特許第6561873号(P6561873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561873ジフルオロシクロヘキサン環を有する化合物、液晶組成物、および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561873
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ジフルオロシクロヘキサン環を有する化合物、液晶組成物、および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 23/10 20060101AFI20190808BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20190808BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20190808BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20190808BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20190808BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20190808BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20190808BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C07C23/10CSP
   C09K19/30
   C09K19/42
   C09K19/34
   C09K19/12
   C09K19/20
   C09K19/18
   G02F1/13 500
【請求項の数】12
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2016-32848(P2016-32848)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-149666(P2017-149666A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰行
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴裕
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−320081(JP,A)
【文献】 特表2001−500502(JP,A)
【文献】 特開平10−237000(JP,A)
【文献】 米国特許第06475595(US,B1)
【文献】 特開平04−327548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−1)、式(1−2)、または式(1−3)で表される化合物。


式(1−1)、式(1−2)、および式(1−3)において、
は、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、R、炭素数2から10のアルケニルであり、Rは、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり;
およびZは、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−である。
【請求項2】
式(1−1−1)、式(1−2−1)、または式(1−3−1)で表される、請求項1に記載の化合物。


式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)において、
は、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり;R、炭素数2から10のアルケニルであり;Rは、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり;
は、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CFCF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−である。
【請求項3】
式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)において、Zが、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、または−CHCH−である、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)において、Zが、単結合、−COO−、または−CHCH−である、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
式(1−1−1−1)、式(1−2−1−1)、または式(1−3−1−1)で表される、請求項1からのいずれか1項に記載の化合物。


式(1−1−1−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−3−1−1)において、
は、炭素数1から5のアルキル、または炭素数2から5のアルケニルであり;R、炭素数2から5のアルケニルであり;Rは、炭素数1から5のアルキルまたは炭素数2から5のアルケニルである。
【請求項6】
式(1−1−1−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−3−1−1)において、が、炭素数1から5のアルキルであり;が、炭素数2から5のアルケニルであり;が、炭素数1から5のアルキルである、請求項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の化合物を含有する液晶組成物。
【請求項8】
式(2)から(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項に記載の液晶組成物。


式(2)から(4)において、
11は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;
環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【請求項9】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項7または8に記載の液晶組成物。


式(5)において、
12は、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は、−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Cは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14は、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−C≡C−であり;
13およびL14は独立して水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【請求項10】
式(6)から(12)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(6)から(12)において、
13、R14、およびR15は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そしてR15は、水素またはフッ素であってもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環Dおよび環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
15、Z16、Z17、およびZ18は独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFOCHCH−、または−OCFCHCH−であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【請求項11】
式(13)から(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項7から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(13)から(15)において、
16およびR17は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−COO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−である。
ここで、式(14)および(15)において、R16およびR17の一方が、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数2から10のアルケニルであるとき、他方は、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1から10のアルキルである。
【請求項12】
請求項から11のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフルオロシクロヘキサン環を有する化合物、この化合物を含有する液晶組成物、この組成物を含有する液晶表示素子などに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶分子の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(fringe field switching)、FPA(field-induced photo-reactive alignment)などのモードである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMは、スタティック(static)、マルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMは、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
液晶表示素子はネマチック相を有する液晶組成物を含有する。この組成物は適切な特性を有する。この組成物の特性を向上させることによって、良好な特性を有するAM素子を得ることができる。2つの特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はさらに好ましい。
【0004】

【0005】
液晶組成物は、誘電率異方性が大きな液晶性化合物と誘電率異方性が小さな液晶性化合物とを混合することによって調製する。前者は、組成物の誘電率異方性を上げることによって素子のしきい値電圧を下げる。後者は、組成物のネマチック相の上限温度を上げる、またはネマチック相の下限温度を下げることによって、素子を使用できる温度範囲を広げる。後者は、組成物の粘度を下げることによって、素子の応答時間を短縮する。
【0006】
これまでに、正または負に大きな誘電率異方性を有する液晶性化合物が種々合成されてきた。一方、小さな誘電率異方性を有する液晶性化合物には、従来の化合物が使われることが多い。そこで、新規な化合物の合成を試みた。従来の化合物にはない良好な物性が期待されるからである。
【0007】
特開昭57−165328号公報は、実施例25に化合物(A)を開示する。

【0008】
特開平08−48978号公報は、実施例7に化合物(B)を開示する。

【0009】
特開平05−320081号公報は、実施例1に化合物(C)を開示する。

【0010】
Proceedings of SPIE−The International Society for Optical Engineering (1998),3319(Liquid Crystals:Chemistry and Structure),31−34は、化合物(D)を開示する。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭57−165328号公報
【特許文献2】特開平08−48978号公報
【特許文献3】特開平05−320081号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Proceedings of SPIE−The International Society for Optical Engineering (1998),3319(Liquid Crystals:Chemistry and Structure),31−34.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
第一の課題は、熱や光に対する高い安定性、高い透明点(またはネマチック相の高い上限温度)、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、小さな誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との良好な相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。類似の化合物と比較して、良好な相溶性などの物性を有する化合物を提供することである。第二の課題は、この化合物を含有し、熱や光に対する高い安定性、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この課題は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の課題は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、小さなフリッカ率、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、式(1)で表される化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。


