特許第6563324号(P6563324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563324
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/31 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190808BHJP
   C23C 18/30 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20190808BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20190808BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C23C18/31 E
   H01L21/304 643A
   C23C18/30
   H01L21/88 J
   H01L21/28 A
   H01L21/288 E
   H05K3/42 610B
   H05K3/18 M
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-242601(P2015-242601)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-106089(P2017-106089A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】星 野 智 久
(72)【発明者】
【氏名】藤 田 啓 一
(72)【発明者】
【氏名】濱 田 正 人
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−078431(JP,A)
【文献】 特開2015−063755(JP,A)
【文献】 特開2015−048529(JP,A)
【文献】 特開2005−029810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をめっき処理するための基板処理装置であって、
前記基板に対して、複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体を含む触媒液を供給する触媒液供給部と、
前記基板に対して、めっき液を供給するめっき液供給部と、
前記触媒液供給部およびめっき液供給部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5員環の芳香族又は脂肪族の複素環式化合物、および、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の6員環の脂肪族の複素環式化合物から選択され、
前記制御部が、前記基板に対して、前記触媒液供給部により前記触媒液が供給され、前記触媒液の供給後に、前記基板に対して、前記めっき液供給部により前記めっき液が供給されるように、前記触媒液供給部およびめっき液供給部を制御する、前記基板処理装置。
【請求項2】
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5員環の芳香族の複素環式化合物である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5員環の脂肪族の複素環式化合物である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の6員環の脂肪族の複素環式化合物である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記複素環式化合物が、ピロリン、ピロール、イミダゾリン、イミダゾール、ピラゾリン、ピラゾール、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジンおよびピペラジンからなる群から選択される、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記複素環式化合物が、水酸基、カルボキシル基および硫酸基からなる群から選択される置換基を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板をめっき処理するための基板処理方法であって、
前記基板に対して、複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体を含む触媒液を供給して触媒層を形成する触媒層形成工程と、
前記触媒層形成工程の後に、前記基板に対して、めっき液を供給して、無電解めっきにより、めっき層を形成するめっき工程とを含
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5員環の芳香族又は脂肪族の複素環式化合物、および、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の6員環の脂肪族の複素環式化合物から選択される、基板処理方法。
【請求項8】
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5員環の芳香族の複素環式化合物である、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5員環の脂肪族の複素環式化合物である、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記複素環式化合物が、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の6員環の脂肪族の複素環式化合物である、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記複素環式化合物が、ピロリン、ピロール、イミダゾリン、イミダゾール、ピラゾリン、ピラゾール、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジンおよびピペラジンからなる群から選択される、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記複素環式化合物が、水酸基、カルボキシル基および硫酸基からなる群から選択される置換基を有する、請求項7〜11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
