特許第6561994号(P6561994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561994ブロック共重合体組成物、粘着剤組成物および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561994
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ブロック共重合体組成物、粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20190808BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C09J153/02
   C09J11/08
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-551962(P2016-551962)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2015076988
(87)【国際公開番号】WO2016052310
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-201937(P2014-201937)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】古国府 文子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貞治
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−274157(JP,A)
【文献】 特開2010−202716(JP,A)
【文献】 特開2006−282784(JP,A)
【文献】 特開2008−007654(JP,A)
【文献】 特開2006−274158(JP,A)
【文献】 特開2003−261740(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0118923(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0319549(US,A1)
【文献】 特表2002−517802(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C09J 1/00 − 5/10
C09J 9/00 − 201/10
C09J 7/00 − 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体(A)と、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(B)と、を含有してなるブロック共重合体組成物であって、
(i)前記トリブロック共重合体(A)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量MwDaと前記ジブロック共重合体(B)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量MwDbとの比(MwDa/MwDb)が0.5以上1未満であり、
(ii)含まれる重合体成分全体に占める芳香族ビニル単量体単位の割合が10〜30質量%であり、
(iii)前記トリブロック共重合体(A)の芳香族ビニル単量体単位の含有量Arと前記ジブロック共重合体(B)の芳香族ビニル単量体単位の含有量Arとの比(Ar/Ar)が1.7以上であり、
(iv)破断強度が8MPa未満、かつ破断伸びが1100%未満である
ことを特徴とするブロック共重合体組成物。
【請求項2】
前記トリブロック共重合体(A)の重量平均分子量が10万〜25万であり、かつ前記ジブロック共重合体(B)の重量平均分子量が10万〜30万である請求項1記載のブロック共重合体組成物。
【請求項3】
前記トリブロック共重合体(A)および前記ジブロック共重合体(B)を、それぞれ20〜80質量%の範囲で含有する請求項1または2記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
請求項1〜いずれかに記載のブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂とを含有する粘着剤組成物。
【請求項5】
粘着ラベル用である請求項記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での初期接着力、及び高温での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際に、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れた粘着剤組成物、これを得るためのブロック共重合体組成物、及び前記粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、省エネルギー、省資源等の観点から、溶剤を使用せず、ホットメルト加工できる粘着剤組成物が推奨されており、このような粘着剤組成物に使用するエラストマーとしてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が広く用いられている。
【0003】
粘着剤組成物には、初期接着力、剥離接着強さ及び保持力等の粘着性能が要求され、特に、低温での初期接着力、及び高温での保持力に優れた粘着剤組成物が求められている。そして、これらの粘着性能を向上させる目的で、様々な検討が行われてきた。
例えば、特許文献1及び2には、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−イソプレンジブロック共重合体を含有する粘着剤組成物が開示されている。
しかし、これらの文献に記載の粘着剤組成物は、常温での剥離接着強さに比較的優れるものの、低温での初期接着力、高温での保持力のいずれかが不十分なものであった。
【0004】
一方、粘着ラベルは、通常、剥離シートに粘着シートを粘着させたものを、目的とする粘着ラベルの形状に合わせて、ダイにより切断する工程を経て製造される。この工程において、ダイ切断性能が劣る粘着剤組成物を使用すると、粘着シートの切断が不十分となって、粘着ラベル同士がくっついてしまい、商品価値を著しく低下させたり、ダイに粘着剤組成物が付着して、その後の切断に悪影響を与えたりする問題がある。
【0005】
そこで、これまでにも、粘着剤組成物のダイ切断性能を改善する検討が行われてきた。
例えば、特許文献3には、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を含有する粘着剤組成物が提案されている。また、特許文献4には、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンジブロック共重合体及び粘着付与樹脂からなる粘着剤組成物であり、該組成物が単独のガラス転移温度を有することが開示されている。
しかしながら、これらの文献に記載の粘着剤組成物は、ダイ切断性能の改善度合いが不十分であるか、ダイ切断性能は改善されるものの粘着性能が低下するという問題があり、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れるものではなかった。
【0006】
この問題を解決すべく、特許文献5には、ポリ芳香族ビニルブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体、及び特定の重量平均分子量を有するポリイソプレンを特定割合で含有するエラストマー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−178187号公報
【特許文献2】特開昭63−178188号公報
【特許文献3】米国特許5,290,842号公報
【特許文献4】WO97/030844号パンフレット
【特許文献5】WO2003/020825号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献5に記載のエラストマー組成物によれば、低温での初期接着力、常温での剥離接着強さ及び高温での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際における粘着性能とダイ切断性能の両方に優れた粘着剤組成物が得られるとされている。