式(1)において、
およびRは、水素、フッ素、塩素、または炭素数1から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
およびLの一方は、共に水素であり、他方は共にフッ素であり;
およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−である。
【発明の効果】
【0015】
第一の長所は、熱や光に対する高い安定性、高い透明点(またはネマチック相の高い上限温度)、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、小さな誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との良好な相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。類似の化合物と比較して、良好な相溶性などの物性を有する化合物を提供することである。(比較例1、2を参照)。第二の長所は、この化合物を含有し、熱や光に対する高い安定性、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この長所は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の長所は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、小さなフリッカ率、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この明細書における用語の使い方は、次のとおりである。「液晶性化合物」、「液晶組成物」、および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「化合物」、「組成物」、および「素子」と略すことがある。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが、上限温度、下限温度、粘度、誘電率異方性のような組成物の物性を調節する目的で添加する化合物の総称である。この化合物は、1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。
【0017】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この組成物に、物性をさらに調整する目的で添加物が添加される。重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物や添加物は、このような手順で混合される。液晶性化合物の割合(含有量)は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。添加物の割合(添加量)は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0018】
「透明点」は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。「液晶相の下限温度」は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。「ネマチック相の上限温度」は、液晶性化合物と母液晶との混合物または液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。組成物や素子では、経時変化試験(加速劣化試験を含む)の前後で特性が検討されることがある。
【0019】
式(1)で表される化合物を化合物(1)と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を化合物(1)と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。これらのルールは、他の式で表される化合物についても適用される。式(1)から(15)において、六角形で囲んだA、B、Cなどの記号はそれぞれ環A、環B、環Cなどの環に対応する。六角形は、シクロヘキサンやベンゼンのような六員環を表す。六角形がナフタレンのような縮合環や、アダマンタンのような架橋環を表すことがある。
【0020】
成分化合物の化学式において、末端基R11の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR11が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がエチルであるケースがある。化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がプロピルであるケースもある。このルールは、R12、R13、Z11のような他の記号にも適用される。化合物(5)において、iが2のとき、2つの環Cが存在する。この化合物において2つの環Cが表す2つの基は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、iが2より大きいとき、任意の2つの環Cにも適用される。このルールは、他の記号にも適用される。
【0021】
「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数が任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。「少なくとも1つの‘A’が、‘B’、‘C’、または‘D’で置き換えられてもよい」という表現は、任意の‘A’が‘B’で置き換えられた場合、任意の‘A’が‘C’で置き換えられた場合、および任意の‘A’が‘D’で置き換えられた場合、さらに複数の‘A’が‘B’、‘C’、および/または‘D’の少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、「少なくとも1つの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0022】
「R11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい」の表現が使われることがある。この表現において、「これらの基において」は、文言どおりに解釈してよい。この表現では、「これらの基」は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシなどを意味する。すなわち、「これらの基」は、「これらの基において」の用語よりも前に記載された基の総てを表す。この常識的な解釈は、「これらの一価基において」や「これらの二価基において」の用語にも適用される。例えば、「これらの一価基」は、「これらの一価基において」の用語よりも前に記載された基の総てを表す。
【0023】
液晶性化合物のアルキルは直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、一般的に分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって生成した左右非対称な二価基にも適用される。

【0024】
本発明は、下記の項などである。
【0025】
項1. 式(1)で表される化合物。


式(1)において、
およびRは、水素、フッ素、塩素、または炭素数1から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
およびLの一方は、共に水素であり、他方は共にフッ素であり;
およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−であり;
ここで、RおよびRがともに炭素数1から20のアルキルであり、Lがフッ素であるとき、ZおよびZの少なくとも1つは、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−であり;
ここで、Rが炭素数1から20のアルキルであり、Rが炭素数1から19のアルコキシであり、Lがフッ素であるとき、ZおよびZの少なくとも1つは、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−である。
【0026】
項2. 式(1−1)、式(1−2)、または式(1−3)で表される、項1に記載の化合物。


式(1−1)、式(1−2)、および式(1−3)において、
は、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から9のアルコキシ、炭素数2から9のアルコキシアルキル、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から9のアルケニルオキシであり、Rは、炭素数1から9のアルコキシ、炭素数2から9のアルコキシアルキル、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から9のアルケニルオキシであり、Rは、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり;
およびZは、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−である。
【0027】
項3. 式(1−1−1)、式(1−2−1)、または式(1−3−1)で表される、項1または2に記載の化合物。


式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)において、
は、炭素数1から10のアルキル、炭素数1から9のアルコキシ、炭素数2から9のアルコキシアルキル、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から9のアルケニルオキシであり;Rは、炭素数1から9のアルコキシ、炭素数2から9のアルコキシアルキル、炭素数2から10のアルケニル、または炭素数2から9のアルケニルオキシであり;Rは、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり;
は、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、−CHCH−、−CFCF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−である。
【0028】
項4. 式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)において、Zが、単結合、−COO−、−OCH−、−CFO−、または−CHCH−である、項3に記載の化合物。
【0029】
項5. 式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)において、Zが、単結合、−COO−、または−CHCH−である、項3に記載の化合物。
【0030】
項6. 式(1−1−1−1)、式(1−2−1−1)、または式(1−3−1−1)で表される、項1に記載の化合物。


式(1−1−1−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−3−1−1)において、
は、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から4のアルコキシ、または炭素数2から5のアルケニルであり;Rは、炭素数1から4のアルコキシまたは炭素数2から5のアルケニルであり;Rは、炭素数1から5のアルキルまたは炭素数2から5のアルケニルである。
【0031】
項7. 式(1−1−1−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−3−1−1)において、Rが、炭素数1から5のアルキルであり;Rが、炭素数2から5のアルケニルであり;Rが、炭素数1から5のアルキルである、項6に記載の化合物。
【0032】
項8. 項1から7のいずれか1項に記載の化合物を含有する液晶組成物。
【0033】
項9. 式(2)から(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8に記載の液晶組成物。


式(2)から(4)において、
11は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;
環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【0034】
項10. 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8または9に記載の液晶組成物。