基板処理装置の動作を制御するためのコンピュータにより実行されたときに、前記コンピュータが前記基板処理装置を制御して、請求項7〜12のいずれか一項に記載の基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。また、本発明は、本発明の基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIなどの半導体装置は、実装面積の省スペース化や処理速度の改善といった課題に対応するべく、より一層高密度化することが求められている。高密度化を実現する技術の一例として、複数の配線基板を積層することにより三次元LSIなどの多層基板を作製する多層配線技術が知られている。
【0003】
多層配線技術においては一般に、配線基板間の導通を確保するため、配線基板を貫通するとともに銅などの導電性材料が埋め込まれた貫通ビアホール(TSV(Through Silicon Via))が配線基板に設けられている。導電性材料が埋め込まれたTSVを作製するための技術の一例として、無電解めっき法が知られている。
【0004】
無電解めっきによりめっき層を形成する場合には、下地とめっき層との密着性向上が課題となる。このような下地とめっき層との密着性を向上させるための技術の一例として、シランカップリング剤などのカップリング剤を用いた下地処理により、下地の上に自己組織化単分子膜(SAM)を形成し、自己組織化単分子膜を介して、めっき層形成の触媒として機能するパラジウム等の金属触媒粒子を下地に結合させる方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−302773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無電解めっきによりめっき層を形成する時の下地処理として、シランカップリング剤による膜(層)形成(シランカップリング処理)を行う場合、めっき層形成の触媒として用いられるパラジウム等の金属触媒粒子がシランカップリング剤によって覆われことがあるため、めっき層形成のための触媒としての機能を十分に果たさず、めっき層形成が効率的に行われないことがある。
【0007】
そこで、本発明は、基板に対してシランカップリング処理を行わなくても、基板の表面にパラジウム原子を結合させて触媒層を形成することができる、基板処理装置および基板処理方法、ならびに、該基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5または6員環の複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体を含む触媒液を用いることにより、基板に対してシランカップリング処理を行わなくても、基板の表面にパラジウム原子を結合させて触媒層を形成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、本発明者は、上記触媒液を用いて触媒層を形成することにより、基板に対してシランカップリング処理を行わなくても、基板の表面にパラジウム原子が結合することを、X線光電子分光分析法(XPS)を用いた分析により確認している。さらに、上記触媒液を用いて形成した触媒層を有する基板において、無電解めっきにより、触媒層上にめっき層が形成されることを実際に確認している
【0009】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)基板をめっき処理するための基板処理装置であって、前記基板に対して、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5または6員環の複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体を含む触媒液を供給する触媒液供給部と、前記基板に対して、めっき液を供給するめっき液供給部と、前記触媒液供給部およびめっき液供給部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記基板に対して、前記触媒液供給部により前記触媒液が供給され、前記触媒液の供給後に、前記基板に対して、前記めっき液供給部により前記めっき液が供給されるように、前記触媒液供給部およびめっき液供給部を制御する、前記基板処理装置。
(2)前記複素環式化合物が、ピロリン、ピロール、イミダゾリン、イミダゾール、ピラゾリン、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジンおよびピペラジンからなる群から選択される、(1)に記載の基板処理装置。
(3)前記複素環式化合物が、水酸基、カルボキシル基および硫酸基からなる群から選択される置換基を有する、(1)または(2)に記載の基板処理装置。
(4)基板をめっき処理するための基板処理方法であって、前記基板に対して、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5または6員環の複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体を含む触媒液を供給して触媒層を形成する触媒層形成工程と、前記触媒層形成工程の後に、前記基板に対して、めっき液を供給して、無電解めっきにより、めっき層を形成するめっき工程とを含む、基板処理方法。