しかしながら、特許文献5に記載のエラストマー組成物であっても、望まれる粘着性能とダイ切断性能を満足しない場合があり、より優れた粘着性能とダイ切断性能を有する粘着剤組成物が要求されているのが現状である。
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであって、低温(15〜25℃の温度範囲、以下にて同じ。)での初期接着力、及び高温(40〜60℃の温度範囲、以下にて同じ。)での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際における粘着性能とダイ切断性能の両方に優れた粘着剤組成物、これを得るためのブロック共重合体組成物、及び前記粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体と芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体を含有するブロック共重合体組成物において、前記芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体のポリイソプレンブロックの重量平均分子量を、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体のポリイソプレンブロックの重量平均分子量より小さくし、含まれる重合体成分全体に占める芳香族ビニル単量体単位の存在割合を特定範囲とし、かつ、特定の破断強度及び破断伸びを有するブロック共重合体組成物によれば、優れた粘着性能を有すると共に、ダイ切断性能が向上した粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明によれば、〔1〕〜〔4〕のブロック共重合体組成物、〔5〕、〔6〕の粘着剤組成物、及び〔7〕の粘着シートが提供される。
〔1〕芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体(A)と、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(B)と、を含有してなるブロック共重合体組成物であって、
(i)前記トリブロック共重合体(A)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量MwDaと前記ジブロック共重合体(B)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量MwDbとの比(MwDa/MwDb)が0.5以上1未満であり、
(ii)含まれる重合体成分全体に占める芳香族ビニル単量体単位の割合が10〜30質量%であり、
(iii)破断強度が8MPa未満、かつ破断伸びが1100%未満である
ことを特徴とするブロック共重合体組成物。
〔2〕前記トリブロック共重合体(A)の重量平均分子量が10万〜25万であり、かつ前記ジブロック共重合体(B)の重量平均分子量が10万〜30万である、前記〔1〕記載のブロック共重合体組成物。
〔3〕前記トリブロック共重合体(A)の芳香族ビニル単量体単位の含有量Arと前記ジブロック共重合体(B)の芳香族ビニル単量体単位の含有量Arとの比(Ar/Ar)が1.5以上である前記〔1〕または〔2〕に記載のブロック共重合体組成物。
〔4〕前記トリブロック共重合体(A)及び前記ジブロック共重合体(B)を、それぞれ20〜80質量%の範囲で含有する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のブロック共重合体組成物。
【0012】
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂とを含有する粘着剤組成物。
〔6〕粘着ラベル用である前記〔5〕に記載の粘着剤組成物、
〔7〕前記〔5〕に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温での初期接着力、及び高温での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際に、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れた粘着剤組成物、及びこれを得るためのブロック共重合体組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)ブロック共重合体組成物
本発明のブロック共重合体組成物は、芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体(A)と、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(B)と、を含有してなる組成物であって、
(i)前記トリブロック共重合体(A)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量MwDaと前記ジブロック共重合体(B)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量MwDbとの比(MwDa/MwDb)が0.5以上1未満であり、
(ii)含まれる重合体成分全体に占める芳香族ビニル単量体単位の割合が10〜30質量%であり、
(iii)破断強度が8MPa未満、かつ破断伸びが1100%未満であるものである。
【0015】
<芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体(A)>
本発明で用いる芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体(A)(以下、「トリブロック共重合体(A)」ともいう。)は、〔ポリ芳香族ビニルブロック〕−〔ポリイソプレンブロック〕−[ポリ芳香族ビニルブロック]からなるトリブロック共重合体である。
【0016】
トリブロック共重合体(A)が有するポリ芳香族ビニルブロック(以下、「ポリ芳香族ビニルブロック(a)」ということがある、)は、トリブロック共重合体(A)の重合体鎖において、芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。
【0017】
ポリ芳香族ビニルブロック(a)においては、芳香族ビニル単量体単位含有量が80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。ポリ芳香族ビニルブロック(a)における芳香族ビニル単量体単位含有量が少なすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合がある。
【0018】
ポリ芳香族ビニルブロック(a)を得るための芳香族ビニル単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、3,5−ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン類;4−メトキシスチレン、3,5−ジメトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン類;等が挙げられる。これらの中でも、優れた粘着性能とダイ切断性能、及び入手容易性の観点から、スチレン、アルキル置換スチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0019】
ポリ芳香族ビニルブロック(a)は、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、芳香族ビニル単量体と、芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体とを共重合して得られるものであってもよい。
芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン,1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体が挙げられる。
【0020】
