特許第6562318号(P6562318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562318シロキサン化合物及びシロキサン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562318
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】シロキサン化合物及びシロキサン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/113 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   C01B33/113 Z
【請求項の数】5
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-531423(P2017-531423)
(86)(22)【出願日】2016年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2016072478
(87)【国際公開番号】WO2017018544
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2018年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-151191(P2015-151191)
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 朋浩
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−170123(JP,A)
【文献】 特開2014−218449(JP,A)
【文献】 J. Phys. Chem. B,1997年,101,9504-9509
【文献】 J. Am. Chem. Soc.,2014年,136,4236-4244
【文献】 Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie,1929年,182,343-350,ISSN 0044-2313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C01B
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A−1)で表されるシロキサン化合物を1質量%以上100質量%未満含み、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、尿素、テトラメチル尿素及びテトラフェニル尿素からなる群より選択される少なくとも1種のアミド化合物を0質量%より多く99質量%以下含む組成物
【化1】
【請求項2】
前記式(A−1)で表されるシロキサン化合物の含有量が、5〜90質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水の含有量が25質量%以下である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミド化合物の前記式(A−1)で表されるシロキサン化合物に対する比率(アミド結合の総物質量/シロキサン化合物の総物質量)が0よりも大きく900以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
アンモニウム塩を含み、前記アンモニウム塩の前記式(A−1)で表されるシロキサン化合物に対する比率(アンモニウム塩の総物質量/シロキサン化合物の総物質量)が0より大きく10以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン化合物及びシロキサン化合物の製造方法に関し、より詳しくは自動車、建築、エレクトロニクス、医薬等の幅広い分野で利用可能なシロキサン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロキサン化合物(シリコーン)は、その特異な性質から自動車材料や建築材料、エレクトロニクス材料、医薬品などの幅広い分野で重要な役割を担っている。近年ではLEDの封止材やエコタイヤ用シランカップリング剤など、環境・エネルギー分野においても不可欠であり、シロキサン化合物を使用していない分野は無いといっても過言ではない(2009年市場規模:115億ドル、生産量:年間123万トン)。
【0003】
シロキサン化合物の大部分は、クロロシランやアルコキシシランを原料とするゾル−ゲル法などの加水分解により、シラノールを経由して合成されるのが一般的である。このシラノール(シランジオール、シラントリオール、シランテトラオールを含む。)は、フェニル基などの嵩高い置換基を有する一部のシランジオールやシラントリオールを除き、水が存在すると加水分解と同時に縮合が進行し、収率良く合成する事が困難である。また、その安定性も極めて低く、速やかに重合してしまうことが知られている(非特許文献2、3)。そのため、1)反応副生成物が多い、2)生成物の構造制御が難しい、3)水に弱い基質との反応に適応できない、など未だ多くの問題・限界が存在する。
そこで、無水条件シラノール合成法またはシラノールを経由しないシロキサンの合成が求められている。
【0004】
無水条件でシラノールを合成可能な方法としては、ピロリジンのシリルエーテルにn−BuLiを作用させて、シラノール化合物を得る方法が知られている(非特許文献1)。しかし、この方法は、そもそもシロキサンを合成することを目的とした反応ではなく、仮にシロキサンを合成したとしても、シロキサン結合がn−BuLiによって、求核的に切断されてしまうためシロキサン化合物を合成することは難しい。
【0005】
一方、シラノールを経由しないシロキサンの合成としては、触媒を用いたクロスカップリングによるシロキサンの合成が数例報告されている。
その一つとして、PiersとRubinsztajnらは、B(C65)3触媒の存在下、アルコキシシランとヒドロシランを反応させることで、メタンの脱離を伴いながらシロキサン結合を形成できることを報告している(非特許文献4、5)。しかし、この反応では、ルイス酸触媒であるB(C)により、原料の基質同士で不均化が進行し反応を制御できないなどの問題があるため、工業化に適した方法とは言い難い。
【0006】
また、最近、Baeらは、Ba(OH)2触媒存在下、下記のシラノールとメトキシシランを反応させることでメタノールの脱離を伴いながらシロキサン結合を形成できることを報告している(非特許文献6)。しかし、この反応では、安定なごく一部のシラノールのみしか適応できず、工業化に適した方法とは言い難い。
【化1】
【0007】
また、黒田らは塩化ビスマス触媒存在下、下記のアルコキシシランとクロロシランを反応させることで、アルキルクロライドの脱離を伴いながらシロキサン結合を形成できることを報告している(非特許文献7)。しかし、この反応では、基質がごく一部のものに限定されるため、工業化に適した方法とは言い難い。
【化2】
【0008】
さらに、非特許文献4〜7に記載の方法では、いずれも均一系触媒を用いるものであるため、反応後に反応系から取り除くことが容易でなく、得られた生成物中に残存するという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.2000,122,408-409.
【非特許文献2】Fyfe, C. A.; Aroca, P. P. J. Phys. Chem. B 1997, 101, 9504.
【非特許文献3】Kim, Y.; Jung, E. Chem. Lett. 2002, 992.
【非特許文献4】Parks, D. J.; Blackwell, J. M.; Piers, W. E. J. Org. Chem. 2000, 65, 3090.
【非特許文献5】Rubinsztajn. S.; Cella, J. A. Macromolecules2005, 38, 1061.
【非特許文献6】Synthetic Metals 2009,159,1288-1290.
【非特許文献7】Angew.Chem.Int.Ed.2010,49,5273-5277.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のようにシロキサン化合物は、シラノール化合物を経由して合成することができるが、シラノール基(Si−OH)が水の存在下で速やかに縮合してしまうため、例えばシラノール基が残存した低分子量のシロキサン化合物を選択的に収率良く合成することは困難であり、またこれらのシロキサン化合物を高濃度で安定的に配合した組成物を得ることも難しいのが現状である。
本発明は、シラノール基、即ちヒドロキシル基を有した有用な低分子量のシロキサン化合物やその組成物を提供すること、さらにこのようなシロキサン化合物を効率良く製造することができるシロキサン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ヒドロキシル基を有した特定のシロキサン化合物を特定量含んだ組成物を実際に調製することが可能であり、さらにこの組成物がシリコーン樹脂の原料等として非常に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0012】
<1> 下記式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物の少なくとも1種を1質量%以上100質量%未満含む組成物。
【化3】
(式(A−2)〜(A−6)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
<2> 前記式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物の少なくとも1種の含有量が、5〜90質量%である、<1>に記載の組成物。
<3> 下記式(B)で表されるシロキサン化合物。
【化4】
<4> <3>に記載の式(B)で表されるシロキサン化合物を0.1質量%以上100質量%未満含む組成物。
<5> 水の含有量が25質量%以下である、<1>、<2>、<4>の何れかに記載の組成物。
<6> アミド化合物を0質量%より多く99質量%以下含む、<1>、<2>、<4>、<5>の何れかに記載の組成物。
<7> 前記アミド化合物の前記式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物又は式(B)で表されるシロキサン化合物に対する比率(アミド結合の総物質量/シロキサン化合物の総物質量)が0よりも大きく900以下である、<6>に記載の組成物。
<8> 前記アミド化合物が、テトラメチル尿素である、<6>又は<7>に記載の組成物。
<9> アンモニウム塩を含み、前記アンモニウム塩の前記式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物又は式(B)で表されるシロキサン化合物に対する比率(アンモニウム塩の総物質量/シロキサン化合物の総物質量)が0より大きく10以下である、<1>、<2>、<4>〜<8>の何れかに記載の組成物。
<10> パラジウム(Pd)元素と、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも1種の元素とを含有する固体触媒の存在下、下記式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物と水素を反応させて下記式(2)で表される構造を有するシロキサン化合物を生成する水素添加工程を含むことを特徴とするシロキサン化合物の製造方法。
【化5】
(式(1)中、Arは窒素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数4〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
<11> 前記反応工程が、アミド化合物を含む溶媒中で行われる、<10>に記載のシロキサン化合物の製造方法。
<12> 前記反応工程で得られた生成物にアンモニウム塩を添加するアンモニウム塩添加工程を含む、<10>又は<11>に記載のシロキサン化合物の製造方法。
<13> 前記反応工程で得られた生成物にアミド化合物を添加するアミド化合物添加工程を含む、<10>〜<12>の何れかに記載のシロキサン化合物の製造方法。
<14> 前記反応工程で得られた生成物、前記アンモニウム塩添加工程で得られた生成物、又は前記アミド化合物添加工程で得られた生成物を凍結させて、減圧下にさらす凍結乾燥工程を含む、<10>〜<13>の何れかに記載のシロキサン化合物の製造方法。
<15> 前記反応工程で得られた生成物、前記アンモニウム塩添加工程で得られた生成物、又は前記アミド化合物添加工程で得られた生成物から貧溶媒法により結晶を析出させる結晶化工程を含む、<10>〜<13>の何れかに記載のシロキサン化合物の製造方法。
<16> アミド化合物の存在下、下記式(3)で表されるシロキサン化合物から下記式(4)で表されるシロキサン化合物を生成する環化工程を含むことを特徴とするシロキサン化合物の製造方法。