(5)前記複素環式化合物が、ピロリン、ピロール、イミダゾリン、イミダゾール、ピラゾリン、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジンおよびピペラジンからなる群から選択される、(4)に記載の基板処理方法。
(6)前記複素環式化合物が、水酸基、カルボキシル基および硫酸基からなる群から選択される置換基を有する、(4)または(5)に記載の基板処理方法。
(7)基板処理装置の動作を制御するためのコンピュータにより実行されたときに、前記コンピュータが前記基板処理装置を制御して、(4)〜(6)のいずれかに記載の基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記憶媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板に対してシランカップリング処理を行わなくても、基板の表面にパラジウム原子を結合させて触媒層を形成することができる基板処理装置および基板処理方法、ならびに、該基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す基板処理装置が備える基板処理部の構成を示す概略平面図である。
図3図3は、図2に示す基板処理部が備えるめっき処理部の構成を示す概略断面図である。
図4図4は、図1に示す基板処理装置により行われる基板処理方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<基板処理装置の構成>
本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す概略図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1は、基板処理部2と、基板処理部2の動作を制御する制御部3とを備える。
【0015】
基板処理部2は、基板に対する各種処理を行う。基板処理部2が行う各種処理については後述する。
【0016】
制御部3は、例えばコンピュータであり、主制御部と記憶部とを備える。主制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより基板処理部2の動作を制御する。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等の記憶デバイスで構成されており、基板処理部2において実行される各種処理を制御するプログラムを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記録されたものであってもよいし、その記憶媒体から記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体としては、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカード等が挙げられる。記憶媒体には、例えば、基板処理装置1の動作を制御するためのコンピュータにより実行されたときに、コンピュータが基板処理装置1を制御して後述する基板処理方法を実行させるプログラムが記録される。
【0017】
<基板処理部の構成>
次に、基板処理部2の構成について図2を参照して説明する。図2は、基板処理部2の構成を示す概略平面図である。なお、図2中の点線は基板を表す。
【0018】
基板処理部2は、基板に対する各種処理を行う。基板処理部2が行う処理は、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5または6員環の芳香族または脂肪族の複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体を含む触媒液(以下、「本発明の触媒液」、または、単に「触媒液」ともいう)により、基板表面に触媒層を形成する触媒層形成処理と、触媒層形成処理により形成された触媒層上に、無電解めっき層を形成する無電解めっき処理とを含む限り特に限定されない。したがって、基板処理部2が行う処理には、触媒層形成処理、および、触媒層形成処理後に行われる無電解めっき処理の他に、その他の処理が含まれていてもよい。その他の処理は、例えば、加工処理、洗浄処理、リンス処理、焼きしめ処理、無電解銅(Cu)めっき処理、電解銅(Cu)めっき処理等である。加工処理としては、例えば、基板表面に導体層を作成するための凹部を形成する凹部形成処理等が挙げられる。加工処理は、例えば、触媒層形成処理の前に行われる。洗浄処理は、洗浄液により基板を洗浄する処理であり、例えば、触媒層形成処理の前および/または後に行われる。リンス処理は、リンス液により基板に残存する各種溶液を洗い流す処理であり、洗浄処理の後、次の処理を行う前に行われる。焼きしめ処理とは、無電解めっき処理により触媒層上に形成された無電解めっき層の焼きしめを行う処理である。無電解Cuめっき処理とは、無電解めっき処理により触媒層上に形成された無電解めっき層の上に、無電解Cuめっき層を形成する処理である。形成された無電解Cuめっき層は、電解Cuめっき処理を行う際のシード層としての機能を有する。電解Cuめっき処理とは、無電解Cuめっき処理により形成された無電解Cuめっき層(シード層)上に、電解Cuめっき層を形成する処理である。これらのその他の処理は、1種または2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0019】
本実施形態においては、予め表面に凹部が形成された基板を基板処理部2に搬入して各種処理を行うが、表面に加工処理がされていない基板を基板処理部2に搬入して、基板表面に凹部を形成する加工処理を行い、その後に各種処理に供してもよい。本実施形態において、基板処理部2は、本発明の触媒液により、基板表面に触媒層を形成する触媒層形成処理と、触媒層形成処理により基板表面に形成された触媒層上に、無電解めっき層を形成する無電解めっき処理とを含む処理を行う。
【0020】
