特許第6561983号(P6561983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6561983-熱線吸収ガラス板およびその製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561983
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】熱線吸収ガラス板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/08 20060101AFI20190808BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C03C4/08
   C03C3/087
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-515200(P2016-515200)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2015062379
(87)【国際公開番号】WO2015163411
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-89454(P2014-89454)
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 勇也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕己
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−132709(JP,A)
【文献】 特表平4−502304(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102176(WO,A1)
【文献】 特開2005−162537(JP,A)
【文献】 特開平9−208254(JP,A)
【文献】 特開2009−242131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、スズおよび硫黄の各元素を含み、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量が0.3%以上で、SnOに換算した全錫量が0.4%未満、全錫量とSOに換算した全硫黄量の割合(SnO/SO)が0.2〜100であり、Feに換算した全鉄中のFeに換算した2価の鉄の割合が55%以上である熱線吸収ガラス板。
【請求項2】
JIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)とJIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teの比Tv/Teと、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量t−Feが、ガラス板の4mm厚さ換算値で次式の関係にある請求項1に記載の熱線吸収ガラス板。
t−Feが0.30%以上0.351%未満の時、Tv/Te>1.70、
t−Feが0.351%以上0.559%未満の時、
Tv/Te>1.252×(t−Fe)+1.260、
t−Feが0.559%以上の時、Tv/Te>1.960。
【請求項3】
JIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)とJIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teの比Tv/Teと、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量t−Feが、ガラス板の4mm厚さ換算値で次式の関係にある請求項1に記載の熱線吸収ガラス板。
t−Feが0.30%以上0.351%未満の時、Tv/Te>1.70、
t−Feが0.351%以上0.575%未満の時、
Tv/Te>1.252×(t−Fe)+1.260、
t−Feが0.575%以上の時、Tv/Te>1.980。
【請求項4】
JIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)とJIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teの比Tv/Teと、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量t−Feが、ガラス板の4mm厚さ換算値で次式の関係にある請求項1に記載の熱線吸収ガラス板。
t−Feが0.30%以上0.351%未満の時、Tv/Te>1.70、
t−Feが0.351%以上の時、
Tv/Te>1.252×(t−Fe)+1.260。
【請求項5】
JIS Z 8701(1982)規定の透過光の主波長Dwが、ガラス板の4mm厚さ換算値で492nm未満である請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項6】
JIS Z 8701(1982)規定の透過光の主波長Dwが、ガラス板の4mm厚さ換算値で492nm以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項7】
JIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)とJIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teの比Tv/Teが、ガラス板の4mm厚さ換算値で2.0以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項8】
JIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teがガラス板の4mm厚さ換算値で50%以下で、かつJIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)がガラス板の4mm厚さ換算値で60%以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項9】
酸化物基準の質量百分率表示で、SOに換算した全硫黄量が0.005%以上、0.1%以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項10】
酸化物基準の質量百分率表示で、SOに換算した全硫黄量が0.005%以上、0.02%未満である請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項11】
SnO/SOとFe−redoxの比(SnO/SO)/Fe−redoxが0.0025〜5である請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項12】
酸化物基準の質量百分率表示で、下記の組成を含有するソーダライムシリカガラスである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
SiO :65〜75%、
Al :3%を超え、6%以下、
MgO :0%以上、2%未満、
CaO :7〜10%、
NaO :5〜18%、
O :0〜5%、
Feに換算した全鉄 :0.3〜0.9%、
SnOに換算した全スズ :0.02〜0.3%。
【請求項13】
TiOを実質的に含まない請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項14】
TiOを実質的に含み、酸化物基準の質量百分率表示で、TiOの含有量が3%以下である請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項15】
CeOを実質的に含まない請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項16】
CeOを実質的に含み、酸化物基準の質量百分率表示で、CeOの含有量が3%以下である請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項17】
β−OHが0.15mm−1以上である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板。
【請求項18】
ガラス原料を溶融し、成形するソーダライムシリカガラスの製造において、成形後の該ガラスが、請求項1〜17のいずれか一項に記載の熱線吸収ガラス板を得る、熱線吸収ガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線吸収ガラス板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱線吸収ガラス板には、日射透過率が低いこと、および、可視光透過率が高いことが求められる。すなわち、JIS R 3106(1998)規定の日射透過率(以下、Teとも記す。本願では4mm厚さ換算とする。)と、JIS R 3106(1998)規定の可視光透過率(A光源、2度視野)(以下、Tvとも記す。本願では4mm厚さ換算とする。)の比Tv/Teが高いことが求められている。
一般的に、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量(以下、3価の鉄量と区別するためにt−Feとも記す。)が多いと日射透過率が低くなるためTv/Teの値を高くしやすくなるが、同時に可視光透過率も低くなる。全鉄量が少なければ可視光透過率は高くなるが日射透過率も高くなり、Tv/Teの値は低くなる。
熱線吸収ガラス板としては、たとえば、特許文献1が提案されている。すなわち、Redoxが0.38〜0.60であり、酸化物基準の質量百分率表示で、SO:0.005〜0.18%を含み、多硫化物を実質的に含まないソーダライムシリカガラスからなり、着色成分として、質量百分率表示または質量百万分率表示で、I)〜V)のいずれかを含む熱線吸収ガラス板である。
I)Feに換算した全鉄:0.6〜4%、
FeO :0.23〜2.4%、
CoO :40〜500ppm、
Se :5〜70ppm、
Cr :15〜800ppm、
TiO :0.02〜1%。
II)Feに換算した全鉄:0.4〜1%、
CoO :4〜40ppm、
Cr :0〜100ppm。
III)Feに換算した全鉄:0.9〜2%、
FeO :0.34〜1.2%、
CoO :90〜250ppm、
Se :0〜12ppm、
