(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561986
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】光学用フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20190808BHJP
C08F 297/04 20060101ALI20190808BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F297/04
B32B27/00 A
B32B27/00 L
B32B27/00 104
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-521103(P2016-521103)
(86)(22)【出願日】2015年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2015064310
(87)【国際公開番号】WO2015178370
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-104479(P2014-104479)
(32)【優先日】2014年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
(72)【発明者】
【氏名】石黒 淳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
【審査官】
小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−061712(JP,A)
【文献】
特表2003−519601(JP,A)
【文献】
特開2003−114329(JP,A)
【文献】
特開2002−105151(JP,A)
【文献】
特表2011−523668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 − 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、
前記重合体ブロック[B]中の、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量が、70重量%以上であり、
ブロック共重合体全体に含まれるすべての重合体ブロック[A]の前記ブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、前記ブロック共重合体全体に含まれるすべての重合体ブロック[B]の前記ブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が60:40〜90:10であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムの製造方法であって、
前記ブロック共重合体水素化物[D]を押出し成形して得られる光学用フィルムと、少なくとも一方の表面部が、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である樹脂[E]からなる保護フィルムとを、前記保護フィルムの樹脂[E]からなる表面部と前記光学用フィルムとが対向するように重ね合せて巻き取ることを特徴とする光学用フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記保護フィルムが、前記樹脂[E]からなる単層フィルム、前記樹脂[E]からなる層を最表面に有する多層フィルム、又は、曲げ弾性率が1500MPaを超える樹脂[E]以外の樹脂からなるフィルムの両面に、樹脂[E]からなる層が形成されてなる多層フィルムである、請求項1に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂[E]が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、及びポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の光学用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体水素化物からなる光学用フィルムの製造方法に関し、さらに詳しくは、表面に傷等の欠陥が少なく面状の優れた、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、透明粘着フィルム用の基材フィルム等に好適な光学用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ビニル化合物の重合体の芳香環を水素化した芳香族ビニル化合物重合体水素化物や、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロックと、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を含む重合体ブロックからなるブロック共重合体の芳香環及びジエン由来の二重結合を水素化したブロック共重合体水素化物を押出し成形して得られるフィルムは、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学用フィルムとして有用であることが知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
本発明に関連して、特許文献2には、ブロック共重合体水素化物を成形してフィルムを製造する際に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを重ねて巻き取ってもよいことが記載されている。しかし、ブロッキングの防止とは異なるフィルム表面の傷付きを防止する機能を発現するためのマスキングフィルムの物性や特性に関する記述は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−105151号公報(US2003/0207983 A1)
【特許文献2】特開2003−114329号公報
【特許文献3】WO2009/067290号パンフレット
【特許文献4】WO2009/137278号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ブロック共重合体水素化物を光学用フィルム用途に用いる場合、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有率を高くした方が、弾性率が高くなり、それを成形したフィルムは複屈折が生じ難くなるため好ましいと考えられる。
しかし他方で、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有率の高いブロック共重合体水素化物は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有率が低いブロック共重合体水素化物に比して、成形されたフィルム自身同士が擦れ合うことによるフィルム表面の傷が発生し易いという問題があった。
【0006】
この対策として、ブロック共重合体水素化物に滑剤を配合することにより、成形したフィルムの滑り性を良くすることで傷付き易さを改善することが考えられる。しかしながら、滑剤のブリードによるフィルム表面の汚れや他の材料と多層化する際の接着性の低下等を生じる懸念がある。また、フィルム間の滑り性を高め、傷付き易さを改善する方法として、フィルム表面に微細なエンボス加工を施すこととも考えられるが、光学用フィルム用途では表面の平滑性が要求されるため適用できない。
【0007】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであり、表面に傷等の欠陥が少なく、面状の優れた偏光板保護フィルムや位相差フィルム、透明粘着フィルム用の基材フィルム等に適用できる、特定のブロック共重合体水素化物からなる光学用フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体水素化物からなる光学用フィルムと、特定の値以下の曲げ弾性率及び粘着性を有する樹脂により表面が構成された保護フィルムを重ねてロール状に巻いて保管した場合に、特定のブロック共重合体水素化物からなる光学用フィルムの表面の傷付きを効果的に抑止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(3)の光学用フィルムの製造方法が提供される。
