特許第6562725号(P6562725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562725
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20190808BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20190808BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
   B24B49/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-117822(P2015-117822)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-5119(P2017-5119A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 諭
(72)【発明者】
【氏名】陸 ▲听▼
(72)【発明者】
【氏名】久保 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】リョウ シンウェイ
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−240776(JP,A)
【文献】 特開2013−146831(JP,A)
【文献】 特開2007−296604(JP,A)
【文献】 特開2011−249571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物を保持面と直交する方向から撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備える切削装置であって、
該撮像手段は、
切削ブレードで被加工物の一部を切削して形成した一端が行き止まりの検出用溝の、切削ブレードの外周形状が現れた該一端を撮像して撮像画像を取得し、
該画像処理手段は、
該撮像画像の該検出用溝の一端を含む少なくとも一部の画像の長さが該切削ブレードの外周がなす円の接線方向から見た長さになるように、該少なくとも一部の画像の長さを縮小し、切削ブレードの外周形状に近似する画像を形成し、
該画像を表示する表示手段を備えることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該画像処理手段は、
該撮像画像を該検出用溝の長手方向に複数の分割画像に分割し、該分割画像の該検出用溝の該長手方向の長さが該切削ブレードの接線方向から見た長さになるように、該分割画像の該長手方向の長さを縮小して、該切削ブレードの外周形状に近似する該画像を形成することを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該画像処理手段は、該画像と、良品の切削ブレードの断面形状の画像とをパターンマッチングし、相関値が所定値を下回る場合、報知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
該画像処理手段は、
該切削ブレードの半径をRとし、
該切削ブレードの切り込み深さをdとし、
該検出用溝の一端を含む該分割画像の該検出用溝の該接線方向からみた時の最大の深さをαとし、
該分割画像の該検出用溝の該長手方向の長さLを、
L=((R−(R−d)1/2−((R−α)−(R−d)1/2
を用いて算出するとともに、
各分割画像の該検出用溝の該長手方向の長さLを算出する際には、
該検出用溝の一端を含む該分割画像から各分割画像がn番目の時、R=R−n×αとして算出し、
各分割画像の該長手方向の長さLが、αとなるように、各分割画像の画素を除去して、該分割画像の該長手方向の長さを縮小して、該切削ブレードの外周形状に近似する該画像を形成することを特徴とする請求項2に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハの分割や溝形成に使用される切削ブレードは、切削によって摩耗し、摩耗による自生発刃で切れ味を維持する。切削ブレードの摩耗は、その先端形状を維持しつつ直径が短くなるのが理想的である。しかし、切削ブレードは、加工条件が適していない場合や、局所的に切削ブレードに負荷がかかる加工を行うと、先端形状が左右均等に磨耗しない。又は、切削ブレードは、左右均等に磨耗したとしても先端に刃厚の1/2以下の曲面が形成されて先端が先細る、所謂偏磨耗と呼ばれる現象が発生することがある。
【0003】
