特許第6562092号(P6562092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562092電子部品封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電子部品装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562092
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電子部品封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190808BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20190808BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190808BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20190808BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20190808BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   C08L63/00 C
   C08K3/013
   C08K5/09
   C08L83/04
   C08G59/50
   H01L23/50 V
   H01L23/50 D
   H01L23/48 V
   H01L23/48 K
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-7996(P2018-7996)
(22)【出願日】2018年1月22日
(62)【分割の表示】特願2016-3299(P2016-3299)の分割
【原出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2018-67741(P2018-67741A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年2月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】北川 祐矢
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 輝芳
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘典
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−029352(JP,A)
【文献】 特開平06−025464(JP,A)
【文献】 特開2005−314567(JP,A)
【文献】 特開2006−104393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
C08L 83/00−83/16
C08K 3/00−13/08
H01L 23/30、23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が電解ニッケルメッキ処理もしくは無電解ニッケルメッキ処理されたリードフレーム、またはアルミニウム製リードフレームを備えた電子部品の封止用に用いられるエポキシ樹脂組成物であって、下記の(A)〜(D)成分とともに、下記の(E)成分および(F)成分を含有し、下記(E)成分の含有量が、(A)成分,(B)成分および(C)成分の合計量に対して0.18〜21.0重量%であり、下記(F)成分の含有量が、(A)成分,(B)成分および(C)成分の合計量に対して1.0〜20.0重量%であることを特徴とする電子部品封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂。
(B)硬化剤。
(C)硬化促進剤。
(D)無機質充填剤。
(E)没食子酸。
(F)シリコーン系化合物。
【請求項2】
(C)成分がイミダゾール系化合物である請求項1記載の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品を樹脂封止してなる電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂系の封止用樹脂組成物であり、パワーデバイスのような高熱伝導性を必要とする封止用途において、表面が電解ニッケルメッキや無電解ニッケルメッキ処理されたリードフレーム(以下、「ニッケルメッキフレーム」と略すことがある)やアルミニウム製リードフレームに対する密着性を向上させ、デバイスとしての信頼性を向上させることができる電子部品封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC、LSI等の各種半導体素子は、通常、セラミックパッケージやプラスチックパッケージ等により封止され半導体装置化されている。上記前者のセラミックパッケージは構成材料そのものが耐熱性を有し、耐湿性にも優れていることから、高温高湿下に対しても対応しており、機械的強度にも優れていることから、信頼性の高い封止が可能であった。
【0003】
しかしながら、構成材料そのものが比較的高価であることや、量産性に劣るという問題点を有しているため、近年では上記後者のプラスチックパッケージによる樹脂封止が主流となっている。このプラスチックパッケージによる樹脂封止には、従来から耐熱性に優れるという性質を利用してエポキシ樹脂組成物が用いられており、良好な成績を収めている。
【0004】
一方、自動車、大型家電製品や産業機器において、大電力の制御等を行なう半導体素子として、トランジスタやダイオード、サイリスター等のパワーデバイスと呼ばれる電子部品がある。このようなパワーデバイスは、高電圧下に曝されるため、半導体素子から生ずる発熱が非常に大きいことから、放熱性が悪いと、パッケージや半導体素子の破壊が生起しやすいこととなる。
【0005】
また、上記パワーデバイス用のリードフレームとしては、ニッケルメッキフレームやアルミニウム製リードフレームが採用されているが、これらリードフレームは、一般に銅製リードフレームや42アロイのような合金製リードフレームと比べて封止樹脂に対する接着性が乏しいため、パッケージ内において封止樹脂との間で剥離が生じやすい。このような剥離が生じると、封止樹脂内での熱伝導性が低下し、デバイスの信頼性が低下するという問題が生じる。このような背景から、封止樹脂が接着し難い金属材料に対して、接着性を向上させてなる封止樹脂の開発が強く望まれている。
【0006】