式(5)において、
12は、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は、−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Cは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14は、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−C≡C−であり;
13およびL14は独立して水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0035】
項11. 式(6)から(12)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(6)から(12)において、
13、R14、およびR15は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そしてR15は、水素またはフッ素であってもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環Dおよび環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
15、Z16、Z17、およびZ18は独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFOCHCH−、または−OCFCHCH−であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【0036】
項12. 式(13)から(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(13)から(15)において、
16およびR17は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−COO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−である。
ここで、式(14)および(15)において、R16およびR17の一方が、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数2から10のアルケニルであるとき、他方は、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1から10のアルキルである。
【0037】
項13. 項8から12のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。
【0038】
本発明は、次の項をも含む。(a)重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された、1つ、2つ、または少なくとも3つの添加物をさらに含有する、上記の組成物。(b)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.07以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が2以上である、上記の液晶組成物。(c)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が−2以下である、上記の液晶組成物。(d)液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、VAモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス(AM)方式である、上記の液晶表示素子。(e)重合性化合物を含有する上記の液晶組成物を用いて作製した高分子支持配向モードを有する液晶表示素子。
【0039】
化合物(1)の態様、化合物(1)の合成法、液晶組成物、および液晶表示素子について、順に説明する。
【0040】
1.化合物(1)の態様


式(1)において、2つのLおよび2つのLのうちの、一方は共に水素であり、他方は共にフッ素である。すなわち、化合物(1)は、式(A−1)または式(A−2)で表される二価基を有することを特徴とする。

【0041】
化合物(1)は、小さな誘電率異方性を有する。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に安定である。この化合物は、類似の化合物と比較して、良好な相溶性と大きな弾性定数比(K33/K11)とを有する(比較例1を参照)。この化合物は、低温において他の液晶性化合物との相溶性が良好である。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管したとき、この化合物が結晶(または、スメクチック相)として析出する傾向が小さい。この化合物は大きな弾性定数を有するので、素子の応答時間を短縮する。化合物(1)は、類似の化合物と比較して、大きな弾性定数比(K33/K11)と小さな回転粘度(γ1)とを有する(比較例2を参照)。この化合物は、組成物の粘度を下げるので、素子の短い応答時間に寄与する。
【0042】
化合物(1)の好ましい例について説明をする。化合物(1)における末端基R、環A、結合基Zの好ましい例は、化合物(1)の下位式にも適用される。化合物(1)において、これらの基を適切に組み合わせることによって、物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。なお、化合物(1)の記号の定義は、項1に記載したとおりである。
【0043】
式(1)において、RおよびRは、水素、フッ素、塩素、または炭素数1から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0044】
またはRの例は、水素、フッ素、塩素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、またはアルコキシアルケニルである。これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。これらの基において、分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。RまたはRが分岐鎖であっても光学活性であるときは好ましい。好ましいRまたはRは、フッ素、塩素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、またはアルケニルオキシである。さらに好ましいRまたはRは、アルキル、アルコキシ、またはアルケニルである。特に好ましいRまたはRは、アルキルまたはアルケニルである。
【0045】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。
【0046】
具体的なRまたはRは、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、ペントキシメチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、2−プロペニルオキシ、2−ブテニルオキシ、2−ペンテニルオキシ、1−プロピニル、または1−ペンテニルである。
【0047】
具体的なRまたはRは、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−フルオロビニル、2,2−ジフルオロビニル,2−フルオロ−2−ビニル、3−フルオロ−1−プロペニル、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル、4−フルオロ−1−プロペニル、または4,4−ジフルオロ−3−ブテニルでもある。
【0048】
好ましいRまたはRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、2−プロペニルオキシ、2−ブテニルオキシ、または2−ペンテニルオキシである。さらに好ましいRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはメトキシメチルである。さらに好ましいRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ビニル、プロペニル、ブテニル、またはペンテニルである。
【0049】
式(1)において、ZおよびZは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、−CF=CF−、−CHCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、または−CHCH=CHCH−である。
【0050】
好ましいZまたはZは、単結合、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFCF−、または−CF=CF−である。さらに好ましい、ZまたはZは、単結合、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−C≡C−である。特に好ましいZまたはZは、単結合、−OCH−、−CHO−、または−CHCH−である。最も好ましいZまたはZは、単結合である。
【0051】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法を説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることによって合成できる。必要とする末端基、環および結合基を出発物に導入する方法は、「オーガニック・シンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
【0052】
2−1.結合基Zの生成
結合基ZからZを生成する方法に関して、最初にスキームを示す。次に、方法(1)から(11)でスキームに記載した反応を説明する。このスキームにおいて、MSG(またはMSG)は少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1K)は化合物(1)に相当する。
【0053】


【0054】
(1)単結合の生成
公知の方法で合成されるアリールホウ酸(21)とハロゲン化物(22)とを、炭酸塩およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成されるハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下でハロゲン化物(22)を反応させることによっても合成される。
【0055】
(2)−COO−の生成
ハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。公知の方法で合成される化合物(25)とカルボン酸(24)とをDDC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて化合物(1B)を合成する。
【0056】
(3)−CFO−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理してチオノエステル(26)を得る。チオノエステル(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)はチオノエステル(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480. に記載の方法によってこの結合基を生成させることも可能である。
【0057】
(4)−CH=CH−の生成
ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理した後、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)と反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムt−ブトキシドのような塩基で処理してリンイリドを発生させる。このリンイリドをアルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0058】
(5)−CHCH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0059】
(6)−(CH−CH=CH−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、方法(4)の方法に従って化合物(1F)を得る。この反応では、反応条件によってシス体が生成する場合もあるので、公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0060】
(7)−(CH−の生成
化合物(1F)を接触水素化して化合物(1G)を合成する。
【0061】
(8)−CHCH=CHCH−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(30)を、アルデヒド(28)の代わりにアルデヒド(31)を用い、方法(4)の方法に従って化合物(1H)を合成する。反応条件によってはトランス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりトランス体をシス体に異性化する。
【0062】
(9)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、ハロゲン化物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(32)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(32)をハロゲン化物(22)と反応させて、化合物(1I)を合成する。
【0063】
(10)−CF=CF−の生成
ハロゲン化物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(33)を得る。ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(33)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0064】
(11)−OCH−の生成
アルデヒド(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(34)を得る。化合物(34)を臭化水素酸などで臭素化して臭化物(35)を得る。炭酸カリウムなどの塩基存在下で、臭化物(35)を化合物(36)と反応させて化合物(1K)を合成する。
【0065】
(12)−(CF−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414. に記載された方法に従い、ジケトン(−COCO−)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF−を有する化合物を得る。
【0066】
2−2.ジフルオロシクロヘキサン環の生成

