(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃焼室には、前記燃料、支燃性ガスおよび処理ガスの吹き込み位置から前記燃焼室の軸線方向に離間した位置に、燃焼室の内周面に水膜を形成するための水供給ノズルが設置されていることを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置からはシランガス(SiH
4)、或いはハロゲン系のガス(NF
3,ClF
3,SF
6,CHF
3,C
2F
6,CF
4)等の有害可燃ガスを含むガスが排出されるが、このような排ガス(処理ガス)は、そのままでは大気に放出することはできない。そこで、これらの排ガスを除害装置に導いて、燃焼による酸化無害化処理を行うことが一般に行われている。この処理方法としては、燃料ガスを用いて炉内に火炎を形成し、排ガス処理を行う燃焼式排ガス処理装置が広く採用されている。
【0003】
半導体産業や液晶産業向け燃焼式排ガス処理装置は、燃料と支燃性ガス(酸素含有ガス)とを混合して燃料を燃焼させて火炎を形成し、火炎に処理ガスを混合しガス処理を行うため、燃焼処理副生成物として多量の粉塵(主としてSiO
2)の発生や多量の酸性ガスの発生が見込まれる。従来の燃焼酸化方式として、LNGと純酸素を用い高温の純酸素火炎を形成し、高温の純酸素火炎で処理ガスを加熱して分解する方法が知られている。純酸素燃焼の特性上高い火炎温度により排気ガスに含まれる窒素が分解され、大量の窒素酸化物(NOx)を付加的に生成する問題点を有している。
また、純酸素を用いず、空気により火炎を形成し、火炎に処理ガスを混合し比較的低温で処理ガスを加熱する方法も知られている。この場合、窒素酸化物(NOx)の発生は抑制されるが、高温の火炎が必要なPFCsなどの難分解性ガスの分解性能は低下する。また火炎が低温であるために、COが発生する問題を有している。
【0004】
また、燃焼式排ガス処理装置においては、定期的に燃焼室の内壁面に付着堆積した粉体の除去メンテナンスが必要となるが、付着堆積した粉体をスクレーパーなどの機構を追加することで、燃焼室の内壁面を定期的に掻き取ることが必要であった。
【0005】
特許文献1には、スクレーパーなどの粉体を掻き取る機構を必要としない燃焼式排ガス処理装置が記載されている。特許文献1の燃焼式排ガス処理装置においては、処理対象排ガスの燃焼処理部は、内部に火炎を形成する排ガス処理用燃焼器(バーナ)と、排ガス処理用燃焼器の下側に設けられた筒体と、排ガス処理用燃焼器と筒体の間に設けられた水溜め部と、筒体の内壁面に水膜を形成する水膜形成機構とを備え、燃焼器において火炎を形成し、火炎の下流側に配置された筒体の内部の燃焼処理室で排ガスの燃焼処理(加熱処理)を行い、水溜め部に水の旋回流を形成することで、筒体の内壁面にらせん状の水膜を形成している。この特許文献1によると、筒体の内壁面に水膜を形成するので、水膜により断熱が施され、ステンレス鋼等の安価な材料を筒体に用いることができ、粉体が水膜により洗い流されて筒体の内壁面に付着せず、また腐食性ガスが水膜により洗い流され、筒体の内壁面が損傷しない、とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1を含む従来の燃焼式排ガス処理装置においては、バーナにおいて燃料(燃料ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)とを混合して燃料を燃焼させて火炎を形成し、バーナにおいて形成した火炎に処理ガス(排ガス)を混合して処理ガスを加熱処理するようにしている。すなわち、燃焼室において火炎を先に形成し、この形成された火炎によって処理ガスを加熱処理するようにしている。
しかしながら、このような従来の燃焼方式では、以下に列挙するような問題点がある。
(1)純酸素を使用した高温の火炎を形成した場合
A.火炎を形成するためのバーナ本体が高温となり、熱損傷を受ける。
B.高温の火炎と処理ガス(主成分の一つにN
2ガスを含む)が接触することで、サーマルNOxが大量に発生する。
(2)空気を使用した比較的低温な火炎を形成した場合
A.PFCsなどの難分解性ガスは高温の反応処理温度を必要とするため、難分解性ガスのガス処理性能が低下し、副生成ガスとしてCOが発生する。
