(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563351
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-41319(P2016-41319)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-157745(P2017-157745A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】五 師 源太郎
(72)【発明者】
【氏名】清 瀬 浩 巳
(72)【発明者】
【氏名】枇 杷 聡
【審査官】
平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−049446(JP,A)
【文献】
特開2012−243776(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0264443(US,A1)
【文献】
特開2008−034593(JP,A)
【文献】
特開平08−206485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥防止用の液体が液盛りされた基板を収納し、この基板に対して超臨界処理を施す処理容器と、
前記処理容器に接続され、前記処理容器に処理流体を供給する流体供給ラインと、
前記処理容器に接続され、前記処理容器内の処理流体を排出する流体排出ラインと、
前記処理容器の上流側および下流側に接続されるとともに、前記流体供給ラインおよび前記流体排出ラインと独立して設けられ、前記処理容器内の処理流体を循環させる第1循環ラインと,
制御部と、を備え、
前記第1循環ラインに前記処理容器からの処理流体を受ける前記処理容器の容量より大きい第1貯留タンクを設け、前記流体供給ラインに処理流体を供給するための昇圧ポンプを設けるとともに、前記第1循環ラインに処理流体を循環するための前記昇圧ポンプよりも吐出流量の大きな第1循環ポンプを設け、
前記制御部は前記昇圧ポンプと前記第1循環ポンプを制御して、前記昇圧ポンプを作動させて前記処理流体を前記処理容器内に供給して、前記処理容器内を高圧状態となるまで昇圧し、その後に前記昇圧ポンプを停止して前記第1循環ポンプを作動させ、前記第1循環ライン内で前記処理流体を循環させる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1貯留タンクは、前記第1貯留タンクの超臨界状態または亜臨界状態の処理流体内に複数枚の基板に液盛りされた乾燥防止用の液体を溶解させても飽和状態にならない容量であることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1貯留タンクは、前記第1循環ポンプの上流側に設けられている、ことを特徴とする、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1貯留タンクに、前記処理流体を排出する流体排出装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理容器の上流側および下流側に、前記第1循環ラインと独立して、前記処理容器内の流体を循環させる第2循環ラインを接続し、
前記第2循環ラインに前記処理容器からの処理流体を受ける前記処理容器の容量より大きい第2貯留タンクを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理容器の下流側に、前記第1循環ラインと前記第2循環ラインとを切換える下流側切換弁を設けたことを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理容器に、前記流体供給ラインに接続された流体供給ヘッダーを設けるとともに、前記流体排出ラインに接続された流体排出ヘッダーを設け、前記処理容器内に処理流体の層流を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の基板処理装置。
【請求項8】
乾燥防止用の液体が液盛りされた基板を処理容器内に搬入する工程と、
前記処理容器に流体供給ラインを介して処理流体を供給する工程と、
前記処理容器内において前記基板に対して処理流体を用いて超臨界処理を施す工程と、 前記処理容器内の処理流体を流体排出ラインを介して排出する工程と、
前記流体供給ラインおよび前記流体排出ラインと独立して設けられた第1循環ラインにより、前記処理容器内の処理流体を循環させる工程とを備え、
