【文献】
K.Maeda et al.”Laser sintering(SLS)of hard metal powders for abrasion resistant coatings”,Journal of Materials Processing Technology,Elsevier,149,2004年発行 p.609−615
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<定義>
まず、前提として、本明細書における以下の用語は、以下のように定義される。
本明細書において、「粉末材料」とは、粉末積層造形に用いる粉末状の材料を指す。粉末材料は、典型的には、後述の二次粒子が集合して構成されるが、後述の一次粒子の混入が許容されることは言うまでもない。
本明細書において、「一次粒子」とは、上記粉末材料を構成している形態的な構成要素のうち、外観から粒状物として識別できる最小単位を意味する。特に、後述の二次粒子を構成する一粒子(一つの粒状物)を指す。
【0014】
本明細書において、「二次粒子」とは、上記一次粒子が三次元的に結合され、一体となって一つの粒のように振る舞う粒子状物(粒子の形態をなしたもの)をいう。
なお、ここでいう「結合」とは、直接的または間接的に、2つ以上の一次粒子が結びつくことを指し、例えば、化学反応による一次粒子同士の結合、単純吸着によって一次粒子同士が引き合う結合、一次粒子表面の凹凸に接着材等を入り込ませるアンカー効果を利用した結合、静電気により引き合う効果を利用した一次粒子同士の結合、一次粒子の表面が溶融して一体化した結合等が含まれる。
【0015】
本明細書において、「原料粒子」とは、粉末材料を形成するための原料粉末を構成する粒子をいう。原料粒子を適切な方法で三次元的に結合させることで、二次粒子を製造することができる。また、このように製造された二次粒子を構成している粒子を一次粒子という。この一次粒子は、原料粒子とほぼ同一の形態であっても良いし、2つ以上の原料粒子が反応したり形態的に区別できない程度に一体化する等して原料粒子とは異なる形態であっても良い。また、一次粒子は、原料粒子と同一の組成であっても良いし、2種以上の原料粒子が反応するなどして原料粒子とは異なる組成となっていても良い。
【0016】
本明細書において、粉末積層造形における「平坦化工程」とは、粉末材料を任意の粉末積層造形装置の積層エリアに供給して、一定の厚さで均一に薄く堆積させる工程をいう。一般的に、粉末積層造形は、以下のような工程で行われる。
(1)粉末積層造形装置の積層エリアに粉末材料を供給する工程
(2)当該供給された粉末材料を、積層エリアに均一に薄く堆積するようにワイパ等で平坦化して薄層を形成する工程
(3)形成された粉末材料の薄層に、粉末材料を接合および焼結等する手段を与えて、粉末材料を固化する工程
(4)固化した粉末材料の上に、新たな粉末材料を供給し(上記工程(1))、以後、工程(2)〜(4)を繰り返すことで積層し、目的の三次元造形物を得る。
つまり、ここでいう「平坦化工程」とは、主に、上記工程(2)において、粉末材料を積層エリア全体に均一に薄く堆積させて薄層を得る工程をいう。なお、上記の「固化」は、粉末材料を構成する二次粒子同士を、溶融・凝固により直接的に結合させたり、バインダを介して間接的に結合させたりして、形状を所定の断面形状に固定化することを含む。
【0017】
<粉末材料の平均粒子径の測定方法>
本明細書において、粉末材料(典型的には二次粒子)に関する「平均粒子径」とは、特筆しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(50%体積平均粒子径;D50)を意味する。
【0018】
<一次粒子の平均粒子径の測定方法>
本明細書において、粉末材料の一次粒子に関する「平均粒子径」は、球形粒子の直径(球相当径)として算出される値である。かかる一次粒子の平均粒子径(Dave)は、粉末材料全体の比表面積をSm、密度をρとしたとき、次式に基づき求めることができる。なお、粉末材料が複数の原料粒子の混合物から製造される場合、密度は、それら複数の二次材料の密度を配合割合に応じて足し合わせた値(加重合計値)を採用することができる。
Dave=6/(ρSm)
【0019】
<比表面積の測定方法>
本明細書において、「比表面積」は、BET法に基づき、粉末材料の表面に物理吸着したガス(典型的には窒素(N
2)ガス)の量を測定することによって決定される、当該粉末材料を構成する粒子の外部および内部の全ての表面積をその質量で除した値を意味している。かかる比表面積は、JIS Z 8830:2013(ISO9277:2010)「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」の規定に準じて測定することができる。
【0020】
<粒度範囲の測定方法>
本明細書における、粉末材料の粒度分布とは、その粉末材料を構成する粒子群に、どの様な大きさ(粒子径)の粒子が、どの様な割合(粉末材料の全体を100%としたときの相対粒子量)で含まれているかを示す。また「粒度範囲」とは、その粉末材料の粒子径の下限と上限までの幅(広がり)を示す指標である。本明細書における粒度範囲の下限の値は、粉末材料中に占めるその値以下の粒子径を有する粒子の割合が5%以下であることを意味している。また、粒度範囲の上限の値は、粉末材料中に占めるその値以上の粒子径を有する粒子の割合が5%以下であることを意味している。なお、粉末材料の粒度分布については、当該粉末材料の粒度に応じた適切な粒度分布測定装置により測定することができる。例えば、ロータップ試験機(JIS R6002参照)や、レーザ回折/散乱方式を採用する測定器を用いて求められる。また、例えば粒度範囲が5〜75μmである粉末材料であれば、5μm以下の粒子径を有する粒子の割合が5%以下であり、かつ、75μm以上の粒子径を有する粒子の割合は5%以下であることを意味する。
【0021】
<原料粉末の平均粒子径の測定方法>
本明細書において原料粒子の「平均粒子径」の測定に際しては、本質的には、上記粉末材料と同様に、レーザ散乱・回折法に基づき測定を実施している。しかしながら、例えば、平均粒子径が1μmに満たない粒子群については、上述の一次粒子の平均粒子径の測定方法にしたがい、比表面積に基づいてその平均粒子径を算出している。
【0022】
<真円度の測定方法>
本明細書における、粉末材料の「真円度」とは、電子顕微鏡等の観察手段により観察された100以上の二次粒子の平面視像(例えば、二次電子像等)について求められた真円度の算術平均値を意味する。また、真円度は、二次粒子の平面視像において、当該二次粒子の輪郭の長さである周囲長と、かかる輪郭で囲まれた面積とから、下記式により規定される値である。なお、かかる真円度は、二次粒子の表面形態の滑らかさをより反映しやすい指標であり、幾何学的円(真円)は真円度=1となり、真円から離れるにつれて真円度は1より大きな値となる。かかる平均真円度は、例えば、適切な倍率で取得した電子顕微鏡像を画像処理ソフト等を用いて解析することで求めることができる。
真円度=(周囲長
2)÷(4×π×面積)
【0023】
<アスペクト比の測定方法>
本明細書において「アスペクト比」とは、電子顕微鏡等の観察手段により観察された100以上の二次粒子の平面視像(二次電子像等)について求められたアスペクト比の算術平均値を意味する。かかるアスペクト比は、当該二次粒子の相当楕円における長軸の長さをa、短軸の長さをbとしたとき、a/bで定義される。また、相当楕円とは、当該二次粒子と同面積で、かつ一次および二次モーメントが等しい楕円をいう。かかる平均アスペクト比は、例えば、適切な倍率で取得した電子顕微鏡像を画像処理ソフト等を用いて解析することで求めることができる。
【0024】
<フラクタル次元の測定方法>
本明細書において、「フラクタル次元」とは、電子顕微鏡等の観察手段により観察された100以上の二次粒子の平面視像(二次電子像等)について求められたフラクタル次元の算術平均値を意味する。また、本明細書において、フラクタル次元は、ディバイダーズメソッドにより求められる値を採用しており、二次粒子の平面視像における当該二次粒子の周囲長とストライド長の対数を関連づける関数の、線形部分の傾きとして定義される。かかるフラクタル次元の測定値は、1(=実線)以上2(=平面)未満の値となり、1に近い程二次粒子の表面が滑らかなことを意味する。かかる平均フラクタル次元は、例えば、適切な倍率で取得した電子顕微鏡像を画像処理ソフト等を用いて解析することで求めることができる。
【0025】
<安息角の測定方法>
本明細書において、「安息角」は、粉末材料を一定の高さの漏斗から水平な基板の上に落下させることで生成した円すい状の堆積物の直径および高さから算出される底角を意味している。かかる安息角は、JIS R 9301−2−2:1999「アルミナ粉末物性測定方法−2:安息角」の規定に準じて測定することができる。
【0026】
<フローファンクションの測定方法>
本明細書において、「フローファンクション」は、いわゆる相対流動性指数(Relative Flow Index:RFI)とも呼ばれる値であって、内径が50mmの容器内に所定の量の粉末材料を入れ、常温常湿下、当該粉末材料に9kPaの剪断力を与えたときの粉末材料の最大主応力と単軸崩壊応力とを測定し、最大主応力の測定値を単軸崩壊応力の測定値で除することで求められる値である。このフローファンクションが大きいほど、当該粉末材料の流動性が良いことを意味する。
【0027】
<圧縮強度の測定方法>
本明細書において、粉末材料に関する「圧縮強度」は、電磁力負荷方式の圧縮試験機を用いて測定される。具体的には、加圧圧子と加圧板の間に測定試料を固定し電磁力により一定の増加割合で負荷力を与えていく。圧縮は定負荷速度圧縮方式で行い、その際の測定試料の変形量を測定していく。測定した試料の変形特性結果は専用のプログラムで処理し強度値を計算する。
【0028】
以下、本発明の一実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。
