特許第6563396号(P6563396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563396微量レベルの酸性および塩基性AMCを測定するための液体非含有試料トラップおよび分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563396
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】微量レベルの酸性および塩基性AMCを測定するための液体非含有試料トラップおよび分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20190808BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20190808BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   G01N1/22 L
   G01N30/02 B
   G01N30/00 E
   G01N1/22 C
【請求項の数】5
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-540414(P2016-540414)
(86)(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公表番号】特表2016-534358(P2016-534358A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】US2014054266
(87)【国際公開番号】WO2015035148
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年8月30日
(31)【優先権主張番号】61/874,706
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/933,294
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】モールトン,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート,ユルゲン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ゴードレオー,ジョン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン,トーマス
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−262659(JP,A)
【文献】 特開2004−191120(JP,A)
【文献】 特開2002−357517(JP,A)
【文献】 特開2006−275551(JP,A)
【文献】 特開平11−090160(JP,A)
【文献】 特開2004−271199(JP,A)
【文献】 米国特許第03985017(US,A)
【文献】 米国特許第05302191(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0120775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 30/00−30/96
G01N 31/00−31/22
B01J 20/00−20/28
B01J 20/30−20/34
B01D 53/34−53/73
B01D 53/74−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップであって、
入口と出口とを備えるハウジングと;
前記入口と前記出口との間の流路と;
前記入口と前記出口との間の前記流路内に位置し、かつ前記ハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料の多孔質の固形塊であって、真空下でもしくは10atm以下の圧力で、または毎分20リットル(lpm)以下のガス流の流量で、その構造的完全性を維持し、前記硬質焼結親水性材料は水で濡らすことができ、前記硬質焼結親水性材料が前記ガス中の酸性の空気中分子状汚染物質をトラップするための0.05ミリモル当量〜10ミリモル当量の塩基種で、または前記ガス中の塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップするための0.05ミリモル当量〜10ミリモル当量の酸種で官能化された、多孔質の固形塊と
を備える、液体非含有トラップ。
【請求項2】
ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップであって、
入口と出口とを備えるハウジングと;
前記入口と前記出口との間の流路と;
前記入口と前記出口との間の前記流路内に位置し、かつ前記ハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料の多孔質の固形塊であって、真空下でもしくは10atm以下の圧力で、または毎分20リットル(lpm)以下のガス流の流量で、その構造的完全性を維持し、前記硬質焼結親水性材料は水で濡らすことができ、前記硬質焼結親水性材料が前記ガス中の酸性の空気中分子状汚染物質と反応して溶媒に可溶な反応生成物を生成する0.05ミリモル当量〜10ミリモル当量の塩基種で、または前記ガス中の塩基性の空気中分子状汚染物質と反応して溶媒に可溶な反応生成物を生成する0.05ミリモル当量〜10ミリモル当量の酸種で官能化された、多孔質の固形塊と
を備える、液体非含有トラップ。
【請求項3】
前記溶媒が水である、請求項2に記載の液体非含有トラップ。
【請求項4】
ガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を検出または測定する方法であって、
検出可能な量の前記酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を、請求項1〜のいずれか一項に記載の液体非含有トラップの前記入口に流入させ、前記流路を通過させ、および前記出口から流出させる工程と;
前記トラップされた酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を前記硬質焼結親水性材料から脱離させ、それにより試料を提供する工程と;
前記試料の、微量レベルの前記酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を分析し、それにより前記ガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を検出または測定する工程と
を含む、方法。
【請求項5】
前記時間が2〜8時間である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2013年9月6日に出願された米国仮特許出願第61/874,706号明細書、および2014年1月29日に出願された米国仮特許出願第61/933,294号明細書の利益を主張する。これらの出願の教示全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
一兆分の幾部かのレベルの酸性および塩基性の空気中分子状汚染物(AMC)の測定は、半導体フォトリソグラフィーおよび隣接用途(adjacent applications)におけるプロセス保護、および歩留まりの制御に不可欠である。リアルタイムモニタリングソリューションは、即時の連続測定を行うため、非常に望ましい。しかし、最先端のモニタでさえ、低pptの範囲の検出限界を達成することができず、酸性AMCの検出には多くの制限がある。
【0003】
試料トラップで不連続サンプリングを行うと、一兆分の幾部かのレベルの測定を達成することができるが、現在許容されている方法では、可溶性の酸性および塩基性AMCを捕捉するために、脱イオン水を充填した試料トラップが使用される(一般にインピンジャー、バブラー、およびビーカーとも称され、本明細書ではこれらは全てインピンジャーと称される)。これらの方法には幾つかの固有の欠点があるため、一貫性のないデータが得られ、検出限界が高くなる。幾つかの独自開発(proprietary)の固体ソリューションが報告されてきたが、それらは煩雑な準備を必要とし、バックグラウンドシグナルが高く、24〜72時間のサンプリング時間を要するか、またはそれらは企業秘密として保護されており、業界標準として使用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、これらの欠点を克服し、検出限界が低く(例えば、千兆分の幾部か)、サンプリング時間が比較的短くて済む(例えば、4〜8時間)、微量レベルの酸性および塩基性の空気中分子状汚染物質、特に、半導体産業で一般的に発生する酸性および塩基性の空気中分子状汚染物質を測定するための試料トラップおよび分析方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
千兆分の幾部か(ppq)の、酸性および塩基性AMC、例えば、クリーンルームまたは他の半導体製造設備からのガス流中のAMCの測定を比較的短い(例えば、4〜6時間の)サンプリング時間内で行うことを可能にする液体非含有試料トラップを本明細書に記載する。本明細書に記載の液体非含有試料トラップを、微量レベルの酸性および塩基性AMCを測定する分析方法に使用することができる。
【0006】
本発明の一形態は、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップを提供する。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質(rigid)焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、ガス中の酸性の空気中分子状汚染物質をトラップするための塩基種約0.05ミリモル当量(molar milliequivalents)〜約10ミリモル当量、またはガス中の塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップするための酸種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量で官能化されている。
【0007】
本発明の別の形態は、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップである。硬質焼結親水性材料は、ガス中の酸性の空気中分子状汚染物質と反応して溶媒に可溶な(例えば、水溶性)反応生成物を生成する塩基種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量、またはガス中の塩基性の空気中分子状汚染物質と反応して溶媒に可溶な(例えば、水溶性)反応生成物を生成する酸種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量で官能化されている。
【0008】
本発明の別の形態は、ガス中の微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップである。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、平均孔径約5μm〜約50μmの親水性超高分子量ポリエチレンであり、かつリン酸で官能化されている。
【0009】
本発明のさらに別の形態は、ガス中の微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップである。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、平均孔径約5μm〜約50μmの焼結ステンレス鋼であり、かつアルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩(例えば、炭酸ナトリウム)で官能化されている。
【0010】
本発明の別の形態は、ガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップする方法である。本方法は、検出可能な量の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を、本明細書に記載の液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる工程を含む。
【0011】
本発明の別の形態は、ガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を検出または測定する方法である。本方法は、微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップを提供する工程と;検出可能な量の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を、液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる工程と;トラップされた酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料から脱離させ、それにより試料を提供する工程と;試料の、微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を分析し、それによりガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を測定する工程とを含む。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間でハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、酸性の空気中分子状汚染物質をトラップするための塩基種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量、または塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップするための酸種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量で官能化されている。
