(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562676
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】大麦入り発酵乳
(51)【国際特許分類】
A23C 9/13 20060101AFI20190808BHJP
A23C 9/133 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
A23C9/13
A23C9/133
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-66039(P2015-66039)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185080(P2016-185080A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年1月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 加織
(72)【発明者】
【氏名】角藤 雅子
【審査官】
松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】
CHINTAI情報局[online],ヘルシー&高栄養! いま話題のミューズリーを作ってみた,公開日:2015年1月22日, [検索日:2018年9月28日],<https://www.chintai.net/news/2015/01/22/3095/>
【文献】
Mintel GNPD [online], ID# 2804571, Organic Muesli Yogurt, 公開日:2014年11月, [検索日:2018年10月5日]
【文献】
山田玲子さん直伝/ヨーグルトをもっと食べるレシピ3チアシードともち麦のヨーグルトプディング[online], 公開日:2014年6月27日, [検索日:2018年10月12日],<https://ourage.jp/column/healthy_gohan/13699/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 9/13
A23C 9/133
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
AGRICOLA(STN)
BIOSIS(STN)
BIOTECHNO(STN)
CAplus(STN)
FSTA(STN)
SCISEARCH(STN)
TOXCENTER(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦を1.5重量%以上2.0重量%以下配合した発酵乳であって、大麦として、もち麦を発酵乳に対して1.0重量%以上含むことを特徴とする発酵乳。
【請求項2】
さらにナッツ類を0.2重量%以上0.6重量%以下配合した請求項1に記載の発酵乳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦を添加した発酵乳に関する。また、大麦のほかにナッツを添加した発酵乳に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、健康への意識の高まりから、おいしさや栄養補給と同時に健康機能も期待できるヨーグルト(発酵乳)などが広く普及している。健康機能目的としては、プロバイオテイクス入りのものなどに整腸作用、免疫賦活作用、メタボリックシンドロームの改善作用等の幅広い効果が期待されている。
また、おいしさや栄養補給目的として、デザート形態のフルーツ果肉やフルーツソース入りのヨーグルト、美容とダイエット効果のある朝食やおやつとして食物繊維を含むヨーグルトなども知られている(特許文献1,2)。
しかし、ヨーグルトは食品であるため、腹持ちのよさや良好な風味や食感も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-158311号公報
【特許文献2】特開2003-274852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、発酵乳本来の健康増進効果や栄養価のほかに、食品の嗜好性にも重点をおいた、良好な風味や食感を有し、食べごたえがあり、満足感の得られるバランスのよい発酵乳の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、発酵乳に添加する成分として、麦に着目し、多数の種類の麦から、大麦を選択することで、もちもちとした食感が良い発酵乳を提供することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。大麦の中でもさらには押麦、もち麦により効果があり、更にナッツと組み合わせる事で、もちもち感に加えてカリカリ感をプラスし噛んだ時の食感をさらに高め、ナッツの香ばしさにより風味も向上させ、全体としての満足感を高めることができることをも見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)大麦を配合したことを特徴とする発酵乳。
(2)大麦が、もち麦及び/又は押麦である(1)に記載の発酵乳。
(3)さらに、ナッツ類を含む(1)または(2)に記載の発酵乳。
(4)さらに、オーツ麦を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の発酵乳。
