特許第6564239号(P6564239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564239高ダイナミックレンジ撮像装置及び撮像方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564239
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】高ダイナミックレンジ撮像装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 9/07 20060101AFI20190808BHJP
   H04N 5/341 20110101ALI20190808BHJP
   H04N 5/355 20110101ALI20190808BHJP
   H04N 5/353 20110101ALI20190808BHJP
   H04N 9/68 20060101ALI20190808BHJP
   H04N 9/64 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H04N9/07 A
   H04N5/341
   H04N5/355
   H04N5/353
   H04N9/68 A
   H04N9/64 R
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-103084(P2015-103084)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-220037(P2016-220037A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月3日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】北村 和也
【審査官】 大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−070369(JP,A)
【文献】 特開平01−151891(JP,A)
【文献】 特開2003−324747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30−5/378
H04N 9/04−9/11
H04N 9/44−9/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の行に緑(G1)と赤(R)のフィルタを有し、第2の行に青(B)と緑(G2)のフィルタを有するベイヤー配列のカラー撮像素子を備えた撮像装置において、入射光の色温度に基づいて、ホワイトバランスのR,Bの補正ゲインを比較し、前記補正ゲインが小さい色を含む行の露光時間と前記補正ゲインが大きい色を含む行の露光時間の比率が、前記補正ゲインのうち大きい補正ゲインの逆数に等しくなるように、電子シャッター制御を行って、前記第1の行と前記第2の行の露光時間を異ならせ、露光時間の短い行から得られた緑の映像信号を利用して、受光強度に対するダイナミックレンジを拡張したことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項に記載の撮像装置において、前記第1の行と前記第2の行の緑の映像信号を加算(G1+G2)するデジタル信号処理を行い、赤及び青の映像信号については、それぞれ緑の加算された映像信号に合わせてデジタル信号処理を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項に記載の撮像装置において、緑の映像信号については、露光時間の短い行から得られた緑の映像信号をゲイン補正するのと等価なデジタル信号処理を行い、赤及び青の映像信号については、それぞれ補正された緑の映像信号に合わせてデジタル信号処理を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