【0012】
本発明の別の形態は、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップのハウジングである。ハウジングは、長軸を有し、内面と、外面と、入口と、上流面とを備える中空で実質的に円筒状の上流部品であって、内面が、入口から上流面の方に外側に向かってテーパを形成し、および上流面で終端するテーパ状の部分を有する、上流部品と;出口と下流面とを備える中空で実質的に円筒状の下流部品と;上流部品と下流部品とが互いに対して回転しないように、上流部品を下流部品に固定するロックナットとを備える。上流面および下流面は一緒に、環境から封止され、かつ入口と出口との間の流路内に位置する空間を形成する。
【0013】
本明細書に記載の液体非含有トラップと、本明細書に記載の液体非含有トラップを用いてガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を測定する方法は、ppqレベルの酸性および塩基性AMCの測定を、1回の作業シフト、典型的には4〜6時間のサンプリング時間内で行うことを可能にする。トラップは、容易に製造し、小規模な実験室での作業で準備することができ、現場(field)での作業者の操作による汚染を含む外部汚染から封止され、数ヶ月の貯蔵寿命を有し、高い捕捉効率を示すと共に、副化学反応および分析アーチファクトを最小限に抑える。試験ガスとしてアンモニア(NH)を用いた液体非含有塩基トラップの能力の結果は、捕捉効率100%で水分なし(清浄な乾燥空気(CDA)またはNのサンプリングをシミュレートする)では十億分の200部−時間(ppb−h)より大きく、相対湿度(RH)40%では350ppb−hであった。最新の供給ガスのアンモニア濃度が1ppb未満、クリーンルームのアンモニア濃度が10ppbV未満の場合、アンモニアに関して達成される捕捉効率は、ppqレベルの分析に必要なものをはるかに超える、毎分3.5リットル(lpm)でサンプリングを20〜35時間行う場合のアンモニアの定量捕捉となる。これにより、1回の作業シフトで、かつ終夜(典型的には、12〜72時間)のサンプリングを必要とせずに、AMCをサンプリングすることが可能となり、AMC源となり得るものをより迅速かつより正確に特定することができる。
【0014】
性能試験から、本明細書に記載の液体非含有トラップでは、NH、SOおよびHFに関して、実験室試験で標準的なインピンジャーと比較して、高精度で高確度の結果が得られ、3種類の化合物全てについて相対標準偏差が8%を超えず、捕捉効率が95%より大きいことが分かる。酢酸は、僅かに低い性能を示した唯一の化合物であるが、依然として、試験した他の化合物に匹敵する精度および確度を維持した。外部顧客および内部顧客に、本明細書に記載の液体非含有トラップを標準的な湿潤インピンジャーと並行して、現場での検証を行うために設置した結果、トラップ間の差が10%となり、液体非含有トラップは現場で湿潤インピンジャーの代わりに使用するのに好適であるという証拠が得られた。
【0015】
上記は、添付の図面に示す本発明の例示的実施形態に関する以下のより詳細な説明から明らかとなり、図面中、同様の参照記号は、様々な図全体を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の実施形態の説明に重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明の一形態における液体非含有トラップハウジングの図である。
図1B】本発明の一形態における液体非含有トラップ組立体の展開図である。
図1C】本発明の一形態における液体非含有トラップ組立体の展開図である。
図1D図1A図1Cのロックナットの別の図である。
図1E】少なくとも図1Aおよび図1Bの上流部品の別の図である。
図1F】少なくとも図1Aおよび図1Bの下流部品の別の図である。
図1G】本発明の一形態における液体非含有トラップの組立透視図である。
図2】トラップ能力に対する捕捉効率のグラフであり、RH0%および40%での液体非含有塩基トラップのアンモニアに関する能力を示す。
図3】能力に対する捕捉効率のグラフであり、RH0%、22%および35%での液体非含有酸トラップのSOに関する能力を示す。
図4】試験番号に対するアンモニア捕捉効率のグラフであり、標準的なインピンジャー、pH調整インピンジャー、および本発明の液体非含有トラップのアンモニア捕捉効率を示す。
図5A】既知のアンモニアガス源に関する測定番号に対するアンモニア濃度のグラフであり、インピンジャーで測定したアンモニアの濃度は既知のアンモニア濃度より一貫して低く、液体非含有トラップで測定したアンモニア濃度よりも低かったことを示す。
図5B】液体非含有トラップおよび標準的なインピンジャーに関する捕捉されたアンモニアの濃度の相関プロットであり、2つのトラップのデータセットには統計学的有意差がないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の例示的実施形態を説明する。
【0018】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、特記しない限り、複数の指示対象も含むのものとする。従って、例えば、「1種の空気中分子状汚染物質」について言及する場合、これは複数種の空気中分子状汚染物質も含み得る。さらに、複数種は、同じ空気中分子状汚染物質2種以上または異なる空気中分子状汚染物質複数種を含み得る。
【0019】
他の定義がない限り、本明細書で使用する科学技術用語は全て、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似のまたは均等な方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができる。本明細書に記載のものはいずれも、本発明が先行発明によるこのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。「任意選択的な」または「任意選択的に」は、その後に記載される事象または状況が起こることも、または起こらないこともあり、この説明が、その事象が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。本明細書の数値は全て、明示されるか否かにかかわらず、「約」という用語で修飾することができる。「約」という用語は一般に、記載された値と均等である(即ち、同じ機能または結果を有する)と当業者が見なし得る数値の範囲を指す。「約」という用語が記載された値の±10%を指す実施形態もあれば、「約」という用語が記載された値の±2%を指す実施形態もある。組成物および方法は、様々な成分または工程を「含む(comprising)」こと(「含むが、限定されるものではない」ことを意味するものと解釈される)に関して記載されているが、組成物および方法は、様々な成分および工程「から本質的になる」または「からなる」こともでき、このような用語は、本質的に閉じたまたは閉じた要素群を定義するものと解釈されるべきである。
【0020】
本発明を1つ以上の実施に関して図示し、説明しているが、本明細書を読解することにより当業者は均等な代替形態および変更形態を想到するであろう。さらに、本発明の特定の特徴または態様を幾つかの実施のうちの1つのみに関して開示した場合もあるが、このような特徴または態様を、必要に応じて、かつ所定のまたは特定の用途に関して有利になるように、他の実施の他の1つ以上の特徴または態様と組み合わせることができる。さらに、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、またはこれらの変形が詳細な説明または特許請求の範囲で使用される場合、このような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様に、包括的であるものとする。また、「例示的」という用語は単に、最良のものではなく一例を意味するものとする。また、本明細書に記載の特徴、層、および/または要素は、簡潔にし、理解を容易にするために、互いに対して特定の寸法および/または向きで図示されており、実際の寸法および/または向きは本明細書に図示するものとかなり異なり得ることも理解されたい。
【0021】
液体非含有トラップ
本発明の一形態は、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップを提供する。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、ガス中の酸性の空気中分子状汚染物質をトラップするための塩基種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量、またはガス中の塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップするための酸種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量で官能化されている。
【0022】
本発明の別の形態は、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップである。硬質焼結親水性材料は、ガス中の酸性の空気中分子状汚染物質と反応して溶媒に可溶な(例えば、水溶性)反応生成物を生成する塩基種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量、またはガス中の塩基性の空気中分子状汚染物質と反応して溶媒に可溶な(例えば、水溶性)反応生成物を生成する酸種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量で官能化されている。例示的溶媒については後述する。本発明のより詳細な形態では、反応生成物はガスに不溶である(溶媒に可溶で、ガスに不溶の反応生成物)。
【0023】
ガスは、クリーンルーム、電気化学蒸着、化学的機械的平坦化(CMP)、ウエハハンドリングもしくはドライエッチングからのガス、または、限定されるものではないが、アルゴン、窒素、清浄な乾燥空気(CDA)もしくはEXTREME CLEAN DRY AIR(XCDA(登録商標)、Entegris,Inc.から入手可能)などの任意の不活性供給ガスであってもよい。
【0024】
本明細書で使用する「液体非含有トラップ」は、液体ではなく、固体材料(例えば、硬質焼結親水性材料)によりAMCをトラップするトラップを指す。液体非含有トラップは、標準的なインピンジャー、例えば、液体、典型的には水によりAMCをトラップするインピンジャーと区別可能である。
【0025】
本明細書に開示する液体非含有トラップを使用して、単一種の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質または複数種(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上等)の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップできることを理解されたい。さらに、複数種は、同じ空気中分子状汚染物質2種以上または異なる空気中分子状汚染物質複数種(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上等)を含むことができる。
【0026】
本明細書で使用する「微量レベル」は、百万分の1部未満の酸性または塩基性AMCの濃度を指す。典型的には、微量レベルは、千兆分の幾部か(ppq)、一兆分の幾部か(ppt)および十億分の幾部か(ppb)の範囲の濃度を指す。
【0027】
本明細書で使用する「空気中分子状汚染物質」は、製品またはプロセス、特に、半導体産業および隣接産業の製品またはプロセスに有害な影響を及ぼし得る、化学汚染物質、典型的には蒸気の形態の化学汚染物質を指す。例示的な空気中分子状汚染物質としては、第I族および第II族金属の塩、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl)、SO、SO(式中、xは1または2である)、NO(式中、xは1または2である)、シロキサン、有機リン化合物、アミン(例えば、水溶性の第一級、第二級、および第三級アミン、アンモニア)、水分、酸素、炭化水素(典型的には、炭素数30未満)、水溶性有機酸、無機オキシ酸(例えば、第一pKaが4.76未満のオキシ酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸)、揮発性酸および揮発性塩基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書で使用する場合、「酸性の空気中分子状汚染物質」は、塩基と酸−塩基反応する空気中分子状汚染物質を指す。例えば、フッ化水素は炭酸水素ナトリウムと酸−塩基反応で化学反応して、フッ化ナトリウム、二酸化炭素ガスおよび水を生成する(例証、式(11)を参照されたい)。例示的な酸性の空気中分子状汚染物質としては、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl)、塩素、二酸化窒素、一酸化窒素、二酸化硫黄、水溶性有機酸(例えば、酢酸)および無機オキシ酸(例えば、第一pKaが4.76未満のオキシ酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸)が挙げられる。
