特許第6562382号(P6562382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562382
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】アノード矯正装置
(51)【国際特許分類】
   C25C 1/00 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   C25C1/00 303A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-800(P2016-800)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-122254(P2017-122254A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】栗本 広大
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−089891(JP,A)
【文献】 特開2000−096280(JP,A)
【文献】 特開昭54−107802(JP,A)
【文献】 特開昭54−052680(JP,A)
【文献】 実開昭63−034172(JP,U)
【文献】 特開平10−130877(JP,A)
【文献】 実開昭54−080504(JP,U)
【文献】 特開2012−041612(JP,A)
【文献】 特表2015−500923(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0058567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解製錬に用いられるアノードを矯正する装置であって、
アノードの耳部裏面と接触する基準ブロックと、
該基準ブロックに対して接近離間可能に設けられる加圧ブロックと、を備えており、
前記基準ブロックは、
前記加圧ブロックと対向する接触面を有するブロック本体と、
該ブロック本体に着脱可能に設けられた厚さ調整部材と、を備えており、
該厚さ調整部材は、
前記ブロック本体の接触面に配置される接触部材と、
該接触部材を前記ブロック本体に固定する固定部と、を備えている
ことを特徴とするアノード矯正装置。
【請求項2】
前記固定部は、
前記ブロック本体における接触面と交差する側面に形成された凹部に挿入される挿入部材と、
該挿入部材と前記接触部材とを連結する連結部材と、を備えている
ことを特徴とする請求項1記載のアノード矯正装置。
【請求項3】
前記凹部が、
前記基準ブロックの上面に設けられている
ことを特徴とする請求項2記載のアノード矯正装置。
【請求項4】
前記固定部の連結部材は、
前記挿入部材を前記凹部に挿入すると、その内面が該凹部が形成された側面と面接触するように形成されている
ことを特徴とする請求項2または3記載のアノード矯正装置。
【請求項5】
前記凹部が、
前記ブロック本体の接触面と平行に形成された溝であり、
前記厚さ調整部材は、
前記接触部材と、前記固定部の挿入部材と、前記固定部の連結部材と、によって側面視略コの字状に形成されている
ことを特徴とする請求項2、3または4記載のアノード矯正装置。
【請求項6】
矯正前のアノードにおける耳部の厚さを測定する厚さ測定部と、
前記加圧ブロックの移動量を調整する移動量調整部と、を備えており、
該移動量調整部は、
前記基準ブロックの厚さ情報と、前記厚さ測定部が測定した耳部の厚さ情報と、に基づいて、前記加圧ブロックの移動量を調整する機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のアノード矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度の金属を製造する方法として、電解製錬がある。この電解製錬では、電解液を満たした電解槽中にアノード(純度の低い目的金属からなる電極、または、電解液に溶出しない電極)とカソードを交互に浸漬して通電することにより、カソードの種板表面上に高純度の金属を電着させて製品を製造している。かかる電解製錬の通電工程では大量の電力を消費することから、電解製錬の生産効率を向上するために、消費電力を低減することが求められている。
【0003】
