(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い反応収率及び高い立体選択性で、光学活性5−ヒドロキシ−3−ケトエステル化合物を製造する方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は上記の方法で得られる新規な医薬品の製造中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対し、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上述の不斉アルドール反応を、光学活性ビナフトール−チタニウム錯体の存在下、置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物を共存させて行うことにより、高収率、かつ高立体選択性をもって、光学活性5−ヒドロキシ−3−ケトエステル化合物が得られることを見出した。
また、本発明者らは、同方法により、新規化合物である(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルが合成できることを明らかにした。(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸のエステルについては、これまでメチルエステル、エチルエステル及びt−ブチルエステルが知られていたが、イソプロピルエステルは知られていなかった。同エステル類は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤として知られるロスバスタチンカルシウムの製造中間体であり、高純度で得ることが産業上望ましい。ところが、既存のエステルの性状を確認したところ、いずれも油状物であり、工業的な精製が難しいという問題が見出された。そこで、本発明者らは、工業的に精製可能な性状を有する医薬中間体として、前述の新規イソプロピルエステルの結晶化を試み、鋭意検討を重ねた結果、同エステル類で初めて結晶を得ることに成功し、発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、以下を特徴とするものである。
(I)
式(4)
【化5】
(式中、R
7は、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
6−14アリール基又はC
7−16アラルキル基を表し、R
8は、水素原子、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
6−14アリール基又はC
7−16アラルキル基を表し、R
9は、置換されても良いC
1−6アルキル基、置換されても良いC
3−6シクロアルキル基、置換されても良いC
6−14アリール基、置換されても良いC
7−16アラルキル基又は置換されても良い5−10員複素環基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
で表される光学活性5−ヒドロキシ−3−ケトエステル化合物の製造方法であって、式(1)
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリアルキルシリルエチニル基、置換されても良いC
1−6アルキル基、置換されても良いC
3−6シクロアルキル基、置換されても良いC
1−4アルコキシ基、置換されても良いC
3−4シクロアルコキシ基、置換されても良いC
1−6アルケニル基、置換されても良いC
6−14アリール基、置換されても良いC
7−16アラルキル基又は置換されても良い5−10員複素環基を表す。)
で表される光学活性な1,1’−ビ−2−ナフトール化合物と4価チタン化合物から調製される光学活性ビナフトール−チタニウム錯体の存在下、式(2)
【化7】
(式中R
5及びR
6は、それぞれ独立して、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基又はC
7−16アラルキル基を表し、R
7及びR
8は、式(4)で定義されたものと同義である。)
で表される1,3−ジエン化合物と、式(3)
【化8】
(式中、R
9及びnは、式(4)で定義されたものと同義である。)
で表されるアルデヒドを反応させる工程において、置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物を共存させることを特徴とする、製造方法。
(II)
R
1、R
2、R
3及びR
4が水素原子を表し、
R
5及びR
6がメチル基を表し、
R
7がC
1−6アルキル基を表し、
R
8が水素原子を表し、
R
9が置換されても良いC
6−14アリール基又は置換されても良い5−10員複素環基を表し、
nが1を表す、(I)に記載の製造方法。
(III)
R
9が、C
6−14アリール基又は5−10員ヘテロアリール基(該C
6−14アリール基及び5−10員ヘテロアリール基は、無置換であるか、又は置換基群Aより選ばれる一つの置換基又は同一若しくは異なる二以上の置換基で置換されている。)を表し、前記置換基群Aが、フェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、及びC
1−6アルキル(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基から構成される、(I)又は(II)に記載の製造方法。
(IV)
R
9が、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル基、2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル基又はフェニル基を表す、(III)に記載の製造方法。
(V)
置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物が、ピロール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール又は1,2,4−トリアゾール(該ピロール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾールは、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
1−4アルコキシ基、C
3−4シクロアルコキシ基及びジC
1−6アルキルアミノ基からなる群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されている。)である、(I)乃至(IV)のうち何れかに記載の製造方法。
(VI)
置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物が、1−メチルイミダゾールである、(V)に記載の製造方法。
(VII)
