特許第6562447号(P6562447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562447動物の内部標準ポリヌクレオチドおよびそれを用いた標的ポリヌクレオチドの検出方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562447
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】動物の内部標準ポリヌクレオチドおよびそれを用いた標的ポリヌクレオチドの検出方法。
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20190808BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20190808BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   C12Q1/68
   C12Q1/06
   !C12N15/09 ZZNA
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-232208(P2014-232208)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-93147(P2016-93147A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢二
【審査官】 堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】 ALTMAN, Sidney et al.,Nucleotide Sequences of the RNA Subunit of RNase P from Several Mammals,Genomics,1993年,vol. 18,p. 418-422
【文献】 TaKaRa Premix Ex Taq (Probe qPCR),2012年,[2018年11月7日検索]、インターネット<URL:http://catalog.takara-bio.co.jp/pdfs/RR390A_j.pdf>
【文献】 佐藤羊夏 等,反芻動物RNase P遺伝子を内部標準として用いたウシ白血病ウイルス(BLV)Duplex定量PCR法の検討,産業動物臨床医学雑誌,2014年11月10日,vol. 5, no. 2,p. 80-81
【文献】 LUO, Wei et al.,Detection of Human Immunodeficiency Virus Type 1 DNA in Dried Blood Spots by a Duplex Real-Time PCR Assay,Journal of Clinical Microbiology,2005年,vol. 43, no. 4,p. 1851-1857
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY/WPIDS(STN)
PubMed
UniProt/GeneSeq/PDB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反芻動物より採取した検体中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、
検体中の、下記のaまたはcの内部標準ポリヌクレオチドを検出する工程を含む、方法:
a.配列番号:1〜3のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
c.配列番号:1〜3のいずれか一に記載の塩基配列と少なくとも95%以上の同一性を有し、かつRNase P活性を有するリボザイムをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
標的ポリヌクレオチドの検出および内部標準ポリヌクレオチドの検出が、一つのリアルタイムPCR反応系で、それぞれの遺伝子領域を同時に増幅することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一種類のオリゴヌクレオチドプローブを用い、このときオリゴヌクレオチドプローブが、5'末端付近および3'末端付近のいずれか一方が蛍光分子で修飾されており、他方が消光分子で修飾されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
検体が血液である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
以下を含む、反芻動物の診断のために標的ポリヌクレオチドを検出するためのキット:
配列番号:1〜3のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部を増幅するための、内部標準増幅用プライマー対;および
・標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部を増幅するための、標的増幅用プライマー対。
【請求項6】
さらに以下を含む、請求項に記載のキット:
・少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドプローブであって、5'末端付近および3'末端付近のいずれか一方が蛍光分子で修飾されており、他方が消光分子で修飾されている、プローブ。
【請求項7】