(5)大麦を1.0〜2.0重量%、ナッツ類を0.1〜0.5重量%含む(3)または(4)に記載の発酵乳。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発酵乳に大麦を添加することで、他のシリアルに比べて歯ごたえ、もちもち感、これらに風味を加味した全体の食感、および腹持ちの良いヨーグルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、「発酵乳」とは、牛乳等の獣乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母のうちいずれか一つまたはこれらの組み合わせにより発酵させたものである。発酵乳を性状と製法により分類すると1)静置型発酵乳、2)攪拌型発酵乳、3)液状発酵乳に分けられる。この1)静置型発酵乳は、ハードタイプの発酵乳と称され、小売容器に充填して発酵させたプリン状の組織を有するものであり、例えば以下のように製造される。まず、乳、乳製品、ショ糖、安定剤等の原材料を混合・溶解して調製した発酵ミックスを均質化、殺菌、冷却した後、乳酸菌スターターを接種し、容器に充填して密封してから培養室や発酵トンネル内で発酵させ、適度な酸度になった時点で直ちに5℃に冷却して発酵を終了させ、最終製品とする。2)攪拌型発酵乳は、ソフトタイプの発酵乳とも称され、発酵ミックスに乳酸菌スターターを添加し、タンクで発酵させ発酵ベースを作る。発酵後、カードを破砕して容器に充填して、必要に応じフルーツソース等を混合して最終製品とする。3)液状発酵乳は発酵ミックスを攪拌型発酵乳と同様の方法で発酵させ、カードを破砕後に均質化して液状にした発酵乳を必要に応じフルーツソース等を混合して最終製品とする。本発明においては、上記のものを総称して発酵乳と称する。
【0008】
本発明において、発酵乳の原料となる乳および乳製品は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)の「乳」および「乳製品」に該当するものである。すなわち、「乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳をいい、「乳製品」とは、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%以上を含むものに限る。)及び乳飲料をいう。
【0009】
本発明において発酵乳を製造するために用いる発酵ミックスは、乳酸菌を添加して発酵させるための乳成分を含む原料混合物を意味し、従来知られているいずれの方法でも調製できるが、例えば、無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調整した調整乳を冷却し、乳糖分解酵素により処理して加熱均質化し、殺菌して酵素を失活して冷却して調製することが好ましい。または、乳糖分解粉乳や乳糖除去粉乳などの乳糖を低減した乳原料を使用し、無脂乳固形分(SNF)と乳脂肪分(Fat)を調製した調整乳を冷却し、加熱均質化し、殺菌・冷却して調製することも可能である。
【0010】
本発明では、発酵ミックス調製後の工程は一般的な発酵乳の製造方法に準じる。すなわち、以下の方法によって発酵乳を製造する。発酵ミックスをホモミキサー等で適宜混合した後、均質圧0〜500kg/cm
2で均質処理する。次いで、均質化した発酵ミックスを殺菌する。殺菌は、プレート式熱交換機、チューブラー式殺菌機、ジャケット付タンク等を用いることができ、70〜140℃で、1秒〜30分間行えばよく、好ましくは90〜95℃で1分〜10分間行うとよい。その後、プレート式熱交換機、チューブラー式冷却機、ジャケット式タンク等を用いて、40〜50℃に冷却する。冷却した発酵ミックスにスターターとして乳酸菌を添加して発酵させる。スターターとしては、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ストレプトコカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)等、発酵乳の製造に通常用いられている乳酸菌スターターであれば特に制限されることはない。これらの乳酸菌スターターを1〜8重量%添加し、用いる乳酸菌の生育に好適な温度(32〜43℃前後)にて保持し、1〜24時間程度、好ましくは2〜5時間程度発酵させる。このまま静置型発酵乳とすることが出来る。
上記の工程の発酵が終了した後に、必要に応じて、発酵ベースを破砕して容器に充填して、攪拌型発酵乳とする。破砕方法としては、均質機、撹拌、目皿などを使用して組織を微細化する方法を用いることができる。
【0011】
本発明では、大麦をヨーグルトに添加することを特徴とする。
大麦とは、中央アジア原産のイネ科の植物で、学名をHordeum vulgareといい、二条大麦と六条大麦、皮麦とはだか麦、うるち種ともち種に分類される。
押麦とは、うるち種の大麦を精麦して、蒸気で加熱しやわらかくしたところをローラーで平たくしたものをいう。このように平たい形に加工することで、水分の吸収性が高まる。
もち麦とは、もち種の大麦を精麦したもので、押し麦のように「押す」工程はなく、もちもちの食感を有するものをいう。
本発明では、大麦のうちでも押麦またはもち麦が好ましく用いられる。
【0012】
本発明の発酵乳は、大麦のほかに、さらにナッツ類を添加したものが好ましい。ナッツとしては、アーモンド、カシューナッツ、ペカン(ピーカン)、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、松の実、ヒマワリの種、カボチャの種、スイカの種、シイ、クルミ、クリ、銀杏、ゴマ、ブラジルナッツ、ピーナッツ、けし等が挙げられる。