本実施形態の粉末積層造形に用いる粉末材料は、一次粒子が間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子の形態を有している粒子から構成される(以下、「一次粒子が間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子の形態を有している粒子」を単純に「二次粒子」という。)。なお、ここでいう「構成される」とは、粉末積層造形に用いる粉末材料の構成成分が、主として上記の二次粒子からなることを意味し、「主として」とは、粉末材料のうち90質量%以上を上記二次粒子が占めることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0029】
本実施形態における粉末積層造形法としては、例えば、レーザ粉体肉盛り法(レーザメタルデポジション法;LMD)、選択的レーザ溶融法(セレクトレーザメルティング法;SLM)、電子ビーム溶融法(エレクトロンビームメルティング法;EBM)等のビーム照射方式や、インクジェットによりバインダ(結合剤)を噴射して粉末粒子の接合層を形成するインクジェット方式が挙げられる。
【0030】
レーザメタルデポジション法とは、具体的には、構造物の所望の部位に粉末材料を提供して、そこにレーザ光を照射することで粉末材料を溶融・凝固させ、当該部位に肉盛りを行う技術である。この手法を利用することで、例えば、構造物に摩耗等の物理的な劣化が発生した場合に、当該劣化部位に粉末材料として当該構造物を構成する材料または補強材料等を供給し、その粉末材料を溶融・凝固させることで劣化部位等に肉盛りを行うことができる。
【0031】
セレクトレーザメルティング法とは、設計図から作成したスライスデータに基づき、粉末材料を堆積させた粉末層にレーザ光を走査させ、粉末層を所望形状に溶融・凝固する操作を、1断面(1スライスデータ)ごとに繰り返して積層させることで三次元的な構造体を造形する技術である。また、エレクトロンビームメルティング法とは、3D CADデータから作成したスライスデータを基に、電子ビーム用いて上記粉末層を選択的に溶融・凝固させ、積層することで3次元的な構造体を造形する技術である。いずれの技術においても、構造体の原料である粉末材料を所定の造形位置に供給するという工程を含む。特に、セレクトレーザメルティング法やエレクトロンビームメルティング法においては、構造体を造形する積層エリア全体に、粉末材料を1断面厚さに対応する厚みで、均一に薄く堆積する平坦化工程を繰り返す必要がある。この粉末材料の平坦化工程において、粉末材料の流動性は重要なパラメータであり、作製する三次元造形物の仕上がりに大きく影響する。それに対して、本発明における粉末積層造形に用いる粉末材料は、流動性が良好であることから、仕上がりの良好な三次元造形物を作製できる。
【0032】
本実施形態における粉末材料は、一次粒子が間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子の形態を有する粒子により主として構成されている。このような形態を有する粒子であれば、従来の粉末積層造形で使用されてきた、単一の原料粒子の集合である粉末材料と比較して、流動性が格段に向上する。従来の粉末積層造形で使用されてきた原料粒子が単分散している粒子のような場合、平均粒子径が小さいと粒子と粒子の接触面積の増加に伴い流動性が低下する傾向にあった。本発明における粉末材料であれば、一次粒子の平均粒子径が小さくても、この一次粒子は二次粒子を形成しているために、二次粒子の平均粒子径に対応した良好な流動性を備えることができる。また、材料の平均一次粒子径を小さくすることにより、作製される三次元造形物の表面粗さ(Ra)を小さくできるとともに、寸法精度が向上するという効果を得ることができる。さらに、本発明における粉末材料は間隙を備えているため、造形において粉末材料を固化する際の固化効率が向上する。特に、固化手段が熱源の場合、本発明における粉末材料は間隙を備えるために熱が伝わりやすく、粉末材料が溶解しやすい。その結果、二次粒子間の間隙は消失され、従来の鋳型を使用して製造する焼結体(バルク体)に近い、緻密性が高く高硬度の三次元造形物を作製することができる。
このような粉末材料は、例えば、造粒粒子、造粒焼結粒子、コア粒子の周りに微粒子が結合されてなる微粒子被覆粒子、等の形態により実現される。なお、特に三次元造型に適した流動性に優れる粉末材料が実現されるとの観点から、好ましくは造粒粒子または造粒焼結粒子である。
【0033】
<粉末材料の製造方法>
本実施形態における粉末材料は、一次粒子が間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子の形態を有している粒子であり、その製造方法は、かかる形態を実現できる製造方法であれば特に制限されない。ここからは造粒焼結法について例示するが、本実施形態における二次粒子の製造方法はこの限りではない。
造粒焼結法とは、原料粒子を二次粒子の形態に造粒した後、焼結して、原料粒子同士を強固に結合(焼結)させる手法である。この造粒焼結法において、造粒は、例えば、乾式造粒あるいは湿式造粒等の造粒方法を利用して実施することができる。造粒方法としては、具体的には、例えば、転動造粒法、流動層造粒法、撹枠造粒法、破砕造粒法、溶融造粒法、噴霧造粒法、マイクロエマルション造粒法等が挙げられる。なかでも好適な造粒方法として、噴霧造粒法が挙げられる。
【0034】
噴霧造粒法によると、例えば、以下の手順で粉末材料を製造することができる。すなわち、まず、所望の組成を有する原料粒子を用意し、必要に応じてその表面を保護剤等により安定化させる。そしてかかる安定化された原料粒子を、例えばバインダと、必要に応じて含まれる有機材料等からなるスペーサー粒子等とともに適切な溶媒に分散させて噴霧液を用意する。原料粒子の溶媒への分散には、例えば、ホモジナイザー、翼式撹拌機等の混合機、分散機等を用いて実施することができる。そしてこの噴霧液を、超音波噴霧機等を利用して噴霧し液滴を形成する。かかる液滴を、例えば、気流に載せて連続炉を通過させる。すると、液滴は、連続炉内を搬送されながら、炉内の比較的上流に設けられる低温ゾーンで乾燥されて溶媒成分が除去され、次いで、炉内の比較的下流に設けられる高温ゾーンで焼成される。このとき、造粒された原料粒子同士が互いの接点で焼結されて、造粒形状を概ね維持して焼結される。これにより、一次粒子が間隙をもって結合された二次粒子の形態の粒子からなる粉末材料を得ることができる。なお、ここで、一次粒子は、原料粒子とほぼ同等の寸法および形状を有していても良いし、原料粒子が焼成により成長・結合されていても良い。
【0035】
なお、上記の製造工程において、液滴が乾燥された状態では、原料粒子とバインダとが均一な混合状態にあり、原料粒子はバインダにより結着されて混合粒子を構成している。スペーサー粒子を使用する系では、原料粒子とスペーサー粒子とが均一な混合状態でバインダにより結着されて混合粒子を構成している。そして、この混合粒子が焼成されることで、バインダ(およびスペーサー粒子)が消失する(燃えぬける)とともに、原料粒子が焼結されることで、一次粒子が間隙をもって結合された形態の二次粒子が形成される。なお、焼結に際し、原料粒子はその組成や大きさによっては一部が液相となって他の粒子との結合に寄与し得る。そのため、出発材料の原料粒子よりも一次粒子の平均粒子径は大きくなる場合がある。また、乾燥から焼結までの間に、原料粒子以外の成分の消失および焼成による原料粒子の焼き締まりなどから、液滴のサイズよりも得られる二次粒子の平均粒子径のほうが大幅に小さくなる。これら、二次粒子および一次粒子の平均粒子径や、一次粒子間に形成される間隙の大きさおよび割合は、所望の二次粒子の形態に応じて適宜設計することができる。
【0036】
また、上記の製造工程において、調整される噴霧液の原料粒子の濃度は、10〜40質量%であることが好ましい。添加されるバインダとしては、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。添加するバインダは、原料粒子の質量に対して0.05〜10質量%の割合で調整されることが好ましい。焼成される環境は、特に制限はされないが、大気中、真空中もしくは不活性ガス雰囲気中であってもよく、600℃以上1600℃以下の温度で焼結されることが好ましい。特に、有機材料等からなるスペーサー粒子、バインダ等を用いる場合は、造粒粒子中の有機材料を除去する目的で酸素が存在する雰囲気下で焼結されてもよい。必要に応じて、製造された二次粒子を、解砕および分級してもよい。
【0037】
<組成・構成>
粉末材料において、二次粒子の構成(組成)については特に限定されない。作製したい目的の三次元造形物によって適宜選択されればよく、例えば、プラスチック、樹脂、金属、合金、セラミックス、サーメット、またはそれらの混合物からなる二次粒子が挙げられる。例えば、サーメットの二次粒子は、セラミックス粒子からなる原料粒子と金属粒子からなる原料粒子の混合物から得られる、セラミックス一次粒子と金属一次粒子が結合して間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子である。これら二次粒子の構成(組成)は、原料粒子の選択により決定する。
【0038】
原料粒子の組成については特に制限されない。製造したい目的の粉末材料(二次粒子)に合わせて適宜選択され、例えば、プラスチック、樹脂、金属、合金、セラミックス、またはその混合物からなる材料である。
【0039】