内部標準増幅用プライマー対、標的増幅用プライマー対、およびオリゴヌクレオチドプローブを1の溶液として含む、請求項5または6に記載のキット。
【請求項8】
増幅反応をPCR法により行うための、請求項5〜7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
反芻動物より採取した検体中に含まれる、配列番号:1〜3のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを定量する工程を含む、検体中の細胞数の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の検査・診断の際に用いることのできる、新規な内部標準に関する。本発明は、動物の研究、医療、ヘルスケア、および畜産等の分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
地方病性牛白血病は、牛白血病ウイルス(BLV)によるB細胞性の腫瘍であり、主な症状としてリンパ節の腫大などがある。現在のところ、有効なワクチンや治療法がないため、BLV陽性牛を摘発し、淘汰することが感染の拡大を防ぐための最善の対策である。
【0003】
BLVのゲノムは、宿主の細胞のゲノムに組みこまれ、プロウイルスとなる。感染細胞は、血液や乳汁を介して、他の感受性動物の体内に入ることで感染が拡大する。感染牛の一部(数%)が長い潜伏期間を経て、数年後に牛白血病を発症する。感染した牛の60〜70%は無症状であり、約30%の牛が持続性リンパ球増多症(PL牛)となるが、いずれも臨床的には異常を示さない。しかしながら、屠畜の際に感染が確認された牛は、法律・規則に基づき廃棄されるため、農家にとっては大きな損失となる。
【0004】
現在、BLV検出用のキットが市販されており、これはリアルタイムPCR装置を用いて検出するために必要な、プローブ、プライマー、陽性コントロールからなる(非特許文献1)。
【0005】
一方、リボヌクレアーゼ P(RNase P)は、転移RNA(tRNA)前駆体の5'プロセシングを触媒し、成熟した5'末端を持つtRNAを生産する普遍的な酵素である。このRNase P遺伝子は、ヒトに関してはゲノムに1コピーとして存在することが分かっている。そのため、この遺伝子を検出することにより、実際に細胞数を計数することなく、遺伝子定量により細胞を算出することが可能となっている。ヒトにおいてRNase P遺伝子は、ヒトT細胞性白血病、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)、ヒトヘルペスウイルスなどに感染した臨床材料からウイルスを検出する際に、その試験・検査の質を保証するための内部標準遺伝子として利用されている。また、ヒトのRNase P遺伝子を検出するためのキットが市販されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】研究用TaKaRaウシ白血病ウイルス検出用Probe/Primer/Positive control(製品コードCY415)説明書(2014)、タカラバイオ(株)http://www.takara-bio.co.jp/
【非特許文献2】TaqMan RNase P reagent kit (Cat No. 4316831), アプライドバイオシステムズ分子生物製品カタログ2010-2011, p105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
牛白血病の発生数は近年増加傾向にある。そのため、拡大を抑制する早急な対策が必要である。PL牛やプロウイルス保有量の多い牛は、プロウイルス量の少ない牛よりも周囲の牛に感染を拡げやすい。そこで、BLV陽性牛のなかでも、感染源となりうるPL牛やプロウイルス保有量の多い牛を選別する必要がある。
【0008】
現在市販されている非特許文献1のBLV検出用の製品では、検体のDNA量を一定以下に希釈して定量が行われている一方で、内部標準を用いていないという問題がある。一方、本発明者は、非特許文献2のヒトのRNase P遺伝子を検出するキットでは、ウシまたはヒツジから採取した検体中の遺伝子には反応しないことを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、動物(ヒトを除く。)由来のRNase P遺伝子を特定し、BLVの定量系の内部標準として用いることを検討した。また本発明者は、RNase PとBLV遺伝子をそれぞれ定量するシンプレックス法では、ウェルに分注する際の誤差を防ぐことができないと考えた、。そこで、DuplexリアルタイムPCR法により、1つの反応系内で標的BLV遺伝子と内部標準遺伝子それぞれを増幅し、定量することを検討し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、以下を提供する。
[1] 動物より採取した検体中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、
検体中の、下記のいずれか一の内部標準ポリヌクレオチドを検出する工程を含む、方法:
a.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
b.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRNase P活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