【0067】
ジフルオロシクロヘキサン環に関する生成法を説明する。ケトン(s−1)は、市販されているか、または生成法がよく知られている。ケトン(s−1)にエタンジチオールを三フッ化ホウ素−酢酸錯体用いて反応させ、チオケタール(s−2)を得る。このチオケタールに(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)などのフッ素化剤を反応させて目的の化合物(1L)を得る。
【0068】
3.液晶組成物
3−1.成分化合物
本発明の液晶組成物について説明をする。この組成物は、少なくとも1つの化合物(1)を成分Aとして含有する。この組成物は、2つまたは3つ以上の化合物(1)を含有してもよい。組成物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物は、化合物(1)の少なくとも1つを1重量%から50重量%の範囲で含有することが、良好な物性を発現させるために好ましい。化合物(1)の誘電率異方性は小さい。誘電率異方性が正である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は5重量%から50重量%の範囲である。誘電率異方性が負である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は5重量%から40重量%の範囲である。
【0069】

【0070】
この組成物は、化合物(1)を成分Aとして含有する。この組成物は、表2に示す成分B、C、D、およびEから選択された液晶性化合物をさらに含有することが好ましい。この組成物を調製するときには、誘電率異方性の正負と大きさとを考慮して成分B、C、D、およびEを選択することが好ましい。この組成物は、成分BからEとは異なる液晶性化合物を含んでもよい。この組成物は、そのような液晶性化合物を含まなくてもよい。
【0071】
成分Bは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)から(2−16)、化合物(3−1)から(3−113)、化合物(4−1)から(4−57)を挙げることができる。これらの化合物において、R11は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。X11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFである。
【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】


【0078】
成分Bは、誘電率異方性が正であり、熱や光に対する安定性が非常に良好であるので、IPS、FFS、OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Bの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Bを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Bの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Bを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0079】
成分Cは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(5)である。成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)から(5−64)を挙げることができる。これらの化合物において、R12は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。X12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである。
【0080】

【0081】

【0082】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、TNなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。この成分Cを添加することにより、組成物の誘電率異方性を上げることができる。成分Cは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果がある。成分Cは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0083】
TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Cの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Cを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Cの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Cを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0084】
成分Dは、化合物(6)から(12)である。これらの化合物は、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたフェニレンを有する。成分Dの好ましい例として、化合物(6−1)から(6−8)、化合物(7−1)から(7−17)、化合物(8−1)、化合物(9−1)から(9−3)、化合物(10−1)から(10−11)、化合物(11−1)から(11−3)、および化合物(12−1)から(12−3)を挙げることができる。これらの化合物において、R13、R14、およびR15は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そしてR15は、水素またはフッ素であってもよい。
【0085】

【0086】

【0087】
成分Dは、誘電率異方性が負に大きい。成分Dは、IPS、FFS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Dの含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が負に大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。誘電率異方性が−5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0088】
成分Dのうち、化合物(6)は二環化合物であるので、粘度を下げる、光学異方性を調整する、または誘電率異方性を上げる効果がある。化合物(7)および(8)は三環化合物であるので、上限温度を上げる、光学異方性を上げる、または誘電率異方性を上げるという効果がある。化合物(9)から(12)は、誘電率異方性を上げるという効果がある。
【0089】
IPS、FFS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%から95重量%の範囲である。成分Dを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Dの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0090】
成分Eは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Eの好ましい例として、化合物(13−1)から(13−11)、化合物(14−1)から(14−19)、および化合物(15−1)から(15−7)を挙げることができる。これらの化合物において、R16およびR17は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0091】



【0092】
成分Eは、小さな誘電率異方性を有する。成分Eは中性に近い。化合物(13)は、粘度を下げるまたは光学異方性を調整する効果がある。化合物(14)および(15)は、上限温度を上げることによってネマチック相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する効果がある。
【0093】
成分Eの含有量を増加させるにつれて組成物の粘度が小さくなるが、誘電率異方性が小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。IPS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0094】
化合物(1)に成分B、C、D、およびEを適切に組み合わせることによって熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性(すなわち、大きな光学異方性または小さな光学異方性)、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数(すなわち、大きな弾性定数または小さな弾性定数)などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を調製することができる。このような組成物を含む素子は、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、小さなフリッカ率、および長い寿命を有する。
【0095】
素子を長時間使用すると、表示画面にフリッカ(flicker)が発生することがある。フリッカ率(%)は、(|正の電圧を印加したときの輝度−負の電圧を印加したときの輝度|)/平均輝度)×100、によって表すことができる。フリッカ率が0%から1%の範囲である素子は、素子を長時間使用しても、表示画面にフリッカ(flicker)が発生しにくい。このフリッカは、画像の焼き付きに関連し、交流で駆動させる際に正フレームと負フレームとの間の電位差によって発生すると推定される。化合物(1)を含有する組成物は、フリッカの発生を低減させるのにも有用である。
【0096】
3−2.添加物
液晶組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、消泡剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0097】
PSA(polymer sustained alignment;高分子支持配向型)モードを有する液晶表示素子では、組成物が重合体を含有する。重合性化合物は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加される。まず、少量の重合性化合物を添加した組成物を素子に注入する。次に、この素子の基板のあいだに電圧を印加しながら、組成物に紫外線を照射する。重合性化合物は重合して、組成物中に重合体の網目構造を生成する。この組成物では、重合体によって液晶分子の配向を制御することが可能になるので、素子の応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善される。
【0098】
重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を有する化合物も含まれる。
【0099】
さらに好ましい例は、化合物(M−1)から(M−18)である。これらの化合物において、R25からR31は独立して、水素またはメチルであり;R32、R33、およびR34は独立して、水素または炭素数1から5のアルキルであり、R32、R33、およびR34の少なくとも1つは炭素数1から5のアルキルであり;v、w、およびxは独立して、0または1であり;uおよびvは独立して、1から10の整数である。L21からL26は独立して、水素またはフッ素であり;L27およびL28は独立して、水素、フッ素、またはメチルである。
【0100】