樹脂としては、例えば架橋樹脂等、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。架橋樹脂粒子としては、具体的には、「ナノ粒子・超微粒子の新展開(東レリサーチセンター)」、「超微粒子ポリマーの応用技術(シーエムシー(室井宗一監修))」、「高分子微粒子の技術と応用(シーエムシー(尾見信三、他、監修))」などに記載の既知の方法(乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法)により合成することができる。「架橋樹脂粒子」とは、合成樹脂よりなる粒子の内部に橋かけの化学結合(cross−linking)を有する粒子をいう。橋かけの化学結合は、1分子あたり2個以上の反応性基をもつ架橋剤の使用により生成することができる。架橋剤は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれの形態をもとることができる。多官能モノマーを併用した付加重合や、3官能以上のポリオールおよび/または3官能以上のポリイソシアネートを使用したポリウレタンの合成により架橋樹脂粒子を製造することができる。また、官能基(グリシジル基、水酸基、活性化エステル基など)を有する(メタ)アクリル酸を付加重合した後に官能基により架橋反応を起こさせることもできる。架橋樹脂粒子は、粒子内部を架橋した架橋樹脂粒子であり、粒子表面も架橋結合を有するが、粒子間に化学結合を有しないことが好ましい。また、本発明に使用することができる架橋樹脂粒子は、水および汎用の有機溶剤(例えば、アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、およびハロゲン化炭化水素類(例えばメチレンジクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、メチルクロロホルム等))等に膨潤することがあっても、溶解はしない。本発明において原料粒子として使用することができる架橋樹脂粒子は、少なくとも1種の多官能エチレン性不飽和化合物を含む組成物を重合した架橋樹脂粒子であることが好ましい。多官能エチレン性不飽和化合物、すなわち、多官能モノマーとしては、2〜4官能モノマーが好ましく、2官能または3官能モノマーであることがより好ましい。単官能モノマーのみの重合では架橋粒子が得られず、2〜4官能のモノマーで架橋することにより、樹脂粒子間の凝集を防止することができ、また架橋樹脂粒子の粒径分布をシャープに保つことできる。本発明において、2種以上の多官能エチレン性不飽和化合物を含む組成物を重合した架橋樹脂粒子であることが好ましく、多官能エチレン性不飽和化合物が2種以上のエチレン性不飽和化合物を有することも好ましい。2種以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーとしては、少なくとも(メタ)アクリロイル基とアリル基を両方有する多官能エチレン性不飽和化合物が好ましい。架橋樹脂粒子の製造に使用する重合方法としては、疎水性の多官能モノマー・単官能モノマーの混合物を水中に懸濁して懸濁重合したり、また適当な媒体中に分散して分散重合したり、水中に乳化して乳化重合したり、前記モノマー混合物に生成ポリマーの貧溶媒を加えた溶液中での分散重合により、目的とする架橋樹脂粒子を得ることができる。本発明において原料粒子として架橋樹脂粒子を使用する場合は、分散重合法または懸濁重合法により架橋樹脂粒子を形成することが好ましく、分散重合法により架橋樹脂粒子を形成することがより好ましい。単官能の(メタ)アクリル酸エステルおよび二官能のアクリル酸エステルをメタノール・エチレングリコールの混合溶液中で熱重合することにより、粒径が1〜50μmの架橋樹脂粒子を製造することができる。これらの重合において、適宜、乳化剤や分散安定剤を使用することができる。分散安定剤としては、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン(PVP)を例示することができる。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、加熱により成形できる程度の熱可塑性が得られる合成樹脂をいい、その種類については特に制限はない。本明細書において、「熱可塑性」とは、可逆的に、加熱すると軟化して塑性変形が可能となり、冷却すると可逆的に硬化する性質である。一般に、線状あるいは分枝状の高分子からなる化学構造を有する樹脂を考慮することができる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、熱可塑性ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、ポリメチルメタアクリル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、酢酸ビニル等の汎用樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE;m−PPOともいう。)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のエンジニアリング・プラスチック、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のスーパーエンジニアリング・プラスチック等が例示される。なかでも、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、PET、PBT等に代表されるポリアルキレンテレフタレート、ポリメチルメタアクリル等の樹脂であるのが好ましい。これらはいずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。
【0041】
熱硬化性樹脂としては、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる合成樹脂をいい、その種類については特に制限はない。本明細書において、「熱硬化性」とは、加熱によって重合体中で反応が進行し、橋かけがおこって網状構造が形成され、硬化する性質である。具体的には、例えば、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等が例示される。なかでも、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の樹脂であるのが好ましい。この熱可塑性樹脂としては、例えば、低分子単量体の混合物の状態であっても良いし、ある程度まで重合が進行した高分子であってもよい。これらは、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて(ブレンドを含む)用いるようにしても良い。
【0042】
金属および合金としては、例えば、一例として、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、鉄(Fe)、鉄鋼、銅(Cu)、銅合金、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、金(Au)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、亜鉛合金、チタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、ジルコニウム(Zr)およびイリジウム(Ir)等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。
【0043】
セラミックスとしては、例えば、酸化物からなるセラミックス(酸化物系セラミックス)材料や、炭化物、ホウ化物、窒化物、アパタイト等の非酸化物からなるセラミックス材料であってよい。
ここで、酸化物系セラミックスとしては、特に限定されることなく各種の金属の酸化物とすることができる。かかる酸化物系セラミックスを構成する金属元素としては、例えば、B、Si、Ge、Sb、Bi等の半金属元素、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Al、Ga、In、Sn、Pb等の典型元素、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au等の遷移金属元素、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Er、Lu等のランタノイド元素から選択される1種または2種以上が挙げられる。なかでも、Mg、Y、Ti、Zr、Cr、Mn、Fe、Zn、Al、Erから選択される1種または2種以上の元素であることが好ましい。
【0044】
酸化物系セラミックスとしては、より具体的には、例えば、アルミナ、ジルコニア、イットリア、クロミア、チタニア、コバルタイト、マグネシア、シリカ、カルシア、セリア、フェライト、スピネル、ジルコン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化サマリウム、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、マンガン酸化物、酸化タンタル、酸化テルピウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、アンチモン含有酸化スズ、酸化インジウム、スズ含有酸化インジウム、酸化ジルコニウムアルミネート、酸化ジルコニウムシリケート、酸化ハフニウムアルミネート、酸化ハフニウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化ランタンシリケート、酸化ランタンアルミネート、酸化イットリウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化タンタルシリケート等が挙げられる。
【0045】
また、非酸化物系セラミックスとしては、例えば、炭化タングステン、炭化クロム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素などの炭化物、ホウ化モリブデン、ホウ化クロム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタル、ホウ化チタンなどのホウ化物、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物、フオルステライト、ステアタイト、コーディエライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、サイアロン等の複合化物、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等のリン酸化合物等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。