前記第1循環ラインに設置された前記処理容器の容量より大きい第1貯留タンクにより、前記処理容器からの処理流体を受け、
前記流体供給ラインに処理流体を供給するための昇圧ポンプを設けるとともに、前記第1循環ラインに処理流体を循環するための前記昇圧ポンプよりも吐出流量の大きな第1循環ポンプを設け、
前記昇圧ポンプを作動させて前記処理流体を前記処理容器内に供給して、前記処理容器内を高圧状態となるまで昇圧し、その後に前記昇圧ポンプを停止して前記第1循環ポンプを作動させ、前記第1循環ライン内で前記処理流体を循環させる、ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
前記昇圧ポンプを作動させて前記処理流体を前記処理容器内に供給して、前記処理容器内および前記第1貯留タンク内を高圧状態となるまで昇圧する、ことを特徴とする請求項8記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記昇圧ポンプを停止して前記第1循環ポンプを作動させ、前記第1循環ライン内で前記処理流体を循環させた後、前記第1循環ポンプを停止し、前記昇圧ポンプを再度作動させる、ことを特徴とする請求項8記載の基板処理方法。
【請求項11】
コンピュータに基板処理方法を実行させるための記憶媒体において、
前記基板処理方法は、乾燥防止用の液体が液盛りされた基板を処理容器内に搬入する工程と、
前記処理容器に流体供給ラインを介して処理流体を供給する工程と、
前記処理容器内において前記基板に対して処理流体を用いて超臨界処理を施す工程と、 前記処理容器内の処理流体を流体排出ラインを介して排出する工程と、
前記流体供給ラインおよび前記流体排出ラインと独立して設けられた第1循環ラインにより、前記処理容器内の処理流体を循環させる工程とを備え、
前記第1循環ラインに設置された前記処理容器の容量より大きい第1貯留タンクにより、前記処理容器からの処理流体を受け、
前記流体供給ラインに処理流体を供給するための昇圧ポンプを設けるとともに、前記第1循環ラインに処理流体を循環するための前記昇圧ポンプよりも吐出流量の大きな第1循環ポンプを設け、
前記昇圧ポンプを作動させて前記処理流体を前記処理容器内に供給して、前記処理容器内を高圧状態となるまで昇圧し、その後に前記昇圧ポンプを停止して前記第1循環ポンプを作動させ、前記第1循環ライン内で前記処理流体を循環させる、ことを特徴とする記憶媒体。
【請求項12】
前記昇圧ポンプを作動させて前記処理流体を前記処理容器内に供給して、前記処理容器内および前記第1貯留タンク内を高圧状態となるまで昇圧する、ことを特徴とする請求項11記載の記憶媒体。
【請求項13】
前記昇圧ポンプを停止して前記第1循環ポンプを作動させ、前記第1循環ライン内で前記処理流体を循環させた後、前記第1循環ポンプを停止し、前記昇圧ポンプを再度作動させる、ことを特徴とする請求項11記載の記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界状態または亜臨界状態の処理流体を用いて基板の表面に付着した液体を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である半導体ウエハ(以下、ウエハという)などの表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程などにおいては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が行われている。
【0003】
こうした液処理工程にてウエハの表面に付着した液体などを除去する際に、超臨界状態や亜臨界状態(以下、これらをまとめて高圧状態という)の処理流体を用いる方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、処理容器内で基板上に形成されたパターンに付着した液体を超臨界状態や亜臨界状態の二酸化炭素(処理流体)と接触させ、処理容器内で液体を抽出した超臨界状態の二酸化炭素の一部を排出ラインから抜き出し、流体供給ラインからの新たな超臨界状態の二酸化炭素の供給を継続しながら処理容器内の超臨界状態の二酸化炭素による液体の抽出能力を大きく低下させずに、液体を除去する処理を行うことにより基板を乾燥させる方法が記載されている。