B.燃焼室に堆積する生成物対策として、燃焼室に濡れ壁水を流すことができないため、スクレーパーなどの機構を追加する必要がある。
【0008】
本発明者らは、バーナにおいて燃料と支燃性ガス(酸素含有ガス)とを混合して火炎を形成し、バーナにおいて形成した火炎で処理ガスを加熱処理する従来の方式では、上述したような種々の問題点があるため、新たな燃焼方式について研究を重ねた結果、燃料(燃料ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)と処理ガスの三種を混焼することを着想し、この三種混焼を行うために、三種のガスを燃焼室の内周面の接線方向に吹き込むことを着想したものである。
そこで、本発明は、燃料と支燃性ガスと処理ガスを燃焼室の内周面の接線方向に吹き込むことにより、燃料と支燃性ガスと処理ガスの三種を混焼して燃焼効率の高いガス処理を行うことができ、サーマルNOxの発生やCOの発生を抑制することができる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の排ガス処理装置は、処理ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理装置において、処理ガスを燃焼する円筒状の燃焼室は、燃料と支燃性ガスと処理ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込む燃料用ノズルと支燃性ガス用ノズルと処理ガス用ノズルとを備え、
前記燃料用ノズルと支燃性ガス用ノズルと処理ガス用ノズルを燃焼室の軸線方向にずらして配置する構成とし、前記支燃性ガス用ノズルを最上段に配置し、下方に向かって前記処理ガス用ノズル、前記燃料用ノズルの順にずらして配置し、前記燃料用ノズルと支燃性ガス用ノズルと処理ガス用ノズルは、前記燃料と支燃性ガスと処理ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向へ吹き込んで、前記燃料と支燃性ガスと処理ガスの3種混合の旋回流を形成する
ことにより、前記燃焼室内に円筒状混合火炎を形成することを特徴とする。
本発明によれば、円筒状の燃焼室の内周面の接線方向に、燃料(燃料ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)と処理ガス(排ガス)とを吹き込むことにより、燃料と支燃性ガスと処理ガスの三種混合の旋回流を形成する。これにより、燃料と処理ガスとを支燃性ガスにより燃焼させて円筒状混合火炎を形成する。すなわち、燃焼室において、三種混合の円筒状混合火炎を形成して、処理ガスを燃焼させることができる。
本発明によれば、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は温度が低く重い未燃の三種混合ガス、内側は温度が高く軽い三種混合の燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の三種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、放熱による温度低下がなく、燃焼効率の高いガス処理が行われる。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、前記燃焼室には、前記燃料、支燃性ガスおよび処理ガスの吹き込み位置から前記燃焼室の軸線方向に離間した位置に、燃焼室の内周面に水膜を形成するための水供給ノズルが設置されていることを特徴とする。
本発明によれば、三種混合の円筒状混合火炎の外側において燃焼室の内壁面(内周面)に水膜(濡れ壁)を形成することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、前記円筒状混合火炎の旋回力により、前記燃焼室の内周面上の水膜を旋回させることを特徴とする。
【0013】
一実施形態によれば、処理ガスを燃焼処理して無害化する排ガス処理装置において、処理ガスを燃焼する円筒状の燃焼室は、燃料と支燃性ガスと処理ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込む燃料用ノズルと支燃性ガス用ノズルと処理ガス用ノズルとを備え、前記燃料用ノズルと支燃性ガス用ノズルと処理ガス用ノズルは、前記燃焼室の軸線に直交する同一平面上に位置している。ここで、同一平面上に位置しているとは、3つのノズルの燃焼室内周面側の開口の一部が同一平面上に位置していることをいう。