(1)芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が60:40〜90:10であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムの製造方法であって、
前記ブロック共重合体水素化物[D]を押出し成形して得られる光学用フィルムと、少なくとも一方の表面部が、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である樹脂[E]からなる保護フィルムとを、前記保護フィルムの樹脂[E]からなる表面部と前記光学用フィルムとが対向するように重ね合せて巻き取ることを特徴とする光学用フィルムの製造方法。
(2)前記保護フィルムが、前記樹脂[E]からなる単層フィルム、前記樹脂[E]からなる層を最表面に有する多層フィルム、又は、曲げ弾性率が1500MPaを超える樹脂[E]以外の樹脂からなるフィルムの両面に、樹脂[E]からなる層が形成されてなる多層フィルムである、(1)に記載の光学用フィルムの製造方法。
(3)前記樹脂[E]が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、及びポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種である、(1)又は(2)に記載の光学用フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブロック共重合体水素化物からなる光学用フィルムの製造方法であって、表面に傷等の欠陥が少なく面状の優れた、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、透明粘着フィルム用の基材フィルム等に好適な光学用フィルムの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光学用フィルムの製造方法は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が60:40〜90:10であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムの製造方法であって、
前記ブロック共重合体水素化物[D]を押出し成形して得られる光学用フィルムと、少なくとも一方の表面部が、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である樹脂[E]からなる保護フィルムとを、前記保護フィルムの樹脂[E]からなる表面部と前記光学用フィルムとが対向するように重ね合せて巻き取ることを特徴とする。
【0012】
1.ブロック共重合体水素化物[D]
本発明に用いるブロック共重合体水素化物[D]は、その前駆体であるブロック共重合体[C]の全不飽和結合の90%以上を水素化して得られる高分子である。
ブロック共重合体[C]は、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。
【0013】
(重合体ブロック[A])
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものである。
重合体ブロック[A]中の、芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少な過ぎると、本発明に係る光学用フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
【0014】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。
その含有量は、重合体ブロック[A]に対し、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
ブロック共重合体水素化物[D]に含まれる複数の重合体ブロック[A]同士は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、相異なっていても良い。
【0015】
(重合体ブロック[B])
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものである。
重合体ブロック[B]中の、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
重合体ブロック[B]中の、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、本発明に係る光学用フィルムに柔軟性が付与される。
【0016】
また、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。
その含有量は、重合体ブロック[B]に対し、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
重合体ブロック[B]中の、芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量があまりに多くなると、本発明に係る光学用フィルムの複屈折発現性は低下するが、柔軟性が低下するおそれがある。
ブロック共重合体水素化物[D]が重合体ブロック[B]を複数有する場合、重合体ブロック[B]同士は、互いに同じであっても、相異なっていても良い。
【0017】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類;4−クロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、スチレン、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、スチレンが特に好ましい。
【0018】
鎖状共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。なかでも、吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン系化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0019】
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物等のビニル化合物;不飽和の環状酸無水物;不飽和イミド化合物;等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の炭素数2〜20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の炭素数5〜20の環状オレフィン;等の、極性基を有しないビニル化合物が好ましく、炭素数2〜20の鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0020】
(ブロック共重合体[C])
ブロック共重合体[C]は、ブロック共重合体水素化物[D]の前駆体であり、分子内に、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。
【0021】
ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する際、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)としたとき、該Mw(A1)とMw(A2)との比(Mw(A1)/Mw(A2))及びMw(B1)とMw(B2)との比(Mw(B1)/Mw(B2))は、それぞれ4.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下である。
【0022】