【化6】
(式(3)及び(4)中、R’’’はそれぞれ独立して水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を、nは1〜10の整数を表す。)
<17> 前記環化工程が、前記式(3)で表されるシロキサン化合物を含む組成物に前記アミド化合物を添加することによって行う工程である、<16>に記載のシロキサン化合物の製造方法。
<18> 前記アミド化合物が、下記式(i)又は(ii)で表される化合物の少なくとも1種である、<16>又は<17>に記載のシロキサン化合物の製造方法。
【化7】
(式(i)及び(ii)中、R’及びR”はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR”として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
<19> 前記アミド化合物が、下記式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物である、<16>〜<18>の何れかに記載のシロキサン化合物の製造方法。
【化8】
(式(iii)〜(v)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
<20> 前記環化工程で得られた生成物を凍結させて、減圧下にさらす凍結乾燥工程を含む、<16>〜<19>の何れかに記載のシロキサン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シリコーン樹脂の原料等として利用することができるヒドロキシル基を有するシロキサン化合物とその組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例16で得られた組成物のIRの測定結果である。
図2】実施例17で得られた組成物のIRの測定結果である。
図3】実施例18で得られた組成物のIRの測定結果である。
図4】実施例19で得られた組成物のIRの測定結果である。
図5】実施例20で得られた組成物のIRの測定結果である。
図6】実施例21で得られた組成物のIRの測定結果である。
図7】実施例22で得られた組成物のIRの測定結果である。
図8】実施例23で得られた組成物のIRの測定結果である。
図9】実施例24で得られた組成物のIRの測定結果である。
図10】実施例25で得られた組成物のIRの測定結果である。
図11】実施例26で得られた組成物のIRの測定結果である。
図12】実施例27で得られた組成物のIRの測定結果である。
図13】実施例28で得られた組成物のIRの測定結果である。
図14】実施例29で得られた組成物のIRの測定結果である。
図15】実施例30で得られた組成物のIRの測定結果である。
図16】実施例31で得られた組成物のIRの測定結果である。
図17】実施例32で得られた組成物のIRの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0016】
<組成物>
本発明の一態様である組成物(以下、「本発明の組成物」と略す場合がある。)は、下記式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物の少なくとも1種を1質量%以上100質量%未満含むことを特徴とする。
【化9】
(式(A−2)〜(A−6)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物は、ジシロキサン化合物であり、ヒドロキシル基が残存した化合物である。
前述のようにシロキサン化合物は、シラノール化合物を経由して合成することができるが、シラノール基(Si−OH)が水の存在下で速やかに縮合してしまうため、シラノール基が残存した低分子量のシロキサン化合物を選択的に収率良く合成することは困難であり、またこれらのシロキサン化合物を高濃度で安定的に配合した組成物を得ることも難しいのが現状である。
本発明者らは、無水条件でシロキサン化合物を製造したり、シラノール基の縮合を抑える作用がある溶媒中でシロキサン化合物を製造したりする等の工夫を行うことにより、式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物を1質量%以上100質量%未満含んだ組成物を調製することに成功するとともに、得られた組成物においてシロキサン化合物が安定的に存在できるため、この組成物がシリコーン樹脂の原料等として非常に有用であること見出したのである。
【0017】
本発明の組成物は、式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とするが、下記式(A−2)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物の具体的種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【化10】
(式(A−2)〜(A−6)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
Rはそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。
Rが炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
Rとしては、水素原子(−H)、メチル基(−Me)、エチル基(−Et)、n−プロピル基(−Pr)、i−プロピル基(−Pr)、n−ブチル基(−Bu)、t−ブチル基(−Bu)、n−ヘキシル基(−Hex)、シクロへキシル基(−Hex)、フェニル基(−Ph)、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等が挙げられるが、メチル基が特に好ましい。
式(A−2)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化11】
【0018】
本発明の組成物は、式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物の少なくとも1種を1質量%以上100質量%未満含むことを特徴とするが、その含有量(2種類以上含む場合は総含有量)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは19質量%以上、最も好ましくは23質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の組成物を様々な用途に利用し易くなるとともに、本発明の組成物の安定性を良好に保つことができる。
【0019】
本発明の組成物は、式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物(以下、「シロキサン化合物」と略す場合がある。)を含むものであれば、その他の化合物を含むものであってもよく、具体的な化合物として、水、アミン化合物、アミド化合物、アンモニウム塩等が挙げられる。以下、これらの化合物について詳細に説明する。
【0020】
水は、シラノール基の縮合を促進し、本発明の組成物の安定性を低下させる要因となるため、極力少ない方が好ましい化合物である。なお、水は、大気中から混入したり、シラノール基の縮合によって生じたりする可能性があるほか、ハロゲン化シランやアルコキシシラン等の加水分解に使用するため、このような加水分解を利用した製造方法で得られた組成物の中に含まれ易い化合物である。
本発明の組成物における水の含有量は、通常25質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0.01質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の組成物を様々な用途に利用し易くなるとともに、本発明の組成物の安定性を良好に保つことができる。
【0021】
アミン化合物は、シロキサン化合物の製造過程等において使用する可能性がある化合物であり、またシラノール基の縮合を抑え、本発明の組成物を安定化する効果がある化合物である。
アミン化合物は、アミノ基(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンの何れであってもよい。)を有するものであれば、具体的な種類は特に限定されないが(アミノ基とアミド結合の両方を有する化合物は、「アミド化合物」に分類するものとする。)、アニリン(NHPh)、ジフェニルアミン(NHPh)、ジメチルピリジン(MePyr)、ジ−tert−ブチルピリジン(BuPyr)、ピラジン(Pyraz)、トリフェニルアミン(NPh)、トリエチルアミン(EtN)、ジ−イソプロピルエチルアミン(PrEtN)等が挙げられる。アミン化合物の中でも、アニリン(NHPh)が特に好ましい。なお、組成物に含まれるアミン化合物は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであってもよい。
本発明の組成物におけるアミン化合物の含有量(2種類以上含む場合は総含有量)は、好ましくは0質量%より多く、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.10質量%以上であり、通常95質量%未満、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の組成物を様々な用途に利用し易くなるとともに、本発明の組成物の安定性を良好に保つことができる。
【0022】
アミド化合物は、シロキサン化合物の製造過程等において使用する可能性がある化合物であり、またシラノール基の縮合を抑え、本発明の組成物を安定化する効果がある化合物である。
アミド化合物は、アミド結合を少なくとも1つ有するものであれば、具体的な種類は特に限定されないが(アミノ基とアミド結合の両方を有する化合物は、「アミド化合物」に分類するものとする。)、下記式(i)又は(ii)で表される化合物のほか、下記式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物が挙げられる。以下、「式(i)又は(ii)で表される化合物」、「式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物」等について詳細に説明する。
【化12】
(式(i)及び(ii)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化13】
(式(iii)〜(v)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
R’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表しているが、水素原子、メチル基(−Me)、エチル基(−Et)、n−プロピル基(−Pr)、i−プロピル基(−Pr)、n−ブチル基(−Bu)、t−ブチル基(−Bu)、n−ヘキシル基(−Hex)、シクロへキシル基(−Hex)、フェニル基(−Ph)が挙げられる。
R’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表しているが、水素原子、メチル基(−Me)、エチル基(−Et)、n−プロピル基(−Pr)、i−プロピル基(−Pr)、n−ブチル基(−Bu)、t−ブチル基(−Bu)、n−ヘキシル基(−Hex)、シクロへキシル基(−Hex)、フェニル基(−Ph)が挙げられる。
なお、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよいが、「環状構造を形成」しているとは、例えば下記式で表されるアミド化合物のような構造を意味する。
【化14】
式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物の数平均分子量(M)は、通常1,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、通常1,000,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは200,000以下である。
式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物の重量平均分子量(M)は、通常1,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、通常1,000,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは200,000以下である。
式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物のアミド結合の数は、通常10以上、好ましくは50以上、より好ましくは100以上であり、通常10,000以下、好ましくは5,000以下、より好ましくは2,000以下である。
式(i)で表される化合物としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
式(ii)で表される化合物としては、尿素、テトラメチル尿素(MeUrea)、テトラフェニル尿素等が挙げられる。