【0029】
本明細書に記載の液体非含有トラップの幾つかの形態では、酸性の空気中分子状汚染物質は、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl)、水溶性有機酸(例えば、酢酸)または無機オキシ酸(例えば、第一pKaが4.76未満のオキシ酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸)である。本明細書に記載の液体非含有トラップの幾つかの形態では、酸性AMCは二酸化硫黄、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl)もしくは水溶性有機酸(例えば、酢酸)、またはこれらの組み合わせである。
【0030】
本明細書で使用する場合、「塩基性の空気中分子状汚染物質」は、酸と酸−塩基反応する空気中分子状汚染物質を指す。例えば、アンモニアは、リン酸と化学反応して、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸水素二アンモニウムを生成する(例証、式(4)を参照されたい)。例示的な塩基性の空気中分子状汚染物質としては、アミン(例えば、水溶性の第一級、第二級、および第三級アミン、アンモニア)が挙げられる。
【0031】
本明細書に記載の液体非含有トラップの幾つかの形態では、塩基性の空気中分子状汚染物質は、アミン(例えば、第一級、第二級、または第三級水溶性アミン、アンモニア、好ましくはアンモニア)である。
【0032】
硬質焼結親水性材料に関して本明細書で使用する「硬質(rigid)」は、真空下でもしくは約10atm以下の圧力で、または毎分約20リットル(lpm)以下のガス流の流量で、その構造的完全性を維持する(例えば、破裂せずもしくは著しく変形せず、または粒状からなり、ハウジングと一体型シールを形成し、維持することができる)材料を指す。剛性(rigidity)は材料の厚さによって変わることが多いことが分かるであろう。従って、硬質材料は、真空下でもしくは約10atm以下の圧力で、または約20lpm以下のガス流の流量で、その構造的完全性を維持するのに十分厚くなければならない。
【0033】
本発明の複数の形態では、硬質焼結親水性材料の厚さは、約0.025cm〜約2.5cm、約0.1cm〜約1.3cm、約0.1cm〜約0.65cm、約0.25cm〜約0.65インチ、約0.3cmまたは約0.15cmである。
【0034】
硬質焼結親水性材料に関して本明細書で使用する「焼結」は、多孔質の固体材料塊を指す。硬質焼結親水性材料は、フリットまたはディスクの形態であってもよい。液体非含有トラップは、多層(例えば、1層、2層、3層)の硬質焼結親水性材料を含むことができる。これらの層は同じであっても(例えば、それぞれ、炭酸ナトリウムで官能化された焼結ステンレス鋼であっても)、または異なってもよい(例えば、炭酸ナトリウムで官能化された焼結ステンレス鋼と炭酸水素ナトリウムで官能化された焼結ステンレス鋼、炭酸ナトリウムで官能化された焼結ステンレス鋼とリン酸で官能化された焼結親水性ポリエチレンであってもよい)。
【0035】
本発明の複数の形態では、硬質焼結親水性材料の平均孔径は、約1μm〜約100μm、約2μm〜約50μm、約5μm〜約50μm、約60μm〜約90μmまたは約20μmであるが、他の比較的小さいまたは比較的大きい孔径を使用することもできる。平均孔径の測定方法は当該技術分野で周知である。例えば、ASTM E128−99(2011)を参照されたい。
【0036】
硬質焼結親水性材料に関して本明細書で使用する「親水性」は、水で濡らすことができる材料を指す。本発明の好ましい態様では、親水性材料(例えば、表面改質された超高分子量ポリエチレンなどの親水性ポリマー材料、または316Lステンレス鋼などのステンレス鋼)は、水との接触角が約0(例えば、0〜10°、0〜5°)となり得る。水で濡らすことができる材料は、水の表面張力と類似の表面張力を有し得る。水の表面張力は、20℃で71.97dyne/cmである。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、水は毛管作用により焼結ステンレス鋼を濡らすものと考えられる。
【0037】
本発明の複数の形態では、硬質焼結親水性材料は、焼結金属、例えば、焼結ステンレス鋼(例えば、タイプ316Lステンレス鋼)である。
【0038】
本発明の幾つかの形態では、硬質焼結親水性材料は、ポリマー材料、例えば、焼結親水性ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン)、焼結親水性ポリテトラフルオロエチレン、焼結親水性ポリエーテルスホンまたは焼結親水性ナイロンである。
【0039】
ポリマー材料の水濡れ性を向上させる方法、例えば、材料と水との接触角を小さくする方法、または単味材料の表面張力を増大させる方法、好ましくは単味材料のバルク特性を変えることのない、または実質的に変えることのない方法は、当該技術分野で周知である。例えば、親水性コーティングを単味ポリマー材料、例えば、ポリエチレンの表面に塗布することができる、またはその表面をプラズマ、紫外線もしくはレーザー光線で、または酸化溶液で処理して、単味ポリマーの表面エネルギーを増大させ、材料を親水性にすることができる。例えば、Inagaki,N.,et al.“Hydrophilic surface modification of polyethylene by plasma exposure,”Polymer Preprints 31.2(1990):380−381;Korsmeyer,Richard W.,et al.“Mechanisms of solute release from porous hydrophilic polymers,”International Journal of Pharmaceutics 15.1(1983):25−35;Hatakeyama,Hyoe and Tatsuko Hatakeyama,”Interaction between water and hydrophilic polymers,”Thermochimica acta 308.1(1998):3−22を参照されたい。親水性ポリマー材料はまた、例えば、GENPORE(登録商標)、Reading、PAから市販されている。
【0040】
本明細書に開示する硬質焼結親水性材料は、好ましくは化学的に不活性で、化学的に清浄である。
【0041】
本明細書で使用する場合、「化学的に清浄」は、脱離させ(例えば、抽出し)、例えば、イオンクロマトグラフィーで分析したとき、発生させるシグナルの強度が、6時間のサンプリング時間で達成される各空気中分子状汚染物質の検出限界の10%未満である材料、例えば、硬質焼結親水性材料またはハウジングを指す。例えば、6時間のサンプリング時間で達成されるアンモニアの検出限界が10pptである場合、化学的に清浄な材料は、脱離させ、分析したとき、1ppt超のアンモニアに対応するアンモニアシグナルを発生させない。
【0042】
本明細書に記載の液体非含有トラップ中の硬質焼結親水性材料は、ガス中の酸性の空気中分子状汚染物質をトラップするための塩基種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量、約0.05ミリモル当量〜約5ミリモル当量、約0.1ミリモル当量〜約10ミリモル当量、約0.1ミリモル当量〜約5ミリモル当量、約1ミリモル当量〜約10ミリモル当量、もしくは約5ミリ当量、またはガス中の塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップするための酸種約0.05ミリモル当量〜約10ミリモル当量、約0.05ミリモル当量〜約5ミリモル当量、約0.1ミリモル当量〜約10ミリモル当量、約0.1ミリモル当量〜約5ミリモル当量、約1ミリモル当量〜約10ミリモル当量、または約5ミリ当量で官能化されている。酸種または塩基種のミリモル当量数は、硬質焼結親水性材料上の酸種または塩基種の特性と、塩基性または酸性の空気中分子状汚染物質の特性とを考慮に入れて、液体非含有トラップの能力から算出することができる。
【0043】
塩基種は、特に限定されないが、ガス中の対象となる1種以上の酸性の空気中分子状汚染物質と酸−塩基反応して、反応生成物を生成するものでなければならない。典型的には、反応生成物はガスに不溶であるため、ガスから析出し、硬質焼結親水性材料上に固体塩を形成する。さらに、溶媒を用いて硬質の多孔質親水性材料を抽出することが意図された本発明の形態では、塩基種と酸性の空気中分子状汚染物質との反応生成物は溶媒に可溶でなければならない。
【0044】
酸種は、特に限定されないが、ガス中の対象となる1種以上の塩基性の空気中分子状汚染物質と酸−塩基反応して、反応生成物を生成するものでなければならない。典型的には、反応生成物はガスに不溶であり、これにより、それはガスから析出し、硬質焼結親水性材料上に固体塩を形成する。溶媒を用いて硬質の多孔質親水性材料を抽出することが意図された本発明の形態では、酸種と塩基性の空気中分子状汚染物質との反応生成物は溶媒に可溶でなければならない。例示的溶媒については後述する。
【0045】
本明細書で使用する「官能化された」は、例えば、表面吸着により達成され得るような、硬質焼結親水性材料への塩基種または酸種の非共有結合を指す。例えば、硬質焼結親水性材料を3価の弱酸溶液で処理した後、乾燥することができる。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、このプロセスにより酸が多孔質構造内の硬質焼結親水性材料表面で結晶化すると考えられる。硬質焼結親水性材料はまた、塩基の溶液で処理した後、乾燥することもできる。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、このプロセスにより塩基が多孔質構造内の硬質焼結親水性材料表面で結晶化すると考えられる。
【0046】
本発明の幾つかの形態では、硬質焼結親水性材料は塩基種で官能化されている。塩基種は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩もしくは水酸化物塩、またはこれらの組み合わせ(例えば、NaHCO、NaCO、KOH等)から選択することができる。本発明のより具体的な形態では、硬質焼結親水性材料は、アルカリ土類金属の炭酸水素塩(例えば、NaHCO)または炭酸塩(例えば、NaCO)で官能化されている。
【0047】
本発明の他の形態では、硬質焼結親水性材料は酸種で官能化されている。酸種は、多塩基酸、例えば、リン酸またはクエン酸、好ましくはリン酸であってもよい。
【0048】
本発明の幾つかの形態では、ハウジングは、ポリマー材料、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルエチレンスチレン(AES)、アクリル酸エステルスチレンアクリロニトリル(ASA)、酢酸セルロース(CA)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、液晶ポリマー(LCP)、中密度ポリスチレン(MDPE)、メタクリル酸メチル(アクリル樹脂)(MMA)、パーフルオロアルコキシ、ポリアリールスルホン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアルコキシスルホン、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(アセタール)(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性オレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、超高分子量ポリエチレン、またはこれらのブレンドである。ハウジングに好ましい材料としてはPEEKおよび超高分子量ポリエチレンが挙げられる。ハウジングに特に好ましい材料はPEEKである。
【0049】
本発明の幾つかの形態では、ハウジングは化学的に清浄であり、その用語については前述している。
【0050】
本発明の幾つかの形態では、ハウジングはさらに、入口を含む上流部品と、出口を含む下流部品と、上流部品を下流部品に固定するロックナットとを備える。本発明のこれらの形態によるハウジングを図1Aに示す。図1Aのハウジング1は、ロックナット2と、上流部品3と、下流部品4とを備える3部構成のハウジングである。ロックナット2は上流部品3を下流部品4に固定する。ばねリング12は、ロックナット2がそれを通り越して移動することを防止する。ハウジング1は、液体非含有トラップの組み立てまたは分解中に、上流部品3と下流部品4とが互いに対して回転しないように設計されている。図1Aはまた、ハウジング1の上流部品および下流部品ならびにロックナットの長軸Aも示す。図示されていないが、ロックナット2の表面は、液体非含有トラップの組み立ておよび分解が容易になるように、ローレット加工されていても、または他の方法で模様が付けられていてもよい。ロックナット2は図1Dにも示す。