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるのが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[C]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]−[B]−[A])、及び重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体([A]−[B]−[A]−[B]−[A])である。
【0023】
ブロック共重合体[C]中の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、60:40〜90:10、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは70:30〜80:20である。wAが高過ぎる場合は、本発明に係る光学用フィルムの耐熱性が高くなり、複屈折も小さくし易くなるが、柔軟性が低く、切削面で光学用フィルムが割れ易くなり、wAが低過ぎる場合は、耐熱性が低下し、延伸した光学用フィルムが高温耐久試験で収縮し易くなる。
【0024】
ブロック共重合体[C]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0025】
ブロック共重合体[C]は、例えば、リビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法;等により製造することができる。
【0026】
前記モノマー混合物(a)中の芳香族ビニル化合物の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。また、モノマー混合物(a)は、芳香族ビニル化合物以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、鎖状共役ジエン化合物、その他のビニル化合物が挙げられる。その含有量は、モノマー混合物(a)に対し、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0027】
前記モノマー混合物(b)中の鎖状共役ジエン化合物の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。また、モノマー混合物(b)は、鎖状共役ジエン化合物以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、芳香族ビニル化合物、その他のビニル化合物が挙げられる。その含有量は、モノマー混合物(b)に対して、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0028】
(ブロック共重合体水素化物[D])
ブロック共重合体水素化物[D]は、上記のブロック共重合体[C]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものである。その水素化率は、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形体の耐候性、耐熱性及び低複屈折性が良好である。ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、
1H−NMRによる測定において求めることができる。
【0029】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、WO2011/096389号パンフレット、WO2012/043708号パンフレット等に記載された方法を挙げることができる。
【0030】
水素化反応終了後においては、水素化触媒及び/又は重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物[D]を回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のフィルムの成形加工に供することができる。
【0031】
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、成形した光学用フィルムの耐熱性や低複屈折性が良好である。
【0032】
本発明に使用するブロック共重合体水素化物[D]をフィルムに成形する際においては、他の配合剤を含有させてもよい。配合剤としては、格別限定はないが、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。配合剤の配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0033】
ブロック共重合体水素化物[D]を溶融押出してフィルムを成形する際に、ダイスのリップ部に樹脂酸化劣化物の付着を抑えるために、酸化防止剤を添加することは有効である。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
これらの中でも、フェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。
アルキル置換フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−メチルフェノール、2,6−ジイソプロピル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−オクチル−4−n−プロピルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−n−オクチルフェノール、2−イソプロピル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチル−6−t−オクチルフェノール、2−イソブチル−4−エチル−6−t−ヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−4−n−ブチル−6−イソプロピルフェノール、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の単環のフェノール系酸化防止剤;2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2,2´−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2´−ブチリデンビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,6−ジオキサオクタメチレンビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2´−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の2環のフェノール系酸化防止剤;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4−t−ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等の3環のフェノール系酸化防止剤;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等の4環のフェノール系酸化防止剤;等が挙げられる。
酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.3重量部である。
【0035】
2.光学用フィルムの製造方法
本発明の光学用フィルムの製造方法は、前記ブロック共重合体水素化物[D]を押出し成形して得られる光学用フィルムと、少なくとも一方の表面部が、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である樹脂[E]からなる保護フィルムとを、前記保護フィルムの樹脂[E]からなる表面部と前記光学用フィルムとが対向するように重ね合せて巻き取ることを特徴とする。
【0036】
(光学用フィルム)
本発明の製造方法により製造される光学用フィルム(以下、「本発明の光学用フィルム」ということがある。)は、ブロック共重合体水素化物[D]からなる。
ここで、「ブロック共重合体水素化物[D]からなる」とは、「得られる光学用フィルムが、実質的にブロック共重合体水素化物[D]からなるものであり、本発明の目的を損なわない限り、他の配合剤を含有していてもよい」という意味である。本発明の光学用フィルムにおけるブロック共重合体水素化物[D]の含有量は、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは98重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上である。
