(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルコキシ基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を表し、さらに、R
2とR
1もしくはR
3とが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成していてもよく、
R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、
Lは単結合を表すか、または、炭素原子数1乃至19の、直鎖、分岐、環状またはそれらを組み合わせた構造を有する飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、
qは1乃至3の整数を表す。)
で表されるスルホニル結合を有するシラン化合物の製造方法であって、
式(I)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は前記の意味を表す。)で表されるクロロスルホニル化合物を、
水溶媒中、塩基存在下、亜硫酸ナトリウムと反応させて式(II)
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は前記の意味を表す。)
で表されるスルフィン酸ナトリウム塩を生成させる工程(A)と、この反応系に芳香族炭化水素溶媒を加えて共沸脱水をした後、非プロトン系極性溶媒と式(III)
【化4】
(式中、R
6、R
7、L及びqは前記の意味を表す。)で表されるクロロアルキルシラン化合物を添加して反応させる工程(B)とを含むことを特徴とする、製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置の製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウエハー等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。ところが、近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)、EUV光(13.5nm)へと短波長化される傾向にある。これに伴い活性光線の半導体基板からの反射の影響が大きな問題となってきた。
【0003】
また、半導体基板とフォトレジストとの間の下層膜として、シリコン等を含み従来ハードマスクとして知られる膜を使用することが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。この場合、レジストとハードマスク(下層膜)では、その構成成分に大きな違いが有るため、それらのドライエッチングによって除去される速度は、ドライエッチングに使用されるガス種に大きく依存する。そして、ガス種を適切に選択することにより、フォトレジストの膜厚の大きな減少を伴うことなく、ハードマスクのみを選択的にドライエッチングによって除去することが可能となる。
近年の半導体装置の製造においては、前述の反射防止効果を初め、さまざまな効果を達成するために、半導体基板とフォトレジストの間にレジスト下層膜が配置されるようになってきている。そして、これまでもレジスト下層膜用の組成物の検討が行なわれてきているが、その要求される特性の多様性などから、レジスト下層膜用の新たな材料の開発が望まれている。
【0004】
このような状況において、スルホニル結合を有するシラン化合物を一定量用いて得られるポリオルガノシロキサンを含有させたレジスト下層膜形成組成物によるレジスト下層膜は、上層レジストに対するドライエッチング速度の向上と、基板加工時等の耐ドライエッチング性を具備するとともに、露光と現像後のレジストパターンの形状が矩形になる。これにより微細なパターンによる基板加工が可能になることが最近見いだされた(特許文献2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2記載のスルホニル結合を有するシラン化合物は、従来、オルガノスルフィン酸ナトリウムと、ハロアルキルトリアルコキシシランとの反応により製造していた。しかし、この方法は、原料であるオルガノスルフィン酸ナトリウムの入手性が低いことが難点であった。
【0007】
このため、オルガノスルホン酸から容易に得られる汎用材料であるオルガノスルホン酸塩化物を原料としてオルガノスルフィン酸ナトリウムを製造できれば、これにハロアルキルトリアルコキシシランを反応させることで、上記の目的のスルホニル結合を有するシラン化合物を安価に製造することが期待できる。
しかし、オルガノスルホン酸塩化物からオルガノスルフィン酸ナトリウムを製造する反応系は水中で行われ、続くハロアルキルトリアルコキシシランの反応において系内に水が残存しているとトリアルコキシシランの縮合反応が起こり、所望の化合物が得られない。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決しうる、レジスト下層膜の原料として有用なスルホニル結合を有するシラン化合物の新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は第1観点として、式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルコキシ基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を表し、さらに、R
2とR
1もしくはR
3とが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成していてもよく、
R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、
Lは単結合を表すか、または、炭素原子数1乃至19の、直鎖、分岐、環状またはそれらを組み合わせた構造を有する飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、
