近傍のみ)に第2部材16を配置することができる。第2部材16が第1部材14と同じ樹脂材料を用いて形成される場合は、第1部材14と第2部材16とを、同一の硬化条件の下、同一工程内で同時に本硬化させ易くなる。なお、本硬化後の第1部材14および第2部材16の外表面形状は必ずしもその上面が平坦である必要はなく凸状または凹状であってもよい。
【0030】
本明細書において「本硬化」とは樹脂が完全に硬化することをいい、「仮硬化」とは樹
脂の流動を抑える程度に硬化することをいう。本硬化及び上記した仮硬化の方法は、特に
限定されるものではないが、本硬化や仮硬化は、例えば、熱、触媒、UV照射、放射線照
射等の方法により行うことができる。
【0031】
例えば、第1部材14と第2部材16とがともに熱硬化性樹脂である場合、第1部材14が本硬化する温度に達しない温度まで加熱しながら第2部材16を滴下することが好ましい。これにより、第2部材16の滴下後、速やかに本硬化工程を行うことができるため、第2部材16が必要以上に流動してしまうことを制御できる。つまり、第2部材16の配置エリアを制御しやすくなる。
【0032】
以上説明したように、実施形態1に係る発光装置100の製造方法によれば、第1部材14の本硬化前に、第1部材14よりも比重が大きい第2部材16を凹部X内に滴下するため、第2部材16を発光素子12近傍に配置させやすくなるとともに(特に、第2部材16に蛍光体22が含まれる場合には、当該蛍光体22を発光素子12の近傍に配置させやすくなる。)、第1部材14と第2部材16との間に界面が形成されることを抑制することができる。したがって、光取り出し効率に優れた発光装置を提供することができる。
【0033】
また、実施形態1に係る発光装置100の製造方法によれば、本硬化前の第1部材14が第2部材16を発光素子12近傍に優先的に配置する働きをするため、特に第2部材16に蛍光体22が含まれる場合においては、色ムラの少ない発光装置を提供することもできる。すなわち、実施形態1に係る発光装置100の製造方法によれば、本硬化前の第1部材14が、凹部X内に滴下された第2部材16を、凹部Xの全体に広がらないよう発光素子12の近傍に抑え込む働きをする。このため、第2部材16が、凹部X内への滴下後、凹部Xの全体に直ぐに広がるのではなく、時間をかけて徐々に凹部Xの全体に広がるようになる。したがって、第2部材16が蛍光体22を有する場合には、当該蛍光体22が発光素子12の上方や発光素子12の周辺により多く堆積するようになる。
【0034】
発光素子12からの出射光が、凹部X内を封止する第1部材14および第2部材16中を通過する際の距離である光路長は、光の取り出し方向によって異なる。このため、蛍光体22が凹部Xの全体に広がって堆積してしまうと、発光素子12の側方へ向かう光が凹部Xの内壁に反射して凹部Xの外部へ至る光路L1上に、発光素子12の上方へ向かう光が凹部Xの外部へ至る光路L2上より多くの蛍光体22が存在してしまう。つまり、発光素子12の側方領域において、発光素子12の上方領域におけるより多くの蛍光体22が発光素子12の光によって励起されるようになる。したがって、発光素子12の側方領域から蛍光体22により波長変換された光がより多く出射するようになるため、発光素子12の上方領域から出射する光と発光素子12の側方領域から出射する光の色度が異なり、色ムラが顕著になってしまう。
【0035】
しかしながら、実施形態1に係る発光装置100の製造方法によれば、上記のとおり、本硬化前の第1部材14が第2部材16を発光素子12載置領域の近傍に優先的に配置する働きをするため、発光素子12から側方へ向かう光が凹部Xの内壁に反射して凹部Xの外部へ至る光路L1上と、発光素子12から上方へ向かう光が凹部Xの外部へ至る光路L2上と、に存在する蛍光体量の差を小さくすることができる。したがって、実施形態1に係る発光装置100の製造方法によれば、特に第2部材16に蛍光体22が含まれる場合において、色ムラの少ない発光装置を提供することができる。
【0036】
実施形態1に係る発光装置100の製造方法によれば、第2部材16が発光素子12載置領域の近傍に優先的に配置される。言い換えると、第2部材16は発光装置100の発光面から離間して配置される。したがって、第2部材16に蛍光体22が含まれる場合において、当該蛍光体22は発光装置の外表面に露出されない。よって、実施形態1に係る発光装置100の製造方法は、特にガス、水分に弱い蛍光体22を用いた発光装置の製造方法に適している。
【0037】
なお、(1)第1部材14と第2部材16とに異なる比重の樹脂材料を用いることにより第2部材16の比重を第1部材14の比重より大きくする場合は、例えば、第2部材16が第1部材14よりも高い耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成されることが好ましい。このようにすれば、より高い耐熱性を有する第2部材16を発光素子近傍に選択的に配置することが可能となるため、発光素子12からの発熱によって発光素子12を覆う樹脂が劣化したり変色したりすること等を防止して、発光装置100の発光効率低下を抑制することができる。また、(2)第1部材14と第2部材16とに異なる比重のフィラーを含有させることにより第2部材16の比重を第1部材14の比重より大きくしたり、(3)第1部材14と第2部材16とにおけるフィラーの濃度を変えたりすることにより、第2部材16の比重を第1部材14の比重より大きくする場合には、第2部材16に含まれるフィラーを凹部X内の所望の場所に配置させやすくなるため、特に第2部材16に蛍光体22が含まれる場合において、より一層、蛍光体22が発光素子12の近傍に配置されるようになる。したがって、さらに色むらの少ない発光装置を提供することが可能となる。