c.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつRNase P活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
[2] 標的ポリヌクレオチドの検出および内部標準ポリヌクレオチドの検出が、一つのリアルタイムPCR反応系で、それぞれの遺伝子領域を同時に増幅することにより行われる、1に記載の方法。
[3] 少なくとも一種類のオリゴヌクレオチドプローブを用い、このときオリゴヌクレオチドプローブが、5'末端付近および3'末端付近のいずれか一方が蛍光分子で修飾されており、他方が消光分子で修飾されている、1〜2のいずれか1項に記載の方法。
[4] 検体が血液である、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 下記のいずれか一のポリヌクレオチド:
a.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
b.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRNase P活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
c.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつRNase P活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
[6] 以下を含む、動物の診断のために標的ポリヌクレオチドを検出するためのキット:
・5に記載のポリヌクレオチドの少なくとも一部を増幅するための、内部標準増幅用プライマー対;および
・標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部を増幅するための、標的増幅用プライマー対。
[7] さらに以下を含む、6に記載のキット:
・少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドプローブであって、5'末端付近および3'末端付近のいずれか一方が蛍光分子で修飾されており、他方が消光分子で修飾されている、プローブ。
[8] 内部標準増幅用プライマー対、標的増幅用プライマー対、およびオリゴヌクレオチドプローブを1の溶液として含む、6または7に記載のキット。
[9] 増幅反応をPCR法により行うための、6〜8のいずれか1項に記載のキット。
[10] 動物より採取した検体中に含まれる、5に記載のポリヌクレオチドを定量する工程を含む、検体中の細胞数の測定方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下を提供する。
[1] 動物より採取した検体中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、
検体中の、下記のいずれか一の内部標準ポリヌクレオチドを検出する工程を含む、方法:
a.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
b.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRNase P活性を有するリボザイムをコードするポリヌクレオチド;
c.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつRNase P活性を有するリボザイムをコードする、ポリヌクレオチド。
[2] 標的ポリヌクレオチドの検出および内部標準ポリヌクレオチドの検出が、一つのリアルタイムPCR反応系で、それぞれの遺伝子領域を同時に増幅することにより行われる、1に記載の方法。
[3] 少なくとも一種類のオリゴヌクレオチドプローブを用い、このときオリゴヌクレオチドプローブが、5'末端付近および3'末端付近のいずれか一方が蛍光分子で修飾されており、他方が消光分子で修飾されている、1〜2のいずれか1項に記載の方法。
[4] 検体が血液である、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 下記のいずれか一のポリヌクレオチド:
a.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
b.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRNase P活性を有するリボザイムをコードするポリヌクレオチド;
c.配列番号:1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつRNase P活性を有するリボザイムをコードする、ポリヌクレオチド。
[6] 以下を含む、動物の診断のために標的ポリヌクレオチドを検出するためのキット:
・5に記載のポリヌクレオチドの少なくとも一部を増幅するための、内部標準増幅用プライマー対;および
・標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部を増幅するための、標的増幅用プライマー対。
[7] さらに以下を含む、6に記載のキット:
・少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドプローブであって、5'末端付近および3'末端付近のいずれか一方が蛍光分子で修飾されており、他方が消光分子で修飾されている、プローブ。