TiO :0〜0.9%。
IV)Feに換算した全鉄:0.7〜2.2%、
FeO :0.266〜1.32%、
Se :3〜100ppm、
CoO :0〜100ppm。
V)Feに換算した全鉄:0.9〜2%、
FeO :0.34〜1.2%、
CoO :40〜150ppm、
Cr :250〜800ppm、
TiO :0.1〜1%。
また、特許文献2には、日射透過率、4mm厚さ換算値で42%以下であり、可視光透過率(A光源2度視野)が4mm厚さ換算値で70%以上であり、透過光の主波長が、492〜520nmであり、酸化物基準の質量百分率表示で、実質的に下記の組成のソーダライムシリカガラスからなる。SiO:65〜75%、Al:3%を超え、6%以下、MgO:0%以上2%未満、CaO:7〜10%、Feに換算した全鉄:0.45〜0.65%、TiO:0.2〜0.8%、CoO、Cr、VおよびMnOからなる群から選ばれるいずれの1種も実質的に含まず、全鉄量をFeに換算した全鉄質量と2価のFeO質量の割合(Redox)が42%を超え、60%以下である熱線吸収ガラス板が提案されている。
また、特許文献3には、鉄、スズおよび硫黄の各元素を含み、酸化物基準の質量百分率表示でSOに換算した全硫黄:0.025%以上を含み、Feに換算した全鉄中のFeに換算した2価の鉄の割合(Redox)が、質量百分率表示で60〜80%であり、全スズ中の2価のスズの割合が、モル百分率表示で0.1%以上であるアルカリ含有シリカガラスからなる着色ガラス板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6673730号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/102176号
【特許文献3】国際公開第2011/093284号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱線吸収ガラス板の中には、Teが低くかつTvが高いものもあるが、全鉄量が少なければTv/Teの値は低く、また、全鉄量が多ければ日射透過率も低くなり、Tv/Teの値が高くはなるが、全鉄量に対するTv/Teの値としては充分ではなかった。
特許文献2の熱線吸収ガラスの中でRedoxの高いガラスに関しては、Tv/Teの値が高くなるものもあるが、Redoxが高いためにSOを含むとアンバー発色が生じることがある。
特許文献3のガラス板は、スズを含有しているためアンバー発色を抑えることはできるが、全鉄量が少ないためにTeが高かった。
本発明は、アンバー発色を抑えた低い日射透過率および高い可視光透過率を同時に満足する熱線吸収ガラス板、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱線吸収ガラス板は、鉄、スズおよび硫黄の各元素を含み、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量が0.3%以上で、SnOに換算した全錫量が0.4%未満、全錫量とSOに換算した全硫黄量の割合(SnO/SO)が0.2〜100であることを特徴とする。
本発明の熱線吸収ガラス板は、JIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)とJIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teの比Tv/Teと、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量t−Feが、ガラス板の4mm厚さ換算値で次式の関係であってよい。
t−Feが0.30%以上0.351%未満の時、Tv/Te>1.70、
t−Feが0.351%以上0.559%未満の時、
Tv/Te>1.252×(t−Fe)+1.260、
t−Feが0.559%以上の時、Tv/Te>1.960。
【0006】
本発明の熱線吸収ガラス板は、青色のガラス板を得るためには、JIS Z 8701(1982)規定の透過光の主波長Dwが、ガラス板の4mm厚さ換算値で492nm未満であってよい。
【0007】
本発明の熱線吸収ガラス板は、緑色のガラス板を得るためには、JIS Z 8701(1982)規定の透過光の主波長Dwが、ガラス板の4mm厚さ換算値で492nm以上であってよい。
【0008】
本発明の熱線吸収ガラス板は、JIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)とJIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teの比Tv/Teが、ガラス板の4mm厚さ換算値で2.0以上であってよい。
【0009】
本発明の熱線吸収ガラス板は、JIS R 3106(1998)規定の日射透過率Teがガラス板の4mm厚さ換算値で50%以下で、かつJIS R 3106(1998)規定の可視光透過率Tv(A光源、2度視野)がガラス板の4mm厚さ換算値で60%以上であってよい。
【0010】
本発明の熱線吸収ガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示で、SOに換算した全硫黄量が0.005%以上、0.1%以下であってよい。
【0011】
本発明の熱線吸収ガラス板は、Feに換算した全鉄中のFeに換算した2価の鉄の割合が55%以上であってよい。