ポリ芳香族ビニルブロック(a)の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは6,000〜80,000、特に好ましくは7,000〜70,000である。ポリ芳香族ビニルブロック(a)の重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合があり、逆に大きすぎると、ブロック共重合体組成物及び粘着剤組成物の溶融粘度が高くなり、取り扱いが困難となるおそれがある。
【0021】
ポリ芳香族ビニルブロック(a)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。この比が小さいと、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られる。
【0022】
トリブロック共重合体(A)全体における芳香族ビニル単量体単位含有量は、通常、15〜75質量%、好ましくは17〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。芳香族ビニル単量体単位の含有量がこのような範囲にあると、優れた粘着性能とダイ切断性能を有する粘着剤組成物を効率よく得ることができる。
【0023】
なお、トリブロック共重合体(A)は、ポリ芳香族ビニルブロック(a)として2つのポリ芳香族ビニルブロックを有するものであるが、それらは同一のものであっても、相異なるものであってもよい。
【0024】
トリブロック共重合体(A)が有するポリイソプレンブロック(以下、「ポリイソプレンブロック(a)」ということがある。)は、トリブロック共重合体(A)の重合体鎖において、イソプレン単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。ポリイソプレンブロックにおいては、イソプレン単位含有量が80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。このイソプレン単位含有量が少なすぎると、得られる粘着剤組成物の低温での初期接着力が劣る場合がある。
【0025】
ポリイソプレンブロック(a)は、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、イソプレンと、イソプレンと共重合可能な他の単量体とを共重合して得られるものであってもよい。イソプレンと共重合可能な他の単量体の具体例としては、前記の芳香族ビニル単量体;1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン,1,3−ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;等が挙げられる。
【0026】
ポリイソプレンブロック(a)の重量平均分子量は、好ましくは70,000〜290,000、より好ましくは90,000〜240,000、特に好ましくは100,000〜220,000である。ポリイソプレンブロック(a)の重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合があり、逆に大きすぎると、ブロック共重合体組成物及び粘着剤組成物の溶融粘度が高くなり、取り扱いが困難となるおそれがある。
【0027】
ポリイソプレンブロック(a)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。この比が小さいと、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られる。
【0028】
ポリイソプレンブロック(a)中の、イソプレン単位の中でビニル結合(−CH=CH)を有するものの割合は、特に限定されない。通常、50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは5〜10質量%である。この範囲にあると、低温時の初期接着力により優れた粘着剤組成物が得られる。
【0029】
トリブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、通常80,000〜300,000、好ましくは100,000〜250,000、より好ましくは110,000〜230,000、特に好ましくは120,000〜220,000である。この重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘着剤組成物が高温での保持力に劣る場合があり、大きすぎるとその溶融粘度が高くなり取り扱いが困難となるおそれがある。
【0030】
トリブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。この比が小さいと、高温での保持力がより優れた粘着剤組成物が得られる。
【0031】
本発明のブロック共重合体組成物中のトリブロック共重合体(A)の含有量は、通常 10〜90質量%、好ましくは15〜85量%、より好ましくは20〜80質量%である。この割合が少なすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣り、逆に多すぎると粘着剤組成物の初期接着力やダイ切断性能が劣る傾向にある。
【0032】
<芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(B)>
本発明で用いる芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(B)(以下、「ジブロック共重合体(B)」ともいう。)は、〔ポリ芳香族ビニルブロック〕−〔ポリイソプレンブロック〕からなるジブロック共重合体である。
【0033】
ジブロック共重合体(B)が有するポリ芳香族ビニルブロック(以下「ポリ芳香族ビニルブロック(b)」ということがある。)は、ジブロック共重合体(B)の重合体鎖において、芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。
【0034】
ポリ芳香族ビニルブロック(b)においては、芳香族ビニル単量体単位含有量が80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。ポリ芳香族ビニルブロックにおける芳香族ビニル単量体単位含有量が少なすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合がある。
【0035】
ポリ芳香族ビニルブロック(b)を得るための芳香族ビニル単量体としては、前記ポリ芳香族ビニルブロック(a)を得るための芳香族ビニル単量体として、列記したものと同様のものが挙げられる。なかでも、スチレン、アルキル置換スチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0036】
ポリ芳香族ビニルブロック(b)は、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、芳香族ビニル単量体と、芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体とを共重合して得られるものであってもよい。
芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体が挙げられる。
【0037】
ポリ芳香族ビニルブロック(b)の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは6,000〜80,000、特に好ましくは7,000〜70,000の範囲である。ポリ芳香族ビニルブロック(b)の重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合があり、逆に大きすぎると粘着剤組成物の溶融粘度が高くなり、取り扱いが困難となるおそれがある。
【0038】
ポリ芳香族ビニルブロック(b)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。この比が小さいと、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られる。
【0039】
ジブロック共重合体(B)のポリイソプレンブロック(以下、「ポリイソプレンブロック(b)」ということがある。)は、ジブロック共重合体(B)の重合体鎖において、イソプレン単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。