式(iii)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ポリビニルピペリドン、ポリビニルカプロラクタム等が挙げられる。
式(iv)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−エチルメタクリルアミド、ポリ−N−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメチルアクリルアミド、ポリ−N−メチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロペンチニルアクリルアミド等が挙げられる。
式(v)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリ−2−メチルオキサゾリン、ポリ−2−エチルオキサゾリン、ポリ−2−プロピルオキサゾリン等が挙げられる。
なお、組成物に含まれるアミド化合物は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであってもよい。
本発明の組成物におけるアミド化合物の含有量(2種類以上含む場合は総含有量)は、好ましくは0質量%より多く、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の組成物を様々な用途に利用し易くなるとともに、本発明の組成物の安定性を良好に保つことができる。
また、本発明の組成物におけるアミド化合物のシロキサン化合物に対する比率(アミド結合の総物質量/シロキサン化合物の総物質量)は、好ましくは0より大きく、より好ましくは1以上であり、通常900以下、好ましくは450以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは10以下である。なお、「アミド化合物のシロキサン化合物に対する比率」は、括弧書きで「アミド結合の総物質量/シロキサン化合物の総物質量」と記載されているように、アミド結合の物質量換算で計算するものとする。即ち、分子内にアミド結合を2つ有するアミド化合物1mol/シロキサン化合物1molは「2」となる。
【0023】
アミン化合物とアミド化合物の両方を含む場合の総含有量は、好ましくは0質量%より多く、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下ある。上記範囲内であると、本発明の組成物を様々な用途に利用し易くなるとともに、本発明の組成物の安定性を良好に保つことができる。
【0024】
アンモニウム塩は、シラノール基の縮合を抑え、本発明の組成物を安定化する効果があり、添加剤(安定化剤)として利用できる化合物である。
アンモニウム塩は、アンモニウムイオンと対アニオンからなる化合物であれば、具体的な種類は特に限定されず、アンモニウムイオンとしては、テトラヒドロアンモニウムイオン(NH)、テトラメチルアンモニウムイオン(NMe)、テトラエチルアンモニウムイオン(NEt)、テトラプロピルアンモニウムイオン(NPr)、テトラブチルアンモニウムイオン(NBu)、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン(NBnBu)、トリブチル(メチル)アンモニウム(NBuMe)イオン、テトラペンチルアンモニウムイオン(NPen)、テトラへキシルアンモニウムイオン(NHex)、テトラヘプチルアンモニウムイオン(NHep)、1−ブチル−1メチルピロリジウムイオン(BuMePyr)、メチルトリオクチルアンモニウムイオン(NMeOct)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン等が挙げられる。また、対アニオンとしては、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、アセトキシイオン(AcO)、硝酸イオン(NO)、アジ化物イオン(N)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、過塩素酸イオン(ClO)、硫酸イオン(HSO)等が挙げられる。
アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムクロリド(NBuCl)、テトラブチルアンモニウムブロミド(NBuBr)が特に好ましい。なお、組成物に含まれるアンモニウム塩は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであってもよい。
本発明の組成物におけるアンモニウム塩の含有量(2種類以上含む場合は総含有量)は、好ましくは0質量%より多く、より好ましくは50量%以上であり、通常95質量%未満、好ましくは80質量%以下である。
また、本発明の組成物におけるアンモニウム塩のシロキサン化合物に対する比率(アンモニウム塩の総物質量/シロキサン化合物の総物質量)は、好ましくは0より大きく、より好ましくは1以上であり、通常10以下、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
上記範囲内であると、本発明の組成物を様々な用途に利用し易くなるとともに、本発明の組成物の安定性を良好に保つことができる。
【0025】
本発明の組成物の状態は、液体、固体のどちらであってもよいが、固体であることが好ましい。固体であると、本発明の組成物を様々な用途に利用し易くなるとともに、本発明の組成物の安定性を良好に保つことができる。
【0026】
本発明の組成物の用途は、特に限定されないが、シリコーン樹脂等の原料(反応剤)、コーティング剤、レジン、絶縁膜、ガスバリア膜、ゼオライト、メソポーラスシリカ、肥料、農薬、医薬品、健康食品等が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物は、前述の式(A−1)〜(A−6)で表されるシロキサン化合物の少なくとも1種を1質量%以上100質量%未満含むものであれば、その製造方法は特に限定されないが、好ましい製造方法として<シロキサン化合物の製造方法>において詳細を後述するものとする。
【0028】
<シロキサン化合物>
本発明の別の一態様であるシロキサン化合物(以下、「本発明のシロキサン化合物」と略す場合がある。)は、下記式(B)で表される化合物である。
【化15】
式(B)で表されるシロキサン化合物は、シランテトラオールの四量体又はジシロキサンヘキサオールの二量体が環化した環状テトラシロキサン化合物であるが、従来法において、この化合物が得られたことは報告されていなかった。
本発明者らは、無水条件でシロキサン化合物を生成する反応において、テトラメチル尿素(MeUrea)等のアミド化合物のみを利用すること、また鎖状のシロキサン化合物にアミド化合物を添加することによって、環化したシロキサン化合物、即ち式(B)で表されるシロキサン化合物を調製することが可能であることを見出したのである。式(B)で表されるシラノール化合物が得られる詳細なメカニズムは十分に明らかとなっていないが、以下の理由によるものと考えられる。
前述のようにアミノ化合物、アミド化合物、アンモニウム塩は、それぞれシラノール基の縮合を抑える作用があるが、この中でもアミノ化合物やアンモニウム塩はその作用が強い一方、アミド化合物のみでは弱いものと考えられる。そのため、例えばアミド化合物を溶媒とし、アミン化合物等を含まない条件でシラノール化合物を生成させることにより、生成したシラノール化合物が適度に縮合して直鎖状や環状の四量体が形成し、それ以上の縮合が抑制されて、生成物として得られるものと考えられる。
【0029】
本発明のシロキサン化合物は、シリコーン樹脂の原料等として好適であることを前述したが、シラノール化合物以外の化合物を含んだ組成物の状態で活用してもよい。なお、この組成物における式(B)で表されるシロキサン化合物の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上、最も好ましくは21質量%以上であり、好ましくは100質量%未満である。上記範囲内であると、シリコーン樹脂の原料等として利用し易くなるとともに、組成物の安定性を良好に保つことができる。
また、この組成物に含まれる化合物としては、水、アミン化合物、アミド化合物、アンモニウム塩等が挙げられる。なお、これらの詳細については前述の<組成物>において記載した内容と同様であるため省略するものとする。
【0030】
<シロキサン化合物の製造方法1>
本発明の別の一態様であるシロキサン化合物の製造方法は、パラジウム(Pd)元素と、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも1種の元素とを含有する固体触媒の存在下、下記式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物と水素を反応させて下記式(2)で表される構造を有するシロキサン化合物を生成する水素添加工程(以下、「水素添加工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
【化16】
(式(1)中、Arは窒素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数4〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
式(1)で表される構造は、アリールメチルオキシ基(−OCHAr)がシロキサン化合物のケイ素原子に結合した構造であるが、水素との反応によってこの構造からヒドロキシル基(−OH)が形成し、式(2)で表される構造を有したシロキサン化合物を製造することができるのである。前述のようにシロキサン化合物は、シラノール化合物を経由して合成することができるが、シラノール基が水の存在下で速やかに縮合してしまうため、シラノール基が残存した低分子量のシロキサン化合物を選択的に収率良く合成することは困難であった。
本発明者らは、式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物と水素を反応させることによって、高収率で式(2)で表される構造を有したシロキサン化合物を製造できることを見出すとともに、無水条件でシロキサン化合物を製造できるため、得られた組成物においてシロキサン化合物が安定的に存在でき、シリコーン樹脂の原料等として活用できることを明らかとしたのである。
なお、式(1)で表される構造及び式(2)で表される構造の波線は、その先の構造が任意であることを意味しており、例えば式(1)で表される構造においてケイ素原子に結合しているアリールメチルオキシ基(−OCHAr)が2つ以上存在していてもよいことを意味する。
また「固体触媒」は、構成元素としてパラジウム(Pd)と白金(Pt)等を含有し、室温下において固体であるものであれば、パラジウム(Pd)等の状態は特に限定されないことを意味する。即ち、「固体触媒」においてパラジウム(Pd)は、酸化パラジウム(II)の状態にあっても、表面が酸化され、内部が金属パラジウムの状態にあっても、或いは白金等と合金を形成していてもよい。
【0031】
水素添加工程は、式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物と水素を反応させて式(2)で表される構造を有するシロキサン化合物を生成する工程であるが、式(1)で表される化合物に特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【化17】
(式(1)中、Arは窒素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数4〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
式(1)中のArは、窒素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数4〜20の芳香族炭化水素基を表しているが、「芳香族炭化水素基」とは、フェニル基のような芳香族性を有する単環の芳香族炭化水素基が含まれるほか、ナフチル基のような芳香族性を有する多環の芳香族炭化水素基も含まれることを意味する。また、「窒素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい」とは、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、フルオロ基(−F)等の窒素原子、酸素原子、又はハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、イミノ基(−NH−)等の窒素原子、酸素原子、又はハロゲン原子を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。従って、「窒素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい」芳香族炭化水素基としては、例えばニトロフェニル基のようなニトロ基を含む炭素数6の芳香族炭化水素基や、ピリジル基のように炭化骨格の内部に窒素原子を含む炭素数5の複素環構造等が含まれる。
芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6以上であり、通常18以下、好ましくは14以下である。
芳香族炭化水素基が官能基を含む場合、官能基としては、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、メトキシ基(−OMe)、エトキシ基(−OEt)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、トリフルオロメチル基(−CF)等が挙げられる。
具体的な芳香族炭化水素基としては、フェニル基(−Ph)、ナフチル基(−C10)、アミノフェニル基(−PhNH)、ニトロフェニル基(−PhNO)、メトキシフェニル基(−PhOMe)、エトキシフェニル基(−PhOEt)、フルオロフェニル基(−PhF)、ジフルオロフェニル基(−PhF)等が挙げられる。
【0032】
式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物と式(2)で表される構造を有するシロキサン化合物のケイ素原子の数は、通常12以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下であり、通常1以上である。
【0033】
式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物としては、下記式で表されるジシロキサン化合物が挙げられる。
【化18】
(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【0034】
また、式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物として、下記式で表されるトリシロキサン化合物も挙げられる。
【化19】
(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【0035】
また、式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物として、下記式で表されるテトラシロキサン化合物も挙げられる。
【化20】
(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【0036】
水素添加工程は、触媒がパラジウム(Pd)元素と、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも1種の元素とを含有する固体触媒であることを特徴とするが、固体触媒の具体的な材料形態は特に限定されない。例えば、パラジウムと白金が触媒担体に担持されているもの、金属白金粒子にパラジウムが担持されたもの、金属パラジウム粒子と金属白金粒子の混合物等の何れの形態であってもよい。これらの中でも、比表面積が高いことから触媒担体に担持されているものが好ましい。
触媒担体は、触媒担体として使用される公知の材料を適宜採用することができるが、具体的には、活性炭、グラファイトカーボン、アセチレンブラック等の炭素材料、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、シリカアルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。比表面積が高いことから活性炭等の炭素材料を触媒担体として使用することが好ましい。なお、触媒担体は多孔質材料であることがより好ましい。
【0037】
固体触媒におけるパラジウム(Pd)元素と白金(Pt)等の元素の組み合わせは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、パラジウム(Pd)元素と白金(Pt)元素、パラジウム(Pd)元素とルテニウム(Ru)元素、パラジウム(Pd)元素とロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)元素とイリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)元素と金(Au)、パラジウム(Pd)元素と白金(Pt)元素とルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)元素と白金(Pt)元素とロジウム(Rh)等の組み合わせが挙げられる。この中でも、良好な収率でシロキサン化合物を製造することができることから、パラジウム(Pd)元素と白金(Pt)元素の組み合わせが特に好ましい。
固体触媒が白金(Pt)元素を含有する場合、白金(Pt)元素のパラジウム(Pd)元素に対する比率(質量比)は、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、通常1以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.15以下である。
固体触媒がルテニウム(Ru)元素を含有する場合、ルテニウム(Ru)元素のパラジウム(Pd)元素に対する比率(質量比)は、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、通常1以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.15以下である。
固体触媒がロジウム(Rh)元素を含有する場合、ロジウム(Rh)元素のパラジウム(Pd)元素に対する比率(質量比)は、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、通常1以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.15以下である。
固体触媒がイリジウム(Ir)元素を含有する場合、イリジウム(Ir)元素のパラジウム(Pd)元素に対する比率(質量比)は、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、通常1以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.15以下である。
固体触媒が金(Au)元素を含有する場合、金(Au)元素のパラジウム(Pd)元素に対する比率(質量比)は、通常0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、通常1以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.15以下である。
上記範囲内であると、良好な収率でシロキサン化合物を製造することができる。
【0038】
固体触媒におけるパラジウム(Pd)元素等の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、固体触媒が炭素材料(触媒担体)に担持されているものである場合、パラジウム(Pd)元素の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
固体触媒が白金(Pt)元素を含有し、炭素材料(触媒担体)に担持されているものである場合の白金(Pt)元素の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
固体触媒がルテニウム(Ru)元素を含有し、炭素材料(触媒担体)に担持されているものである場合のルテニウム(Ru)元素の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
固体触媒がロジウム(Rh)元素を含有し、炭素材料(触媒担体)に担持されているものである場合のロジウム(Rh)元素の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
固体触媒がイリジウム(Ir)元素を含有し、炭素材料(触媒担体)に担持されているものである場合のイリジウム(Ir)元素の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
固体触媒が金(Au)元素を含有し、炭素材料(触媒担体)に担持されているものである場合の金(Au)元素の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0039】
固体触媒は、市販されているものであっても、或いは自ら調製したものであってもよい。例えば市販されているものとして、エヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)等が挙げられる。
また、固体触媒の調製方法は、公知の方法を適宜採用することができ、例えばパラジウムと白金が触媒担体に担持されているものの場合、パラジウム塩を触媒担体に含浸した後、白金塩をさらに含浸する方法、パラジウム塩と白金塩を触媒担体に共沈する方法等が挙げられる。固体触媒の調製に使用する原料は、パラジウム(Pd)等の塩化物、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩、アンミン塩、アルカリ塩、有機錯体等が挙げられる。例えば、パラジウム(Pd)源としては二価の塩化パラジウム、塩化パラジウム酸ナトリウム、塩化パラジウム酸カリウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム等が、白金(Pt)源としては塩化白金酸、塩化白金酸カリウム等が、ルテニウム(Ru)源としては塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム等が、ロジウム(Rh)源としては塩化ロジウム、硫酸ロジウム等が、イリジウム(Ir)源としては硫酸イリジウム、塩化イリジウム酸等が、金(Au)源としては塩化金酸、亜硫酸金ナトリウム、酢酸金等が挙げられる。
【0040】
水素添加工程における固体触媒の使用量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、パラジウム(Pd)元素の総量(物質量)として表した場合、アリールメチルオキシ基換算で、通常0.1mol%以上、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1.0mol%以上であり、通常15.0mol%以下、好ましくは10.0mol%以下、より好ましくは5.0mol%以下である。上記範囲内であると、良好な収率でシロキサン化合物を製造することができる。
【0041】
水素添加工程は、その他については特に限定されないが、無水条件で式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物と水素を反応させて下記式(2)で表される構造を有するシロキサン化合物を生成する工程であることが好ましい。
なお、「無水条件」とは、原料として水や水分を含む化合物を使用しないこと、大気中の水分が混入しないように反応を進めること等のように反応系中に極力水分が含まれないように原料や反応を制御することを意味する。従って、例えば生成したシロキサン化合物が縮合して水が生成してしまうことがあるが、「無水条件」とは、このような水も含まれない完全な無水条件を意味するものではなく、反応系中に含まれる水の具体的濃度等も特に限定されないことを意味する。
【0042】
水素添加工程は、溶媒を使用する工程であることが好ましい。
溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、シクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素化合物、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール化合物、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル化合物、酢酸エチル、酢酸n−アミル、乳酸エチル等のエステル化合物、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、ヘキサクロロエタン等のハロゲン化炭化水素化合物、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトアミド、テトラメチル尿素等のアミド化合物、アセトン、メチルエチルケトン、フェニルメチルケトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。なお、これらの反応溶媒は2種以上の混合物であってもよい。
この中でも、下記式(i)又は(ii)で表されるアミド化合物が挙げられる。なお、無水条件でシロキサン化合物を生成する反応において、テトラメチル尿素(MeUrea)等のアミド化合物のみを利用することにより、環化したシロキサン化合物を調製することが可能であることを前述したが、溶媒の選択によって環状のシロキサン化合物を選択的に製造することができる。
【化21】
(式(i)及び(ii)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、R’とR’’については、前述のものと同様である。
【0043】