こうした状況が続くと、切削ブレードは、破損が発生したり、切削溝の片側に偏ったチッピング(欠け)を多く発生させたり、所望の溝の形状が得られないといった問題が発生する。そこで、被加工物の切削加工の途中でも切削ブレードの先端形状を検出できる方法が、考案された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−41878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された方法は、切削溝の一端を上方から撮像した画像を用いるので、撮影した切削溝の長さが切削ブレードの断面形状と比較すると非常に長い。このために、特許文献1に示された方法は、切削ブレードの外周の断面形状を端的に捕らえにくく、切削ブレードの外周の断面形状を把握しにくいという課題が残されていた。
【0006】
本発明は、上記問題にかんがみてなされたもので、その目的は、切削ブレードの外周の断面形状を把握しやすくすることができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物を保持面と直交する方向から撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備える切削装置であって、該撮像手段は、切削ブレードで被加工物の一部を切削して形成した一端が行き止まりの検出用溝の、切削ブレードの外周形状が現れた該一端を撮像して撮像画像を取得し、該画像処理手段は、該撮像画像の該検出用溝の一端を含む少なくとも一部の画像の長さが該切削ブレードの外周がなす円の接線方向から見た長さになるように、該少なくとも一部の画像の長さを縮小し、切削ブレードの外周形状に近似する画像を形成し、該画像を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記切削装置では、該画像処理手段は、該撮像画像を該検出用溝の長手方向に複数の分割画像に分割し、該分割画像の該検出用溝の該長手方向の長さが該切削ブレードの接線方向から見た長さになるように、該分割画像の該長手方向の長さを縮小して、該切削ブレードの外周形状に近似する該画像を形成するものとすることができる。
上記切削装置では、該画像処理手段は、該画像と、良品の切削ブレードの断面形状の画像とをパターンマッチングし、相関値が所定値を下回る場合、報知することを特徴とするものとすることができる。
上記切削装置では、該画像処理手段は、該切削ブレードの半径をRとし、該切削ブレードの切り込み深さをdとし、該検出用溝の一端を含む該分割画像の該検出用溝の該接線方向からみた時の最大の深さをαとし、該分割画像の該検出用溝の該長手方向の長さLを、L=((R−(R−d)1/2−((R−α)−(R−d)1/2を用いて算出するとともに、各分割画像の該検出用溝の該長手方向の長さLを算出する際には、該検出用溝の一端を含む該分割画像から各分割画像がn番目の時、R=R−n×αとして算出し、各分割画像の該長手方向の長さLが、αとなるように、各分割画像の画素を除去して、該分割画像の該長手方向の長さを縮小して、該切削ブレードの外周形状に近似する該画像を形成するものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本願の切削装置は、撮像画像の検出用溝の一端を含む少なくとも一部の画像を、切削ブレードの接線方向から見た長さに縮小するので、切削ブレードの外周の断面形状を把握しやすくことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2A図2Aは、図1に示す切削装置の正常に摩耗した切削ブレードの外周の断面図である。
図2B図2Bは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の一例の断面図である。
図2C図2Cは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の他の例の断面図である。
図2D図2Dは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の更に他の例の断面図である。
図2E図2Eは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の更に別の他の例の断面図である。
図3図3は、実施形態に係る切削装置の切削ブレードの外周の摩耗状況を把握する方法の一例のフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係る切削装置の切削手段が検出用溝を形成する状態を模式的に示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係る切削装置の切削手段により検出用溝を形成された被加工物を示す斜視図である。
図6図6は、図5中のVI部を拡大して示す平面図である。
図7図7は、図6に示された検出用溝を撮像して得た撮像画像を示す図である。
図8図8は、図7に示された撮像画像の長さを縮小して表示手段に表示された画像を示す図である。