置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物が、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン又は1,3,5−トリアジン(該ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン及び1,3,5−トリアジンは、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
1−4アルコキシ基、C
3−4シクロアルコキシ基及びジC
1−6アルキルアミノ基からなる群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されている。)である、(I)乃至(IV)のうち何れかに記載の製造方法。
(VIII)
置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物が、4−メトキシピリジン又はN,N−ジメチル−4−アミノピリジンである、(VII)に記載の製造方法。
(IX)
式(5)
【化9】
で示される(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピル。
(X)
Cu・Kαを線源とした粉末X線回折測定によって、2θ=4.5±0.2°,8.9±0.2°,11.6±0.2°,15.5±0.2°,18.0±0.2°,18.5±0.2°,19.5±0.2°,19.9±0.2°,21.4±0.2°,22.1±0.2°,22.8±0.2°,23.4±0.2°に特徴的なピークを有する、(IX)に記載の(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルの結晶。
(XI)
Cu・Kαを線源とした粉末X線回折測定によって、2θ=4.5°,8.9°,11.6°,15.5°,18.0°,18.5°,19.5°,19.9°,21.4°,22.1°,22.8°,23.4°に特徴的なピークを有する、(IX)に記載の(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルの結晶。
また、本発明の好ましい実施態様として、下記[1]乃至[
3]が挙げられる。
[1]
式(4)
【化10】
(式中、R
7は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のシクロアルキル基、炭素原子数6乃至14のアリール基又は炭素原子数7乃至16のアラルキル基を表し、R
8は、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のシクロアルキル基、炭素原子数6乃至14のアリール基又は炭素原子数7乃至16のアラルキル基を表し、R
9は、ピリミジニル基(該ピリミジニル基は、無置換であるか、又はフェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、及びC
1−6アルキル(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基から構成される置換基群Aより選ばれる一つの置換基又は同一若しくは異なる二以上の置換基で置換されている。)を表し、nは0又は1の整数を表す。)
で表される光学活性5−ヒドロキシ−3−ケトエステル化合物の製造方法であって、式(1)
【化11】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリアルキルシリルエチニル基、置換されても良い炭素原子数1乃至6のアルキル基、置換されても良い炭素原子数3乃至6のシクロアルキル基、置換されても良い炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、置換されても良い炭素原子数3乃至4のシクロアルコキシ基、置換されても良い炭素原子数1乃至6のアルケニル基、置換されても良い炭素原子数6乃至14のアリール基、置換されても良い炭素原子数7乃至16のアラルキル基又は置換されても良い5−10員複素環基を表す。)
で表される光学活性な1,1’−ビ−2−ナフトール化合物と4価チタン化合物から調製される光学活性ビナフトール−チタニウム錯体の存在下、式(2)
【化12】
(式中R
5及びR
6は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のシクロアルキル基又は炭素原子数7乃至16のアラルキル基を表し、R
7及びR
8は、式(4)で定義されたものと同義である。)
で表される1,3−ジエン化合物と、式(3)
【化13】
(式中、R
9及びnは、式(4)で定義されたものと同義である。)
で表されるアルデヒドを反応させる工程において、1−メチルイミダゾール、4−メトキシピリジン及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物を共存させることを特徴とする、製造方法
(但し、金属塩を使用する製造方法を除く)。
[2]
R
1、R
2、R
3及びR
4が水素原子を表し、
R
5及びR
6がメチル基を表し、
R
7が炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、
R
8が水素原子を表し、
nが1を表す、[1]に記載の製造方法。
[3]
R
9が、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル基を表す、[1]又は[2]に記載の製造方法
。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、光学活性5−ヒドロキシ−3−ケトエステル化合物の高収率かつ高立体選択的な製造法を提供することができる。また、結晶形態を有する、新規な製造中間体化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本明細書で用いる用語について説明する。
本明細書において、「n」はノルマルを、「i」はイソを、「s」はセカンダリーを、「t」はターシャリーを、「c」はシクロを意味する。
【0012】
C
1−6アルキル基とは、炭素原子数1乃至6のアルキル基、すなわち炭素原子を1乃至6個有する直鎖又は分枝状のアルキル基を意味し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基が挙げられる。
【0013】
C
3−6シクロアルキル基とは、炭素原子数3乃至6のシクロアルキル基、すなわち炭素原子を3乃至6個有する環状のアルキル基を意味し、その具体例としては、c−プロピル基、c−ブチル基、c−ペンチル基、c−ヘキシル基が挙げられる。
【0014】
C