電解製錬における消費電力を低減するために、アノードとカソードは、両者間の間隔が電着に適した距離となるように電解槽中に配設されている。しかし、アノード・カソード間の距離が適切な距離から変化すれば、消費電力はその距離の変化の影響を受けて変化する。例えば、アノードとカソードの距離が大きくなりすぎた場合には、電解液の電気抵抗が大きくなり、電着に大きな電力が必要になる。一方、アノードとカソードの距離が小さくなりすぎた場合には、消費電力は小さくできるものの、カソードの種板に電着が進むと、電着した金属の一部がアノードと接触してしまう場合がある。かかる接触が生じれば、電流がアノードからカソードに直接流れてしまうので、電力が空費される。したがって、消費電力を低減しで電力の空費等が生じることを防ぐ上では、電解槽中において、アノードとカソードの距離を適切に維持する必要がある。
【0004】
アノードとカソードはともに、電解槽の上部に設けられている電極であるブスバーに保持され、電解槽中に吊り下げられている。このため、電解槽中におけるアノードとカソードの距離には、両電極の垂直性が影響を与える。つまり、両電極の垂直方向の歪が影響を与えるので、両電極の歪を小さくすることは重要である。
【0005】
ところで、アノードAは、図4に示すような形状となるように鋳造によって製造される。つまり、本体部Bと本体部Bの上部両側方に設けられる一対の耳部C,Cが一体で鋳造される。アノードAの一対の耳部C,Cは、アノードAを電解槽に浸漬した際にアノードAを吊り下げる際の支持部となるととともにブスバーとの接点としても機能する。このため、ブスバーとの接触性を良好に保ちつつ、安定した状態でアノードAを吊り下げておくために、一対の耳部C,Cの下部は平坦となるように切削が行われる。
【0006】
しかし、アノードAを鋳造する鋳型はアノードの剥ぎ取りを容易にするために、鋳型の内底面に若干の勾配や段差が付けられている。このため、アノードAの一対の耳部C,Cの位置は、アノードAの厚さ方向において、裏面側(鋳型の底と接していた面側)から表面側(鋳型内における湯面側)に若干偏った位置に形成される。具体的には、図5に示すように、アノードAの一対の耳部C,Cは、アノードAの本体部Bの重心Gを通る中心線X、X’よりも表面側にずれる。このため、一対の耳部C,Cの下部を平坦に切削しても、アノードAを電解槽に装入した際には、アノードAは点Pを支点として揺動し、耳部がブスバーと接触する点P,Pと重心Gとを含む面が鉛直方向に向くように姿勢を変化させる(図5参照)。言い換えれば、つまり、アノードAは、その表面が鉛直方向に対して傾斜した状態となるように姿勢を変化させる。すると、アノードAを電解槽に浸漬した際には、アノードAの本体部Bの下端部は、上端部に比べて、表面側(図5では左面側)はカソードまでの距離が短く、裏面側(図5では右面側)は長くなってしまう。つまり、電解槽の上部ではカソードまでの距離が適切になるようにアノードAを電解槽に浸漬しても、本体部Bの下部(つまり電解槽内)ではアノードAとカソードの距離がズレてしまう。すると、上述したようなアノードAとカソードの接触が生じる可能性があり、電解製錬の生産効率が低下してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、アノードAの一対の耳部C,Cのズレ、つまり、アノードAの本体部Bの重心Gを通る中心線X、X’に対するズレを矯正するために、アノードAをプレス加工することが行われている(例えば、特許文献1〜3等)。
【0008】
具体的には、プレス加工によって一対の耳部C,Cを裏面側に向かって押し曲げて、耳部がブスバーと接触する点PがアノードAの本体部Bの重心Gを通る中心線X、X’に重なるように矯正される。このように矯正すれば、アノードAを電解槽に装入した際には、一対の耳部C,Cがブスバーと接触する点P,Pと重心Gとを含む面を鉛直方向に近い向きにできるから、アノードAを電解槽に浸漬した際に、アノードAが傾斜することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3184496号公報
【特許文献2】特許第4282175号公報
【特許文献3】特許第5559637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、上記のようにアノードAの一対の耳部C,Cをプレス加工して一対の耳部C,Cの位置を適切に調整する場合、一対の耳部C,Cの厚さが変化すれば、一対の耳部C,Cをプレスする量を変化させなければならない。このため、アノードAの厚み(つまり一対の耳部C,Cの厚み)に合わせて、プレス加工する際における一対の耳部C,Cの変形量を調整しなければならない。
【0011】