図9図9は、図6に示す検出用溝を形成した切削ブレードの外周の断面図である。
図10図10は、図6に示す検出用溝のストリートの平行な方向の縦断面を示す図である。
図11図11は、実施形態の変形例1に係る切削装置の撮像手段が撮像して得た撮像画像を示す図である。
図12図12は、図11に示された撮像画像の分割画像の長さを縮小して表示手段に表示された画像を示す図である。
図13図13は、実施形態の変形例2に係る切削装置の切削手段が検出用溝を形成する状態を模式的に示す断面図である。
図14図14は、実施形態の変形例3に係る切削装置の切削手段が形成した検出用溝のストリートの平行な方向の縦断面を示す図である。
図15図15は、実施例の被加工物に形成した検出用溝の一端を撮像して得た撮像画像である。
図16図16は、図15に示す撮像画像を縮小して得た画像である。
図17図17は、図15に示す検出用溝の断面形状である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る切削装置を図面に基いて説明する。図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。図2Aは、図1に示す切削装置の正常に摩耗した切削ブレードの外周の断面図である。図2Bは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の一例の断面図である。図2Cは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の他の例の断面図である。図2Dは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の更に他の例の断面図である。図2Eは、図1に示す切削装置の異常に摩耗した切削ブレードの外周の更に別の他の例の断面図である。
【0013】
実施形態に係る図1に示された切削装置1は、被加工物Wを切削して、被加工物Wを個々のデバイスDに分割する装置である。なお、切削装置1により個々のデバイスDに分割される被加工物Wは、本実施形態では、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とし、円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物Wは、図1に示すように、上面Waに格子状に形成されたストリートSで区画された各領域にデバイスDが形成されている。被加工物Wは、デバイスDが形成されたデバイス領域DRと、デバイス領域DRを囲繞しデバイスDが形成されていない外周余剰領域GRとを備える。被加工物Wは、上面Waの裏側の裏面にダイシングテープTが貼着され、ダイシングテープTに環状フレームFが貼着されて、ダイシングテープTを介して環状フレームFに貼着される。被加工物Wは、切削装置1によりストリートSに沿って切削されて個々のデバイスDに分割される。
【0014】
切削装置1は、図1に示すように、被加工物Wを保持面10aで保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを切削ブレード21で切削する切削手段20と、チャックテーブル10と切削手段20とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段(図示せず)と、チャックテーブル10と切削手段20とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段40と、チャックテーブル10と切削手段20とを相対的に鉛直方向(Z軸方向)に移動するZ軸移動手段50と、チャックテーブル10をZ軸と平行な軸心回りに回転させる回転駆動源(図示せず)と、撮像手段30と、制御手段100等を備えている。
【0015】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物Wを複数収容するカセットエレベータ60と、カセットエレベータ60に被加工物Wを出し入れする図示しない搬出入手段と、切削後の被加工物Wを洗浄する洗浄手段70と、搬出入手段とチャックテーブル10と洗浄手段70とに亘って被加工物Wを搬送する図示しない搬送手段と、を備えている。
【0016】
チャックテーブル10は、装置本体2上に設置され、切削加工前の被加工物Wが保持面10a上に載置されて、ダイシングテープTを介して環状フレームFの開口に貼着された被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル10は、保持面10aを構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面10aに載置された被加工物Wを吸引することで保持する。なお、チャックテーブル10は、X軸移動手段によりX軸方向に移動自在に設けられたテーブル移動基台(図示しない)上に設置された回転駆動源により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転自在に設けられている。また、チャックテーブル10の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動して被加工物Wの周囲の環状フレームFを挟持するクランプ部12が複数設けられている。