基板処理部2は、搬入出ステーション21と、搬入出ステーション21に隣接して設けられた処理ステーション22とを備える。
【0021】
搬入出ステーション21は、載置部211と、載置部211に隣接して設けられた搬送部212とを備える。
【0022】
載置部211には、複数枚の基板を水平状態で収容する複数の搬送用機(以下「キャリアC」という。)が載置される。
【0023】
搬送部212は、搬送機構213と受渡部214とを備える。搬送機構213は、基板を保持する保持機構を備え、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能となるように構成されている。
【0024】
処理ステーション22は、基板に、触媒層形成処理および無電解めっき処理を含む処理を行うめっき処理部4を備える。本実施形態において、処理ステーション22が有するめっき処理部4の数は2以上であるが、1であってもよい。本実施形態において、めっき処理部4は、所定方向に延在する搬送路221の両側に配列されているが、搬送路221の一方側に配列されていてもよい。また、基板処理部2はさらに、加工処理部、焼きしめ処理部、無電解Cuめっき処理部、電解Cuめっき処理部等を備えていてもよい。各処理部においては、上述した加工処理、焼きしめ処理、無電解Cuめっき処理、電解Cuめっき処理がそれぞれ行われる。
【0025】
搬送路221には、搬送機構222が設けられている。搬送機構222は、基板を保持する保持機構を備え、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能となるように構成されている。
【0026】
以下、図4に示すように、めっき処理部4における基板処理前の初期基板(めっき処理部4による基板処理の対象となる基板)を「基板W1」(図4(a))、基板W1の表面に触媒層91を形成する触媒層形成処理後の基板を「基板W2」(図4(b))、基板W2の触媒層上に無電解めっき層92を形成する無電解めっき処理後の基板を「基板W3」(図4(c))という。また、無電解めっき処理後の基板W3に対してその他の処理が行われる場合、基板W3の無電解めっき層上に無電解Cuめっき層93を形成する無電解Cuめっき処理後の基板を「基板W4」(図4(d))、基板W4の凹部に電解Cuめっき94を充填する電解Cuめっき処理後の基板を「基板W5」(図4(e))、基板W5の裏面側(凹部を有する面とは反対側)を化学機械研磨処理した後の基板を「基板W6」(図4(f))という。
【0027】
基板処理部2において、搬入出ステーション21の搬送機構213は、キャリアCと受渡部214との間で基板W1、W3の搬送を行う。具体的には、搬送機構213は、載置部211に載置されたキャリアCから基板W1を取り出し、取り出した基板W1を受渡部214に載置する。また、搬送機構213は、処理ステーション22の搬送機構222により受渡部214に載置された基板W3を取り出し、載置部211のキャリアCへ収容する。
【0028】
基板処理部2において、処理ステーション22の搬送機構222は、受渡部214とめっき処理部4との間で基板W1、W3の搬送を行う。具体的には、搬送機構222は、受渡部214に載置された基板W1を取り出し、取り出した基板W1をめっき処理部4へ搬入する。また、搬送機構222は、めっき処理部4から基板W3を取り出し、取り出した基板W2を受渡部214に載置する。
【0029】
<めっき処理部の構成>
次に、めっき処理部4の構成について図3を参照して説明する。図3は、めっき処理部4の構成を示す概略断面図である。なお、図3において、「W」は、基板の処理段階に応じて上述した基板W1〜W3のいずれかを表す。
【0030】
めっき処理部4は、本発明の触媒液を用いて、基板W1の表面に触媒層を形成する触媒層形成処理と、触媒層形成処理後の基板W2の触媒層上に無電解めっき層を形成する無電解めっき処理とを含む処理を行う。また、めっき処理部4が行う処理は、本発明の触媒液を用いて、基板W1の表面に触媒層を形成する触媒層形成処理と、触媒層形成処理後の基板W2の触媒層上に、無電解めっき層を形成する無電解めっき処理とを含む限り特に限定されない。したがって、めっき処理部4が行う処理には、触媒層形成処理、および、触媒層形成処理後に行われる無電解めっき処理以外の処理が含まれていてもよい。本実施形態において、めっき処理部4は、基板W1に触媒液を供給して、基板W1の表面に触媒層形成処理を行う触媒液供給部43a、および、触媒層形成処理後の基板W2に無電解めっき層を形成するためのめっき液を供給して、基板W2の触媒層上に無電解めっき層を形成させるめっき液供給部45の他に、洗浄液供給部43bおよびリンス液供給部43cを含む。洗浄液供給部43bは、基板を洗浄する洗浄液を供給し、リンス液供給部43cは、基板に残存する各種溶液を洗い流すリンス液を供給する。洗浄液供給部43bおよびリンス液供給部43cを備えるか否かは任意であり、これらの供給部により行われる処理は、別の装置等を用いて行われてもよい。
【0031】
基板W1は、通常、基板材料として用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、絶縁性基板を用いることができる。絶縁性基板は、凹部を有していてもよい。絶縁性基板は、例えば、絶縁性のシリコン基板である。シリコン基板として、ホウ素等の3価元素の原子、リン等の5価元素の原子等の不純物を含むポリシリコンを用いる場合、ポリシリコンに含まれる不純物が高濃度(高濃度ドープポリシリコン)であると、導電性を有することがある。したがって、不純物を含むポリシリコンを基板として用いる場合、不純物の濃度は、ポリシリコン1cm当たり1015個(1015個/cm)未満である。不純物として複数種の原子が含まれる場合、上記不純物原子の個数は各種原子の数の合計を意味する。また、絶縁性基板としては、絶縁性のシリコン基板の他に、基板材料の表面に、SiO膜、SiN膜、Low−k膜と呼ばれる低誘電率膜等の層間絶縁膜を形成したものを用いることもできる。Low−k膜は、例えば、比誘電率が二酸化シリコンの比誘電率よりも低い膜、例えば、SiOC膜等である。