ナッツの粒径や、前処理(加工)は、発酵乳とともに食したときの食感を良くするものであればよく、1.5〜5mmに粉砕したものが好ましく、また、あらかじめローストすることで香ばしさがまし、好ましい。
【0013】
本発明の発酵乳は、大麦およびナッツを特定範囲の配合とすることでよりいっそう食感の良い発酵乳を得ることができる。大麦を0.5〜3.0重量%、かつ、ナッツを0.1〜0.7重量%含む発酵乳が良く、さらには、大麦を1.0〜2.0重量%、かつ、ナッツを0.1〜0.6重量%含む発酵乳が良い。
【0014】
本発明の発酵乳は、その他に食感や風味をさらに良くするために、各種の食品を添加することができる。例えば、オーツ麦などの他の麦、フルーツ果肉やフルーツソースが挙げられる。
【実施例】
【0015】
[実施例1]発酵乳への大麦添加効果の確認試験
1.本発明の発酵乳の調整方法
表1に示す成分のうち、スターター以外について各成分を混合し、加熱殺菌し、39℃くらいまで冷却して発酵ミックスを得た。発酵ミックスにスターターとなる乳酸菌を添加し、39℃付近で発酵させ、発酵ミックスのpHが4.85になったところで5℃まで冷却し、発酵ベースを得た。
次に、表2に示す配合比となるようにフルーツソースを調整し、発酵乳ベースを攪拌して微細化し、発酵乳:フルーツソース=4:1となるように混合した。
該混合物に大麦及び/又はオーツ麦を更に添加・混合することで、混合後の大麦及び/又はオーツ麦の含有量が表3に示す含有量である、本発明の発酵乳を得た。
2.試験結果
本発明の発酵乳を訓練された10名の社内パネラーが試食し、官能評価を行った。
評価は、歯ごたえ、もちもち感、全体の食感、腹持ちについて行い、総合評価をした。各評価基準を下記に、評価した結果を表3に示す。
本結果より、大麦であるもち麦または押麦を添加した発酵乳では、オーツ麦を添加したものに比べて、歯ごたえ、もちもち感、全体の食感、腹持ちのいずれも良い評価が得られた。また、オーツ麦単独添加では良い評価は得られなかったものの、もち麦や押麦とともに添加することでオーツ麦を添加した発酵乳も良い評価が得られた。また、大麦同士であるもち麦と押麦を両方添加したものがもっとも評価が良かった。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
大麦(もち麦、押し麦) 株式会社はくばく [前処理条件]90℃10分煮込み
ローストアーモンド 正栄食品工業株式会社 [前処理条件]特になし
【0019】
<歯ごたえに関する評価基準>
物を噛んだ時に感じる、歯に対する抵抗の好ましさについて「好ましい」か「好ましくない」を判断し、パネラー10名のうち、回答した内容および人数について以下のように評価した。
◎:好ましいと回答した者が5名以上いた
○:好ましいと回答した者が3名以上5名未満いた
△:好ましいと回答した者が1名以上3名未満いた
×:好ましいと回答した者がいなかった
<もちもち感に関する評価基準>
物を噛んだときに感じるもちの様な適度な弾力の好ましさについて「好ましい」か「好ましくない」を判断し、パネラー10名のうち、回答した内容および人数について以下のように評価した。
◎:好ましいと回答した者が5名以上いた
○:好ましいと回答した者が3名以上5名未満いた
△:好ましいと回答した者が1名以上3名未満いた
×:好ましいと回答した者がいなかった
<全体の食感に関する評価基準>
歯ごたえ、もちもち感、風味の組合わせのバランスの良さについて「好ましい」か「好ましくない」を判断し、パネラー10名のうち、回答した内容および人数について以下のように評価した。
◎:好ましいと回答した者が5名以上いた
○:好ましいと回答した者が3名以上5名未満いた
△:好ましいと回答した者が1名以上3名未満いた
×:好ましいと回答した者がいなかった
<腹持ちに関する評価基準>
物を食べた後の充足感の持続度合いについて「好ましい」か「好ましくない」を判断し、パネラー10名のうち、回答した内容および人数について以下のように評価した。
◎:好ましいと回答した者が5名以上いた
○:好ましいと回答した者が3名以上5名未満いた
△:好ましいと回答した者が1名以上3名未満いた
×:好ましいと回答した者がいなかった
<総合評価基準>
前記4種類の評価について以下のように評価した。
◎:すべて○以上で、◎が1以上ある
○:すべて△以上で、○が1以上ある
△:すべて△
×:×が1以上ある
【0020】
[実施例2]大麦とナッツの添加有無及び配合割合に関する効果確認試験
1.本発明の発酵乳の調整方法
実施例1と同様に発酵乳ベースとフルーツベースを4:1の割合で混合した、混合物を得た。
該混合物に大麦及び/又はナッツを更に添加・混合することで、混合後の大麦及び/又はオーツ麦の含有量が表4に示す含有量である、本発明の発酵乳を得た。表4の単位%は重量%を示す。
2.試験結果
評価は実施例1と同様に行い、総合評価の結果を表4に示す。
本結果によれば、発酵乳に大麦に加えてナッツを配合する事により、評価の高い発酵乳となる事が分かった。更に、大麦を0.5〜3.0重量%、かつ、ナッツを0.1〜0.7重量%含む発酵乳の評価が良く、さらには、大麦を1.0〜2.0重量%、かつ、ナッツを0.1〜0.6重量%含む発酵乳がさらに評価が良いことがわかった。
【0021】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、発酵乳に大麦を添加することで、他のシリアルに比べて歯ごたえ、もちもち感、これらに風味を加味した全体の食感、および腹持ちの良いヨーグルトを提供することができる。