1−4アルコキシ基とは、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、すなわち酸素原子に、炭素原子を1乃至4個有する直鎖又は分枝状のアルキル基が結合した置換基を意味し、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。
【0015】
C
3−4シクロアルコキシ基とは、c−プロポキシ基又はc−ブトキシ基を意味する。
【0016】
C
2−6アルケニル基とは、炭素原子数2乃至6のアルケニル基、すなわち炭素原子を2乃至6個有する二重結合を有する直鎖又は分枝状のアルケニル基を意味し、その具体例としては、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基が挙げられる。
【0017】
C
6−14アリール基とは、炭素原子数6乃至14のアリール基、すなわち炭素原子を6乃至14個有する芳香族炭化水素基を意味し、その具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ビフェニル基が挙げられる。
【0018】
C
6−14アリールオキシ基とは、1個の前記「C
6−14アリール基」が酸素原子に結合した基を意味し、その具体例としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
C
7−16アラルキル基とは、炭素原子数7乃至16のアラルキル基、すなわち芳香族炭化水素を置換基として有するアルキル基であり、かつ炭素原子が置換基全体で7乃至16個有するものを意味する。その具体例としては、フェニルメチル基(ベンジル基)、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、ナフタレン−1−イルメチル基、ナフタレン−2−イルメチル基、ナフタレン−1−イルエチル基、ナフタレン−2−イルエチル基、アントラセン−1−イルメチル基、アントラセン−2−イルメチル基、アントラセン−9−イルメチル基が挙げられる。
【0020】
5−10員複素環基とは、環を構成する原子の数が5乃至10個であり、かつ環を構成する原子中に、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子からなる群より選ばれる1個のヘテロ原子又は同一若しくは異なる2乃至4個のヘテロ原子を含有する単環系又は縮合環系の複素環基を意味する。この複素環基は飽和、部分不飽和、不飽和のいずれであってもよく、具体例としては、ピロリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、ピペリジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピロール基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、アゼパニル基、オキセパニル基、チエパニル基、アゼピニル基、オキセピニル基、チエピニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリニル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、クロメニル基、イソクロメニル基が挙げられる。
【0021】
5−10員ヘテロアリール基とは、上記5−10員複素環基のうち、特に不飽和のものを意味する。
【0022】
モノC
1−6アルキルアミノ基とは、アミノ基の1個の水素原子が1個の前記「C
1−6アルキル基」で置換された基を意味し、その具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0023】
ジC
1−6アルキルアミノ基とは、アミノ基の2個の水素原子が同一又は異なる2個の前記「C
1−6アルキル基」で置換された基を意味し、その具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−i−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−i−ブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジ−n−ペンチルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、N−エチル−N−メチルアミノ基、N−メチル−N−n−プロピルアミノ基、N−イソプロピル−N−メチルアミノ基、N−n−ブチル−N−メチルアミノ基、N−i−ブチル−N−メチルアミノ基、N―t―ブチル−N−メチルアミノ基、Nメチル−N−n−ペンチルアミノ基、N−n−ヘキシル−N−メチルアミノ基、N−エチル−N−n−プロピルアミノ基、N−エチル−N−i−プロピルアミノ基、N−n−ブチル−N−エチルアミノ基、N−エチル−N−i−ブチルアミノ基、N―t―ブチル−N−エチルアミノ基、N−エチル−N−n−ペンチルアミノ基、N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
C
1−4アルコキシカルボニル基とは、1個の前記「C
1−4アルコキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味し、その具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
C
1−6アルキルスルホニル基とは、1個の前記「C
1−6アルキル基」がスルホニル基に結合した基を意味し、その具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、i−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、i−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。
【0026】
C
1−6アルキルスルホニルアミノ基とは、アミノ基の1個の水素原子が1個の前記「C
1−6アルキルスルホニル基」で置換された基を意味し、その具体例としては、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n−プロピルスルホニルアミノ基、i−プロピルスルホニルアミノ基、n−ブチルスルホニルアミノ基、i−ブチルスルホニルアミノ基、t−ブチルスルホニルアミノ基、n−ペンチルスルホニルアミノ基、n−ヘキシルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0027】
ビス(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基とは、アミノ基の2個の水素原子が同一又は異なる2個の前記「C
