(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のデバイスを上面に載置する載置面を有する載置テーブルと、該載置テーブルに載置された該複数のデバイスのうちの一つのデバイスの上面を吸引保持して搬送するピックアップ手段と、を備えたピックアップ装置であって、
該ピックアップ手段は、該デバイスの上面に当接して吸引する吸引口を先端に有する吸引ノズルと、該吸引ノズルの該吸引口と吸引源とを連結する吸引路と、該吸引路内の圧力を検出する圧力センサーと、該吸引ノズルを上下方向に移動させる移動手段と、該吸引源からの吸引力が連通した状態で該吸引ノズルの該吸引口を塞いだ際の該圧力センサーの値を基準にしきい値として設定して予め記憶する記憶手段と、該吸引源からの吸引力が連通した状態で該吸引ノズルの先端を上方から該載置テーブルの該載置面へ該移動手段によって接近させて、該圧力センサーの値が該しきい値となった際に該移動手段を停止させ、停止した該吸引ノズルの位置をデバイスをピックアップする際の上下方向の基準位置に設定する制御手段と、
を備えることを特徴とするピックアップ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態のピックアップ装置について説明する。
図1は、本実施の形態のピックアップ装置の模式図である。なお、以下に示すピックアップ装置は一例を示すものであり、吸引ノズルによってデバイスをピックアップする構成であれば、どのように構成されていてもよい。
【0011】
図1に示すように、ピックアップ装置1は、載置テーブル20の載置面26上で分割されたパッケージ基板WのデバイスD(パッケージ)をピックアップ手段30でピックアップして、載置テーブル20から搬送先のトレイ(不図示)に移し替えるように構成されている。なお、パッケージ基板Wは、CSP(Chip Size Package)基板、ウェーハレベルCSP(Wafer Level Chip Size Package)基板等の小型のパッケージ基板に限らず、CSP基板等よりもサイズが大きなパッケージ基板でもよい。また、ピックアップ対象のデバイスDは、パッケージデバイスに限らず、例えば半導体ウェーハを分割した半導体チップでもよい。
【0012】
載置テーブル20は、基台となるベース部材21に複数のデバイスDを個別に保持可能な保持ブロック22を配設して構成されている。保持ブロック22の上面は、複数のデバイスDが載置される載置面26であり、パッケージ基板Wの分割予定ライン(不図示)に対応した溝23によって格子状に区画され、溝23で区画された各領域に吸引口24が形成されている。各吸引口24は、保持ブロック22及びベース部材21内に形成された吸引路25を通じて吸引源(不図示)に接続されている。吸引源からの吸引力によって保持ブロック22の吸引口24が負圧になることで、保持ブロック22に分割後のデバイスDが個別に吸引保持される。
【0013】
ピックアップ手段30は、載置テーブル20に載置された複数のデバイスのうちの一つのデバイスDの上面を吸引保持して搬送するように構成されている。ピックアップ手段30には、デバイスDの上面を吸引保持する吸引ノズル31と、吸引ノズル31を上下方向に移動させる上下移動手段(移動手段)32と、吸引ノズル31を水平方向に移動させる水平移動手段33とが設けられている。吸引ノズル31の先端には、デバイスDの上面に当接して吸引する吸引口35が形成されている。吸引ノズル31の吸引口35がデバイスDの上面に塞がれることで、吸引ノズル31内のバキューム圧(負圧)が低下してデバイスDが吸引保持される。
【0014】
上下移動手段32は、上下方向に延びるボールネジ36と、ボールネジ36の一端に連結したサーボモータ37とを有している。ボールネジ36には吸引ノズル31に取り付けられたスライダ38が螺合しており、サーボモータ37によってボールネジ36が回転駆動されることで吸引ノズル31が上下方向に移動される。このとき、サーボモータ37のエンコーダ39から吸引ノズル31の現在位置や現在速度が、後述する制御手段10に出力されてサーボモータ37がサーボ制御される。これにより、ピックアップ動作時に吸引ノズル31の先端が高速かつ精密にデバイスDの上面に位置付けられる。水平移動手段33は、詳細は記載しないが、上下移動手段32と同様に、ボールネジをサーボ制御することで吸引ノズル31を水平方向に移動させている。
【0015】
ピックアップ手段30には、バキューム機構として吸引ノズル31の吸引口35と吸引源41を連結する吸引路42と、吸引路42内の圧力を検出する圧力センサー43とが設けられている。吸引路42は、吸引ノズル31の吸引口35から吸引源41に引き込まれる気流の通り路になっている。吸引源41は、いわゆる筒状のエジェクタであり、筒内に噴流させた高圧ガスの負圧を利用して吸引路42から気流を引き込んでいる。圧力センサー43は吸引路42内のバキューム圧を制御手段10に出力しており、圧力センサー43のバキューム圧の値から吸引ノズル31によるデバイスDの吸引保持の有無が検出される。
【0016】
さらに、ピックアップ手段30には、吸引ノズル31によるデバイスDのピックアップ動作を制御する制御手段10と、各種パラメータを記憶する記憶手段11とが設けられている。制御手段10は各種処理を実行するプロセッサやメモリ等によって構成され、記憶手段11はメモリによって構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。また、メモリには、例えば、吸引ノズル31によるピックアップ動作を制御するプログラム等が記憶されている。