qは1乃至3の整数を表す。)
で表されるスルホニル結合を有するシラン化合物の製造方法であって、
式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は前記の意味を表す。)で表されるクロロスルホニル化合物を、水溶媒中、塩基存在下、亜硫酸ナトリウムと反応させて式(II)
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は前記の意味を表す。)
で表されるスルフィン酸ナトリウム塩を生成させる工程(A)と、この反応系に芳香族炭化水素溶媒を加えて共沸脱水をした後、非プロトン系極性溶媒と式(III)
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、R
6、R
7、L及びqは前記の意味を表す。)で表されるクロロアルキルシラン化合物を添加して反応させる工程(B)とを含むことを特徴とする、製造方法、
第2観点として、工程(B)において、非プロトン性極性溶媒を添加した後、反応系内の芳香族炭化水素溶媒を留去しながら反応を行うことを特徴とする1記載の製造方法、
第3観点として、非プロトン性極性溶媒がN−メチル−2−ピロリドンである第1観点または第2観点記載の製造方法、
第4観点として、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基または炭素原子数1乃至10のハロアルコキシ基である第1観点記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、レジスト下層膜の原料として有用なスルホニル結合を有するシラン化合物を、入手が容易であり安価な原料から、副生成物の生成を抑制し且つ副反応を抑制つつ、効率よく製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の製造方法では、式(I)で表されるクロロスルホニル化合物を、水溶媒中、塩基存在下、亜硫酸ナトリウムと反応させて式(II)で表されるスルフィン酸ナトリウム塩を生成させ、この反応系に芳香族炭化水素溶媒を加えて共沸脱水をした後、非プロトン系極性溶媒と式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物を添加して反応させることにより、前記式(1)で表されるスルホニル結合を有するシラン化合物を得ることが出来る。
特に本発明においては、式(II)で表されるスルフィン酸ナトリウム塩の生成後、共沸脱水によって系内に存在する水溶媒を芳香族炭化水素溶媒へ溶媒置換した後、ここで芳香族炭化水素溶媒を留去して非プロトン系極性溶媒に溶媒置換しつつほぼ同時に式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物と反応させることにより、副生成物の発生や縮合等の副反応の発生を抑制し、目的化合物を相対的に高い純度で得ることを見出しなされたものである。
【0021】
上記式(1)、式(I)、式(II)及び式(III)中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基および炭素原子数1乃至10のハロアルコキシ基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を表し、さらに、R
2とR
1もしくはR
3とが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成していてもよく、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、Lは単結合を表すか、または、炭素原子数1乃至19の、直鎖、分岐、環状またはそれらを組み合わせた構造を有する飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、qは1乃至3の整数を表す。
【0022】
本発明の式(1)で表される加水分解性オルガノシランにおいて、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5の具体例としては、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、i−ブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。さらに、R
2とR
1もしくはR
3とが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成していてもよい。
【0023】
本発明の式(1)で表される加水分解性オルガノシランにおいて、R
6としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基が挙げられるが、特に、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0024】
本発明の式(1)で表される加水分解性オルガノシランにおいて、R
7としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基が挙げられるが、特に、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0025】