【0037】
本発明の光学用フィルムは、ブロック共重合体水素化物[D]のペレットを、押出し機によって溶融させて当該押出し機に取り付けられたダイスからシート状に押出し、押出しされたシート状のブロック共重合体水素化物[D]を、少なくとも1つの冷却ドラムに密着させて成形して引き取ることにより製造することができる。
この場合、例えば、ダイスリップの表面粗さRaの平均値が0.05μm以下で、かつダイスリップ全幅における表面粗さRaの分布の範囲が前記平均値の±0.025μm以下である面粗さの小さいダイスを使用することにより、前記の平均粗さRaを有する光学用フィルムの成形が可能となる。
【0038】
また、ブロック共重合体水素化物[D]のペレットを、押出し機によって溶融押出し成形する前に、通常50〜120℃の温度で2時間以上好ましくは60〜115℃の温度で3時間以上、より好ましくは70〜110℃の温度で4時間以上保持したものを使用する。ブロック共重合体水素化物[D]のペレットを上記の条件で加熱処理することにより、ペレット中の溶存空気量が低減され、これによりダイラインの発生が抑制され、上記の表面粗さRaの小さいダイスを使用することと合わせて表面粗さRaの小さい光学用フィルムを成形することができるようになる。加熱処理の温度及び時間が上記範囲を下回る場合は、溶存空気の除去量が少なく、ダイラインの発生を十分抑止できなくなり、表面粗さRaの小さい光学用フィルムを得ることが困難となるおそれがある。
【0039】
押出し機におけるブロック共重合体水素化物[D]の溶融温度は、ブロック共重合体水素化物[D]のガラス転移温度よりも、通常70〜160℃高い温度であり、ガラス転移温度よりも90〜140℃高い温度にすることがより好ましい。ブロック共重合体水素化物[D]のガラス転移温度は、粘弾性スペクトルにおけるtanδのピークトップ値として求めることができる。押出し機での溶融温度が過度に低いと樹脂の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと樹脂が分解して分子量が低下するおそれがある。
【0040】
ダイスの開口部から押出しされたブロック共重合体水素化物[D]は、キャストロールに密着させて冷却し、フィルムにする。キャストロールの温度により、押出しされたフィルム状のブロック共重合体水素化物[D]のキャストロールへの密着具合が変化する。キャストロールの温度を上げると密着はよくなるが、温度を上げすぎるとフィルム状のブロック共重合体水素化物[D]がキャストロールから剥がれずに、ロールに巻きつく不具合が発生するおそれがある。そのため、キャストロールの温度は、ブロック共重合体水素化物[D]のガラス転位温度をTg(℃)とすると、通常(Tg+10)℃以下、好ましくは(Tg−80)℃〜(Tg−5)℃、より好ましくは(Tg−60)℃〜(Tg−10)℃にする。そうすることにより滑りや傷付き等の不具合を防止することができる。
【0041】
本発明の光学用フィルムの製造方法は、前記ブロック共重合体水素化物[D]を押出し成形して得られる光学用フィルムと、少なくとも一方の表面部が、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である樹脂[E]からなる保護フィルムとを、前記保護フィルムの樹脂[E]からなる表面部と前記光学用フィルムとが対向するように重ね合せて巻き取ることを特徴とする。
【0042】
(樹脂[E]からなる保護フィルム)
本発明に用いる保護フィルムは、少なくとも一方の表面部が、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である樹脂[E]からなるフィルムである。
【0043】
樹脂[E]は、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である高分子である。
ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに、上記の特定の物性を有する保護フィルム[E]を、前記保護フィルムの樹脂[E]からなる表面部と前記光学用フィルムとが対向するように重ね合せて巻き取ることにより、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルム自身同士が擦れ合うことによるフィルム表面の傷の発生を効果的に低減でき、また、保護フィルムを剥離する際にブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムの表面に剥離跡が残り難くなる。 樹脂[E]の曲げ弾性率が1500MPaを超える場合は、それと接触するブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムの表面に傷が付き易くなる。また、樹脂[E]のブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、剥離強度で0.1N/cmを超える場合は、樹脂[E]により表面が形成された保護フィルムをブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムから剥離する際に、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムの表面に剥離跡が残り易くなる。
樹脂[E]の曲げ弾性率はJIS K 7171に準じて測定される値であり、剥離強度はJIS Z 0237に準じて測定される値である。
【0044】
樹脂[E]の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、及びポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。これらの中でも、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムへの適度な粘着性、離型性、経済性の観点から、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0045】
本発明に用いる保護フィルムは、少なくとも一方の表面部が、樹脂[E]からなるものであればよいが、前記樹脂[E]からなる単層フィルム、前記樹脂[E]からなる層を最表面に有する多層フィルム、又は、曲げ弾性率が1500MPaを超える樹脂[E]以外の樹脂からなるフィルムの両面に、樹脂[E]からなる層が形成されてなる多層のフィルムのいずれかであることが好ましい。
保護フィルムが、樹脂[E]からなる層を最表面に有する多層フィルム、又は、曲げ弾性率が1500MPaを超える樹脂[E]以外の樹脂からなるフィルムの両面に、樹脂[E]からなる層が形成されてなる多層のフィルムである場合、前記樹脂[E]からなる層の厚みは、通常、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μmである。
【0046】
保護フィルムの厚みは、通常15〜100μm、好ましくは20〜80μm、より好ましくは30〜60μmである。厚みが15μmを下回る場合は、ハンドリング性に劣り、厚みが100μmを超える場合は、ロール状に巻いた光学用フィルムの重量が重くなり作業性が劣り、また、経済性にも劣るため好ましくない。
【0047】
本発明の光学用フィルムの製造方法は、より具体的には、押出し成形機のキャストロールから剥がされたブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムと、少なくとも一方の表面部が、23℃における曲げ弾性率が1500MPa以下であり、ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムに対する粘着性が、23℃における剥離強度で0.1N/cm以下である樹脂[E]からなる保護フィルムとを、前記保護フィルムの樹脂[E]からなる表面部と前記光学用フィルムとが対向するように重ね合せて巻き取る工程を有するものである。
【0048】