第1の行に緑(G1)と赤(R)のフィルタを有し、第2の行に青(B)と緑(G2)のフィルタを有するベイヤー配列のカラー撮像素子を用いた撮像方法において、ホワイトバランスのR,Bの補正ゲインを比較し、前記補正ゲインが小さい色を含む行の露光時間と前記補正ゲインが大きい色を含む行の露光時間の比率が、前記補正ゲインのうち大きい補正ゲインの逆数に等しくなるように、電子シャッター制御を行って、前記補正ゲインが小さい色を含む行の露光時間を前記補正ゲインが大きい色を含む行の露光時間より短くし、露光時間の短い行から得られた緑の映像信号を利用して、受光強度に対するダイナミックレンジを拡張したことを特徴とする撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を光電変換して映像信号として取り出す撮像装置と撮像方法に関するものであり、特に、受光強度に対するダイナミックレンジを広くした高ダイナミックレンジ撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、大きく分けて、三板式と単板式がある。三板式はレンズを通した被写体の光をプリズム等で分光し、赤、緑、青のそれぞれの光を撮像する3つのセンサー(固体撮像素子)により画像を得るものであって、全画素の色情報が正確に得られる利点があるが、センサーが3つ必要であり、分光のための構成も必要であるため、装置が大きくなり、コストも高くなる。これに対して、単板式は、一つのセンサー(固体撮像素子)の各画素の上に赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの色のみを通すカラーフィルタを設け、画像を撮影後、各画素のR,G,Bの輝度値を演算処理してカラー画像を作成するものであり、装置の小型化・低コスト化が可能であるので、近年、広く利用されている。
【0003】
単板式の撮像装置は、センサーの各画素が特定の色の光を受光するため、各画素において周囲の画素から色情報を補完する必要があり、より十分な色情報を得るためには画素数を多くする必要があるが、センサー全体の大きさは一定の制限があるため、画素数を多くするためには、必然的に、個々の画素サイズを小さくしなければならない。しかし、画素サイズを縮小した場合、各画素の受光部(フォトサイト)に蓄積可能な電荷量は画素サイズと共に小さくなるため、受光部で光電変換可能な光量が減少し、入射光量に対して出力が飽和しやすくなる。すなわち、受光強度に対するダイナミックレンジが小さくなる。
【0004】
この問題に対して、電子シャッターを利用して画素の露光時間を短くし、出力が飽和する光の入力強度を実質的に大きくする(受光強度のダイナミックレンジを広くする)試みがなされている。以下に、固体撮像素子の画素構造及び動作と、電子シャッターについて説明する。
【0005】
図8に、固体撮像素子の画素構造の例を示す。図8(a)は、4トランジスタ構造の画素回路200の例である。
【0006】
各画素は、フォトダイオード(Photo Diode:PD)210、転送ゲート(Transfer Gate:TG)220、増幅トランジスタ230、リセットゲート(Reset Gate:RG)240、選択ゲート(Select Gate:SG)250を、備えている。また、バイアスゲート(Bias Gate:BG)260が、各信号線に設けられている。
【0007】
図8(b)は、フォトダイオード210、及び転送ゲート220のデバイス構造の一例を断面図で示したものであり、例えば、フォトダイオード210は、P型半導体基板に形成されたN型領域211から形成される。さらに、このN型領域211と、同じくN型領域からなるフローティング・ディフュージョン(Floating Diffusion:FD)領域223(図8(a)の回路図では接続点223で表示)、ゲート絶縁膜222、及びゲート電極221は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを構成し、転送ゲート(TG)220として機能する。
【0008】
図8(a)において、画素が受光すると、光電変換によりフォトダイオード(PD)210に信号電荷が蓄えられる。転送ゲート(TG)220に電圧が印加されると、蓄積された電荷がフローティング・ディフュージョン(FD)223に転送される。このフローティング・ディフュージョン(FD)223の電位は、増幅トランジスタ230のゲート電極に印加され、フローティング・ディフュージョン(FD)223の電位に対応した電圧が増幅トランジスタ230から出力される。選択ゲート(SG)250に電圧が印加されると、増幅トランジスタ230の出力電圧、すなわち、フローティング・ディフュージョン(FD)223の電位に対応した電圧が信号線に印加されて、画素からの出力Voutとして取り出される。なお、リセットゲート(RG)240に電圧がかかればフローティング・ディフュージョン(FD)223の電荷はリセットされる。信号線の電圧は、バイアスゲート(BG)に電圧を加えることにより、接地電位に戻る。