例えば、チオール基を含有する特定のカップリング剤を使用することによって各種基材に対する接着性の向上を図り信頼性を向上させることが提案されている(特許文献1参照)。また、それ以外にも、エポキシ基を有するシランカップリング剤やビニル基を有するシランカップリング剤の使用によって各種基材に対する接着性の向上を図ることが幾つか提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−206016号公報
【特許文献2】特開平3−119049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記提案された従来の封止樹脂材料に代表されるエポキシ樹脂組成物では、各種金属材料に対する接着性という点で未だ不充分であり、この接着性に基づく信頼性に関して満足のいくものではなかった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、例えば、高熱伝導性を必要とするパワーデバイスに用いられている金属製リードフレーム、特にニッケルメッキフレームやアルミニウム製リードフレーム対し優れた接着性を有する電子部品封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて得られる電子部品装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(D)成分とともに、下記の(E)成分および(F)成分を含有する電子部品封止用エポキシ樹脂組成物であって、下記(E)成分の含有量が、(A)成分,(B)成分および(C)成分の合計量に対して0.18〜21.0重量%である電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)エポキシ樹脂。
(B)硬化剤。
(C)硬化促進剤。
(D)無機質充填剤。
(E)没食子酸
(F)シリコーン系化合物。
【0011】
そして、本発明は、上記電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品を樹脂封止してなる電子部品装置を第2の要旨とする。
【0012】
本発明者らは、パワーデバイスのように高熱伝導性を必要とする電子部品装置にて用いられる金属製のリードフレーム、とりわけニッケルメッキフレームやアルミニウム製リードフレーム等に対する接着性に優れた封止材料を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、配合成分に没食子酸〔(E)成分〕を接着付与剤として用いると、上記リードフレームに対する接着力が向上するという知見を得た。そして、この知見に基づきさらに検討を重ねた結果、上記没食子酸〔(E)成分〕を上記特定の配合割合で用いると、硬化物の物性の低下等他の弊害が生じることもなく上記アルミニウム製リードフレームやニッケルメッキフレームに対して充分な接着性の向上効果が得られることを見出し本発明に到達した。
【0013】
上記没食子酸〔(E)成分〕を用いることによる、リードフレームに対する接着性の向上は、つぎのような理由によるものと推測される。すなわち、リードフレーム表面に存在する水酸基と、上記没食子酸〔(E)成分〕のカルボン酸が化学的に結合することにより、封止樹脂とリードフレームとの接着が強固になり、接着性が向上するものと推測される。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明は、上記没食子酸〔(E)成分〕を特定量含有する電子部品封止用エポキシ樹脂組成物である。このため、リードフレーム、特にアルミニウム製リードフレームやニッケルメッキフレームに対する優れた接着性を奏するようになり、半田時のパッケージクラックの発生や、封止樹脂部分との剥離の発生を抑制することが可能となる。したがって、上記電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を用いて得られる電子部品装置では、高い信頼性を備えたものを得ることができる。
【0015】
そして、上記(E)成分の没食子酸は、カルボキシ基とヒドロキシ基を有するヒドロキシ酸であるため、接着性の観点からより好ましいものであり、特に芳香族環を有するため、接着性に加えて低吸水性の向上効果が図られる。
【0016】
また、硬化促進剤〔(C)成分〕がイミダゾール系化合物であると、硬化性および接着性がより一層向上する。
【0017】
さらに、本発明は、シリコーン系化合物〔(F)成分〕を含有するため、低応力化の向上と、さらなる接着性の向上効果が得られる。
【0018】
そして、本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物は、金属製のリードフレームの中でも、近年その使用が増加しつつあるアルミニウム製リードフレームやニッケルメッキリードフレームはもちろん、銅製フレーム、金メッキフレーム、銀メッキフレーム、パラジウム(Pd)メッキフレーム、さらには絶縁被膜層(レジスト層)が形成された配線基板等に対しても優れた接着性を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0020】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物(以下、「エポキシ樹脂組成物」と略すことがある)は、エポキシ樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、硬化促進剤(C成分)と、無機質充填剤(D成分)と、没食子酸(E成分)、さらにシリコーン系化合物(F成分)を用いて得られるものであって、通常、粉末状もしくはこれを打錠したタブレット状になっている。
【0021】
〈A:エポキシ樹脂〉
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂等、各種エポキシ樹脂を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これらエポキシ樹脂の中でも、融点または軟化点が室温を超えていることが好ましい。上記各種エポキシ樹脂の中でも、パワーデバイス用途に用いる場合は、175℃以上のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましく、例えば、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を用いることが好ましい。また、ボールグリッドアレイ(BGA)用途に用いる場合は、低粘度、低吸水性が必要な特性であることから、ビフェニル型エポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
【0022】
〈B:硬化剤〉