上記一実施形態によれば、円筒状の燃焼室の内周面の接線方向に、燃料(燃料ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)と処理ガス(排ガス)とを吹き込むことにより、燃料と処理ガスとを支燃性ガスにより燃焼させて円筒状混合火炎を形成する。すなわち、燃焼室において、同一の燃焼場で三種混合の円筒状混合火炎を形成して、処理ガスを燃焼させることができる。
【0014】
一実施形態によれば、前記燃焼室には、前記燃料、支燃性ガスおよび処理ガスの吹き込み位置から前記燃焼室の軸線方向に離間した位置に、燃焼室の内周面に水膜を形成するための水供給ノズルが設置されている。
上記一実施形態によれば、三種混合の円筒状混合火炎の外側において燃焼室の内壁面(内周面)に水膜(濡れ壁)を形成することができる。
【0015】
一実施形態によれば、前記燃料と支燃性ガスと処理ガスとを前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて吹き込むことにより、前記燃焼室内に円筒状混合火炎を形成する。
上記一実施形態によれば、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は温度が低く重い未燃の三種混合ガス、内側は温度が高く軽い三種混合の燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の三種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、放熱による温度低下がなく、燃焼効率の高いガス処理が行われる。
【0016】
一実施形態によれば、前記円筒状混合火炎の旋回力により、前記燃焼室の内周面上の水膜を旋回させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円筒状の燃焼室の内周面の接線方向に、燃料(燃料ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)と処理ガス(排ガス)とを吹き込むことにより、燃料と処理ガスとを支燃性ガスにより燃焼させて円筒状混合火炎を形成する。すなわち、燃焼室において、同一の燃焼場で三種混合の円筒状混合火炎を形成して、処理ガスを燃焼させるようにしているため、以下に列挙するような効果が得られる。
(1)三種のガスともに燃焼室の内周面の接線方向に導入することで、旋回遠心力により円筒状火炎の内側は高温の軽い燃焼後ガス、外側は低温の重い未燃焼ガスという分布になる。火炎構造上、自己断熱されている状態であるため、放熱が少なく、高効率な燃焼が可能となる。そのため、低温火炎の場合に発生するCOの発生が抑制され、また燃焼室の熱損傷を防止できる。
(2)三種のガスを混焼することで、局所的高温部の無い火炎が形成されるため、サーマルNOxの発生が抑制され、また副生成物の溶融や固着を防止できる。
(3)三種のガスの混合により、燃料と酸素が流入ガスの主となるN
2ガスによってより希釈されるため、円筒状火炎の外側の未燃ガスの比率が増えることで、火炎の径が小さくなる。すなわち、火炎の自己断熱性が促進される。
(4)三種のガスを混焼することで、自己断熱性が向上した火炎が形成されるため、火炎の外側に濡れ壁水を流しても、水と高温の火炎は直接接触しない。水の温度上昇が抑制されるため、燃焼効率を低下させることなく、濡れ壁の内側で混焼断熱火炎が形成できる。そのため、以下の効果が得られる。
A.円筒状混合火炎の着火位置は、流入ガスポートの直下となり、流入ガスの酸化反応は濡れ壁水の位置から開始される。酸化反応により生成したSiO
2等の粉体は、旋回遠心力により、濡れ壁水に捕集されるため、燃焼室内に堆積しない。生成したSiO
2等の粉体は、生成した直後に旋回遠心力により、濡れ壁水に捕集されるため、除害装置としての粉体除去効率が向上する。すなわちスクラバー性能の向上が図れる。
B.燃焼室の内壁は濡れ壁水で覆われるため、HFやCl
2等の腐食性ガスとの接触がない。
C.従来は、高温の腐食性ガスと燃焼器本体が直接接触するため、高価な耐食・耐熱材を用いる必要があったが、本発明によれば、燃焼室の内壁に濡れ壁水を流すことで腐食を防止できるため、安価なステンレス材を使用できる。すなわち燃焼室を含む燃焼器全体をステンレス材とすることができる。