【0009】
次に、映像信号の取り出しと、電子シャッターについて、図9のタイミングチャートに基づいて説明する。
【0010】
図9は、図8の画素回路の制御方法を示しており、転送ゲート220、リセットゲート240、選択ゲート250のそれぞれに印加される制御電圧パルスと、フローティング・ディフュージョン(FD)223及び信号線出力Voutの電位変化を示している。
【0011】
図9(a)は、電子シャッターを行わない場合の制御である。映像信号は、出力Voutを相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling:CDS)することによってVFDとして取り出される。
【0012】
パルス電圧301によりリセットゲート240がON(導通)し、フローティング・ディフュージョン223の電荷が全て排除されるとともに、電源電圧が印加されることにより、フローティング・ディフュージョン223の電位が一時的に303となる。このとき、制御電圧306により選択ゲート250がON(導通)しており、増幅トランジスタ230の出力Voutは、電圧307となる。
【0013】
リセットゲート240がOFF(遮断)すると、フローティング・ディフュージョン223は、フローティングの状態となって電位304となり、出力Voutは、電圧308となり、後段の回路によってフローティング・ディフュージョン223に信号電荷がないときの基準電圧としてサンプルホールドされる。サンプルホールド回路について様々な構成があり、本件の本質ではないので説明は割愛する。
【0014】
次いで、パルス電圧302により転送ゲート220がON(導通)し、フォトダイオード210で光電変換され、蓄積されていた信号電荷が、フローティング・ディフュージョン223に移送される。これにより、フローティング・ディフュージョン223の電位は、蓄積された電荷量に対応する電位305となり、この電位が増幅トランジスタ230のゲートに印加される。これにより、増幅トランジスタ230の出力としての信号線の出力Voutは、電圧309となる。これが、フローティング・ディフュージョン223に信号電荷が蓄積されたときの電圧である。なお、選択ゲート250は、適切なタイミングでOFF(非導通)となり、信号線は電圧309を維持する。
【0015】
サンプルホールドされていたフローティング・ディフュージョン223に信号電荷のない時の出力電圧308と、信号電荷が蓄積されたときの出力電圧309との差分の電圧VFDが、フローティング・ディフュージョン223に蓄積される電荷量に比例している。したがって、後段の回路によってこの二つの差分電圧VFDを取り出し、受光量に対応する情報として、信号処理に用いる。
【0016】
図9(a)においては、転送ゲートに印加されるパルス電圧302の間隔が露光時間に対応し、露光時間は1フレームの長さと等しい(電子シャッターは行われていない)。パルス電圧302で区切られた露光時間にフォトダイオードで受光した光量の全てが信号電荷となり、電圧VFDに寄与している。
【0017】
これに対して、フォトダイオード210で光電変換されて蓄積される電荷量は、照射光強度(受光強度)・受光面積・露光時間に比例するから、電圧VFDは露光時間によって線形的に制御することが可能である。1フレームの途中にリセットゲート・転送ゲート等への制御電圧パルスにより、この露光時間(信号電荷を生成する実質的な露光時間)を制御することを電子シャッターという。
【0018】
図9(b)に、電子シャッターを行う場合の各ゲートへの電圧印加タイミングと出力電圧の例を示す。転送ゲート220とリセットゲート240に印加される制御電圧パルスが図9(a)と異なっており、1フレーム間隔で印加されるリセットゲートのパルス電圧301の間に新たなパルス電圧311が印加され、また、図9(a)では1フレーム中に一度印加されていた転送ゲートのパルス電圧302に、新たなパルス電圧312が加わっている。後述のように、転送ゲートのパルス電圧302とパルス電圧312との間にフォトダイオード210に蓄積されるエネルギーはリセットされ、転送ゲートのパルス電圧312と次のパルス電圧との間が露光時間となる。
【0019】
