【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0047】
なお、本実施例において、アクチュエータ素子変位評価は、以下のようにして行った。
【0048】
アクチュエータ素子変位評価法:
図1(A)に示す様にレーザ変位計を用い、素子を1mmx10mmもしくは2mmx10mmの短冊状に切り取り、電圧を加えた時の固定端から5mmもしくは4mmの位置の変位を測定した。
【0049】
実施例および比較例で用いたイオン液体(IL)は、エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIBF
4)である。
【0050】
実施例および比較例で用いたカーボンナノチューブは、スーパーグロース・カーボンナノチューブ(SG、国立研究開発法人産業技術総合研究所製)である。
【0051】
実施例および比較例で用いたポリマーは、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[PVDF(HFP);商品名kynar2801](V)である。
【0052】
【化2】
【0053】
実施例および比較例で用いた溶媒は、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、プロピレンカーボネート(PC)、4−メチルペンタン−2−オン(MP)である。
【0054】
実施例で用いたポリアニリン(PANI)は、アルドリッチ社製である。
【0055】
実施例で用いたカーボンナノホーン(CNH)は、商品名カーボンナノホーン(日本電気株式会社製)である。
【0056】
アクチュエータ性能指数は、変形量と発生力の積により求めた。
【0057】
アクチュエータ素子が変形する際に生じる発生力は、ロードセルにより直接測定した(
図1(B))。
調製例1
[導電性薄膜層形成用分散液の調製]
DMAc溶媒中に、カーボンナノチューブ(SG−CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、イオン液体(IL)、ポリマー[粉末状PVDF(HFP)]を分散させて、マグネチックスターラーにて撹拌、その後、超音波による分散を行うことにより導電性薄膜層形成用分散液を調製する。
【0058】
具体的な量については、各実施例、各比較例に個別に示す。
【0059】
[電解質膜形成用溶液の調製]
イオン液体(IL)とポリマー[粉末状PVDF(HFP)]を重量比で1:1の比率で混合し、上記導電性薄膜層形成用分散液の調製と同様にして、70℃で撹拌して溶媒に溶解させることにより、電解質膜形成用溶液を調製する。ここで溶媒は、4−メチルペンタン−2−オンとプロピレンカーボネートとの混合溶媒を用いた。
【0060】
具体的な量については、各実施例、各比較例に個別に示す。
【0061】
[アクチュエータ素子の製造]
導電性薄膜、電解質膜は、それぞれ上記のように調製した分散液および溶液を、別々に25mmx25mmのキャスト枠中にキャストし、室温で一昼夜溶媒を乾燥させ、次いで、真空乾燥を行うことにより得る。導電性薄膜2枚の間に、電解質膜を1枚挟んで熱圧着することにより3層構造のアクチュエータ素子を得る。アクチュエータ素子の厚みは、180μm〜550μm程度である。
【0062】
[アクチュエータ素子の評価方法]
製造したアクチュエータ素子の変位応答性の評価は、
図1(A)に示した装置を用いて行った。アクチュエータ素子を、幅1mm×長さ10mm(
図5、7、表1の場合)、もしくは、幅2mm×長さ10mm(
図6の場合)の短冊状に切断し、端3mmの部分を電極付きホルダーでつかんで、空気中で電圧を加え、レーザ変位計を用いて、固定端から5mm(
図5、7、表1の場合)もしくは4mm(
図6の場合)の位置での変位を測定し、伸縮率(ε(%))は、アクチュエータの素子長(L(mm))、素子厚(W(mm))、変位(D(mm))から下記式により算出した:
【0063】
【数1】
【0064】
電圧の周波数を200Hz〜0.005Hzの範囲で変化させて調べた(
図5A〜5D)。また、長時間のアクチュエータ素子のDC耐久性については、+2.0Vの一定電圧(DC)を印加し続けることにより評価した(
図7、表1)。アクチュエータ素子が変形する際に生じる発生力はロードセルにより直接測定した(
図1B)。
【0065】
実施例1〜10及び比較例1〜2
実施例1
(SG-CNT/PANI/CNH)=(50/50/50)以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して、導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=50.4mg/50.0mg/50.5mg/80.3mg/240.2mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0066】
実施例2
(SG-CNT/PANI/CNH)=(50/50/25)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=50.5mg/50.3mg/25.1mg/80.1mg/240.5mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0067】
実施例3
(SG-CNT/PANI/CNH)=(50/25/50)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=50.2mg/25.0mg/50.2mg/80.1mg/240.3mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0068】
実施例4
(SG-CNT/PANI/CNH)=(50/25/25)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=50.0mg/25.0mg/25.1mg/80.5mg/240.5mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0069】
実施例5
