【実施例1】
【0013】
本実施例では、電気特性測定装置及び電気特性測定方法の例を説明する。
図1は、本実施例による電気特性測定装置100の全体の構成を示すブロック図である。本実施例による電気特性測定装置100は、ステージ部110、表面特性計測部120、電気特性測定部130、及び処理制御部140を備えて構成されている。
【0014】
ステージ部110は、試料ステージ1とステージ駆動機構3と直流電源4及び除電装置5を備えている。試料ステージ1は、試料2を搭載し、ステージ駆動機構3で駆動されてX−Y平面内と、X−Y平面に垂直なZ方向及びX−Y平面内で回転するθ方向に移動する。試料ステージ1と試料2とは、金属などの導電性材料で形成されており、直流電源4により直流電圧が印加される。直流電源4に除電装置5を接続することにより、直流電源4による試料ステージ1及び試料2への電圧の印加を停止したときに、試料ステージ1及び試料2は除電される。
【0015】
表面特性計測部120は、先端の自由端部にプローブ7が形成された支持板6と、支持板6に必要な電圧を印加する電源8と、支持板6のたわみ量を検出するたわみ量検出部9と、支持板6のZ方向の高さを設定するZ軸駆動部51を備えている。電源8は、直流電源4の負極側と支持板6との間に接続されている。Z軸駆動部51は、例えばピエゾ素子で構成され、図示していない電源からピエゾ素子に印加する電圧で支持板6のZ方向の位置(高さ)を設定する。
【0016】
表面特性計測部120は、試料2の表面の特性を計測するときに、まず、試料2を搭載した試料ステージ1に直流電源4から直流電圧を印加し、支持板6に電源8から所定の電圧を印加する。
【0017】
この時、直流電圧を印加された試料2の表面は必ずしも均一な電界が発生しているわけではなく、試料2の内部の状態に応じて表面の電界に分布(電位分布)が生じている場合がある。この表面電界の分布を計測することにより、試料2の内部の状態を予測することができる。表面特性計測部120は、表面電界の分布(電位分布)を計測して、試料2の内部の情報を得るものである。
【0018】
支持板6に所定の電圧を印加した状態で、Z軸駆動部51で支持板6の高さを調整してプローブ7の先端と試料2の表面の間隔を所定の量に設定する。この状態で、プローブ7は、試料表面の電位に応じた引力または斥力を受けている。次に、ステージ駆動機構3で試料ステージ1をX方向(Y方向)に一定の速度で駆動すると、プローブ7は、試料表面の電位の変化に応じて受ける引力または斥力が変化して変位する。このプローブ7の変位に伴ってプローブ7が取り付けられた支持板6の先端部分がたわむ。この支持板6のたわみによる変位を、たわみ量検出部9で検出する。
【0019】
たわみ量検出部9の機構は、特に限定されるものではない。例えば、表面特性計測部120をレーザ光源と受光素子とを備えて構成し、支持板6の試料2とは反対の面にレーザ光源から発射したレーザを照射して支持板6で反射されたレーザを受光素子で検出する。
【0020】
受光素子として、例えば4分割受光素子を用いた場合、各受光素子間の受光量の差が支持板6で反射されたレーザの受光素子上での位置ずれとして検出され、たわみ量検出部9から制御部35に出力される。制御部35では、たわみ量検出部9からの出力値(4分割受光素子の各受光素子間の出力の差)がゼロとなるように、Z軸駆動部51を制御する。また、このZ軸駆動部51を制御する信号はデータ処理部32に送られ、プローブ7の変位量のデータとして処理される。
【0021】
電気特性測定部130は、先端部に電極10を取り付けた支持板21と、支持板21のZ方向の位置(高さ)を設定するZ軸駆動部22と、Z軸駆動部22を載置してX方向に移動可能なXテーブル221、先端部に電極11を取り付けた支持板23と、支持板23のZ方向の位置(高さ)を設定するZ軸駆動部24と、Z軸駆動部24を載置してX方向に移動可能なXテーブル231を備えている。また、電気特性測定部130は、直流電源12と電流計13、演算処理部31、除電装置15を備えている。
【0022】
直流電源12と電流計13とは、電極10と11との間に接続されており、電極10と11とが試料ステージ1に搭載された試料2に接触すると、閉ループが形成されて、直流電源12により電極10と11との間に電気が流れて、電流計13で検出され、その検出した電流のデータを用いて演算処理部31で演算がおこなわれる。
