(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1圧力調整機構及び第2圧力調整機構の各々は、前記第1圧力室内の圧力を調整する圧力コントローラを備えており、前記第1圧力調整機構の圧力コントローラの圧力制御範囲は、前記第2圧力調整機構の圧力コントローラの圧力制御範囲よりも小さいことを特徴とする、請求項1記載の研磨装置。
前記圧力制御部は、前記第1圧力室内の設定圧力が第1閾値に達したときに前記第1圧力調整機構から前記第2圧力調整機構に切り替えるとともに、前記第1圧力室内の設定圧力が前記第1閾値よりも低い第2閾値に達したときに前記第2圧力調整機構から前記第1圧力調整機構に切り替えることを特徴とする、請求項2記載の研磨装置。
前記弾性膜は、基板に当接する基板保持面の周縁部から立ち上がる側壁と、前記側壁に接続される第1周壁部とを備え、前記第1圧力室は、前記側壁、前記第1周壁部及び前記ヘッド本体から形成されることを特徴とする、請求項1記載の研磨装置。
前記弾性膜は、基板に当接する基板保持面の周縁部から立ち上がる側壁と、前記側壁に接続される第1周壁部と、基板保持面の前記第1周壁部の内側に接続される第2周壁部とを備え、前記第1圧力室は、前記第1周壁部、前記第2周壁部及び前記ヘッド本体から形成されることを特徴とする、請求項1記載の研磨装置。
基板保持装置に保持された基板を研磨パッドに押しつけることで前記基板を研磨する方法であって、前記基板保持装置は、基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と前記複数の圧力室の圧力を制御する圧力制御部とを備えており、
前記圧力制御部は、前記複数の圧力室のうち、前記弾性膜が基板に当接する基板保持面の周縁部に対応する第1圧力室に接続される第1圧力調整機構と、前記第1圧力調整機構と並列的に設けられる第2圧力調整機構を切り替えることで、前記第1圧力室の圧力を制御することを特徴とする研磨方法。
前記圧力制御部は、前記第1圧力室内の設定圧力が第1閾値に達したときに前記第1圧力調整機構から前記第2圧力調整機構に切り替えるとともに、前記第1圧力室内の設定圧力が前記第1閾値よりも低い第2閾値に達したときに前記第2圧力調整機構から前記第1圧力調整機構に切り替えることを特徴とする、請求項8記載の研磨方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す図であり、研磨パッド19を支持する研磨テーブル18と、研磨対象物である基板の一例としてのウェハWを保持して研磨テーブル18上の研磨パッド19に押圧する研磨ヘッド(基板保持装置)1とを備えている。
【0020】
研磨テーブル18は、テーブル軸18aを介してその下方に配置されるテーブルモータ29に連結されており、そのテーブル軸18a周りに回転可能になっている。研磨パッド19は研磨テーブル18の上面に貼付されており、研磨パッド19の表面19aがウェハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル18の上方には研磨液供給ノズル25が設置されており、この研磨液供給ノズル25によって研磨テーブル18上の研磨パッド19上に研磨液Qが供給されるようになっている。
【0021】
研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨面19aに対して押圧するヘッド本体2と、ウェハWを保持してウェハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにするリテーナリング3とを備えている。研磨ヘッド1は、ヘッドシャフト27に接続されており、このヘッドシャフト27は、上下動機構81によりヘッドアーム64に対して上下動するようになっている。このヘッドシャフト27の上下動により、ヘッドアーム64に対して研磨ヘッド1の全体を昇降させ位置決めするようになっている。ヘッドシャフト27の上端にはロータリージョイント82が取り付けられている。
【0022】
ヘッドシャフト27および研磨ヘッド1を上下動させる上下動機構81は、軸受83を介してヘッドシャフト27を回転可能に支持するブリッジ84と、ブリッジ84に取り付けられたボールねじ88と、支柱86により支持された支持台85と、支持台85上に設けられたサーボモータ90とを備えている。サーボモータ90を支持する支持台85は、支柱86を介してヘッドアーム64に固定されている。
【0023】