従来、一対の耳部C,Cの変形量は裏面側に位置する受金型の厚みを変更して調整していたが、受金型の厚みを変更するには、毎度、受金型を取り外し取付けする必要がある。この受金型の変更には、25〜30分程度の作業が必要であり、受金型を変更している間は設備を停止しなければならない。設備の稼働日では、25〜30分程度であっても設備を停止すれば他の工程への影響が大きいので、受金型の変更は設備を稼働しない日を選んで行われている。しかし、一対の耳部C,Cを含めたアノードAの厚みは、アノードAを製造する日によって5mm以下程度のバラつきが存在するので、設備を稼働しない日にだけ受金型の変更をしたのでは、一対の耳部C,Cの変形量を適切に調整することは難しい。
【0012】
一方、上述した特許文献1のように、受金型を移動可能に設ければ、設備を稼働させながらでも、一対の耳部C,Cの変形量を調整することは可能である。しかし、一対の耳部C,Cをプレスする際には非常に大きな加圧力が発生するので、受金型を移動させる移動機構は、受金型に大きな加圧力が加わっても受金型を所定の位置に保持しておく機能が要求される。このため、受金型を移動させる移動機構が複雑になったり大型になったりするので、設備も大型化してしまう。また、既存の設備では、アノードAの搬送経路を確保する必要から、アノードAの一対の耳部C,Cをプレス加工する装置の周囲には余剰スペースが少なく、実質的に、受金型を移動させる移動機構を設置することは困難である。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、設備を大型化複雑化することなく、アノードの耳部の矯正が簡単かつ迅速に実施できるアノード矯正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明のアノード矯正装置は、電解製錬に用いられるアノードを矯正する装置であって、アノードの耳部裏面と接触する基準ブロックと、該基準ブロックに対して接近離間可能に設けられる加圧ブロックと、を備えており、前記基準ブロックは、前記加圧ブロックと対向する接触面を有するブロック本体と、該ブロック本体に着脱可能に設けられた厚さ調整部材と、を備えており、該厚さ調整部材は、前記ブロック本体の接触面に配置される接触部材と、該接触部材を前記ブロック本体に固定する固定部と、を備えていることを特徴とする。
第2発明のアノード矯正装置は、第1発明において、前記固定部は、前記ブロック本体における接触面と交差する側面に形成された凹部に挿入される挿入部材と、該挿入部材と前記接触部材とを連結する連結部材と、を備えていることを特徴とする。
第3発明のアノード矯正装置は、第2発明において、前記凹部が、前記基準ブロックの上面に設けられていることを特徴とする。
第4発明のアノード矯正装置は、第2または第3発明において、前記固定部の連結部材は、前記挿入部材を前記凹部に挿入すると、その内面が該凹部が形成された側面と面接触するように形成されていることを特徴とする。
第5発明のアノード矯正装置は、第2、第3または第4発明において、前記凹部が、前記ブロック本体の接触面と平行に形成された溝であり、前記厚さ調整部材は、前記接触部材と、前記固定部の挿入部材と、前記固定部の連結部材と、によって側面視略コの字状に形成されていることを特徴とする。
第6発明のアノード矯正装置は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、矯正前のアノードにおける耳部の厚さを測定する厚さ測定部と、前記加圧ブロックの移動量を調整する移動量調整部と、を備えており、該移動量調整部は、前記基準ブロックの厚さ情報と、前記厚さ測定部が測定した耳部の厚さ情報と、に基づいて、前記加圧ブロックの移動量を調整する機能を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、厚さ調整部材を変更するだけで耳部の変形量を調整できるから、耳部の変形量の調整を容易かつ迅速に実施することができる。したがって、設備の稼働日であっても、耳部の変形量の調整が可能になり、アノードの垂直性を向上することができる。
第2発明によれば、ブロック本体の凹部に固定部の挿入部材を挿入すれば、簡単に接触部材を接触面に対して位置決めすることができる。すると、厚さ調整部材の設置を簡単かつ迅速に行うことができるから、耳部の変形量の調整をより迅速かつ簡便に行うことができる。
第3発明によれば、凹部が基準ブロックの上面に設けられているので、厚さ調整部材の固定が容易になる。
第4発明によれば、接触面に対する接触部材の位置決めをより正確に行うことができるので、厚さ調整部材の設置を簡単かつ迅速に行うことができる。