[8] 内部標準増幅用プライマー対、標的増幅用プライマー対、およびオリゴヌクレオチドプローブを1の溶液として含む、6または7に記載のキット。
[9] 増幅反応をPCR法により行うための、6〜8のいずれか1項に記載のキット。
[10] 動物より採取した検体中に含まれる、5に記載のポリヌクレオチドを定量する工程を含む、検体中の細胞数の測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】RNaseP プラスミド検量線。同じコピー数では、線状型のプラスミドで増幅曲線の早い立ち上がりが見られ、より少ないCt値で検出されていた。
図2】RNase Pの1細胞あたりのコピー数。牛:1.33〜2.34コピー/細胞(平均値1.71)、羊:1.21〜2.68コピー/細胞(平均値1.81)。
図3】ゲノムDNA量を50 ng〜300 ngと変化させた場合の反応性。ゲノムDNAの量を変化させた場合でも容量依存性に定量が可能である。
図4】ヒトおよび各種動物の塩基配列
図5】ヒトおよび各種動物の塩基配列の比較
【発明を実施するための形態】
【0013】
数値範囲を「m〜n」で表すときは、特に記載した場合を除き、その範囲は両端の値mおよびnを含む。「Xおよび/またはY」は、XおよびYの少なくとも一方を指す意図で用いられており、具体的には、Xのみである場合、Yのみである場合、XおよびYである場合のいずれかを指す。
【0014】
本発明は、動物(非ヒト動物およびヒト)より採取した検体中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、検体中の、内部標準ポリヌクレオチドを検出する工程を含む、方法を提供する。
【0015】
標的ポリヌクレオチドとは、検体中において、有無または存在量を測定することが求められ、検出・診断の対象となるポリヌクレオチドである。標的ポリヌクレオチドは、典型的には、病気の原因となるウイルス由来の遺伝子である。
【0016】
本発明の方法においては、標的ポリヌクレオチドのほか、内部標準ポリヌクレオチドも検出される。本発明においては、内部標準ポリヌクレオチドとして、動物のRNase P遺伝子を用いる。動物のRNase Pは、下記のいずれかである。
a.配列番号: 1〜4のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
b.配列番号: 1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRNase P活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
c.配列番号: 1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつRNase P活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【0017】
本発明の方法においては、標的ポリヌクレオチドのほか、内部標準ポリヌクレオチドも検出される。本発明においては、内部標準ポリヌクレオチドとして、動物のRNase P遺伝子を用いる。動物のRNase P遺伝子は、下記のいずれかである。
a.配列番号: 1〜4のいずれか一に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
b.配列番号: 1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRNase P活性を有するリボザイムをコードするポリヌクレオチド;
c.配列番号: 1〜4のいずれか一に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつRNase P活性を有するリボザイムをコードする、ポリヌクレオチド。
【0018】
本発明でポリヌクレオチドに関し、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」というときは、特に記載した場合を除き、いずれのポリヌクレオチドにおいても、ハイブリダイゼーションの条件は、Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 2nd ed.(Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)およびHybridization of Nucleic Acid Immobilization on Solid Supports (ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 138, 267-284 (1984))の記載に従い、取得しようとするポリヌクレオチドに合わせて適宜選定することができる。例えば85%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液および50%ホルムアミドの存在下、45℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、60℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。また90%以上の同一性を有するDNAを取得する場合、2倍濃度のSSC溶液および50%ホルムアミドの存在下、50℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍濃度のSSC溶液)を用い、65℃でフィルターを洗浄する条件を用いればよい。
【0019】
