特許第6563169号(P6563169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563169
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】酸性液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20190808BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20190808BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20190808BHJP
【FI】
   A23L27/00 D
   A23L27/10 F
   A23L27/60 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-248546(P2013-248546)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-104361(P2015-104361A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年4月26日
【審判番号】不服2018-10941(P2018-10941/J1)
【審判請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真美
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 菅原 洋平
【審判官】 冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−75764号公報(JP,A)
【文献】 特開2003−47433号公報(JP,A)
【文献】 特開2011−115142号公報(JP,A)
【文献】 特開平9−121767号公報(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103070385号明細書(CN,A)
【文献】 タケサン オリーブドレッシング(ローストガーリック)200ml,Amazon,2012年 6月12日,URL,http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BF%E3%82%B1%E3%82%B5%E3%83%B3−%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%
【文献】 極みの料理 焼きあなごのえだまめソース,アサヒビール,2013年 7月16日,URL,http://hicbc.com/tv/umainokiwami/archive/recipe/20130716/index.htm
【文献】 武政 三男,新時代のスパイス活用術57 スパイスの適合性を把握する「頻度パターン分析法」(29),フードリサーチ,2007年,630号,p.48−50 5.キユーピー カルパッチョドレッシング,キユーピー業務用商品情報,2013年 1月,URL,http://web.archive.org/web/20130227031755/http://www.kewpie.co.jp/prouse/products/detail.php
【文献】 サラダサポートシーザーサラダドレッシング,理研ビタミン株式会社,2013年 3月 3日,URL,http://web.archive.org/web/20130303003144/http://www.rikenvitamin.jp/business/food/catalog/d
【文献】 にんにくの加工と利用,月刊フードケミカル,1999年,15(1)(165),p.54−56
【文献】 指原信廣,酸性条件下で受けるストレス・損傷に対する細菌の挙動とその制御,日本食品微生物学会雑誌,2009年,26(2),p.81−85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L27/00-27/60
A23L19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚醤と未加熱のガーリックオイルとステビアを含有し、
魚醤の含有量が10質量%以上40質量%以下であり、
魚醤1部に対する未加熱のガーリックオイルの含有質量比が0.001部以上0.1部以下である、
酸性液状調味料。
【請求項2】
請求項1記載の酸性液状調味料において、
魚醤1部に対するステビアの含有量比が0.0001部以上である、
酸性液状調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚醤を配合しているにもかかわらず、魚醤の臭みを感じ難い酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
魚醤は魚介類を塩漬けした後、発酵して得られる調味料で、濃厚な旨みを有するのが特徴である。そのため、ドレッシングや出汁、ソース等の各種調味料に旨みを付与するために用いられている。
しかし、魚醤は特有の臭みを有しているため、配合すると臭みによりドレッシングの風味や、それを用いた食品の風味を損なう問題があった。
【0003】
そのような問題を解決するため、穀類から得た麹を発酵させて得た発酵調味料と焼酎又は泡盛を魚醤に配合することで、魚醤の臭みを低減させる方法が提案されている。(特許文献1)
しかし、その場合、アルコールを飛ばすために加熱をする必要があり、調味料の風味を損なう懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3671968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、魚醤を配合しているにもかかわらず、魚醤の臭みを感じ難い酸性液状調味料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、魚醤にガーリックオイルを配合することによって、魚醤の臭みを感じ難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)魚醤とガーリックオイルとを含有する酸性液状調味料、
(2)(1)記載の酸性液状調味料において、
魚醤1部に対するガーリックオイルの含有質量比が0.001部以上である、
酸性液状調味料、
(3)(1)又は(2)記載の酸性液状調味料において、
ステビアをさらに含有し、
魚醤1部に対するステビアの含有質量比が0.0001部以上である、
酸性液状調味料、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、魚醤を配合しているにもかかわらず、魚醤の臭みを感じ難い酸性液状調味料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0010】
<本発明の特徴>
本発明は、魚醤とガーリックオイルを含む酸性液状調味料であり、魚醤を配合しているにもかかわらず、魚醤の臭みを感じ難いことに特徴を有する。
【0011】
<酸性液状調味料>
本発明において、酸性液状調味料とは、常温流通を可能にするためにpHを4.6以下に調整した調味料をいう。