ポリイソプレンブロック(b)においては、イソプレン単位の含有量が80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。このイソプレン単位含有量が少なすぎると、得られる粘着剤組成物の低温での初期接着力が劣る場合がある。
【0040】
ポリイソプレンブロック(b)は、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、イソプレンと、イソプレンと共重合可能な他の単量体とを共重合したものであってもよい。イソプレンと共重合可能な他の単量体としては、前記の芳香族ビニル単量体;1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;が挙げられる。
【0041】
ポリイソプレンブロック(b)の重量平均分子量は、好ましくは70,000〜390,000、より好ましくは90,000〜290,000、特に好ましくは100,000〜270,000である。ポリイソプレンブロック(b)の重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合があり、逆に大きすぎると、ブロック共重合体組成物及び粘着剤組成物の溶融粘度が高くなり、取り扱いが困難となるおそれがある。
【0042】
ポリイソプレンブロック(b)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。この比が小さいと、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られる。
【0043】
ジブロック共重合体(B)全体に於ける芳香族ビニル単量体単位の含有量は、通常、8〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは12〜30質量%である。この芳香族ビニル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合があり、逆に多すぎると、粘着剤組成物の低温での初期接着力が劣る場合がある。
【0044】
ジブロック共重合体(B)中のイソプレン単位の中で、ビニル結合(−CH=CH)を有するものの割合は、特に限定されず、通常、50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは5〜10質量%である。この範囲にあると、低温時の初期接着力により優れた粘着剤組成物が得られる。
【0045】
ジブロック共重合体(B)の重量平均分子量は、通常、80,000〜400,000、好ましくは90,000〜350,000、より好ましくは100,000〜300,000、特に好ましくは110,000〜280,000である。この重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘着剤組成物が高温での保持力に劣る傾向があり、逆に大きすぎると粘着剤組成物の溶融粘度が高くなり、取り扱いが困難となるおそれがある。
【0046】
ジブロック共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。この比が小さいと、高温での保持力に優れる粘着剤組成物が効率よく得られる。
【0047】
ブロック共重合体組成物中のジブロック共重合体(B)の含有量は、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは25〜75質量%である。
ジブロック共重合体(B)の含有量がこのような範囲にあると、高温での保持力とダイ切断性能により優れる粘着剤組成物が得られる。
【0048】
本発明のブロック共重合体組成物においては、トリブロック共重合体(A)のポリイソプレンブロック(a)の重量平均分子量MwDaと、ジブロック共重合体(B)のポリイソプレンブロック(b)の重量平均分子量MwDbとの比(MwDa/MwDb)は、0.5以上1未満であり、0.52〜0.98であることが好ましく、0.55〜0.95であることがより好ましく、0.58〜0.92であることがさらに好ましい。
また、本発明のブロック共重合体組成物においては、該組成物中に含まれる重合体成分全体に占める芳香族ビニル単量体単位の割合は10〜30質量%であり、11〜29質量%であることが好ましく、12〜27質量%であることがより好ましく、13〜26質量%であることがさらに好ましい。
さらに、本発明のブロック共重合体組成物は、その破断強度が8MPa未満、好ましくは7.8MPa未満、より好ましくは7.6MPa未満、更に好ましくは7.5MPa未満であり、かつ破断伸びが1100%未満、好ましくは1080%未満、より好ましくは1060%未満、更に好ましくは1050%未満である。
本発明のブロック共重合体組成物は、前記MwDaとMwDbとの比(MwDa/MwDb)、該組成物中に含まれる重合体成分全体に占める芳香族ビニル単量体単位の割合、および該組成物の破断強度及び破断伸びが、以上のような範囲にあることで、低温での初期接着力、及び高温での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際に、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れた粘着剤組成物を得ることができる。また、当該粘着剤組成物は常温での剥離接着強さも良好である。
【0049】
また、本発明のブロック共重合体組成物においては、本発明の効果がバランスよく良好に発現することから、トリブロック共重合体(A)の重量平均分子量が100,000〜250,000であり、かつジブロック共重合体(B)の重量平均分子量が100,000〜300,000であるのが好ましい。
【0050】
本発明のブロック共重合体組成物においては、トリブロック共重合体(A)の芳香族ビニル単量体単位の含有量をAr、ジブロック共重合体(B)の芳香族ビニル単量体単位の含有量をArとしたとき、ArとArの比(Ar/Ar)が、1.5以上であることが好ましく、1.6以上であることがより好ましく、1.7〜4.0であることがさらに好ましい。
前記ArとArの比(Ar/Ar)がこのような値にあることで、低温での初期接着力、及び高温での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際に、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れた粘着剤組成物を効率よく得ることができる。
また、本発明のブロック共重合体組成物におけるトリブロック共重合体(A)およびジブロック共重合体(B)の含有量としては、本発明の効果がバランスよく良好に発現することから、それぞれ20〜80質量%の範囲であるのが好ましい。
【0051】
本発明のブロック共重合体組成物において、前記トリブロック共重合体Aとジブロック共重合体Bとの質量比(A/B)は、本発明の効果を良好に発現することから、通常、 10/90〜70/30、好ましくは15/85〜60/40である。
【0052】
本発明のブロック共重合体組成物全体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を良好に発現することから、通常、150,000〜300,000である。
【0053】
<トリブロック共重合体(A)及びジブロック共重合体(B)の製造>
トリブロック共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法が採用できる。例えば、アニオンリビング重合法により、ポリ芳香族ビニルブロック及びポリイソプレンブロックを、それぞれ逐次的に重合する方法や、リビング性の活性末端を有するブロック共重合体をそれぞれ製造した後、それらと、後述するカップリング剤とを反応させてカップリングにより製造する方法が採用できる。
【0054】
ジブロック共重合体(B)の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法が採用できる。例えば、アニオンリビング重合法により、ポリ芳香族ビニルブロック及びポリイソプレンブロックを、逐次的に重合する方法が採用できる。
【0055】
また、トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)は、上記のようにそれぞれ別々に製造してもよいが、以下のように、それぞれの重合工程を1つにまとめて、アニオンリビング重合法により、トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)の混合物として製造することもできる。