【0046】
さらに、これらの原料粒子は、いずれか1種が単独で二次粒子を構成していても良いし、または2種以上が組み合わされて二次粒子を構成していても良い。例えば、2種以上の原料粒子が二次粒子に含まれる場合には、その一部または全部が複合化物を形成していても良い。例えば、原料粒子がセラミックス材料の場合、このような複合化された二次粒子の例としては、例えば、具体的には、イットリア安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、ガドリニウムドープセリア、ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛や、上記のサイアロン、上記複合酸化物等が挙げられる。かかる複合化物からなる粉末材料を用いることで、当該複合化物からなる造形体を作製することができる。また、2種以上の原料粒子が複合化されずに混合状態で二次粒子(粉末材料)を構成している場合、かかる粉末材料を用いることでそれら原料粒子の一部または全部が複合化した複合化物からなる造形体を作製することができる。
【0047】
<粉末材料の平均粒子径>
粉末材料の平均粒子径自体は、粉末積層造形の粉末材料の平坦化工程において、粉末材料の供給に適した大きさであり得る。二次粒子の平均粒子径(体積平均径)の上限は、特に制限はない。より大きいものとする場合には、例えば、100μm超過とすることができるが、典型的には100μm以下であり、好ましくは75μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは35μmとすることができる。二次粒子の平均粒子径が小さくなるにつれて、例えば積層エリアにおいて粉末材料の充填率が向上する。その結果、作製される三次元造形物の緻密度が増し、仕上がりが良くなる。
【0048】
また、二次粒子の平均粒子径(体積平均径)の下限は、粉末材料の流動性に影響を与えない範囲であれば特に制限はない。より小さいものとする場合には、例えば、20μmとすることができ、好ましくは10μm、例えば5μm等とすることができる。しかしながら、ここに開示される粉末材料は、二次粒子径を必ずしも小さくする必要はない。したがって、例えば、かかる二次粒子を形成する際のハンドリングや粉末材料の流動性を考慮した場合は、平均粒子径の下限は1μm以上とすることが好ましく、5μm以上とするのがより好ましく、例えば、10μm以上とすることが例示される。二次粒子の平均粒子径が大きくなるにつれて、粉末材料の流動性が向上する。その結果、粉末材料の平坦化工程を良好に実施することができ、作製される三次元造形物の仕上がりが良くなる。
【0049】
なお、通常、例えば平均粒子径が10μm未満程度の微細な二次粒子を粉末積層造形の粉末材料として用いると、粒子製造の際の粒子形状の制御が困難となり、また、比表面積の増大に伴いその流動性が低下して平坦化が困難となりがちである。そしてさらに、その質量の小ささから、かかる粉末材料の飛散等が発生し、ハンドリングが困難となり得る。これに対し、ここに開示される粉末材料では、平均粒子径が10μm未満の一次粒子に対し、その複数のもの間隙をもって3次元的に結合させている二次粒子で構成されている。これにより、一次粒子の形態は維持しつつも、重みづけを実現するとともに、異種の原料粒子からなる二次粒子であっても粉末材料中の成分濃度が均一である。これによって、より平均粒子径の小さい二次粒子を用いることによる利点と、より平均粒径の大きな二次粒子を用いることによる利点とを両方兼ね備えた、全く新しい粉末積層造形用の粉末材料が提供され得る。
【0050】
<一次粒子の平均粒子径>
一次粒子の平均粒子径については特に限定されない。
例えば、第1の一次粒子としてのコア粒子の表面に、第2の一次粒子としての微粒子が備えられた微粒子被覆粒子の形態の粉末材料を構成する場合は、これらの粒子の平均粒子径を以下のように調整することができる。
すなわち、コア粒子の平均粒子径は、粉末材料の平均粒子径に近いか、粉末材料の平均粒子径概ね一致する。したがって、コア粒子の平均粒子径は比較的大きく設定することができる。例えば、平均粒子径を100μm以下とすることができ、典型的には50μm以下であり、30μm以下とすることが好ましく、20μm以下とすることがより好ましく、10μm以下とすることが特に好ましい。コア粒子の平均粒子径の下限は特に制限されないが、コア粒子によってある程度の流動性を確保するために、1μm以上とすることが好ましい。コア粒子の平均粒子径は、原料粒子の平均粒子径により調整することができる。
【0051】
一方の微粒子については、上記のコア粒子に対して滑り材のように機能して流動性を顕著に高め得る点で粒径は重要である。微粒子の平均粒子径は、1000nm以下とすることができ、典型的には500nm以下であり得る。この微粒子は、さらに100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが特に好ましい。微粒子の平均粒子径の下限については限定されないが、例えば、1nm以上とすることができ、5nm以上とすることができ、好ましくは10nm以上とすることができる。なお、コア粒子を被覆する微粒子の割合は、質量基準で2000ppm以下程度で十分であり、例えば、100ppm〜2000ppm程度とするのが好ましく、500ppm〜1000ppm程度とするのがより好ましい。
【0052】
一方で、造粒粒子および造粒焼結粒子の形態の粉末材料においては、一次粒子の平均粒子径は、例えば、10μm未満であることが好ましい。このように一次粒子の平均粒子径を微細にすることで、より一層緻密で微細な三次元造形物を作製することが可能となる。かかる一次粒子の平均粒子径は、6μm以下であることが好ましく、例えば、3μm以下であるのがより好ましい。
なお、一般に、ナノメートルオーダーの粉末は単一粒子の重みが小さいことから、僅かな気流にも流され易く、流動性が劣るのが通常である。しかしながら、造粒粒子および造粒焼結粒子においては、二次粒子において重量が確保されるため、一次粒子をナノメートルオーダーで微細にしても流動性が損なわれることがない。かかる観点から、一次粒子の平均粒子径は2μm以下であるのが好ましく、例えば、1μm以下、500nm以下、100nm以下のナノ粒子とすることができる。一次粒子の平均粒子径は特に制限されず、例えば1nm以上とすることができ、例えば2nm以上、5nm以上とすることができる。
なお、造粒粒子および造粒焼結粒子の形態の粉末材料は、二次粒子を構成する一次粒子の間に十分な間隙が設けられる。このような「間隙」とは、例えば、一次粒子が最密充填された場合に必然的に形成される空間よりも、より広い空間を意味している。かかる「間隙」は、好ましくは、当該一次粒子が最密充填された場合に必然的に形成される空間の、1.2倍以上の空間であり得る。この間隙については、例えば、比表面積・細孔分布測定装置等で確認することができる。
【0053】
このように一次粒子の平均粒子径を微細にすることで、例えば、かかる粉末材料を構成する二次粒子自体の融点よりも低い温度で軟化または溶融させることができる。このことは、これまでに予想されていない、全く新しい知見であり得る。したがって、かかる粉末材料は、例えば、粉末積層造形において従来のレーザ出力よりも低い状態で軟化または溶融させることができ、プロセスのコストダウンが可能となる。また、二次粒子の軟化または溶融効率が上がるため、気孔率の少ない緻密な三次元造形物の作製が可能となる。これにより、例えば、当該粉末材料のバルクに近い特性を有する三次元造形物の作製が可能となる。
【0054】
<比表面積>
粉末材料の比表面積については、特に限定はされないものの、例えば、0.1m
2/gより大きいことが好ましい。すなわち、かかる粉末材料は、比表面積が(極めて)大きい二次粒子を主として構成されているほうが好ましい。具体的には、例えば、シリカ(SiO
2)の比重が2.2g/mlであることから、半径がrmの真球のシリカ粒子の比表面積は1.36/r×10
−6m
2/gで表される。したがって、例えば、半径が30μmの真球のシリカ粒子の比表面積は0.045m
2/gで表される。また、αアルミナ(Al
2O
3)の比重が3.98g/mlであることから、半径がrmの真球のアルミナの比表面積は0.75/r×10
−6m
2/gで表される。したがって、例えば、半径が30μmの真球のアルミナ粒子の比表面積は0.025m
2/gで表される。さらには、市販の溶融粉砕したアルミナを、JIS Z 8830:2013(ISO9277:2010)「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」の規定に準じて測定すると、約0.1m
2/g程度となる。これに対し、ここに開示される粉末材料の比表面積は0.1m
2/g以上が好ましい。このような比表面積の増大に伴い、ここに開示される粉末材料は、表面形態が三次元的に入り組んだ複雑な形状(構造)を有することになる。すなわち、実質的な寸法(例えば、表面の凹凸部分の厚み等)は、粉末材料自体の平均粒子径に拘束されることなく、大幅に低減され得る。したがって、このような極めて大きな比表面積を有することにより、融点の高いセラミックス材料であっても、比較的低温のレーザ等の熱源の熱を効率良く吸収して十分な軟化および溶融が実現され得る。延いては、セラミックスからなる三次元造形物効率良く作製することが可能な粉末材料が提供される。
【0055】
また、比較的低温の熱で積層が可能とされるため、粒成長が抑制され得る温度における積層造形が可能とされる。加えて、融点の低い元素を含む二次粒子であっても熱により粉末材料の組成が変化され難い。したがって、作製される三次元造形物の組成を簡便に制御することが可能となる。よって、かかる二次粒子の比表面積は、特に範囲は制限はされないものの、より広大であることが望ましく、0.1m