この場合、処理流体としての二酸化炭素の排出量を抑え長時間に渡って使用することができれば、処理流体の消費量の低減を図ることができて都合が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−012538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、比較的短い時間で、基板の表面に付着した液体を処理流体により除去することができ、かつ処理流体を長時間に渡って使用することができ、処理流体の消費量の減らすことができる基板処理装置、基板処理方法、及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乾燥防止用の液体が液盛りされた基板を収納し、この基板に対して超臨界処理を施す処理容器と、前記処理容器に接続され、前記処理容器に処理流体を供給する流体供給ラインと、前記処理容器に接続され、前記処理容器内の処理流体を排出する流体排出ラインと、前記処理容器の上流側および下流側に接続されるとともに、前記流体供給ラインおよび前記流体排出ラインと独立して設けられ、前記処理容器内の処理流体を循環させる第1循環ラインとを備え、前記第1循環ラインに前記処理容器からの処理流体を受ける前記処理容器の容量より大きい第1貯留タンクを設けたことを特徴とする基板処理装置である。
【0008】
本発明は、乾燥防止用の液体が液盛りされた基板を処理容器内に搬入する工程と、前記処理容器に流体供給ラインを介して処理流体を供給する工程と、前記処理容器内において前記基板に対して処理流体を用いて超臨界処理を施す工程と、前記処理容器内の処理流体を流体排出ラインを介して排出する工程と、前記流体供給ラインおよび前記流体排出ラインと独立して設けられた第1循環ラインにより、前記処理容器内の処理流体を循環させる工程とを備え、前記第1循環ラインに設置された前記処理容器の容量より大きい第1貯留タンクにより、前記処理容器からの処理流体を受けることを特徴とする基板処理方法である。
【0009】
本発明は、コンピュータに基板処理方法を実行させるための記憶媒体において、前記基板処理方法は、乾燥防止用の液体が液盛りされた基板を処理容器内に搬入する工程と、前記処理容器に流体供給ラインを介して処理流体を供給する工程と、前記処理容器内において前記基板に対して処理流体を用いて超臨界処理を施す工程と、前記処理容器内の処理流体を流体排出ラインを介して排出する工程と、前記流体供給ラインおよび前記流体排出ラインと独立して設けられた第1循環ラインにより、前記処理容器内の処理流体を循環させる工程とを備え、前記第1循環ラインに設置された前記処理容器の容量より大きい第1貯留タンクにより、前記処理容器からの処理流体を受けることを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処理容器に第1循環ラインを設置し、この第1循環ライン中に処理流体を受ける貯留タンクを設けたので、この貯留タンクにより、第1循環ライン中の処理流体の容量を大きくとることができる。これにより、処理用流体中に乾燥防止用の液体が溶解しても、乾燥防止用の液体の溶解濃度の上昇を抑えることができる。このため、基板の処理中に処理流体を頻繁に排出したり、新たな処理流体をその都度補充する必要はなく、第1循環ライン内の処理流体を長時間に渡って使用することができ、処理流体の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は実施の形態に係わる基板処理装置の構成を示す説明図。
【
図2】
図2は基板処理装置に設けられている処理容器を示す外観斜視図。
【
図3】
図3は基板処理装置の動作の流れを示すフロー図。
【
図5】
図5は処理容器内における超臨界処理用流体の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図5は本発明の実施の形態を示す図である。
【0013】
図1に示すように、基板処理装置10は乾燥防止用の液体、例えばIPA(IsoPropyl Alcohol)が液盛りされたウエハ(基板)Wを収納するとともに、このウエハWに対して超臨界処理を施す処理容器1と、処理容器1に接続され処理容器1にCO2等の処理流体を供給する流体供給ライン51と、処理容器1に接続され処理容器1内の流体を排出する流体排出ライン52と、処理容器1に接続されるとともに、流体供給ライン51および流体排出ライン52と独立して設けられ、処理容器1内の流体を循環させる第1循環ライン53とを備えている。
【0014】
このうち処理容器1は高圧状態の処理流体を用いてウエハWに対して超臨界処理を施し、ウエハW表面に付着した乾燥防止用の液体を除去するものである。また流体供給ライン51は処理流体を供給するための昇圧ポンプ2を有する。さらに流体排出ライン52は処理容器1内の流体を排出するものであり、処理容器1内の圧力を減圧する減圧弁52aを有する。
【0015】
次に処理容器1について説明する。