【0023】
処理制御部140は、データ処理部32と、入出力部33、制御部35を備えている。データ処理部32は、演算処理部31からの出力とたわみ量検出部9からの出力及び制御部35からの試料ステージ1の位置情報を受けて、試料ステージ1に搭載された試料2の電気的特性の分布及び試料表面の特性分布(例えば、電界分布)情報を算出し、入出力部33に出力する。
【0024】
入出力部33は、表示画面34を備え、データ処理部32から出力された試料2の電気的特性の分布及び試料表面の形状情報を表示画面34に表示する。
【0025】
制御部35は、ステージ駆動機構3を制御して、試料ステージ1に載置された試料2を所定の位置に移動させる。また、Xテーブル221とXテーブル231とを制御して、電極10と11との間隔を所望の間隔に設定する。更に、Z軸駆動部51、Z軸駆動部22及びZ軸駆動部24を制御して、プローブ7、電極10及び電極11のZ軸方向の位置(高さ)を調整する。
【0026】
次に、
図1で説明した電気特性測定装置100を用いて、試料2の電気特性を測定する一連の動作について、
図2A及び
図2Bのフロー図を用いて説明する。
【0027】
まず、試料ステージ1に試料2を載置し(S201)、この状態で電気特性測定部130のXテーブル221とXテーブル231とをX方向に駆動して、電極10及び電極11を試料2の検査すべき領域のX方向両端部に位置させる(S202)。この時、ステージ駆動機構3を制御して試料ステージ1をY方向に駆動して電極10及び電極11が試料2のY方向の端部上に位置させる。次に、直流電源12を作動させた状態で、Z軸駆動部22及びZ軸駆動部24を制御して電極10及び電極11を試料2に接触させる(S203)。電極10及び電極11を試料2に接触させた状態で電流計13を流れる電流値を演算処理部31で読取る(S204)。
【0028】
次に、Z軸駆動部22及びZ軸駆動部24を制御して電極10及び電極11を上昇させて試料2から離れさせる(S205)。この状態で、今回計測した位置が試料2のY方向の端部に達したかをチェックし(S206)、試料2のY方向の端部に達していない場合には(S206でNOの場合)、ステージ駆動機構3を制御して試料ステージ1をY方向に駆動して試料2を所定のピッチY方向に移動させ(S207)、S203からの処理を繰返す。
【0029】
次に、電極10及び電極11がY方向の端部まで達した場合(S206でYESの場合)には、試料2のX方向とY方向について全領域測定したかをチェックする(S208)。試料2の全領域の測定が完了していない場合(S208でNOの場合)には、ステージ駆動機構3を制御して試料ステージ1をθ方向に駆動して試料2を90°回転させ(S209),S202からの動作を繰り返す。これにより、試料2の検査領域の電流値について、マトリックス状のデータが有られる。
【0030】
試料2の全領域の測定が完了した場合(S208でYESの場合)には、検出した電流値に異常がないかをデータ処理部32でチェックし(S210)、異常が見つからなければ(S210でNOの場合)処理を終了する。
【0031】
一方、検出した電流値に異常があった場合には(S210でYESの場合)、ステージ駆動機構3を制御と共に電気特性測定部130のXテーブル221とXテーブル231とをX方向に駆動して、電極10及び電極11がS210で検出した電流値異常領域のY方向の端部で、かつX方向の両端部上に位置させる(S211)。
【0032】
次に、直流電源12を作動させた状態で、Z軸駆動部22及びZ軸駆動部24を制御して電極10及び電極11を試料2に接触させる(S212)。電極10及び電極11を試料2に接触させた状態で電流計13を流れる電流値を演算処理部31で読取る(S213)。
【0033】
次に、Z軸駆動部22及びZ軸駆動部24を制御して電極10及び電極11を上昇させて試料2から離れさせる(S214)。この状態で、今回計測した位置が試料2の電流値異常領域のY方向の端部に達したかをチェックし(S215)、電流値異常領域のY方向の端部に達していない場合には(S215でNOの場合)、ステージ駆動機構3を制御して試料ステージ1をY方向に駆動して試料2を所定のピッチ(S207におけるピッチと比べて微小なピッチ)Y方向に移動させ(S216)、S212からの処理を繰返す。