【0017】
切削手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを切削する切削ブレード21を装着したスピンドルを有するものである。切削手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wに対して、Y軸移動手段40によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動手段50によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0018】
切削手段20は、図1に示すように、Y軸移動手段40、Z軸移動手段50などを介して、装置本体2から立設した柱部3に設けられている。切削手段20は、Y軸移動手段40及びZ軸移動手段50により、チャックテーブル10の表面の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0019】
また、切削手段20は、被加工物Wの上面Waを撮像する撮像手段30が一体的に移動するように固定されている。撮像手段30は、チャックテーブル10に保持された分割加工前の被加工物Wの分割すべき領域を撮像するCCDカメラを備えている。CCDカメラは、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを撮像して、被加工物Wと切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得、得た画像を制御手段100に出力する。CCDカメラ即ち撮像手段30は、保持面10aとZ軸方向と平行に対向し、チャックテーブル10に保持された被加工物Wの上面Waを保持面10aと直交する方向である上方から撮像する。
【0020】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドルは、切削ブレード21を回転させることで被加工物Wを切削する。スピンドルは、スピンドルハウジング23内に収容され、スピンドルハウジング23は、Z軸移動手段50に支持されている。切削手段20のスピンドル及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0021】
X軸移動手段は、チャックテーブル10をX軸方向に移動させることで、被加工物Wに対する加工送りを実現するものである。Y軸移動手段40は、切削手段20をY軸方向に移動させることで、被加工物Wに対する割り出し送りを実現するものである。Z軸移動手段50は、切削手段20をZ軸方向に移動させることで、被加工物Wに対する切り込み深さの制御を実現するものである。
【0022】
制御手段100は、切削装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物Wに対する加工動作を切削装置1に行わせるものである。なお、制御手段100は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態や前記画像などを表示する表示手段101や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力手段102と接続されている。
【0023】
また、制御手段100は、撮像手段30で撮像した画像を処理する画像処理手段である。制御手段100は、各被加工物Wを切削する際に、被加工物Wに一端が行き止まりの検出用溝DD(図5及び図6に示す)を形成する。制御手段100は、検出用溝DDの一端DDaを撮像手段30に撮像させ、撮像して得た検出用溝DDの撮像画像SG(図7に示す)の長さを検出用溝DDの一端DDaを形成する切削ブレード21の外周が成す円の接線方向TD(図10に示す)からみた長さに縮小し、切削ブレード21の外周形状に近似する画像KG(図12に示す)を表示手段101に表示する。
【0024】