【0032】
めっき処理部4は、チャンバ41を備え、チャンバ41内で触媒層形成処理および無電解めっき処理を含む基板処理を行う。
【0033】
めっき処理部4は、基板保持部42を備える。基板保持部42は、チャンバ41内において鉛直方向に延在する回転軸421と、回転軸421の上端部に取り付けられたターンテーブル422と、ターンテーブル422の上面外周部に設けられ、基板W1の外縁部を支持するチャック423と、回転軸421を回転駆動する駆動部424とを備える。
【0034】
基板W1は、チャック423に支持され、ターンテーブル422の上面からわずかに離間した状態で、ターンテーブル422に水平保持される。本実施形態において、基板保持部42による基板W1の保持方式は、可動のチャック423によって基板W1の外縁部を把持するいわゆるメカニカルチャックタイプのものであるが、基板W1の裏面を真空吸着するいわゆるバキュームチャックタイプのものであってもよい。
【0035】
回転軸421の基端部は、駆動部424により回転可能に支持され、回転軸421の先端部は、ターンテーブル422を水平に支持する。回転軸421が回転すると、回転軸421の上端部に取り付けられたターンテーブル422が回転し、これにより、チャック423に支持された状態でターンテーブル422に保持された基板W1が回転する。制御部3は、駆動部424の動作を制御し、基板W1の回転タイミング、回転速度等を制御する。
【0036】
めっき処理部4は、基板保持部42に保持された基板W1に対して、それぞれ、触媒液L1、洗浄液L2およびリンス液L3を供給する触媒液供給部43a、洗浄液供給部43bおよびリンス液供給部43cを備える。
【0037】
触媒液供給部43aは、基板保持部42に保持された基板W1に対して、触媒液L1を吐出するノズル431aと、ノズル431aに触媒液L1を供給する触媒液供給源432aとを備える。触媒液供給源432aが有するタンクには、触媒液L1が貯留されており、ノズル431aには、触媒液供給源432aから、バルブ433a等の流量調整器が介設された供給管路434aを通じて、触媒液L1が供給される。
【0038】
洗浄液供給部43bは、基板保持部42に保持された基板W1に対して、洗浄液L2を吐出するノズル431bと、ノズル431bに洗浄液L2を供給する洗浄液供給源432bとを備える。洗浄液供給源432bが有するタンクには、洗浄液L2が貯留されており、ノズル431bには、洗浄液供給源432bから、バルブ433b等の流量調整器が介設された供給管路434bを通じて、洗浄液L2が供給される。
【0039】
リンス液供給部43cは、基板保持部42に保持された基板W1に対して、リンス液L3を吐出するノズル431cと、ノズル431cにリンス液L3を供給するリンス液供給源432cとを備える。リンス液供給源432cが有するタンクには、リンス液L3が貯留されており、ノズル431cには、リンス液供給源432cから、バルブ433c等の流量調整器が介設された供給管路434cを通じて、リンス液L3が供給される。
【0040】
触媒液L1、洗浄液L2およびリンス液L3は、いずれもめっき液M1を使用する無電解めっき処理前に行われる前処理用の溶液である。
【0041】
本発明の触媒液である触媒液L1は、ヘテロ原子として1または2個の窒素原子を有する単環の5または6員環の芳香族または脂肪族の複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体を含む。このような錯体を含む触媒液を用いることにより、シランカップリング剤による処理を行わなくても、基板の表面にパラジウム原子を結合させて触媒層を形成することができる。パラジウムイオンと共に錯体を構成する複素環式化合物のうち5員環の芳香族のものとしては、例えば、ピロリン、ピロール、イミダゾリン、イミダゾール、ピラゾリン、ピラゾール等が挙げられ、6員環の芳香族のものとしては、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等が挙げられる。5員環の脂肪族のものとしては、例えば、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン等が挙げられ、6員環の脂肪族のものとしては、例えば、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。これらの複素環式化合物のうち位置異性体を有するものは、それぞれの位置異性体も包含される。また、これらの複素環式化合物は置換基を有していてもよい。置換基は親水性基であることが好ましい。親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、硫酸基等が挙げられる。錯体を構成するパラジウムイオンを供給するパラジウムイオン供給源は、パラジウムイオンを供給できるものである限り特に限定されない。パラジウムイオン供給源としては、例えば、塩化パラジウム等のパラジウム塩が挙げられる。また、触媒液L1の溶媒は、パラジウムをイオン化できる溶媒である限り特に限定されない。触媒液L1の溶媒としては、例えば、パラジウム塩を溶解してパラジウムイオンを発生させることができる極性溶媒を用いることができる。極性溶媒は有機極性溶媒および無機極性溶媒のいずれも用いることができる。好ましい極性溶媒は純水等の水である。
【0042】
触媒液L1のpHは、複素環式化合物とパラジウムイオンとの錯体形成を妨げない範囲で適宜調整することができる。
【0043】
また、基板W1が凹部を有する場合、凹部の下部まで触媒液L1を十分に行き渡らせるために、触媒液Lの粘性係数を適宜調整することが好ましい。
【0044】
洗浄液L2としては、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、マロン酸等を使用することができる。
【0045】