D.濡れ壁水膜を均一に燃焼器の内壁に形成するために、従来は濡れ壁水を旋回流で供給し、内壁面に特殊な濡れ性向上の加工が必要であったが、本発明の混焼断熱火炎では、ガスの旋回流により濡れ壁水も旋回するため、燃焼室の内壁面の濡れ性向上のための加工が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る排ガス処理装置の実施形態について
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1乃至
図6において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の排ガス処理装置の燃焼室の構成例を示す模式的断面図である。燃焼室1は、一端(図示例では上端)が閉塞され他端(図示例では下端)が開口した円筒容器状の燃焼室として構成されている。円筒容器状の燃焼室1には、閉塞端部近傍で燃料(燃料ガス)と支燃性ガス(酸素含有ガス)と処理ガス(排ガス)とが吹き込まれるようになっている。燃焼室1の閉塞端部には、点火用のパイロットバーナ2が設置されており、パイロットバーナ2には燃料と空気が供給されるようになっている。なお、
図1においては、燃焼室1の下方にある洗浄部などは図示を省略している。
【0020】
図2は、
図1のII−II線断面図である。
図2に示すように、燃料を吹き込む燃料用ノズル3Aと、支燃性ガスを吹き込む支燃性ガス用ノズル3Bと、処理ガスを吹き込む処理ガス用ノズル3Cとが燃焼室1の内周面の接線方向に向けて設置されている。
図2に示す例においては、燃料用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bは各1個ずつ設置され、処理ガス用ノズル3Cは2個設置されているが、各ノズル3A,3B,3Cの個数は、燃焼室のサイズや設置スペース等に応じて適宜変更可能であり、同一平面上に設置する燃料用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bと処理ガス用ノズル3Cのセットを複数段設置することも可能である。この場合、燃料流量と支燃性ガス流量と処理ガス流量のバランスを変えることで、火炎の安定性を向上させることができる。燃料を吹き込む燃料用ノズル3Aと、支燃性ガスを吹き込む支燃性ガス用ノズル3Bと、処理ガスを吹き込む処理ガス用ノズル3Cは、円筒状の燃焼室1の軸線に直交する同一平面上に位置している。ここで、同一平面上に位置しているとは、3つのノズルの燃焼室内周面側の開口の一部が同一平面上に位置していることをいう。
【0021】
図1に示すように、燃焼室1には、燃料,支燃性ガス,処理ガスの吹き込み位置のやや下方の位置に、燃焼室1の内壁面に濡れ壁(水膜)を形成するための水を供給する水供給ノズル5が設置されている。
【0022】
図1および
図2に示すように構成された燃焼室1において、燃料用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bと処理ガス用ノズル3Cとから、燃料と支燃性ガスと処理ガスとを燃焼室1の内周面の接線方向に向けて、火炎の燃焼速度以上の流速で吹き込む。これにより、燃焼室1の内壁から浮いた三種混合の円筒状混合火炎が形成される。円筒状混合火炎は燃焼室1の軸線方向に沿って形成される。三種のガスを共に接線方向に吹き込むことで、旋回遠心力により円筒状混合火炎の外側は温度が低く重い未燃の三種混合ガス、内側は温度が高く軽い三種混合の燃焼後ガスの分布が形成される。したがって、円筒状混合火炎は、温度の低い未燃の三種混合ガスに覆われた自己断熱された状態となるため、放熱による温度低下がなく、燃焼効率の高いガス処理が行われる。また、処理ガスは通常N
2ガス等により希釈されて排ガス処理装置へ流入するので、このN
2ガスを含む処理ガスを燃料と支燃性ガスと混焼することで、緩慢な燃焼となり、局所的な高温部が形成されないため、NOxの発生が抑制される。
【0023】
また、N
2ガスを含む処理ガスを燃料と支燃性ガスと混焼することで、円筒状となる火炎の径が小さくなり、燃焼室1の内壁面温度が低下する。すなわち、本燃焼方式の特徴である火炎の断熱性が促進されるため、