【0056】
この方法は、以下の第1〜第5の5つの工程からなる。
(第1の工程)重合溶媒中で、アニオン重合開始剤を用いて芳香族ビニル単量体を重合して、リビング性の活性末端を有するポリ芳香族ビニルブロックを生成させる。
(第2の工程)ポリ芳香族ビニルブロックのリビング性の活性末端からイソプレンを重合して、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体を得る。
(第3の工程)リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応し、カップリングした芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルブロック共重合体((A)成分に相当する。)を得る。このとき、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の活性末端に対して、カップリング剤反応基の量を1モル当量未満となるように調整する。
(第4の工程)上記(第3の工程)で得られる溶液にイソプレンを添加し、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の残部のリビング性の活性末端とイソプレンとを反応させる。
(第5の工程)芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体のリビング性の活性末端を重合停止剤で失活させて、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体((B)成分に相当する。)を得る。
【0057】
以下、これら第1〜第5の各工程を順に説明する。
第1の工程は、重合溶媒中で、アニオン重合開始剤を用いて芳香族ビニル単量体を重合して、リビング性の活性末端を有するポリ芳香族ビニルブロックを生成させる工程である。
【0058】
用いる重合溶媒としては、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されず、例えば、鎖状炭化水素溶剤、環式炭化水素溶剤またはこれらの混合溶剤が使用できる。
鎖状炭化水素溶剤としては、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、1−ブテン、イソブチレン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、n−ペンタン、トランス−2−ペンタン、ネオペンタン及びこれらの混合物等が例示される。
環式炭化水素溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等が例示される。
これらの中でも、重合温度の制御及び重合体の分子量の制御が行ない易いことから、鎖状炭化水素溶剤と環式炭化水素溶剤とを混合して用いることが好ましい。
鎖状炭化水素溶剤と環式炭化水素溶剤とを混合して用いる場合、その混合比率は、(鎖状炭化水素溶剤):(環式炭化水素溶剤)の質量比で、好ましくは5:95〜50:50、より好ましくは10:90〜40:60である。
【0059】
重合溶媒の使用量は、第1〜第4の工程の合計で、使用する全単量体100質量部あたり、通常、100〜1000質量部、好ましくは150〜400質量部である。
【0060】
アニオン重合開始剤は、特に限定されず、芳香族ビニル単量体及びイソプレンのアニオン重合に用いられるものであれば、特に制限されず、公知のものを使用できる。その具合例としては、メチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等の有機モノリチウム開始剤が挙げられる。これらの中でも、n−ブチルリチウムが好ましい。重合開始剤の使用量は、常法に基づき、所望の重量平均分子量を有する重合体が得られるよう、適宜決定すればよい。
【0061】
また、重合速度を調整し、分子量分布の狭い重合体を製造し易いことから、極性化合物の存在下に重合を行うことが好ましい。
極性化合物は、分子が電気的極性をもつ化合物であり、具体的には、25℃で測定した比誘電率が、好ましくは2.5〜5.0の化合物である。
極性化合物としては、ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香族エーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等の脂肪族エーテル;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の第3級モノアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン等の第3級ポリアミン類;等が挙げられる。これらの中、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが好ましい。
【0062】
極性化合物の使用量は、アニオン重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.05〜0.5モル、より好ましくは0.01〜0.1モルの範囲である。
【0063】
第2の工程は、ポリ芳香族ビニルブロックのリビング性の活性末端からイソプレンを重合して、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体を得る工程である。
第2の工程においては、イソプレンは急激な反応熱の発生を抑制するために、連続的に添加しながら反応させることが好ましい。
【0064】
第3の工程は、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応し、カップリングした芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルブロック共重合体(トリブロック共重合体(A)に相当する。)を形成する工程である。
【0065】
カップリング剤は、重合体分子のリビング性の活性末端と反応して、該重合体分子と結合する部位を2つ有する化合物である。
【0066】
反応部位が2つある2官能性カップリング剤としては、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等の2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタン等の2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズ等の2官能性ハロゲン化スズ;安息香酸、CO、2−クロロプロペン等が挙げられる。中でも、ジメチルジクロロシランが好ましい。カップリング剤の使用量は、カップリングして得られる芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルブロック共重合体(トリブロック共重合体(A)に相当する。)の量が所望の範囲になるよう、適宜決定すればよい。
【0067】
第4の工程は、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体のリビング性の活性末端の残部とイソプレンとを反応させる工程である。
イソプレンを添加すると、カップリング剤と反応せずに残っていた活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の末端から、ポリイソプレン鎖が伸長する。それにより、ジブロック共重合体(B)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量を、トリブロック共重合体(A)のポリイソプレンブロックの重量平均分子量よりも大きくすることができる。
【0068】
第5の工程は、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体のリビング性の活性末端の残部を重合停止剤で失活させて、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(ジブロック共重合体(B)に相当する。)を生成させる工程である。
【0069】
重合停止剤としては、アニオンリビング重合において通常使用されるものが使用できる。具体的には、水;メチルアルコールやエチルアルコール等のアルコール類;塩酸等の無機酸;及び酢酸等の有機酸;クロロトリメチルシラン等の1官能性のシラン化合物;等が挙げられる。