【0051】
上流部品3および下流部品4は、それぞれ、例えば、マニホールドにハウジングを取り付けるために使用することができる管端部5および6をそれぞれ有する。管端部5および6の代わりに、当該技術分野で公知の他の任意の連結、例えば、フランジを使用できることが分かるであろう。国際公開第2005/057177号パンフレット、特に図5Aおよびその説明は、例えば、クリーンルームまたは他の半導体製造設備からのガスをサンプリングするために、本明細書に記載の液体非含有トラップを取り付けることができるマニホールドを説明している。
【0052】
図1Bは、本発明の一態様の液体非含有トラップ組立体の展開図である。図1Bは、本発明の一態様では、上流部品3がテーパ状の部分11を有し得ることを示している。図1Bに示す本発明の態様では、テーパ状の部分11は円錐台の形状を形成し、硬質焼結親水性材料7の寸法(例えば、直径)と一致するまたは実質的に一致するような寸法になっている上流面14の方に外側に向かってテーパを形成している。テーパ状の部分は、ガス流の速度を低下させ、ガスが硬質焼結親水性材料と接触している時間を長くし、それにより、液体非含有トラップの除去効率を向上させる役割を果たす。上流部品の長軸A(図1Aに示す)から測定したテーパ状の部分の角度は、約5°〜約45°、約10°〜約30°または約15°である。上流部品3はフランジ17の形態の係止部も有する。上流部品3上の溝9は、ばねリング12(図示せず)が配置される溝となる。本発明の好ましい形態では、上流部品は単体要素として製造される。上流部品3は図1Eにも示している。
【0053】
下流部品4を図1Fに示す。図1Fでは、下流部品4は、同様に硬質焼結親水性材料7の寸法と一致するまたは実質的に一致する寸法になっている下流座13を有する。下流部品4のねじ15はロックナット2のねじ16と噛合し、上流部品3を下流部品4に固定する。必要ではないが、六角ナット10は、液体非含有トラップの使用後にロックナット2を緩める際に特に有用となり得る把持部を下流部品4に提供する。六角ナット10はまた、液体非含有トラップを封止する際に有用な把持部も提供する。六角ナット10は、ロックナット2の封止または封止解除を容易にする把持部を提供する任意の形状であってよい。本発明の好ましい形態では、下流部品4は単体要素として製造される。
【0054】
硬質焼結親水性材料7は、図1Bおよび図1D〜1Gに示す本発明の形態では、ロックナット2を締め付けることにより生じる圧力により、上流部品3の上流面14と下流部品4の下流座13との間で封止される。上流面14と下流座13は一緒に、硬質焼結親水性材料7を外部曝露または汚染しないように封止すると共に、管端部または入口5と管端部または出口6との間の流路を維持する。図1Gを参照されたい。図1Gから分かるように、封止され、組み立てられた位置にあっても、フランジ17は上流部品3の部分がロックナット2のねじ16に入ることを阻止し、上流部品3のフランジ17と下流部品4との間に間隙を形成する。この間隙は、ロックナット2を締め付けて、硬質焼結親水性材料をハウジング内に封止することができる十分な距離を確保する役割を果たす。また、図1Cに示すO−リング8を用いて上流部品3と下流部品4との間に硬質焼結親水性材料7を封止することもできる。ハウジング1は、硬質焼結親水性材料を捩じることなくまたは引裂することなく、硬質焼結親水性材料を固定する。
【0055】
本発明の特定の形態は、ガス中の微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップである。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、平均孔径約5μm〜約50μmの親水性超高分子量ポリエチレンであり、かつリン酸で官能化されている。本発明のこの形態の特定の態様では、塩基性の空気中分子状汚染物質はアミン(例えば、水溶性の第一級、第二級、または第三級アミン、アンモニア、好ましくはアンモニア)である。本発明のこの形態の別の特定の態様では、硬質焼結親水性材料はリン酸約1〜約10ミリモル当量、好ましくは約5ミリモル当量で官能化されている。
【0056】
本発明の別の特定の形態は、ガス中の微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップである。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間の流路内に位置し、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、平均孔径約5μm〜約50μmの焼結ステンレス鋼であり、かつアルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム)または炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム)で官能化されている。本発明のこの形態の特定の態様では、硬質焼結親水性材料は、アルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩約1〜約10ミリモル当量、好ましくは約5ミリモル当量で官能化されている。本発明のこの形態の別の特定の態様では、酸性の空気中分子状汚染物質は、オキシ酸(例えば、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸)、二酸化硫黄、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl)もしくは水溶性有機酸(例えば、酢酸)、またはこれらの組み合わせである。本発明のこの形態のさらに別の特定の態様では、酸性の空気中分子状汚染物質は、二酸化硫黄、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl)もしくは水溶性有機酸(例えば、酢酸)、またはこれらの組み合わせである。
【0057】
本発明の一形態は、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性AMC用の液体非含有トラップを備えるマニホールドである。本発明の特定の形態では、マニホールドは、微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップと、微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップとを備える。国際公開第2005/057177号パンフレット、特に図5Aおよびその説明は、本明細書に記載の1つ以上の液体非含有トラップを取り付けることができるマニホールドについて説明している。有機AMC用の試料トラップ(例えば、炭素トラップ)も任意選択的にマニホールドに取り付けることができる。微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップと微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップは直列に接続されてもまたは並列に接続されてもよく、好ましくは並列に接続されてもよい。
【0058】
本発明の別の形態は、本明細書に記載の液体非含有トラップと;ポンプもしくはガス加湿器、またはこれら(ポンプとガス加湿器)の組み合わせとを備えるシステムである。
【0059】
ハウジング
本発明の別の形態は、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップのハウジングである。ハウジングは、長軸を有し、内面と、外面と、入口と、上流面とを備える中空で実質的に円筒状の上流部品であって、内面が入口から上流面の方に外側に向かってテーパを形成し、および上流面で終端するテーパ状の部分を有する、上流部品と;出口と下流面とを備える中空で実質的に円筒状の下流部品と;上流部品と下流部品とが互いに対して回転しないように、上流部品を下流部品に固定するロックナットとを備える。上流面および下流面は一緒に、環境から封止され、かつ入口と出口との間の流路内に位置する空間を形成する。
【0060】
上流部品、下流部品およびロックナット用の例示的材料は、ハウジング材料に関して前述した通りである。本発明の好ましい形態では、上流部品と、下流部品と、ロックナットとはPEEKである。
【0061】
幾つかの形態では、上流部品または下流部品、好ましくは下流部品はさらに、ロックナットの封止および封止解除を容易にする把持部を備える。
【0062】
幾つかの形態では、上流部品または下流部品、好ましくは下流部品はさらに、その外面にねじを備え、ロックナットは上流部品または下流部品、好ましくは下流部品のねじと噛合するねじをその内面に備える。
【0063】
幾つかの形態では、ハウジング(例えば、上流部品、下流部品、好ましくは上流部品)はさらに、ロックナットが上流部品または下流部品、好ましくは上流部品から係脱することを防止するばねリングを備える。
【0064】
幾つかの形態では、上流部品はさらに、ロックナットが上流部品から係脱することを防止し、およびハウジングの組み立て時に上流部品をロックナット内に固定するための係止部を備える(例えば、図1Gのフランジ17を参照されたい)。幾つかの形態では、上流部品上に配置されたばねリングおよび係止部は一緒に、ロックナットが上流部品から係脱することを防止する。
【0065】
幾つかの形態では、テーパ状の部分は、上流部品の長軸から約5°〜約45°、約10°〜約30°または約15°の角度で外側に向かってテーパを形成している。
【0066】
上流面と下流面とによって形成される空間に硬質焼結親水性材料を配置することにより、本明細書に記載のハウジングのいずれかを本発明の液体非含有トラップに組み込むことができることが分かるであろう。従って、幾つかの形態は、本明細書に記載のハウジングと;入口と出口との間の流路の上流部品および下流部品により形成される空間内に配置され、かつハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える、ガス中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップを提供する。硬質焼結親水性材料の態様および代替の態様は、液体非含有トラップに関して前述する通りである。
【0067】
方法
本発明の別の形態は、ガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップする方法である。本方法は、検出可能な量の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を本明細書に記載の液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる工程を含む。
【0068】
本発明の別の形態は、ガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を検出または測定する方法である。本方法は、微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップを提供する工程と;検出可能な量の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる工程と;トラップされた酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料から脱離させ、それにより試料を提供する工程と;試料の、微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を分析する工程とを含む。液体非含有トラップは、入口と出口とを備えるハウジングと;入口と出口との間の流路と;入口と出口との間でハウジング内に封止された硬質焼結親水性材料とを備える。硬質焼結親水性材料は、酸性の空気中分子状汚染物質をトラップするための塩基種約0.05〜約10ミリモル当量、または塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップするための酸種約0.05〜約5ミリモル当量で官能化されている。液体非含有トラップの態様および代替の態様は、前述の通りである。
【0069】
本明細書に開示する方法を使用して、微量レベルの単一種の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質、または複数種(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上等)の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップする、検出または測定することができることを理解されたい。さらに、複数種は、同じ空気中分子状汚染物質2種以上または異なる空気中分子状汚染物質複数種(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上等)を含み得る。
【0070】
本明細書で使用する「検出可能な量」は、その方法の検出限界(MDL)より大きい、トラップされた空気中分子状汚染物質の量または濃度を指す。MDLは、99%の統計学的信頼度で0と異なると見なすことができるシグナルを発生させるのに必要な空気中分子状汚染物質の最小限の量または濃度である。MDLは、Hubaux−Vos法を用いて求めることができる。典型的には、MDLは、低pptレベルのAMCを報告するためには、高ppq範囲になければならない。