2/g以上であることが好ましい。
【0056】
<粒度範囲>
粉末材料の粒度範囲は、粉末積層造形に使用される装置の種類や条件に応じて適宜設定されることが好ましい。例えば、具体的には、粉末材料の粒度範囲は、5〜20μm、45〜150μm、5〜75μm、32〜75μm、15〜45μm、20〜63μm、あるいは25〜75μmのように適宜調整することができる。
【0057】
<真円度>
さらに、ここに開示される粉末材料は、平均真円度が1.5未満(例えば、1以上1.5未満)であるのが好ましい。なお、かかる平均真円度は、粉末材料を構成する二次粒子の平均真球度を間接的に表し得る指標として採用されたものであり、当該二次粒子を任意の方向から平面視した場合の平均真円度を意味している。したがって、かかる平均真円度は、当該二次粒子が、必ずしも二次元的に真円に近い形態であることを意図するものではなく、本質的には、三次元的に真球に近い形態であることを意図するものである。
【0058】
特に、セラミックスを含む二次粒子とする場合、球形化処理が施されていないセラミックスは、結晶性が高いことから結晶系の外形がそのまま粒子の形態となって表れやすい傾向があることが分かった。とりわけ、粉砕物であるセラミックス粒子は結晶面に沿って破砕されるためにその傾向が強かった。また、理想的な結晶系の外形を示さない場合であっても、特定の結晶面が組み合わされてなる多面体に近い形態をその外形に表し得るものであった。したがって、結晶系に由来する稜や隅角(頂点であり得る)や角部を有するセラミックスを含む二次粒子からなる粉末材料は、その粉末材料の平坦化工程においてセラミックスを含む二次粒子同士が互いにかみ合ったりして、流動性が低下しがちであった。
【0059】
これに対し、上記のようにセラミックスを含む二次粒子の外形が真球に近くなり、例えば、当該粒子を構成するセラミックスの結晶性を反映した結晶面や稜、隅角、角部等の影響が低減されることで、かかるセラミックスを含む二次粒子の流動性を著しく高めることができる。換言すると、ここに開示される二次粒子の形態を有する粉末材料において、一次粒子は、セラミックの高い結晶性が反映された形態であってよく、例えば、角柱状、塊状等の外形であっても、上記の平均真円度を満たすことで、高い流動性を確保することが可能とされる。なお、かかる平均真円度は、例えば、平均アスペクト比等の指標では表し得ないレベルの平均真球度を反映し得る指標であり得る。これにより、粉末積層造形の平坦化工程において、その流動性が高められるかかるセラミックス粒子の平均真円度は、可能な限り1に近いことが好ましく、1以上の値であり得る。また、平均真円度は、2.7以下であるのが好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下、例えば、1.2以下であり得る。
【0060】
<アスペクト比>
なお、二次粒子の外形については、平面視における平均アスペクト比が1.4未満であるとより好ましい。というのは、上記のとおり、平均真円度がより1に近い二次粒子において、真円度は、二次粒子の全体的な形態よりも表面形態をより反映するものであり得る。換言すると、上述の真円度は、真円に近い二次粒子を評価する場合については、二次粒子の平面視における輪郭線がミクロなレベルで複雑になればなるほど、その値は二次粒子の全体の外形の変化の度合いを超えて大きくなりやすい傾向にある。したがって、真円度に加えて、さらにアスペクト比により二次粒子の外形について規定することで、全体としての外形がより真球に近い、すなわち平面視においては真円に近い、二次粒子とすることができる。
かかる平均アスペクト比は、粉末材料の流動性を考慮すると、1.5以下であるのが好ましく、1.3以下であるのがより好ましい。さらには、例えば、1.15以下とすることができ、1あるいは1により近いことが望ましい。
【0061】
<フラクタル次元>
また、この二次粒子については、平均フラクタル次元が1.5未満であることも好ましい態様の一つである。かかる二次粒子は、表面形態がミクロなレベルで複雑なものであり得る。したがって、かかる粒子表面の複雑な形態を更に多様な指標で規定することで、外形がより真球に近い二次粒子とすることができる。フラクタル次元は、個々の粒子表面の複雑な形態を測るために広く一般に利用される指標であり、平均フラクタル次元はここに開示される二次粒子の表面の滑らかさを指し図るには好適な指標であり得る。平均フラクタル次元を1.5未満に規定することで、さらに流動性の向上された粉末材料を実現し得る。かかる平均フラクタル次元は、粉末材料の流動性を考慮すると、1.1以下であるのが好ましく、1.05以下であるのがより好ましい。
【0062】
<安息角>
加えて、ここに開示される粉末材料については、安息角が39度未満であることも好ましい態様の一つである。安息角は、従来より粉体の流動性を示すために広く採用されてきた指標の一つであり得る。そして、例えば、粉末材料が供給装置内および造形装置内を搬送される際の、自発的な流動性を実際的に反映し得る指標であり得る。したがって、かかる安息角を小さく規定することで、流動性が高い粉末材料を実現することができる。延いては、均質な三次元造形物をより生産性良く作製することができる粉末材料であり得る。
かかる安息角は、粉末材料の流動性を考慮すると、36度以下であるのが好ましく、32度以下であるのがより好ましい。さらには、例えば、30度以下とすることもできる。安息角の下限に特に制限はないが、安息角が小さすぎると粉末材料が飛散し易くなったり、粉末材料の供給量の制御が困難になったりする場合がある。したがって、おおよその目安として、安息角は20度以上とすることが例示される。
【0063】
<フローファンクション>
なお、特に制限されるものではないが、ここに開示される粉末材料は、フローファンクションが5.5以上であることが好ましい。
上記の安息角は、無荷重状態での粉末材料の流動性を評価し得る指標であった。一方で、このフローファンクションは、粉末材料を圧密した状態でせん断応力を測定することによりその流動特性を評価するものであって、粉末材料のハンドリング性をより実際的に表現し得る指標となり得る。したがって、かかる構成によっても、例えば、平均粒子径が30μm未満の粉末材料について流動性が高いと判断することができ、三次元造形物をより一層生産性良く作製し得る粉末材料を提供することができる。
【0064】
<圧縮強度>
粉末材料を構成する二次粒子の圧縮強度の下限は、一般的な粉末材料に用いる造粒−焼結セラミックス粒子の圧縮強度の範囲であれば特に制限はなく、好ましくは1MPaであり、より好ましくは10MPaであり、さらに好ましくは100MPaである。二次粒子の圧縮強度が高くなるにつれて、粉末材料を構成する二次粒子の形態の保持力が高まり、二次粒子の崩壊を防止できる。その結果、積層エリアへの材料粉末の供給が安定する。
【0065】
また、二次粒子の圧縮強度の上限も、一般的な粉末材料に用いる二次粒子の圧縮強度の範囲であれば特に制限はなく、好ましくは2000MPaであり、より好ましくは1500MPaであり、さらに好ましくは1000MPaである。二次粒子の圧縮強度が低くなるにつれて、粉末材料の造形効率が向上する。
【0066】
<三次元造形物の製造方法>
本発明における粉末材料を用いた三次元造形物の粉末積層による製造方法は、例えば、次のような方法がある。
図1は粉末積層造形のための積層造形装置の簡略図の一例を示しており、大まかな構成として、積層造形が行われる空間である積層エリア10と、粉末材料を貯留しておくストック12と、積層エリア10への粉末材料の供給を補助するワイパ11と、粉末材料を固化するための固化手段(インクジェットヘッド、レーザ発振器等)13と、を備えている。積層エリア10は、典型的には、外周が囲まれた造形空間内を造形面より下方に有し、この造形空間内に昇降可能な昇降テーブル14を備えている。この昇降テーブル14は、所定厚みΔt1ずつ降下することができ、この昇降テーブル14上に目的の造形物を造形してゆく。ストック12は、積層エリア10の傍に配置され、例えば、外周が囲まれた貯留空間内に、シリンダー等によって昇降可能な底板(昇降テーブル)を備えている。底板が上昇することで、所定量の粉末材料を造形面に供給(押し出し)することができる。
【0067】
このような積層造形装置では、昇降テーブル14を造形面より所定厚みΔt1だけ下げた状態で積層エリア10へ粉末材料層20を供給することで、所定厚みΔt1の粉末材料層20を用意することができる。このとき、造形面にワイパ11を走査させることで、ストック12から押し出された粉末材料を積層エリア10上に供給するとともに、粉末材料の表面を平坦化して、均質な粉末材料層20を形成することができる。そして、例えば、形成された第1層目の粉末材料層20に対し、第1層目のスライスデータに対応した固化領域にのみ、固化手段13を介して熱源や固化組成物等を与えることで、粉末材料を所望の断面形状に焼結または接合等し、第1層目の粉末固化層21を形成することができる。
【0068】
この後、昇降テーブル14を所定厚みΔt1だけ下げて再度粉末材料を供給し、ワイパ11でならすことで第2層目の粉末材料層20を形成する。そしてこの粉末材料層20の第2層目のスライスデータに対応した固化領域にのみ、固化手段13を介して熱源や固化組成物等を与えて粉末材料を固化させて第2層目の粉末固化層21を形成する。このとき、第2層目の粉末固化層21と、下層である第1層目の粉末固化層21とが一体化されて、第2層目までの積層体を形成する。
【0069】
引き続き、昇降テーブル14を所定厚みΔt1だけ下降させて新たな粉末材料層20を形成し、固化手段13を介して熱源や固化組成物等を与えて所要箇所を粉末固化層21とする、との工程を繰り返すことで、目的とする三次元造形物を製造することができる。
【0070】