【0012】
本発明の熱線吸収ガラス板は、SnO/SOとFe−redoxの比(SnO/SO)/Fe−redoxが0.0025〜5であってよい。
【0013】
本発明の熱線吸収ガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示で、下記の組成を含有するソーダライムシリカガラスであってよい。
SiO :65〜75%、
Al :3%を超え、6%以下、
MgO :0%以上、2%未満、
CaO :7〜10%、
NaO :5〜18%、
O :0〜5%、
Feに換算した全鉄 :0.3〜0.9%、
SnOに換算した全スズ :0.02〜0.3%。
【0014】
本発明の熱線吸収ガラス板は、青色や緑色のガラス板を得るためには、TiOを実質的に含まなくてよい。実質的に含まないとは、不可避的不純物を除き含有しないことをいう(以下、同じ)。
【0015】
本発明の熱線吸収ガラス板は、紫外線透過率を下げ、緑色や黄色のガラス板を得るためには、実質的にTiOを含み、酸化物基準の質量百分率表示で、TiOの含有量が3%以下であってよい。
【0016】
本発明の熱線吸収ガラス板は、コストを低く抑えるためには、CeOを実質的に含まなくてよい。
【0017】
本発明の熱線吸収ガラス板は、紫外線透過率を下げるためには、実質的にCeOを含み、酸化物基準の質量百分率表示で、CeOの含有量が3%以下であってよい。
【0018】
本発明の熱線吸収ガラス板は、β−OHが0.15mm−1以上であってよい。
【0019】
本発明の熱線吸収ガラス板の製造方法は、ガラス原料を溶融し、成形するソーダライムシリカガラスの製造において、成形後の該ガラスが、鉄、スズおよび硫黄の各元素を含み、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量が0.3%以上で、SnOに換算した全錫量が0.4%未満、全錫量とSOに換算した全硫黄量の割合(SnO/SO)が0.2〜100である熱線吸収ガラス板を得ることを特徴とする。
上記した数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の熱線吸収ガラス板は、低い日射透過率および高い可視光透過率を同時に満足する。特に、本発明によれば、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量t−Feに対して、従来よりも可視光透過率の比Tv/Teが高い熱線吸収ガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】例1〜29のt−FeとTv/Teの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の一実施形態について説明する。
本発明の一実施形態の熱線吸収ガラス板は、鉄、スズおよび硫黄の各元素を含み、Feに換算した全鉄量、および、SnOに換算した全錫量、および全錫量とSOに換算した全硫黄量の割合(SnO/SO)を調整することによって、Tv/Teと、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量t−Feが、ガラス板の4mm厚さ換算値で次式の関係を満足することに特徴がある。
t−Feが0.30%以上0.351%未満の時、Tv/Te>1.70、
t−Feが0.351%以上0.559%未満の時、
Tv/Te>1.252×(t−Fe)+1.260、
t−Feが0.559%以上の時、Tv/Te>1.960。
【0023】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量が0.3%以上である。Feに換算した全鉄の含有量が0.3%以上であれば、Teを低く抑えることができる。Feに換算した全鉄量の増加に伴いTeが低くなるがTvも低下する。Feに換算した全鉄量は、酸化物基準の質量百分率表示で0.3〜0.9%がより好ましく、0.4〜0.8%がさらに好ましく、0.5〜0.75%が特に好ましく、0.60〜0.70%が最も好ましい。
【0024】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、スズを含み、酸化物基準の質量百分率表示で、SnOに換算した全錫量が0.4%未満である。SnOは、鉄や硫黄の酸化還元反応の緩衝材として作用し、アンバー発色を抑える。SnOに換算した全錫量が0.4%未満であれば、SnOの揮散が少なく、コストを低く抑えることができる。SnOに換算した全錫量は、酸化物基準の質量百分率表示で0.02〜0.3%が好ましく、0.05%〜0.25%がより好ましく、0.09〜0.23%がさらに好ましく、0.15〜0.22%が特に好ましい。
【0025】
本実施形態の熱線吸収ガラス板におけるSOに換算した全硫黄の含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0.005%以上、0.1%以下であることが好ましい。SOに換算した全硫黄の含有量が0.005%以上であれば、ガラス溶解時の清澄効果が良く、泡残りが発生しない。SOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で0.008%以上がより好ましく、0.01%以上がさらに好ましく、0.013%以上が特に好ましい。一方で、SOが多くなりすぎるとアンバー発色によりTvが低下する。SOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で0.05%以下がより好ましく、0.03%以下がさらに好ましく、0.02%未満が特に好ましく、0.016%未満が最も好ましい。