【0034】
次に、電極10及び電極11が電流値異常領域のY方向の端部まで達した場合(S215でYESの場合)には、試料2の電流値異常領域のX方向とY方向について全領域測定したかをチェックする(S217)。試料2の全領域の測定が完了していない場合(S217でNOの場合)には、ステージ駆動機構3を制御して試料ステージ1をθ方向に駆動して試料2を90°回転させ(S218),S211からの動作を繰り返す。
【0035】
試料2の全領域の測定が完了した場合(S217でYESの場合)には、ステージ駆動機構3を制御して電流値異常領域がプローブ7の直下に来るように試料2を移動させ(S219)、直流電源4を作動させて試料ステージ1と試料2に直流電圧を印加し、プローブ7を取り付けた支持板6に電源8から電圧を印加する(S220)。試料2と支持板6にそれぞれ電圧を印加した状態で、Z軸駆動部51を駆動してプローブ7が試料2の表面から所定の高さになるように設定する(S221)。
【0036】
次に、この状態でステージ駆動機構3を制御して試料ステージ1をX方向の走査とY方向のステップ送りとを交互に繰返して、プローブ7で試料2の電流値異常領域を全面走査する(S222)。データ処理部32において、プローブ7で試料2の電流値異常領域を全面走査したときに、たわみ量検出部9で検出した支持板6のたわみを補正するために垂直方向位置制御回路36からZ軸駆動部51に出力した値と、プローブ7のX−Y面内の位置情報に基づいて電流値異常領域の表面画像を生成する(S223)。
【0037】
最後に、生成した電流値異常領域の表面画像と、電流値のプロファイルを入出力部33の表示画面34に表示して処理を終了する(S224)。
図3に、出力画面の一例を示す。表示画面34には、電流値異常領域の表面画像341と、表面画像341上で指定したライン上の電流値のプロファイル342〜344が表示される。
【0038】
なお、上記した実施例においては、
図2AのS202からS208までのステップで、電流値の異常領域を検出し、
図2AのS211から
図2BのS224で電流値の異常領域を詳細に計測して表面の画像を得る方法について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、S202からS208までのステップで、S207におけるY方向の1ピッチの移動量を大きくして電流値の異常領域を検出し、この検出した電流値の異常領域について更に、S207におけるY方向の1ピッチの移動量を狭くして電流値の異常領域を狭めることを繰返して、
図2AのS211から
図2BのS224で詳細に計測して表面の画像の領域を絞り込むようにしてもよい。
【0039】
本実施例によれば、電流値異常領域の表面画像と電流値のプロファイルとを同時に確認することができるので、試料の電気的特性に関する複数の情報を可視化して同時に表示することができるようになった。
【0040】
また、本実施例で得られた試料と電極との間に流れる電流値に関するデータを演算処理して測定することで,得られた電気的情報から試料表面の抵抗情報を得ることもできる。
【実施例6】
【0045】
従来の透明導電膜付き基材の電気特性を評価した例を示す。
例えば、特開2015−201023号公報に示されている、従来の透明導電膜付き基材で説明する。
【0046】
図8に示すように、易接着層830付の透明基材840と、易接着層830上に形成された、金属ナノワイヤ860をバインダー部850に含有してなる透明電極層820と、この透明電極層820の上に形成された、着色層870とを有する透明導電膜付き基材810で構成されている。
【0047】
この透明導電膜付き基材810を実施例4に示すように、プローブ7で検出された画像を基に、電極10、11を試料2に刺突させる。刺突後、直流電源12により電圧を電極10、11に印加し、電流計13で電流値を計測し、演算処理部31で、抵抗や電気容量等、電気特性値を算出した。
【0048】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0049】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0050】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。