水素添加工程は、アミン化合物の存在下で行われる工程であることが好ましい。「アミン化合物の存在下」とは、例えば式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物や溶媒が含まれる溶液にアミン化合物が添加されていることを意味する。アミン化合物の存在下で反応させると、固体触媒に対し水素を作用させた際に生成する酸を中和して、シラノール基の縮合を抑制するため、良好な収率でシロキサン化合物を製造することができる。なお、「アミン化合物」は、アミノ基(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンの何れであってもよい。)を有するものであれば、具体的な種類は特に限定されないが(アミノ基とアミド結合の両方を有する化合物は、「アミド化合物」に分類するものとする。)、アニリン(NHPh)、ジフェニルアミン(NHPh)、ジメチルピリジン(MePyr)、ジ−tert−ブチルピリジン(BuPyr)、ピラジン(Pyraz)、トリフェニルアミン(NPh)、トリエチルアミン(EtN)、ジ−イソプロピルエチルアミン(PrEtN)等が挙げられる。アミン化合物の中でも、アニリン(NHPh)が特に好ましい。なお、組成物に含まれるアミン化合物は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであってもよい。
アミン化合物の添加量(物質量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、ベンジルオキシ基換算で、通常0.0001倍以上、好ましくは0.001倍以上、より好ましくは0.01倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.0倍以下である。
【0044】
水素添加工程の温度条件は、通常−80℃以上、好ましくは−20℃以上、より好ましくは0℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
水素添加工程の水素は、通常、水素ガスとして気相に存在するものであるが、水素圧(水素分圧)は、通常0.01気圧以上、好ましくは0.1気圧以上、より好ましくは1気圧以上であり、通常100気圧以下、好ましくは10気圧以下、より好ましくは5気圧以下である。
水素添加工程の反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上であり、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは6時間以下である。
上記範囲内であると、良好な収率でシロキサン化合物を製造することができる。
【0045】
水素添加工程における式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物と水素を反応させる具体的な操作手順は、特に限定されず、公知の手順を適宜採用することができる。通常、反応容器に固体触媒と式(1)で表される構造を有するシロキサン化合物を投入して混合(溶媒、アミン化合物を含むものであってもよい。)、さらに反応容器内を水素ガスで置換して反応を行う。反応終了後、固体触媒を遠心分離若しくはフィルターで分離する、又はセライトやハイフロスーパーセル等で濾過し、シラノール化合物を取り出すことによって行うことができる。
【0046】
本発明の製造方法は、前述の水素添加工程を含むものであれば、その他については特に限定されず、例えば、水素添加工程で得られた生成物にアンモニウム塩を添加するアンモニウム塩添加工程(以下、「アンモニウム塩添加工程」と略す場合がある。)、水素添加工程で得られた生成物にアミド化合物を添加するアミド化合物添加工程(以下、「アミド化合物添加工程」と略す場合がある。)、水素添加工程で得られた生成物、アンモニウム塩添加工程で得られた生成物、又はアミド化合物添加工程で得られた生成物を凍結させて、減圧下にさらす凍結乾燥工程(以下、「凍結乾燥工程」と略す場合がある。)、水素添加工程で得られた生成物、アンモニウム塩添加工程で得られた生成物、又はアミド化合物添加工程で得られた生成物から貧溶媒法により結晶を析出させる結晶化工程(以下、「結晶化工程」と略す場合がある。)等を含むものであってもよい。以下、アンモニウム塩添加工程、アミド化合物添加工程、凍結乾燥工程、及び結晶化工程について詳細に説明する。
【0047】
(アンモニウム塩添加工程)
アンモニウム塩添加工程は、水素添加工程で得られた生成物にアンモニウム塩を添加する工程であるが、アンモニウム塩の具体的種類、アンモニウム塩の使用量等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、「アンモニウム塩」とは、アンモニウムイオンと対アニオンからなる化合物を意味し、アンモニウムイオンと対アニオンの構造は特に限定されないものとする。アンモニウム塩は、シラノール基の縮合を抑えるものと考えられる。以下、具体例を挙げて説明する。
アンモニウムイオンとしては、テトラヒドロアンモニウムイオン(NH)、テトラメチルアンモニウムイオン(NMe)、テトラプロピルアンモニウムイオン(NPr)、テトラブチルアンモニウムイオン(NBu)、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン(NBnBu)、トリブチル(メチル)アンモニウム(NBuMe)イオン、テトラペンチルアンモニウムイオン(NPen)、テトラへキシルアンモニウムイオン(NHex)、テトラヘプチルアンモニウムイオン(NHep)、1−ブチル−1メチルピロリジウムイオン(BuMePyr)、メチルトリオクチルアンモニウムイオン(NMeOct)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン等が挙げられる。
対アニオンとしては、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、アセトキシイオン(AcO)、硝酸イオン(NO)、アジ化物イオン(N)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、過塩素酸イオン(ClO)、硫酸イオン(HSO)等が挙げられる。
アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムクロリド(NBuCl)、テトラブチルアンモニウムブロミド(NBuBr)、テトラペンチルアンモニウムクロリド(NPenCl)が特に好ましい。なお、組成物に含まれるアンモニウム塩は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであってもよい。
【0048】
アンモニウム塩の使用量は、シロキサン化合物に対して物質量換算で、通常0倍より大きく、好ましくは1倍以上であり、通常10倍以下、好ましくは3倍以下、より好ましくは2倍以下である。
【0049】
(アミド化合物添加工程)
アミド化合物添加工程は、水素添加工程で得られた生成物にアミド化合物を添加する工程であるが、アミド化合物の具体的種類、アミド化合物の使用量等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、鎖状のシロキサン化合物にアミド化合物を添加することにより、環化したシロキサン化合物を調製することが可能であることを前述したが、アミド化合物添加工程は環状のシロキサン化合物を製造するために利用することができる。
アミド化合物としては、前述した式(i)又は(ii)で表される化合物、式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物等が挙げられる。
【化22】
(式(i)及び(ii)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化23】
(式(iii)〜(v)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、式(i)で表される化合物としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
式(ii)で表される化合物としては、尿素、テトラメチル尿素(MeUrea)、テトラフェニル尿素等が挙げられる。
式(iii)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ポリビニルピペリドン、ポリビニルカプロラクタム等が挙げられる。
式(iv)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−エチルメタクリルアミド、ポリ−N−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメチルアクリルアミド、ポリ−N−メチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロペンチニルアクリルアミド等が挙げられる。
式(v)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリ−2−メチルオキサゾリン、ポリ−2−エチルオキサゾリン、ポリ−2−プロピルオキサゾリン等が挙げられる。
アミド化合物としては、尿素、テトラメチル尿素、ポリビニルピロリドン、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが特に好ましい。なお、組成物に含まれるアミド化合物は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであっても良い。
【0050】
アミド化合物の使用量は、シロキサン化合物に対してアミド結合の総物質量換算で、通常0倍よりも大きく、好ましくは1倍量以上であり、通常900倍以下、好ましくは450倍以下、より好ましくは150倍以下、さらに好ましくは10倍以下、特に好ましくは6倍以下である。
【0051】
(凍結乾燥工程)
凍結乾燥工程は、水素添加工程で得られた生成物、アンモニウム塩添加工程で得られた生成物、又はアミド化合物添加工程で得られた生成物を凍結させて、減圧下にさらす工程であるが、凍結温度、乾燥温度、乾燥圧力、乾燥時間等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。以下、具体例を挙げて説明する。
凍結温度は、アンモニウム塩添加工程、又はアミド添加工程等で得られた生成物が凍結する温度であれば特に限定されないが、通常10℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−20℃以下であり、通常−196℃以上、好ましくは−150℃以上、より好ましくは−100℃以上である。
乾燥温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−20℃以下であり、通常−196℃以上、好ましくは−150℃以上、より好ましくは−100℃以上である。
乾燥圧力は、通常100Pa以下、好ましくは20Pa以下、より好ましくは3Pa以下であり、通常10−5Pa以上、好ましくは0.01Pa以上、より好ましくは1Pa以上である。
乾燥時間は、通常200時間以下、好ましくは100時間以下、より好ましくは50時間以下であり、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上である。
【0052】
(結晶化工程)
結晶化工程は、水素添加工程で得られた生成物、アンモニウム塩添加工程で得られた生成物、又はアミド化合物添加工程で得られた生成物から貧溶媒法により結晶を析出させる工程であるが、使用する溶媒、結晶化時間(静置時間)等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。以下、具体例を挙げて説明する。
使用する溶媒の沸点は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは30℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下である。
使用する溶媒としては、ジエチルエーテル(EtO)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素等が挙げられる。
結晶化時間(静置時間)は、通常720時間以下、好ましくは240時間以下、より好ましくは50時間以下であり、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上である。
【0053】
<シロキサン化合物の製造方法2>
本発明の別の一態様であるシロキサン化合物の製造方法は、アミド化合物の存在下、下記式(3)で表されるシロキサン化合物から下記式(4)で表されるシロキサン化合物を生成する環化工程(以下、「環化工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
【化24】
(式(3)及び(4)中、R’’’はそれぞれ独立して水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を、nは1〜10の整数を表す。)