1−6アルキルスルホニル基」で置換された基を意味し、その具体例としては、ビス(メチルスルホニル)アミノ基、ビス(エチルスルホニル)アミノ基、ビス(n−プロピルスルホニル)アミノ基、ビス(i−プロピルスルホニル)アミノ基、ビス(n−ブチルスルホニル)アミノ基、ビス(i−ブチルスルホニル)アミノ基、ビス(t−ブチルスルホニル)アミノ基、ビス(n−ペンチルスルホニル)アミノ基、ビス(n−ヘキシルスルホニル)アミノ基、N−エチルスルホニル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−メチルスルホニル−N−n−プロピルスルホニルアミノ基、N−i−プロピルスルホニル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−n−ブチルスルホニル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−i−ブチルスルホニル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−t−ブチルスルホニル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−メチルスルホニル−N−n−ペンチルスルホニルアミノ基、N−n−ヘキシルスルホニル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−エチルスルホニル−N−n−プロピルスルホニルアミノ基、N−エチルスルホニル−N−i−プロピルスルホニルアミノ基、N−n−ブチルスルホニル−N−エチルスルホニルアミノ基、N−エチルスルホニル−N−i−ブチルスルホニルアミノ基、N―t―ブチルスルホニル−N−エチルスルホニルアミノ基、N−エチルスルホニル−N−n−ペンチルスルホニルアミノ基、N−エチルスルホニル−N−n−ヘキシルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0028】
C
1−6アルキル(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基、すなわち炭素原子数1乃至6のアルキル(炭素原子数1乃至6のアルキルスルホニル)アミノ基とは、アミノ基の2個の水素原子が1個の前記「C
1−6アルキル基」及び1個の前記「C
1−6アルキルスルホニル基」で置換された基を意味し、その具体例としては、N−メチル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−エチル−N−エチルスルホニルアミノ基、N−n−プロピル−N−n−プロピルスルホニルアミノ基、N−i−プロピル−N−i−プロピルスルホニルアミノ基、N−n−ブチル−N−n−ブチルスルホニルアミノ基、N−i−ブチル−N−i−ブチルスルホニルアミノ基、N−t−ブチル−N−t−ブチルスルホニルアミノ基、N−n−ペンチル−N−n−ペンチルスルホニルアミノ基、N−n−ヘキシル−N−n−ヘキシルスルホニルアミノ基、N−エチル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−メチル−N−n−プロピルスルホニルアミノ基、N−i−プロピル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−n−プロピル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−n−ブチル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−t−ブチル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−メチル−N−n−ペンチルスルホニルアミノ基、N−n−ヘキシル−N−メチルスルホニルアミノ基、N−エチル−N−n−プロピルスルホニルアミノ基、N−エチル−N−i−プロピルスルホニルアミノ基、N−n−ブチル−N−エチルスルホニルアミノ基、N−エチル−N−i−ブチルスルホニルアミノ基、N−t−ブチル−N−エチルスルホニルアミノ基、N−エチル−N−n−ペンチルスルホニルアミノ基、N−エチル−N−n−ヘキシルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0029】
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0030】
「置換されても良い」とは、無置換であるか、又は任意の数の任意の置換基で置換されていることを意味する。
「置換された」とは、任意の数の任意の置換基で置換されていることを意味する。
上記の「任意の置換基」は、本発明に係る反応に悪影響を与えない置換基であれば特に種類は限定されない。任意の置換基の例としては、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
2−6アルケニル基、C
6−14アリール基、C
6−14アリールオキシ基、C
7−16アラルキル基、5−10員複素環基、ヒドロキシ基、C
1−4アルコキシ基、C
3−4シクロアルコキシ基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、アミノ基、モノC
1−6アルキルアミノ基、C
1−6アルキルスルホニルアミノ基、N−アセチルアミノ基、ジC
1−6アルキルアミノ基、ビス(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基、C
1−6アルキル(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基、N,N−ジアセチルアミノ基、ハロゲン原子、C
1−4アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基が挙げられ、さらに、これらの置換基によって置換されたフェニル基が挙げられる。
【0031】
含窒素5−6員芳香族複素環化合物とは、環を構成する原子数が5乃至6個であり、環を構成する原子中に1乃至4個の窒素原子を含有する単環系の芳香族複素環化合物を意味し、その具体例としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
【0032】
次に本発明における好ましい構造および好ましい反応条件を挙げる。
【0033】
本発明の製造方法に使用する光学活性ビナフトールである、1,1’−ビ−2−ナフトール化合物は、前記一般式(1)に示されるが、式中R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリアルキルシリルエチニル基、置換されても良いC
1−6アルキル基、置換されても良いC
3−6シクロアルキル基、置換されても良いC
1−4アルコキシ基、置換されても良いC
3−4シクロアルコキシ基、置換されても良いC
2−6アルケニル基、置換されても良いC
6−14アリール基又は置換されても良い5−10員複素環基であり、それぞれ水素原子が好ましい。
【0034】
本発明における4価チタン化合物は、本発明に係る反応を達成する限り特に種類は限定されない。