図2に示すように処理容器1は、ウエハWの搬入出用の開口部12が形成された筐体状の容器本体11と、処理対象のウエハWを横向きに保持する保持板16と、この保持板16を支持すると共に、ウエハWを容器本体11内に搬入したとき前記開口部12を密閉する蓋部材15とを備えている。
【0016】
容器本体11は、例えば直径300mmのウエハWを収容可能な処理空間が形成された容器であり、その壁部には、流体供給ライン51及び第1循環ライン53の再供給側(第1循環ポンプ3の吐出側)に接続された供給ポート13と、流体排出ライン52及び第1循環ライン53の抜き出し側(循環ポンプ3の吸い込み側)に接続された排出ポート14と、を備えている。また、処理容器1には処理空間内に供給された高圧状態の処理流体から受ける内圧に抗して、容器本体11に向けて蓋部材15を押し付け、処理空間を密閉するための不図示の押圧機構が設けられている。また、処理空間内に供給された処理流体が超臨界状態や亜臨界状態の温度を保てるように、容器本体11の表面に断熱材やテープヒータなどを設けてもよい。ところで、容器本体11内の一方の壁面には供給ポート13に連通する流体供給ヘッダー17が設けられ、容器本体11の他方には排出ポート14に連通する流体排出ヘッダー18が設けられている(
図2および
図4参照)。そして流体供給ヘッダー17には多数の開孔が設けられ、流体排出ヘッダー18にも多数の開孔が設けられ、これら流体供給ヘッダー17と流体排出ヘッダー18とにより容器本体11内に処理流体の層流を形成することができる。
【0017】
処理容器1(容器本体11)の供給ポート13に接続された流体供給ライン51は、
図1に示すように、開閉弁51aと、フィルター51bと、昇圧ポンプ2とを介して処理流体供給部4に接続されている。開閉弁51aは、処理容器1への処理流体の供給、停止に合わせて開閉し、フィルター51bは処理容器1に供給される処理流体に含まれるパーティクルを除去する。
【0018】
昇圧ポンプ2は、処理流体供給部4から供給される処理流体がガスである場合などには、高圧状態(超臨界状態や亜臨界状態)となる圧力まで処理流体を昇圧する。また、処理流体供給部4から高圧状態の処理流体が供給される場合には、処理容器1内にて当該高圧状態が維持されるように処理流体を送り出すことができる。このような能力を備えた昇圧ポンプ2としては、一般的に吐出圧力の高いシリンジポンプやダイヤフラムポンプなどが採用されるが、その吐出流量は、後述する循環ポンプ3に比べて吐出流量は小さい。
【0019】
処理流体供給部4からは、ウエハW表面の液体と接触させて、当該液体を除去するための処理流体が供給される。本例の処理流体供給部4は、例えば二酸化炭素(CO2:臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa(絶対圧))を高圧ガスの状態または高圧状態(超臨界状態や亜臨界状態)で貯蔵するボンベやタンクなどとして構成される。そして処理流体供給部4から供給されるCO2が高圧ガスである場合には、昇圧ポンプ2にてCO2が断熱的に圧縮されることにより、圧力、温度が上昇し、高圧状態となって処理容器1に供給される。また、CO2が高圧状態である場合には、処理容器1内においてもこの圧力が保たれるように処理流体が処理容器1に供給される。
【0020】
一方、処理容器1(容器本体11)の排出ポート14に接続された排出ライン52は、不図示の処理流体排出部に接続されており、処理容器1内の流体(処理流体やウエハW表面から除去された液体)が排出される。排出ライン52には減圧弁52aが設けられており、減圧弁52aは処理容器1の圧力を減圧すると共に、例えば処理容器1に設けられた不図示の圧力計の検出値に基づいて開度を調整し、処理容器1内の圧力を高圧状態の圧力(処理流体の臨界圧力や亜臨界状態の圧力)に維持することができる。
【0021】
また
図1に示すように、処理容器1内の流体の混合を促進するため、処理容器1内の流体を抜き出してから再び処理容器1に戻すための第1循環ライン53が設けられており、この第1循環ライン53には、既述の昇圧ポンプ2よりも吐出流量の大きな循環ポンプ3が設けられている。
図1に示すように第1循環ライン53は、抜き出し側では排出ライン52から分岐する。また、第1循環ライン53には、抜き出し側から順に、開閉弁53a流量計53C、第1貯留タンク20、第1循環ポンプ3、開閉弁53bが設けられている。
【0022】
開閉弁53a、53bは、処理容器1に対して第1循環ライン53を切り離したり、接続したりする役割を果たし、接続時には処理容器1内の流体の循環が行われる一方、切り離し時には当該循環が停止される。
【0023】
また