【0101】
重合性化合物は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応条件を最適化することによって、残存する重合性化合物の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173、および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0102】
光ラジカル重合開始剤の追加例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0103】
液晶組成物に光ラジカル重合開始剤を添加したあと、電場を印加した状態で紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを防ぐために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150nmから500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250nmから450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300nmから400nmの範囲である。
【0104】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4−t−ブチルカテコール、4−メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0105】
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op−1)から(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Jは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R28は炭素数1から10のアルキルである。*印は不斉炭素を表す。
【0106】

【0107】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および(AO−2);Irganox415、Irganox565、Irganox1010、Irganox1035、Irganox3114、およびIrganox1098(商品名;BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などであり、具体例として下記の化合物(AO−3)および(AO−4);Tinuvin329、TinuvinP、Tinuvin326、Tinuvin234、Tinuvin213、Tinuvin400、Tinuvin328、およびTinuvin99−2(商品名;BASF社);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0108】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)、(AO−6)、および(AO−7);Tinuvin144、Tinuvin765、およびTinuvin770DF(商品名;BASF社);LA−77YおよびLA−77G(商品名;ADEKA社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIrgafos168(商品名;BASF社)を挙げることができる。GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0109】

【0110】
化合物(AO−1)において、R40は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、−COOR41、または−CHCHCOOR41であり、ここでR41は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−2)および(AO−5)において、R42は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−5)において、R43は水素、メチルまたはO(酸素ラジカル)であり;環Gは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;化合物(AO−7)において、環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;化合物(AO−5)および(AO−7)において、zは、1、2、または3である。
【0111】
4.液晶表示素子
液晶組成物は、PC、TN、STN、OCB、PSAなどの動作モードを有し、アクティブマトリックス方式で駆動する液晶表示素子に使用できる。この組成物は、PC、TN、STN、OCB、VA、IPSなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらの素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0112】
この組成物は、NCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子にも適しており、ここでは組成物がマイクロカプセル化されている。この組成物は、ポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)や、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。これらの組成物においては、重合性化合物が多量に添加される。一方、重合性化合物の割合が液晶組成物の重量に基づいて10重量%以下であるとき、PSAモードの液晶表示素子が作製される。好ましい割合は0.1重量%から2重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、0.2重量%から1.0重量%の範囲である。PSAモードの素子は、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリクス方式のような駆動方式で駆動させることができる。このような素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【実施例】
【0113】
1.化合物(1)の実施例
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。実施例は典型的な例であるので、本発明は実施例によって制限されない。化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物や組成物の物性、および素子の特性は、下記の方法により測定した。
【0114】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、室温、500MHz、積算回数16回の条件で測定した。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0115】
ガスクロマト分析:測定には、島津製作所製のGC−2010型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウム(1mL/分)を用いた。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)の温度を300℃に設定した。試料はアセトンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計には島津製作所製のGCSolutionシステムなどを用いた。
【0116】
HPLC分析:測定には、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。
【0117】
紫外可視分光分析:測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV−1700用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0118】
測定試料:相構造および転移温度(透明点、融点、重合開始温度など)を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物と母液晶との混合物を試料として用いた。
【0119】
化合物を母液晶と混合した試料を用いた場合は、次のように測定した。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の等式にしたがって、外挿値を算出し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0120】
この割合で結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、15重量%:85重量%である。
【0121】
化合物の誘電率異方性がゼロまたは正であるときは、下記の母液晶(A)を用いた。各成分の割合を、重量%で表した。