リンス液L3としては、例えば、純水等を使用することができる。
【0046】
めっき処理部4は、ノズル431a〜431cを駆動するノズル移動機構46を有する。ノズル移動機構46は、アーム461と、アーム461に沿って移動可能な駆動機構内蔵型の移動体462と、アーム461を旋回および昇降させる旋回昇降機構463とを有する。ノズル431a〜431cは、移動体462に取り付けられている。ノズル移動機構46は、ノズル431a〜431cを、基板保持部42に保持された基板W1の中心の上方の位置と基板W1の周縁の上方の位置との間で移動させることができ、さらには、後述するカップ47の外側にある待機位置まで移動させることができる。本実施形態において、ノズル431a〜431cは共通のアームにより保持されているが、それぞれ別々のアームに保持されて独立して移動できるようになっていてもよい。
【0047】
めっき処理部4は、基板保持部42に保持された基板W1に対してめっき液M1を供給する、めっき液供給部45を備える。めっき液供給部45は、基板保持部42に保持された基板W1に対して、めっき液M1を吐出するノズル451aと、ノズル451aにめっき液M1を供給するめっき液供給源452aとを備える。めっき液供給源452aが有するタンクには、めっき液M1が貯留されており、ノズル451aには、454aを通じて、めっき液M1が供給される。
【0048】
めっき液M1は、自己触媒型(還元型)無電解めっき用のめっき液である。めっき液M1は、コバルト(Co)イオン、ニッケル(Ni)イオン、タングステン(W)イオン等の金属イオンと、次亜リン酸、ジメチルアミンボラン等の還元剤とを含有する。なお、自己触媒型(還元型)無電解めっきでは、めっき液M1中の金属イオンが、めっき液M1中の還元剤の酸化反応で放出される電子によって還元され、金属層が析出する。めっき液M1は、添加剤等を含有していてもよい。めっき液M1を使用しためっき処理により生じる金属層(めっき層)としては、例えば、CoWB、CoB、CoWP、CoWBP、NiWB、NiB、NiWP、NiWBP等が挙げられる。めっき層中のPは、Pを含む還元剤(例えば次亜リン酸)に由来し、めっき層中のBは、Bを含む還元剤(例えばジメチルアミンボラン)に由来する。
【0049】
めっき液供給源452aが有するタンクには、ポンプ455aおよび第1加熱部456aが介設された循環管路457aが接続されている。タンク中のめっき液M1は、循環管路457aを循環しながら貯留温度に加熱される。「貯留温度」は、めっき液M1中での自己反応による金属イオンの析出が進行する温度(めっき温度)よりも低く、かつ、常温よりも高い温度である。
【0050】
供給管路454aには、めっき液M1を貯留温度よりも高い吐出温度に加熱する第2加熱部458aが介設されている。第2加熱部458aは、第1加熱部456aにより貯留温度に加熱されためっき液M1を、さらに吐出温度まで加熱する。「吐出温度」は、上述のめっき温度に等しいか、または、めっき温度よりも高い温度である。
【0051】
本実施形態では、めっき液M1が、第1加熱部456aおよび第2加熱部458aにより二段階でめっき温度以上の温度に加熱される。このため、めっき液M1がタンク中でめっき温度以上の温度に加熱される場合に比べて、タンク中におけるめっき液M1中の還元剤の失活、成分の蒸発等を防止することができ、これにより、めっき液M1の寿命を長くすることができる。また、タンクにおいてめっき液M1が常温で貯留され、その後に第2加熱部458aによりめっき温度以上の温度に加熱される場合に比べて、めっき液M1を小さいエネルギーで素早くめっき温度以上の温度に加熱することができ、これにより、金属イオンの析出を抑制することができる。
【0052】
めっき液供給源452aが有するタンクには、めっき液M1の各種成分を貯蔵する複数の薬液供給源(不図示)から各種薬液が供給される。例えば、Coイオンを含むCoSO金属塩、還元剤(例えば、次亜リン酸等)、添加剤等の薬液が供給される。この際、タンク内に貯留されるめっき液M1の成分が適切に調整されるように、各種薬液の流量が調整される。タンクには、めっき液M1中の溶存酸素および溶存水素を除去する脱気部(不図示)が設けられていてもよい。脱気部は、例えば、窒素等の不活性ガスをタンク内に供給し、めっき液M1中に窒素等の不活性ガスを溶解させ、既にめっき液M1中に溶存している酸素、水素等のその他のガスをめっき液M1の外部に排出することができる。めっき液M1から排出された酸素、水素等のガスは、排気部(不図示)によりタンクから排出することができる。循環管路457aには、フィルター(不図示)が介設されていてもよい。循環管路457aにフィルターが介設されることにより、めっき液M1を第1加熱部456aにより加熱する際、めっき液M1に含まれる様々な不純物を除去することができる。循環管路437aには、めっき液M1の特性をモニタするモニタ部(不図示)が設けられていてもよい。モニタ部としては、例えば、めっき液M1の温度をモニタする温度モニタ部、めっき液M1のpHをモニタするpHモニタ部等が挙げられる。
【0053】
めっき処理部4は、ノズル451aを駆動するノズル移動機構44を備える。ノズル移動機構44は、アーム441と、アーム441に沿って移動可能な駆動機構内蔵型の移動体442と、アーム441を旋回および昇降させる旋回昇降機構443とを有する。ノズル431aは、移動体442に取り付けられている。ノズル移動機構44は、ノズル431aを、基板保持部42に保持された基板W1の中心の上方の位置と基板W1の周縁の上方の位置との間で移動させることができ、さらには、後述するカップ47の外側にある待機位置まで移動させることができる。
【0054】