なお、粉末材料を固化するための手段としては、例えば、インクジェットにより粉末材料を固化するための組成物を噴射する方法や、レーザにより熱を与えて粉末材料を溶融固化する方法、または粉末材料が光硬化の性質をもつものであれば、その光硬化の特性に合わせて紫外線の照射等が選択される。具体的には、粉末材料を固化するための手段がレーザの場合は、例えば炭酸ガスレーザやYAGレーザを公的に用いることができる。また、粉末材料を固化するための手段がインクジェットによる組成物の噴射である場合は、接着剤としてポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、ポリアミド等を含む組成物や、例えば重合開始剤等を含む組成物を使用することができる。さらに、粉末材料として光硬化の性質を持つものを使用する場合は、紫外線の波長領域を持つエキシマレーザ(308nm)、He−Cdレーザ(325nm)、Arレーザ(351〜346nm)、可視光硬化樹脂を使用する場合はArレーザ(488nm)等を使用することができる。つまりは、使用する粉末材料の特性に応じて、適切な粉末材料を固化するための手段を選択することがよい。
【0071】
前記実施形態は次のように変更してもよい。
・ 粉末材料中およびそれを構成する二次粒子、さらには二次粒子を構成する一次粒子は、不可避不純物あるいは添加剤などの主となる成分以外の成分を含有してもよい。つまり、純度は特に制限されない。しかしながら、例えば、より機能性の高い三次元造形物を形成する用途の場合には、意図しない物質(元素)の混入は避けることが好ましく、粉末材料の純度は高い方が好ましい。かかる観点においては、二次粒子およびそれを構成する一次粒子の純度は高い方が好ましい。例えば、純度が95質量%以上であることが好ましく、さらには99質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上、例えば99.99質量%以上とすることができる。
・ これらの粉末材料は、例えば、形成される三次元造形物の色調を調整する目的で他の元素、例えば、セラミックスやサーメットであれば、移金属元素や、Na、K、Rb等の元素)が導入されたり、機能性を高める目的で他の元素が導入されるなどしてもよい。また、上記の粉末材料を構成する元素は、一部がイオンまたは錯体等の形態で含まれていても良い。
【0072】
・ 粉末材料は、一次粒子が間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子の形態を有している粒子から構成されている粉末であるが、前記二次粒子以外の形態を有する粒子を含有してもよい。ただし、前記二次粒子以外の粒子の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。その理由としては、まず、本発明は、一次粒子が間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子から構成されている粉末材料を粉末積層造形に用いることで、流動性等の改題を解決できることを見出したものである。よって、粉末材料の全体量に対して、特定の形態を示す二次粒子の比率が多いほど、本発明の効果は大きくなる。換言すれば、粉末材料の全体量に対して、特定の形態を示す二次粒子の比率が少なくなると、本発明の効果が得にくくなる。また、本発明の特定の形態を示す二次粒子は、次のような考え方に基づき、さらに良い効果を発揮する。例えば、金属粒子、セラミックス粒子等の複数種類の単一粒子を混合して粉末材料とすると、比重が異なるため、比重の大きな材料からなる粒子は下へ、逆に比重の小さな粒子は上へ行く傾向にあり、粉末材料中で成分の偏りが生じる。一方で、本発明のように特定の形態を示す二次粒子とすれば、例えば、金属粒子とセラミックス粒子が混在するサーメット粒子を二次粒子とする場合や、複数の材料粒子を混合して二次粒子を形成する場合においても、二次粒子としての比重は均一であるため、粉末材料中で成分の偏りが生じることは少なく、製造される三次元造形物の仕上がりが向上する。このことからも、粉末材料の全体量に対して、特定の形態を示す二次粒子の比率が多い方が好ましい。よって、二次粒子の粉末材料に対する含有量の下限は、好ましくは90重量%であり、より好ましくは95重量%である。また、上限は通常98重量%であり、添加剤などの二次粒子以外の成分の混合により本発明の効果を損なわない程度に適宜調整されてもよい。
【0073】
<実施例>
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0074】
下記の表1〜4に示す101種類の粉末材料を用意した。
(造粒焼結粉)
サンプル1〜4−2の粉末材料は、それぞれ表1に示す平均粒子径を有するタングステンカーバイド(WC)からなる原料粒子およびコバルト(Co)からなる原料粒子が、造粒および焼結されることにより、表1に示す平均粒子径のWC/12質量%Coサーメット粉末材料を構成している。同様に、サンプル101〜112の粉末材料は、それぞれ、表1に示す平均粒子径を有するタングステンカーバイド(WC)およびニッケル(Ni)、クロムカーバイド(CrC)およびニッケルクロム合金(NiCr)、タングステンカーバイド(WC)およびステライトを原料粒子とし、この組み合わせの原料粒子が造粒および焼結されることにより、表1に示す平均粒子径のサーメット粉末材料を構成している。
【0075】
サンプル9〜15−2の粉末材料は、それぞれ表2に示す平均粒子径を有するアルミナ(Al
2O
3)からなる原料粒子が、造粒および焼結されることにより、表2に示す平均粒子径のAl
2O
3セラミックス粉末材料を構成している。サンプル35〜36−2,119〜132の粉末材料は、それぞれ表3に示す平均粒子径を有するニッケルクロム合金(NiCr)からなる原料粒子または各種金属または合金からなる原料粒子が、造粒および焼結されることにより、表3に示す平均粒子径のNiCr合金を始めとする各種金属または合金からなる粉末材料を構成している。
【0076】
サンプル37および37−2の粉末材料は、表4に示す平均粒子径を有するイットリア(Y
2O
3)からなる原料粒子が、造粒および焼結されることにより、表4に示す平均粒子径のY
2O
3セラミックス粉末材料を構成している。同様に、サンプル133〜135の粉末材料は、それぞれ表4に示す平均粒子径を有する、ジルコニア(ZrO
2)に対して8質量%のイットリア(Y
2O
3)を、アルミナ(Al
2O
3)に対して4質量%または13質量%のチタニア(TiO
2)を混合した混合粉末を原料粒子とし、これらの原料粒子を造粒および焼結することにより、表3に示す平均粒子径のセラミック複合材料からなる粉末材料を構成している。
【0077】
(微粒子付着粉)
サンプル16〜17−2および114〜118の粉末材料は、表2に示す平均粒子径のAl
2O
3ナノ粒子付着粉末材料(微粒子被覆粉)である。この粉末材料は、表2に示すように、一次粒子(平均粒子径:3μm,6μm,24μm,23μm,13μm)からなるアルミナ(Al
2O
3)コア粒子と、一次粒子(平均粒子径:0.1μm,0.01μm,0.5μm)からなるアルミナ(Al
2O
3)ナノ粒子とを適宜ブレンドすることにより、コア粒子の表面にナノ粒子を静電引力により付着させることで調製したものである。
【0078】
(焼結粉砕粉)
サンプル5〜8の粉末材料は、焼結−粉砕法により製造される、表1に示す平均粒子径を有するWC/12質量%Coサーメット粒子により構成されている。
(溶融粉砕粉)
サンプル18〜32の粉末材料は、溶融−粉砕法により製造される、表2に示す平均粒子径を有するAl
2O
3セラミックス粒子により構成されている。
(PEG被覆粉)
サンプル33および33−2の粉末材料は、ポリエチレングリコール(PEG)によってAl
2O
3粒子が被覆されることにより、表2に示す平均粒子径のPEG被覆Al
2O
3粒子により構成されている。
(アトマイズ粉)
サンプル34は、アトマイズ法により製造される、表3に示す平均粒子径を有するNiCr合金粒子により構成されている。
【0079】
造粒−焼結法による粉末材料の調製は以下の手順で行った。すなわち、まず、所定の平均粒子径の原料粒子(一次粒子、例えば、タングステンカーバイドやコバルト、アルミナ、イットリア等の超微粒子)の表面処理を行い、目的の組成となるよう配合したのち、バインダー(PVA:ポリビニルアルコール)と共に溶媒(水およびアルコールの混合溶液等)中で混合して十分に分散させ、スラリーを調製する。次いで、このスラリーを、噴霧造粒機および乾燥焼結炉等を用いて液滴状に造粒し、乾燥および焼結させることで二次粒子を得る。そして、かかる二次粒子を必要に応じて分級することで粉末材料とした。この造粒−焼結法により得られたサンプル1〜4−2、101〜112、9〜15−2、35〜37−2および119〜135の粉末材料に含まれる二次粒子は、例えば、
図2に示されるように、ごく微細な一次粒子が互いに結合して間隙を持った三次元的構造を有しており、略球形状の二次粒子を構成している。なお、これらのサンプルにおける一次粒子の大きさは、
図2の例に限定されず、原料粒子の平均粒子径等に対応して様々に異なっている。
【0080】
焼結−粉砕法および溶融−粉砕法による粉末材料の調製は以下の手順で行った。すなわち、まず、目的の組成の粉末材料(例えば、タングステンカーバイドとコバルトのサーメット粉末、アルミナセラミックス粉末、イットリアセラミックス粉末等)が得られるよう原料粒子を配合し、かかる原料粒子を加熱して焼結または溶融させた後、冷却して固化物(インゴッド)を用意する。そしてかかる固化物を機械的手段により粉砕し、必要に応じて分級を行うことで、粉末材料とした。この焼結−粉砕法および溶融−粉砕法により得られたサンプル5〜8、18〜32の粉末材料に含まれる粒子は、比較的緻密かつ強固であって、粉砕粉末特有のエッジを有した角状あるいは塊状の形状を有するものであった。
【0081】
なお、サンプル16〜118の粉末材料は、原料粒子として用いたAl
2O
3粒子の形態を反映して、比較的緻密かつ強固であって、一見すると角状あるいは塊状の形状を有するものであった。