前述のように、本発明者らは鎖状のシロキサン化合物にアミド化合物を添加することによって、環化したシロキサン化合物を調製することが可能であることを見出しており、環化工程を含むシロキサン化合物の製造方法も本発明の一態様である。なお、環化工程を含むシロキサン化合物の製造方法も、環化工程で得られた生成物を凍結させて、減圧下にさらす凍結乾燥工程を含むことが好ましい。凍結乾燥工程については、前述のものと同様である。
【0054】
環化工程は、アミド化合物の存在下、式(3)で表されるシロキサン化合物から式(4)で表されるシロキサン化合物を生成する工程であるが、式(3)で表される化合物に特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【化25】
(式(3)及び(4)中、R’’’はそれぞれ独立して水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を、nは1〜10の整数を表す。)
R’’’はそれぞれ独立して水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」は前述のものと同義である。
R’’’が炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
R’’’としては、水素原子(−H)、ヒドロキシル基(−OH)、メチル基(−Me)、エチル基(−Et)、n−プロピル基(−Pr)、i−プロピル基(−Pr)、n−ブチル基(−Bu)、t−ブチル基(−Bu)、n−ヘキシル基(−Hex)、シクロへキシル基(−Hex)、フェニル基(−Ph)、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等が挙げられるが、水素原子、ヒドロキシル基、メチル基が特に好ましい。
nは1〜10の整数であるが、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
【0055】
式(3)で表されるシロキサン化合物として、下記式で表されるトリシロキサン化合物も挙げられる。
【化26】
【0056】
環化工程における式(3)で表されるシロキサン化合物から式(4)で表されるシロキサン化合物を生成する具体的な操作手順は、特に限定されないが、式(3)で表されるシロキサン化合物を含む組成物にアミド化合物を添加することによって行うことが挙げられる。
【0057】
環化工程は、アミド化合物の存在下、式(3)で表されるシロキサン化合物から式(4)で表されるシロキサン化合物を生成する工程であるが、アミド化合物としては、下記式(i)又は(ii)で表される化合物のほか、下記式(iii)〜(v)で表される繰り返し構造の少なくとも1種を有する高分子化合物が挙げられる。
【化27】
(式(i)及び(ii)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化28】
(式(iii)〜(v)中、R’及びR’’はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。但し、R’及び/又はR’’として、2以上の炭化水素基を分子内に有する場合、炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、式(i)で表される化合物としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
式(ii)で表される化合物としては、尿素、テトラメチル尿素(MeUrea)、テトラフェニル尿素等が挙げられる。
式(iii)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ポリビニルピペリドン、ポリビニルカプロラクタム等が挙げられる。
式(iv)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−エチルメタクリルアミド、ポリ−N−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメチルアクリルアミド、ポリ−N−メチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロペンチニルアクリルアミド等が挙げられる。
式(v)で表される繰り返し構造のみからなる高分子化合物としては、ポリ−2−メチルオキサゾリン、ポリ−2−エチルオキサゾリン、ポリ−2−プロピルオキサゾリン等が挙げられる。
アミド化合物としては、尿素、テトラメチル尿素、ポリビニルピロリドン、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが特に好ましい。なお、組成物に含まれるアミド化合物は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであっても良い。
【0058】
アミド化合物の使用量は、シロキサン化合物に対してアミド結合の総物質量換算で、通常0倍よりも大きく、好ましくは1倍量以上であり、通常900倍以下、好ましくは450倍以下、より好ましくは150倍以下、さらに好ましくは10倍以下、特に好ましくは6倍以下である。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0060】
<合成例1:ヘキサベンジルオキシジシロキサン(Si(OBn)Oの合成>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコにベンジルアルコール(23.8g、220.1mmol)、トリエチルアミン(22.3g、220.4mmol)、ジメチルアミノピリジン(42.8mg、0.35mmol)を入れ、ジクロロメタン300mlで希釈した。これを0℃まで冷却し、ヘキサクロロジシロキサン(9.9g、34.8mmol)を2時間かけて滴下した。滴下後室温で20時間撹拌し、ジクロロメタンを留去し、ヘキサン溶液として分液することで、前駆体であるヘキサベンジルオキシジシロキサンを収率57%(14.1g)で得た。
【0061】
<合成例2:テトラベンジルオキシシラン(Si(OBn))の合成>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコにベンジルアルコール(64.3g、594.6mmol)、トリエチルアミン(60.2g、594.9mmol)、ジメチルアミノピリジン(177.2mg、1.45mmol)を入れジクロロメタン500mLで希釈した。これを0℃まで冷却し、テトラクロロシラン(24.6g、145mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後室温で12時間撹拌し、ジクロロメタンを留去し、ヘキサン溶液として分液することで、前駆体であるテトラベンジルオキシシランを収率87%(57.7g)で得た。
【0062】
<合成例3:オクタベンジルオキシトリシロキサン((BnO)SiOSi(OBn)OSi(OBn))の合成>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコにベンジルアルコール(22.0g、203.4mmol)、トリエチルアミン(20.6g、203.6mmol)、ジメチルアミノピリジン(29.9mg、0.24mmol)を入れ、ジクロロメタン300 mlで希釈した。これを0℃まで冷却し、オクタクロロトリシロキサン(9.8g、24.5mmol)を2時間かけて滴下した。滴下後室温で24時間撹拌し、ジクロロメタンを留去し、ヘキサン溶液として分液することで、前駆体であるオクタベンジルオキシトリシロキサンを収率26%(6.3g)で得た。
【0063】
<実施例1>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で2.0mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)42.6mg、及び合成例1で得られたヘキサベンジルオキシジシロキサン(107.2mg、0.150mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1.6mlを加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。
H、13C、29Si−NMR(DMAc/THF−d:−80.5ppm)で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が生成していることが確認された。生成物等の収率の結果等を表1に示す。
【0064】
<実施例2>
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表1に示す。
【0065】
<実施例3>
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)をテトラメチル尿素(MeUrea)に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表1に示す。
【0066】
<実施例4>
ジメチルアセトアミド(DMAc)をN−メチルアセトアミド(MMAc)1.44mlとN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)0.16mlの混合溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって反応を行った。H、13C、29Si−NMR(MMAc+DMAc/THF−d:−80.8ppm)で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が生成していることが確認された。生成物等の収率の結果等を表1に示す。
【0067】
【化29】
【0068】
【表1】
【0069】
<実施例5>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)74.6mg、及び合成例1で得られたヘキサベンジルオキシジシロキサン(107.2mg、0.150mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.035倍のアニリン(NH2Ph、2.9mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。
H(DMAc/THF−d:5.8ppm)、13C、29Si−NMR(DMAc/THF−d:−80.5ppm)で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が生成していることが確認された。生成物等の収率の結果等を表2に示す。
【0070】
<実施例6>
アニリン(NHPh)をベンジルオキシ基換算で0.052倍の物質量に変更した以外は、実施例5と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表2に示す。
【0071】
<実施例7>
アニリン(NHPh)をベンジルオキシ基換算で0.070倍の物質量に変更した以外は、実施例5と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表2に示す。
【0072】
【化30】
【0073】
【表2】
【0074】
<実施例8>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)74.5mg、及び合成例1で得られたヘキサベンジルオキシジシロキサン(107.2mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.026倍のアニリン(NHPh、2.2mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。
H、13C、29Si−NMR(MeUrea/THF−d:−80.0ppm)で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が生成していることが確認された。生成物等の収率の結果等を表3に示す。
【0075】
<実施例9>
アニリン(NHPh)をベンジルオキシ基換算で0.035倍の物質量に変更した以外は、実施例8と同様の方法によって反応を行った。H(MeUrea/THF−d:5.4ppm)、13C、29Si−NMR(MeUrea/THF−d:−79.9ppm)で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が生成していることが確認された。生成物等の収率の結果等を表3に示す。
【0076】
<実施例10>
アニリン(NHPh)をベンジルオキシ基換算で0.043倍の物質量に変更した以外は、実施例8と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表3に示す。
【0077】
【化31】
【0078】
【表3】
【0079】
<実施例11>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)99.4mg、及び合成例3で得られたオクタベンジルオキシトリシロキサン(146.0mg、0.150mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.026倍のアニリン(NHPh、2.9mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。