パルス電圧301によりリセットゲート240がON(導通)し、フローティング・ディフュージョン223の電荷が全て排除されて電位が一時的に303となり、このとき、制御電圧306により選択ゲート250がON(導通)しており、増幅トランジスタ230の出力としての信号線の出力Voutは、電圧307となる。次いで、リセットゲート240がOFF(遮断)すると、フローティング・ディフュージョン223は、フローティングの状態となって電位304となり、出力Voutは電圧308となる。この出力電圧308は、後段の回路によってフローティング・ディフュージョン223に信号電荷がないときの基準電圧としてサンプルホールドされる。ここまでは、図9(a)と同じである。
【0020】
次いで、パルス電圧302により転送ゲート220がON(導通)し、露光時間にフォトダイオード210で生成した信号電荷が、フローティング・ディフュージョン223に移送される。これにより、フローティング・ディフュージョンFD223の電位は電位305となり、この電位が増幅トランジスタ230のゲートに印加される。これにより、増幅トランジスタ230の出力として信号線の出力Voutは、電圧309となる。
【0021】
サンプルホールドされていた出力電圧308と、フローティング・ディフュージョン223に信号電荷が蓄積されたときの出力電圧309との差分の電圧VFDが、フローティング・ディフュージョン223に蓄積される電荷量(露光時間に生成された信号電荷)に比例する。後段の回路によってこの差分電圧VFDを取り出し、受光量に対応する情報として、信号処理に用いる。ただし、図9(b)では、このときフローティング・ディフュージョン223に蓄積される信号電荷は、1フレームの全期間中に光電変換された電荷量ではなく、パルス電圧302と次のパルス電圧312の間の期間に蓄積されたエネルギーはリセットされ使われない点が、図9(a)と異なる。
【0022】
次いで、リセットゲート240にパルス電圧311が印加され、リセットゲート240がON(導通)し、フローティング・ディフュージョン223の電荷が全て排除される。次いで、パルス電圧312により転送ゲート220がON(導通)し、パルス電圧302とパルス電圧312の間の期間にフォトダイオード210で生成し蓄積された電荷が、フローティング・ディフュージョン223に移送される。これにより、フローティング・ディフュージョンFD223の電位は電位315となるが、このとき選択ゲート250は閉じているため、増幅トランジスタ230の出力電圧変化が信号線の出力Voutに影響を及ぼすことはない。
【0023】
パルス電圧302とパルス電圧312の間にフォトダイオード210に蓄積される電荷は、信号としては利用しない。よって、リセットゲートに印加される次のパルス電圧によりリセットゲート240をON(導通)し、フローティング・ディフュージョン223に蓄積されている不要な電荷を全て排除(リセット)する。この動作は、フォトダイオードの露光期間中に行うことができる。その後は、パルス電圧312と次のパルス電圧の間の期間(露光時間)に、フォトダイオード210で光電変換され蓄積された電荷を信号電荷として読み出すために、上述の動作を繰り返す。
【0024】
このように、転送ゲート220とリセットゲート240に印加される制御電圧パルスにより、フォトダイオード210に溜まっている電荷を一度捨てる(露光時間を短くする)ことができる。受光強度が一定とするとフォトダイオード(PD)が飽和するまで、露光時間と出力電圧VFDは線形の関係となる。また、1フレーム中の露光時間を短くすることにより、フォトダイオード(PD)の出力が飽和する受光強度(照射光強度)が大きくなり、受光感度のダイナミックレンジが拡大する。このように、電子シャッターを利用して、ダイナミックレンジを広くする方法が知られている。
【0025】
さらに、撮像装置のダイナミックレンジを拡大するために、これまで、様々な手法が検討されており、例えば、1フレーム期間中に異なる2回の露光を行う方式等が報告されている。特許文献1では、画素内に受光面積の異なる2つのフォトダイオードを持ち、2種類の感度の異なる画素出力を利用して、信号のダイナミックレンジを広くする方法が開示されている。また、非特許文献1には、露光時間の異なる複数の画素出力を得る方法が開示されている。さらに、特許文献2には、カラーフィルタ配列を改良して各色が2画素隣接するように配列し、それぞれを異なる露光時間で撮影する方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許第4018820号公報