このような本発明の酸性液状調味料としては、一般的に乳化液状ドレッシング、分離液状ドレッシング、ノンオイルドレッシング等と称されるものを含む。
【0012】
<魚醤>
本発明の酸性液状調味料に用いる魚醤は、魚介類を塩漬けした後、微生物で発酵させて得られるものであり、一般的に魚醤と称されるものであればいずれのものでも良い。
魚醤に用いる魚介類としては、特に制限はないが、例えばイワシ、アジ、サバなどが挙げられる。
【0013】
本発明の酸性液状調味料は、魚醤の含有量を特に限定していないが、魚醤を多く含有したものに好適であり、例えば魚醤の含有量が5%以上40%以下であるとよく、さらに10%以上25%以下であるとよい。
魚醤の含有量が前記範囲である場合、魚醤の臭みを感じ難くする本発明の効果を奏しやすく、且つ魚醤の旨みが強すぎないため、バランスのよい風味の酸性液状調味料が得られやすい。
【0014】
<ガーリックオイル>
本発明の酸性液状調味料は、ガーリックオイルを含むものである。
ガーリックオイルを含有することにより、魚醤の臭みを感じ難くなる。
本発明に用いるガーリックオイルとは、ガーリックと食用油脂を混合や加熱処理等することでガーリックの香気成分等を食用油脂に移行させたものであるが、特に、魚醤の臭みをより感じ難くする点で、ガーリックと食用油脂を加熱処理をせずに製した未加熱のガーリックオイルを用いるとよい。
ガーリックオイルに用いる食用油脂は特に制限されないが、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、オリーブ油、コーン油、胡麻油、サフラワー油等が挙げられる。
【0015】
本発明の酸性液状調味料において、ガーリックオイルの含有量は特に限定していないが、魚醤の臭みを感じ難い点で、0.01%以上1%以下含むとよく、さらに0.05%以上0.5%以下含むことよい。
【0016】
<魚醤に対するガーリックオイルの割合>
本発明の酸性液状調味料は、魚醤の臭みを感じ難い点で、魚醤1部に対するガーリックオイルの含有質量比が0.0005部以上であるとよく、さらに0.005部以上であるとよい。
なお、上限の含有質量比は定めていないが、ガーリックオイルの風味が強すぎず、魚醤とガーリックオイルの風味のバランスに優れた酸性液状調味料を得られやすいことから、魚醤1部に対するガーリックオイルの含有質量比は0.1部以下であるとよい。
【0017】
<ステビア>
本発明の酸性液状調味料は、魚醤の臭みをより感じ難くするためにステビアを含むことができる。
本発明に用いるステビアとしては、食用のものであればいずれのものでも良く、例えば、ステビア抽出物、酵素処理ステビア、果糖転移ステビアなどが挙げられる。
【0018】
<魚醤に対するステビアの割合>
本発明の酸性液状調味料は、魚醤の臭みをより感じ難い点で、魚醤1部に対するステビアの含有質量比が0.0001部以上であるとよく、さらに0.001部以上であるとよい。
なお、上限の含有質量比は定めていないが、ステビアの甘味が強すぎず、魚醤とステビアの風味のバランスに優れた酸性液状調味料が得られやすいことから、魚醤1部に対するステビアの含有質量比は0.01部以下であるとよい。
【0019】
<その他の原料>
本発明の酸性液状調味料には、本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状調味料に一般的に使用されている原料を適宜選択し配合することができる。
このような原料としては、例えば、食酢、食塩、醤油、核酸系旨味調味料、柑橘果汁等の各種調味料、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン等の乳化材、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、各種具材等が挙げられる。
【0020】
<酸性液状調味料の製造方法>
本発明の酸性液状調味料の製造は、一般的な酸性液状調味料の製造方法に準じて行うことができる。
例えば、一般的に酸性液状調味料の原料として使用されている、食酢、ショ糖、食塩、各種エキス、清水、乳化材、増粘剤等から本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し、これらに魚醤を加えて常法に準じて水相原料液を調製した後、ガーリックオイル、食用油脂を注加して製造すればよい。
【0021】
以下、本発明を実施例、比較例及び試験例に基づき、更に説明する。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
下記に示す配合割合で仕上がり100kgの酸性液状調味料を製した。ショ糖、魚醤、ガーリックペースト、食酢、食塩、キサンタンガム及び清水をミキサーで均一に混合し水相原料混合液を調製した後、ガーリックオイル、食用油脂を注加して酸性液状調味料を製した。
【0023】
ショ糖 20%
魚醤 15%
食用油脂 10%
食酢(酸度5%) 5%
食塩 3%
ガーリックペースト 2%
キサンタンガム 0.2%
ガーリックオイル(未加熱) 0.1%
清水で 100%
【0024】
[試験例1:魚醤の臭みに及ぼすガーリックオイルの影響]
ガーリックオイルが、魚醤の臭みに与える影響を検討するため、魚醤、ガーリックオイルを表1に示す割合で配合した以外は実施例1と同様の方法で、実施例2乃至5、比較例1の酸性液状調味料を製した。
【0025】
各酸性液状調味料を試食し、魚醤の臭みの強さを下記3段階で評価を行った。
【0026】
<風味の評価基準>
○ 魚醤の臭みを感じない。
△ 魚醤の臭みをやや感じるが、気にならない程度である。
× 魚醤の臭みを感じる。
【0027】
[表1]
【0028】
表1より、魚醤にガーリックオイルを配合した場合、魚醤の臭みを感じ難いことがわかる(実施例1乃至4)。
特に、魚醤1部に対してガーリックオイルを0.005部以上(実施例1及び3)配合した場合、魚醤の臭みをより感じ難いことがわかる。
【0029】
[実施例5]
未加熱のガーリックオイルの代わりに、ガーリックと食用油脂を加熱処理して得たガーリックオイルを用いた以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の酸性液状調味料を製した。
得られた実施例5の酸性液状調味料を、試験例1と同様の方法で評価を行った。
実施例5の酸性液状調味料は、実施例1よりは魚醤の臭みを感じるが、気にならない程度であった。
【0030】
[実施例6]
ステビアを0.005%配合した以外は実施例1と同様の方法で、実施例6の酸性液状調味料を製した。
魚醤1部に対するステビアの含有質量比は、0.0003部であった。
【0031】
[実施例7]
ステビアを0.05%配合した以外は実施例1と同様の方法で、実施例7の酸性液状調味料を製した。
魚醤1部に対するステビアの含有質量比は、0.003部であった。
【0032】
[試験例2:魚醤の臭みに与えるステビアの影響]
ステビアが魚醤の臭みに与える影響を検討するため、実施例1、6及び7の酸性液状調味料を試食し、試験例1と同じ基準で評価を行った。
【0033】
実施例6及び7の酸性液状調味料は、実施例1の酸性液状調味料よりも魚醤の臭みを感じなかった。
試験例2の評価結果から、魚醤1部に対するステビアの含有質量比が0.0001部以上(実施例6及び7)、特に0.001部以上(実施例7)であると、魚醤の臭みをより感じ難くいことがわかる。