図1に示すように、燃焼室1の内壁面に濡れ壁(水膜)を形成しても火炎および火炎内側の燃焼ガス温度が低下することはない。そして、燃焼後に生成されるSiO
2等の粉体は、ガス旋回流の遠心力により外側の濡れ壁水に捕集され下部へ洗い流されるため、燃焼室1の内壁面に堆積せず、また燃焼室で大部分の粉体が濡れ壁水に捕集されることとなるため、排ガス処理装置のスクラバー性能(粉体除去性能)が向上する。腐食性ガスも濡れ壁水により洗い流され、燃焼室1の内壁面の腐食を防止できる。さらに、濡れ壁水により燃焼室1の内壁面は低温に保たれるため、熱損傷することはなく、ステンレス鋼等の安価な材料で燃焼室1を構成することができ、製造コストを低減出来る。
【0024】
次に、
図1および
図2に示すように構成された燃焼室1による処理ガス(排ガス)の処理例を説明する。
処理ガスの燃焼室1への流入量により、処理ガス(主成分の一つにN
2ガスを含む),燃料ガス,支燃性ガスの三種の混合気の組成を燃焼範囲としつつ、ガス処理に必要なガス温度を確保することができる適切な燃料および支燃性ガスの流量を設定する。三種の組成と燃焼範囲との関係を燃料ガスをプロパンとした場合で説明する。支燃性ガスが純酸素で、処理ガスのN
2がない場合、混合気に対するプロパン成分%が、燃焼の下限界は2%で、上限界は40%である。支燃性ガスを空気(N
2とO
2の組成比は79:21)とした場合、混合気に対するプロパン成分%が、燃焼の下限界は2%で上限界は10%であることが知られている。これに処理ガスの主となるN
2が加わり、例えばN
2とO
2の組成比が、85:15となった場合、混合気に対するプロパン成分%が、燃焼の下限界は2%で上限界は6%であることが知られている。なお、燃料ガス(燃料)が都市ガス、天然ガス等の他のガスの場合には、プロパンが燃料ガスである場合と同様の手法により混合気の燃焼範囲を求めればよい。すなわち、燃料ガスと支燃性ガス(酸素と空気)と処理ガスのN
2の混合気の組成と燃焼範囲の関係をもとに調整することができる。同一平面上に設置する燃料用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bと処理ガス用ノズル3Cのセットを例えば、2段設置した場合、燃料流量と支燃性ガス流量と処理ガス流量のバランス(組成比)を変え、例えば上段側の処理ガス流入量を減らし、下段側を増やすことで、火炎の安定性を向上させることができる。
【0025】
図1および
図2に示す実施形態では、燃料用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bと処理ガス用ノズル3Cとが円筒状の燃焼室1の軸線に直交する同一平面上に位置している場合を説明したが、3つのノズル3A,3B,3Cが燃焼室1の軸線方向にずれて配置されている場合であっても、下記の(1)および(2)の条件を満たせば、燃焼室1の内壁から浮いた三種混合の円筒状混合火炎を形成することができる。なお、各ノズル3A,3B,3Cは複数に分割して、燃焼室1の円周方向に離間させて配置しても良い。
(1)燃料用ノズル3Aと支燃性ガス用ノズル3Bと処理ガス用ノズル3Cとが燃料(燃料ガス)と支燃性ガスと処理ガスとをそれぞれ燃焼室の内周面の接線方向へ吹き込んで、燃料と支燃性ガスと処理ガスの三種混合の旋回流を形成する。
(2)燃焼室に吹き込まれる燃料(燃料ガス)と支燃性ガスと処理ガスのうち、少なくとも1つのガスが燃焼室に最後に吹き込まれて三種混合の旋回流が形成されたときに、三種の混合気の組成が燃焼範囲に到達する。
上記(1)および(2)の条件を満たすことにより、燃焼室1の内壁から浮いた三種混合の円筒状混合火炎を形成することができるが、三種混合の円筒状混合火炎が形成された後においては、燃料用ノズル3A、支燃性ガス用ノズル3B、処理ガス用ノズル3Cの下流側(後段)に、さらに燃料用ノズル3Aおよび処理ガス用ノズル3Cを設け、これらのノズルから燃料と処理ガスを吹き込むことにより、燃焼温度を向上させ、ガス処理性能を向上させることもできる。
【0026】
次に、上記(1)および(2)の条件を満たす各種態様について図面を参照して説明する。
まず、燃焼室1に最初に吹き込まれて旋回流を最初に形成するノズル、すなわち旋回流を開始するノズルとして、燃料用ノズル3A、支燃性ガス用ノズル3B、処理ガス用ノズル3Cのうちどのノズルを選定するかを説明し、選定されたノズルを基準として旋回流の下流側に向かって他のノズルをいかに配置するかについて説明する。