以上のようにして得られる本発明の光学用フィルムは、厚みが通常15〜200μm、好ましくは20〜150μmのフィルムである。本発明の光学用フィルムの厚み変動は、好ましくは3%以内、より好ましくは2.5%以内である。ここで、フィルムの厚み変動は、[(フィルムの最大又は最小厚み−フィルムの平均厚み)/フィルムの平均厚み]×100〕から算出される値である。光学用フィルムの厚み変動を上記範囲とすることにより、本発明の製造方法により得られた光学用フィルムを液晶表示装置に組み込んだ場合の色ムラを小さくすることができる。
【0049】
また、本発明の光学用フィルムは表面の平滑性に優れる。その平滑性は両面の表面粗さが平均粗さRa表記で0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.05μm以下である。ここで平均粗さRaとは、JIS B 0601:2001によって定義される「算術平均高さRa」と同様のものであり、例えば、カラー3Dレーザ顕微鏡(製品名「VK−9500」、キーエンス社製)等を用いて測定することができる。平均粗さRaがこの範囲にある場合には、成形物表面に微視的凹凸が観察されず、光学用フィルムとして好ましいが、一方でブロック共重合体水素化物[D]のフィルム同士が接触した場合は、滑り性が劣り、表面に傷が付き易くなる。
【0050】
本発明の光学用フィルムは、液晶表示装置等の表示装置に用いられる部材、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム、タッチパネル用基板、液晶基板、光拡散シート、プリズムシート等にも用いることができる。偏光板保護フィルムとして使用する場合は、フィルム面内の位相差Reが10nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましい。位相差が10nm以下であることにより、液晶表示ユニットに組み込んだ場合の色ムラを抑えることができる。特に大画面の液晶表示装置において色ムラが顕著に目立つ傾向にあるが、このような大画面の表示装置にも好適である。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0052】
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体[C]及びブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、THFを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として、38℃において測定した。測定装置として、東ソー社製、HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[D]の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、
1H−NMRスペクトルを測定して算出した。
【0053】
(3)ガラス転移温度
ブロック共重合体水素化物[D]をプレス成形して、長さ50mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS−K7244−4法に基づき、損失弾性率測定装置(製品名「DMS6100」、セイコーインスツル社製)を、粘弾性測定装置(製品名「ARES」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)をそれぞれ使用して、−100℃から+150℃の範囲で、昇温速度5℃/分で粘弾性スペクトルを測定した。損失係数tanδの高温側のピークトップ温度から、ガラス転移温度を求めた。
【0054】
(4)曲げ弾性率
保護フィルムに使用する樹脂[E]を射出成型して、長さ100mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、ストログラフ(製品名「V10−B」、東洋精機製作所社製)を用いて、JIS K 7171に準じて曲げ試験を行い、23℃における曲げ弾性率を測定した。
(5)粘着性
ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムを重ねて、真空ラミネータを使用して厚さ1.1〜1.2mmの板を作製した。この板から、長さ125mm、幅50mmの剥離試験用の試験片を切り出した。長さ200mm、幅24mm、厚さ50μmの保護フィルムをブロック共重合体水素化物[D]からなる試験片に重ねて、温度50℃にて重さ2kgのローラーを使用して圧着し、剥離試験用の試験片を作製した。オートグラフ(製品名「AGS−10NX」、島津製作所社製)を使用して、フィルムの非粘着部位から、剥離速度100mm/分で、JIS Z 0237に準じて180°剥離試験を行い、23℃における剥離強度を測定した。
【0055】
(6)フィルムの表面粗さRa
ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムを切り出して試験片とし、カラー3Dレーザ顕微鏡(製品名「VK−9500」、キーエンス社製)を用いて、JIS B 0601:2001に準じて測定した。
(7)光学用フィルムの外観
ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムを巻き取ったロールからフィルム(尚、保護フィルムが有る場合は保護フィルムと共に)を引出し、長さ100cmのフィルム試験片を切り出した。ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムの試験片(尚、保護フィルムが有る場合は保護フィルムを剥がして除去し)を偏光度99.5%の偏光板にクロスニコルで挟み、照度10,000ルクスのバックライトにより光を照射し、光の漏れ具合を目視観察し、光の漏れが認められない場合を○(良好)、光の漏れ箇所が認められる場合を×(不良)として評価した。
【0056】
[参考例1]ブロック共重合体水素化物[D1]
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン50.0部、及び、ジ−n−ブチルエーテル0.475部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.62部を加えて重合を開始させ、さらに60℃で60分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に脱水イソプレン30.0部を加え、そのまま30分間攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99.5%であった。その後、更に、脱水スチレンを20.0部加え、60分間攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体[C1]の重量平均分子量(Mw)は68,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=70:30であった。
【0057】
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)7.0部、及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後の反応液に含まれるブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は72,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0058】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、ろ液に、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、コーヨ化学研究所社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[D1]のペレット95部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は72,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、水素化率はほぼ100%であった。
【0059】
ブロック共重合体水素化物[D1]の成形体は、無色透明で、高温側のガラス転位温度は133℃、曲げ弾性率は1400MPaであり、光学用フィルム用樹脂として有用であった。