次に、実施形態に係る切削装置1の加工動作について説明する。加工動作では、オペレータが加工内容情報を制御手段100に登録し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1が加工動作を開始する。なお、加工内容情報は、一端DDaが行き止まりの検出用溝DDを形成する際の被加工物Wの上面Waからの切削ブレード21の切り込み深さd(図10に示す)と、切削ブレード21の半径R(図10に示す)と、検出用溝DDを形成する際のX軸移動手段によるチャックテーブル10の移動量を含む。まず、オペレータが切削加工前の被加工物Wをカセットエレベータ60内に収容し、オペレータから加工動作の開始指示があると、制御手段100が、カセットエレベータ60から切削加工前の被加工物Wを取り出し、取り出した被加工物Wをチャックテーブル10の保持面10aに被加工物Wを吸引保持し、クランプ部12で環状フレームFを挟持する。
【0025】
次に、制御手段100は、X軸移動手段によりチャックテーブル10を切削手段20の下方に向かって移動して、切削手段20に固定された撮像手段30の下方にチャックテーブル10に保持された被加工物Wを位置付け、撮像手段30に撮像させる。撮像手段30は、撮像した画像の情報を制御手段100に出力する。そして、制御手段100が、チャックテーブル10に保持された被加工物WのストリートSと、切削手段20の切削ブレード21との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、チャックテーブル10に保持された被加工物Wと切削手段20との相対位置を調整する。
【0026】
そして、制御手段100は、加工内容情報に基づいて、X軸移動手段とY軸移動手段40とZ軸移動手段50と回転駆動源により、切削ブレード21と被加工物WとをストリートSに沿って相対的に移動させて、切削ブレード21によりストリートSを切削する。
【0027】
制御手段100は、すべてのストリートSを切削して、被加工物Wを個々のデバイスDに分割すると、チャックテーブル10を切削手段20の下方から退避させた後、チャックテーブル10の吸引保持及びクランプ部12の挟持を解除する。そして、制御手段100が、切削加工済みの被加工物Wを洗浄手段70に搬送し、洗浄手段70で洗浄した後、カセットエレベータ60内に収容する。制御手段100は、切削前の被加工物Wを再度、チャックテーブル10上に載置し、前述の工程を繰り返して、被加工物Wを個々のデバイスDに分割する。
【0028】
また、制御手段100は、各被加工物Wを切削する際に、一端DDaが行き止まりの検出用溝DDを形成し、検出用溝DDの撮像画像SGを接線方向TDからみた画像KGに縮小して、切削ブレード21の外周の形状(摩耗状況)を把握する把握方法を実行する。図3は、実施形態に係る切削装置の切削ブレードの外周の摩耗状況を把握する方法の一例のフローチャートである。図4は、実施形態に係る切削装置の切削手段が検出用溝を形成する状態を模式的に示す断面図である。図5は、実施形態に係る切削装置の切削手段により検出用溝を形成された被加工物を示す斜視図である。図6は、図5中のVI部を拡大して示す平面図である。図7は、図6に示された検出用溝を撮像して得た撮像画像を示す図である。図8は、図7に示された撮像画像の長さを縮小して表示手段に表示された画像を示す図である。図9は、図6に示す検出用溝を形成した切削ブレードの外周の断面図である。図10は、図6に示す検出用溝のストリートの平行な方向の縦断面を示す図である。
【0029】
実施形態に係る切削装置1の制御手段100は、各被加工物Wを切削する際、図3に示すフローチャートを実行する。制御手段100は、切削ブレード21をダイシングテープTの厚み方向の中央まで切り込ませて、外周余剰領域GRとデバイス領域DRとに亘って、各ストリートSの全長に亘って被加工物Wを切削する(ステップST1)。制御手段100は、各ストリートSの全長に亘って被加工物Wを切削した後、複数のストリートSのうち所定のストリートSを切削したか否かを判定する(ステップST2)。制御手段100は、所定のストリートSを切削したと判定する(ステップST2:Yes)と、被加工物Wの一部に検出用溝DDを形成する(ステップST3)。なお、所定のストリートSは、複数のストリートSのうち加工開始から数本目のものを用いることができる。
【0030】
制御手段100は、所定のストリートSの次に切削するストリートSの外周余剰領域GRに検出用溝DDを形成する。具体的には、制御手段100は、図4に点線で示すように、X軸移動手段とY軸移動手段40を制御して、スピンドルにより回転された切削ブレード21を被加工物Wの外周側に位置させ、Z軸移動手段50を制御して、被加工物Wに切り込み深さd分切り込む高さに切削ブレード21を位置付ける。
【0031】