めっき処理部4は、排出口471a,471b,471cを有するカップ47を備える。カップ47は、基板保持部42の周囲に設けられており、基板W1から飛散した各種処理液(例えば、めっき液、洗浄液、リンス液、触媒液等)を受け止める。カップ47には、カップ47を上下方向に駆動させる昇降機構48と、基板W1から飛散した各種処理液をそれぞれ排出口471a,471b,471cに集めて排出する液排出機構49a,49b,49cとが設けられている。例えば、基板W1から飛散しためっき液M1は、液排出機構49aから排出され、基板W1から飛散した触媒液L1は、液排出機構49bから排出され、基板W1から飛散した洗浄液L2およびリンス液L3は、液排出機構49cから排出される。
【0055】
<基板処理方法>
次に、基板処理装置1により実施される基板処理方法について図4を参照して説明する。図4(a)〜(c)は、基板処理方法が施された基板を示す概略断面図である。図4中、「S」は基板材料を示し、上記初期基板「W1」と同義である。
【0056】
基板処理装置1によって実施される基板処理方法は、凹部9aを有する基板W1に対して、本発明の触媒液により、基板W1の凹部9aを有する側の表面(以下、単に「表面」ともいう)に触媒層91を形成する触媒層形成工程と、触媒層形成工程により基板W1の表面に形成された触媒層91の上に、無電解めっき処理により無電解めっき層92を形成する無電解めっき工程とを含む。本実施形態において、触媒層形成工程および無電解めっき工程はいずれも同一のめっき処理部4において行われるが、これらの工程は異なる処理部において行われてもよい。めっき処理部4の動作は、制御部3によって制御される。
【0057】
まず、図4の(a)に示すように、凹部9aを有する基板W1を準備する。本実施形態においては、基板W1として、表面に予め導体層を形成するための凹部9aを有する基板を用いるが、基板処理装置1より実施される基板処理方法は、基板W1の表面に、導体層を形成するための凹部9aを形成する処理を含んでもよい。基板W1に凹部9aを形成する方法は、公知の方法から適宜採用することができる。具体的には、例えば、ドライエッチング技術として、フッ素系または塩素系ガス等を用いた汎用的技術を適用できるが、特にアスペクト比(孔の深さ/孔の径)の大きな孔を形成するには、高速な深堀エッチングが可能なICP−RIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:誘導結合プラズマ−反応性イオンエッチング)の技術を採用した方法をより好適に採用でき、特に、六フッ化硫黄を用いたエッチングステップとCなどのフッ素系ガスを用いた保護ステップとを繰り返しながら行うボッシュプロセスと称される方法を好適に採用できる。
【0058】
基板W1は、めっき処理部4へ搬入される。この際、搬送機構213は、載置部211に載置されたキャリアCから基板W1を取り出し、取り出した基板W1を受渡部214に載置する。搬送機構222は、受渡部214に載置された基板W1を取り出し、取り出した基板W1をめっき処理部4へ搬入する。
【0059】
めっき処理部4へ搬入された基板W1は、基板保持部42により保持される。この際、基板保持部42は、基板W1の外縁部をチャック423により支持した状態で、ターンテーブル422に水平保持する。駆動部424は、基板保持部42に保持された基板W1を所定速度で回転させる。制御部3は、駆動部424の動作を制御し、基板W1の回転タイミング、回転速度等を制御する。
【0060】
めっき処理部4においては、基板保持部42に保持された基板W1を、本発明の触媒液L1で処理する触媒層形成工程が行われる。触媒層形成工程により、図4の(b)に示すように、基板W1の表面に触媒層91が形成される。触媒液L1については上述した通りである。本発明の触媒液L1で基板W1を処理することにより、シランカップリング処理を行わなくても、基板W1の表面にパラジウム原子を結合させて触媒層91を形成することができる。
【0061】
触媒層形成工程では、基板保持部42に保持された基板W1を所定速度で回転させたまま、触媒液供給部43aのノズル431aを基板W1の中央上方に位置させ、ノズル431aから基板W1に対して触媒液L1を供給する。この際、制御部3は、触媒液供給部43aの動作を制御し、触媒液L1の供給タイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W1に供給された触媒液L1は、基板W1の回転に伴う遠心力によって基板W1の表面に広がる。これにより、基板W1の表面全体に触媒層91が形成される。基板W1から飛散した触媒液L1は、カップ47の排出口471bおよび液排出機構49bを介して排出される。触媒層形成工程が完了すると、基板W2が得られる。
【0062】
触媒層形成工程前の基板W1に対して、めっき処理部4において、洗浄工程を行うことが好ましい。洗浄工程では、基板保持部42に保持された基板W1を所定速度で回転させたまま、洗浄液供給部43bのノズル431bを基板W1の中央上方に位置させ、ノズル431bから基板W1に対して洗浄液L2を供給する。この際、制御部3は、洗浄液供給部43bの動作を制御し、洗浄液L2の供給のタイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W1に供給された洗浄液L2は、基板W1の回転に伴う遠心力によって基板W1の表面に広がる。これにより、基板W1上に残存する汚れや各種処理溶液等が除去される。洗浄液L2については上述した通りである。基板W1から飛散した洗浄液L2は、カップ47の排出口471cおよび液排出機構49cを介して排出される。
【0063】
また、触媒層形成工程後の基板W2に対して、めっき処理部4において、洗浄工程を行うことが好ましい。基板W2に対する洗浄工程では、基板W1に対して行われるのと同様の工程が行われる。
【0064】