4価チタン化合物のチタンのカウンターパート(以下、チタンの置換基という)は有機物でも無機物でも良い。チタンの置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基又は酸素原子が挙げられる。ハロゲン原子としては塩素原子が好ましく、アルコキシ基としてはC
1−4アルコキシ基又はC
3−4シクロアルコキシ基が好ましく、イソプロポキシ基がより好ましい。
4価チタン化合物としては、ハロゲン化チタン、ジハロゲンジアルコキシチタン、テトラアルコキシチタンが好ましく、四塩化チタン、ジクロロジC
1−4アルコキシチタン、ジブロモジC
1−4アルコキシチタン、テトラC
1−4アルコキシチタンがより好ましく、テトラC
1−4アルコキシチタンがさらに好ましく、テトライソプロポキシチタンが特に好ましい。
【0035】
4価チタン化合物は、光学活性ビナフトールに対して、0.5乃至2.0モル当量用いるのが好ましく、0.8乃至1.2モル当量がより好ましい。
【0036】
本発明の製造方法に使用する光学活性ビナフトール−チタニウム錯体は、例えば特許文献2に記載の方法に従って調製される。すなわち、光学活性ビナフトールとチタンテトライソプロポキシドをテトラヒドロフランやトルエンなどの有機溶媒中で反応させるが、その際にモレキュラーシーブスを共存させる方法、または水を添加する方法によって調製され、その後濃縮して単離するか、溶液のまま次の工程に使用することができる。この光学活性ビナフトール−チタニウム錯体は、アルデヒドに対して0.1乃至50モル%用いられる条件が好ましく、0.5乃至10モル%用いられる条件がより好ましい。
【0037】
本発明の製造方法に使用する1,3−ジエン化合物は、前記一般式(2)に示されるが、式中R
5及びR
6は、それぞれ独立して、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
7−16アラルキル基を表し、それぞれ独立して、C
1−6アルキル基が好ましく、それぞれメチル基がより好ましい。R
7は、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
6−14アリール基、C
7−16アラルキル基を表し、C
1−6アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i-プロピル基、t−ブチル基がより好ましい。R
8は、水素原子、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
6−14アリール基又はC
7−16アラルキル基を表し、水素原子が好ましい。
【0038】
この1,3−ジエン化合物は、例えばBrownbridgeらの方法(カナディアン ジャーナル オブ ケミストリー、1983年、61巻(4号)、688−693ページ)に従って調製される。この1,3−ジエン化合物は、アルデヒドに対して、1モル当量以上用いられるが、好ましくは1.0乃至3.0モル当量用いられ、より好ましくは1.1乃至2.0モル当量用いられる。
【0039】
本発明の製造方法に使用するアルデヒドは、前記一般式(3)に示されるが、式中R
9は、好ましくは、C
6−14アリール基又は5−10員ヘテロアリール基(該C
6−14アリール基及び5−10員ヘテロアリール基は、無置換であるか、又は置換基群Aより選ばれる一つの置換基又は同一若しくは異なる二以上の置換基で置換されている。)を表し、置換基群Aが、フェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、及びC
1−6アルキル(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基から構成され、より好ましくは、フェニル基、ピリミジニル基又はキノリル基(該フェニル基、ピリミジニル基及びキノリル基は、無置換であるか、又は置換基群Aより選ばれる一つの置換基又は同一若しくは異なる二以上の置換基で置換されている。)を表し、置換基群Aが、フェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、及びC
1−6アルキル(C
1−6アルキルスルホニル)アミノ基から構成され、さらに好ましくは、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル基、2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル基又はフェニル基を表す。
また、nは0又は1の整数を表し、好ましくは、nは1を表す。
【0040】
置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物は、好ましくは置換されたピロール、置換されたイミダゾール、置換された1,2,3−トリアゾール、置換された1,2,4−トリアゾールであり、ここで、これらの好ましい置換基はC
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
1−4アルコキシ基、C
3−4シクロアルコキシ基及びジC
1−6アルキルアミノ基からなる群から選ばれる1つ以上の置換基であり、より好ましくはC
1−6アルキル基で置換されたピロール、C
1−6アルキル基で置換されたイミダゾール、C
1−6アルキル基で置換された1,2,3−トリアゾール、C
1−6アルキル基で置換された1,2,4−トリアゾールであり、さらに好ましくは1−メチルピロール、1−メチルイミダゾール、1−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール、2−メチル−2H−1,2,3−トリアゾール、1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾールであり、特に好ましくは1−メチルイミダゾールである。
【0041】
置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物はまた、好ましくは置換されたピリジン、置換されたピリダジン、置換されたピリミジン、置換されたピラジン、置換された1,2,3−トリアジン、置換された1,2,4−トリアジン、置換された1,3,5−トリアジンであり、ここで、これらの好ましい置換基はC
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
1−4アルコキシ基、C
3−4シクロアルコキシ基及びジC
1−6アルキルアミノ基からなる群から選ばれる1つ以上の置換基であり、より好ましくは、C
1−4アルコキシ基で置換されたピリジン、ジC
1−6アルキルアミノ基で置換されたピリジンであり、さらに好ましくは、4−メトキシピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンである。
【0042】