【0071】
本明細書に記載の方法の幾つかの形態では、時間は約0.5時間〜約8時間、約2時間〜約8時間、約4時間〜約6時間または約6時間である。
【0072】
本明細書に記載の方法の幾つかの形態では、液体非含有トラップの入口に流入し、流路を通過し、出口から流出するガス流の流量は0より大きく、かつ約20lpm未満、約10lpm未満、約5lpm未満または約4lpm未満である。幾つかの形態では、流量は約4lpmである。幾つかの形態では、流量は約0.5lpm〜約5lpmまたは約0.5〜約4lpmである。
【0073】
本発明の好ましい形態では、脱離する工程は、トラップされた酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料から溶媒を用いて抽出する工程を含む。本発明のこれらの形態の溶媒は特に限定されず、分析法(例えば、イオンクロマトグラフィー)を妨害しない任意の溶媒が含まれる。本明細書で使用する「溶媒」は、抽出に単一種の溶媒または溶媒の混合物のいずれかの使用を包含するものとする。例示的溶媒としては、有機溶媒(例えば、エタノール、アセトンおよびアセトニトリルなどの水混和性有機溶媒)、水、およびこれらの混合物(例えば、水混和性有機溶媒と水、例えば、エタノールの40%水溶液)が挙げられる。イオンクロマトグラフィーに適合する有機溶媒としては、表面張力が30dyne/cmのエタノール、アセトンおよびアセトニトリルなどの溶媒が挙げられる。
【0074】
本発明の幾つかの形態では、溶媒は水、または水混和性有機溶媒と水との混合物である。本発明の好ましい形態では、溶媒は水である。抽出に使用される水は、通常、試料の汚染を防止するために脱イオン水でなければならない。
【0075】
ガス流は、クリーンルーム、電気化学蒸着、化学的機械的平坦化(CMP)、ウエハハンドリングもしくはドライエッチングからのガス流、または、限定されるものではないが、アルゴン、窒素、清浄な乾燥空気(CDA)もしくはEXTREME CLEAN DRY AIR(XCDA(登録商標)、Entegris,Inc.から入手可能)などの任意の不活性供給ガスの流れであってもよい。XCDA(登録商標)は、HOを<1ppb、揮発性塩基を<10ppt、他の全ての汚染物質を<1ppt含有する。
【0076】
本明細書に記載の方法の幾つかの形態では、トラップされた酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を、溶媒を用いて抽出する工程は、硬質焼結親水性材料と溶媒との混合物を超音波処理する工程を含むことができる。
【0077】
試料の分析は、検出(例えば、特定の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質の有無を判定すること)および/またはガス流中の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質のレベル(例えば、濃度、量)の算出を含むことができる。典型的には、試料を分析する工程は、ガス流中の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質のレベルを算出し、それによりガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を測定する工程を含む。算出は、例えば、試料中の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質の濃度を定量し、流量およびサンプリング時間を用いて捕集した全空気またはガス体積を求めることにより試料濃度を用いて空気中分子状汚染物質の気相濃度を算出することにより達成することができる。酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質の濃度の定量は、例えば、標準物質もしくは検量線と比較することにより、または当該技術分野で公知の他の技術を用いることにより達成することができる。
【0078】
気相クロマトグラフィー質量分析(GCMS)(例えば、気相中に脱離される空気中分子状汚染物質に用いられる)、化学発光法(例えば、アンモニアでは、アンモニアをNOに触媒変換した後、NOを化学発光検出することにより行う)、蛍光分析(例えば、試料に好適な色素を添加することにより行う)、およびイオンクロマトグラフィー(例えば、溶媒などの液体中に脱離される空気中分子状汚染物質に用いられる)を含む、様々な技術を用いて試料を分析することができる。好ましい分析法はイオンクロマトグラフィーである。
【0079】
本明細書に記載の方法の幾つかの形態では、試料を分析する工程はイオンクロマトグラフィーを用いて試料を分析する工程を含む。イオンクロマトグラフィーは周知の技術である。本明細書に記載の試料を分析するのに有用な特定のイオンクロマトグラフィー条件を例証に記載している。
【0080】
本発明の幾つかの形態では、本方法はさらに、例えば、トラップされた酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料から脱離する前に、ハウジングから硬質焼結親水性材料を取り出す工程を含む。
【0081】
本発明の別の形態は、微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップを備えるマニホールドを提供する工程と;検出可能な量の酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる工程と;トラップされた酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料から脱離させ、それにより試料を提供する工程と;試料の、微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を分析する工程とを含む、ガス流中の微量レベルの酸性または塩基性の空気中分子状汚染物質を測定する方法である。液体非含有トラップの態様および代替の態様は本明細書に記載の通りである。本方法の態様および代替の態様は前述の通りである。
【0082】
本発明の特定の形態では、本方法は、微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップと、微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップとを備えるマニホールドを提供する工程と;検出可能な量の酸性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を、微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる工程と、検出可能な量の塩基性の空気中分子状汚染物質を硬質焼結親水性材料でトラップするのに十分な流量でかつ十分な時間にわたり、ガス流を、微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる工程とを含む。微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質をトラップするための硬質焼結親水性材料から、トラップされた酸性の空気中分子状汚染物質を脱離させ、それにより第1の試料を提供し、微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質をトラップするための硬質焼結親水性材料から、トラップされた塩基性の空気中分子状汚染物質を別々に脱離させ、それにより第2の試料を提供する。第1の試料および第2の試料の、微量レベルの酸性および塩基性の空気中分子状汚染物質を別々に分析し、それにより微量レベルの酸性および塩基性の空気中分子状汚染物質を測定する。微量レベルの酸性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップと、微量レベルの塩基性の空気中分子状汚染物質用の液体非含有トラップとは直列に接続されてもまたは並列に接続されてもよく、好ましくは並列に接続されてもよい。
【0083】
本明細書に記載の液体非含有トラップは、典型的には能動サンプリング構成で使用される。本明細書で使用する場合、「能動サンプリング」は、液体非含有トラップに連結され、ガス流を硬質焼結親水性材料に送給するポンプなどのガス移送装置の使用を指す。能動サンプリングでは、液体非含有トラップに連結された外部エネルギー源を使用して、ガス流を硬質焼結親水性材料に送給する。比較のために、受動サンプリングは、ガス自体のエネルギーを使用してガスを硬質焼結親水性材料に送給する、例えば、拡散によって行う。
【0084】
本方法の幾つかの形態では、ポンプを使用してガス流を吸引し、液体非含有トラップの入口に流入させ、流路を通過させ、および出口から流出させる。入口は周囲条件に開放していてもよい。
【0085】
典型的には、硬質焼結親水性材料におけるガス流の圧力は約1atmである。
【0086】
本方法の幾つかの形態では、ガス流は、液体非含有トラップの入口に流入する前に加湿される。
【0087】
本発明の幾つかの形態では、ガス流は、全流、例えば、CDAまたはXCDAの全流である。本発明の代替の形態では、ガス流は、全流、例えば、CDAまたはXCDAの全流の一部(例えば、代表的試料)である。
【0088】
本明細書に記載の方法の幾つかの形態では、塩基性の空気中分子状汚染物質はアミン(例えば、第一級、第二級、または第三級の水溶性アミン、アンモニア、好ましくはアンモニア)である。
【0089】
本明細書に記載の方法の幾つかの形態では、酸性の空気中分子状汚染物質は、二酸化硫黄、ハロゲン化水素(例えば、HF、HCl)もしくは水溶性有機酸(例えば、酢酸)、またはこれらの組み合わせである。
【0090】
例証
序論
レチクルのヘイズ(reticle hazing)(1)、フォトレジストとの反応および腐食(2)を含む、フォトリソグラフィー用途における酸性および塩基性AMCに関するプロセスおよび設備の問題は文書で十分立証されてきた。フォトリソグラフィーにおけるAMC曝露に対する重要なプロセスの感度が高くなるにつれ、推奨される許容濃度は低下し続け、AMCのモニタリングおよび懸念がリソグラフィーベイ以外の領域にも拡大し、電気化学蒸着、化学的機械的平坦化(CMP)、ウエハハンドリングおよびドライエッチングが含まれるようになってきた。International Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)は、22ナノメートル(nm)ノードでは酸と塩基の両方について10pptの最小検出限界を推奨しており、これらの検出限界は、14nmおよび10nm技術(3)の導入でppqレベルに低下すると考えられている。極紫外(EUV)リソグラフィーの導入に関するAMC制御および規格は、現在、依然として遠紫外(DUV)リソグラフィーのものに基づいているが、新規なプロセスまたは設備感度の発見時には、それらの限界をさらに押し下げるように変更することができる。本明細書に記載の濃度は全て、体積単位(v/v)、モル単位(mol/mol)で記載されており、質量に基づいていない。
【0091】
リアルタイムAMCモニタリングソリューションが望ましく、この理由は、それらが即時の連続測定を提供するからである。しかし、イオン移動度分光測定法(IMS)、連続波キャビティリングダウン分光法(continuous wave cavity ring−down spectroscopy)(CW−CRDS)、および光音響分光法(PAS)等の最先端の技術でさえ、ppb〜高pptの範囲でしか信頼性の高い検出限界を達成できなかった。さらに、試料輸送、特に、酸性化合物の試料輸送は、管路損失および塩基との反応の影響を受ける。最後に、リアルタイムモニタは、典型的には、維持、運転および較正に関して、かなりの所有コスト(cost of ownership)がかかる。
【0092】
従来、脱イオン水を充填したデバイス、例えば、インピンジャー(バブラーとしても知られる)またはオープンビーカーが、酸性および塩基性AMCの測定に好ましい試料トラップ法であった。インピンジャーは液体(典型的には脱イオン水)で部分的に充填された円筒状の容器であり、その液体を通過するようにガスを吸引することができる。ガスが液体を通過するとき、可溶性の汚染物質は反応するかまたは液体に溶解して、イオン化種に解離し、次いでそれをイオンクロマトグラフィーで分析することができる。例えば、塩化水素ガス(HCl)は高い解離定数を有し、水中で完全に解離して塩化物アニオンを形成する(式1)。
HCl+HO⇔H+Cl (1)
【0093】
インピンジャーは一般的に有効であるが、種によって捕捉効率は異なり、分析種(analyte)の溶解度、溶解した種の解離定数、蒸発損失、物質移動ゾーン内でのガスの滞留時間、気泡径、および副反応(HNOの生成、溶解したCOへの妨害、UV触媒反応、種の不均化、およびある種から別の種への変換)の可能性を含む幾つかの要因に依存し、それらにより制限される。
【0094】
インピンジャートラップ内でガスが拡散する物質移動ゾーンは、それが液柱を通って移動する場合、各気泡の気体/液体界面にあると見なすことができる。ガスがその界面と接触する時間が長いほど、液体に溶解できるガスが多くなる。気泡が大きいと、水中でのその滞留時間中に気泡の中心のガスが物質移動ゾーンに達することが妨げられることにより拡散が抑制され得るため、気泡サイズおよび粘稠性はトラップの捕捉効率に顕著な影響を及ぼす。他方、小さい気泡が多いと、1個の大きい気泡が効果的に形成されることにより物質移動ゾーンの表面積が小さくなり得るため、非常に小さい気泡の密度が高い場合も移動効率が低下し得る。考え合わせると、これらの因子によりトラップを通る試料ガスの可能な流量が制限され、トラップサイズは実用化に関する考慮事項(practical implementation considerations)により制限される。これにより、所定のサンプリング時間中に捕集され得る汚染物質の絶対量が制限されるため、検出能力が低下する。