【0122】
化合物の誘電率異方性がゼロまたは負であるときは、下記の母液晶(B)を用いた。各成分の割合を重量%で表した。

【0123】
母液晶(C):下記のフッ素系化合物を成分とする母液晶(C)を用いることがある。

【0124】
測定方法:物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA;Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載されている。これを修飾した方法も用いた。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0125】
(1)相構造:偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置いた。この試料を、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0126】
(2)転移温度(℃):測定には、パーキンエルマー社製の走査熱量計、Diamond DSCシステムまたはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製の高感度示差走査熱量計、X−DSC7000を用いた。試料は、3℃/分の速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物の融点、重合開始温度もこの装置を使って測定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0127】
結晶はCと表した。結晶を二種類に区別できる場合は、それぞれをCまたはCと表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、およびスメクチックF相のような相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、およびSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0128】
(3)化合物の相溶性:化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、または1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製した。試料をガラス瓶に入れ、−10℃や−20℃のような低温の冷凍庫に一定期間保管した。試料のネマチック相が維持されたか、または結晶(またはスメクチック相)が析出したかを観察した。ネマチック相が維持される条件を相溶性の尺度として用いた。必要に応じて化合物の割合や冷凍庫の温度を変更することもある。
【0129】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。試料が化合物(1)と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。試料が化合物(1)と、化合物(2)から(15)から選択された化合物との混合物であるときは、NIの記号で示した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0130】
(5)ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0131】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には、東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0132】
(7)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の等式から計算した。
【0133】
(8)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の等式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0134】
(9)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0135】
(10)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%):25℃の代わりに、80℃で測定した以外は、上記の方法で電圧保持率を測定した。得られた結果をVHR−2の記号で示した。
【0136】
(11)フリッカ率(25℃で測定;%):測定には横河電機(株)製のマルチメディアディスプレイテスタ3298Fを用いた。光源はLEDであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.5μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のFFS素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に電圧を印加し、素子を透過した光量が最大になる電圧を測定した。この電圧を素子に印加しながらセンサ部を素子に近づけ、表示されたフリッカ率を読み取った。
【0137】
誘電率異方性が正の試料と負の試料とでは、物性の測定法が異なることがある。誘電率異方性が正であるときの測定法は、測定(12a)から測定(16a)に記載した。誘電率異方性が負の場合は、測定(12b)から測定(16b)に記載した。
【0138】
(12a)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s;誘電率異方性が正の試料):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vまで0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の等式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0139】
(12b)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s;誘電率異方性が負の試料):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に39ボルトから50ボルトまで1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の等式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性の項で測定した値を用いた。
【0140】
(13a)誘電率異方性(Δε;25℃で測定;誘電率異方性が正の試料):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の等式から計算した。
【0141】
(13b)誘電率異方性(Δε;25℃で測定;誘電率異方性が負の試料):誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の等式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0142】
(14a)弾性定数(K;25℃で測定;pN;誘電率異方性が正の試料):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量(C)および印加電圧(V)を測定した。これらの測定値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある等式(2.98)、等式(2.101)を用いてフィッティングし、等式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に171頁にある等式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0143】
(14b)弾性定数(K11およびK33;25℃で測定;pN;誘電率異方性が負の試料):測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量(C)および印加電圧(V)を測定した。これらの値を、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある等式(2.98)、等式(2.101)を用いてフィッティングし、等式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0144】
(15a)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V;誘電率異方性が正の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0145】
(15b)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V;誘電率異方性が負の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧で表した。
【0146】
(16a)応答時間(τ;25℃で測定;ms;誘電率異方性が正の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0147】
(16b)応答時間(τ;25℃で測定;ms;誘電率異方性が負の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPVA素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子にしきい値電圧を若干超える程度の電圧を1分間印加し、次に5.6Vの電圧を印加しながら23.5mW/cmの紫外線を8分間照射した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)で表した。
【0148】
原料:ソルミックス(登録商標)A−11は、エタノール(85.5%)、メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。
【0149】
[合成例1]
化合物(No.109)の合成

【0150】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(e−1)(オルガノサイエンス社製)(9.3g,29.8mmol)、エタンジチオール(5.6g,59.5mmol)をトルエン(54ml)に溶解させた。そこへ三フッ化ホウ素−酢酸錯体(5.6g,29.8mmol)を30℃で滴下し、一晩室温にて撹拌した。10%苛性ソーダ水溶液(47g)を加え、pH=12とした。トルエン(50ml)加えて抽出した。得られた有機層を分取して、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下、濃縮し、化合物(e−2)(11.6g、34.7mmol)を得た。
【0151】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(e−2)(11.6g、34.7mmol)とジクロロメタン(140ml)とを反応器に入れて、−15℃まで冷却した。そこへ、(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST;96.0g、595.6mmol)を−15℃から−10℃の温度範囲で滴下した。滴下後、反応混合物を25℃まで戻し、48時間攪拌した。氷を入れた炭酸ナトリウム水溶液に反応液を滴下し、生成した沈殿を濾過した。濾液の有機層を10%水酸化ナトリウム水溶液、希塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水の順番で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにソルミックスA−11にて再結晶して、化合物(No.109)(3.1g,9.3mmol)を得た。
【0152】
H−NMR(δppm;CDCl):7.09(m,4H)、2.41(m,1H)、2.31(s,3H)、2.11(m,1H)、1.99−1.76(m,7H)、1.58−1.20(m,13H)、0.89(t,3H).
【0153】
化合物(No.109)の物性は、次のとおりであった。転移温度:C 62.3 N 145.6 I.TNI=118.3℃;η=28.7mPa・s;Δn=0.100;Δε=−1.0.
【0154】
[比較例1]
物性の比較
比較化合物として、化合物(J)を選び、合成した。この化合物は、特開昭57−165328の実施例(25)に記載の化合物であり、本発明の化合物に類似しているからである。
【0155】

【0156】
H−NMR(δppm;CDCl):7.09(s,4H)、2.43−2.37(m,1H)、2.31(s,3H)、1.91−1.88(m,2H)、1.84−1.82(m,2H)、1.77−1.72(m,4H)、1.44−1.25(m,6H)、1.16−0.96(m,7H)、0.89−0.82(m,5H).
【0157】
比較化合物(J)の物性は、次のとおりであった。転移温度:C 64.6 S 104.8 N 178.5 I.上限温度(TNI)=155.9℃;粘度(η)=15.0mPa・s;光学異方性(Δn)=0.107;誘電率異方性(Δε)=0.3.
【0158】

【0159】
合成例1で得られた化合物(No.109)と比較化合物(J)の物性を表3にまとめた。低温相溶性の測定は、上記の測定(3)に従って行った。試料は、85重量%の母液晶(B)と15重量%の化合物から調製した。この試料を−20℃の冷凍庫で保管し、ネマチック相を維持した時間を測定した。表3から、化合物(No.109)は、比較化合物よりも低温相溶性の点で優れていることが分かった。さらに弾性定数を上記の測定(14b)にしたがって測定した。化合物(No.109)は、弾性定数比(K33/K11)が大きい点でも優れていた。
【0160】
[比較例2]
物性の比較
比較化合物として、化合物(K)を合成した。この化合物は、特開平08−48978の実施例7に記載の化合物(CCP−31FF)であり、本発明の化合物に類似しているからである。
【0161】