これらの含窒素5−6員芳香族複素環化合物は、単独で用いても、複数を混合して用いても良い。
【0043】
本発明の製造方法における反応は、溶媒の存在下で行うのが好ましく、使用される溶媒としては反応を阻害しないものならば特に限定されない。好ましい溶媒の例としては、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル等)などが挙げられ、より好ましくは芳香族炭化水素類、エーテル類であり、さらに好ましくはトルエン、テトラヒドロフランであり、特に好ましくはテトラヒドロフランである。
【0044】
溶媒は、単独で用いても、複数の溶媒を混合して用いても良い。更に溶媒の使用量としては、一般的には基質が結晶か否か、粘性が高いか否か等によっても影響を受けるので、基質の種類に応じて任意に設定可能であり、一部でも溶解できる範囲であれば構わないが、攪拌効率、容積効率の影響等の点から、通常、アルデヒドの基質濃度として1乃至80重量%、好ましくは3乃至50重量%、より好ましくは5乃至20重量%である。
【0045】
反応は、−78℃から反応媒体の沸点までのいずれでも行なうことができるが、反応操作及び工業的観点から、通常−40℃以上60℃以下、好ましくは−20℃以上40℃以下、より好ましくは−5℃以上40℃以下で行なわれる。
【0046】
反応形態としては、あらかじめ光学活性ビナフトール−チタニウム錯体を調製しておき、アルデヒド、1,3−ジエン化合物、置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物及び溶媒の混合物にこれを加えても良いし、アルデヒド、光学活性ビナフトール、4価チタン化合物、置換された含窒素5−6員芳香族複素環化合物、1,3−ジエン化合物を順に加えても良い。反応に影響しない加え方であれば、その順番、方法は問わない。
【0047】
反応終了後は、反応液にトリフルオロ酢酸や硫酸などを含む酸性水溶液を添加し、攪拌することで、溶液中に存在する錯体を不活性化し、トリアルキルシリル基を除去した後、炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を加えて、分液して目的物を抽出する。さらに得られた有機層をカラムクロマトグラフィーや晶析等の精製操作を行うことで目的物を得ることができる。
【0048】
次に本発明の新規化合物である、式(5)で示される(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルについて説明する。式(5)で示される化合物は、上述の本発明の製造方法において(E)−N−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソプロパ−1−エン−1−イル)ピリミジン−2−イル]−N−メチルメタンスルホンアミドと1,3−ビス−(トリメチルシロキシ)−1−イソプロポキシブタ−1,3−ジエンとを反応させることにより製造できる。
【0049】
なお、上述の通り、(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸のエステルについては、これまでメチルエステル、エチルエステル及びt−ブチルエステルが知られていた。各エステルについて参考として以下に記載する。
(1)メチルエステル体
CAS No.912337−61−2(5S,6E),890028−67−8(6E)
性状:黄色油状物
出展:国際公開第2006/106526号
(2)エチルエステル体
CAS No.901765−36−4(5S,6E))
性状:油状物
出展:国際公開第2008/096257号、国際公開第2008/065410号、国際公開第2007/007119号
(特許文献2、特許文献3、特許文献4)、
(3)t−ブチルエステル体
CAS No.910867−13−9(5S,6E),947262−23−9(6E)
性状:油状物(特許文献2)茶色油状物(特許文献5)又はオレンジ色油状物(特許文献6)
出展:国際公開第2008/096257号、国際公開第2007/017117号、国際公開第2006/100689号
【0050】
式(5)で示される化合物の結晶化操作には、アルコール溶媒、エステル溶媒、芳香族炭化水素溶媒が使用される。
【0051】
使用するアルコール溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等の炭素数が1乃至4のアルコールであり、好ましくはi−プロパノールである。
【0052】
使用するエステル溶媒は、ギ酸エステル(ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル)、又は酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸t−ブチル)であり、好ましくは酢酸エチルである。
【0053】
使用する芳香族炭化水素溶媒は、炭素数が6乃至8の芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)であり、好ましくはトルエンである。
【0054】
これらの溶媒は、他の溶媒と任意の割合で混合して使用することができる。
【0055】
また、これらの溶媒は、目的物である式(5)に示される化合物1gに対して、1重量倍から100重量倍を用いて結晶化され、好ましくは2重量倍から20重量倍が用いられ、さらに好ましくは5重量倍から15重量倍用いられる。
【0056】
結晶化をする際は、加熱溶解後冷却する方法、溶解後濃縮する方法、溶解後溶解性の低い溶媒(貧溶媒)を加える方法のいずれか、もしくはこれらを組み合わせた方法で行う。
【0057】
結晶化の温度は、特記ない限り、−20℃から60℃の範囲で行なわれるが、好ましくは−10℃から50℃である。
【0058】
結晶化に際しては、種晶を使用することができる。種晶は、目的物溶液の入った容器の壁をスパーテルでこするなど、当業者にとってよく知られた方法で取得しておくことができる。
【0059】
結晶の特徴、特に他の結晶形(結晶多形)との差異は、粉末X線回折測定により分析できる。粉末X線回折測定により得られるピークの位置(ピーク値)は2θで表される。2θの単位は度(°)である。ピーク値は、測定条件などにより変化することがある。試料の測定ピークを基準物質のピーク値と対比して結晶形を同定する場合、同一の結晶形であれば、試料のピーク値と基準のピーク値は、通常0.2°以内の差で一致する(例えば、16改正日本薬局方参照)。この点より、本発明の化合物に係るピーク値についても±0.2°程度の差を許容して同一性が認められるであろう。従って、本発明の化合物に係るピーク値を対象試料の測定ピーク値と対比する際には、一般に、±0.2°程度の差があるピークは同一の回折ピークであるとみなして同定を為すことができる。もっとも、ピーク値は測定機器や測定条件の影響を受けることもあるので、結晶形の異同は、測定条件、ピーク値、回折パターンなどを総合的に解析して最終的に確認することもできる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0061】