【0095】
インピンジャーでは、トラップ設計、体積流量(flow volume)、およびサンプリングされたガスの含水率により、0.1〜0.5ml/hの範囲の蒸発損失も起こる。また、これによりサンプリング時間が制限され、液柱の高さの低減によりガスの滞留時間が短くなる。比較的大きい液量を使用してこれらの蒸発損失を補償することができるが、この結果、試料が希釈され、検出能力が低下し、サンプリング時間が長くなる。
【0096】
インピンジャートラップ溶液の標準的な分析方法は、導電率検出器を備えるイオンクロマトグラフィー(IC)である。イオンクロマトグラフィーを用いた定量測定は、イオン化種の十分な解離に依存する。式1に示すように、塩化水素は強酸であるため、充分に解離し、捕捉アニオン対検出塩化物アニオンの比が1:1となる。しかし、弱酸および弱塩基の検出を試みると、部分的解離が観測され、非直線的反応曲線が得られた。これは、インピンジャーがイオン化種を生成するのに副反応(化学物質の添加)を必要とし得るため、インピンジャーの別の制限となる。例えば、アンモニアガス(NH)は、溶液中で弱塩基であり、解離してアンモニウムイオンを生成するのは一部のみである(式2)。
NH(g)+HO⇔NH(aq)+NH+OH (2)
溶液中で解離せず、アンモニア水のままとなる量はICにより検出されない。解離しないガスの量は変わり、温度とインピンジャー溶液の全pHの両方に依存するため、測定に一貫性がなくなることが多い。
【0097】
二酸化硫黄ガス(SO)は、技術的に、電子受容体(ルイス酸)の役割を果たす酸性ガスであり、pHと温度の両方に大きく依存する互変異性平衡で幾つかの中間種を生成する複雑な機構で水と反応する(4)。過剰の水または溶解した酸素、自己プロトリシス、および二量体化による得られた種の酸化により、かなりのばらつきおよび一貫性のない測定結果の一因となる幾つかの副生成物種(secondary species)がさらに得られることがある。最後に、内部試験(internal study)で、SOも、それを溶解した形態に完全に変換する過酸化物が添加されない場合、1ppbより高い空気濃度では純水に定量的に溶解しないことが判明した。
【0098】
水インピンジャーに関連する残留アーチファクト(persistent artifact)の1つは、単一のインピンジャーでは実際のHNOまたはHNOと区別することができず、偽陽性と報告されることが多い、「事実上のNO」、即ち、大気NO(NOとNOの合計)の溶解による亜硝酸および硝酸のイオンの形態の生成である。以前の試験で、HNOに変換され得る周囲NOは1%以下であることが判明した(5)。数百ppbの周囲濃度では、そのシグナルが非常に重要な可能性がある。
【0099】
化学的制限の他に、インピンジャートラップでは、操作誤り(handling errors)や不注意による汚染が頻発し、および細菌分解の可能性が生じることも多く、それは、特に、多くの実験室で行うように貯蔵/輸送容器とサンプリング容器との間で液体を移す場合に起こる。水インピンジャーは、貯蔵寿命が最長で数週間と短く、特に周囲空気環境に曝された後、細菌汚染が起こり易く、海外発送では、液体の存在に対する懸念により税関で遅延が生じることが多い。
【0100】
インピンジャートラップの欠点に対処するために、酸性気相汚染物とアルカリ性気相汚染物の両方に特化した液体非含有吸着剤トラップが開発されてきた。例証に記載する特定の液体非含有トラップは、炭酸水素塩(NaHCO)溶液またはリン酸(HPO)溶液でコーティングされた多孔質基材を含むため、AMC種がイオン捕捉され、液体インピンジャーの溶解に基づく捕捉機構に関連する幾つかの問題がなくなる。
【0101】
方法論
本明細書に記載の液体非含有トラップは、複数種または1種の酸、例えば、HPOを捕捉し、塩基を捕捉するために、例えば、NaHCOなどの塩基でコーティングされている固体媒体で酸性化合物および塩基性化合物を捕捉し、この後、その媒体を水、例えば、脱イオン水中で抽出してICで分析する。これにより、水インピンジャーと比較して試料の処理に1つの物流(logistical)工程(捕捉したイオンの水への溶解)が増えるが、これには多くの利点がある。
【0102】
各AMC種の一般的な汚染物質で、各試料トラップタイプの評価を行った。アンモニア(NH)は、依然として懸念され得る弱塩基であり、通常、大部分の半導体環境における最も高濃度のまたは唯一の塩基であるため、アンモニア(NH)をアルカリ性試験ガスとして選択した。フッ化水素(HF)、酢酸(CHCOOH)および二酸化硫黄(SO)を酸性試験ガスとして選択した。一般的に見られる中程度の酸性無機種としてフッ化水素(PFAインピンジャー材料および管類を使用することによるアーチファクトとなることが多い)を使用し、最も弱い一般的な有機酸として酢酸を使用し、前述の理由から二酸化硫黄を使用して、あらゆる可能な化学的挙動に関してトラップの性能を評価した。
【0103】
能力
トラップの能力は、化学反応が終了する前に、どの程度の質量のAMC種をトラップすることができ、どの程度の質量の化合物が保持されることなくトラップを破過できるかを表す。能力は、所定の濃度でのサンプリング時間の潜在的限界、または、所定のサンプリング時間でサンプリングできる最大濃度の限界である。それは最終的に時間と濃度の両方によって変わるため、能力はppb−時間(ppb−h)で表され、既知の量を用いることにより時間または最大濃度のいずれかの算出が可能となる。
【0104】
標的AMCに関する能力が幾らか存在したという概念の証明として抽出物の滴定を行うことにより、初期試験を行った。実現性が立証された後、トラップに様々な相対湿度で既知量の負荷(challenge)をかけ、捕捉効率(CE)を経時的に監視し、
【数1】
として算出した。次いで、総試験時間(指定されたCEを上回る)に負荷濃度を乗じることによりトラップ能力(単位:ppb−h)を算出した。これは、化学フィルタの能力または寿命を求めるのと本質的に同じプロセスである。
【0105】
NISTにトレーサブルな透過装置を用いてNH負荷を形成し(30℃で122ng/分のNH±4.99%、National Institute of Standards and Technology)、浄化された清浄な乾燥空気(Entegris(登録商標)Gatekeeper(登録商標)浄化装置CE700KF04RR)を用いて約10ppbの濃度に希釈した。ガス流中に試料トラップを配置する前に、Total Molecular Baseモニタ(Extraction Systems Inc.,TMB)を用いて上流濃度の安定性を検証した。次いで、TMBを使用して、CEが90%未満に低下するまで2分の測定間隔で下流濃度を検証した。モニタの真空ポンプで引いたトラップを通る試料流は試験中、毎分約0.7リットル(lpm)であった。
【0106】
NISTにトレーサブルな透過装置を用いて、SO上流負荷を形成し(40℃で473ng/分±2.77%)、浄化された清浄な乾燥空気(Gatekeeper浄化装置CE700KF04RR)を用いて約16ppbの濃度に希釈した。ガス流中に試料トラップを配置する前に、Thermo Model 43i−TLE SOモニタを用いて上流濃度の安定性を検証した。次いで、モニタを使用して、CEが90%未満に低下するまで5分の測定間隔で下流濃度を検証した。モニタの真空ポンプで引いた試料流は、試験中、約0.5lpmであった。
【0107】
様々な湿度負荷を形成するために、浄化された清浄な乾燥空気希釈ガスを分割し、制御されたパーセンテージを超純水(UPW)中をバブリングさせた。加湿された空気部分を湿度負荷に使用した。インライン湿度計(COLE−PARMER(登録商標)03313−66)で下流水分レベルを検証した。
【0108】
確度および精度
比較のために、既知量のNHを負荷した複数の試料を採取することにより、液体非含有トラップ、標準的な液体インピンジャー(脱イオン水を収容する)、および0.005Mリン酸をスパイク添加したインピンジャーの精度および確度を求めた。純粋なDI水デバイスと比較するために、NHのイオン化を最大限にするためにインピンジャーの酸性化を行った。
【0109】
上記のNISTにトレーサブルな透過装置を用いてNH負荷を形成し、透過物(output)を、RH40%に調整された浄化された清浄な乾燥空気を用いて約8ppbの濃度に希釈した。サンプリング前とサンプリング中に、TMBを用いて上流濃度の安定性を検証した。
【0110】
比較のために、既知量のSOを負荷した複数の試料を採取することにより、液体非含有トラップ、標準的な液体インピンジャー、および酸化触媒として3%Hをスパイク添加したインピンジャーのSOに関する能力を調べた。上記のNISTにトレーサブルな透過装置を用いて負荷を形成し、RH35%に調整された浄化された清浄な乾燥空気を用いて約16ppbの濃度に希釈した。サンプリング前とサンプリング中に、Thermo Model 43i−TLE SOモニタを用いて上流濃度の安定性を検証した。
【0111】
NISTにトレーサブルな透過装置(50℃で1971ng/分±15%)を用いて形成され、RH40%に調整された浄化された清浄な乾燥空気を用いて248ppb±15%の濃度に希釈された既知量のHFを負荷した複数の試料を採取することにより、液体非含有トラップと標準的な液体インピンジャーのHF試験を比較した。
【0112】
比較のために、既知量のCHCOOHを負荷した複数の試料を採取することにより、液体非含有トラップと標準的な液体インピンジャーでCHCOOH試験を行った。NISTにトレーサブルな透過装置を用いて負荷を形成し(35℃で327ng/分±2%)、RH25%に調整された浄化された清浄な乾燥空気を用いて13.3ppb±2%の濃度に希釈した。
【0113】
真空ポンプ(<15Torr)を用いてトラップの直ぐ上流の♯14オリフィスを通して引くことにより全てのトラップの試料流を制御して、流量が1.07lpmになるようにした。
【0114】
液体非含有トラップの捕捉効率にはまた、AMCの捕捉に使用した固体媒体から測定されたAMCの抽出効率または回収率も計上された。第2の一連の試験は、時間およびNHの抽出条件による抽出効率を調べるために、初期試験の一部として含まれた。
【0115】
現場での評価
制御された実験室条件での試料トラップの性能は、最適な性能を示す。しかし、現場でサンプリングする場合、外部条件の制御は理想的でないことがあり、あまり制御されていない条件下での試料トラップの性能を評価した。方法の検証を行うために、比較のために、半導体環境と内部サポート(internal support)の両方で現場に液体非含有トラップを標準的なインピンジャーと並行して設置した。
【0116】
試料分析
サンプリング後、液体非含有トラップ固体媒体を30mlのHDPE容器に移し、脱イオン水および音波処理を用いて抽出した。次いで、電気分解の抑制および電気伝導率の検出を備えたThermo−Fisher(登録商標)Dionex(登録商標)ICS3000イオンクロマトグラフィーシステムを用いて抽出溶液を分析した。システムのアニオンチャネルは、水酸化カリウム溶離液勾配をAS19 250×2mm分析カラムおよびCRD200炭酸塩除去デバイスと共に使用する。カチオンチャネルはメタンスルホン酸溶離液勾配とCS19 250×2mm分析カラムを使用する。
【0117】
Hubaux−Vos法を使用して、機器検出限界(IDL)および方法検出限界(MDL)を99%の信頼度区間で統計学的に求めた。IDLは0.00026mg/L NHであることが判明し、MDLは0.00053mg/L NHであることが判明した。回帰モデルのR値は0.9998であり、prob>F値は<0.0001であり、回帰モデルがデータに適切であることが分かった。残りのプロットは幾らかの不規則性を示したが、明確な傾向は示さなかった。モデルは、水中でのアンモニアの弱解離に基づいて二次回帰であると予測される(100%解離する強酸および塩基は直線である)。
【0118】
結果
媒体選択
固体多孔質媒体は、その実用性、操作および準備、ならびに捕捉用化学物質でのコーティング、および対象となるAMCを単通で低濃度のAMCの検出に必要な流量で捕捉する際の効率のため選択した。塩基トラップ用の実際の固体多孔質材料は、抽出後に廃棄することができる低コストで使い捨てのトラップ構成部品である。
【0119】
超微細濾過用(Ultra−fine filtering)タイプ316Lステンレス鋼(SS)製多孔質ディスク(孔径2、5、10、20および40μm、寸法が直径1/2インチ×幅1/16インチで、Applied Porous Technologies,Inc.から入手可能)を脱イオン水で洗浄し、抽出して、バックグラウンド汚染物質を測定した。測定の結果を次の表に報告する。
【0120】
【表1】
【0121】
幾つかの初期表面汚染物が観測されたが、脱イオン水洗浄液で除去することができた。洗浄された試料中にアミンは存在しなかった。
【0122】