【0026】
本実施形態の熱線吸収ガラス板における全錫量と全硫黄量の割合(SnO/SO)は0.2〜100である。全錫量と全硫黄量の割合(SnO/SO)が0.2以上であれば、アンバー着色の発生を抑えることができる。100以下であれば、揮散が少なく、コストを低く抑えることができる。SnO/SOは1〜50がより好ましく、3〜30がさらに好ましく、5〜20が特に好ましい。
【0027】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示でMgOが4.5%以下であることが好ましい。MgOはガラス原料の溶融を促進し、耐候性を向上させる成分である。
MgOの含有量が4.5%以下であれば、失透しにくくなる。また、MgOの含有量が4.5%以下の熱線吸収ガラス板は、MgOの含有量が4.5%超の熱線吸収ガラス板と同一のTvで比較した場合、Teが低い。したがって、MgOの含有量が4.5%以下であれば、可視光透過性を損なわずに熱線吸収性を容易に向上させることができる。
MgOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で0%以上、2.0%未満が好ましく、0〜1.0%がより好ましく、0〜0.5%がさらに好ましく、0%〜0.2%が特に好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0028】
本明細書においては、全鉄の含有量を標準分析法にしたがってFeの量として表しているが、ガラス中に存在する鉄がすべて3価の鉄として存在しているわけではない。
通常、ガラス中には2価の鉄が存在している。2価の鉄は波長1100nm付近に吸収のピークを有し、3価の鉄は波長400nm付近に吸収のピークを有する。そのため、赤外線吸収能について着目した場合、3価の鉄(Fe3+)よりも2価の鉄(Fe2+)が多い方が好ましい。したがって、Teを低く抑える点では、全鉄量をFeに換算した全鉄質量と2価のFeO質量の割合(以下、この割合をFe−redoxとも記す。すなわち、Fe−redox(%)は、Fe2+/(Fe2++Fe3+)で表わされる。)を高めることが好ましい。
【0029】
本実施形態の熱線吸収ガラス板におけるFe−redoxは、55%以上であることが好ましい。Fe−redoxが55%以上であれば、Teを低く抑えることができる。Fe−redoxは、57%以上が好ましく、59%以上がより好ましい。一方で、Fe−redoxが高くなりすぎると、ガラス原料の溶融工程が複雑になる。Fe−redoxは、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、65%以下がさらに好ましい。
【0030】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、SnO/SOとFe−redoxの比(SnO/SO)/Fe−redox)が0.0025〜5であることが好ましい。0.0025以上であれば、アンバー着色の発生を抑えることができる。5以下であれば、揮散が少なく、コストを低く抑えることができる。0.05〜3がより好ましく、0.08〜2がさらに好ましく、0.15〜1が特に好ましく、0.2〜0.5が最も好ましい。
【0031】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示で、下記の組成を含有するソーダライムシリカガラスであることが好ましい。特に、本実施形態の熱線吸収ガラス板は、酸化物基準の質量百分率表示で、実質的に下記の組成のソーダライムシリカガラスからなることが好ましい。
SiO :65〜75%、
Al :3%を超え、6%以下、
MgO :0%以上、2%未満、
CaO :7〜10%、
NaO :5〜18%、
O :0〜5%、
Feに換算した全鉄 :0.3〜0.9%、
SnOに換算した全スズ :0.02〜0.3%。
【0032】
SiOの含有量が65%以上であれば、耐候性が良好となる。SiOの含有量が75%以下であれば、失透しにくくなる。SiOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で67〜73%が好ましく、68〜71%がより好ましい。
【0033】
Alは、耐候性を向上させる成分である。
Alの含有量が3%を超えれば、耐候性が良好となる。Alの含有量が6%以下であれば、溶融性が良好となる。Alの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で3.1〜5%が好ましく、3.2〜4%がより好ましい。
【0034】
CaOはガラス原料の溶融を促進し、耐候性を向上させる成分である。
CaOの含有量が7%以上であれば、溶融性、耐候性が良好となる。CaOの含有量が10%以下であれば、失透しにくくなる。CaOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で7.5〜9.5%が好ましく、8〜9%がより好ましい。