上記エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられる硬化剤(B成分)は、上記エポキシ樹脂(A成分)を硬化させる作用を有するものであり、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂等、各種フェノール樹脂を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記各種フェノール樹脂の中でも、パワーデバイス用途に用いる場合は、175℃以上のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましく、例えば、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂等を用いることが好ましい。
【0023】
上記エポキシ樹脂(A成分)と硬化剤(B成分)との配合割合は、エポキシ樹脂を硬化させるに充分な量に設定することが好ましい。具体的には、硬化剤(B成分)としてフェノール樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、フェノール樹脂中の水酸基当量が0.6〜1.5当量となるように配合することが好ましい。より好ましくは0.6〜1.2当量であり、特に好ましくは0.7〜1.0当量である。
【0024】
〈C:硬化促進剤〉
上記A成分およびB成分とともに用いられる硬化促進剤(C成分)としては、具体的には、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートやトリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾールやフェニルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5等の三級アミン系化合物等の化合物があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、硬化性,接着性を考慮した場合、イミダゾール系化合物の硬化促進剤が好ましく用いられる。
【0025】
上記硬化促進剤(C成分)の含有量は、上記硬化剤(B成分)に対して0.001〜15.0重量%に設定することが好ましく、より好ましくは0.01〜10.0重量%である。すなわち、硬化促進剤の含有量が少なすぎると、充分な硬化促進効果を得られない場合があり、また硬化促進剤の含有量が多すぎると、得られる硬化物に変色がみられる傾向があるからである。
【0026】
〈D:無機質充填剤〉
上記A〜C成分とともに用いられる無機質充填剤(D成分)としては、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ粉末(溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等)、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化珪素粉末等があげられる。これら無機質充填剤は、破砕状、球状、あるいは摩砕処理したもの等いずれのものでも使用可能である。そして、これら無機質充填剤は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、得られる硬化物の線膨張係数を低減できるという点から上記シリカ粉末を用いることが好ましく、上記シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることが、高充填性、高流動性という点から特に好ましい。上記溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末があげられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。
【0027】
また、無機質充填剤(D成分)の平均粒径は、1〜50μmの範囲であることが好ましく、特に好ましくは2〜40μmの範囲のものである。さらに、上記平均粒径の無機質充填剤に加えて、上記粒径とは異なる平均粒径0.5〜2μmの範囲の無機質充填剤を併用すると、流動性の向上という観点からより一層好ましい。なお、上記無機質充填剤(D成分)の平均粒径は、例えば、母集団から任意の測定試料を取り出し、市販のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0028】
そして、上記無機質充填剤(D成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の50〜95重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは65〜92重量%である。すなわち、無機質充填剤(D成分)の含有量が少なすぎると、エポキシ樹脂組成物中の有機成分の占める割合が多くなり、硬化物の難燃効果に乏しくなる傾向がみられ、逆に含有量が多すぎると、エポキシ樹脂組成物の流動性が著しく低下する傾向がみられるからである。
【0029】
〈E:没食子酸
上記A〜D成分とともに用いられる没食子酸(E成分)は、封止樹脂であるエポキシ樹脂組成物硬化体を、例えば、アルミニウム製リードフレームやその表面が無電解ニッケルメッキ処理されたリードフレームに強固に接着させるために重要な作用を示す成分である。なお、上記E成分である没食子酸と同様の、カルボン酸およびその誘導体(E′成分、カルボン酸誘導体としてエステル類を除く)としては、例えば、脂肪族あるいは芳香族の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびこれらの無水物等があげられる。また、ヒドロキシ酸、ケト酸等や、アミノ基、ニトロ基等、他の官能基を有するカルボン酸も含まれる。具体的には、没食子酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、2−〔ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕酢酸、無水トリメリット酸、シュウ酸、マレイン酸等があげられる。
【0030】
上記没食子酸(E成分)の含有量は、その配合方法に関わらず、上記A成分,B成分およびC成分の合計量に対して0.18〜21.0重量%に設定される。特に好ましくは、1.0〜15.0重量%である。すなわち、E成分の含有量が少なすぎると、リードフレーム表面、あるいは配線基板のレジスト層に対する接着性の向上効果が不充分となり、逆に含有量が多すぎると、吸水しやすくなり、硬化物特性が悪くなるからである。
【0031】
〈F:シリコーン系化合物〉
また、本発明においては、上記A〜E成分とともに、シリコーン系化合物(F成分)用いられる。このシリコーン系化合物(F成分)はいわゆる低応力化剤としての作用を奏するものであり、かつ上記没食子酸(E成分)との併用による接着性のさらなる向上効果が実現する。
【0032】