ボールねじ88は、サーボモータ90に連結されたねじ軸88aと、このねじ軸88aが螺合するナット88bとを備えている。ヘッドシャフト27は、ブリッジ84と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ90を駆動すると、ボールねじ88を介してブリッジ84が上下動し、これによりヘッドシャフト27および研磨ヘッド1が上下動する。
【0024】
ヘッドシャフト27はキー(図示せず)を介して回転筒66に連結されている。この回転筒66はその外周部にタイミングプーリ67を備えている。ヘッドアーム64にはヘッドモータ68が固定されており、上記タイミングプーリ67は、タイミングベルト69を介してヘッドモータ68に設けられたタイミングプーリ70に接続されている。したがって、ヘッドモータ68を回転駆動することによってタイミングプーリ70、タイミングベルト69、およびタイミングプーリ67を介して回転筒66およびヘッドシャフト27が一体に回転し、研磨ヘッド1が回転する。ヘッドアーム64は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたアームシャフト80によって支持されている。研磨装置は、ヘッドモータ68、サーボモータ90をはじめとする装置内の各機器を制御する制御装置40を備えている。
【0025】
研磨ヘッド1は、その下面にウェハWを保持できるように構成されている。ヘッドアーム64はアームシャフト80を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハWを保持した研磨ヘッド1は、ヘッドアーム64の旋回によりウェハWの受取位置から研磨テーブル18の上方位置に移動される。
【0026】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド1および研磨テーブル18をそれぞれ回転させ、研磨テーブル18の上方に設けられた研磨液供給ノズル25から研磨パッド19上に研磨液Qを供給する。この状態で、研磨ヘッド1を所定の位置(所定の高さ)まで下降させ、この所定の位置でウェハWを研磨パッド19の研磨面19aに押圧する。ウェハWは研磨パッド19の研磨面19aに摺接され、これによりウェハWの表面が研磨される。
【0027】
次に、
図1に示す研磨装置に備えられている研磨ヘッド(基板保持装置)1について、
図2を参照して詳細に説明する。
図2に示すように、研磨ヘッド1は、ヘッドシャフト27の下端に固定されたヘッド本体2と、研磨面19aを直接押圧するリテーナリング3と、ウェハWを研磨面19aに対して押圧する柔軟な弾性膜10を備えている。リテーナリング3はウェハWを囲むように配置されており、ヘッド本体2に連結されている。弾性膜10は、ヘッド本体2の下面を覆うようにヘッド本体2に取り付けられている。
【0028】
ヘッド本体2は、例えばエンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成され、弾性膜10は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0029】
弾性膜10は、同心状に配置された複数(図示では8つ)の環状の周壁10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hが設けられている。これら複数の周壁10a〜10hによって、弾性膜10の上面とヘッド本体2の下面との間に、中央に位置する円形状の中央圧力室12、最外周に位置する環状のエッジ圧力室14a,14b、及び中央圧力室12とエッジ圧力室14a,14bとの間に位置する、環状の5つの中間圧力室(第1〜第5中間圧力室)16a,16b,16c,16d,16eが形成されている。
【0030】
ヘッド本体2内には、中央圧力室12に連通する流路20、エッジ圧力室14aに連通する流路22、エッジ圧力室14bに連通する流路24f、及び中間圧力室16a〜16eにそれぞれ連通する流路24a,24b,24c,24d,24eがそれぞれ形成されている。そして、流路20,22,24a〜24fは、それぞれ流体ライン26,28,30a,30b,30c,30d,30e,30fを介して流体供給源32に接続されている。流体ライン26,28,30a〜30fには、開閉バルブV1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8と圧力コントローラR1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8がそれぞれ設置されている。