また、サンプル33の粉末材料は、原料粒子として用いたAl
2O
3粒子の形態を反映して、比較的緻密かつ強固であって、エッジを有した角状あるいは塊状の形状を有するものであった。また、サンプル34の粉末材料は、エッジは見られないものの比較的いびつな球形を有するものであった。
【0082】
サンプル1〜8の粉末材料の形態および流動性を評価し、その結果を表1に併せて示した。また、サンプル9〜33の粉末材料の形態および流動性を評価し、その結果を表2に併せて示した。さらに、サンプル34〜37の粉末材料の形態および流動性を評価し、その結果を表3に併せて示した。表1、表2、表3および表4中の表示「−」は、それぞれの物性値の測定および流動性の評価を未実施であることを示す。なお、表1、表2、表3および表4に示した物性値の測定方法については以下に説明する。
【0083】
[粉末材料の平均粒子径]
粉末材料の平均粒子径は、それぞれの粉末材料をレーザ回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA−300)を用いて測定した、体積基準の粒度分布に基づくD50粒径である。粉末材料の平均粒子径の測定結果を、各表の粉末材料(二次粒子)の「平均粒子径」の欄に示した。
【0084】
[原料粒子の平均粒子径]
原料粒子の平均粒子径は、上記粉末材料と同様であって、平均粒子径が1μm以上の原料粒子についてはレーザ回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA−300)を用いて測定した、体積基準の粒度分布に基づくD50粒径である。なお、平均粒子径が1μm未満の原料粒子粉については、後述の粉末材料の一次粒子径と同様に、比表面積を基に平均粒子径を算出した。原料粒子の平均粒子径の測定結果を、各表の原料粒子の「平均粒子径」の欄に示した。
なお、原料粒子と製造された粉末材料との比較として、粉末材料の平均粒子径に対する原料粒子の平均粒子径の比を、「D
原料/D
粉末」として併せて示した。
【0085】
[粉末材料の一次粒子径]
粉末材料の平均粒子径は、それぞれの粉末材料の比表面積をもとに算出した値を採用した。すなわち、粉末材料に関する「平均粒子径(Dave)」は、別途測定した粉末材料の比表面積をSm、密度をρとして、下式に基づき求めた値である。なお、各粉末材料の密度としては、例えば、WC/12質量%Co:14.31g/ml、Al
2O
3:3.98g/ml、Y
2O
3:5.03g/mlの値を採用した。その他の材料については、製品シートおよび公称組成などから算出した値を用いることができる。このようにして求めた二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径の値を、各表の原料粒子(一次粒子)の「平均粒子径」の欄に示した。
Dave=6/(ρSm)
【0086】
[比表面積]
粉末材料の比表面積は、流動式比表面積自動測定装置(島津製作所製、フローソーブII 2300)を用い、吸着ガスとして窒素ガスを使用したBET法に基づき測定した。具体的には、試料としての粉末材料を試料管に投入したのち、当該試料を冷却し、試料管内に窒素ガスを導入して、定容量法ガス吸着法による吸脱着等温線を作成する。そしてかかる吸脱着等温線における、一層目の単分子層吸着から多層吸着に移行する過程をBET法に基づき解析することにより単分子層吸着量を算出し、さらに窒素ガス分子一個の占める断面積を積算することで、比表面積を得る。このようにして求めた粉末材料の比表面積の測定結果を、各表の「比表面積」の欄に示した。
【0087】
[粒度範囲]
粉末材料の粒度分布は、それぞれの粉末材料をレーザ回折/散乱式粒度測定器を用いて測定した。粒度範囲の下限の値は、粉末材料の全体積に占める、ある粒径以下の粒子の体積の合計が5%となるときの粒径値であり、レーザ回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA−300)を用いて求められる。一方で、粒度範囲の上限の値は、粉末材料の全体積に占める、ある粒径以上の粒子の体積の合計が5%となるときの粒径値を示し、レーザ回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA−300)を用いて求められる。二次粒子から構成される粉末材料の粒度範囲の測定結果を、各表の「粒度範囲」の欄に示した。
【0088】
[平均真円度]
粉末材料の平均真円度は、それぞれの粉末材料を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)により観察して得た平面視像(倍率1000〜2000倍)について、画像解析ソフト(株式会社日本ローバー製、Image−Pro Plus)を用い、100以上の二次粒子について測定した真円度の算術平均値を算出することで求めた。なお、真円度は、SEM像のコントラストから二次粒子の輪郭をトレースすることで、かかる二次粒子の周囲長および面積(平面視)を算出し、これらの値から、真円度=(周囲長
2)÷(4×π×面積)の関係に基づき求めた値である。粉末材料の平均真円度の測定結果を、各表の「真円度」の欄に示した。
【0089】
[平均アスペクト比]
粉末材料の平均アスペクト比は、それぞれの粉末材料を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)により観察して得た平面視像(倍率1000〜2000倍)について、画像解析ソフト(株式会社日本ローバー製、Image−Pro Plus)を用い、100以上の二次粒子について測定したアスペクト比の算術平均値を算出することで求めた。なお、アスペクト比は、SEM像のコントラストから二次粒子の輪郭をトレースし、その相当楕円(同面積でかつ一次および二次モーメントが等しい楕円)の長軸の長さを長径a、短軸の長さを短径bとし、これらの値からa/bで定義されるアスペクト比を求めた値である。粉末材料の平均アスペクト比の測定結果を、各表の「アスペクト比」の欄に示した。
【0090】
[平均フラクタル次元]
粉末材料子の平均フラクタル次元は、それぞれの粉末材料を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)により観察して得た平面視像について、画像解析ソフト(株式会社日本ローバー製、Image−Pro Plus)を用い、100以上の二次粒子について測定したフラクタル次元の算術平均値を算出することで求めた。SEMでの解析条件は、倍率:2000倍、ビット深さ:8、走査速度:80/100sとした。なお、フラクタル次元の測定に用いるSEM像は、二次粒子の周囲長が30ピクセル以上(好ましくは1280ピクセル以上。本実施形態では、960×1280ピクセルとした。)となる解像度を実現するものを用意した。そして、フラクタル次元の測定では、かかるSEM像のコントラストから二次粒子の輪郭をトレースすることで、二次粒子の周囲長および面積(平面視)を算出し、これらの値から、真円度=(周囲長
2)÷(4×π×面積)の関係に基づきフラクタル次元を求めた。粉末材料の平均真円度の測定結果を、各表の「フラクタル次元」の欄に示した。
【0091】
[圧縮強度]
フラクタル次元の圧縮強度は、それぞれの粉末材料を微小圧縮試験装置(株式会社島津製作所製、MCTE−500)を用いて10個の二次粒子について測定した圧縮強度の算術平均値を算出することで求めた。具体的には、式:σ=2.8×L/π/d
2に従って算出される二次粒子の圧縮強度σ[MPa]を示す。上式中、Lは臨界荷重[N]を表し、dは二次粒子の平均粒子径[mm]を表す。臨界荷重は、一定速度で増加する圧縮荷重を圧子で二次粒子に加えたときに、圧子の変位量が急激に増加する時点において二次粒子に加えられた圧縮荷重の大きさである。二次粒子の圧縮強度の測定結果を、各表の「圧縮強度」の欄に示した。
【0092】
[安息角]
粉末材料の流動性を評価する指標として、安息角を測定した。安息角は、それぞれの粉末材料をA.B.D.粉体特性測定器(筒井理科器械株式会社製、ABD−72形)に供することで得た値である。粉末材料の安息角の測定結果を、各表の「安息角」の欄に示した。この評価において、二次粒子の組成が、サーメット(例えば、WC/12質量%Co)の場合は33度以下、セラミックス(例えば、Al
2O
3やY
2O
3)の場合は34度以下、金属や合金(例えば、NiCr)の場合は50度以下の安息角であれば実用上好適なレベルであるといえる。
【0093】
[フローファンクション]
粉末材料の流動性を評価する別の指標として、それぞれの粉末材料を粉体流動性分析装置(Freeman Tchnology社製、パウダーレオメーターFT4)により測定した。粉末材料のフローファンクションの測定結果を、各表の「F.F.」の欄に示した。
【0098】
表1に示されるように、粉末材料がWC/12質量%Coサーメット二次粒子である場合、本発明のサンプル1〜4の粉末材料は、二次粒子の形態で全体がほぼ球形であるため、平均粒子径が10μmレベルから100μmレベルのものまでいずれも安息角が31度以下と低い値であった。これに対し、本発明の要件を満たさないサンプル5〜8は、粉砕されているために粒子の形状が球形とはならず、安息角が34度以上とサンプル1〜4と比較して高い値であった。このように、粉末材料の形態を異ならしめることにより、ここに開示される粉末材料は流動性が改善されていることが確認できた。なお、粉末材料の組成を様々に変えたサンプル101〜102についても、比重の違いなどにより安息角に差は見られるものの、いずれも安息角が34度以下と良好な流動性を示すことが確認された。
【0099】
また、表2に示されるように、粉末材料がAl
2O
3セラミックスからなる造粒焼結粉である場合、表1のサーメットの場合と同様に、本発明の要件を満たすサンプル9〜17の粉末材料はいずれも安息角が34度以下あるいはフローファンクションが5.6以上と、流動性が実用上好適なレベルであることが確認できた。一方の、本発明の要件を満たさないサンプル18〜32の溶融粉砕粉は安息角がいずれも35以上であり、PEG被覆粉はフローファンクションが5.4と、同じ材質でありながらサンプル9〜17と比較して流動性が劣ることが確認できた。