【0035】
NaOはガラス原料の溶融を促進する成分である。NaOの含有量が5%以上であれば、溶融性が良好となる。NaOの含有量が18%以下であれば、耐候性が良好となる。NaOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で10〜17%が好ましく、12〜16%がより好ましく、14〜15%が特に好ましい。
【0036】
Oはガラス原料の溶融を促進する成分である。KOの含有量が5%以下であれば、耐候性が良好となる。KOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で0.5〜3%が好ましく、1〜2%がより好ましく、さらには1.3〜1.7%が好ましい。
【0037】
本実施形態の熱線吸収ガラス板においては、ガラス原料の溶融を促進するために、SrOを含んでもよい。SrOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましい。さらに好ましくは1%以下、さらには0.5%以下、さらには実質的に含有しないことが好ましい。SrOの含有量が5%以下であれば、ガラス原料の溶融を充分に促進することができる。
【0038】
また、本実施形態の熱線吸収ガラス板においては、ガラス原料の溶融を促進するために、BaOを含んでもよい。BaOの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましい。さらに好ましくは1%以下、さらには0.5%以下、さらには実質的に含有しないことが好ましい。BaOの含有量が5%以下であれば、ガラス原料の溶融を充分に促進することができる。
【0039】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、黄色にならず青色や緑色のガラス板を得るためには、TiOを実質的に含まなくてもよい。
【0040】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、紫外線透過率を下げ、緑色や黄色のガラス板を得るためには、酸化物基準の質量百分率表示で、TiOの含有量が0%を超えて含有してもよい。0%を超えて含有すれば、紫外線透過率が下がり、また、緑色や黄色のガラス板を得ることができる。0.1%以上がより好ましく、0.3%以上がさらに好ましく、0.5%以上が特に好ましい。一方で、TiOの含有量を3%以下にすればTvを高くすることができる。2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0041】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、コストを低く抑えるためには、CeOを実質的に含まなくてもよい。
【0042】
一方、本実施形態の熱線吸収ガラス板は、紫外線透過率を下げるためには、酸化物基準の質量百分率表示で、CeOの含有量が0%を超えて含有すれば、紫外線透過率を下げることができる。0.1%以上がより好ましく、0.3%以上がさらに好ましく、0.5%以上が特に好ましい。一方で、CeOの含有量を3%以下にすればTvを高くすることでき、また、コストを低く抑えることができる。2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.8%未満が特に好ましく、0.6%未満が最も好ましい。
【0043】
本実施形態の熱線吸収ガラス板の比重は、2.48〜2.55が好ましく、2.50〜2.53がより好ましい。本発明の熱線吸収ガラス板の比重を、通常のソーダライムシリカガラスと同等にすることによって、製造時の組成変更(即ち、素地替え)の効率を向上できる。
本実施形態の熱線吸収ガラス板の比重は、ガラスの組成を調整することによって調整できる。上記比重にするためには、SiO/(MgO+CaO)の質量比を、6.0〜9.0にすることが好ましく、6.7〜8.7にすることがより好ましい。また、SrO及び/またはBaOを含有する場合にも、同様にSiO/(MgO+CaO+SrO+BaO)の質量比を、6.0〜9.0にすることが好ましく、6.7〜8.7にすることがより好ましい。
【0044】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、青色のガラス板を得るためには、JIS Z 8701(1982)規定の透過光の主波長Dwが、ガラス板の4mm厚さ換算値で492nm未満であることが好ましい。491nm未満がより好ましく、490nm未満がさらに好ましく、489nm未満が特に好ましい。
【0045】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、緑色のガラス板を得るためには、JIS Z 8701(1982)規定の透過光の主波長Dwが、ガラス板の4mm厚さ換算値で492nm以上であることが好ましい。494〜565nmがより好ましく、496〜560nmがさらに好ましく、498〜530nmが特に好ましく、499〜510nmが最も好ましい。
【0046】
Tv/Teは、Feに換算した全鉄量t−Feに大きく依存する。t−Feが少ないとTv/Teを大きくすることは困難で、t−Feが多いとTv/Teを大きくすることは比較的容易である。同一のt−Feで比較したとき、本実施形態の熱線吸収ガラス板は、従来の熱線吸収ガラス板よりもTv/Teが大きいことに特徴がある。