【特許文献1】特開2012−80297号公報
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Orly Yadid-Pecht and Eric R.Fossum,“Wide Intrascene Dynamic Range CMOS APS Using Dual Sampling”, IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL.44, NO. 10, OCTOBER 1997, pp.1721-1722
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
特許文献1では、サイズ/受光感度の異なる複数の画素を製作する必要があり、撮像素子の作製・制御が困難である。また、非特許文献1では、読み出し速度を2倍以上に高速度化する必要がある。また、特許文献3では、同色の2つの画素がペアを構成して同色のカラーフィルタが積層され、全体としてベイヤー配列となる特殊なカラーフィルタ配列が必要となる。したがって、先行技術文献に記載されたものは、いずれもの特殊な撮像素子構造を必要とし、撮像素子の製造が複雑なものとなっていた。また、これまで、電子シャッターは行われていたが、その制御の最適な条件は十分に検討されていない。
【0029】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、通常のベイヤー配列のカラー撮像素子を用いて、受光強度に対するダイナミックレンジを拡大することができる撮像装置、及び最適な条件で露光時間を制御し、受光強度に対するダイナミックレンジを拡大することができる撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するために本発明に係る撮像装置は、第1の行に緑(G1)と赤(R)のフィルタを有し、第2の行に青(B)と緑(G2)のフィルタを有するベイヤー配列のカラー撮像素子を備えた撮像装置において、入射光の色温度に基づいて、ホワイトバランスのR,Bの補正ゲインを比較し、前記補正ゲインが小さい色を含む行の露光時間と前記補正ゲインが大きい色を含む行の露光時間の比率が、前記補正ゲインのうち大きい補正ゲインの逆数に等しくなるように、電子シャッター制御を行って、前記第1の行と前記第2の行の露光時間を異ならせ、露光時間の短い行から得られた緑の映像信号を利用して、受光強度に対するダイナミックレンジを拡張したことを特徴とする。
【0032】
また、前記撮像装置は、前記第1の行と前記第2の行の緑の映像信号を加算(G1+G2)するデジタル信号処理を行い、赤及び青の映像信号については、それぞれ緑の加算された映像信号に合わせてデジタル信号処理を行うことが望ましい。
【0033】
また、前記撮像装置は、緑の映像信号については、露光時間の短い行から得られた緑の映像信号をゲイン補正するのと等価なデジタル信号処理を行い、赤及び青の映像信号については、それぞれ補正された緑の映像信号に合わせてデジタル信号処理を行うことが望ましい。
【0034】
上記課題を解決するために本発明に係る撮像方法は、第1の行に緑(G1)と赤(R)のフィルタを有し、第2の行に青(B)と緑(G2)のフィルタを有するベイヤー配列のカラー撮像素子を用いた撮像方法において、ホワイトバランスのR,Bの補正ゲインを比較し、前記補正ゲインが小さい色を含む行の露光時間と前記補正ゲインが大きい色を含む行の露光時間の比率が、前記補正ゲインのうち大きい補正ゲインの逆数に等しくなるように、電子シャッター制御を行って、前記補正ゲインが小さい色を含む行の露光時間を前記補正ゲインが大きい色を含む行の露光時間より短くし、露光時間の短い行から得られた緑の映像信号を利用して、受光強度に対するダイナミックレンジを拡張したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明における撮像装置及び撮像方法によれば、通常のベイヤー配列のカラー撮像素子を用いて、従来よりも受光強度に対するダイナミックレンジを拡大することができる。また、どちらの行の露光時間を短時間にすべきかを入射光の色温度によって決定するため、露光時間を短くすることによる出力信号レベルの低下に伴うSN比の劣化を低減することができる。さらに、ホワイトバランスの補正ゲインに基づいて、ダイナミックレンジの拡大幅が最大となる露光時間を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明における、ベイヤー配列のカラー撮像素子の構成例を示す図である。