制御手段100は、X軸移動手段を制御して、チャックテーブル10を切削ブレード21にストリートSに沿って近づけて、外周余剰領域GRに切り込ませて、チャックテーブル10を入力手段102から入力された移動量移動させる。そして、制御手段100は、Z軸移動手段50を制御して、切削ブレード21を上昇させる。切削装置1の制御手段100は、図5及び図6に示すように、切削ブレード21で被加工物Wの一部である外周余剰領域GRを切削して、デバイス領域DR側の一端DDaが行き止まりの検出用溝DDを形成する。なお、検出用溝DDの一端DDaは、被加工物Wを切り込んだ切削ブレード21がZ軸方向に上昇されて形成されているので、デバイス領域DRに近付くのにしたがって徐々に上面Waに近付くように行き止まりに形成されている。このために、検出用溝DDの一端DDaは、切削ブレード21の外周形状が現れることとなる。即ち、検出用溝DDの一端DDaの形状は、切削ブレード21の外周の形状と等しくなる。
【0032】
制御手段100は、X軸移動手段とY軸移動手段40とを制御して、検出用溝DDの一端DDaを撮像手段30の下方に位置付ける。撮像手段30は、外周余剰領域GRを切削して形成した一端DDaが行き止まりの検出用溝DDの一端DDaを撮像して、図7に示す撮像画像SGを取得する(ステップST4)。
【0033】
制御手段100は、撮像画像SGの検出用溝DDの一端DDaを含む少なくとも一部の画像の長さが、切削ブレード21の外周が成す円の接線方向TDから見た長さになるように、少なくとも一部の画像の長さを縮小し、切削ブレード21の外周形状に近似する画像KGを形成する(ステップST5)。具体的には、制御手段100は、図7に示すように、撮像画像SGを検出用溝DDの長手方向を分割する。実施形態では、制御手段100は、検出用溝DDの一端DDaから以下の式1で求めることができる長さL毎に撮像画像SGを複数の分割画像BGに分割する。制御手段100は、以下の式1を予め記憶している。制御手段100は、値α1(式1中にはαで示す)に対応した式1で求めることができる検出用溝DDの一端DDaを含む分割画像BG(以下、符号BG2で示す)の長さL1(式1中にはLで示す)を求める。ただし、値α1を例えば1μmとし、Rを切削ブレード21の半径とし、dを検出用溝DDの切り込み深さとする。なお、分割画像BG2は、検出用溝DDの一端DDaを含む一部の画像に相当する。
【0034】
【数1】
【0035】
制御手段100は、分割画像BG2の長さL(L1)が値α1となるように、分割画像BG2を構成する画素の一部を除去する。このとき、制御手段100は、長さL(L1)と値α1との長さの違いに応じた間隔毎に等間隔に画素を除去する。
【0036】
次に、制御手段100は、値α2(式1中にはαで示す)に対応する、分割画像BG2の隣の分割画像BG(以下、符号BG3で示す)の長さL(L2)を、値α2を例えば1μmとし、dを検出用溝DDの切り込み深さとし、RをR−α1として、式1を用いて、求める。制御手段100は、分割画像BG3の長さL(L2)が値α2となるように、分割画像BG3を構成する画素の一部を除去する。さらに、制御手段100は、値α3(式1中にはαで示す)に対応する、分割画像BG3の隣で被加工物Wの外周側の分割画像BG(以下、符号BG4で示す)の長さL(L3)を、値α3を例えば1μmとし、dを検出用溝DDの切り込み深さとし、RをR−(α1+α2)として、式1を用いて、求める。制御手段100は、分割画像BG4の長さL(L3)が値α3となるように、分割画像BG3を構成する画素の一部を除去する。
【0037】
こうして、制御手段100は、各値α1,α2,α3,・・・,αNに対応した分割画像BG2,BG3,BG4・・・,BGNの長さL1,L2,L3,・・・,LNを求め、撮像画像SGを分割画像BG1,BG2,BG3,・・・,BGNに分割する。制御手段100は、全ての分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNの画素の一部を除去して、長さを値α1,α2,α3,・・・,αNに縮小する。そして、制御手段100は、縮小した分割画像BG1,BG2,BG3,BG4,・・・,BGNを合わせて、図8に示すように、撮像画像SGの長さを縮小して、切削ブレード21の外周形状に近似する画像KGを形成し、形成した画像KGを表示手段101に表示する。なお、図8に示す画像KGにおける検出用溝DDの形状は、図9に示す検出用溝DDを形成した切削ブレード21の外周の断面形状と略等しい。
【0038】
そして、制御手段100は、所定のストリートSを切削していないと判定した後(ステップST2:No)、又は、画像KGを表示手段101に表示した後、全てのストリートSを切削したか否かを判定(ステップST6)し、全てのストリートSを切削していないと判定(ステップST6:No)すると、ステップST1に戻る。制御手段100は、全てのストリートSを切削したと判定(ステップST6:Yes)すると、図3に示すフローチャートを終了する。
【0039】
次に、前述した式1について説明する。図10に示すように、撮像手段30は、被加工物Wの上面Waに直交する上方から検出用溝DDの一端DDaを撮像する。図10において、検出用溝DDの一端DDaを形成したときの切削ブレード21の中心をAとし、中心AからZ軸方向に延びて被加工物Wの上面Waに交わる点をBとし、検出用溝DDの一端DDaをC0とすると、三角形ABC0の辺BC0の長さは、以下の式2で示すことができる。