GENPORE(登録商標)表面改質親水性超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)固相抽出カラムフリット(部品番号6mLPUで入手可能であり、平均孔径5〜50μm、直径0.513±0.005インチ、深さ0.125±0.020インチを、固体多孔質材料の候補として評価した。表面改質親水性PEを使用すると、材料のバルク特性が変化することなく接触角が0に効果的に低下することにより、ポリマーの濡れ性が向上した。
【0123】
固体多孔質媒体をコーティングする幾つかの化学物質について調べ、炭酸水素塩およびリン酸がイオンクロマトグラフィー操作、カラムの劣化、検出される化合物への妨害、および分析速度、ならびに媒体のコーティングに関連する幾つかの理由で好適であることが結論付けられた。
【0124】
クエン酸もコーティング材として評価した。5%クエン酸溶液を使用して、前述の焼結316L SS媒体を化学処理した。以下の特性:クエン酸が水溶性多塩基酸である(活性部位となり得る部位の数を増加させ得る)こと;クエン酸はC6有機酸より低級である(C6より大きい高分子量有機物はICサプレッサを汚染し、膜上に被膜を形成する可能性がある)こと;クエン酸は弱酸である(硫酸および塩酸などの強酸によって起こる可能性があるICカラムのイオン交換樹脂への妨害がなくなる)こと;クエン酸中の他のプロトン性基からの分子内水素結合によりアニオンが安定化されることに基づいてクエン酸を選択した。
【0125】
処理された材料の能力を試験するために、処理された媒体を水30mLで抽出した。媒体の多孔質構造中に堆積したクエン酸は水に溶解し、溶液のpHを低下させるはずである。次いで、当量点に達するのに使用した0.005M NaOH滴定剤の体積からクエン酸の量を算出した。50%エタノールに溶解した5%フェノールフタレイン溶液を、指示薬として使用した。焼結316L SS媒体の抽出により得られた溶液について、当量点に達するのに使用した0.005M NaOH滴定剤の量から、アンモニア1.87mgの理論能力が算出された。
【0126】
SS媒体はバックグラウンド汚染レベルが低く、理論能力が高いが、媒体中での第1族および第2族金属不純物のイオン化エネルギーは低いため、溶解した金属カチオンが増加した。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、クエン酸が存在すると、媒体から、抽出に使用される脱イオン水中への金属イオンの移動度が促進され、その結果、ICへの妨害が起こり、NHの定量が妨げられると考えられる。
【0127】
【表2】
【0128】
化学処理の前に、316LSS基材材料を脱イオン水(18.2mΩ)で最低3回洗浄し、可溶性表面汚染物を除去した。洗浄後、材料の多孔質構造への浸透が可能になるように、材料を脱イオン水中で最低1時間超音波清浄した。材料をさらに最低3回脱イオン水で洗浄した後、化学的に清浄な浄化XCDAパージ炉内で65+/−5℃で完全に乾燥させた。
【0129】
無水炭酸ナトリウム(CAS 497−19−8)5.03gを脱イオン水500mLに添加することにより、0.1M NaCO溶液500mLを調製した。
【0130】
化学的に清浄な密閉容器内で最低60秒間激しく振盪することにより、316LSS基材を0.1M炭酸ナトリウム溶液250mL中で十分に洗浄した。洗浄溶液をデカントし、洗浄した基材を残りの250mLのNaCO溶液中で最低15分間超音波処理した。基材と溶液を、表面汚染物を除去するために十分に洗浄したHDPEメッシュスクリーンを通して注ぎ、溶液をメッシュを通過させて廃棄すると共に、コーティングされた媒体をスクリーン上に回収した。媒体が完全に乾燥するまで、HDPEメッシュスクリーンを30℃の浄化XCDAパージ炉に入れた(均一に乾燥できるように、媒体を均等に分布させなければならない)。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、固体多孔質媒体を処理すると、水和した炭酸ナトリウム塩が生成すると考えられる。炭酸ナトリウム10水和物は室温で安定であるが、32℃では炭酸ナトリウム7水和物、NaCO・7HOに再結晶し、37〜38℃より高温では炭酸ナトリウム1水和物、NaCO・HOに再結晶する。
【0131】
処理された媒体を化学的に清浄な密封容器に30℃未満で貯蔵し、結晶化したNaCO・xHO処理体の脱水および周囲汚染物の侵入を防止した。処理された媒体は60日間貯蔵することができる。
【0132】
本明細書に記載の実験に使用した第2の酸トラップは、炭酸ナトリウムの代わりに炭酸水素ナトリウムを用い、炭酸ナトリウム酸トラップについて上記で概説した手順に従って製造した。
【0133】
【表3】
【0134】
GenPore(登録商標)親水性媒体は前処理を必要としない。使用前に媒体を洗浄すると親水性コーティングが除去され、媒体は目的の用途に不適切になる。
【0135】
結晶性オルトリン酸(CAS 7664−38−4)2.45gを脱イオン水500mLに添加することにより、0.05M HPO溶液500mLを調製した。
【0136】
化学的に清浄な密閉容器内で最低60秒間激しく振盪することにより、GenPore(登録商標)基材を0.05Mオルトリン酸溶液250mL中で十分に洗浄した。洗浄溶液をデカントし、洗浄した基材を残りの250mLのHPO溶液中で最低15分間超音波処理した。基材と溶液を、表面汚染物を除去するために十分に洗浄したHDPEメッシュスクリーンを通して注ぎ、溶液をメッシュを通過させて廃棄すると共に、コーティングされた媒体をスクリーン上に回収した。媒体が完全に乾燥するまで、HDPEメッシュスクリーンを、30℃の浄化XCDAパージ炉に入れた(均一に乾燥できるように、媒体を均等に分布させなければならない)。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、処理すると、媒体の多孔質構造内に結晶性リン酸が形成すると考えられる。オルトリン酸水和物は室温で安定であるが、融点が30℃であり、無水結晶性固体は42℃で融解する。
【0137】
処理された媒体を化学的に清浄な密封容器に30℃未満で貯蔵し、結晶化したHPOが融解し、周囲汚染物が侵入することを防止した。処理された媒体は60日間貯蔵することができる。
【0138】
トラップ組立体
図1Bに示すようにトラップを組み立てた。媒体の取り扱いにはTEFLON(登録商標)コーティングした鉗子を使用し、ディスクをその側面で固定することにより表面接触を最小限に抑えた。5/16”レンチを使用して、初期締付度(initial tightness)を4分の1過ぎるようにロックナットを締め付け、媒体との適切なシールを確保した。
【0139】
媒体の抽出
ロックナットを回して外すことによりトラップを開放した。底部組立体を下にしてトラップを垂直に保持した。媒体が底部組立体内に留まるように、上部組立体を底部組立体から分離した。底部を倒置し、倒置された底部組立体を試料バイアルの口の上に位置合わせすることにより媒体が30mL試料バイアルに入るようにした。媒体が組立体にはまって動かなくなった場合、化学的に清浄なプッシュロッドをトラップ開口部に挿入し、それを使用して媒体をバイアルに押し込んだ。
【0140】
18.2mΩの脱イオン水6mLをピペットで取り、媒体を収容する試料バイアルに入れた。密閉試料バイアルを最低60秒間激しく振盪することにより抽出を始め、その後、媒体を抽出溶液中で最低4時間超音波処理した。次いで、試料バイアルを貯蔵した、または適切な分析方法に従って分析した。
【0141】
これらの実験で使用した試料トラップハウジングはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製である。液体非含有試料トラップハウジングを図1Aに示し、液体非含有試料トラップの組立図を図1Bに示す。図1Aの、およびこれらの実験に使用したハウジング中の液体非含有トラップハウジング1は、固体多孔質材料の封止および確実な保持、最適化された内部流路、ならびに容易な準備および操作を提供する3部構成である。ハウジング1はロックナット2と、上流部品3と、下流部品4とを含む。上流部品3と下流部品4はそれぞれ、管端部5および6をそれぞれ有する。これらの実験に使用したトラップ内の管端部はOD6.4mmであり、輸送および貯蔵のために標準的な管継手を被嵌することができる。トラップの長さは、ステンレス鋼製またはガラス製の市販の有機トラップのものと一致するように選択することができる。内部設計は、流動や操作のために、また汚染が最小限になるように最適化される。
【0142】
アンモニアに関する能力
液体への試料ガスの拡散および溶解がなくなり、アンモニアの捕捉は簡単な酸/塩基反応に基づいて起こり、液体非含有トラップの能力は主にイオン結合のための活性部位の数、即ち、多孔質材料をコーティングするのに使用される酸の量と性質によって決まり、NHは基材の表面で一アンモニウム塩と二アンモニウム塩の組み合わせを形成する(式4)。三アンモニウム塩は不安定である。
NH3(g)+HPO⇔(NH)HPO+(NHHPO (4)
【0143】
NHに関するトラップ能力は相対湿度0%で200ppb−hであると求められた。供給ラインおよびプロセスガスラインなどの、典型的なRH0%の用途では、トラップ能力は、許容されるAMC濃度に関する典型的なツールOEM規格およびITRS推奨に必要なものの100倍超である。Entegris Analytical ServicesによりCDAラインおよびNライン内で検出されるAMCは典型的には1ppb未満であるが、プロセスガスは比較的高いレベルを含有し得る。
【0144】
水分を加えて相対湿度40%にすると、トラップ能力は350ppb−hに向上した。水分の添加による能力の増加は、反応を起こすための生成自由エネルギーを水が低下させ得ることに起因し、副次的結果(secondary consequence)としての媒体内でのイオン移動度のための手段となり得る。NHに関する能力は捕捉効率レベル99%、即ち、破過1%未満で求めた。
【0145】
図2はトラップ能力に対する捕捉効率のグラフであり、RH0%およびRH40%での液体非含有塩基トラップのアンモニアに関する能力を示す。
【0146】
最新の供給ガスのNH濃度が1ppb未満であり、典型的なクリーンルームのNH濃度が10ppb未満である場合、測定された能力は、ppqレベルの分析に必要なものをはるかに超える、3.5lpmで20〜35時間サンプリングを行う場合の、定量的なNH捕捉に換算される。これにより1回の作業シフトで、かつ典型的に使用される12〜72時間のサンプリング時間を必要とせずに、AMCをサンプリングすることが可能となる。
【0147】
アルカリに関する能力は、イオン結合のための酸性活性部位(この場合、HPOの第1および第2のプロトン)の数によって変わり、アミンのような、類似の化学的挙動を有する他の化合物に拡大することができる(式5)。
【数2】
式5により、アミンに関する能力の概算見積もりが得られると考えられる。しかし、アルカリ種のpKおよび比較的大きい分子サイズによる立体障害を考慮することができる。概算として、アミン、またはアンモニアとアミンとの任意の組み合わせに関して同じ能力が得られると推測される。
【0148】
二酸化硫黄に関する能力
SOに関するトラップ能力は、RH0%および捕捉効率90%では5ppb−hであると求められた。水分を加えて相対湿度22%にすると、トラップ能力はCE90%で60ppb−hに増加し、相対湿度35%でのトラップ能力は99%では400ppb−h超に増加した。図3は、能力に対する捕捉効率のグラフであり、RH0%、22%および35%での液体非含有酸トラップのSOに関する能力を示す。
【0149】
プロセスガスラインのような典型的な乾燥用途では、トラップ能力は、典型的なツールOEM規格およびITRS推奨の要件を満たすのに十分である(典型的にはpptの範囲内)。Entegris Analytical Servicesでは、かなり旧式の半導体環境中でも1ppbを上回るSOは検出されなかった。従って、能力は十分であり、サンプリング時間の制限とならないと考えられる。
【0150】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、乾燥媒体上でのSOの捕捉を説明するために提案された機構には、2〜8のpH範囲で一次反応生成物である中間体の硫酸水素イオン(式6)を生成する、SOと過剰な水との初期反応が含まれる。
SO2(g)+HO⇔HSO+H (6)
得られる硫酸水素イオンは遊離しており、媒体の表面上でNaHCOと反応し、硫酸ナトリウム塩を生成する(式7)。
HSO+2NaHCO3(s)⇔NaSO4(s)+HO+2CO+H (7)
【0151】
RH0%でも、直接イオン結合および10水和物塩としてNaHCOに結合している(NaHCO・10HO)結晶水の存在のため、SOに関する能力が幾らかある。得られる硫酸ナトリウム塩は抽出溶液中で完全に解離し、確立されたイオンクロマトグラフィー法を用いてSO2−として定量された。NaHCOと直接相互作用して中間体イオン結合を形成し、水分の存在に大きく依存しない酸種は比較的低い相対湿度で大幅に改善された能力を有することになると考えられる。
【0152】
アンモニア確度および精度
算出され、モニタで検証された負荷濃度8.0ppbに対して、NHに関する標準的な水インピンジャーの平均捕捉効率は、RH40%では88%であった。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、標準的なインピンジャーでの低い捕捉効率は、溶液中でのアンモニアの部分的解離(式2)および/または空気気泡から水柱への不完全な拡散に起因する可能性がある。溶液のpHの低下は、アンモニア濃度の低下または酸種の存在に起因し、アンモニアのイオン化に直接影響を及ぼし、平衡がますますアンモニウム生成の方に移動する。この結果、イオンクロマトグラフィー分析でアンモニアおよびアミンに関して特有の非直線検量線が得られる。