本発明で塩基配列(ヌクレオチド配列ということもある。)に関し「同一性」というときは、特に記載した場合を除き、いずれの塩基配列においても、2つの配列を最適の態様で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致したヌクレオチドの個数の百分率を意味する。すなわち、同一性=(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出でき、市販されているアルゴリズムを用いて計算することができる。また、このようなアルゴリズムは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215(1990)403-410に記載されるNBLASTおよびXBLASTプログラム中に組込まれている。より詳細には、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズムまたはプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。
【0020】
本明細書において、塩基配列に関し、同一性というときは、特に記載した場合を除き、いずれの場合も、少なくとも70%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97.5%以上さらに好ましくは99%以上の配列の同一性を指す。
【0021】
本発明で用いるポリヌクレオチドまたは遺伝子、およびリボザイムは、当業者であれば、従来技術を利用して調製することができる。
【0022】
本発明においては、標的ポリヌクレオチドを増幅するためのプライマー対(例えば、配列番号:5および6)および内部標準ポリヌクレオチドを増幅するためのプライマー対(例えば、配列番号:7および8)を用いる。増幅反応は、種々の方法で行い得る。例えば、PCR法、SDA法、TMA法、NASBA法、TRC法、ICAN法、SmartAmp法、RCA法、LAMP法等の核酸の増幅のための方法を適用しうる。好ましくは、PCR法であり、より好ましくは、リアルタイムPCR法である。
【0023】
本発明においてはまた、オリゴヌクレオチドプローブを用いることができる。プローブの5'末端付近または3'末端付近のいずれか一方が蛍光分子で修飾されており、他方が消光分子で修飾されている。このようなプローブの典型的な例は、TaqMan(登録商標)プローブである。
【0024】
蛍光分子としては、例えば、N-(3-フルオランチル)マレイミド(N-(3-Fluoranthyl)maleimide 、FAM)、フルオレセイン、ダンシル、カスケードイエロー、フルオレスカミン、オレゴングリーン、ピレン、テキサスレッド、パシフィックブルー、マリンブルー、アレクサ、ルシファーイエロー、ボディパイ(BODIPY)、クーマリン、ピンポ(PyMPO)、TET、JOE、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、ROX、VIC、HEX、TAMRA、SYBR Green、NBD等を用いることができる。消光分子としては、例えば、4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4'-カルボン酸(4-dimethylaminoazobenzene-4'-carboxylic acid、Dabcyl)、QSY-7、QSY-21、QSY-35、BHQ-0、BHQ-1、BHQ-2、BHQ-3、Eclipse等の蛍光を発しない物質(ダーククエンチャーと言われる)を用いてもよいし、上記蛍光分子が発する波長領域に吸収帯を持つ蛍光物質を消光分子として利用してもよい。蛍光分子および消光分子をオリゴヌクレオチドに結合させる方法、ならびに蛍光強度の変化を検出する方法は当該技術分野においてよく知られている。
【0025】
本発明に用いられるプライマーおよびプローブは、上述の遺伝子増幅法の原理に基づき、また従来のプライマー、プローブの設計方法を参考に、適宜設計できる。プライマー、プローブの設計方法のためには、ソフトウェアが市販されており、本発明のためにも使用できる。
【0026】
プライマーの設計は、通常、Tm値、各プライマー領域の末端安定性、GC含量、二次構造の4つに留意して行う。本発明においても同様である。Tm値は、60〜68℃、場合により64〜66℃、場合により59〜61℃、または64〜66℃とすることができる。また適宜微調整することができる。各プライマー領域の末端は、核酸合成の起点となるため安定性が要求される。末端の自由エネルギーが、−4kcal/ mol 以下になるように設定するとよい。プライマーのGC含量は、35〜75%、場合により40〜65%になるように設計することができる。好ましくは、50〜60%となるように設計することもできる。二次構造に関しては、極端に二次構造をとらないように設計するとよい。また、プライマーダイマーの生成を防ぐために、末端が相補的にならないように設計するとよい。プライマー間の距離も適宜設計することができる。
【0027】
プライマー設計上、長さは15〜30塩基、好ましくは17〜25塩基である。プローブ設計上、長さは12〜30塩基、好ましくは14〜25塩基である。このような塩基長であれば、意図した相補配列との特異的な会合のために有効だからである。
【0028】
設計されたプライマーおよびプローブは、当業者にはよく知られた既存の方法により合成することができる。
【0029】