【0017】
このように構成されたピックアップ手段30では、載置テーブル20上のデバイスDの上面に吸引ノズル31の先端が近づけられて、吸引ノズル31にデバイスDが吸引保持されてピックアップされる。このとき、吸引ノズル31の先端位置が載置テーブル20の載置面26を基準に制御されている。このため、載置テーブル20の載置面26の高さを原点に吸引ノズル31がピックアップ動作を実施するように、事前に載置テーブル20の載置面26の高さと吸引ノズル31の先端との位置関係を記憶手段11に記憶しておく必要がある。
【0018】
通常は、オペレータの目視によって載置テーブル20の載置面26に吸引ノズル31の先端を位置付けて、接触時の吸引ノズル31の高さを基準位置として覚え込ませている。しかしながら、吸引ノズル31の位置調整に時間を要すると共に、調整精度によってはバキュームエラーが生じる可能性がある。また、吸引ノズル31の先端と載置テーブル20の載置面26との接触時に導通させて、導通時の吸引ノズル31の高さを基準位置として覚え込ませる方法も検討されている。しかしながら、載置テーブル20や吸引ノズル31に電気的な部品を追加しなければならず、装置構成が複雑になると共にコストが増加する。
【0019】
そこで、本実施の形態では、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触するときのバキューム圧の変化に着目して、既存のバキューム構造を利用して載置テーブル20の載置面26の高さを吸引ノズル31に覚え込ませるようにしている。これにより、上記したオペレータによる調整作業が不要になり、オペレータの調整作業よりも高精度に吸引ノズル31の基準位置を設定することができる。さらに、ピックアップ装置1に対して通電チェックのための電気的な部品を追加する必要がなく、ピックアップ装置1を簡易かつ安価な構成にすることができる。
【0020】
この場合、記憶手段11には、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触したか否かを判定するために、バキューム圧のしきい値V
T(
図3参照)が事前に記憶されている。そして、吸引源41から吸引ノズル31に吸引力が連通した状態で、制御手段10が上下移動手段32によって吸引ノズル31の先端を上方から載置テーブル20の載置面26に接近させ、圧力センサー43の値が所定のしきい値V
Tとなった際に上下移動手段32を停止させる。このときの吸引ノズル31の位置が、デバイスDをピックアップする際の上下方向の基準位置として設定される。
【0021】
以下、
図2及び
図3を参照して、ピックアップ動作の基準位置の設定動作について詳細に説明する。
図2は、本実施の形態のピックアップ動作の基準位置の設定動作の説明図である。
図3は、本実施の形態のバキューム圧とノズル位置との関係を示すグラフである。なお、以下に示す基準位置の設定動作は一例であり、適宜変更することが可能である。
【0022】
図2Aに示すように、載置テーブル20の載置面26の上方に吸引ノズル31の吸引口35が位置付けられ、吸引源41によって吸引ノズル31の吸引口35に吸引力が供給されている。上下移動手段32によって吸引ノズル31が上昇位置から載置テーブル20の載置面26に向かって近づけられる。この吸引ノズル31の動作中は吸引ノズル31の先端と載置テーブル20の載置面26とに十分な間隔が空いているため、吸引口35から吸引路42内に向かう気流の流れが変化することがない。よって、
図3の区間Aに示すように、吸引開始時にバキューム圧が低下した後は、圧力センサー43によって一定のバキューム圧V
Hが検出され続ける。
【0023】
図2Bに示すように、上下移動手段32によって吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触寸前まで近づけられると、吸引口35から吸引路42内に向かう気流の流れが変化し始める。さらに、上下移動手段32によって吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触するまで近づけられると、吸引ノズル31の吸引口35が載置テーブル20の載置面26によって塞がれて、吸引口35から吸引路42内に気流が流れ込まなくなる。このように、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26付近まで移動すると、吸引路42内の気流の流れが大幅に変化する。
【0024】
よって、
図3の区間Bに示すように、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触する寸前で、バキューム圧がバキューム圧V
Hから急激に低下し始める。そして、圧力センサー43によってバキューム圧がしきい値V
Tになったことが検出されると、上下移動手段32によって吸引ノズル31の移動が停止される。このときの吸引ノズル31の停止位置がエンコーダ39から制御手段10に出力され、デバイスD(
図4参照)をピックアップする際の上下方向の基準位置として設定される。なお、バキューム圧がしきい値V
Tを下回った後は、
図3の区間Cに示すように、圧力センサー43によって一定のバキューム圧V
Lが検出され続ける。
【0025】