図2】本発明の信号処理プロセスのフローチャートである。
図3】色温度が低い場合の各センサー信号出力と補正後の信号出力の例を示す図である。
図4】実施例1の色温度が低い場合の各信号出力の例を示す図である。
図5】実施例1の色温度が高い場合の各信号出力の例を示す図である。
図6】実施例2の色温度が低い場合の各信号出力の例を示す図である。
図7】実施例2の色温度が高い場合の各信号出力の例を示す図である。
図8】固体撮像素子の画素構造の例を示す図である。
図9】固体撮像素子の画素回路の制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態について、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0039】
図1に、本発明の高ダイナミックレンジ撮像装置における、ベイヤー配列のカラー撮像素子100の構成例を示す。
【0040】
撮像素子100の画素部(撮像領域)10には、ベイヤー配列のフィルタが設けられている。ベイヤー配列では、第1の行(実施例では、奇数行)の緑(Godd又はG1)21と赤(R)22、第2の行(実施例では、偶数行)の青(B)23と緑(Geven又はG2)24の4画素で表示系1画素20を構成する色成分となる。なお、本実施例では、奇数行をGRGR・・・、偶数行をBGBG・・・と配列しているが、奇数行と偶数行の配列が反対であっても構わない。
【0041】
図1の垂直走査回路30によって各配線(奇数行:Wodd、又は偶数行:Weven)31〜34につながるゲート電圧印加タイミングをコントロールすることができ、奇数行配線Woddにつながる画素の露光時間をTodd、偶数行配線Wevenにつながる画素の露光時間をTevenとして制御する電子シャッターを行う。各画素から読み出された信号電荷は、列並列アナログ/デジタル変換回路(ADC)40、及び水平読み出し回路50により、読み出し処理がなされる。
【0042】
図2に、本発明の信号処理プロセスのフローチャートを示す。このプロセスの目的は、適切な行に電子シャッターをかけ、露光時間の異なるGodd(G1)とGeven(G2)の出力を加算することで、G信号のダイナミックレンジを広げ、他成分はR,G,Bがバランスをとれるように調整することにある。フローチャートの各ステップを説明する。
【0043】
ステップ1(以下、S1のように表記する。)では、映像のホワイトバランス調整を行う。ホワイトバランスとは、白い被写体が白く映るように色の補正を行う機能である。例えば、理想的な白色の被写体があったとしても、照明が白熱電球だと赤みがかった白、曇天下では青みがかった白に見える。これは照明光源のスペクトル分布の違いによるもので、その違いは色温度によって表現される。一般に色温度は低ければ赤成分が強く、高ければ青成分が強い。ホワイトバランス調整は、白色の被写体を撮影時の各色の信号をRw,Gw,Bwとして、
【数1】
のように成分比が同率になるような係数(補正ゲイン)gR,gBを計算し、出力を補正するプロセスである。このゲイン調整はカメラ操作者によるマニュアル(手動)調整・システムによるオート(自動)調整のどちらも可能である。また、イメージセンサーの外側にカラーバランス測定用センサーを用いてホワイトバランスを調整して係数(補正ゲイン)を取得する方法もある。
【0044】
本件のプロセスでは、先ずS1において、カメラでホワイトバランス調整を行い、赤色と青色への補正ゲインgR,gBを取得する。
【0045】
次に、S2では、S1で得られた補正ゲインgR,gBを評価する。もし1>gR,及び1>gBの様にG信号よりもR,Bの両方の元信号が強い場合、若しくは、0.5>gR,又は0.5>gB の様にR,B信号がG信号の入力より2倍以上高い場合は、本方式による効果はあまり得られないため、この後は、S6に進み、デジタル信号処理部で一般的なホワイトバランス調整に基づく画像作成処理を行う。また、S2の条件を満たさないときは、S3に進む。なお、効果が比較的小さい場合を含んでも良いときは、この評価ステップ(S2)を省略してS3に進むこともできる。
【0046】
次に、S3では、補正ゲインgR,gBを比較する。そして、gR<gBの条件(受光した光の赤成分が青成分より強い)を満たす場合はS4に進み、満たさない場合はS5に進む。