【0040】
【数2】
【0041】
図10において、分割画像BG2の検出用溝DDの一端DDaから離れた側の端をC1とし、分割画像BG2の検出用溝DDの一端DDaから離れた側の端C1における切削ブレード21の径方向の検出用溝DDの深さをα1(式3中にはαで示す)とすると、三角形ABC1の辺BC1の長さは、以下の式3で示すことができる。
【0042】
【数3】
【0043】
そして、図10において、制御手段100は、分割画像BG2の検出用溝DDの長手方向の長さをL1(式1中にはLで示す)とすると、式2及び式3から式1を得ることができる。制御手段100は、検出用溝DDの深さである値α1を1μmとし、切削ブレード21の半径R及び検出用溝DDの切り込み深さdが予め定められているので、分割画像BG2の検出用溝DDの長手方向の長さL1を求めることができる。そして、制御手段100は、式1において、値α2を1μmとし、RをR−α1とすることで分割画像BG3の検出用溝DDの長手方向の長さL2を求めることができ、値α3を1μmとし、RをR−(α1+α2)とすることで分割画像BG4の検出用溝DDの長手方向の長さL3を求めることができる。制御手段100は、同様に、全ての分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNの長さL1,L2,L3,・・・,LNを求めることができる。撮像画像SGの分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNの長さL1,L2,L3,・・・,LNを値α1,α2,α3,・・・,αNに縮小することで、各分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNの検出用溝DDの長さが切削ブレード21の外周が成す円の接線方向TDから見た長さになるように、各分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNの長さを縮小する。制御手段100は、縮小した分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNを合わせることで、撮像画像SGの検出用溝DDの長さが検出用溝DDの一端DDaにおける切削ブレード21の外周が成す円の接線方向TDから見た長さになるように、撮像画像SGの長さを縮小することとなる。このために、切削ブレード21の外周形状に近似する画像KGは、検出用溝DDの一端DDaにおける切削ブレード21の接線方向TD上に配置された撮像手段30(図10中に点線で示す)から検出用溝DDの一端DDaを撮像して得た画像に近似することとなる。
【0044】
以上のように、実施形態に係る切削装置1によれば、検出用溝DDの一端DDaを撮像して得た撮像画像SGを、切削ブレード21の接線方向TDから見た長さになるように縮小して、切削ブレード21の外周形状に近似する画像KGを形成する。このために、切削装置1は、表示手段101に表示された近似する画像KGを視認することで、切削ブレード21の外周の断面形状を把握しやすくなる。したがって、切削装置1は、切削ブレード21の交換時期やドレッシング時期を把握することができる。
【0045】
また、実施形態に係る切削装置1によれは、値α1,α2,α3,・・・,αN及び式1に基づいて、撮像画像SGを複数の分割画像BG1,BG2,BG3,BG4,・・・,BGNに分割し、各分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNの長さL1,L2,L3,・・・,LNを値α1,α2,α3,・・・,αNに縮小する。このために、切削装置1は、切削ブレード21の外周形状の近似する画像KGを、切削ブレード21の断面形状に近付けることができる。したがって、切削装置1は、切削ブレード21の外周の断面形状を把握しやすくすることができる。
【0046】
さらに、実施形態に係る切削装置1は、検出用溝DDを外周余剰領域GRのストリートSに形成するので、デバイスDへの影響を抑制することができる。
【0047】
〔変形例1〕
本発明の実施形態の変形例1に係る切削装置を図面に基いて説明する。図11は、実施形態の変形例1に係る切削装置の撮像手段が撮像して得た撮像画像を示す図である。図12は、図11に示された撮像画像の分割画像の長さを縮小して表示手段に表示された画像を示す図である。なお、図11及び図12において、実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