【0031】
また、エッジ圧力室14aに対応する流路22に接続された流体ライン28には、開閉バルブV2−2及び圧力コントローラR2−2が接続されている。これら開閉バルブV2−2及び圧力コントローラR2−2は、もう一組の開閉バルブV2及び圧力コントローラR2と並行になるように、流体供給源32に接続される。また、流体ライン28には、当該ラインに流れる流体の圧力を測定する圧力センサPS2が接続されている。
【0032】
リテーナリング3の直上にはリテーナ室34が形成されており、リテーナ室34は、ヘッド本体2内に形成された流路36および開閉バルブV9と圧力コントローラR9が設置された流体ライン38を介して流体供給源32に接続されている。圧力コントローラR1〜R9、R2−2は、それぞれ流体供給源32から圧力室12,14a,14b,16a〜16eおよびリテーナ室34に供給する圧力流体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。圧力コントローラR1〜R9、R2−2および開閉バルブV1〜V9、V2−2は、制御装置40に接続されて、それらの作動が制御装置40で制御されるようになっている。
【0033】
前述したエッジ圧力室14aに対応する流体ライン28に接続された2つの圧力コントローラR2、R2−2のうち、一方の圧力コントローラR2(以下、「第1圧力コントローラ」という。)は、そのフルスケール(制御範囲)が例えば500hPaであり、ウェハのエッジ部を低圧で研磨する低圧研磨時に用いられる。また、もう一つの圧力コントローラR2−2(以下、「第2圧力コントローラ」という。)のフルスケールは、第1圧力コントローラよりも大きく、例えば1000hPaであり、ウェハのエッジ部を高圧で研磨する高圧研磨時に用いられる。
【0034】
圧力コントローラによる圧力の制御誤差は、リニアリティ、ヒステリシス、繰り返し性、および分解能などの誤差が影響するほか、フルスケールに依存しており、通常はフルスケールの1%または2%程度である。このため、フルスケールが小さい第1圧力コントローラによる方が、第2圧力コントローラによる場合と比べ、より精度良く圧力制御を行うことができる。
【0035】
第1及び第2圧力コントローラのフルスケールの組み合わせは、前述したものに限定されることはなく、研磨装置の用途、精度等に応じて適宜定めることができる。第1及び第2圧力コントローラのフルスケールの組み合わせとして、例えば250hPa,500hPaの組み合わせとしても良く、あるいは250hPa、1000hPaの組み合わせとしても良い。
【0036】
図2に示すように構成された研磨ヘッド1によれば、ウェハWを研磨ヘッド1で保持した状態で、各圧力室12,14a,14b,16a〜16eに供給される圧力流体の圧力をそれぞれ制御することで、ウェハWの半径方向に沿った弾性膜10上の複数のエリア毎に異なった圧力でウェハWを押圧することができる。このように、研磨ヘッド1においては、ヘッド本体2と弾性膜10との間に形成される各圧力室12,14a,14b,16a〜16eに供給する流体の圧力を調整することにより、ウェハWに加えられる押圧力をウェハWの領域毎に調整できる。同時に、リテーナ室34に供給する圧力流体の圧力を制御することで、リテーナリング3が研磨パッド19を押圧する押圧力を調整できる。
【0037】
図3に示すように、弾性膜10は、ウェハWに接触する円形の当接部11と、当接部11に直接または間接に接続される8つの周壁10a〜10hを有している。当接部11はウェハWの裏面、すなわち研磨すべき表面とは反対側の面に接触し、ウェハWを研磨パッド19に対して押し付ける。周壁10a〜10hは、同心状に配置された環状の周壁である。
【0038】
周壁10a〜10hの上端は、4つの保持リング5,6,7,8によってヘッド本体2の下面に取り付けられている。これら保持リング5〜8は、例えばねじなどの保持手段(図示せず)によってヘッド本体2に着脱可能に固定されている。
【0039】
当接部11は、中間圧力室16cに連通する複数の通孔17を有している。
図3では、便宜上、1つの通孔17のみを示す。当接部11にウェハWが接触した状態で中間圧力室16cに真空が形成されると、ウェハWが当接部11の下面に、すなわち研磨ヘッド1に真空吸引により保持される。さらに、ウェハWが研磨パッド19から離れた状態で中間圧力室16cに加圧流体を供給すると、ウェハWが研磨ヘッド1からリリースされる。通孔17は中間圧力室16cの代わりに他の圧力室に形成してもよい。その際にはウェハWの真空吸引やリリースは通孔17を形成した圧力室の圧力を制御することにより行う。