【0027】
図3(a),(b)は、燃料用ノズル3A、支燃性ガス用ノズル3B、処理ガス用ノズル3Cのセットが単段(または2段の場合の上段)であって処理ガスの吹き込みノズルが少ない(1個の)場合を示す模式図であり、
図3(a)は燃焼室の部分縦断面図、
図3(b)は燃焼室の水平断面図である。
支燃性ガスを空気として、空気比を1.3とした場合、燃料流量の約15倍の空気が必要となる。この場合、燃焼室内の旋回力を支配するのは、空気の流量,流速となる。したがって、
図3(a),(b)に示すように、支燃性ガスとしての空気を吹き込む支燃性ガス用ノズル3Bを旋回流を開始するノズルに選定する。旋回流を開始するノズルとして支燃性ガス用ノズル3Bを選定することにより、燃焼室の天板は火炎が形成される直前の支燃性ガスにより冷却されるため、天板の放熱による熱量ロスを低減でき、省エネルギーに寄与する。
【0028】
そして、選定された支燃性ガス用ノズル3Bを基準として旋回流の下流側に向かって処理ガス用ノズル3C、燃料用ノズル3Aの順に配置する。すなわち、支燃性ガス用ノズル3Bと燃料用ノズル3Aの間に、希釈N
2を主体とした処理ガスを吹き込む処理ガス用ノズル3Cを設置することで、支燃性ガスは処理ガス(N
2主体)と混合した後に、燃料ガスを混合し着火するため、局所的高温部が形成されることなく、均一な温度場をもつ火炎が形成される。これにより、ガス処理性能は向上しつつ、サーマルNOxの発生を抑制することができる。
図3(a),(b)においては、燃料用ノズル3A、支燃性ガス用ノズル3B、処理ガス用ノズル3Cが円筒状の燃焼室1の軸線に直交する同一平面上に位置している構成を例示したが、3つのノズル3A,3B,3Cを燃焼室1の軸線方向にずらして配置する場合には、
図3(a)において支燃性ガス用ノズル3Bを最上段に配置し、下方に向かって処理ガス用ノズル3C、燃料用ノズル3Aの順にずらして配置すればよい。なお、
図3(a)に示す断面図では、断面の手前側(前方側)に位置するノズル3Cを仮想線で示している。以下の図面でも同様である。
【0029】
図4(a),(b)は、処理ガスの吹き込みノズルが単段には入りきらない場合に燃料用ノズル3A、支燃性ガス用ノズル3B、処理ガス用ノズル3Cのセットを上下に2段設置した場合の下段のセットの一例を示す模式図であり、
図4(a)は燃焼室の部分縦断面図、
図4(b)は水平断面図である。
図4(a),(b)に示すように、下段のセットは、旋回流の最上流側に支燃性ガス用ノズル3Bを配置し、支燃性ガス用ノズル3Bを基準として旋回流の下流側に向かって処理ガス用ノズル3C−1、処理ガス用ノズル3C−2、燃料用ノズル3A、処理ガス用ノズル3C−3の順に配置して構成されている。
このように、下段のセットにも、3種のノズル3A、3B、3C−1,3C−2,3C−3を設けることで、ガス混合度が均一化されるため、局所高温部を形成することなく、均一な温度場の火炎を形成することができる。これにより、ガス処理性能は向上しつつ、サーマルNOxの発生を抑制することができる。
【0030】
図5(a),(b)は、処理ガスの吹き込みノズルが単段に入りきらない場合に上下に2段設置した場合の下段のセットの他の例を示す模式図であり、
図5(a)は燃焼室の部分縦断面図、
図5(b)は水平断面図である。
図5(a),(b)に示すように、下段のセットは、旋回流の最上流側に処理ガス用ノズル3C−1を配置し、処理ガス用ノズル3C−1を基準として旋回流の下流側に向かって処理ガス用ノズル3C−2、燃料用ノズル3A、処理ガス用ノズル3C−3の順に配置して構成されている。
難分解性ガスなどが処理ガスとして燃焼室に流入する場合、支燃性ガスの空気に酸素を追加し、高温の温度場を形成する必要がある。高温の温度場を形成する必要がある場合、上段のセットは、
図3(a),(b)のセットと同様の構成にして、下段のセットは
図4(a),(b)に示すセットから支燃性ガス用ノズルを除いた
図5(a),(b)に示すセットとして、上段のセットにのみ支燃性ガス用ノズルを設ける。火炎の形成位置は、
図4(a),(b)に示す下段のセットとした場合よりも旋回上流側に移動し、火炎体積を小さくすることができるため、より高温な温度場を形成できる。
【0031】