生成物の構造は、日本電子社製ECP−300の
1H−NMRで確認した。以下、
1H−NMRデータが記載してある場合は、テトラメチルシランを内部標準物質としたシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)(分裂パターン、積分値)を表す。分裂パターンの記載において「s」はシングレット、「d」はダブレット、「t」はトリプレット、「septet」はセプテット、「dd」はダブルダブレット、「m」はマルチプレット、「J」はカップリング定数、「CDCl
3」は重クロロホルムを意味する。
【0062】
粉末X線回折測定は、パナリティカル社製X‘PertPRO(線源:Cu・Kα、波長:1.54060(10
−10m)を用いて行なった。示差走査熱量測定は、メトラー・トレド社製DSC1を用いて行なった。
【0063】
参考例1
(S)−(−)−ビナフトール−チタニウム錯体溶液の調製
0乃至10℃で、(S)−(−)−1,1’−ビ−2−ナフトール0.7570g、(2.65mmol)にトルエン4.41gを加え混合した。この混合液へ、チタンテトライソプロポキシド0.7571g(2.65mmol)、水0.0477g(2.65mmol)とテトラヒドロフラン2.28gの混合溶液を滴下し、さらにテトラヒドロフラン1.12gを加えて20分間撹拌することで、(S)−(−)−ビナフトール−チタニウム錯体溶液を得た。
【0064】
実施例1
N,N−ジメチル−4−アミノピリジンを用いた(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルの合成
(E)−N−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソプロパ−1−エン−1−イル)ピリミジン−2−イル]−N−メチルメタンスルホンアミド10.00g(26.49mmol)及びテトラヒドロフラン48.03gを混合し、室温で10分間撹拌した。この溶液に参考例1の方法に従って調製した(S)−(−)−ビナフトール−チタニウム錯体溶液1.83g(0.53mmol相当)を加え、テトラヒドロフラン2.01gで洗い込んだ。さらにN,N−ジメチル−4−アミノピリジン1.30g(10.60mmol)及び1,3−ビス−(トリメチルシロキシ)−1−イソプロポキシブタ−1,3−ジエン17.61g(45.04mmol相当)を加えて、室温で22時間撹拌した。続いてこの溶液にテトラヒドロフラン30.01gを加えた後、50%硫酸水溶液7.83g(39.74mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。これにさらに10%炭酸ナトリウム水溶液25.30g(23.85mmol)を加えて、室温で30分間撹拌した後、分液して有機層を取得した。得られた有機層を20%の食塩水29.53gで洗浄し、分液して有機層100.00g得た。これを減圧下濃縮して30.30gの溶液とした。これに酢酸エチル100.13gを加え、再度減圧下濃縮して26.07gとした後、n−ヘプタン19.99gを加え、不溶物をセライトろ過し、ろ物を酢酸エチル2.00gとn−ヘプタン2.01gの混合液で洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせた溶液に酢酸エチル20.05gとn−ヘプタン20.08gを加えた後、それを50℃に加熱し、5分間攪拌した後、25℃に冷却し、120分間攪拌した。さらにこの溶液にn−ヘプタン40.00gを60分間で滴下し、氷浴下で16時間撹拌した。氷浴下での撹拌中に析出した固体をろ過して酢酸エチル3.80gとn−ヘプタン8.27gの混合溶液で洗浄し、50℃で減圧乾燥して、(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピル11.52g(22.09mmol)を淡黄色固体として得た。単離収率83.4%、光学純度99.46%eeであった。
1H−NMR(CDCl
3)
δppm:1.25−1.27(m,12H),2.64−2.66(m,2H),2.91(d,1H,J=4.1Hz),3.32−3.38(m,1H),3.41(s,2H),3.51(s,3H),3.57(s,3H),4.61−4.68(m,1H),5.06(septet,1H,J=6.1Hz),5.44(dd,1H,J=5.1,16.2Hz),6.67(dd,1H,J=1.7,16.0Hz),7.15−7.60(m,2H),7.60−7.67(m,2H)
【0065】
光学純度は、光学異性体分離用カラムを用いた高速液体クロマドグラフィー分析により、鏡像体過剰率(%ee)を算出した。
カラム:CHIRALPAKIA(株式会社ダイセル製)
溶離液:n−ヘキサン/メタノール/ジエチルアミン=970/30/3,V/V/V
溶離液速度:1.0mL/min
検出波長:245nm
【0066】
実施例1で得られた結晶の粉末X線回折測定を行ったところ、下記の特徴的なピーク及び特に特徴的なピークを認めた。
(特徴的なピーク)
2θ=4.5°,8.9°,11.6°,15.5°,18.0°,18.5°,19.5°,19.9°,21.4°,22.1°,22.8°,23.4°
(特に特徴的なピーク)
2θ=4.5°,15.5°,18.0°,18.5°,21.4°,22.1°,22.8°
なお、同測定で得られた粉末X線回折パターンを、
図1に示す。
【0067】
実施例2及び3では、実施例1で得た化合物を標準物質、フタル酸ジエチルを内部標準物質として、高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法にて反応収率を算出した。
カラム:L−Column ODS(財団法人化学物質評価研究機構製)
溶離液:メタノール−0.01M酢酸アンモニウム水溶液,65:35
溶離液速度:0.4mL/min
検出波長:250nm
【0068】
実施例2
4−メトキシピリジンを用いた(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルの合成
(E)−N−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソプロパ−1−エン−1−イル)ピリミジン−2−イル]−N−メチルメタンスルホンアミドの使用量を5.00g(13.2mmol)とし、N,N-ジメチル−4−アミノピリジンに代えて4−メトキシピリジン0.58g(5.30mmol)を用いる以外は、他の試薬は同じものを使用して(但し使用した他の試薬のモル当量は、実施例1におけるアルデヒドに対する量と同じとした)実施例1と同様の操作を行い、表題化合物を得た。定量収率92.1%、光学純度99.75%eeであった。
【0069】
実施例3