【0070】
以上の方法により、トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)との混合物を含む溶液が得られる。この溶液に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
その後、スチームストリッピングのような公知の重合体分離法によりその溶液から重合体を分離し、得られた重合体を乾燥して、トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)の混合物が得られる。
【0071】
上記の方法により、トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)の混合物を製造する場合、トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)の合計量に対するトリブロック共重合体(A)の存在割合は、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、通常、60質量%以下である。この割合をこの範囲にあるようにすれば、本発明のブロック共重合体組成物を製造する際に、別途製造したトリブロック共重合体(A)を追加することなく、好ましい組成のブロック共重合体組成物とすることができる。
トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)の合計量に対するトリブロック共重合体(A)の存在割合は、カップリング剤の使用量によって調整できる。
【0072】
また、本発明のブロック共重合体組成物は、従来公知の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、充填剤、顔料等を所望量含んでいてもよい。
【0073】
本発明のブロック共重合体組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、それぞれ別個に製造または入手した、トリブロック共重合体(A)、ジブロック共重合体(B)を所定の割合で混練して製造する方法、トリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)をそれぞれ所定の割合で溶液の状態で混合し、公知の方法により重合体を分離し、乾燥して製造する方法、上述した方法により得られたトリブロック共重合体(A)とジブロック共重合体(B)の混合物をそのまま重合体成分として用いる方法等を採用できる。
【0074】
2)粘着剤組成物
本発明の粘着剤組成物は、本発明のブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂とを含有してなる。
粘着付与樹脂は、特に限定されず、粘着剤組成物に使用されている従来公知の、天然樹脂系粘着付与樹脂、合成樹脂系粘着付与樹脂等が使用できる。
【0075】
天然樹脂系粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン等のロジン類;水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン類;変性ロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル類等が例示される。
テルペン系樹脂としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン(リモネン)系等のテルペン樹脂のほか、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が例示される。
【0076】
合成樹脂系粘着付与樹脂は、重合系粘着付与樹脂と縮合系粘着付与樹脂とに大別される。重合系粘着付与樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5−C9系)石油樹脂、水素添加石油樹脂、脂環族系石油樹脂等の石油樹脂類;クマロン・インデン樹脂;スチレン系、置換スチレン系等のピュア・モノマー系石油樹脂が挙げられる。縮合系粘着付与剤としては、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のフェノール系樹脂及びキシレン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、石油樹脂が好ましく、脂肪族系石油樹脂及び芳香族系単量体の共重合量が30質量%以下である共重合系石油樹脂がより好ましく、芳香族系単量体の共重合量が25質量%以下である共重合系石油樹脂が特に好ましい。
【0077】
粘着付与樹脂の配合量は、本発明のブロック共重合体組成物100質量部当たり、通常、10〜500質量部、好ましくは50〜350質量部、より好ましくは70〜250質量部である。
【0078】
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果が実質的に阻害されない範囲で、前記のブロック共重合体(A)、(B)以外の他のエラストマーを、所望量含んでいてもよい。
【0079】
前記他のエラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン及び天然ゴム等が例示される。
【0080】
本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び充填剤等のその他の配合剤を含んでいてもよい。
【0081】
軟化剤としては、例えば、芳香族系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイル等の伸展油;ポリブテン及びポリイソブチレン等の液状重合体;等が使用でき、これらの中でもパラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイル等の伸展油が好ましい。
【0082】
軟化剤の使用量は、本発明のブロック共重合体組成物100質量部当たり好ましくは5〜500質量部、より好ましくは10〜300質量部、特に好ましくは10〜150質量部である。軟化剤が少なすぎると、粘着剤組成物の溶融粘度が高くなり、取り扱いし難くなる傾向があり、逆に多すぎると、軟化剤がブリードし易くなる傾向にある。
【0083】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及びペンタエリスリチル・テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオジプロピオネート及びジステアリルチオジプロピオネート等のチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト及び4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト等の亜燐酸塩類等が挙げられる。これらの使用量は、それぞれの酸化防止剤の特性、得ようとする粘着剤組成物に求められる特性に応じて適宜決めればよい。
【0084】
本発明の粘着剤組成物は、本発明のブロック共重合体組成物、粘着付与樹脂、及び所望によりその他の配合剤を混合することにより製造することができる。
その製造方法は特に限定されず、従来公知の方法が採用できる。例えば、各成分を、窒素雰囲気下、160〜180℃程度の高温で溶融混練して製造する方法が採用できる。
【0085】
以上のようにして得られる本発明の粘着剤組成物は、低温での初期接着力、及び高温での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際に、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れたものである。また、本発明の粘着剤組成物は常温での剥離接着強さが良好である。
【0086】
3)粘着シート
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する。
粘着剤層は、通常、本発明の粘着剤組成物を支持体上に塗布し、乾燥して形成することができる。
【0087】