【0060】
[参考例2]ブロック共重合体水素化物[D2]
スチレンとイソプレンを5回に分け、スチレン40.0部、イソプレン10.0部、スチレン25.0部、イソプレン10.0部及びスチレン15.0部をこの順に加える以外は参考例1と同様に重合反応を行い、反応を停止させて重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体[C2]の重量平均分子量(Mw)は70,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、wA:wB=80:20であった。
【0061】
次に、上記重合体溶液を用いて、参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後の反応液に含まれるブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は74,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0062】
水素化反応終了後、参考例1と同様に、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、ろ液に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D2]のペレット96部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は73,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、水素化率はほぼ100%であった。
【0063】
ブロック共重合体水素化物[D2]の成形体は、無色透明で、ガラス転位温度は121℃、曲げ弾性率は1980MPaであり、光学用フィルム用樹脂として有用であった。
【0064】
[参考例3]ブロック共重合体水素化物[D3]
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン15.0部、イソプレン70.0部及びスチレン15.0部をこの順に加える以外は参考例1と同様に重合反応を行い、反応を停止させて重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体[C3]の重量平均分子量(Mw)は65,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=30:70であった。
【0065】
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして、水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は68,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0066】
水素化反応終了後、参考例1と同様に、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、ろ液に、酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D3]のペレット96部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は68,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、水素化率はほぼ100%であった。
【0067】
ブロック共重合体水素化物[D3]の成形体は、無色透明で、高温側のガラス転位温度は116℃、曲げ弾性率は110MPaであり、軟質の樹脂であった。
【0068】
[参考例4]保護フィルム[F1]の作製
低密度ポリエチレン(製品名「ノバテック(登録商標)LF443」、日本ポリエチレン社製;射出成形品の曲げ弾性率170MPa;樹脂[E1])のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて、50℃で4時間加熱処理した。このペレットを、40mmφのスクリューを備えた押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅600mm)、キャストロール及び二種の貼り合わせ用フィルム供給装置を備えた押出しラミネート成形機を使用して、貼り合わせ用フィルムは供給せずに、キャストロール面に押出し、低密度ポリエチレンの単層フィルム[F1](厚さ40μm)を押出し成形した。得られた保護フィルム[F1]は、スリッターで耳部を切除し、幅450mmにしてロール状に巻き取り回収した。
【0069】
参考例1及び参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D1]及びブロック共重合体水素化物[D2]の試験片に対する保護フィルム[F1]の粘着性は、剥離強度でそれぞれ0.02N/cm及び0.01N/cmであった。保護フィルム[F1]の構成、ブロック共重合体水素化物[D1]及び[D2]に対する粘着性を表1に示した。
【0070】
[参考例5]保護フィルム[F2]の作製
低密度ポリエチレンに代えて高密度ポリエチレン(製品名「ノバテック(登録商標)HY430」、日本ポリエチレン社製;射出成形品の曲げ弾性率1100MPa;樹脂[E2])のペレットを使用する以外は、参考例4と同様にして高密度ポリエチレンの単独フィルム(厚さ30μm、幅450mm)を成形し、ロール状に巻き取り回収した。
次に、同じ押出しラミネート成形機を使用し、40℃で、4時間熱風加熱処理を行ったエチレン・酢酸ビニル共重合体(製品名「ノバテック(登録商標)LV430」、酢酸ビニル含有率15重量%、日本ポリエチレン社製;射出成形品の曲げ弾性率45MPa;樹脂[E3])のペレットを、Tダイからキャストロール面上に、厚さ10μmとなるように押出した。エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムのキャストロールに接していない側の面に、フィルム供給装置から先に成形した高密度ポリエチレン(樹脂[E2])のフィルムを供給して貼り合わせ、二種2層の保護フィルム[F2](高密度ポリエチレン[E2](厚さ30μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3](厚さ10μm);幅450mm)を作製した。
【0071】
参考例1及び参考例2で作製したブロック共重合体水素化物[D1]及びブロック共重合体水素化物[D2]の試験片に対する保護フィルム[F2]の粘着性は、高密度ポリエチレン[E2]側は、剥離強度でそれぞれ0.02N/cm及び0.01N/cm、エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3]側は、剥離強度でそれぞれ0.05N/cm及び0.04N/cmであった。保護フィルム[F2]の構成、ブロック共重合体水素化物[D1]及び[D2]に対する粘着性を表1に示した。
【0072】
[参考例6]保護フィルム[F3]の作製
70℃で、4時間熱風加熱処理を行ったポリプロピレン(製品名「ノバテック(登録商標) FB3HAT」、日本ポリエチレン社製;射出成形品の曲げ弾性率1750MPa)のペレットを使用し、参考例5と同様にして、先にポリプロピレンの単独フィルム(厚さ30μm、幅450mm)を成形し、ロール状に巻き取り回収した。
次に、参考例5で使用したのと同じエチレン・酢酸ビニル共重合体(樹脂[E3])のペレットを使用し、参考例5と同様にして、Tダイからエチレン・酢酸ビニル共重合体を押出し、フィルム供給装置から先に成形したポリプロピレンのフィルムを供給して貼り合わせ、二種2層の保護フィルム[F3](ポリプロピレン(厚さ30μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3](厚さ10μm);幅450mm)を作製した。
【0073】
参考例1及び参考例2で作製した、ブロック共重合体水素化物[D1]及びブロック共重合体水素化物[D2]の試験片に対する保護フィルム[F3]の粘着性は、ポリプロピレン側は、剥離強度でそれぞれ0.01N/cm以下及び0.01N/cm以下、エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3]側は、剥離強度でそれぞれ0.05N/cm及び0.04N/cmであった。保護フィルム[F3]の構成、ブロック共重合体水素化物[D1]及び[D2]に対する粘着性を表1に示した。