第5発明によれば、凹部に固定部の挿入部材を挿入するだけで、接触部材を確実に接触面に対して所定の位置に配置することができるので、厚さ調整部材の設置を簡単かつ迅速に行うことができる。
第6発明によれば、アノードの矯正をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のアノード矯正装置1の要部拡大説明図であり、(A)は概略平面図であり、(B)は概略側面図である。
図2】本実施形態のアノード矯正装置1によってアノードAの耳部Cの矯正を実施している作業の概略説明図である。
図3】厚さ調整部材12を設けていない基準ブロック10によってアノードAの耳部Cの矯正を実施している作業の概略説明図である。
図4】本実施形態のアノード矯正装置1の概略説明図であって、(A)はアノードAを保持した状態の概略正面図であり、(B)アノードAを保持した状態の概略側面図である。
図5】アノードAの本体部Bの重心Gと、耳部Cがブスバー等と接触する位置Pの関係を示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のアノード矯正装置は、アノードの耳部をプレスによって変形させて矯正する装置であって、耳部の変形量の調整を迅速かつ簡単に行うことができるようにしたことに特徴を有している。
【0018】
(アノードA)
まず、本実施形態のアノード矯正装置1を説明する前に、アノードAの構成を簡単に説明する。
【0019】
アノードAは、電解精製に使用されるものであり、アノードAは本体部Bと一対の耳部C,Cを備えている(図4参照)。このアノードAは、一対の耳部C,Cを電解槽に吊り下げた状態で電解槽中の電解液に浸漬されて電解精製が行われる。
【0020】
かかるアノードAは、溶融した銅やビスマス等の金属を鋳型に流し込んで鋳造される。そして、アノードAを鋳造する鋳型は、アノードAの剥ぎ取りを容易にするために、内底面に若干の勾配が付けられている。このため、アノードAは、その一対の耳部C,Cの位置がアノードAの厚さ方向において、裏面側(鋳型の底と接していた面側)から表面側(鋳型内における湯面側)に若干偏った位置に形成される。具体的には、図5に示すように、アノードAの一対の耳部C,Cは、アノードAの本体部Bの重心Gを通る中心線X、X’よりも表面側にずれる。すると、アノードAを一対の耳部C,Cによって電解槽に吊り下げたときに、一対の耳部C,Cとブスバーとが接触する点P,Pと重心Gとを含む面が鉛直線上に位置するようにアノードAは揺動し、アノードAの本体部Bの表面および裏面が鉛直面よりも傾いてしまう。そこで、本実施形態のアノード矯正装置1は、一対の耳部C,Cを裏面側に向かって押し曲げて、一対の耳部C,Cを矯正する。つまり、電解槽に浸漬したときに、一対の耳部C,Cとブスバーとが接触する点Pがアノード本体の重心Gを通る中心線X、X’上に重なるように、本実施形態のアノード矯正装置1は一対の耳部C,Cを矯正する。
【0021】
(本実施形態のアノード矯正装置1)
上述したように、本実施形態のアノード矯正装置1は、一対の耳部C,Cを矯正するものである。
【0022】
なお、アノード矯正装置1は、一対の耳部C,Cだけでなく、本体部Bの曲り等を矯正する機能をも有している。本体部Bの矯正も耳部C,Cの矯正と同様に、裏面に接触する本体部基準ブロック21と、この本体部基準ブロック21に対して接近離間可能に設けられた本体部加圧ブロック25によって実施される。つまり、本体部基準ブロック21の接触面から本体部Bの裏面が所定の距離となるようにアノードAを配置した状態で、本体部加圧ブロック25が本体部Bを基準ブロックに向けて押圧する。すると、本体部加圧ブロック25と本体部基準ブロック21に挟まれて、本体部Bが矯正される。なお、本体部加圧ブロック25を本体部基準ブロック21に対して接近離間させる機構はとくに限定されない。例えば、油圧シリンダ等のシリンダ機構(図4の符号26)やスクリュー機構、ダイヤフラム機構等を採用することができる。
【0023】
また、本体部基準ブロック21および本体部加圧ブロック25の形状はとくに限定されない。アノードAに接触するそれぞれの接触面が平坦面であって、押圧後に本体部基準ブロック21および本体部加圧ブロック25がアノードAに食い込みにくい形状であればよい。例えば、立方体や直方体に形成してもよいし、接触面が平坦面に形成された円筒形であってもよい。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のアノード矯正装置1は、矯正するアノードAが配置されるアノード保持部2,2と、装置のフレーム3などに固定された基準ブロック10と、この基準ブロック10に対して接近離間可能に設けられた加圧ブロック15と、を備えている。