図1に示すように、第1循環ライン53は、排出ライン52に下流側切換弁65aを介して接続されている。この下流側切換弁65aは、第1循環ライン53と後述する第2循環ライン60とを切換えるものである。
すなわち、排出ライン52に下流側切換弁65aを介して第2循環ライン60が設けられ、この第2循環ライン60には、抜き出し側から順に開閉弁60a、流量計60c、第2貯留タンク62、第2循環ポンプ61、開閉弁60bが設けられている。
このうち第2循環ライン60の開閉弁60a、流量計60c、第2貯留タンク62、第2循環ポンプ61、開閉弁60cは、第1循環ライン53の開閉弁53a、流量計53c、第1貯留タンク20、第1循環ポンプ3、開閉弁53bと各々同様の構成および同様の能力をもつ。
【0024】
また第1循環ライン53の第1の貯留タンク20には、第1貯留タンク20に接続された排出管21aと、この排出管21aに取付けられた開閉弁21bとを有する流体排出装置21が設けられている。
【0025】
さらに第2循環ライン60の第2貯留タンク62には、第2貯留タンク60に接続された排出管63aと、この排出管63aに取付けられた開閉弁63bとを有する流体排出装置63が設けられている。
【0026】
また第2循環ライン60の開閉弁60a、60bは、処理容器1に対して第2循環ライン60を切り離したり、接続したりする役割を果たし、接続時には処理容器1内の流体の循環が行われる一方、切り離し時には当該循環が停止される。
【0027】
次に第1循環ライン53の第1貯留タンク20および第2循環ライン60の第2貯留タンク62の構成および機能について述べる。ここで、第1貯留タンク20および第2貯留タンク62は、各々同一の構成および同一の機能をもつ。すなわち第1貯留タンク20および第2貯留タンク62は、処理流体を受けるものであり、第1循環ライン53および第2循環ライン60内における処理流体の容量をこれら第1貯留タンク20および第2貯留タンク62により増加させることができる。
【0028】
図1に示すように、下流側切換弁65aを切換えることにより、処理容器1内の処理流体を例えば第1処理ライン53側へ導くことができる。
【0029】
第1循環ライン53に入る処理流体は処理容器1内においてウエハWに対して超臨界処理に供された流体であり、ウエハW表面に付着された乾燥防止用の液体(例えばIPA)を溶解している。第1循環ライン53に導入された処理流体は、第1貯留タンク20内に入る。この間、処理流体中へ乾燥防止用の液体が溶解されていくため、処理流体中で乾燥防止用の液体の溶解度は上昇する。しかしながら、第1循環ライン53内における処理流体の容量は、第1貯留タンク20により増加しているので、処理流体中の乾燥防止用の液体の溶解濃度の上昇を抑えることができる。その後、第1貯留タンク20内の処理流体を第1循環ポンプ3により処理容器1に送り、乾燥防止用の液体の溶解度が低い処理流体を用いてウエハW上の乾燥防止用の液体を除去することができる。これに対して第1循環ライン53に第1貯留タンク20を設けない場合、第1循環ライン53内の処理流体の容量が小さいため、処理流体において乾燥防止用の液体の溶解度が短時間で飽和状態になる。このため、ウエハWの処理中に第1循環ライン53内の処理流体を頻繁に排出する必要が生じる。このことにより処理流体を排出する頻度が多くなり、その都度新たな処理流体を補充する必要が生じる。これに対して本実施の形態によれば、第1循環ライン53内の処理流体を長時間に渡って使用することができ、新たな処理流体の消費量を減らすことができる。
【0030】
ところで、第1貯留タンク20および第2貯留タンク62の容量は20Lとなっており、処理容器1の容量(例えば1L)よりかなり大きくなっている。このため。上述のように、貯留タンク20をもつ第1循環ライン53および貯留タンク62をもつ第2循環ライン60中の処理流体の容量を増加させることができる。
【0031】
例えば、第1循環ライン53に第1貯留タンク20を設けることにより、第1循環ライン53内の処理流体を用いて、例えばウエハ100枚(複数枚)を処理することができる。
例えば乾燥防止用の液体の場合、IPAは20Lの第1貯留タンク20に10Vol%程度溶解させることができ、第1貯留タンク20には2LのIPAを溶解させることができる。すなわち、ウエハ上のIPAパドル20ml×ウエハ処理100枚(複数枚)=2LのIPAを第1循環ライン53中の処理流体中に溶解させることができる。
【0032】
また、上述のように下流切換弁65aを用いることにより、第1循環ライン53と第2循環ライン60の切り換えを行うことができる。
【0033】