【0074】
[参考例7]保護フィルム[F4]の作製
50℃で、4時間熱風加熱処理を行ったポリエチレンテレフタレート(製品名「「TRN−8550FF」、帝人社製;射出成形品の曲げ弾性率3200MPa)のペレットを使用し、参考例5と同様にして、先にポリエチレンテレフタレートの単独フィルム(厚さ30μm、幅450mm)を成形し、ロール状に巻き取り回収した。
次に、参考例5で使用したのと同じエチレン・酢酸ビニル共重合体(樹脂[E3])のペレットを使用し、参考例5と同様にして、Tダイからエチレン・酢酸ビニル共重合体を押出し、フィルム供給装置から先に成形したポリエチレンテレフタレートのフィルムを供給して貼り合わせ、二種2層の保護フィルム[F4](ポリエチレンテレフタレート(厚さ30μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3](厚さ10μm);幅450mm)を作製した。
【0075】
参考例1及び参考例2で作製した、ブロック共重合体水素化物[D1]及びブロック共重合体水素化物[D2]の試験片に対する保護フィルム[F4]の粘着性は、ポリエチレンテレフタレート側は、剥離強度でそれぞれ0.01N/cm以下及び0.01N/cm以下、エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3]側は、剥離強度でそれぞれ0.05N/cm及び0.04N/cmであった。保護フィルム[F4]の構成、ブロック共重合体水素
化物[D1]及び[D2]に対する粘着性を表1に示した。
【0076】
[参考例8]保護フィルム[F5]の作製
参考例5で使用したのと同じエチレン・酢酸ビニル共重合体(樹脂[E3])のペレットを使用し、参考例5と同様にして、Tダイからエチレン・酢酸ビニル共重合体を押出し、フィルム供給装置から参考例7で成形したポリエチレンテレフタレート/エチレン・酢酸ビニル共重合体の二種2層のフィルムを供給して貼り合わせ、二種3層の保護フィルム[F5](エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3](厚さ10μm)/ポリエチレンテレフタレート(厚さ30μm)/エチレン・酢酸ビニル共重合体[E3](厚さ10μm);幅450mm)を作製した。
【0077】
参考例1及び参考例2で作製したブロック共重合体水素化物[D1]及びブロック共重合体水素化物[D2]の試験片に対する保護フィルム[F5]の粘着性は、両面のエチレン・酢酸ビニル共重合体[E3]側ともに、剥離強度でそれぞれ0.05N/cm及び0.04N/cmであった。保護フィルム[F5]の構成、ブロック共重合体水素化物[D1]及び[D2]に対する粘着性を表1に示した。
【0078】
[参考例9]保護フィルム[F6]の作製
参考例4で使用したのと同じ低密度ポリエチレン(樹脂[E1])のペレットを使用し、参考例5と同様にして、先に低密度ポリエチレンの単独フィルム(厚さ30μm、幅450mm)を成形し、ロール状に巻き取り回収した。
次に、参考例5で使用したエチレン・酢酸ビニル共重合体に代えて参考例3で作成したブロック共重合体水素化物[D3](射出成形品の曲げ弾性率110MPa)のペレットを使用し、参考例5と同様にして、Tダイからブロック共重合体水素化物[D3]を押出し、フィルム供給装置から先に成形した低密度ポリエチレンのフィルムを供給して貼り合わせ、二種2層の保護フィルム[F6](低密度ポリエチレン(厚さ30μm)/ブロック共重合体水素化物[D3](厚さ10μm);幅450mm)を作製した。
【0079】
参考例1及び参考例2で作製したブロック共重合体水素化物[D1]及びブロック共重合体水素化物[D2]の試験片に対する保護フィルム[F6]の粘着性は、低密度ポリエチレン[E1]側は、剥離強度でそれぞれ0.02N/cm及び0.01N/cm、ブロック共重合体水素化物[D3]側は、剥離強度でそれぞれ0.23N/cm及び0.20N/cmであった。保護フィルム[F6]の構成、ブロック共重合体水素化物[D1]及び[D2]に対する粘着性を表1に示した。
【0080】
表1中、「層構成樹脂」は次のものである。
(1)低密度ポリエチレン
製品名「ノバテック(登録商標)LF443」、日本ポリエチレン社製
(2)高密度ポリエチレン
製品名「ノバテック(登録商標)HY430」、日本ポリエチレン社製
(3)エチレン・酢酸ビニル共重合体
製品名「ノバテック(登録商標)LV430」、酢酸ビニル含有率15重量%、日本ポリエチレン社製
(4)ポリプロピレン
製品名「ノバテック(登録商標)FB3HAT」、日本ポリエチレン社製
(5)ポリエチレンテレフタレート
製品名「TRN−8550FF」、帝人社製
【0081】
【表1】
【0082】
[比較例1]
参考例1で得られたブロック共重合体水素化物[D1]のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で、4時間加熱処理を行った。この加熱処理後のペレットを使用し、リーフディスク形状のポリマーフィルター(ろ過精度10μm)を設置した40mmφのスクリューを備えた単軸押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅600mm)、キャストロール(直径250mm)及び保護フィルム供給装置を備えたフィルム成形機を用いて、樹脂温度250℃、キャストロール温度105℃、引取り速度0.35m/sの条件で溶融押出し成形し、光学用フィルム[G1]を成形した。
得られた光学用フィルム[G1]は、スリッターで耳部を切除し、幅450mmにして保護フィルムは使用せずにロール状に巻き取り回収した。
【0083】
ロール状に巻き取ったフィルムを、フィルム端部から5層分を引出して廃棄した後、長さ100cmのフィルムを試験片として採取した。光学用フィルム[G1]の表面粗さRa及び外観の評価を行った。Raは0.07μmで、外観評価では光漏れ箇所が認められ、×と評価された。光漏れの箇所を顕微鏡観察した結果、擦り傷状及びロール状に巻き取ったフィルムの剥離跡状の表面欠陥が観察された。結果を表2に示す。
【0084】
[実施例1]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットを使用し、比較例1と同様にして溶融押出し成形し、光学用フィルム[G2]を成形した。得られた光学用フィルム[G2]は、スリッターで耳部を切除し、幅450mmにして、参考例4で作製した保護フィルム[F1]を重ねてロール状に巻き取った。
【0085】
ロール状に巻き取ったフィルムを、フィルム端部から5層分を引出して廃棄した後、長さ100cmのフィルムを試験片として採取した。試験片から保護フィルム[F1]を剥がし、光学用フィルム[G2]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。Raは0.04μmで、外観評価では光漏れの箇所は認められず、光学的に不良となる傷等は観察されず、「○」と評価された。結果を表2に示す。
【0086】
[実施例2]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットを使用し、実施例1と同様にして光学用フィルム[G3]を成形し、参考例5で作製した保護フィルム[F2]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G3]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0087】
[比較例2]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットを使用し、実施例1と同様にして光学用フィルム[G4]を成形し、参考例6で作製した保護フィルム[F3]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G4]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0088】