【0100】
なお、サンプル16〜17およびサンプル114〜118の微粒子被覆粉(ナノ粒子付着粉)は、コア粒子の平均粒子径が粉末材料の平均粒子径にほぼ一致する。そこで、平均粒子径の近い溶融粉砕粉と流動性を比較すると、いずれも流動性が改善されていることが確認された。すなわち、サンプル16の微粒子被覆粉は、サンプル33のPEG被覆粉と平均粒子径が同じである。しかし、フローファンクションは、サンプル16が5.6〜5.7と高いのに対してサンプル33が5.4と低く、サンプル16の流動性が高められていることが確認できた。また、サンプル115および116の微粒子被覆粉は、サンプル22〜24の溶融粉砕粉と平均粒子径がほぼ同じである。ここで、サンプル115および116は安息角が35〜36度であるのに対してサンプル22〜24は35〜47と大きく、サンプル115および116の流動性が高められていることが確認できた。なお、サンプル17,114〜118の結果から、コア粒子を被覆する微粒子の量が変化しても流動性に大きな影響は見られないことがわかった。このことから、例えば、コア粒子を被覆する微粒子は500〜2000ppm程度で十分であることがわかった。
【0101】
さらに、表3に示されるように、粉末材料がNiCr合金二次粒子である場合、本発明の要件を満たす二次粒子からなるサンプル35および36の粉末材料は、本発明の要件を満たさない単一粒子からなるサンプル34と比較して、流動性が実用上好適なレベルであった。また、サンプル35および36の粉末材料は主として二次粒子から構成されていることにより、サンプル34の粉末材料に比較して比表面積が大きい。そのため、サンプル35および36の粉末材料は、サンプル34の粉末材料に比較して、短時間の加熱で溶融し、造形自体も短時間で可能なことが確認された。また、本発明の要件を満たす金属材料からなる粉末材料の場合、その組成はNiCr合金に限らず、耐食性および耐熱性等に優れる特殊合金であって、肉盛溶接に使用される、ステライトや、CoNiCrAlY合金、ハステロイ、インコネル、トリバロイ、ワスパロイ等のNi−Co基合金、マルエージング鋼等の低炭素鋼、AISI4140等の工具鋼、ハイス等の高速度鋼、SUS316L等のステンレス鋼の場合も、良好な流動性が得られることが確認された。また、これらの粉末材料は、比表面積が0.05m
2/g以上(例えば、0.1m
2/g以上、さらには0.3m
2/g以上)であり、3次元造形用材料として造形に供したところ、溶融までの熱源の照射時間が短くて済むことが確認された。換言すると、より少ないエネルギーでの造形が可能となることが確認された。
【0102】
また、表4に示されるように、サンプル37の粉末材料は、原料粒子が10nmという微細なY
2O
3セラミックス粒子からなる粉末材料ではあるが、この原料粒子が二次粒子を構成することで、流動性が実用上好適なレベルであることが確認できた。また、サンプル133〜135に示すように、組成の異なるセラミックス粒子を混合して粉末材料を構成することもでき、ここに開示される技術によると、様々に組成の異なる粉末材料を柔軟かつ簡便に用意できることもわかった。
【0103】
次に、サンプル1〜8、9、10、15、18、19、32および34〜36を用いて、粉末積層造形を行った。なお、それぞれのサンプル番号は、表1、表2および表3に示すそれぞれのサンプル番号と対応しており、粉末積層造形に用いるサンプルもこれらと同一のものを使用している。上記に挙げたサンプルを用いて粉末積層造形を行い、作製された三次元造形物の評価を実施した。その結果を、表5、表6および表7に併せて示した。表5、表6および表7中の表示「−」は、粉末材料の流動性が悪いためにそれぞれ粉末積層造形ができず、三次元造形物の評価ができなかったことを示す。なお、表5、表6および表7に示した評価の測定方法や粉末積層造形の方法について以下に説明する。
【0104】
[レーザ粉体肉盛り法(レーザメタルデポジション法;LMD)]
上記で用意した粉末材料を、粉末積層造形であるレーザ粉体肉盛り法により積層造形し、三次元造形物を得た。具体的には、上記の粉末材料を用いて、基材としてのSS400鋼板(50mm×70mm×10mm)に対してLD励起YAGレーザを照射するとともに、アルゴン(Ar)シールドガスを供給しながら、基材上の三次元造形物としての積層体の厚さが約10mmとなるようにレーザ粉体肉盛り加工を行った。レーザ発振器としては、固定レーザとダイオードレーザとの発信が可能なディスクレーザ発振器(トルンプ(株)製,TruDisc−4006)を用いた。なお、加工時の条件として、レーザ焦点は約2.0φmm、レーザ出力は約500W、加工速度は1000mm/minであった。表5、表6および表7の「方法」の欄における表示「LMD」とは、そのサンプルを用いて、レーザ粉体肉盛り法により三次元造形物が作製されたことを意味する。
【0105】
[選択的レーザ溶融法(セレクトレーザメルティング法;SLM)]
上記で用意した粉末材料を、粉末積層造形である選択的レーザ溶融法により積層造形し、三次元造形物を得た。積層造形には、レーザ焼結型粉末積層造形システム(ドイツEOS社製,EOSINT−M250)を用いた。具体的には、上記の粉末材料を積層エリアに供給して、装置に付随のワイパで粉末材料を平坦化して薄層(40μm)を形成した。その粉末材料からなる薄層に対してYAGレーザを照射し、三次元造形物(単層)を形成した。そして、粉末材料の供給と平坦化の工程、それに対してレーザ照射する工程を繰り返し、三次元造形物としての積層体(積層数250層、約100mm×100mm×10mm)を形成した。なお、加工時の条件として、レーザ焦点は約150φμm、レーザ出力は約400W、温度環境は常温、粉末材料周囲の雰囲気はArガスであった。表5、表6および表7の「方法」の欄における表示「SLM」とは、そのサンプルを用いて、選択的レーザ溶融法により三次元造形物が作製されたことを意味する。
【0106】
[電子ビーム溶融法(エレクトロンビームメルティング法;EBM)]
上記で用意した粉末材料を、粉末積層造形である電子ビーム溶融法により積層造形し、三次元造形物を得た。積層造形には、三次元電子ビーム積層造形装置(ARCAM AB社製,Q10)を用いた。具体的には、上記の粉末材料を積層エリアに供給して、装置に付随のワイパで粉末材料を平坦化して薄層(150μm)を形成した。その粉末材料からなる薄層に対して電子ビームを照射し、三次元造形物(単層)を形成した。そして、粉末材料の供給と平坦化の工程、それに対して電子ビーム照射する工程を繰り返し、三次元造形物としての積層体(積層数67層、約100mm×100mm×10mm)を形成した。なお、加工時の条件として、電子ビーム焦点は約0.2φmm、電子ビーム出力は粉末材料がWC/12質量%Coの場合は約500、NiCrの場合は約800、Al
2O
3の場合は約2000W、温度環境は常温、粉末材料周囲の雰囲気は高真空後にHeガス導入であった。表5、表6および表7の「方法」の欄における表示「EBM」とは、そのサンプルを用いて、電子ビーム溶融法により三次元造形物が作製されたことを意味する。
【0107】
[硬度]
作製した三次元造形物の仕上がりを評価する指標として、三次元造形物の硬度を測定した。硬度は、それぞれの三次元造形物に対して、JIS Z 2244:2009およびJIS R1610:2003に規定されるビッカース硬さ試験方法に基づき測定した。具体的には、硬微小硬度測定器(株式会社島津製作所製、HMV−1)を用い、三次元造形物の表面に対面角136°のダイヤモンド圧子を試験力1.96Nで押圧したときに得られる圧痕から、ビッカース硬さ(Hv0.2)を算出した。また、上記三次元造形物を作製した粉末材料と同じ粉末材料のバルク体の表面について同様にビッカース硬さ(Hv0.2)を算出した。そして、次式に基づき硬度比を算出した。三次元造形物の硬度比の結果を、表5、表6および表7の「硬度」の欄に示した。具体的には、ビッカース硬さが1以上の場合には「◎」とし、0.95以上1より小さい場合は「○」、0.90以上0.95より小さい場合は「△」、0.90より小さい場合は「×」とした。
硬度比=(三次元造形物のビッカース硬さ)/(バルク体のビッカース硬さ)
【0108】
[表面粗さ]
作製した三次元造形物の仕上がりを評価する指標として、三次元造形物の表面粗さを測定した。表面粗さは、それぞれの三次元造形物の表面に対して、JIS B 0601:2001準拠して測定された算術平均粗さRaを求めた。三次元造形物の表面粗さの測定結果を、表5、表6および表7の「Ra」の欄に示した。具体的には、表面粗さが50μm以下の場合には「◎」とし、50μmより大きく80μm以下の場合は「○」、80μmより大きく100μm以下の場合は「△」、100μmより大きい場合は「×」とした。
【0109】
[気孔率]
作製した三次元造形物の仕上がりを評価する指標として、三次元造形物の気孔率を測定した。気孔率は、それぞれの三次元造形物の断面に対して、画像解析法により測定された値を求めた。具体的に、本実施形態では、画像解析ソフトとして、Image−Pro(Media Cybernetics社製)を使用した。三次元造形物の気孔率の測定結果を、表5、表6および表7の「気孔率」の欄に示した。気孔率が1%以下の場合には「◎」とし、1%より大きく10%以下の場合は「○」、10%より大きく20%以下の場合は「△」、20%より大きい場合は「×」とした。
【0113】
表5、表6および表7に示されるように、本発明の要件を満たすサンプル1〜4、9、10、15、35および36の粉末材料を用いて作製した三次元造形物においては、本発明の要件を満たさないサンプル5〜8、18、19、32および34を用いて作製した三次元造形物と比較して、硬度、表面粗さおよび気孔率において優れていた。つまり、本発明の要件を満たす流動性の良い粉末材料を用いることで、仕上がりの良い三次元造形物を作製できることが示された。