例えば第1循環ライン53の処理流体中の乾燥防止用の液体の溶解度が飽和状態になる前(例えばウエハWを100枚処理した後)に第1循環ライン53から第2循環ライン60へ切り換える。上述のように第2循環ライン60は第1循環ライン53と同一構成をもち、第1循環ライン53と第2循環ライン60は下流側切換弁65aにより切り換える。具体的には、ウエハ処理が処理枚数に到達したら第1循環ライン53から第2循環ライン60に切り換え、第2循環ライン60を使用中に、第1循環ライン53の第1貯留タンク20内の処理流体を流体排出装置21から排出する。同様にウエハ処理が処理枚数に到達したら第2循環ライン60から第1循環ライン53に切り換え、第2循環ライン60の第2貯留タンク62内の処理流体を流体排出装置63から排出する。
【0034】
以上に説明した構成を備えたウエハ処理装置は、制御部6を備えている。制御部6はCPUと記憶部とを備えたコンピュータ6aからなり、処理容器1、昇圧ポンプ2、第1循環ポンプ3および第2循環ポンプ61や各種の弁51a、52a、53a、53b、60a、60b、開閉弁21b、63b、流量計53c、60c、下流側切換弁65aに接続されている。制御部6の記憶部にはウエハ処理装置の作用、つまり、表面が乾燥防止用の液体で濡れたウエハWを処理容器1に搬入してから、処理流体により前記液体を除去し、ウエハWを取り出すまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体6bに格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0035】
次にこのような構成からなる本実施例の作用、すなわち基板処理方法について、以下説明する。
図3に示すように、前工程における液処理装置にてウエハW表面の微小なごみや自然酸化膜を除去する液処理が終了すると、この液処理装置においてウエハWの表面には例えばIPA(IsoPropyl Alcohol)などの乾燥防止用の液体が供給され、ウエハ搬送アームに受け渡されて、ウエハWは本発明による基板処理装置10の処理容器1へと搬送される(スタート)。
【0036】
次いで、処理容器1に設置された不図示の昇降ピンなどにウエハWを受け渡し、ウエハWを処理容器1の保持板16上に載置した後、開口部12を介してウエハWを容器本体11内に搬入し(ステップS101)、処理容器1を密閉する(ステップS102)。しかる後、流体供給ライン51の開閉弁51a、第1循環ライン53の開閉弁53aを開くと共に昇圧ポンプ2を稼動させて処理容器1に例えば二酸化炭素(CO2)等の処理流体を供給し、処理容器1の内部および第1貯留タンク20が高圧状態(超臨界状態や亜臨界状態)の圧力となるまで昇圧する(ステップS103)。
【0037】
こうして処理容器1内および第1貯留タンク20が高圧状態の処理流体雰囲気となったら、昇圧ポンプ2を停止し、流体供給ライン51の開閉弁51aを閉じ、第1循環ライン53の開閉弁53a,53bを開くと共に、第1循環ポンプ3を稼動させる(ステップS104)。
【0038】
この間、第1循環ポンプ3によって処理容器1内の流体を循環させる動作が実行される(ステップS105)。このように吐出量の大きな第1循環ポンプ3によって処理容器1内の処理流体と乾燥防止用の液体とからなる混合流体を循環させることにより、処理容器1内において処理流体と乾燥防止用の液体との混合を促進できる。この結果、ウエハW表面付近の処理流体が乾燥防止用の液体で飽和した状態となることを防ぎ、当該液体を除去する能力の低下を抑制できる。
【0039】
次に処理容器1内における流体の流れについて、
図4および
図5により説明する。
図4および
図5に示すように、処理容器1内には流体供給ライン51に接続され多数の開孔を有する流体供給ヘッダー17と、流体排出ライン52に接続され多数の開孔を有する流体排出ヘッダー18とが設置され、流体供給ヘッダー17は処理容器1の容器本体11の一方の壁面に設けられ、流体排出ヘッダー18は容器本体11の他方に設けられ、流体供給ヘッダー17の開孔と流体排出ヘッダー18の開孔は互いに向き合っている。この場合、ウエハWおよび支持板16は、処理容器1の内壁との間に1mm程度の間隙をもつよう配置される。
【0040】
このため流体供給ヘッダー17から供給される流体は、ウエハWの面内において均一な流速の分布となって流体排出ヘッダー18へ送られ、ウエハW上を流れることにより、ウエハW上の乾燥防止用の液体がより確実に処理流体中へ溶解する。
【0041】
この間、第1循環ライン53中において、処理流体中に乾燥防止用の液体が溶解し、処理流体中において乾燥防止用の液体の濃度が上昇していく。しかしながら、第1循環ライン53には、第1貯留タンク20が設けられているため、第1循環ライン53内の処理流体の容量を大きくすることができ、処理流体中において乾燥防止用の液体の溶解濃度上昇を抑えることができる。このため第1循環ライン53内の処理流体を長時間に渡って使用することができ、処理流体の消費量を低減することができる。