N−メチルイミダゾールを用いた(S,E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルの合成
(E)−N−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−5−(3−オキソプロパ−1−エン−1−イル)ピリミジン−2−イル]−N−メチルメタンスルホンアミドの使用量を5.00g(13.2mmol)とし、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンに代えてN−メチルイミダゾール0.44g(5.30mmol)を用いる以外は、他の試薬は同じものを使用して(但し使用した他の試薬のモル当量は、実施例1におけるアルデヒドに対する量と同じとした)実施例1と同様の操作を行い、表題化合物を得た。定量収率88.2%、光学純度99.13%eeであった。
【0070】
参考例4及び5では、国際公開第2003/042180号に記載の方法で得た(S,E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルを標準物質、フタル酸ジエチルを内部標準物質として、高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法にて反応収率を算出した。
カラム:L−ColumnODS(財団法人化学物質評価研究機構)
溶離液:メタノール−0.01M酢酸アンモニウム水溶液,75:25,V/V
溶離液速度:0.4mL/min
検出波長:250nm
【0071】
また、光学純度は、光学異性体分離用カラムを用いた高速液体クロマドグラフィー分析により、鏡像体過剰率(%ee)を算出した。
カラム:CHIRALPAKAD−H(株式会社ダイセル製)
溶離液:n−ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン=950/50/5,V/V/V
溶離液速度:0.5mL/min
検出波長:245nm
【0072】
参考例4
N,N−ジメチル−4−アミノピリジンを用いた(S,E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルの合成
(E)−3−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]アクリルアルデヒド5.00g(15.75mmol)及びテトラヒドロフラン24.00gを混合し、室温で10分間撹拌した。続いてこの溶液に参考例1の方法に従って調製した(S)−(−)−ビナフトール−チタニウム錯体溶液1.09g(0.32mmol相当)を加え、テトラヒドロフラン1.00gで洗い込んだ。N,N−ジメチル−4−アミノピリジン0.77g(6.30mmol)及び1,3−ビス−(トリメチルシロキシ)−1−イソプロポキシブタ−1,3−ジエン10.47g(26.78mmol相当)を加えて、室温で22時間撹拌した。続いてテトラヒドロフラン15.02gを加えた後、50%硫酸水溶液4.64g(23.63mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。さらに10%炭酸ナトリウム水溶液15.03g(14.18mmol)を加えて、室温で30分間撹拌した後、分液して有機層を取得した。定量収率97.5%、光学純度99.29%eeであった。
【0073】
参考例5
N−メチルイミダゾールを用いた(S,E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプタ−6−エン酸イソプロピルの合成
参考例4で用いた、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンに代えてN−メチルイミダゾール0.51g(6.30mmol)を用いる以外、他の試薬は同じものを使用して
参考例4と同様の操作を行い、表題化合物を得た。定量収率96.2%、光学純度99.28%eeであった。
【0074】
参考例6
N,N−ジメチル−4−アミノピリジンを用いた(S,E)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−7−フェニルヘプタ−6−エン酸イソプロピルの合成
シンナムアルデヒド3.00g(22.70mmol)及びテトラヒドロフラン14.40gを混合した溶液に、参考例1にて調製した(S)−(−)−ビナフトール−チタニウム錯体溶液1.61g(0.45mmol相当)を加え、テトラヒドロフラン0.60gで洗い込んだ。N,N−ジメチル−4−アミノピリジン1.10g(9.08mmol)及び1,3−ビス−(トリメチルシロキシ)−1−イソプロポキシブタ−1,3−ジエン10.23g(38.59mmol相当)を加えて、室温で22時間撹拌した。続いてテトラヒドロフラン9.00gを加えた後、50%硫酸水溶液6.68g(34.05mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。さらに10%炭酸ナトリウム水溶液21.65g(20.43mmol)を加えて、室温で30分間撹拌した後、分液して有機層を39.55g得た。これを減圧下濃縮した後シルカゲルクロマトグラフィー(へキサン/酢酸エチル=70/30)で精製して、(S,E)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−7−フェニルヘプタ−6−エン酸イソプロピルを得た。単離収率96.9%、光学純度95.43%eeであった。
1H−NMR(CDCl
3)
δppm:1.26(d,6H,J=6.1Hz),2.77−2.95(m,2H),3.48(s,2H),4.72−4.85(m,1H),4.98−5.14(m,1H),6.20(dd,1H,J=6.1,15.7Hz),6.65(dd,1H,J=1.0,15.7Hz),7.18−7.42(m,5H)
【0075】
光学純度は、光学異性体分離用カラムを用いた高速液体クロマドグラフィー分析により、鏡像体過剰率(%ee)を算出した。
カラム:CHIRALPAKAD(株式会社ダイセル製)
溶離液:n−ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン=950/50,V/V,トリフルオロ酢酸0.01%含有
溶離液速度:1.0mL/min
検出波長:254nm
【0076】
参考例7
N−メチルイミダゾールを用いた(S,E)−5−ヒドロキシ−3−オキソ−7−フェ
ニルヘプタ−6−エン酸イソプロピルの合成
参考例6で用いた、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンに代えてN−メチルイミダゾール0.75g(9.08mmol)を用いる以外は、他の試薬は同じものを使用して
参考例6と同様の操作を行い、表題化合物を得た。単離収率95.5%、光学純度93.85%eeであった。