用いる支持体としては、特に限定されず、例えば、クラフト紙、和紙、上質紙及び合成紙等の紙類;綿布、スフ布及びポリエステル布等の布類;セロハンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム及びポリエチレンフィルム等の樹脂フィルム;アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔;ポリエステル製不織布及びレーヨン製不織布等の不織布等が挙げられる。
【0088】
これらの支持体は、予め、その表面をコロナ放電処理したり、プライマリーコーティング剤を塗布したりしたものであってもよい。
【0089】
塗布方法は、特に限定されず、従来公知の方法が採用できる。例えば、本発明の粘着剤組成物を適当な有機溶媒に溶解して粘度調整を行い、得られた塗付液を塗布する方法、粘着剤組成物を加熱溶融して直接塗布する方法、乳化剤を用いて、粘着剤組成物を水に分散させて、エマルジョンを調製し、このエマルジョンを塗布する方法等が採用できる。
【0090】
粘着剤組成物を溶解させる有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;これらのハロゲン化物等を挙げることができる。
【0091】
粘着剤組成物を含む塗布液を支持体上に塗布し、乾燥することで、粘着剤層を形成することができる。
得られる粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物を用いて形成されたものであるため、粘着特性に優れ、且つ、ダイ切断性能にも優れる。
粘着剤層の厚みは、通常10μm〜100μm、好ましくは20μm〜70μmである。
【0092】
本発明の粘着シートは、その使用用途に応じ、適宜な形状に切断、打ち抜き加工等されたものであってもよい。さらに、本発明の粘着シートが有する粘着剤層は連続的に形成されたものに限定されない。例えば、点状、ストライプ状等の、規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0093】
本発明の粘着シートは、支持体の少なくとも片面に、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を、固定的に、すなわち当該支持体から粘着剤層を分離する意図なく設けたものである。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着フィルム、粘着ラベル等が含まれる。本発明の粘着シートは、ダイ切断性能に優れる本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するものであるため、ダイカットして使用される粘着ラベル用途に特に好適である。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0095】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
〔ブロック共重合体組成物およびブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体の重量平均分子量〕
流速0.35mL/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。装置はHLC8220(東ソー社製)、カラムはShodex(登録商標)〔昭和電工社製、KF−404HQ〕を3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
【0096】
〔ブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体の含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
【0097】
〔ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mLを入れた反応容器に、試料を300mg溶解させた。この反応容器を冷却槽に入れ−25℃としてから、反応容器に170mL/分の流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。得られた反応液を反応液1とする。
次いで、内部を窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mLと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器に、反応液1をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。反応終了後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。得られた反応液を反応液2とする。反応液2中に生じた固形の生成物を濾別し、濾別した固形の生成物に100mLのジエチルエーテルを加え、全容を10分間撹拌した後、濾過することにより、抽出液を得た。この抽出液と、濾別した際の濾液とを合わせ、合わせた溶液から溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。
このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
【0098】
〔ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を差し引き、その計算値に基づいて、イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
【0099】
〔ブロック共重合体のスチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
【0100】
〔ブロック共重合体組成物(全体)のスチレン単位含有量〕
H−NMRの測定に基づき求めた。
【0101】
〔ブロック共重合体組成物の引張物性〕
170℃でプレス成型したブロック共重合体の1mm厚シートを用い、JIS K 6251に準じた方法で、破断強度及び破断伸びを測定した。ダンベル形状は、JIS−7113−2(1/2サイズ)を用いた。破断強度及び破断伸びが共に値が小さいものほど、ラベルのダイカット性に優れる。
【0102】
〔ラベル用粘着剤組成物の初期接着力〕
試料として幅25mmの粘着テープを、被着体として硬質ポリエチレン(HDPE)板を使用し、試験速度が1000mm/分、接着部が25×25mm、温度23℃にてループタック(N/25mm)を引張試験器にて評価した。値が大きいものほど、初期接着力に優れる。
【0103】
〔ラベル用粘着剤組成物の保持力〕
試料を幅10mmの粘着テープとし、被着体として鏡面SUS板を使用し、PSTC−6(米国粘着テープ委員会による保持力試験法)に準じ、接着部が10×25mm、負荷が3.92×10Pa、温度50℃にて、剥がれるまでの時間(分)により、保持力を評価した。値が大きいものほど、保持力に優れる。
【0104】
〔実施例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」と称する)4.88ミリモル、およびスチレンI 2.1kgを添加した。全容を40℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム162.73ミリモルを添加し、反応液を50℃に昇温させて、1時間重合反応を行った。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、反応液の温度を50〜60℃に保持しながら、イソプレンI 7.0kgを、1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行った。このときのイソプレンの重合転化率は100%であった。
次いで、得られた反応液に、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン(2官能性カップリング剤)43.94ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルトリブロック共重合体(A)を形成させた。この後、反応液の温度を50〜60℃に保持しながら、イソプレンII 4.0kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行い、芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(B)を形成させた。このときのイソプレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール244.1ミリモルを添加して反応を停止した。反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。