H(DMAc/THF−d:6.6ppm)、13C、29Si−NMR(DMAc/THF−d:−83.0ppm)で分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が生成していることが確認された。生成物等の収率の結果等を表4に示す。
【0080】
<実施例12>
アニリン(NHPh)をベンジルオキシ基換算で0.035倍の物質量に変更した以外は、実施例11と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表4に示す。
【0081】
<実施例13>
アニリン(NHPh)をベンジルオキシ基換算で0.053倍の物質量に変更した以外は、実施例11と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表4に示す。
【0082】
<実施例14>
アニリン(NHPh)をベンジルオキシ基換算で0.070倍の物質量に変更した以外は、実施例11と同様の方法によって反応を行った。生成物等の収率の結果等を表4に示す。
【0083】
【化32】
【0084】
【表4】
【0085】
<実施例15>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)99.4mg、及び合成例3で得られたオクタベンジルオキシトリシロキサン(146.0mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.018倍のアニリン(NHPh、2.0mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。
H、13C、29Si−NMR(MeUrea/THF−d:−82.7ppm)で分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が生成していることが確認された。生成物等の収率の結果等を表5に示す。
【0086】
【化33】
【0087】
【表5】
【0088】
<実施例16>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)74.5mg、及び合成例1で得られたヘキサベンジルオキシジシロキサン(107.2mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.035倍のアニリン(NHPh、2.9mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過し得た。この中にヘキサベンジルオキシジシロキサン換算で物質量が3.0倍のテトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl、125.1mg)とテトラメチル尿素(MeUrea)14.4mlを加え、ジシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物を、液体窒素(−196℃)を用いて凍結させて、減圧下でテトラメチル尿素等を昇華させる真空凍結乾燥を行った(凍結乾燥工程(1)減圧度1〜3Pa,棚温度−40℃,保持時間12時間、凍結乾燥工程(2)減圧度1〜3Pa,棚温度−40℃から−15℃まで12時間かけて昇温、凍結乾燥工程(3)減圧度1〜3Pa,−15℃,保持時間18時間)。乾燥終了後、ガラスバイアル中を不活性ガスで置換し、ゴム栓で封栓することで、粉末状のジシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物161.8mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d8:6.1ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−80.1ppm)及びIRで分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表6に、組成物のIR分析の結果を図1に示す。
【0089】
【化34】
【0090】
【表6】
【0091】
<実施例17>
テトラブチルアンモニウムクロリドの添加量をヘキサベンジルオキシジシロキサン換算で物質量が4.0倍に変更した以外は、実施例16と同様の方法によって粉末状のジシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物211.5mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d8:6.1ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d8:−80.0ppm)及びIRで分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表7に、組成物のIR分析の結果を図2に示す。
【0092】
【表7】
【0093】
<実施例18>
テトラブチルアンモニウムクロリドをポリビニルピロリドンに変更し、ポリビニルピロリドンの添加量をヘキサベンジルオキシジシロキサン換算で物質量が3.0倍に変更した以外は、実施例16と同様の方法によって粉末状のジシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物186.2mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.0ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−80.6ppm)及びIRで分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成物のIR分析の結果を図3に示す。
【0094】
<実施例19>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)74.5mg、及び合成例1で得られたヘキサベンジルオキシジシロキサン(107.2mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.035倍のアニリン(NHPh、2.9mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中に構造安定化剤としてヘキサベンジルオキシジシロキサン換算で物質量が2.0倍のテトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl、83.4mg)とテトラメチル尿素(MeUrea)0.8mlを加え、ジシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物にジエチルエーテル(EtO)3.7gを添加して混合し、−40℃で90時間静置することで結晶を析出させた。この結晶をジエチルエーテルで洗浄し、ジシロキサンヘキサオールを含んだ組成物(結晶)90.0mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d8:6.1ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−80.1ppm)、IR及びX線結晶構造解析で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表8に、組成物のIR分析の結果を図4に示す。
【0095】
【表8】
【0096】
<実施例20>
−40℃で90時間静置を室温で90時間静置に変更した以外は、実施例19と同様の方法によって結晶を析出させた。この結晶をジエチルエーテルで洗浄し、ジシロキサンヘキサオールを含んだ組成物(結晶)51.7mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.1ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−80.1ppm)、IR及びX線結晶構造解析で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表9に、組成物のIR分析の結果を図5に示す。
【0097】
【表9】
【0098】
<実施例21>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)74.5mg、及び合成例1で得られたヘキサベンジルオキシジシロキサン(107.2mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.035倍のアニリン(NHPh、2.9mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中に構造安定化剤としてヘキサベンジルオキシジシロキサン換算で物質量が2.0倍のテトラブチルアンモニウムブロミド(BuNBr、96.7mg)を加え、ジシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物にジエチルエーテル(EtO)2.7gを添加して混合し、−40℃で570時間静置することで結晶を析出させた。この結晶をジエチルエーテルで洗浄し、ジシロキサンヘキサオールを含んだ組成物(結晶)82.6mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.1ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−80.5ppm)、IR及びX線結晶構造解析で分析したところ、ジシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表10に、組成物のIR分析の結果を図6に示す。
【0099】
【表10】
【0100】
<実施例22>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で2.0mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)28.6mg、及び合成例2で得られたテトラベンジルオキシシラン(69.0mg、0.151mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlを加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中に構造安定化剤としてテトラベンジルオキシシラン換算で物質量が1.0倍のテトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl、41.7mg)を加え、環状テトラシロキサンオクタオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物にジエチルエーテル(EtO)2.9gを添加して混合し、室温で120時間静置することで結晶を析出させた。この結晶をジエチルエーテルで洗浄し、環状テトラシロキサンオクタオールを含んだ組成物(結晶)10.5mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d8:6.4ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−88.9ppm)、IR及びX線結晶構造解析で分析したところ、環状テトラシロキサンオクタオール等が含まれていることが確認された。この組成を表11に、組成物のIR分析の結果を図7に示す。
【0101】
【化35】
【0102】
【表11】
【0103】
<実施例23>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で1.3mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)28.8mg、及び合成例2で得られたテトラベンジルオキシシラン(103.1mg、0.226mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlを加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中に構造安定化剤としてテトラベンジルオキシシラン換算で物質量が1.0倍のテトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl、63.0mg)を加え、環状テトラシロキサンオクタオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物にジエチルエーテル(EtO)2.5gを添加して混合し、−40℃で90時間静置することで結晶を析出させた。この結晶をジエチルエーテルで洗浄し、環状テトラシロキサンオクタオールを含んだ組成物(結晶)4.9mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.4ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−88.9ppm)、IRで分析したところ、環状テトラシロキサンオクタオール等が含まれていることが確認された。この組成を表12に、組成物のIR分析の結果を図8に示す。