【0047】
S4では、奇数行(Rを含む行)に電子シャッターをかけ、S5では、偶数行(Bを含む行)に電子シャッターをかける。
【0048】
すなわち、S3〜S5では、gR,gBを比較して値の小さい方(色成分が強い方)の色が含まれるセンサーの行に電子シャッターをかける。こうすることにより、色成分の強い方の光は、露光時間を短くしても必要な受光量を確保でき、信号電荷を十分得ることができるため、全体としてノイズに強い画像が得られるとともに、ダイナミックレンジを拡げることができる。
【0049】
なお、後述のように、電子シャッター(露光時間)の設定は、gR,gBを比較して、大きい方(色成分が弱い方)の係数によって、ダイナミックレンジの拡大幅が最大となるシャッタータイミングを決定することができる。
【0050】
その後、S6においてデジタル信号処理を行う。具体的には、デジタル信号処理部では各色のセンサー出力に対して、G信号はダイナミックレンジを広げるため奇数行と偶数行の出力を加算してGodd+Gevenとし、他成分はR,G,Bがバランスをとれるように調整する。以下に電子シャッター制御とデジタル信号処理部の処理内容を示す。
【0051】
[1]色温度が低い(gR<gB)場合のデジタル信号処理
色温度が低い(gR<gB)場合のデジタル信号処理について説明する。この場合は図2のフローチャートに従い、奇数行(Godd,R)に電子シャッターをかける。各画素Godd,Geven,B,Rのセンサー出力電圧をそれぞれVGodd,VGeven,VB,VR、各画素センサーの受光量が飽和する白色光入力強度をそれぞれxodd,xeven,xB,xRとして、飽和時の出力電圧をVmaxとする。
【0052】
図3に、色温度が低い(赤色成分が強い)ときの白色光入力に対するセンサー出力電圧のグラフの例を示す。横軸は白色光入力強度であり、縦軸はセンサー出力電圧である。グラフ1は偶数行の緑(Geven)の光入力強度とセンサー出力電圧の関係を示しており、同様に、グラフ2は奇数行の緑(Godd)、グラフ3は青(B)、グラフ4は赤(R)のセンサーの入出力関係をそれぞれ示している。各画素のセンサー出力は、いずれも出力電圧Vmaxで飽和する。
【0053】
図3は、電子シャッターをTodd/Teven<1/gBの条件(Godd のダイナミックレンジをBのダイナミックレンジよりも広く取る条件)で設定した場合である。各センサー信号入出力のグラフ1〜4に加えて、デジタル信号処理による補正後のG信号(Godd+Geven)のグラフ5と、デジタル信号処理による補正後のB信号(B補正信号)のグラフ6も示されている。G信号(Godd+Geven)のグラフ5から、従来のベイヤー配列のカラー撮像素子を用いて、電子シャッターによりダイナミックレンジをxevenからxoddに拡大できることがわかる。
【0054】
しかし、G信号(Godd+Geven)は、電子シャッターによりダイナミックレンジがxevenからxoddに拡大されているが、B信号はxBで飽和状態に至っているため、B補正信号はxB以上の強度の入力があっても、G信号とバランスを取ることができない。この場合xB以上の強度があると、白がB成分の不足から黄色(G+R)がかってくる。
【0055】
このようにB成分によってGの拡大可能な(有効な)ダイナミックレンジは制限されるから、電子シャッターのタイミングは、B成分(色成分が弱い方)によって制限される。この条件から、ダイナミックレンジの拡大幅が最大となるシャッタータイミングを設定することができる。
【0056】
(1)電子シャッター制御
図3に基づく考察によれば、B成分(色成分が弱い方)が飽和する白色光入力強度(xB)よりも、GやRのダイナミックレンジを広くしても、B成分が飽和する領域は有効活用することができない。また、色温度が低い(R成分が強い)場合であっても、必要以上にR成分の露光時間を短くすることは、信号電荷が小さくなり、ノイズに弱い画像となるから、各画素の露光時間はできるだけ長くすることが望ましい。したがって、B信号が飽和する入力光強度(xB)と、Godd信号が飽和する入力光強度(xodd)とが等しくなる条件で、シャッタータイミングを調整すれば、各センサーの信号電荷を有効に活用でき、ダイナミックレンジの拡大幅が最大となる。
【0057】
すなわち、ダイナミックレンジを最大にする条件は、次式(2)となる。
【0058】
【数2】
【0059】