本発明の式(1)で表される加水分解性オルガノシランにおいて、Lとしては単結合を表すか、あるいは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、n−ヘプチル基、1−メチル−n−ヘキシル基、2−メチル−n−ヘキシル基、3−メチル−n−ヘキシル基、1,1−ジメチル−n−ペンチル基、1,2−ジメチル−n−ペンチル基、1,3−ジメチル−n−ペンチル基、2,2−ジメチル−n−ペンチル基、2,3−ジメチル−n−ペンチル基、3,3−ジメチル−n−ペンチル基、1−エチル−n−ペンチル基、2−エチル−n−ペンチル基、3−エチル−n−ペンチル基、1−メチル−1−エチル−n−ブチル基、1−メチル−2−エチル−n−ブチル基、1−エチル−2−メチル−n−ブチル基、2−メチル−2−エチル−n−ブチル基、2−エチル−3−メチル−n−ブチル基、n−オクチル基、1−メチル−n−ヘプチル基、2−メチル−n−ヘプチル基、3−メチル−n−ヘプチル基、1,1−ジメチル−n−ヘキシル基、1,2−ジメチル−n−ヘキシル基、1,3−ジメチル−n−ヘキシル基、2,2−ジメチル−n−ヘキシル基、2,3−ジメチル−n−ヘキシル基、3,3−ジメチル−n−ヘキシル基、1−エチル−n−ヘキシル基、2−エチル−n−ヘキシル基、3−エチル−n−ヘキシル基、1−メチル−1−エチル−n−ペンチル基、1−メチル−2−エチル−n−ペンチル基、1−メチル−3−エチル−n−ペンチル基、2−メチル−2−エチル−n−ペンチル基、2−メチル−3−エチル−n−ペンチル基、3−メチル−3−エチル−n−ペンチル基、n−ノニル基、およびn−デシル基から選ばれるアルキル基からさらに1つの水素を取り去った2価の基(アルキレン基)、o−フェニレン基、m−フェニレン基またはp−フェニレン基、さらに、前記アルキレン基中のメチレン基の1つまたは複数がo−フェニレン基、m−フェニレン基またはp−フェニレン基に置き換わった基等が挙げられる。
中でも好ましいLとして、エチレン基、p−フェニレン基、単結合等が挙げられる。
【0026】
本発明の式(1)で表される加水分解性オルガノシランにおいて、qとしては1乃至3の整数が挙げられる。
【0027】
[工程(A):式(I)で表される化合物から式(II)で表される化合物への反応]
式(I)で表されるクロロスルホニル化合物を、水溶媒中、塩基存在下、亜硫酸ナトリウムと反応させて式(II)で表されるスルフィン酸ナトリウム塩を生成させる反応((I)から(II)への反応)において、使用する亜硫酸ナトリウムの量としては、式(I)で表される化合物1当量に対し0.9当量〜3.0当量が好ましい。さらに好ましくは1.0当量〜1.5当量である。
【0028】
反応溶媒である水の使用量(反応濃度)は特に限定されないが、式(I)で表されるクロロスルホニル化合物に対し、0.1〜100質量倍の水を用いてもよい。好ましくは1〜10質量倍であり、さらに好ましくは2〜5質量倍である。
【0029】
反応温度は特に限定されないが、例えば1〜100℃、好ましくは10〜90℃で、さらに好ましくは50℃から80℃である。
【0030】
反応時間は、通常、0.05ないし200時間、好ましくは0.5ないし100時間である。
【0031】
(I)から(II)への反応に用いる塩基としては、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど;アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど;アルカリ金属重炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど;無機酸のアルカリ金属塩、例えばリン酸2−または3−ナトリウム、リン酸2−または3−カリウムなどの無機塩基が挙げられる。
【0032】
塩基の使用量は、式(I)で表されるクロロスルホニル化合物の1モルに対し2〜10モル使用してもよく、好ましくは2〜6モル、さらに好ましくは2.5〜5モルである。
【0033】
本反応は、常圧または加圧下で行うことができ、また回分式でも連続式でもよい。
【0034】
反応後は、有機溶媒と水を加えて分液操作を行い、有機相を濃縮してから減圧乾燥すると目的化合物である式(II)で表されるスルフィン酸ナトリウム塩が得られる。
本発明では後述するように、共沸脱水による水溶媒の留去及び芳香族炭化水素溶媒への溶媒置換に続いて、芳香族炭化水素溶媒の留去及び非プロトン系極性溶媒への溶媒置換を、式(II)で表されるスルフィン酸ナトリウム塩と式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物との反応とほぼ同時に進めることで、ワンポットで出発原料から式(1)で表される化合物を高い純度で得ることができる。
【0035】
[工程(B):式(II)で表される化合物から式(1)で表される化合物への反応]
(I)から(II)への反応終了後、水溶媒を共沸脱水により反応系内より留去し、ベンゼン、トルエン等から選ばれる芳香族炭化水素溶媒に溶媒置換した後、非プロトン系極性溶媒と式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物を添加し、好ましくは芳香族炭化水素溶媒を反応系内より留去しながら式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物とを反応させることにより、前記式(1)で表されるスルホニル結合を有するシラン化合物を得ることが出来る。
【0036】
共沸脱水における芳香族炭化水素溶媒の添加量は、反応系に存在する水に対して0.8〜10質量倍であり、好ましくは1〜5質量倍であり、さらに好ましくは1〜2質量倍である。共沸脱水は、Dean−Stark装置を設置した反応容器中で加熱還流することにより行うのが好ましい。
【0037】
反応系内から水が完全に留去され、芳香族炭化水素溶媒への置換が完了したのち、反応系内に非プロトン系極性溶媒と式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物を添加して反応させる。
【0038】
非プロトン系極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられるが、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0039】
この際の非プロトン系極性溶媒の添加量は、出発原料である式(I)で表されるクロロスルホニル化合物に対し、0.1〜100質量倍であり、好ましくは1〜10質量倍であり、さらに好ましくは2〜5質量倍である。
【0040】
式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物の添加量は、出発原料である式(I)で表されるクロロスルホニル化合物1モルに対し、0.4〜0.99モルであり、好ましくは0.5〜0.8モルであり、さらに好ましくは0.6〜0.7モルである。