このように、圧力センサー43でバキューム圧がしきい値V
Tになったときに、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触していると判断され、このときの吸引ノズル31の高さがピックアップ動作の基準位置に設定される。デバイスDのピックアップ動作では、この基準位置を原点として吸引ノズル31の高さが調整されることで、デバイスDの上面に吸引ノズル31の先端が高速で位置付けられている。
【0026】
なお、しきい値V
Tは、吸引源41から吸引ノズル31に吸引力が連通した状態で、吸引ノズル31の吸引口35を塞いだ際の圧力センサー43の値を基準に設定されている。例えば、本実施の形態では、吸引ノズル31の吸引口35を空けたときのバキューム圧V
Hと吸引ノズル31の吸引口35を塞いだときのバキューム圧V
Lとの平均値がしきい値V
Tとして設定される。しきい値V
Tは、上記平均値に限らず、バキューム圧の急激な低下を圧力センサー43で検出可能であればよい。例えば、しきい値V
Tは、バキューム圧V
Hからバキューム圧V
Lまでの変化中に複数回に亘って測定された値の中間値に設定されてもよいし、最低値であるバキューム圧V
Lに設定されていてもよい。
【0027】
続いて、
図4を参照して、基準位置設定後のピックアップ動作について簡単に説明する。
図4は、本実施の形態のピックアップ装置によるピックアップ動作の説明図である。なお、以下に示すピックアップ動作は一例であり、適宜変更することが可能である。
【0028】
図4Aに示すように、載置テーブル20の載置面26上には、パッケージ基板Wを分割したデバイスDが載置されている。水平移動手段33(
図1参照)によってピックアップ手段30の吸引ノズル31がデバイスDの上方に位置付けられた後、上下移動手段32によって吸引ノズル31がデバイスDの上面に向けて下方に移動される。このとき、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触する基準位置を原点として、吸引ノズル31の上下方向の位置が調整されている。デバイスDの上面から吸引ノズル31の先端が十分に離れている間は吸引ノズル31が高速で移動される。
【0029】
図4Bに示すように、吸引ノズル31の先端がデバイスDの上面に近づけられるにつれて吸引ノズル31の移動速度が減速される。このように、基準位置を原点としたサーボ制御によって精密かつ高速に吸引ノズル31の先端をデバイスDの上面に位置付けることが可能になっている。
図4Cに示すように、吸引ノズル31の先端にデバイスDの上面が吸引保持されると、上下移動手段32によって吸引ノズル31にデバイスDがピックアップされ、水平移動手段33(
図1参照)によって搬送先のトレイに向けてデバイスDが搬送される。この動作を繰り返すことで、載置テーブル20上の全てのデバイスDが搬送される。
【0030】
以上のように、本実施の形態のピックアップ装置1は、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に近づけられると、吸引ノズル31の先端が載置テーブル20の載置面26に接触する直前で圧力センサー43の値が急激に変化する。圧力センサー43の値がしきい値V
Tになった位置で吸引ノズル31の移動が停止され、このときの吸引ノズル31の停止位置がデバイスDのピックアップ時の基準位置に設定される。圧力センサー43の値の変化に基づいて、吸引ノズル31の吸引口35が載置テーブル20の載置面26に塞がれる高さが基準位置に設定されるため、載置テーブル20の載置面26を基準に吸引ノズル31のピックアップ動作を制御することができる。このように、簡易かつ安価な構成でピックアップ時の基準位置を精度よく設定することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0032】
例えば、上記した実施の形態において、載置テーブル20がベース部材21上に保持ブロック22を配設して構成されたが、この構成に限定されない。載置テーブル20は複数のデバイスDを上面に載置する載置面26を有していればよく、例えば、載置面26を有する収容トレイでもよい。
【0033】
また、上記した実施の形態において、上下移動手段32がボールネジ36とサーボモータ37とで構成されたが、この構成に限定されない。上下移動手段32は、吸引ノズル31を上下方向に移動させる構成であればよく、例えば、リニアスライダ等で構成されていてもよい。
【0034】
また、上記した実施の形態において、吸引源41としてエジェクタを例示したが、この構成に限定されない。吸引源41は吸引路42を通じて吸引ノズル31の吸引口35に接続されていればよく、例えば吸引ポンプ等で構成されていてもよい。
【0035】
また、上記した実施の形態において、記憶手段11には経験的に求められたバキューム圧がしきい値V
Tとして記憶されていてもよいし、記憶手段11にはピックアップ装置1の稼働前のバキューム圧の測定値から算出された値がしきい値V
Tとして記憶されてもよい。しきい値V
Tの算出は、例えば、吸引ノズル31の吸引口35を空けたときのバキューム圧V
Hと吸引ノズル31の吸引口35を塞いだときのバキューム圧V
Lとに基づいて実施される。
【0036】
また、上記した実施の形態において、ピックアップ装置1は切削装置やレーザ加工装置等の加工装置に搭載されてもよいし、その他、分割後のデバイスDのピックアップが必要な装置に搭載されてもよい。