また、基板W1に対する洗浄工程の後、触媒層形成工程を行う前に、めっき処理部4において、リンス工程を行うことが好ましい。リンス工程では、基板保持部42に保持された基板W1を所定速度で回転させたまま、リンス液供給部43cのノズル431cを基板W1の中央上方に位置させ、ノズル431cから基板W1に対してリンス液L3を供給する。この際、制御部3は、リンス液供給部43bの動作を制御し、リンス液L3の供給のタイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W1に供給されたリンス液L3は、基板W1の回転に伴う遠心力によって基板W1の表面に広がる。これにより、基板W1上に残存する洗浄液L2が洗い流される。リンス液L3については上述した通りである。基板W1から飛散したリンス液L3は、カップ47の排出口471cおよび排出機構49cを介して排出される。
【0065】
また、基板W2に対する洗浄工程の後、次の工程を行う前に、めっき処理部4において、リンス工程を行うことが好ましい。基板W2に対するリンス工程では、基板W1に対して行われるのと同様のリンス工程が行われる。
【0066】
触媒層形成工程の後(触媒層形成工程の後に洗浄工程および/またはリンス工程を行う場合は、それらの工程の後)に、めっき処理部4において、基板W2がその表面に有する触媒層91の上に、無電解めっき処理により無電解めっき層92を形成する無電解めっき工程を行う。無電解めっき工程により、図4(c)に示すように、触媒層91の上に電解めっき層92が形成される。無電解めっき工程では、基板保持部42に保持された基板W2を所定速度で回転させたまま、めっき液供給部45のノズル451aを基板W2の中央上方に位置させ、ノズル451aから基板W2に対してめっき液M1を供給する。この際、制御部3は、めっき液供給部45の動作を制御し、めっき液M1の供給タイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W2に供給されためっき液M1は、基板W2の回転に伴う遠心力によって基板W2の表面に広がる。これにより、基板W2の表面に形成された触媒層91上に、無電解めっき層92が形成される。基板W1から飛散しためっき液M1は、カップ47の排出口471aおよび液排出機構49aを介して排出される。無電解めっき工程が完了すると、基板W3が得られる。
【0067】
無電解めっき工程における液M1の供給量、供給時間等は、形成させるべき無電解めっき層92の厚み等に応じて適宜調整される。例えば、基板W2に対してめっき液M1を供給することにより、基板W2の表面に形成された触媒層91上に初期めっき層を形成することができ、基板W2に対してさらにめっき液M1を供給し続けることにより、初期めっき層上でめっき反応を進行させ、所望の厚みを有する無電解めっき層92を形成することができる。形成された無電解めっき層92は、後述する図4(d)〜(f)で示す工程において形成されるCuめっき層の拡散を防止するためのバリア層としての機能を有する。
【0068】
めっき処理部4において、無電解めっき工程後に、基板W3を乾燥させる乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥工程では、自然乾燥により、基板W3を回転させることにより、あるいは、乾燥用溶媒または乾燥用ガスを基板W3に吹き付けることにより、基板W3を乾燥させることができる。
【0069】
めっき処理部4における基板処理後の基板W3は、めっき処理部4から排出されるか、または、後述するさらなる処理に供される。めっき処理部4から排出される場合、搬送機構222は、めっき処理部4から基板W3を取り出し、取り出した基板W3を受渡部214に載置する。搬送機構213は、搬送機構222により受渡部214に載置された基板W3を取り出し、載置部211のキャリアCへ収容する。
【0070】
以下、基板処理装置1により実施される基板処理方法により処理した後の基板W3のさらなる処理の一例について図4(d)〜(f)を参照して説明する。図4(d)〜(f)は、基板処理装置1により実施される基板処理方法により処理した後、後述する各処理を行った後の基板を示す概略断面図である。図4中、基板W1〜基板W3は上述した通りである。また、図4中、無電解Cuめっき工程により基板W3の無電解めっき層92上に無電解Cuめっき層93が形成された基板を「基板W4」、基板W4上の無電解Cuめっき層93をシード層として、電解Cuめっき工程により基板W4の凹部9aに電解Cuめっき94が充填された基板を「基板W5」、および、基板W5の裏面側(凹部9aを有する面の反対側)を化学機械研磨した基板を「基板W6」という。
【0071】
基板処理装置1により実施される基板処理方法により処理した後の基板W3(図4(c))は、めっき処理部4における無電解めっき工程後に、無電解めっき層92を焼きしめる焼きしめ工程を行ってもよい。焼きしめ工程は、Nガスを充填して不活性雰囲気とした密閉ケーシング内で、基板W3をホットプレート上で加熱して行われる。このようにして基板W3の無電解めっき層92が焼きしめられる。無電解めっき層92を焼きしめる際の焼きしめ温度は、150〜200℃、焼きしめ時間は10〜30分であることが好ましい。このように基板W3上の無電解めっき層92を焼きしめることにより、無電解めっき層92内の水分を外方へ放出することができ、同時に無電解めっき層93内の金属間結合を高めることができる。
【0072】
また、無電解めっき層92の焼きしめ工程を行った後に、無電解めっき工程により触媒層91の上に形成された、バリア層としての機能を有する無電解めっき層92の上に、シード層としての機能を有する無電解Cuめっき層93を形成する無電解Cuめっき工程(図4(d))を含んでもよい。無電解Cuめっき工程が完了すると、基板W4が得られる。また、無電解Cuめっき層93をシード層として、基板凹部に電解Cuめっき94を充填する電解Cuめっき工程(図4(e))を含んでもよい。電解Cuめっき工程が完了すると、基板W5が得られる。さらに、基板W5の裏面側(凹部9aを有する面の反対側)を化学機械研磨する化学研磨工程(図4(f))を含んでいてもよい。化学研磨工程が完了すると、基板W6が得られる。
【符号の説明】
【0073】
1 基板処理装置
2 基板処理部
3 制御部
4 めっき処理部
43a 触媒液供給部
45 めっき液供給部
図1
図2
図3
図4