【0041】
反応系内に非プロトン系極性溶媒と式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物を添加したあとの反応において、反応温度は160℃以下であることが好ましい。160℃以上で加熱すると副反応等が起こり、好ましくない。
【0042】
反応時間は、通常、0.05ないし200時間、好ましくは0.5ないし100時間である。
【0043】
前述したように、反応系内に非プロトン系極性溶媒と式(III)で表されるクロロアルキルシラン化合物を添加したあとの反応は、芳香族炭化水素溶媒を反応系内から留去しながら行う、すなわち系内の芳香族炭化水素溶媒を非プロトン系極性溶媒に溶媒置換しながら式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との反応を進めると、反応速度を速めることができ、また副生成物生成と副反応の抑制につながるため好ましい。
【0044】
芳香族炭化水素溶媒の留去は、常圧でも減圧下でも行うことができる。
【0045】
芳香族炭化水素溶媒を留去する際の温度は、芳香族炭化水素溶媒の沸点以上であり、160℃以下である温度が好ましい。160℃以上で加熱すると副反応等が起こり、好ましくない。
【0046】
また、(II)と(III)との反応をより効率的に進行させるため、ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物を添加することもできる。
【0047】
こうして得られる式(1)で表される化合物の粗物は、反応液を室温まで冷却した後、水と分離する有機溶媒と水とを加えて分液することにより得られる。得られた粗物を蒸留精製することにより、式(1)で表される化合物が得られる。
【0048】
上記(1)の加水分解性オルガノシランは例えば以下に例示される。下記式でMeはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
【0050】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1 化合物1の製造
【0052】
【化7】
【0053】
500mLナスフラスコに、4−メトキシベンゼン−1−スルホニルクロリド32.2g(0.156mol)、亜硫酸ナトリウム19.6g(0.156mol)、炭酸水素ナトリウム39.3g(0.467mol)、水100gを入れ、100℃に加熱し、1時間反応させた。その後、トルエン100gを加え、還流状態まで加熱し、Dean−Starkにて水の回収を行った。そこに3−クロロプロピルトリエトキシシラン25.0g(0.104mol)、ヨウ化ナトリウム3.1g(0.021mol)、N−メチル−2−ピロリドン100gを加え、150℃にて溶媒を留去しながら3時間加熱撹拌を行った。反応液は、トルエン、水にて分液を行った後、有機相に活性炭を添加して撹拌・ろ過を行い、エバポレーターにてトルエンを除去することで、粗生成物を得た。粗生成物を、減圧蒸留することで、目的物である化合物1を収率24%にて得た。
1H−NMR(500MHz、DMSO−d
6):0.63ppm(m、2H)、1.10ppm(t、9H)、1.55ppm(m、2H)、3.24ppm(m、2H)、3.71ppm(m、6H)、3.86ppm(s、3H)、7.17ppm(d、2H)、7.79ppm(d、2H)
【0054】
実施例2 化合物2の製造
【0055】
【化8】
【0056】
500mLナスフラスコに、4−トリフルオロメチルベンゼン−1−スルホニルクロリド38.1g(0.156mol)、亜硫酸ナトリウム19.6g(0.156mol)、炭酸水素ナトリウム39.3g(0.467mol)、水100gを入れ、100℃に加熱し、1時間反応させた。その後、トルエン100gを加え、還流状態まで加熱し、Dean−Starkにて水の回収を行った。そこに3−クロロプロピルトリエトキシシラン25.0g(0.104mol)、ヨウ化ナトリウム3.1g(0.021mol)、N−メチル−2−ピロリドン100gを加え、150℃にて溶媒を留去しながら3時間加熱撹拌を行った。反応液は、トルエン、水にて分液を行った後、有機相に活性炭を添加して撹拌・ろ過を行い、エバポレーターにてトルエンを除去することで、粗生成物を得た。粗生成物を、減圧蒸留することで、目的物である化合物2を収率46%にて得た。
1H−NMR(500MHz、DMSO−d
6):0.64ppm(m、2H)、1.09ppm(t、9H)、1.58ppm(m、2H)、3.43ppm(m、2H)、3.68ppm(m、6H)、8.07ppm(d、2H)、8.12ppm(d、2H)
【0057】
実施例3 化合物3の製造
【0058】
【化9】
【0059】
500mLナスフラスコに、4−フルオロベンゼン−1−スルホニルクロリド24.25g(0.125mol)、亜硫酸ナトリウム15.7g(0.125mol)、炭酸水素ナトリウム31.4g(0.374mol)、水100gを入れ、100℃に加熱し、1時間反応させた。その後、トルエン100gを加え、還流状態まで加熱し、Dean−Starkにて水の回収を行った。そこに3−クロロプロピルトリエトキシシラン20.0g(0.083mol)、ヨウ化ナトリウム2.5g(0.017mol)、N−メチル−2−ピロリドン100gを加え、150℃にて溶媒を留去しながら3時間加熱撹拌を行った。反応液は、トルエン、水にて分液を行った後、有機相に活性炭を添加して撹拌・ろ過を行い、エバポレーターにてトルエンを除去することで、粗生成物を得た。粗生成物を、減圧蒸留することで、目的物である化合物3を収率28%にて得た。
1H−NMR(500MHz、DMSO−d
6):0.63ppm(m、2H)、1.10ppm(t、9H)、1.58ppm(m、2H)、3.33ppm(m、2H)、3.69ppm(m、6H)、7.52ppm(d、2H)、7.95ppm(d、2H)