【0104】
【表12】
【0105】
<実施例24>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で2.0mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)43.0mg、及び合成例1で得られたヘキサベンジルオキシジシロキサン(107.2mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlを加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中に構造安定化剤としてヘキサベンジルオキシジシロキサン換算で物質量が2.0倍のテトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl、83.4mg)を加え、環状テトラシロキサンオクタオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物にジエチルエーテル(EtO)2.3gを添加して混合し、室温で90時間静置することで結晶を析出させた。この結晶をジエチルエーテルで洗浄し、環状テトラシロキサンオクタオールを含んだ組成物(結晶)51.9mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.4ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−88.9ppm)、IR及びX線結晶構造解析で分析したところ、環状テトラシロキサンオクタオール等が含まれていることが確認された。この組成を表13に、組成物のIR分析の結果を図9に示す。
【0106】
【表13】
【0107】
<実施例25>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)99.4mg、及び合成例3で得られたオクタベンジルオキシトリシロキサン(146.0mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.018倍のアニリン(NHPh、2.0mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中にオクタベンジルオキシトリシロキサン換算で物質量が6.0倍のテトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl、250.2mg)とテトラメチル尿素(MeUrea)23.4mlを加え、環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物を、液体窒素(−196℃)を用いて凍結させて、減圧下でテトラメチル尿素等を昇華させる真空凍結乾燥を行った(凍結乾燥工程(1)減圧度1〜3Pa,棚温度−40℃,保持時間24時間、凍結乾燥工程(2)減圧度1〜3Pa,棚温度−40℃から−15℃まで72時間かけて昇温、凍結乾燥工程(3)減圧度1〜3Pa,−15℃,保持時間12時間)。乾燥終了後、ガラスバイアル中を不活性ガスで置換し、ゴム栓で封栓することで、粉末状の環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物344.2mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.7ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−81.2ppm)及びIRで分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表14に、組成物のIR分析の結果を図10に示す。
【0108】
【化36】
【0109】
【表14】
【0110】
<実施例26>
テトラブチルアンモニウムクロリドをテトラヘキシルアンモニウムクロリドに変更し、テトラヘキシルアンモニウムクロリドの添加量をオクタベンジルオキシトリシロキサン換算で物質量が2.0倍に変更した以外は、実施例25と同様の方法によって粉末状の環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物189.5mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.6ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−81.4ppm)及びIRで分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表15に、組成物のIR分析の結果を図11に示す。
【0111】
【表15】
【0112】
<実施例27>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)99.4mg、及び合成例3で得られたオクタベンジルオキシトリシロキサン(146.0mg、0.150mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.035倍のアニリン(NHPh、3.9mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中に構造安定化剤としてオクタベンジルオキシトリシロキサン換算で物質量が1.0倍のテトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl、41.7mg)を加え、環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物にジエチルエーテル(EtO)3.3gを添加して混合し、−40℃で72時間静置することで液状物質を析出させた。この液状物質をジエチルエーテルで洗浄し、環状トリシロキサンヘキサオールを含んだ組成物(液状)40.1mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.7ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−81.9ppm)、IRで分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表16に、組成物のIR分析の結果を図12に示す。
【0113】
【表16】
【0114】
<実施例28>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)99.4mg、及び合成例3で得られたオクタベンジルオキシトリシロキサン(146.0mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.018倍のアニリン(NHPh、2.0mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中にテトラメチル尿素(MeUrea)14.4mlを加え、環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物を、液体窒素(−196℃)を用いて凍結させて、減圧下でテトラメチル尿素等を昇華させる真空凍結乾燥を行った(凍結乾燥工程(1)減圧度1〜3Pa,棚温度−40℃,保持時間168時間)。乾燥終了後、ガラスバイアル中を不活性ガスで置換し、ゴム栓で封栓することで、固体状(微結晶含有)の環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物75.0mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.8ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−82.9ppm)及びIR及びX線結晶構造解析で分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表17に、組成物のIR分析の結果を図13に示す。
【0115】
【表17】
【0116】
<実施例29>
磁気攪拌子を備えた二口フラスコに、ベンジルオキシ基換算で3.5mol%のエヌ・イーケムキャット株式会社製ASCA−2(Pd4.5質量%、Pt0.5質量%)99.4mg、及び合成例3で得られたオクタベンジルオキシトリシロキサン(146.0mg、0.150mmol)を入れ、テトラメチル尿素(MeUrea)1.6mlとベンジルオキシ基換算で物質量が0.018倍のアニリン(NHPh、2.0mg)を加えた。水素ガスで置換し、室温で2.0時間反応させた。その後、触媒をフィルターでろ過した。この中にオクタベンジルオキシトリシロキサン換算で物質量が2.0倍の尿素(Urea、18.0mg)とテトラメチル尿素(MeUrea)14.4mlを加え、環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物(溶液)を得た。
この組成物を、液体窒素(−196℃)を用いて凍結させて、減圧下でテトラメチル尿素等を昇華させる真空凍結乾燥を行った(凍結乾燥工程(1)減圧度1〜3Pa,棚温度−40℃,保持時間168時間)。乾燥終了後、ガラスバイアル中を不活性ガスで置換し、ゴム栓で封栓することで、固体状の環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物107.6mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.9ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−82.9ppm)及びIRで分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表18に、組成物のIR分析の結果を図14に示す。
【0117】
【表18】
【0118】
<実施例30>
尿素をポリビニルピロリドン(ナカライテスク社製ポリビニルピロリドン25)に変更し、ポリビニルピロリドンの添加量をオクタベンジルオキシトリシロキサン換算で物質量が3.0倍に変更した以外は、実施例29と同様の方法によって固体状の環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物123.9mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.8ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−82.9ppm)及びIRで分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表19に、組成物のIR分析の結果を図15に示す。
【0119】
【表19】
【0120】
<実施例31>
尿素をポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(シグマアルドリッチ社製ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、Mn:20000〜40000)に変更し、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドの添加量をオクタベンジルオキシトリシロキサン換算で物質量が3.0倍に変更した以外は、実施例29と同様の方法によって固体状の環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物118.5mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.8ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−82.9ppm)及びIRで分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成を表20に、組成物のIR分析の結果を図16に示す。
【0121】
【表20】
【0122】
<実施例32>
尿素をポリ−2−エチルオキサゾリン(シグマアルドリッチ社製ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、M〜50000)に変更し、ポリ−2−エチルオキサゾリンの添加量をオクタベンジルオキシトリシロキサン換算で物質量が3.0倍に変更した以外は、実施例29と同様の方法によって固体(ペースト状)の環状トリシロキサンヘキサオール等を含んだ組成物129.8mgを得た。
この組成物をH−NMR(DMF−d/THF−d:6.8ppm)、13C、29Si−NMR(DMF−d/THF−d:−82.9ppm)及びIRで分析したところ、環状トリシロキサンヘキサオール等が含まれていることが確認された。この組成物のIR分析の結果を図17に示す。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の組成物は、自動車、建築、エレクトロニクス等の幅広い分野で使用されるシリコーン樹脂の原料等として利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17