(SG-CNT/PANI/CNH)=(25/50/50)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=25.2mg/50.4mg/50.0mg/80.3mg/240.3mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0070】
実施例6
(SG-CNT/PANI/CNH)=(25/50/25)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=25.1mg/50.0mg/25.0mg/80.5mg/240.4mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0071】
実施例7
(SG-CNT/PANI/CNH)=(25/25/50)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=25.1mg/25.2mg/50.5mg/80.2mg/240.1mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0072】
実施例8
(SG-CNT/PANI/CNH)=(25/25/25)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=25.4mg/25.1mg/25.2mg/80.4mg/240.0mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0073】
実施例9
(SG-CNT/PANI/CNH)=(12.5/50/50)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=12.7mg/50.4mg/50.2mg/80.4mg/240.1mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0074】
実施例10
(SG-CNT/PANI/CNH)=(6.25/50/50)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=6.3mg/50.1mg/50.1mg/80.1mg/240.1mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0075】
比較例1
(SG-CNT/PANI/CNH)=(50/50/0)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=50.4mg/50.0mg/0.0mg/80.0mg/240.4mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0076】
比較例2
(SG-CNT/PANI/CNH)=(50/0/50)
以下の比率で、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン(CNH)、ポリマー(kynar2801)及びイオン液体(EMIBF
4)を使用して導電性薄膜を得、上記の[アクチュエータ素子の製造]の記載に従い、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造した。
電極:SG-CNT/PANI/CNH/kynar2801/EMIBF
4=50.4mg/0.0mg/50.0mg/80.3mg/240.2mg
電解質:kynar2801/EMIBF
4=200.3mg/200.3mg
【0077】
以下の表1に記載の比率で、カーボンナノチューブ(SG−CNT)、ポリアニリン(PANI)、カーボンナノホーン(CNH)、イオン液体(EMIBF
4)、ポリマー(PVDF(HFP);kynar2801)を使用して、導電性薄膜層(電極)−電解質膜−導電性薄膜層(電極)からなる、3層構造のフィルム状のアクチュエータ素子を製造し、DC(直流)電圧を長時間アクチュエータ素子に印加し続けた際の変位(伸縮率)の変化を
図7に示した。また、
図7から、各アクチュエータ素子の1800秒後の伸縮率と最大伸縮率の比により、DC電圧に対する耐久性(最大変位からの変形のずれ)を評価した(表1)。表1でA値が大きいもの程、耐久性は良い。
【0078】
A値=(1800秒後の伸縮率/最大伸縮率)×100
【0079】
【表1】
【0080】
図5及び
図6から、以下のことが明らかになった。
(I)CNTが50(50mg)の場合、PANIおよびCNHの同時添加により、より周波数の遅い領域で変形が改善すること(
図5B(50/X/X)の丸部分より)、
(II)CNTが25(25mg)の場合、PANI量よりCNHの添加量が多い方が変形および発生力とも改善されること(
図5A,Cおよび
図6の実施例6と7の比較より)、
(III)PANIおよびCNHの添加量を固定してCNT量を変化させると((X/50/50)の場合)CNTを少なくすることにより、変形および発生力の両方を改善できることが明らかになった(
図5D(X/50/50)の丸部分および
図6の実施例5,9,10の比較より)。
【0081】
なお、実施例8(25/25/25)のアクチュエータは、比較例1,2に対して0.1Hzより速い周波数域では伸縮率が良い結果となっている。また、
図7および表1より、以下のことが明らかになった。
(i)変位の戻り現象(最大変位から時間の経過とともに変位が減少する現象)は PANIに比べ、CNHの添加量を多くした方が改善できること、
(ii)PANIおよびCNHの添加量を固定してCNT量を変化させると((X/50/50)の場合)CNT量が多いほど変位の戻り現象が改善できること
が明らかになり、CNTにPANIおよびCNHを任意の量で添加することによりアクチュエータ素子のDC電圧に対する耐久性が改善可能となった。
【0082】
試験例1
実施例1〜10および比較例1〜2で得られたアクチュエータ素子の電圧に対する応答性の評価を、上述したアクチュエータ素子の評価方法により行い、伸縮率、アクチュエータ性能指数、DC電圧耐久性を調べた。得られた結果を、
図5〜
図7および表1に示す。