上述のプライマーおよびプローブを用いて実施される遺伝子増幅は、典型的には、PCR法による各工程を含む。PCR法を実施する場合は、従来のPCR法に用いられる酵素が利用できる。工程の温度および時間は、使用する酵素等に応じて適宜設定することができる。
【0030】
PCR法は、通常のPCR法と同様、数十μl程度のスケールで実施することができる。用いる鋳型ヌクレオチド、プライマー、プローブの量は、当業者であれば適宜設定できる。
【0031】
系の組成は、上述の鋳型、プライマーおよびプローブの使用量または濃度のほか、当業者には明らかであるように、4種のdNTP、緩衝剤、塩、界面活性剤等を含むことができる。
【0032】
本発明は、本発明の方法を実施するための、プライマー対、プローブ、プローブおよびプライマー対のセット、並びにキットを提供する。標的ポリヌクレオチドを増幅するためのプライマー対(例えば、配列番号:7および8)および内部標準ポリヌクレオチドを増幅するためのプライマー対(例えば、配列番号:9および10)はいずれも、1または数個分(例えば、1〜4個、1〜3個、1または2個)の末端の塩基を欠失するかまたは伸長することにより、改変することができる。伸長する場合、その部分は、会合する領域に相補する配列を有するようにすることができる。プローブ(例えば、配列番号:11および12)はいずれも、上述したように、欠失、伸長または置換により改変することができる。本発明は、このようなものから選択される任意の改変プライマーおよび改変プローブからなるセットも提供する。
【0033】
本発明において、遺伝子増幅の対象となる鋳型核酸の由来する組織は、特に限定されない。また鋳型核酸の調製方法も特に限定されない。末梢血のほか、毛髪や組織から調製しても良い。代表的なものとしては、血液のほか、口腔粘膜、尿、髄液、喀痰、病理組織からキットを用いて精製されたものが挙げられる。既存の核酸精製方法としては、ヨウ化ナトリウム法、アルカリ抽出法、フェノールクロロホルム法、キットとしては、Genomix (Talent SRL)、MagExtractor (東洋紡)、QIAamp DNA Blood Mini Kit (キアゲン) などが知られる。
【0034】
核酸の増幅は、主に遺伝子関連検査のために行われる。遺伝子関連検査には、感染症の原因となるウイルスや細菌などの外来遺伝子や、ゲノムに組み込まれたプロウイルスを検出する病原体遺伝子検査が含まれる。
【実施例】
【0035】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
1.材料と方法
RNase P遺伝子検出用primer/probeの構築:
牛および羊から末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、DNAの抽出を行った後、RNase P component H1遺伝子領域のPCRを行った。これらPCR産物の塩基配列(配列番号:1〜4)を元にリアルタイムPCRのprimer/probeを作製した。
【0037】
ウシ
・Forward primer: 5’-CTACGAGCTGAGTGCGCTTAGTC-3’ (BOS RPPH1-F)(配列番号:7)
・Reverse primer: 5’-CCTATGGCCCTAGTCTCAGACCTT-3’ (BOS RPPH1-R) (配列番号:8)
・probe: 5’-VIC-TCTGTCCATTGTCCC-MGB-3’(BOS RPPH1-54T) (配列番号:11)
【0038】
ヒツジ
・Forward primer: 5’-GCCGGAGCTTGGAACAGA-3’ (Ov_RPPH1_F) (配列番号:9)
・Reverse primer: 5’-ACCTCACCTCAGCCATTGAACT-3’ (Ov_RPPH1_R) (配列番号:10)
・probe: 5’-VIC-TCACGGCCAGCGAA-MGB-3’(Ov_RPPH1-S7T)(配列番号:12)
【0039】
標準プラスミドの作製:
BLV tax遺伝子および牛と羊のRNase P遺伝子をPCRで増幅後、プラスミドベクター(pENTER-D-TOPOまたはpCR2.1, Invitorogen)に組み込んだもの(環状型)ならびにそれらを制限酵素で処理したもの(線状型)を作製した。
【0040】
リアルタイム PCR反応:
酵素としてPremix Ex TaqTM (Probe qPCR) (TaKaRa)を用い、Step One Plus (Applied biosystems)にて95℃ 20秒の後、95℃ 1秒、60℃ 20秒、40サイクルの2ステップPCRを行った。
Duplex系の作出:
Duplex反応がSimplex反応と同様の結果を示すかを検証するために、標準プラスミドおよびBLV感染動物から抽出したゲノムDNAを鋳型として、上記と同様反応においてリアルタイムPCRを行い、両反応系のCt値を比較した。さらに、Duplex反応の再現性を評価するために、Intra−Interアッセイを行った。
【0041】
2.結果
標準プラスミドの作製:
ベクターに、牛および羊のRNase P component H1遺伝子(配列番号:1および2)と、BLV tax遺伝子をそれぞれ組み込みさらに、制限酵素処理を行った線状型と、処理を行わない環状型を作製した。これらのプラスミドからそれぞれ10倍階段希釈系列を作製し、リアルタイムPCRで定量し、環状型、線状型の希釈系列から得られた検量線を比較した。
【0042】