[比較例3]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットを使用し、実施例1と同様にして光学用フィルム[G5]を成形し、参考例7で作製した保護フィルム[F4]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G5]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0089】
[実施例3]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットを使用し、実施例1と同様にして光学用フィルム[G6]を成形し、参考例8で作製した保護フィルム[F5]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G6]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0090】
[比較例4]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットを使用し、実施例1と同様して光学用フィルム[G7]を成形し、参考例9で作製した保護フィルム[F6]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G7]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0091】
[比較例5]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットに代えて参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D2]を使用する以外は、比較例1と同様にして光学用フィルム[G8]を成形し、保護フィルムを使用せずにロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから比較例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G8]の表面粗さRa及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0092】
[実施例4]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットに代えて参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D2]を使用する以外は、実施例1と同様にして光学用フィルム[G9]を成形し、参考例4で作製した保護フィルム[F1]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G9]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0093】
[実施例5]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットに代えて参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D2]を使用する以外は、実施例1と同様にして光学用フィルム[G10]を成形し、参考例5で作製した保護フィルム[F2]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G10]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0094】
[比較例6]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットに代えて参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D2]を使用する以外は、実施例1と同様にして光学用フィルム[G11]を成形し、参考例6で作製した保護フィルム[F3]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G11]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0095】
[比較例7]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットに代えて参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D2]を使用する以外は、実施例1と同様にして光学用フィルム[G12]を成形し、参考例7で作製した保護フィルム[F4]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G12]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0096】
[実施例6]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットに代えて参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D2]を使用する以外は、実施例1と同様にして光学用フィルム[G13]を成形し、参考例8で作製した保護フィルム[F5]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G13]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0097】
[比較例8]
ブロック共重合体水素化物[D1]のペレットに代えて参考例2で作成したブロック共重合体水素化物[D2]を使用する以外は、実施例1と同様にして光学用フィルム[G14]を成形し、参考例9で作製した保護フィルム[F6]を重ねてロール状に巻き取った。ロール状に巻き取ったフィルムから実施例1と同様にして試験片を採取し、光学用フィルム[G14]の表面粗さRaの測定及び外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
本実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
ブロック共重合体水素化物[D]からなる光学用フィルムは、特定の値以下の曲げ弾性率有し、且つ、粘着性の低い樹脂により表面が構成された保護フィルムを接触させてロール状に巻いた場合に擦り傷の発生を抑止できる(実施例1〜6)。
一方、ブロック共重合体水素化物[D]から成形された光学用フィルムは、単独でロール状に巻き取ると、擦り傷が発生する(比較例1、比較例5)。
片方の面が、曲げ弾性率が十分低い樹脂からなるものであるが、特定値以上の粘着性を有するものであって、もう片方の面が、特定値以下の粘着性を有するものであるが、曲げ弾性率が大きい樹脂からなるものである保護フィルムを使用した場合は、擦り傷は抑止できず、かつ、保護フィルムを剥離した際の剥離跡が生じ、偏光板にクロスニコルで挟んだ際に光漏れが生じる(比較例2、3、7)。
曲げ弾性率が十分低い樹脂からなる保護フィルムを使用しても、ブロック共重合体水素化物[D]の光学用フィルムに対して特定値以上の粘着性を有する保護フィルムを使用した場合は、擦り傷は抑止できるが、保護フィルムを剥離した際の剥離跡が生じ、偏光板にクロスニコルで挟んだ際に光漏れが生じる(比較例4、比較例8)。
また、ブロック共重合体水素化物[D]の光学用フィルムは、それより低い曲げ弾性率を有する樹脂からなる保護フィルムと接触させてロール状に巻いた場合でも擦り傷が発生する場合がある(比較例6;曲げ弾性率:「D2」>ポリプロピレン)。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の光学用フィルムの製造方法は、表面に擦り傷や剥離跡等の欠陥が少なく面状の優れたブロック共重合体水素化物からなる光学用フィルムを製造可能にするものであり、工業的に有用である。
本発明の製造方法により得られる光学用フィルムは、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、透明粘着フィルム用の基材フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム、タッチパネル用基板、液晶基板、光拡散シート、プリズムシート等として好適である。