【0040】
周壁10hは、最も外側の周壁であり、周壁10gは周壁10hの径方向内側に配置されている。さらに、周壁10fは周壁10gの径方向内側に配置されている。以下、周壁10hを第1エッジ周壁、周壁10gを第2エッジ周壁、周壁10fを第3エッジ周壁と呼ぶ。
【0041】
図4は、弾性膜10の一部を示す拡大断面図である。第1エッジ周壁10hは、当接部11の周端部から上方に延び、第2エッジ周壁10gは第1エッジ周壁10hに接続されている。
【0042】
第2エッジ周壁10gは、第1エッジ周壁10hの内周面101に接続された外側水平部111を有している。第1エッジ周壁10hの内周面101は、当接部11に対して垂直に延びる上側内周面101aおよび下側内周面101bを有している。上側内周面101aは第2エッジ周壁10gの水平部111から上方に延び、下側内周面101bは第2エッジ周壁10gの水平部111から下方に延びている。言い換えれば、当接部11に対して垂直に延びる内周面101を分割する位置に第2エッジ周壁10gの外側水平部111が接続されている。下側内周面101bは当接部11の周端部に接続されており、外側に位置する外周面102が当接部11に対して垂直に延びている。上側内周面101aおよび下側内周面101bは、同一面内(当接部11に垂直な想像面)にある。つまり、上側内周面101aの径方向位置と下側内周面101bの径方向位置は同じである。
【0043】
第1エッジ周壁10hは、当接部11の上下動を許容する折り曲げ部103を有している。この折り曲げ部103は、上側内周面101aに接続されている。折り曲げ部103は、当接部11と垂直な方向(すなわち、鉛直方向)に伸縮自在に構成されたベローズ構造を有している。したがって、ヘッド本体2と研磨パッド19との距離が変化しても、当接部11の周端部とウェハWとの接触を維持することができる。
【0044】
第2エッジ周壁10gは、第1エッジ周壁10hの内周面101から水平に延びる外側水平部111を有している。さらに、第2エッジ周壁10gは、外側水平部111に接続された傾斜部112と、傾斜部112に接続された内側水平部113と、内側水平部113に接続された鉛直部114と、鉛直部114に接続されたリム部115とを有している。傾斜部112は、外側水平部111から径方向内側に延びつつ上方に傾斜している。リム部115は、鉛直部114から径方向外側に延びており、
図3に示す保持リング8によってヘッド本体2の下面に固定される。第1エッジ周壁10hおよび第2エッジ周壁10gが保持リング8によってヘッド本体2の下面に取り付けられると、第1エッジ周壁10hと第2エッジ周壁10gとの間にエッジ圧力室14aが形成される。
【0045】
第3エッジ周壁10fは、第2エッジ周壁10gの径方向内側に配置されている。第3エッジ周壁10fは、当接部11の上面に接続された傾斜部121と、傾斜部121に接続された水平部122と、水平部122に接続された鉛直部123と、鉛直部123に接続されたリム部124とを有している。傾斜部121は、当接部11の上面から径方向内側に延びつつ上方に傾斜している。リム部124は、鉛直部123から径方向内側に延びており、
図3に示す保持リング7によってヘッド本体2の下面に固定される。第2エッジ周壁10gおよび第3エッジ周壁10fが保持リング8,7によってそれぞれヘッド本体2の下面に取り付けられると、第2エッジ周壁10gと第3エッジ周壁10fとの間にエッジ圧力室14bが形成される。
【0046】
周壁10eは、第3エッジ周壁10fの径方向内側に配置されている。周壁10eは、当接部11の上面に接続された傾斜部131と、傾斜部131に接続された水平部132と、水平部132に接続された鉛直部133と、鉛直部133に接続されたリム部134とを有している。傾斜部131は、当接部11の上面から径方向内側に延びつつ上方に傾斜している。リム部134は、鉛直部133から径方向外側に延びており、
図3に示す保持リング7によってヘッド本体2の下面に固定される。周壁10eおよび第3エッジ周壁10fが保持リング7によってヘッド本体2の下面に取り付けられると、周壁10eと第3エッジ周壁10fとの間に中間圧力室16eが形成される。
【0047】
図3に示す周壁10b,10dは、