図1乃至
図3に示すように構成された燃焼室1において、燃料ガスと支燃性ガスと処理ガスは、火炎の燃焼速度以上の流速で吹き込む。この場合、燃料ガスと支燃性ガスと処理ガスの流速は、スワール数(旋回度合を表す無次元数)が5〜40になるように調整する。このようにスワール数を基準に燃料ガスと支燃性ガスと処理ガスの流速を調整することにより、所望の円筒状混合火炎を形成できる。また、火炎の安定性を向上させるため、パイロットバーナ2は、常時火炎を形成しておくことは有効である。
【0032】
図6は、
図1乃至
図3に示す燃焼室1を備えた排ガス処理装置の全体構成を示す模式図である。
図6に示すように、排ガス処理装置は、処理ガス(排ガス)を燃焼して酸化分解する燃焼室1(
図1参照)と、この燃焼室1の後段に配置された排ガス洗浄部30とを備えている。燃焼室1は接続管13によって下方に延びている。処理ガス(排ガス)は、バイパス弁(三方弁)15を通じて円筒状の燃焼室1の内周面の接線方向に供給される。排ガス処理装置に不具合がある場合には、バイパス弁15が操作され、処理ガスが排ガス処理装置に導入されずに、図示しないバイパス管に送られるようになっている。燃料と支燃性ガスも、同様に、円筒状の燃焼室1の内周面の接線方向に供給されるようになっている。このように、燃料と支燃性ガスと処理ガスとを燃焼室1の内周面の接線方向に向けて、火炎の燃焼速度以上の流速で吹き込むことにより、燃焼室1の内壁から浮いた三種混合の円筒状混合火炎が形成される。燃焼室1の上部には水供給ノズル5から水Wが供給されており、この水Wは燃焼室1の内面に沿って流下し、燃焼室の内面に濡れ壁(水膜)を形成する。この濡れ壁水により、処理ガスの燃焼により生成したSiO
2等の粉体は捕集される。
【0033】
燃焼室1の下方には循環水タンク20が配置されている。循環水タンク20の内部には堰21が設けられており、この堰21によって上流側の第1の槽20Aと下流側の第2の槽20Bとに区画されている。濡れ壁水に捕集された粉体生成物は、接続管13を介して循環水タンク20の第1の槽20A内に落下し、第1の槽20Aの底部に堆積する。また、燃焼室1の内面を流下した濡れ壁水は第1の槽20Aに流入する。第1の槽20Aの水は、堰21をオーバーフローして第2の槽20Bに流れ込むようになっている。
【0034】
燃焼室1は冷却部25を介して排ガス洗浄部30と連通している。この冷却部25は、接続管13に向かって延びる配管26と、この配管26内に配置されたスプレーノズル27とを有している。スプレーノズル27は、配管26を流れる排ガスに対向するように水を噴射する。したがって、燃焼室1により処理された排ガスは、スプレーノズル27から噴射される水によって冷却される。噴射された水は、配管26を通って循環水タンク20に回収されるようになっている。
【0035】
冷却された排ガスは、次に排ガス洗浄部30に導入される。この排ガス洗浄部30は、水により排ガスを洗浄し、排ガスに含まれる微小な粉塵を除去する装置である。この粉塵は、主として、燃焼室1での酸化分解(燃焼処理)により生成された粉体生成物である。
【0036】
排ガス洗浄部30は、ガス流路32を形成する壁部材31と、ガス流路32内に配置される第1のミストノズル33A、第1の水膜ノズル33B、第2のミストノズル34A、および第2の水膜ノズル34Bとを備えている。これらミストノズル33A,34A及び水膜ノズル33B,34Bは、ガス流路32の中心部に位置し、略直線状に配列されている。第1のミストノズル33Aおよび第1の水膜ノズル33Bは第1のノズルユニット33を構成し、第2のミストノズル34Aおよび第2の水膜ノズル34Bは第2のノズルユニット34を構成する。したがって、本実施形態では、2組のノズルユニット33,34が設けられている。なお、ノズルユニットは1組でもよく、3組以上のノズルユニットを設けてもよい。
【0037】
第1のミストノズル33Aは、第1の水膜ノズル33Bよりも、排ガスの流れ方向において上流側に配置されている。同様に、第2のミストノズル34Aは、第2の水膜ノズル34Bよりも上流側に配置されている。すなわち、ミストノズルと水膜ノズルとが交互に配置されている。ミストノズル33A,34A、水膜ノズル33B,34B、壁部材31は、耐腐食性のある樹脂(例えばPVC:ポリ塩化ビニル)から構成されている。
【0038】