【0038】
[実施形態2に係る発光装置200の製造方法]
図2Aから図2Gは実施形態2に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。図2Aから図2G(特に図2C図2D)に示すように、実施形態2に係る発光装置200の製造方法は、第1部材14を滴下する前に、第1部材14及び第2部材16よりも光反射性が高い光反射部材18を凹部X内に滴下し、光反射部材18により凹部Xの底面及び発光素子12の側面を被覆する点で、実施形態1に係る発光装置100の製造方法と相違する。なお、光反射部材18を滴下する際は、発光素子12の上面が光反射部材18から露出するよう、発光素子12の真上ではなく、発光素子12と凹部X側壁との間における上方から光反射部材18を滴下する。このように光反射部材18を滴下した場合、光反射部材18が発光素子12の側面を這い上がり、発光素子12の側面が光反射部材18で被覆される。実施形態2に係る発光装置200の製造方法によれば、凹部Xの底面及び発光素子12の側面が第1部材14及び第2部材16よりも光反射性が高い光反射部材18で被覆されるため、発光装置の光取り出し効率をさらに高めることができる。
【0039】
光反射部材18は、光反射率の高い光反射性材料から形成することができる。具体的には、発光素子12からの光に対する反射率が60%以上、より好ましくは80%または90%以上である光反射性材料を用いることができる。光反射性材料としては、光反射性物質を含有した樹脂材料が好ましい。樹脂材料としては、具体的には、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂の1種類以上を含む樹脂またはハイブリッド樹脂等が挙げられる。なかでも、耐熱性、電気絶縁性にすぐれ、柔軟性のあるシリコーン樹脂をベースポリマーとして含有する樹脂が好ましい。光反射性物質には、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、等を用いることができる。なかでも酸化チタンは、水分等に対して比較的安定でかつ高屈折率であるため好ましい。また、ガラスファイバー、ワラストナイトなどの繊維状フィラー、カーボンブラック等の無機フィラー、放熱性の高い材料(例えば窒化アルミ、窒化ホウ素等)を光反射性材料に含有させてもよい。
【0040】
光反射部材18は、第1部材14や第2部材16と同じ方法により滴下し、硬化させることができる。光反射部材18は、第1部材14および第2部材16の滴下前に仮硬化または本硬化させておくことが好ましい。つまり、光反射部材18と第1部材14および第2部材16との間に界面が形成されることが好ましい。これにより、発光素子12から出射した光が光反射部材18の表面にて反射されるため、発光装置200の光取り出し効率が向上する。
【0041】
[実施形態3に係る発光装置300の製造方法]
図3Aから図3Gは実施形態3に係る発光装置の製造方法を示す模式的断面図である。図3Aから図3Gに示すように、実施形態3に係る発光装置300の製造方法は、第1部材14を滴下する前に、第1部材14及び第2部材16よりも光反射性が高い光反射部材18を凹部X内に滴下し、光反射部材18により凹部Xの底面及び凹部Xの側面を被覆する点で、実施形態1に係る発光装置100の製造方法と相違する。また、光反射部材18と発光素子12とが離間している点で実施形態2に係る発光装置の製造方法と相違する。光反射部材18を発光素子12から離間して配置させるために、光反射部材18の滴下は、発光素子12の上面および側面が光反射部材18から露出するよう、発光素子12の真上ではなく、発光素子12と凹部X側壁との間の、より凹部X側壁に近い位置における上方から光反射部材18を滴下する。特に、凹部Xの底面が平面視略矩形状である場合、光反射部材18は矩形の四隅近傍に滴下することが好ましい。これにより、光反射部材18が凹部Xの側面に沿って濡れ広がり、ひと続きの反射曲面が形成される。ひと続きの反射曲面が形成された状態で光反射部材18を仮硬化または本硬化させる。
【0042】
実施形態3に係る発光装置300の製造方法によれば、凹部Xの底面及び側面が第1部材14及び第2部材16よりも光反射性が高い光反射部材18で被覆されるため、発光装置の光取り出し効率をさらに高めることができる。さらに、光反射部材18と発光素子12とが離間しているため、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法と同様に、第2部材16を発光素子12の側面近傍にも優先的に配置することができる。このため、特に、第2部材16に蛍光体22が含まれる場合においては、発光素子12の上面及び側面近傍に蛍光体22を優先的に配置することが可能となり、色ムラの少ない発光装置300を提供することができる。
【0043】
以上、実施形態について説明したが、これらの説明は一例に関するものであり、特許請求の範囲に記載された構成を何ら限定するものではない。
【符号の説明】
【0044】
10 基体
12 発光素子
14 第1部材
16 第2部材
18 光反射部材
20 蛍光体
22 蛍光体
100 発光装置
200 発光装置
300 発光装置
L1 光路
L2 光路
X 凹部
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G