以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を36部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.36部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得た。得られた析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、実施例1の組成物(ブロック共重合体組成物)を回収した。
なお、得られた前記反応液の一部を取り出し、含有される各ブロック共重合体の重量平均分子量、ブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体の含有量、各ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のスチレン単位含有量、ブロック共重合体組成物(全体)のスチレン単位含有量を求めた。
また、得られたブロック共重合体組成物を170℃にてプレス成形することで1mm厚のシートを作製し、引張物性を評価した。これらの値は、表2に示した。
【0105】
〔実施例2〜3〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2と3の組成物を回収した。実施例2と3の組成物につき、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0106】
〔比較例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA3.75ミリモルおよびスチレンI 1.7kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム125.0ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレンI 8.4kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン27.50ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行った後、反応器に重合停止剤としてメタノールを187.5ミリモル添加して反応を停止した。反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、比較例1の組成物を回収した。得られた組成物につき、実施例1と同様にして引張物性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0107】
〔比較例2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA2.50ミリモルおよびスチレンI 0.9kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム83.33ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレンI 8.2kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、さらにスチレンIIを0.9kg添加して反応を行った後、反応器に重合停止剤としてメタノールを125.0ミリモル添加して反応を停止させた。反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、比較例2の組成物を回収した。得られた組成物につき、実施例1と同様にして引張物性を評価した。結果を表2に示す。
【0108】
〔比較例3−1〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして、比較例3−1の組成物を回収した。比較例3−1の組成物については、比較例3−2の組成物と混合後、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0109】
〔比較例3−2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kgおよびTMEDA12.50ミリモルを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム416.67ミリモルを添加し、50℃〜60℃を保つようにイソプレンI 10.0kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合しポリイソプレンホモポリマーを形成させた。イソプレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール625.01ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。なお、反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を60℃で真空乾燥することにより、比較例3−2の組成物(ポリイソプレン)を回収した。比較例3−2の組成物については、比較例3−1の組成物と混合後、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。なお、表2においては、比較例3−1の組成物(70部)と比較例3−2の組成物(30部)とを混合して得られた組成物を用いて得られた結果を比較例3として示す。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
〔実施例4〕
実施例1で得られた組成物100部を攪拌翼型混練機に投入し、これに粘着付与樹脂(商品名「クイントン(登録商標)D100」、脂肪族芳香族共重合系炭化水素樹脂、日本ゼオン株式会社製)150部、軟化剤(商品名「サンピュアN90」、ナフテン系プロセスオイル、日本興産株式会社製)50部および酸化防止剤(商品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASF社製)3部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160〜180℃で1時間混練することにより、実施例4のラベル用粘着剤組成物を調製した。厚さ25μmのポリエステルフィルムに得られたラベル用粘着剤組成物を塗工し、これにより得られた試料について、初期接着力、保持力を評価した。これらの結果を表3に示す。
【0113】
〔実施例5〜6,比較例4〜6〕
実施例2〜3の組成物および比較例1〜3の組成物をそれぞれ用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5〜6および比較例4〜6のラベル用粘着剤組成物を調製した。得られたラベル用粘着剤組成物は、実施例4と同様に評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
表2と表3から、以下のようなことが分かる。すなわち、本発明のラベル用粘着剤組成物は、低い破断強度および破断伸びを示す、本発明のブロック共重合体組成物を主成分としたものであり、保持力が良好で、しかも粘着性能とダイ切断性能の両方に優れたものであることが分かる(実施例4〜6)。これに対して、本発明のブロック共重合体組成物を含有しないラベル用粘着剤組成物では、上記物性の性能バランスに劣る(比較例4〜6)。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、低温での初期接着力、及び高温での保持力に優れ、粘着ラベルに用いた際に、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れた粘着剤組成物及びこれを得るためのブロック共重合体組成物が提供される。
その粘着剤組成物は、幅広い温度範囲で優れた粘着性能を有するので、包装用、事務用、両面テープ用、マスキング用及び電気絶縁用等種々の粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ゴミ取りローラー等に使用でき、特にダイ切断性能に優れるので、粘着ラベルに好適に使用できる。