本実施形態の熱線吸収ガラス板のTv/Teは、ガラス板の4mm厚さ換算値でt−Feが0.30%以上0.351%未満の時、1.70より大きい。Tv/Teが1.70より大きければ、低い日射透過率および高い可視光透過率を同時に満足できる。Tv/Teは1.75より大きいことが好ましく、1.80より大きいことがさらに好ましい。
また、t−Feが0.351%以上0.559%未満の時、Tv/Teは「1.252×(t−Fe)+1.260」で求められる値より大きい。「1.252×(t−Fe)+1.260」で求められる値より大きければ、低い日射透過率および高い可視光透過率を同時に満足できる。
また、t−Feが0.559%以上の時も、Tv/Teは「1.252×(t−Fe)+1.260」で求められる値より大きくてもよい。Tv/Teは「1.252×(t−Fe)+1.270」で求められる値より大きいことがより好ましく、「1.252×(t−Fe)+1.280」で求められる値より大きいことがさらに好ましい。
また、t−Feが0.559%以上の時、Tv/Teは、1.960より大きい。Tv/Teが1.960より大きければ、低い日射透過率および高い可視光透過率を同時に満足できる。t−Feが0.567%以上の時、Tv/Teは1.970より大きいことが好ましく、t−Feが0.575%以上の時、1.980より大きいことがさらに好ましく、t−Feが0.583%以上の時、1.990より大きいことが特に好ましく、t−Feが0.591%以上の時、2.0より大きいことが最も好ましい。
【0047】
本実施形態の熱線吸収ガラス板のTeは、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下がさらに好ましく、35%以下であることが特に好ましい。本実施形態において、熱線吸収ガラス板のTeとは、熱線吸収ガラス板の板厚を4mmの厚さに換算としたときのTeの値を意味するものであり、本明細書において、単に「4mm厚さ換算(値)」とも表記している。Teは、JIS R 3106(1998)(以下、単にJIS R 3106と記す。)にしたがい分光光度計により透過率を測定し算出された日射透過率である。
本実施形態の熱線吸収ガラス板のTvは、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。本実施形態において、熱線吸収ガラス板のTvとは、熱線吸収ガラス板の板厚を4mmの厚さに換算としたときのTvの値を意味するものであり、本明細書において、単に「4mm厚さ換算(値)」とも表記している。Tvは、JIS R 3106にしたがい分光光度計により透過率を測定し算出された可視光透過率である。係数は標準のA光源、2度視野の値を用いる。
【0048】
本実施形態の熱線吸収ガラス板の中の水分含有量を示す指標としてのβ−OHを0.15mm−1以上にすることによって、清澄性を向上させることができ、かつ曲げ工程での温度を下げることができる。β−OHは、0.15〜0.45mm−1が好ましく、0.20〜0.35mm−1がより好ましく、0.23〜0.30mm−1がさらに好ましく、0.25〜0.28mm−1が特に好ましい。ここで、β−OHは、以下の式により求められた値である。
β−OH(mm−1)=−log10(T3500cm−1/T4000cm−1)/t
上記式において、T3500cm−1は、波数(wave number)3500cm−1の透過率(%)であり、T4000cm−1は、波数4000cm−1の透過率(%)であり、tは、ガラス板の厚さ(mm)である。
【0049】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、車両用、建築用のいずれにも用いることができ、特に建築用ガラスとして好適である。自動車用の窓ガラスとして用いる場合は、必要に応じて、複数のガラス板を中間膜で挟んだ合せガラス、平面状のガラスを曲面に加工したガラス、強化処理をしたガラスとして用いる。また、建築用の複層ガラスとして用いる場合、2枚の本発明の熱線吸収ガラス板からなる複層ガラス、または本発明の熱線吸収ガラス板と他のガラス板との複層ガラスとして用いる。
【0050】
本実施形態の熱線吸収ガラス板は、たとえば、下記の工程(i)〜(v)を順に経て製造される。
(i)目標とするガラス組成になるように、珪砂、その他のガラス母組成原料、鉄源等の着色成分原料、還元剤、清澄剤等を混合し、ガラス原料を調製する。
(ii)ガラス原料を連続的に溶融窯に供給し、重油、天然ガス等により約1400℃〜1550℃(例えば、約1500℃)に加熱し溶融させて溶融ガラスとする。
(iii)溶融ガラスを清澄した後、フロート法等のガラス板成形法により所定の厚さのガラス板に成形する。
(iv)ガラス板を徐冷した後、所定の大きさに切断し、本発明の熱線吸収ガラス板とする。
(v)必要に応じて、切断したガラス板を強化処理してもよく、合せガラスに加工してもよく、複層ガラスに加工してもよい。
【0051】
ガラス母組成原料としては、珪砂、ソーダ灰、石灰石、長石等、通常のソーダライムシリカガラスの原料として用いられているものが挙げられる。
鉄源としては、鉄粉、酸化鉄粉、ベンガラ等が挙げられる。