【0153】
この理論は、0.005Mリン酸をスパイク添加し、RH40%でのNHに関する平均捕捉効率が95.1%であり、残りの5%は不十分な捕捉効率による可能性があったpH調整インピンジャーからの試験結果により裏付けられる。pH調整された溶液中のリン酸対イオンの濃度が高いと、溶解したアンモニアの完全に解離したアンモニウムイオンへの変換がより十分に促進される。これに基づいて、水インピンジャーでサンプリングする場合、アンモニアが増加するにつれ、インピンジャーのNH捕捉効率が減少し続けると予測することができる。この現象は、10ppbを超える濃度が検出される、技術ノードが比較的古い半導体製造工場、またはアンモニアレベルが高い、リソグラフィー以外のプロセス領域に使用するのに特に不都合である。
【0154】
液体非含有トラップはRH40%でのNHの平均捕捉効率が99.8%であり、試験した3つのトラップのトラップ間のばらつきが最も低かった(標準偏差7.6%)。液体非含有トラップ媒体の化学的機構はイオン結合の形成に基づき(式4)、溶解に基づく捕捉の制限を受けない。代わりに、唯一の制限はその能力に起因するが、その能力は十分であることが判明した。
【0155】
アンモニアに関する確度と精度の比較結果を表1に報告し、図4にグラフで示す。
【0156】
【表4】
【0157】
二酸化硫黄に関する性能
標準的な水インピンジャーのSOに関する平均捕捉効率は、RH36%で、負荷濃度16.8ppbでは91%であった。しかし、この平均は、外れたデータ点が1つ存在する(高い標準偏差に現れている)ため大きく偏倚しており、それを除外すると、捕捉効率は86%に低下する。低い捕捉効率は、溶液中で複数の中間種が生成し、それらの中間種の濃度の上昇に伴いイオン化が低下することに起因する。このことから、捕捉効率が濃度に反比例し、総SO濃度が増加するにつれ低下することが分かる。また亜硫酸アニオンと硫酸アニオンの生成によりインピンジが酸性化し、溶液のpHが低下するにつれ、平衡はますます気相の方に移動する。二酸化硫黄性能試験のデータを表2に要約する。
【0158】
【表5】
【0159】
1%Hをスパイク添加した水インピンジャーの性能の方が標準的な水インピンジャーよりずっと優れており、ばらつきが小さく平均捕捉効率99.4%であった。性能の改善は、溶液中の解離していないSOと部分酸化した種の両方が過酸化物で十分に酸化され、硫酸イオンに完全に変換される結果であると考えられる(式9)。
SO+H⇔2H+SO2− (9)
【0160】
液体非含有トラップのSOに関する平均捕捉効率は、RH36%では96.5%であり、トラップ間のばらつきが小さく相対標準偏差4.9%であった。1%Hインピンジャーの方が捕捉効率は高かったが、過酸化物の添加は追加の工程段階であり、ICシステムの分析カラムに使用されるイオン交換樹脂に有害な可能性があり、ルーチン分析に不都合になるおそれがある。さらに、過酸化物が存在すると、NOおよびCOを含む大気ガスの酸化も起こり、アーチファクトが生じ、インピンジャーの化学的状態が変化する。
2NO+3H→2H+2NO+2HO (10)
CO+2H→H+HCO+2HO (11)
液体非含有トラップでは、さらなる酸化を引き起こす原因が存在しないため、式10および11に記載される反応は最小限に抑えられる。
【0161】
HFに関する性能
HFの捕捉に関して、RH40%でサンプリングされた空気では、水インピンジャーの捕捉効率は98.2%であり、液体トラップの捕捉効率は100.2%であった。液体非含有トラップの方が水インピンジャーより精度が僅かに良く、標準偏差3.5%であった。HFは水とあらゆる割合で十分に混和し、他のハロゲン化水素と異なり、水素結合により相互作用するため、水インピンジャーでは高い捕捉効率が期待される。液体非含有トラップでの主要な捕捉機構は、純粋にイオン反応である(式12)。
NaHCO3(S)+HF(g)→NaF(s)+CO2(g)+H(l) (12)
HFに関する性能実験の結果を表3に要約する。
【0162】
【表6】
【0163】
これらの結果は、いずれのタイプのトラップでも著しく低い捕捉効率を示した、インピンジャーおよび液体非含有トラップ技術に関して以前報告された結果と異なる(6)。これは、試料ガスの含水率の結果であると考えられ、水の存在下、低濃度でのHFの挙動により裏付けられる。主要な溶質種はH−H結合したイオン対[H・F]であり、それにより解離が促進され、HF溶解度が上昇する(7)ことが判明した。
【0164】
酢酸に関する性能
酢酸の捕捉に関して、標準的なインピンジャーの平均捕捉効率は、RH36%では98.2%であり、相対標準偏差が4.1%であった。液体非含有トラップは捕捉効率が96.1%とほぼ同じであり、標準的なインピンジャーと比較してばらつきが僅かに高かった。CHCOOHは主にイオン結合により捕捉される(式13)ため、特にCHCOOHに関して低い性能が予測される理由はないが、酢酸のpKがかなり高い(弱酸性)ことが、捕捉効率が100%未満になる一因となり得る。
NaHCO+CHCOOH⇔NaCHCOO+CO+HO (13)
それにもかかわらず、これは、半導体産業での酢酸モニタリングに十分な結果であると見なされる。酢酸に関する性能試験の結果を表4に要約する。
【0165】
【表7】
【0166】
現場での評価
制御された実験室条件での試料トラップの性能は、最適な性能を示す。しかし、現場でサンプリングする場合、外部条件は理想的でないことがあり、サンプリングは作業者による試料の取り扱い、発送等を必要とする可能性がある。
【0167】
あまり制御されていない条件下での液体非含有トラップの性能をNHに関して評価した。液体非含有トラップを、外部顧客と内部サポートの両方で現場に設置し、標準的なインピンジャートラップと並行してサンプリングを行った。いずれのタイプのトラップも測定間の再現性が約5%であった。しかし、インピンジャーは、液体非含有トラップのものより一貫して5〜20%低い捕捉効率を示し、<10ppt〜0.1ppmの5桁に及ぶ濃度範囲にわたる100超の実際のデータ点で2つのトラップ間の差が平均10.2%となった。図5Aは、既知のアンモニアガス源に関する測定番号に対するアンモニア濃度のグラフであり、インピンジャーで測定されたアンモニアの濃度は既知のアンモニア濃度より一貫して低く、かつ液体非含有トラップで測定したアンモニア濃度より低かったことを示している。
【0168】
2つのタイプのトラップの相関は0.98であり、2つのトラップのデータセットには統計学的有意差がないことを示している。データのANOVA分析により、MMeasured=0.0094、FCrit=3.9、およびP値=0.92が得られ、データに統計学的有意差がないという帰無仮説の確認を示した。それにもかかわらず、線の傾きで示される7.6%の差は、測定された液体非含有トラップの捕捉効率が、標準的なインピンジャーと比較して約10%増となることを反映している可能性がある(表1を参照されたい)。
【0169】
図5Bは、液体非含有トラップと標準的なインピンジャーとに関する捕捉されたアンモニア濃度の相関プロットであり、2つのトラップのデータセットに統計学的有意差がないことを示している。
【0170】
貯蔵寿命
液体非含有トラップの貯蔵寿命は、コーティングされた基材を幾つか製造した後、これらを3ヶ月間貯蔵し、余剰の試料を毎週分析して、起こり得る傾向を観測することにより調べた。データから、検出レベルを上回る影響を及ぼすことなく、液体非含有トラップを化学的に清浄な容器に貯蔵し最大3ヶ月間冷蔵できることが示唆される。データのプロットから、貯蔵中、NH濃度の増加傾向がないことが分かった。この貯蔵寿命は有機AMCトラップのものに匹敵し、即時設置できるように比較的迅速に配送し、現場で貯蔵することを可能にする。
【0171】
結論
水充填インピンジャートラップの欠点に対処するために、酸性気相汚染物とアルカリ性気相汚染物の両方に特化した液体非含有吸着性トラップを開発してきた。液体非含有塩基トラップのアンモニアに関する能力の結果は、捕捉効率100%で、水分なし(CDAまたはNのサンプリングをシミュレートする)では200ppb−h超、RH40%では350ppb−hであった。二酸化硫黄に関する能力の結果は、サンプリングしたガスの含水率に大きく依存し:相対湿度0%では、捕捉効率90%で能力が5ppb−hしかなかったが、相対湿度40%では1200ppb−h超に指数関数的に増加した。HFに関する性能および酢酸に関する性能は十分であり、標準的なインピンジャーのものに匹敵した。
【0172】
最新の供給ガス濃度が1ppb未満、クリーンルーム濃度が10ppb未満の場合、酸に関する能力と塩基に関する能力は両方とも、関連環境で検出されるものおよび低レベル分析に必要なものを大幅に超える。トラップ性能により、1回の作業シフトで、かつ業界の大部分の実験室で典型的に適用される12〜72時間のサンプリングを必要とせずに、ppqレベルのAMCのサンプリングおよび分析を行うことが可能となる。
【0173】
性能試験から、液体非含有トラップは標準的なインピンジャーと比較して、実験室試験でNH、SOおよびHFに関して、高精度かつ高確度の結果が得られ、3種類の化合物全てについて相対標準偏差は8%を超えず、捕捉効率は95%より大きいことが分かる。酢酸は、僅かに低い性能を示す唯一の化合物であったが、依然として、その用途に十分好適な精度と確度を維持した。
【0174】
外部顧客サイトと内部サポート用途の両方で現場に標準的なインピンジャートラップと並行して設置した結果、トラップタイプ間の差が最大10%となり、液体非含有トラップはインピンジャーの代替に好適であるという必要な証拠が得られた。
【0175】
本明細書に開示する液体非含有トラップは、既存のサンプリング技術より、現場での操作が容易であり、操作による汚染が少なく、貯蔵寿命が長く、液体の発送に関する懸念がなくなるため、大幅に改善されている。
【0176】
参考文献
(1)Grenon B.,Bhattacharyya K.,Volk W.,Phan K.,Poock A.,“Reticle surface contaminants and their relationship to sub−pellicle defect formation”,Proceedings of SPIE,Metrology,Inspection and Process control for Microlithography XVIII,Vol.5375,pp.355−62,(2004).
(2)Dean,K.R.,Miller,D.A.,Carpio,R.A.,Petersen,J.S.,&Rich,G.K.,“Effects of Airborne Molecular Contamination on DUV Photoresists”,Journal of Photopolymer Science and Technology,10(3),pp.425−443,(1997).
(3)International Roadmap Committee(IRC),ITRS yield Enhancement Table,Table YE4“AMC Monitoring Methods”(2012).
(4)Gutherie,P.“Tautomerice quilibria and pK Values for‘sulfurous acid’in aqueous solution:a thermodynamic analysis”,Canadian Journal of Chemistry,57,pp.454(1979).
(5)Lobert,Juergen M.,Grayfer A.and Oleg K.,“Virtual NOx:A Measurement Artifact in Wet Impinger Air Sampling.”,Entegris Application Note APN000015,(2006).
(6)Vogt,S.;Landoni,C.,“Monitoring acidic and basic contamination in leading edge lithography and metrology applications:quantative comparison of solid−state and impinger based sampling methods.”,Proceedings of SPIE,Metrology,Inspection and Process Control for Microlithography XXIV,Vol.7638,pp.7638,763825−7,(2010).
(7)Giguere P.and Turrell,S.,”The nature of hydrofluoric acid:A spectroscopic study of the proton−transfer complex H...F”,Journal of the American Chemistry Society,102(17),pp.5473,(1980).
【0177】
本明細書に引用される特許、出願公開、および参考文献の教示は全て、参照よりその内容全体が援用される。
【0178】
本発明をその例示的実施形態に関して詳細に示し、説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく形態および詳細に様々な変更を行い得ることが分かるであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4
図5A
図5B