【0025】
アノード保持部2は、アノードAを吊り下げて保持するものである。具体的には、アノード保持部2,2は、その上面に矯正するアノードAの一対の耳部C,Cが載せられて、アノードAを吊り下げて保持するようになっている。アノード保持部2,2は上記機能を有するように設けられていればよく、その構造はとくに限定されない。例えば、アノード保持部2,2は、上面が水平になるように設置された棒状の部材によって形成することができる。また、U字状の部材で受けたり、万力のような機構で受け止めたりするようにしてもよい。
【0026】
このアノード保持部2にアノードAが保持された状態において、アノードAを挟むように基準ブロック10と加圧ブロック15が配置されている。具体的には、アノードAの裏面側(図1では右側の面側)に基準ブロック10が配置されており、アノードAの表面側(図1では左側の面側)に加圧ブロック15が配置されている。そして、加圧ブロック15を、基準ブロック10に接近離間させる加圧ブロック移動機構16が設けられている。
【0027】
このため、図2に示すように、加圧ブロック移動機構16によって、加圧ブロック15を基準ブロック10に向けて移動させれば、加圧ブロック15によって一対の耳部C,Cが基準ブロック10に向けて押圧される(図2(B))。すると、加圧ブロック15と基準ブロック10に挟まれて、一対の耳部C,Cを矯正することができる。
【0028】
例えば、アノードAの本体部Bの厚みが40mm、耳部Cの厚みが38mmであれば、基準ブロック10の厚さを本体部Bの本体部基準ブロック21の厚さよりも1mm程度薄くする。すると、一対の耳部C,Cを矯正することによって、アノードAを一対の耳部C,Cによってブスバーに吊り下げたときに、本体部Bの中心線X−X’上に移動させることができる。
【0029】
加圧ブロック15および基準ブロック10は2つあれば、一対の耳部C,Cを独立して矯正することができる。このようにすることで、アノードAの鋳造時の鋳型の傾き等の理由により、一方の耳部Cのみが重心Gを通る中心線X、X’よりも表面側にずれている場合にも、耳部C,Cの位置を適切にすることができる。
【0030】
なお、加圧ブロック移動機構16の構成は、加圧ブロック15を基準ブロック10に対して接近離間させることができる構成であればよく、とくに限定されない。例えば、油圧シリンダ等のシリンダ機構(図1図2の符号16)やスクリュー機構、ダイヤフラム機構等を採用することができる。
【0031】
加圧ブロック移動機構16は、加圧ブロック15にそれぞれ設けてもよいし、複数の加圧ブロック15を1つの加圧ブロック移動機構16で移動させるようにしてもよい。とくに、アノードAの強度に対して加圧ブロック移動機構16の出力が十分であれば、一対の耳部C,Cを押圧するための加圧ブロック15の全てを1つの加圧ブロック移動機構16で駆動することも可能である。このようにすると、一対の耳部C,Cを矯正する時間帯がほぼ同じになる。すると、加圧ブロック移動機構16を駆動するための油圧や電圧の変動、アノードの振動などがあっても、その影響による一対の耳部C,Cの矯正量の過不足が両耳部C,Cでほぼ同程度となったアノードが得られる。このようなアノードAは、一対の耳部C,Cを再度矯正する際に、矯正が容易になる。
【0032】
上述した基準ブロック10のブロック本体11や加圧ブロック15の形状はとくに限定されない。アノードAに接触する接触面が平坦面であって、押圧後に基準ブロック10および加圧ブロック15がアノードAに食い込みにくい形状であればよい。例えば、ブロック本体11や加圧ブロック15は、立方体や直方体に形成してもよいし、接触面が平坦面に形成された円筒形であってもよい。
【0033】
なお、ブロック本体11における接触面とは、後述する厚さ調整部材12を外した状態においてアノードAと接触する面である。言い換えれば、ブロック本体11において加圧ブロック15側に位置する面(加圧ブロック15と対向する面)である(図3参照)。
【0034】
(基準ブロック10)
図1に示すように、基準ブロック10は、上述したようなブロック本体11と、このブロック本体11に着脱可能に設けられる厚さ調整部材12と、を備えている。そして、基準ブロック10は、厚さ調整部材12を着脱することによって、基準ブロック10の厚さ、つまり、加圧ブロック15によって一対の耳部C,Cを押圧したときの変形量を調整できるようになっている。
【0035】
(ブロック本体11)