【0162】
H−NMR(δppm;CDCl):6.86−6.81(m,2H)、2.80−2.74(m,1H)、2.25(d,3H)、1.88−1.82(m,4H)、1.77−1.71(m,4H)、1.46−1.39(m,2H)、1.34−1.26(m,2H)、1.20−0.93(m,9H)、0.87−0.82(m,5H).
【0163】
比較化合物(K)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 67.1 N 146.4 I.
上限温度(TNI)=123.0℃;粘度(η)=27.4mPa・s;光学異方性(Δn)=0.107;誘電率異方性(Δε)=−2.9.
【0164】

【0165】
比較するために、化合物(K)を選んだ。合成例1で得られた化合物(No.109)と比較化合物(K)は、2つのフッ素を有しているという点で共通するからである。弾性定数(K33およびK11)の測定するために、15重量%の化合物(No.109)と85重量%の母液晶(B)とから試料を調製した。弾性定数は上記の測定(14b)にしたがって測定した。回転粘度(γ1)は、下記の母液晶(D)92重量%に8重量%の化合物(No.109)から試料を調製した。回転粘度は、上記の測定(12a)にしたがって測定した。結果を表4にまとめた。化合物(No.109)は、弾性定数比が大きい点で優れていることが分かった。化合物(No.109)は、回転粘度が小さい点でも優れていることが分かった。
【0166】

【0167】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)は、上に記載した「2.化合物(1)の合成」および「合成例」に従って合成する。このような化合物の例として、以下に示す化合物(No.1)から(No.216)を挙げることができる。
【0168】

【0169】

【0170】

【0171】

【0172】

【0173】

【0174】

【0175】

【0176】

【0177】
2.組成物の実施例
実施例により本発明の組成物を詳細に説明する。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。使用例における化合物は、下記の表5の定義に基づいて記号により表した。表5において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号化された化合物の後にあるかっこ内の番号は、化合物が属する化学式を表す。(−)の記号は、化合物(2)から(15)とは異なる、その他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を(外挿することなく)そのまま記載した。
【0178】