上記シリコーン系化合物(F成分)としては、例えば、有機ポリシロキサンの具体例として、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ハイドロジェンメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、エポキシ・ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルコール変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、高級脂肪酸変性ポリシロキサン、ビニル基含有ポリシロキサン、アルキル・ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル・アラルキル・ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、クロロアルキル変性ポリシロキサン、(メタ)アクリロイル変性ポリシロキサン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併用してもよい。なお、上記シリコーン系化合物(F成分)は、工業製品または試薬として購入可能な化合物を用いてもよいし、従来公知の方法にて合成された化合物を用いてもよい。
【0033】
上記シリコーン系化合物(F成分)の含有量は、上記A成分,B成分およびC成分の合計量に対して1.0〜20.0重量%に設定することが好ましく、特に好ましくは2.0〜15.0重量%である。すなわち、F成分の含有量が少なすぎると、低応力性の充分な付与効果や、F成分併用による接着性の向上効果が得られ難く、逆に含有量が多すぎると、吸水しやすくなり、硬化物特性が悪くなるからである。
【0034】
〈各種添加剤〉
さらに、本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物には、前記A〜E成分およびシリコーン系化合物(F成分)以外に、必要に応じて、離型剤、上記シリコーン系化合物(F成分)以外の低応力化剤、難燃剤、顔料、カップリング剤等の他の添加剤を適宜配合することができる。これら添加剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲内にて適宜に設定される。
【0035】
上記離型剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウム等の化合物があげられ、例えば、カルナバワックスやポリエチレン系ワックス等が用いられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0036】
上記低応力化剤としては、例えば、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等のブタジエン系ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
上記難燃剤としては、有機リン系化合物、酸化アンチモン、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0038】
上記顔料には、静電除去効果を有するカーボンブラック等を用いることができる。
【0039】
上記カップリング剤としては、2個以上のアルコキシ基を有するものが好適に用いられる。具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0040】
さらに、耐湿信頼性テストにおける信頼性向上を目的として、ハイドロタルサイト類化合物、水酸化ビスマス等のイオントラップ剤を配合してもよい。
【0041】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A〜E成分およびF成分、さらに必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜配合し、粉体ミキサーでブレンドする。ついで、ブレンドしたものをミキシングロールや押出式の混練機等を用いて加熱状態で溶融混練した後、これを室温下で冷却固化させる。その後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程により目的とするエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0042】
〈電子部品装置〉
このようにして得られるエポキシ樹脂組成物を用いての半導体素子の封止方法は、特に制限するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知のモールド方法により行うことができ、電子部品装置化することができる。このようにして得られる電子部品装置としては、ICやLSI、パワーデバイス等の電子部品装置等があげられる。
【0043】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を封止材料として用いる場合、例えば、リードフレームに対する接着性の向上という点から、特に上記リードフレームに関して、従来の封止材料では充分な接着力が得られなかった、アルミニウム製リードフレームやその表面がニッケルメッキ処理されたリードフレームを備えたパッケージの封止材料に好適である。上記アルミニウム製リードフレームやその表面がニッケルメッキ処理された部材であるリードフレームは、一般に、封止樹脂硬化体との接着性に乏しいものであるが、本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を用いた場合には、優れた接着性を示すことから信頼性の高い電子部品装置が得られる。
【実施例】
【0044】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0045】
まず、実施例に先立って下記に示す各成分を準備した。
【0046】
〔エポキシ樹脂(A成分)〕
トリフェノールメタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量169、融点60℃)
【0047】
〔硬化剤(B成分)〕
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、融点83℃)
【0048】
〔硬化促進剤c1(C成分)〕
1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5
【0049】
〔硬化促進剤c2(C成分)〕
2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール
【0050】
〔無機質充填剤(D成分)〕
溶融球状シリカ粉末(平均粒径30.4μm)
【0051】
〔カルボン酸誘導体e1(E成分)〕
無水トリメリット酸
【0052】