その結果を図1に示した。図1では、縦軸にCt値を、横軸に希釈系列中のプラスミドコピー数を示した。牛と羊のRNase PおよびBLVの、すべての検量線で線状型のプラスミドでは100〜105の範囲で検出され、直線性が見られた。環状型プラスミドの検量線では、100〜101コピーで検出されないか、直線性が失われた。さらに、同じコピー数では、線状型のプラスミドで増幅曲線の早い立ち上がりが見られ、より少ないCt値で検出された。
【0043】
これらのことから、線状型のプラスミドが検量線を引く際の鋳型として適切であることがわかったので、以降の実験では線状型を検量標準として用いた。
【0044】
RNase P遺伝子コピー数の決定:
作製した検量線を用いて、牛と羊におけるRNase P遺伝子のコピー数を定量し、シングルコピー遺伝子であるかを検討した。
【0045】
牛と羊のPBMCから抽出したゲノムDNA100ngを鋳型として、RNase PをターゲットとしたリアルタイムPCRを行った。ゲノムDNA重量から、100ng中の細胞数を算出できるので、これを基準としてRNase Pの1細胞あたりのコピー数を算出した。その結果、RNase Pは牛で1細胞あたり1.33〜2.34コピー、羊で1.21〜2.68コピーとなり、それぞれの平均値は1.71コピー、1.81コピーであった(図2)。1.5コピー〜2.5コピーより若干外れる結果が数サンプルで見られたが、ほとんどの結果がこの範囲内であることから、牛、羊においてもRNase P遺伝子は1細胞に2コピー存在するシングルコピー遺伝子であると考えられる。
【0046】
さらに、反応中の鋳型ゲノムDNA量を変化させて、RNase Pを定量した結果を図3に示しした。図3では横軸に反応中の鋳型ゲノムDNA量を、縦軸にRNase Pの定量されたコピー数を示し、理論値から予測されるコピー数を点線で、実際に検出されたコピー数を縦棒で示した。
【0047】
この結果より、実測値は予測値に近い値となり、反応中のゲノムDNAの量を変化させてもRNase Pを容量依存性に定量が可能であると考えられる。
【0048】
BLV tax/RNase P Duplex リアルタイムPCR法の検討:
RNase Pが内部標準遺伝子として適切であることが証明されたので、BLV taxとRNase PのDuplexリアルタイムPCR法を検討した。検討方法として、Simplex法との比較によるDuplex法の反応性の評価と、イントラーインターアッセイによるDuplex法の再現性の評価を行った。
【0049】
牛の反応系におけるDuplexとSimplexの比較の結果を下表に示した。表の数値は、検量線に使用しているそれぞれのプラスミドと、ゲノムDNAを鋳型として、同じプレート上でSimplex法とDuplex法でリアルタイムPCRを行った場合のそれぞれのCt値と、その差の割合を表す。
【0050】
【表1】
【0051】
Ct値の差の割合が十分に小さい値であることから、Duplex反応系はSimplex反応系と相違なく検出できているといえる。
【0052】
同様に羊の反応系において、DuplexとSimplexで比較を行った結果を下表に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
羊の反応系においてもCt値の差の割合は3%以下であったため、Simplex系と相違なく検出できているといえる。
【0055】
次に、Duplex法の再現性に関して、イントラーインターアッセイを行い、評価した結果を下表に示した。検量線用プラスミドとゲノムDNAを鋳型として、イントラアッセイは各反応を同じプレート内で3回行い、インターアッセイは各反応を、日時を変えて5回行った。その結果得られた変動係数CV値の割合の最大値を表した(CV=標準偏差/平均値:相対的なばらつきを示す。)。
【0056】
【表3】
【0057】
変動係数の基準範囲はイントラアッセイで5%未満、インターアッセイで10%未満であるので、すべての系でこの範囲内であり、再現性は高いといえる。
【0058】
3.考察
本研究より牛と羊のRNase P遺伝子はヒトと同様、1細胞あたり2コピー存在し、それらが内部標準遺伝子として使用可能であることが示された。さらに、BLVプロウイルスとRNase P遺伝子の同時定量を行うDuplex系の作製を試みたところ、その検出感度はそれぞれSimplex系と相違ないこと、また、そのCVはIntra assay < 5 %、Inter assay < 10 %の範囲内にあり再現性も高いことが示された。今後は、BLVプロウイルス遺伝子の検出に内部標準としてRNase Pを用いることで、より正確な定量が可能となり、BLV感染牛の清浄化に大きく貢献することが期待される。
【配列表フリーテキスト】
【0059】
配列番号:1 Bos taurus RPPH1 seq1
配列番号:2 Bos taurus RPPH1 seq2
配列番号:3 Ovis aries RPPH1 seq
配列番号:4 Felis catus RPPH1 seq
配列番号:5 Homo sapiens RPPH1 (NR_002312.1)
配列番号:6 Bos taurus RPPH1 (NC 007308.5)
配列番号:7
配列番号:8 Reverse primer (BOS RPPH1-R)
配列番号:9 Forward primer (Ov_RPPH1_F)
配列番号:10 Reverse primer (Ov_RPPH1_R)
配列番号:11 probe (BOS RPPH1-54T)
配列番号:12 probe (Ov_RPPH1-S7T)
配列番号:13 BLV tax gene
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]