図1に示すように、ブロック本体11は、略直方体のブロックである。このブロック本体11は、その前面(つまり加圧ブロック15と対向する面、上述した接触面)が加圧ブロック15の接触面と略平行になるように、その背面が装置のフレーム3などに固定されている。
【0036】
このブロック本体11の上面には、その上面から凹んだ溝状の凹部11hが設けられている。この凹部11hは、ブロック本体11の接触面と平行に設けられた溝であり、そのブロック本体11の一側面側から反対側の側面側を見通せるように形成されている。なお、この溝状の凹部11hの幅や深さはとくに限定されない。例えば、幅をブロック本体11の幅の50〜100%、深さをブロック本体11の厚さの0.1〜50%とすれば、ブロック本体11の強度の低下を抑制しつつ、厚さ調整部材12を安定して取り付けることができる。
【0037】
(厚さ調整部材12)
図1に示すように、厚さ調整部材12は、接触部12aと、挿入部材12bと、連結部材12cと、を備えている。
【0038】
まず、挿入部材12bは、前述したブロック本体11の凹部11hに挿入されるものである。この挿入部材12bは、板状の部材であり、その幅が凹部11hの幅とほぼ同じか若干狭くなるように形成されている。つまり、挿入部材12bを凹部11hに挿入した際に、凹部11hの幅方向(言い換えれば基準ブロック10の厚さ方向)において、移動したりがたついたりしないように、挿入部材12bは形成されている。また、挿入部材12bは、その長さ(図1(A)のL)が、凹部11hの深さと同等または若干短くなっている。
【0039】
前記挿入部材12bの上端部には連結部材12cの一端が連結されている。この連結部材12cも板状の部材であり、その下面が平坦面に形成されている。この下面は、挿入部材12bの表面と直交するように設けられている。したがって、挿入部材12bを凹部11hに挿入すると、連結部材12cは、その下面がブロック本体11の上面と面接触するように設けられている。
【0040】
そして、連結部材12cの他端には、接触部材12aが設けられている。この接触部材12aも板状の部材であり、その表面と裏面が互いに平行な平坦面に形成されている。しかも、接触部材12aの表面は、前述した挿入部材12bの表面と平行となるように設けられている。つまり、厚さ調整部12は、側面視で略コの字状に形成されている。
【0041】
そして、接触部材12aは、その裏面から挿入部材12bの前面までの距離が、ブロック本体11の接触面から凹部11hの前側内面(図1では左側内面)までの距離Wとほぼ同じ長さになるように設けられている。
【0042】
厚さ調整部12が上記のごとき形状に形成されているので、挿入部材12bを凹部11hに挿入すれば、接触部材12aは、その裏面がブロック本体11の接触面に面接触した状態に配置される。すると、接触部材12aの前面(加圧ブロック15側の面)を、アノードAの耳部Cと接触する接触面として機能させることができる。
【0043】
また、厚さ調整部12をブロック本体11に取り付ければ、基準ブロック10の厚さをブロック本体11の厚さと接触部材12aの厚さを合わせた厚さに調整することができる。
【0044】
そして、接触部材12aの厚さが異なる厚さ調整部12を使用すれば、基準ブロック10の厚さを変更できる。すると、厚さ調整部12を変更するだけで耳部Cの変形量を調整できるから、耳部Cの変形量の調整を容易かつ迅速に実施することができる。したがって、基準ブロック10を採用すれば、設備の稼働日であっても、耳部Cの変形量の調整が可能になり、アノードAの垂直性を向上することができる。
【0045】
なお、厚さ調整部12は、ブロック本体11の上面に空間があり、ブロック本体11より加圧ブロック15側に接触部材12aが入る隙間があれば、ブロック本体11に取り付けることができる。したがって、厚さ調整部12の固定や交換を安全に行うことができる。具体的には、ブロック本体11の上面には、作業者やその腕が入る程度の空間があり、ブロック本体11より加圧ブロック15側には、厚さ調整部12の接触部材12aの厚さ程度の隙間があれば、厚さ調整部12をブロック本体11に固定したり交換したりできる。
【0046】
上述した挿入部材12bと連結部材12cが特許請求の範囲にいう固定部に相当する。なお、固定部は上述したような態様に限られるものではなく、種々の形態を採用することができる。例えば、ブロック本体11の上部に上方に突出した部分を設けておく。そして、その突出した部分を跨ぐように覆い被さるように取り付けることができる形状に固定部を形成してもよい。
【0047】