図4に示す第3エッジ周壁10fと実質的に同じ構成を有しており、
図3に示す周壁10a,10cは、
図4に示す周壁10eと実質的に同じ構成を有しているので、それらの説明を省略する。
図3に示すように、周壁10a,10bのリム部は保持リング5によってヘッド本体2の下面に固定され、周壁10c,10dのリム部は保持リング6によってヘッド本体2の下面に固定される。
【0048】
図4に示すように、エッジ圧力室14aは、エッジ圧力室14bの上方に配置されており、概ね水平に延びる第2エッジ周壁10gによって仕切られている。第2エッジ周壁10gは第1エッジ周壁10hに接続されているので、エッジ圧力室14aの圧力がエッジ圧力室14bの圧力より大きい場合には、エッジ圧力室14aとエッジ圧力室14bとの差圧は第1エッジ周壁10hを鉛直方向に押し下げる下向きの力を発生させる。その結果、当接部11の周縁部がウェハエッジ部を研磨パッド19に対して押し付ける。このように、第1エッジ周壁10h自体に下向きの力が鉛直方向に作用するので、当接部11の周縁部はウェハエッジ部の狭い領域を研磨パッド19に対して押し付けることができ、ウェハのエッジ部の研磨プロファイルを精密に制御することが可能となる。逆にエッジ圧力室14aの圧力がエッジ圧力室14bの圧力より小さい場合には、エッジ圧力室14aとエッジ圧力室14bとの差圧は第1エッジ周壁10hを鉛直方向に押し上げる上向きの力を発生させる。その結果、当接部11の周縁部がウェハエッジを研磨パッド19に対して押し付ける押圧力が減少する。このように、第1エッジ周壁10h自体に上向きの力が鉛直方向に作用するので、当接部11の周縁部はウェハエッジ部の狭い領域の研磨パッド19に対する押圧力を減少させることができ、ウェハのエッジ部の研磨プロファイルを精密に制御することが可能となる。
【0049】
上側内周面101aは当接部11に対して垂直に上方に延び、下側内周面101bは当接部11に対して垂直に下方に延びている。このような上側内周面101aおよび下側内周面101bの形状により、第1エッジ周壁10hと第2エッジ周壁10gとの接続部分には斜め方向の力が作用せず、ウェハエッジ部の狭い領域で研磨レートを制御することが可能となる。
【0050】
前述したとおり、本実施例に係る研磨装置では、エッジ圧力室14aに対応する流体ライン28には、低圧研磨用の第1圧力コントローラR2と高圧研磨用の第2圧力コントローラR2−2が並列に接続され、対応する開閉バルブV2、V2−2を開閉制御することで、いずれか一方を選択的に利用することができる。
【0051】
例えば、エッジ圧力室14aを低圧にした状態で研磨したい場合は、第2圧力コントローラR2−2に接続されたバルブV2−2を閉止した状態で、第1圧力コントローラR2を作動させてバルブV2を開く。これにより、フルスケール(FS)が小さな(すなわち、誤差の小さい)第1圧力コントローラR2により、エッジ圧力室14aの圧力を精度良く制御することができ、精密な研磨を行うことができる。
【0052】
一方、エッジ圧力室14aを高圧にした状態で研磨したい場合は、第1圧力コントローラR2に接続されたバルブV2を閉止した状態で、第2圧力コントローラR2−2を作動させてバルブV2−2を開く。これにより、フルスケール(FS)が大きな第2圧力コントローラR2−2により、エッジ圧力室14aを高圧に保った状態で研磨を行うことができる。このようにして、予め設定された研磨レシピに基づき、適宜、使用すべき圧力コントローラを選択して使用することができる。
【0053】
また、基板研磨中に、エッジ圧力室14a内の圧力に応じて、使用する圧力コントローラを切り替えて研磨を行うようにしても良い。例えば、低圧研磨時には、第1圧力コントローラR2を作動させるとともに、バルブV2を開放、バルブV2−2を閉止する。この状態でエッジ圧力室14a内の圧力を上げていき、一定値を超えた時点で、第1圧力コントローラR2の作動を止めて、第2圧力コントローラを作動させるとともに、バルブV2を閉止し、バルブV2−2を開放する。これにより広い圧力レンジを保ちつつ、高精度の研磨が可能となる。
【0054】
ここで、圧力コントローラおよびバルブの切り替えを同時に行うと、切り替えにより作動する第2圧力コントローラR2−2の圧力立ち上がり速度の影響などにより、切り替え直後のライン内の圧力が低下してしまう場合がある。これを避けるために、開閉するバルブを切り替える前に、あらかじめ第2圧力コントローラR2−2を作動させ、バルブV2−2の一次側直前まで設定の圧力で加圧しておく。その後、バルブV2−2を開放、バルブV2を閉止することにより、バルブ切り替え時の圧力の不連続変化を低減することができる。