【0042】
次に第1循環ライン53の開閉弁53a、53bを閉じ、かつ、第1循環ポンプ3が停止し、流体供給ライン51の開閉弁51aが開くと共に昇圧ポンプ2を作動する。(ステップ106)また流体排出ライン52の減圧弁52aを開く。このことにより流体供給ライン51から新規の処理流体が処理容器1内に供給され、処理容器1内の流体を排出する(ステップ107)。このとき、処理容器1や流体排出ライン52を流れる処理流体中の乾燥防止用の液体の濃度をできる限りゼロにすることにより、処理流体の排出時における乾燥防止用の液体の凝縮、ウエハWへの再付着を防止し、再付着に伴うパターン倒れの発生を防止できる。
【0043】
こうしてウエハW表面の乾燥防止用の液体を除去するのに十分な、予め設定した時間が経過したら、昇圧ポンプ2を停止し、処理流体の供給を止める(ステップS108)。そして流体供給ライン51の開閉弁51aを閉じる。一方で、流体排出ライン52の減圧弁52aを開いたまま処理容器1内の流体を排出し、大気圧まで減圧する(ステップS109)。この結果、処理流体中に抽出された乾燥防止用の液体は、処理流体と共に処理容器1の外に排出され、表面の液体が除去され、乾燥した状態のウエハWが得られる。
【0044】
処理容器1内の圧力が大気圧まで下がったら、流体排出ライン52の減圧弁52aをを閉じ、保持板16を移動させてウエハWを搬出し(ステップS110)、外部の搬送アームにウエハWを受け渡して処理を終える(エンド)。
【0045】
制御部6は処理容器1内でのウエハ処理が所定枚数(例えば100枚)に到達したら、下流側切換弁65aを作動させて、第1循環ライン53から第2循環ライン60へ切り換える。そして第2循環ライン60を使用中に、第1循環ライン53の第1貯留タンク20内で第1循環ライン53の処理流体中の乾燥防止用の液体の溶解度が状態になる前の処理流体を流体排出装置21から排出する。
【0046】
同様に処理容器1内でウエハ処理が所定枚数に到達したら、下流側切換弁65aを作動させて、第2循環ライン60から第1循環ライン53へ切換える。そして第1循環ライン53を使用中に、第2循環ライン60の第2貯留タンク62内で第2循環ライン60の処理流体中の乾燥防止用の液体の溶解度が飽和状態になる前の処理流体を流体排出装置63から排出する。
【0047】
このようにして、処理容器1内で使用される処理流体を長時間に渡り使用することができる。このためウエハWの処理中に処理容器1内へ供給される処理流体を頻繁に排出する必要はなく、新たな処理流体をその都度補充する必要もない。
【0048】
また、下流側切換弁65aを用いて第1循環ライン53と第2循環ライン60とを切換えることにより、第1循環ライン53の第1貯留タンク20と第1循環ライン60の第2貯留タンク62において処理流体中の乾燥防止用の液体の溶解度が飽和状態になる前の処理流体をスムーズに外部へ排出することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、処理容器1に処理流体を供給する昇圧ポンプ2の(吐出流量は望ましくは0.1〜3.0L/minで好ましくは0.5〜1.0L/min)よりも吐出流量の大きな第1循環ポンプ3(吐出流量は望ましくは10〜40L/minで好ましくは10〜20L/min)を利用して処理容器1内の流体を循環させるので、処理容器1内において、処理流体とウエハW表面の液体との混合を促進することができる。
【0050】
また第1循環ライン53に第1貯留タンク20を設けるとともに、第2循環ライン60に第2貯留タンク62を設けたので、第1循環ライン53および第2循環ライン60内において、処理流体の容量を大きく取ることができ、処理流体中の乾燥防止用の液体の溶解濃度を低く抑えることができる。これによりウエハWの処理中に処理流体を頻繁に排出して、新たな処理流体をその都度補充する必要はなく、第1循環ライン53および第2循環ライン60内の処理流体を長時間に渡って、使用することができ、処理流体の消費量を低減することができる。
【符号の説明】
【0051】
W ウエハ
1 処理容器
2 昇圧ポンプ
3 第1循環ポンプ
4 処理流体供給部
6 制御部
6a コンピュータ
6b 記憶媒体
10 基板処理装置
17 流体供給ヘッダー
18 流体排出ヘッダー
20 第1貯留タンク
21 流体排出装置
51 流体供給ライン
52 流体排出ライン
53 第1循環ライン
60 第2循環ライン
62 第2貯留タンク
63 流体排出装置