また、厚さ調整部12は、ボルト等によってブロック本体11に固定されるようにしてもよい。例えば、ブロック本体11の上面や側面にボルト等を固定できる穴を穿っておき、固定部として、ブロック本体11の上面や側面に配置される固定プレートを設ける。そして、固定プレートにボルト等を挿通できる貫通孔を設けておく。すると、固定プレートの貫通孔にボルト等を挿通して、ボルト等をブロック本体11の穴に挿入すれば、厚さ調整部12をブロック本体11に固定することができる。この場合には、ブロック本体11の穴に雌ネジを形成し、ボルト等を螺合するようにすれば、厚さ調整部12をブロック本体11にしっかりと固定することができる。
【0048】
さらに、ブロック本体11の接触面にボルト等を固定できる穴を穿っておき、厚さ調整部12の接触部材12aにボルト等を挿通できる貫通孔を設けておく。すると、接触部材12aの貫通孔にボルト等を挿通して、ボルト等をブロック本体11の穴に挿入すれば、厚さ調整部12をブロック本体11に固定することができる。この場合も、ブロック本体11の穴に雌ネジを形成し、ボルト等を螺合するようにすれば、厚さ調整部12をブロック本体11にしっかりと固定することができる。なお、この場合には、厚さ調整部材12の接触部材12aの表面からボルトの頭が突出しないように、接触面にはボルトの頭などを収容するくぼみを設けることが必要である。
【0049】
(基準ブロック10について)
上記例では、基準ブロック10の厚さ調整部12の各部材12a〜12cが板状の部材で形成されている場合を説明した。しかし、厚さ調整部12は、必ずしも上記のような構成としなくてもよい。
【0050】
例えば、板状の接触部材12aを、棒状の連結部材12cによって棒状の挿入部材12bに連結した構成としてもよい。この場合でも、ブロック本体11の凹部11hに挿入部材12bを挿入すれば、接触部材12aの裏面がブロック本体11の表面に面接触した状態となるようにしておく。すると、各部材12a〜12cが板状の部材で形成されている場合と同様に、厚さ調整部12を機能させることができる。
【0051】
また、上記例では、ブロック本体11の凹部11hがブロック本体11の上面に設けられている場合を説明した。しかし、凹部11hは、ブロック本体11の上面以外の面、つまり、ブロック本体11の側面や下面に形成してもよい。しかし、凹部11hがブロック本体11の上面に設けられていれば、厚さ調整部材12の固定が容易になる。例えば、厚さ調整部材12をボルトなどによってブロック本体11固定する場合でも、凹部11hがブロック本体11の上面に設けられていれば、厚さ調整部材12を作業者が保持していなくても、厚さ調整部材12はブロック本体11に引っかかった状態で維持される。したがって、厚さ調整部材12の交換の際に、作業者の作業負担を軽減できる。
【0052】
さらに、上記例では、連結部材12cの下面がブロック本体11の上面に面接触する場合を説明したが、連結部材12cの下面は必ずしもブロック本体11の上面に面接触するように設けられていなくてもよい。しかし、このようにすれば、ブロック本体11の接触面に対する厚さ調整部材12の接触部材12aの位置決めをより正確に行うことができるので、厚さ調整部材12の設置を簡単かつ迅速に行うことができるという利点が得られる。
【0053】
なお、厚さ調整部12を取り付けずに、ブロック本体11の表面を接触面にして矯正を行ってもよい。この場合、凹部11hに何も設置せずに切欠きのままとしてもよいが、図3に示すように、スペーサ13を設置することが望ましい。スペーサ13を設ければ、加圧ブロック15からの加圧力によって、凹部11hにおいてブロック本体11が変形することを防ぐことができる。
【0054】
(移動量調整)
上述したような基準ブロック10を使用すれば、厚さ調整部12の使用不使用、また、使用する厚さ調整部12(接触部材12aの厚さの異なるもの)を使用することによって、耳部Cの変形量を調整できる。
【0055】
一方、上述したような基準ブロック10を使用しても、耳部Cの変形量を変更する場合には(あるいは基準ブロック10の表面が磨耗した場合にも)、厚さ調整部12を交換しなければならない。また、一つの厚さ調整部12では、種々の変形量に対応することはできない。耳部Cの厚さは、同じ操業日でもアノードAごとに若干変化するので、より細かく変形量を調整する上では、以下のような移動量調整機能を有していることが望ましい。
【0056】
つまり、本実施形態のアノード矯正装置1に、矯正前のアノードAにおける一対の耳部C,Cの厚さを測定する厚さ測定部を設ける。例えば、アノード保持部2に保持された状態のアノードAにおける一対の耳部C,Cに対して、その正面からレーザーを照射できるように、非接触式のレーザー距離計を設けて厚さ測定部とすることができる。