第1のミストノズル33Aの上流側には、排ガスの流れを整流する整流部材40が配置されている。この整流部材40は、排ガスの圧力損失を生じさせて、ガス流路32中の排ガスの流れを均一にする。整流部材40は、酸による腐食を防ぐために、金属以外の材料で構成されていることが望ましい。整流部材40の例として、樹脂で構成された不織材や、複数の開孔が形成された樹脂プレートが挙げられる。整流部材40の上流側には、ミストノズル41が配置されている。ミストノズル33A,34A,41および水膜ノズル33B,34Bは、壁部材31に取り付けられている。
【0039】
図6に示すように、排ガスは、排ガス洗浄部30の下部に設けられた配管26から排ガス洗浄部30の内部に導入される。排ガスは、排ガス洗浄部30内を下から上に流れる。より詳しくは、配管26から導入された排ガスは、まず、排ガス洗浄部30のミストノズル41に向かう。そして、排ガスは、ミストノズル41により形成されたミストを通過し、整流部材40により整流される。整流部材40を通過した排ガスは均一な流れを形成し、ガス流路32を低速で上昇する。ガス流路32には、ミスト、水膜、ミスト、及び水膜がこの順に形成されている。
【0040】
排ガスに含まれている直径1μm未満の微小な粉塵は、拡散作用(ブラウン運動)により、ミストを構成する水粒に容易に付着し、これによりミストに捕捉される。直径1μm以上の粉塵も、その多くは同様に水粒に捕捉される。水粒の径は約100μmであるので、この水粒に付着した粉塵のサイズ(径)は見かけ上大きくなる。したがって、粉塵を含む水粒は、下流側の水膜に慣性衝突により容易にぶつかり、水粒とともに粉塵は排ガスから除去される。ミスト捕捉されなかった比較的径の大きい粉塵も、同様にして水膜に捕捉され、除去される。このようにして水により洗浄された排ガスは、壁部材31の上端部から排出される。
【0041】
図6に示すように、排ガス洗浄部30の下方には、上述した循環水タンク20が位置している。ミストノズル33A,34A,41および水膜ノズル33B,34Bから供給された水は、循環水タンク20の第2の槽20Bに回収される。第2の槽20Bに貯留された水は、循環水ポンプPによりミストノズル33A,34A,41および水膜ノズル33B,34Bに供給される。同時に、循環水は、水Wとして燃焼室1の上部に送られ、上述したように、燃焼室1の内面に濡れ壁を形成する。
【0042】
ミストノズル33A,34Aおよび水膜ノズル33B,34Bに供給される水は、循環水タンク20に回収された水であり、粉塵(粉体生成物など)を含んでいる。したがって、ガス流路32を洗浄するために、シャワーノズル50から市水がガス流路32に供給されるようになっている。シャワーノズル50の上方には、ミストトラップ51が設けられている。このミストトラップ51は、その内部に複数の邪魔板を有しており、ミストを捕捉することができる。このようにして、処理されて無害化された排ガスは、排気ダクトを介して最終的に大気に放出される。
【0043】
循環水タンク20には水位センサ55が設けられている。この水位センサ55は第2の槽20Bの水位を監視し、第2の槽20Bの水位が所定の範囲に制御できるようになっている。また、循環水ポンプPによって移送される水の一部は、給水管52を介して循環水タンク20内に設置された複数のエダクター53に供給されるようになっている。給水管52には開閉弁V1が設置されており、開閉弁V1を開くことにより、エダクター53に給水できるようになっている。循環水タンク20には、循環水タンク20内を排水するための排水弁V2が設けられている。
【0044】
各エダクター53に循環水タンク20内の水を循環水ポンプPにより加圧して供給し、各エダクター53のノズルにより水の流れを絞る際に発生する圧力低下を利用してエダクター53の吸込口よりエダクター53内に循環水タンク20内の水を吸い込み、この吸い込んだ水をエダクター53のノズルから放出される水とともにエダクター53の吐出口から循環水タンク20の底部に噴射する。エダクター53の吐出口から噴射される噴射水の噴射打力により、循環水タンク20の底部にある粉体を解砕して浮遊させ、循環水タンク20の排水口20Dから、排水とともに粉体を自動で排出する。
【0045】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。