【0055】
本実施形態における研磨装置では、研磨テーブル内に埋設した図示しないセンサ(渦電流センサや光学式センサ等)により研磨中の基板の膜厚などの情報をモニタリングし、モニタリング結果に基づき研磨圧力を変更するIn-situ CLC(Closed Loop Control[閉ループ制御])を行うことができる。In-situ CLCにより基板研磨を行う場合、研磨中に必要とされるエッジ圧力室14aの圧力が刻々と変化するが、上述した2つの圧力コントローラを切り替える閾値付近で圧力が上下するような場合には、使用する圧力コントローラを頻繁に切り替える必要があり、加圧力が不安定になってしまうおそれがある。
【0056】
このため、
図5の例で示すように、圧力コントローラを切り替えるための2種類の閾値(上方閾値(UTV : Upper Threshold Value)、下方閾値(LTV : Lower Threshold Value))を設けて圧力制御を行うことが好ましい。
図5において、横軸は時間を表し、縦軸はエッジ圧力室14a内の設定圧力を表す。また、制御範囲上限値は、圧力コントローラのフルスケール(FS)を表している。
【0057】
図5において、エッジ圧力室14aの設定圧力が低い場合は、第1圧力コントローラR2を用いて圧力制御を行う。そして、エッジ圧力室14aの設定圧力が下方閾値(LTV)を超えた後も、第1圧力コントローラR2による圧力制御を維持し、設定圧力上方閾値(UTV)に達した時点(時間T1)で、第2圧力コントローラR2−2による圧力制御に切り替える。
【0058】
高圧用の第2圧力コントローラR2−2による圧力制御に切り替えられた後、エッジ圧力室14a内の設定圧力を増加させ、時間T2で第2圧力コントローラの制御範囲上限値に達し、時間T3まで同一の設定圧力で基板研磨が行われる。その後、エッジ圧力室14a内の設定圧力を減少させるが、上方閾値(UTV)に達した後も第2圧力コントローラR2−2による圧力制御を継続させ、エッジ圧力室14a内の設定圧力が下方閾値(LTV)に達した時点(時間T4)で、低圧用の第1圧力コントローラR2による圧力制御に切り替える。
【0059】
ここで、上方閾値(UTV)及び下方閾値(LTV)は、研磨の目的に応じて適宜定めることができるが、上方閾値(UTV)は第1圧力コントローラR2の制御範囲上限値の80%〜99%の範囲内で定めるのが好ましく、90〜99%の範囲内で定めるのがより好ましい。また、下方閾値(LTV)は、上方閾値(UTV)よりも低い値であることが前提であるが、第1圧力コントローラR2の制御範囲上限値の50%〜95%の範囲内で定めるのが好ましく、80〜95%の範囲内で定めるのがより好ましい。
【0060】
以下、上記構成による研磨装置の動作の一例について、
図6のフローチャートを用いて説明する。まず、研磨で使用される研磨レシピ、エッジ圧力室の設定圧力や基板の最終膜厚等の研磨条件が設定され(ステップS10)、基板研磨が開始される。
【0061】
ステップS11において、エッジ圧力室の設定圧力が上方閾値(UTV)よりも小さいかどうかの判定が行われ、小さい場合にはステップS12に移り、低圧用の圧力コントローラR2を用いて研磨が行われる。ステップS13において研磨が終了したかどうかの判定が行われ、研磨が終了していない場合は、前述したIn-situ CLC制御により、エッジ圧力室内の圧力値が設定される(S14)。研磨が終了したかの判定には、研磨時間が設定した時間に達したか、基板の膜厚が最終膜厚に達したか、テーブルモータ29の駆動電流が設定値に達したか、など種々の判定条件が設定される。
【0062】
次にステップS15において、エッジ圧力室の設定圧力が上方閾値(UTV)よりも小さいかどうかの判定が行われ、小さい場合にはステップS12に戻り、引き続き低圧用の圧力コントローラR2による圧力制御が行われる。
【0063】
一方、設定圧力が上方閾値(UTV)よりも大きい場合には、高圧用の圧力コントローラR2−2に切り替えられ、研磨が行われる。ステップS17において研磨が終了したかどうかの判定が行われ、研磨が終了していない場合は、前述したIn-situ CLC制御により、エッジ圧力室内の圧力値が設定される(S18)。
【0064】