〔ヒドロキシ酸e2(E成分)〕
没食子酸
【0053】
〔ヒドロキシ酸e3(E成分)〕
5−ヒドロキシイソフタル酸
〔ヒドロキシ酸e4(E成分)〕
2−ヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e5(E成分)〕
3−ヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e6(E成分)〕
4−ヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e7(E成分)〕
2,4−ジヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e8(E成分)〕
2,5−ジヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e9(E成分)〕
2,6−ジヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e10(E成分)〕
3,4−ジヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e11(E成分)〕
3,5−ジヒドロキシ安息香酸
〔ヒドロキシ酸e12(E成分)〕
酒石酸
〔ヒドロキシ酸e13(E成分)〕
クエン酸
〔ヒドロキシ酸e14(E成分)〕
リンゴ酸
〔ヒドロキシ酸e15(E成分)〕
N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸
〔ヒドロキシ酸e16(E成分)〕
N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン
【0054】
〔カルボン酸誘導体e17(比較例用E成分)〕
没食子酸メチル
〔カルボン酸誘導体e18(比較例用E成分)〕
没食子酸エチル
〔カルボン酸誘導体e19(比較例用E成分)〕
没食子酸プロピル
【0055】
〔シリコーン系化合物(F成分)〕
アルキレン基含有オルガノポリシロキサン(東レ・ダウコーニングシリコーン社製、品番SF8421EG)
【0056】
〔離型剤1〕
カルナバワックス
【0057】
〔離型剤2〕
酸化ポリエチレンワックス(酸価17)
【0058】
〔顔料〕
カーボンブラック
【0059】
〔難燃剤〕
水酸化アルミニウム
【0060】
〔カップリング剤〕
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
【0061】
〔実施例1、参考例1〜3、比較例1〜8〕
後記の表1〜表5に示す各成分を同表に示す割合で常温にて配合し、80〜120℃に加熱したロール混練機にかけて溶融混練(5分間)した。つぎに、この溶融物を冷却した後、固体状になったものを粉末状に粉砕した。これにより得られた粉末をタブレット状に打錠成形することによりエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0062】
このようにして得られた実施例、参考例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用い、接着性(剪断接着力)、吸水性(吸水率)を、下記に示す方法に従って測定・評価した。これらの結果を後記の表1〜表5に併せて示す。
【0063】
〈接着性:対リードフレーム〉
電解ニッケルメッキ処理されたリードフレーム(電解ニッケルメッキ)、無電解ニッケルメッキ処理されたリードフレーム(無電解ニッケルメッキ)およびアルミニウム(A6063)製リードフレーム(アルミニウム)をそれぞれ準備し、約8mm×8mm角の大きさに切断して各チップを作製した。そして、上記切断したチップを専用の金型に挟み、このチップ上に、底面積10mm2×高さ3mmの円錐台状の封止用樹脂(タブレット)をプレス機(東邦インターナショナル社製、TF15)にて成型することにより接着力試験片を作製した。成形条件は、175℃×120秒、型締め圧1962MPa、トランスファー圧686.7MPaとした。さらに、この試験片を175℃で5時間加熱して後硬化を行なった。その後、Dage4000(Dage社製)によりチップに対する封止用樹脂の剪断接着力を測定した。一回の成形および測定に、6個の試験片を作製して測定し、その平均値を剪断接着力とした。なお、剪断接着力を測定する際、測定台の温度は25℃とした。
【0064】
〔吸水性〕
吸水性を測定,評価するにあたり、封止用樹脂(タブレット)を用いてプレス機(東邦インターナショナル社製、TF15)にて直径5cm×厚み1mmの円板を成形することにより吸水性試験片を作製した。成形条件は、175℃×120秒、型締め圧1962MPa、トランスファー圧686.7MPaとした。さらに、この試験片を175℃で5時間加熱して後硬化を行なった。その後、作製した試験片を105℃の乾燥機にて1時間乾燥させた後、常温(25℃)に戻った時点の重量を測定した。ついで、温度121℃,湿度100%の条件にて48時間吸水させた後の重量を測定し、これら吸水前後の測定値から吸水率を算出した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
上記結果から、実施例品および参考例品は、いずれのリードフレームに対しても剪断接着力が高い結果が得られた。このことから、実施例および参考例にて作製したエポキシ樹脂組成物は信頼性の高い電子部品装置を得るのに適したものであるといえる。さらに、実施例および参考例の中でも、接着性に優れ、かつ良好な吸水率の測定結果が得られた、芳香族環を有するヒドロキシ酸である没食子酸およびシリコーン化合物を配合してなる実施例品が信頼性(接着性,低吸水性)の観点から封止材用材料として特に好ましいことがわかる。
【0071】
これに対して、カルボン酸およびその誘導体の少なくとも一方(E、E′成分)が配合されていない比較例1品は、ニッケルメッキフレームおよびアルミニウム製フレームに対しての接着力を示さなかった。また、上記E、E′成分の含有量が特定の範囲を外れ下回る値の比較例2,4品は、実施例品および参考例品に比べて剪断接着力がはるかに弱い結果となった。一方、上記E、E′成分の含有量が特定の範囲を外れ上回る値の比較例3,5品は、良好な剪断接着力が得られたが、吸水率が悪化してしまった。さらに、カルボン酸誘導体のエステル化合物である没食子酸メチル,没食子酸エチル,没食子酸プロピルを配合した比較例6〜8品は、剪断接着力が著しく低い弱い結果となった
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物は、リードフレーム、特にアルミニウム製リードフレームやその表面が無電解ニッケルメッキ処理されたリードフレームに対して高い接着性を有するものであるため、上記リードフレームが形成された配線基板に搭載された半導体素子の封止材料として有用である。