【0057】
なお、厚さ測定部は、矯正前のアノードAにおける一対の耳部C,Cの厚さを測定できればよく、とくに限定されない。上述したレーザー距離計以外に、超音波距離計やデジタルノギス等の測定機器を採用することができる。
【0058】
また、加圧ブロック15を移動させる移動機構の作動を制御する移動量調整部を設ける。そして、この移動量調整部に、厚さ測定部が測定した一対の耳部C,Cの厚さの情報を伝達するようにしておく。加えて、移動量調整部には、現在設置されている基準ブロック10の厚さ情報を伝達するようにしておく。基準ブロック10の厚さ情報とは、ブロック本体11の厚さの情報と、厚さ調整部12の有無、厚さ調整部12の接触部材12aの厚さの情報である。
【0059】
上記のごとき移動量調整部を設ければ、各アノードAの一対の耳部C,Cの厚さに合わせて、一対の耳部C,Cの変形量を調整することができる。具体的には、次のような仕組みで調整する。まず、一対の耳部C,Cの厚さの測定値と基準ブロック10の厚さ情報に基づいて、一対の耳部C,Cの厚さが、現状の基準ブロック10の接触面に接触するまで変形させると、一対の耳部C,Cが必要以上に変形してしまうことを移動量調整部が把握したとする。この場合には、移動量調整部は、加圧ブロック15の移動量を少なくして、一対の耳部C,Cの変形量を小さくする。すると、一対の耳部C,Cの変形量をその厚さに適したものとすることができる。
【0060】
例えば、アノードAの一対の耳部C,Cの厚さが38mmの場合に適切な変形量となるように基準ブロック10が設けられている場合において、実際の一対の耳部C,Cの厚さが37mmであったとする。この場合に、一対の耳部C,Cを、基準ブロック10の接触面に接触するまで変形させてしまうと、一対の耳部C,Cをブスバーに吊り下げたときに、その支持・接点となる部分は1mm裏面側にずれてしまう。つまり、一対の耳部C,Cは過度に変形された状態となり、アノードAの垂直性を最適な状態とすることができない。しかし、移動量調整部が上記情報を用いて、最適な加圧ブロック15の移動量(上記例では1mm短くした移動量)とすれば、一対の耳部C,Cの変形量を最適な量とできるので、アノードAの垂直性を向上することができる。
【実施例】
【0061】
本発明のアノード矯正装置が、アノードの耳部の矯正に有効であることを確認した。
【0062】
まず、本発明のアノード矯正装置によって基準ブロックの厚さ調整時間を短くできるか否かを確認した。実験では、設備が稼働していない日において、基準ブロックの厚さ調整を8回実施し、その際に作業者を変更して基準ブロックの厚さ調整に要する時間を確認した。
結果として、基準ブロックの厚さ調整に要する平均時間は約5分間であり、従来のブロック交換時間(25〜30分)の5分の1以下とすることができた。この程度の時間であれば、設備の稼働を一時的に停止しても次工程などへの影響を最小限にとどめることができ、設備の稼働日でも基準ブロックの厚さ調整が可能である。
【0063】
また、矯正装置に入力されるアノードの耳部の厚み測定結果に合わせて、随時、変形量を調整してアノードの耳部を矯正し、アノードの懸垂性を確認した。ここでいう懸垂性は、水平なアノード保持部にアノードの耳部を乗せて吊り下げた状態で、アノード保持部と耳部との2接点を通る鉛直面を設定し、アノードの下端高さにおける、この鉛直面からアノードの表面までの距離で表した。この距離が短いほど懸垂性がよいと判断できる。なお、鉛直面からアノードの表面までの距離はレーザー距離計によって測定し、この測定値に基づいて距離を算出した。
【0064】
矯正したアノード(1日あたり1680枚)から30枚をサンプリングして懸垂性を測定したところ、その懸垂性は平均7mmであった。
一方、比較例1として、アノードの耳部の矯正を行わなかったアノード(1日あたり1680枚)から30枚をサンプリングして懸垂性を測定したところ、その懸垂性は平均14mmであった。
【0065】
以上の結果より、本発明のアノード矯正装置では、基準ブロックの厚さ調整を簡単かつ迅速に実施でき、また、矯正したアノードは懸垂性が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のアノード矯正装置は、銅、鉛、銀などの電解製錬で用いる鋳造アノードの耳部を矯正する装置に適している。
【符号の説明】
【0067】
1 アノード矯正装置
10 基準ブロック
11 ブロック本体
11h 凹部
12 厚さ調整部材
12a 接触部材
12b 挿入部材
12c 連結部材
A アノード
B 本体部
C 耳部
図1
図2
図3
図4
図5