そして、ステップS19において、エッジ圧力室の設定圧力が下方閾値(LTV)よりも小さいかどうかの判定が行われ、大きい場合にはステップS16に戻り、引き続き高圧用の圧力コントローラR2−2による圧力制御が行われる。一方、設定圧力が下方閾値(LTV)よりも小さい場合には、低圧用の圧力コントローラR2に切り替えられ、研磨が行われる。
【0065】
ステップS13及びステップS17において、研磨が終了したと判定された場合には、研磨が終了する。
【0066】
このようにして、高精度の圧力制御が可能な低圧用の圧力コントローラと、フルスケールが大きい高圧用の圧力コントローラを組み合わせて用いることで、圧力レンジを広く保ったまま、高精度での基板研磨が可能となる。また、2種類の圧力コントローラの動作を切り替える圧力の閾値を2種類設けることで、閾値付近で設定圧力が上下に変動するような場合であっても、圧力コントローラが切り替えられることはなく、安定した圧力制御が可能となる。
【0067】
次に、
図7を用いて、本発明の別の実態態様に係る研磨装置の構成を説明する。なお、先の実施態様に係る研磨装置と同一の部材に関しては、同じ符番を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
図7に示す研磨装置では、エッジ圧力室14aの下に設けられたエッジ圧力室14bに対応する流体ライン30fに、開閉バルブV8−2及び圧力コントローラR8−2が、もう一組の開閉バルブV8及び圧力コントローラR8と並行になるように設けられている点で、
図2の例と相違する。この圧力コントローラR8−2は流体供給源32に接続されている。また、流体ライン30fには、当該ラインに流れる流体の圧力を測定する圧力センサPS8が接続されている。
【0069】
上記の圧力コントローラR8−2は、流体供給源32から圧力室14bに供給する圧力流体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。また、圧力コントローラR8−2および開閉バルブV8−2は、制御装置40に接続されており、それらの作動が制御されるようになっている。
【0070】
前述の実施例と同様に、流体ライン30fに並列に接続された2つの圧力コントローラR8、R8−2のうち、一方の圧力コントローラR8のフルスケール(制御範囲)は、他方の圧力コントローラR8−2のフルスケールよりも小さくされている。高精度の圧力制御が可能な低圧用の圧力コントローラと、フルスケールが大きい高圧用の圧力コントローラを組み合わせて用いることで、圧力レンジを広く保ったまま、高精度での基板研磨が可能となる。
【0071】
図4を用いて説明したとおり、上側のエッジ圧力室14aと下側のエッジ圧力室14bとの差圧により、第1エッジ周壁10hを鉛直方向に押し下げる下向きの力、または第1エッジ周壁10hを鉛直方向に押し上げる上向きの力が発生する。本実施形態に係る研磨装置では、上側のエッジ圧力室14aだけではなく、下側のエッジ圧力室14bの圧力も精密に制御することができるため、より高精度な基板研磨が可能となる。
【0072】
上記実施形態に係る研磨装置では、低圧用の圧力コントローラと高圧用の圧力コントローラとを切り替えて圧力制御を行っているが、精密な圧力制御が必要とされない場合(例えば、スラリー研磨後に行われるウェハの洗浄等を目的とした水研磨工程)では、圧力コントローラの切り替え制御を行う必要がなく、よってフルスケールが大きい高圧用の圧力コントローラのみを用いて基板研磨を行うようにしても良い。
【0073】
上記実施形態では、エッジ圧力室に対応する流体ラインに接続された複数の圧力コントローラを切り替えることで、圧力制御を行っているが、他の圧力室に対しても、同様の圧力制御を行うようにしても良い。また、上記実施形態では、1つまたは2つの圧力室に対して複数の圧力コントローラを用いて圧力制御を行っているが、3つ以上の圧力室に対しても、同様の圧力制御を行うようにしても良い。複数の圧力室に対して複数の圧力コントローラを用いて圧力制御を行う場合は、隣接する複数の圧力室を対象とすることが好ましい。
上記実施形態では、エッジ圧力室に2つの圧力コントローラを接続しているが、3つ以上の圧力コントローラを並列的に接続しても良い。
【0074】
上記実施形態では、エッジ圧力室の設定圧力を基準として圧力コントローラの切り替え制御を行っているが、圧力センサPS2、PS8による圧力の測定値を基準として圧力コントローラの切り替え制御を行うようにしてもよい。
【0075】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。