【0179】
[使用例1]
3−H(3F2)HB−1 (No.109) 5%
2−HB−C (5−1) 5%
3−HB−C (5−1) 12%
3−HB−O2 (13−5) 15%
2−BTB−1 (13−10) 3%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−1 (14−1) 8%
3−HHB−O1 (14−1) 5%
3−HHB−3 (14−1) 14%
3−HHEB−F (3−10) 2%
5−HHEB−F (3−10) 2%
2−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F)−F (3−2) 6%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 5%
NI=95.3℃;η=16.3mPa・s;Δn=0.098;Δε=4.5.
【0180】
[使用例2]
V−H(3F2)HB−1 (No.119) 4%
3−HB−CL (2−2) 13%
3−HH−4 (13−1) 10%
3−HB−O2 (13−5) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 3%
3−HBB(F,F)−F (3−3) 29%
5−HBB(F,F)−F (3−3) 24%
5−HBB(F)B−2 (15−5) 5%
5−HBB(F)B−3 (15−5) 5%
【0181】
[使用例3]
3−H(3F2)HB−2V (No.115) 5%
7−HB(F,F)−F (2−4) 3%
3−HB−O2 (13−5) 7%
2−HHB(F)−F (3−2) 10%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
5−HHB(F)−F (3−2) 10%
2−HBB(F)−F (3−23) 9%
3−HBB(F)−F (3−23) 10%
5−HBB(F)−F (3−23) 10%
2−HBB−F (3−22) 4%
3−HBB−F (3−22) 4%
5−HBB−F (3−22) 3%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 5%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 10%
【0182】
[使用例4]
3−H(3F2)HB−1 (No.109) 4%
5−HB−CL (2−2) 16%
3−HH−4 (13−1) 11%
3−HH−5 (13−1) 4%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
4−HHB−CL (3−1) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
4−HHB(F)−F (3−2) 9%
5−HHB(F)−F (3−2) 9%
7−HHB(F)−F (3−2) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 4%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
4−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
NI=111.0℃;η=19.2mPa・s;Δn=0.089;Δε=3.9.
【0183】
[使用例5]
V−H(3F2)HB−1 (No.119) 5%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 7%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 7%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 21%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (3−27) 8%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHEBB−F (4−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
1O1−HBBH−4 (15−1) 3%
1O1−HBBH−5 (15−1) 4%
【0184】
[使用例6]
3−H(3F2)HB−2V (No.115) 5%
5−HB−F (2−2) 12%
6−HB−F (2−2) 9%
7−HB−F (2−2) 7%
2−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−HHB−OCF3 (3−1) 6%
4−HHB−OCF3 (3−1) 7%
5−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (3−4) 3%
5−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (3−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (3−3) 4%
3−HH2B(F)−F (3−5) 3%
3−HBB(F)−F (3−2) 10%
5−HBB(F)−F (3−2) 10%
5−HBBH−3 (15−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (15−2) 3%
【0185】
[使用例7]
3−H(3F2)HB−1 (No.109) 4%
5−HB−CL (2−2) 11%
3−HH−4 (13−1) 8%
3−HHB−1 (14−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 19%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 14%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 8%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 4%
5−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HBEB(F,F−F (3−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 5%
NI=80.6℃;η=22.0mPa・s;Δn=0.102;Δε=8.4.
【0186】
[使用例8]
V−H(3F2)HB−1 (No.119) 5%
3−HB−CL (2−2) 6%
5−HB−CL (2−2) 4%
3−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (3−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (3−19) 15%
V−HHB(F)−F (3−2) 3%
3−HHB(F)−F (3−2) 4%
5−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (3−21) 7%
2−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−H2BB(F)−F (3−26) 8%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
【0187】
[使用例9]
3−H(3F2)HB−2V (No.115) 3%
5−HB−CL (2−2) 16%
7−HB(F,F)−F (2−4) 5%
3−HH−4 (13−1) 9%
3−HH−5 (13−1) 5%
3−HB−O2 (13−5) 14%
3−HHB−1 (14−1) 8%
3−HHB−O1 (14−1) 4%
2−HHB(F)−F (3−2) 6%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 6%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 6%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
【0188】
[使用例10]
3−H(3F2)HB−1 (No.109) 5%
5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 7%
3−HH−4 (13−1) 9%
3−HH−5 (13−1) 10%
3−HB−O2 (13−5) 13%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 8%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
3−GHB(F,F)−F (3−109) 5%
4−GHB(F,F)−F (3−109) 6%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 5%
2−HHB(F,F)−F (3−3) 5%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 5%
NI=72.2℃;η=18.0mPa・s;Δn=0.068;Δε=5.3.
【0189】
[使用例11]
V−H(3F2)HB−1 (No.119) 3%
3−HB−O1 (13−5) 12%
3−HH−4 (13−1) 5%
3−HB−O2 (13−5) 4%
3−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 10%
3−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 11%
5−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 12%
3−HHB−1 (14−1) 7%
【0190】
[使用例12]
3−H(3F2)HB−2V (No.115) 7%
2−HH−5 (13−1) 3%
3−HH−4 (13−1) 15%
3−HH−5 (13−1) 3%
3−HB−O2 (13−5) 12%
3−H2B(2F,3F)−O2 (6−4) 13%
5−H2B(2F,3F)−O2 (6−4) 14%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (7−1) 5%
2−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 8%
3−HHB−1 (14−1) 3%
3−HHB−3 (14−1) 3%
3−HHB−O1 (14−1) 3%
【0191】
[使用例13]
3−H(3F2)HB−1 (No.109) 6%
2−HH−3 (13−1) 19%
3−HH−4 (13−1) 9%
1−BB−3 (13−8) 8%
3−HB−O2 (13−5) 2%
3−BB(2F,3F)−O2 (6−3) 8%
5−BB(2F,3F)−O2 (6−3) 6%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (7−5) 13%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (7−5) 19%
3−HHB−1 (14−1) 5%
3−HHB−O1 (14−1) 3%
2−BBB(2F)−5 (14−8) 2%
NI=77.6℃;η=16.6mPa・s;Δn=0.097;Δε=−3.0.
【0192】
[使用例14]
V−H(3F2)HB−1 (No.119) 5%
2−HH−3 (13−1) 16%
3−HH−4 (13−1) 5%
7−HB−1 (13−5) 5%
5−HB−O2 (13−5) 8%
3−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 17%
5−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 16%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (7−1) 3%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (10−6) 5%
5−HBB(F)B−2 (15−5) 10%
5−HBB(F)B−3 (15−5) 10%
【0193】
[使用例15]
3−H(3F2)HB−2V (No.115) 4%
1−BB−3 (13−8) 10%
3−HH−V (13−1) 29%
3−BB(2F,3F)−O2 (6−3) 9%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (7−5) 20%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (7−5) 14%
3−HHB−1 (14−1) 8%
2−BBB(2F)−5 (14−8) 6%
【0194】
[使用例16]
3−H(3F2)HB−1 (No.109) 7%
2−HH−3 (13−1) 6%
3−HH−V1 (13−1) 10%
1V2−HH−1 (13−1) 8%
1V2−HH−3 (13−1) 7%
3−BB(2F,3F)−O2 (6−3) 8%
5−BB(2F,3F)−O2 (6−3) 4%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (7−5) 8%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (7−5) 19%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (7−3) 7%
3−HHB−1 (14−1) 3%
3−HHB−3 (14−1) 2%
2−BB(2F,3F)B−3 (8−1) 11%
NI=92.0℃;η=22.0mPa・s;Δn=0.109;Δε=−3.8.
【0195】
[使用例17]
V−H(3F2)HB−1 (No.119) 5%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 6%
3−HB−C (5−1) 16%
2−BTB−1 (13−10) 10%
5−HH−VFF (13−1) 28%
3−HHB−1 (14−1) 4%
VFF−HHB−1 (14−1) 8%
VFF2−HHB−1 (14−1) 10%
3−H2BTB−2 (14−17) 5%
3−H2BTB−3 (14−17) 4%
3−H2BTB−4 (14−17) 4%
【0196】
[使用例18]
3−H(3F2)HB−2V (No.115) 3%
5−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−40) 5%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−47) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−47) 6%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−47) 3%
3−HH−V (13−1) 40%
3−HH−V1 (13−1) 7%
3−HHEH−5 (14−13) 3%
3−HHB−1 (14−1) 3%
V−HHB−1 (14−1) 5%
V2−BB(F)B−1 (14−6) 5%
1V2−BB−F (2−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−97) 11%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
【0197】
[使用例19]
3−H(3F2)HB−1 (No.109) 5%
3−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−57) 4%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−47) 5%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−47) 7%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (4−47) 3%
3−HH−V (13−1) 41%
3−HH−V1 (13−1) 6%
3−HHEH−5 (14−13) 3%
3−HHB−1 (14−1) 3%
V−HHB−1 (14−1) 3%
V2−BB(F)B−1 (14−6) 5%
1V2−BB−F (2−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−97) 5%
3−GB(F,F)XB(F,F)−F (3−113) 4%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
NI=82.5℃;η=14.1mPa・s;Δn=0.105;Δε=7.1.
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の液晶性化合物は、良好な物性を有する。この化合物を含有する液晶組成物は、パソコン、テレビなどの液晶表示素子に広く利用できる。