還元剤としては、炭素、コークス等が挙げられる。還元剤は、溶融ガラス中の鉄の酸化を抑制し、目標のFe−redoxとなるように調整するためのものである。
【0052】
以上説明した本実施形態の熱線吸収ガラス板にあっては、鉄、スズおよび硫黄の各元素を含み、Feに換算した全鉄量、および、SnOに換算した全錫量、および全錫量と全硫黄量の割合(SnO/SO)を調整することによって、Tv/Teと、酸化物基準の質量百分率表示で、Feに換算した全鉄量t−Feが、ガラス板の4mm厚さ換算値で次式の関係を満足する。
t−Feが0.30%以上0.351%未満の時、Tv/Te>1.70、
t−Feが0.351%以上0.559%未満の時、
Tv/Te>1.252×(t−Fe)+1.260、
t−Feが0.559%以上の時、Tv/Te>1.960。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
【0054】
(Fe−redox)
得られたガラス板について、分光光度計により測定したガラスのスペクトル曲線からFe−redoxを算出した。
【0055】
(Tv)
得られたガラス板について、JIS R3106規定の可視光透過率(Tv)(A光源、2度視野の測定条件下における値)を4mm厚さ換算値で求めた。
【0056】
(Te)
得られたガラス板について、JIS R3106規定の日射透過率(Te)を4mm厚さ換算値で求めた。
【0057】
(Dw)
得られたガラス板について、JIS Z8701(1982)規定の透過光の主波長(Dw)を4mm厚さ換算値で求めた。
【0058】
(β−OHの測定)
得られたガラス板について、FT−IRにより測定したガラスの赤外線吸収スペクトル曲線から下式に基づき、β−OHを算出した。
β−OH(mm−1)=−log10(T3500cm−1/T4000cm−1)/t
ここで、T3500cm−1は、波数(wave number)3500cm−1の透過率(%)であり、T4000cm−1は、波数4000cm−1の透過率(%)であり、tは、ガラス板の厚さ(mm)である。
【0059】
表1〜5に示すガラス組成となるように珪砂等の各種のガラス母組成原料、コークス、鉄源、SnO、芒硝(NaSO)を混合し、ガラス原料を調製した。ガラス原料をるつぼに入れ、1500℃で2時間加熱し、溶融ガラスとした。溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、冷却した。得られた板状ガラスの両面を研磨し、厚さ4mmのガラス板を得た。ガラス板について、分光光度計(Perkin Elmer社製、Lambda950)を用いて1nmごとに透過率を測定し、Te、Tv、Dwを求めた。また、前記ガラスを研磨し、厚さ2mmとし、このガラス板について、FT−IR(サーモニコレー社製、Thermo Nicolet Avatar370)を用いて1cm−1ごとに透過率を測定し、上記式に基づき、β−OHを得た。結果を表1〜5に示す。
なお、表5のTv、Te、DwおよびTv/Teの欄において、括弧をもって表示した数値は、計算値を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
例1〜15、30〜33は実施例であり、例16〜29は比較例である。
例16〜22は特許文献2(国際公開第2012/102176号)に記載されている実施例、例23〜25は特許文献3(国際公開第2011/093284号)に記載されている実施例、例26〜29は特許文献1(米国特許第6673730号明細書)に記載されている実施例から引用した。例26〜29は可視光透過率の指標としてLTAが、日射透過率の指標としてTSETが用いられているが、LTAとTv、TSETとTeは同じものとして比較した。
例1〜29のt−FeとTv/Teの関係を図1に示す。
実施例である例1〜15、30〜33の本発明の熱線吸収ガラス板は、次の式を満足しており、Tv/Teが大きい値であった。
t−Feが0.30%以上0.351%未満の時、Tv/Te>1.70、
t−Feが0.351%以上0.559%未満の時、
Tv/Te>1.252×t−Fe+1.260、
t−Feが0.559%以上の時、Tv/Te>1.960。
図1において、上記関係式の境界線を実線で示している。
なお、比較例である例16〜19のガラス板は、Tv/Teは大きいが、SnOを含まないため、SOを含有することによるアンバー発色を呈することにより色が不均質となる。
比較例である例20〜22のガラス板は、SnOを含まないため、アンバー発色を抑えるためにFe−redoxを低くする必要があった。
比較例である例23〜25のガラス板は、t−Feが少ないためにTeが大きくなり、Tv/Teが小さかった。
比較例である例26〜29のガラス板は、t−Feの割合に対して、Tv/Teは充分に大きくない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の熱線吸収ガラス板は、低い日射透過率および高い可視光透過率を同時に満足するという特徴を有しているので、車両用、建築用のガラス板として有用であり、特に建築用のガラス板として好適である。
なお、2014年4月23日に出願された日本特許出願2014−089454号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
図1