実施形態の変形例1の切削装置1の制御手段100は、図11の撮像画像SGを複数の分割画像BG1,BG2,BG3,・・・,BGNに分割することなく、検出用溝DDの一端DDaを含む分割画像BG1のみを撮像画像SGから抜き出して、前述した値α1及び式1に基づいて、長さを図12に示すように縮小し、表示手段101に表示する。
【0049】
実施形態の変形例1に係る切削装置1によれば、表示手段101に表示された近似する画像KGを視認することで、切削ブレード21の外周の断面形状を把握しやすくなり、切削ブレード21の交換時期やドレッシング時期を把握することができる。また、実施形態の変形例1に係る切削装置1は、検出用溝DDの一端DDaを含む分割画像BG1のみを縮小し、表示手段101に表示するので、検出用溝DDを形成してから表示手段101に表示するまでにかかる所要時間を抑制することができる。
【0050】
〔変形例2〕
本発明の実施形態の変形例2に係る切削装置を図面に基いて説明する。図13は、実施形態の変形例2に係る切削装置の切削手段が検出用溝を形成する状態を模式的に示す断面図である。なお、図13において、実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
実施形態の変形例2に係る切削装置1は、検出用溝DDをストリートSに形成する。実施形態の変形例2に係る切削装置1は、図13に示すように、デバイス領域DRのストリートSの上方に切削ブレード21を位置付けた後、Z軸移動手段50のみを制御して、切削ブレード21を下降させて、ストリートSに切り込み深さd切り込ませた後、切削ブレード21を上昇させる。実施形態の変形例2に係る切削装置1は、両端が行き止まりの検出量溝DDを形成する。
【0052】
実施形態の変形例2に係る切削装置1によれば、実施形態と同様に、表示手段101に表示された近似する画像KGを視認することで、切削ブレード21の外周の断面形状を把握しやすくなり、切削ブレード21の交換時期やドレッシング時期を把握することができる。
【0053】
〔変形例3〕
本発明の実施形態の変形例3に係る切削装置を図面に基いて説明する。図14は、実施形態の変形例3に係る切削装置の切削手段が形成した検出用溝のストリートの平行な方向の縦断面を示す図である。なお、図14において、実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
実施形態の変形例2に係る切削装置1は、制御手段100が撮像画像SGを複数の分割画像BG1,BG2,BG3,・・・,BGNに分割する際に、切削ブレード21の回転中心周りに等角度a毎に撮像画像SGを分割する。
【0055】
実施形態の変形例3に係る切削装置1によれば、実施形態と同様に、表示手段101に表示された近似する画像KGを視認することで、切削ブレード21の外周の断面形状を把握しやすくなり、切削ブレード21の交換時期やドレッシング時期を把握することができる。
【0056】
〔実施例〕
次に、本発明の発明者は、実施形態に記載した切削装置の効果を確認した。確認にあたっては、外径が55mmで厚みが0.05mmの切削ブレード21を用いて、切り込み深さdが300μmの検出用溝DDを被加工物Wに形成した。図15は、実施例の被加工物に形成した検出用溝DDの一端を撮像して得た撮像画像である。図16は、図15に示す撮像画像を縮小して得た画像である。図17は、図15に示す検出用溝の断面形状である。
【0057】
図16に示す画像と、図17に示す画像が非常に近似しているので、本発明の切削装置によれば、切削ブレード21の外周の断面形状を把握しやすくなり、切削ブレード21の交換時期やドレッシング時期を把握することができることが明らかとなった。
【0058】
本発明では、制御手段100が、切削ブレード21の外周形状に近似する画像KGを形成した後、この画像KGと、良品の切削ブレード21の断面形状の画像とをパターンマッチングし、例えば、これらの相関値が所定値を下回る場合、報知し、オペレータに切削ブレード21の交換やドレッシングを促すようにしてもよい。
【0059】
また、実施形態では、撮像画像SGを複数の分割画像BG1,BG2,BG3,・・・,BGNに分割して、各分割画像BG2,BG3,BG4,・・・,BGNの長さを縮小したが、本発明では、撮像画像SGの検出用溝DDの一端DDaを含む少なくとも一部の画像である分割画像BG2の長さを接線方向TDから見た長さに縮小すればよい。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 切削装置
10 チャックテーブル
10a 保持面
20 切削手段
21 切削ブレード
30 撮像手段
100 制御手段(画像処理手段)
W 被加工物
DD 検出用溝
DDa 一端
SG 撮像画像
BG 分割画像
BG2 分割画像(一部の画像)
KG 近似する画像
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17