図4に、この条件時の各センサー信号出力と補正後の出力の関係の例を示す。式(2)の条件により、Godd信号のグラフ2と、B信号のグラフ3とが重なる。B,RともにダイナミックレンジがGodd以上なので、G信号に合わせてデジタル信号処理による補正が可能であり、ダイナミックレンジは電子シャッターをかけない場合のxevenからxB (xodd)へ拡大される。なお、これまでの説明では、偶数行には電子シャッターをかけず、奇数行のみ電子シャッターをかけて、上記式(2)を満足するように露光時間を調整するとしたが、奇数行と偶数行の両方に電子シャッターをかけて、式(2)を満足するように露光時間を調整しても、本発明のダイナミックレンジの拡大は実現できる。ただし、色成分が弱い青色については、電子シャッターをかけるとノイズに弱くなるため、撮像条件(受光強度等)に応じて適宜設定すれば良い。
【0060】
次に、式(2)の条件を満たした時の、G,R,B信号それぞれのデジタル信号処理について以下に示す。
【0061】
(2)G信号のデジタル信号処理について
本実施例においては、デジタル信号処理による補正後のG信号は、奇数行の緑(Godd)と偶数行の緑(Geven)から得られた映像信号を加算(Godd+Geven)する。すなわち、デジタル信号処理後のG信号をVG’として、次式(3)により求める。
【0062】
【数3】
【0063】
グラフ5からわかるように、飽和光入力強度がxevenからxodd となり、ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0064】
(3)R信号のデジタル信号処理について
R信号のセンサー出力はG信号がVG’となったため、出力信号に単純にホワイトバランス取得時のゲインgRをかけてもホワイトバランスを調整することはできない。ところでG信号について、グラフから、次式(4)(5)の関係を読み取ることができる。
【0065】
【数4】
【0066】
【数5】
【0067】
また、フォトダイオード(PD)の飽和に至る光量(受光強度×露光時間×受光面積)が一定であり、ここでは受光面積が一定であること、及び式(2)の関係から、次式(6)が成立する。
【0068】
【数6】
【0069】
ここで、式(6)を式(5)に代入すれば、
【数7】
の関係が成り立つ。以上から、次式(8)が導かれる。
【0070】
【数8】
【0071】
電子シャッターを掛けられている奇数行の画素(Godd,R)の出力は、次式(9)の関係が成り立つ。
【0072】
【数9】
【0073】
したがって、この関係を利用してR信号を補正されたG信号に一致させる。すなわち、ホワイトバランス調整のためにR信号の出力をVR’とすると、次式(10)の条件でVRを補正すれば良い。
【0074】
【数10】
【0075】
(4)B信号のデジタル信号処理について
電子シャッターを掛けられていない偶数行の画素(B)の出力は、次式(11)の関係が成り立つ。
【0076】
【数11】
【0077】
したがって、ホワイトバランス調整のためにB信号の出力をVB’とすると、次式(12)の条件でVBを補正すれば良い。
【0078】
【数12】
【0079】
なお、上記において1>gR>0.5の場合はR信号が先に飽和に至るので、VR’の飽和電圧でホワイトクリップを行う必要があるが、G信号のダイナミックレンジは電子シャッター後のR信号の飽和露光量まで広げることができる。
【0080】
[2]色温度が高い(gR>gB)場合のデジタル信号処理
色温度が高い(gR>gB)場合のデジタル信号処理について説明する。なお、中間(gR=gB)の場合の処理は、色温度が高い場合と低い場合のどちらに従ってもよい。色温度が高い場合は、図2のフローチャートに従って、偶数行(Geven,B)に電子シャッターをかける。色温度が高い場合と同様に考えて、電子シャッター制御、デジタル信号処理プロセスは以下のようになる。
【0081】
(1)電子シャッター制御
電子シャッターのタイミングは、R成分(色成分が弱い方)によって制限される。色温度が低い場合と同様に考えて、ダイナミックレンジを最大にする条件は、次式(13)となる。
【0082】
【数13】
【0083】
図5に、この条件時のセンサー信号出力と補正後の出力の関係の例を示す。式(13)の条件により、Geven信号のグラフ1と、R信号のグラフ4とが重なる。B,RともにダイナミックレンジがGeven以上なので、G信号に合わせてデジタル信号処理による補正が可能であり、ダイナミックレンジは電子シャッターをかけない場合のxoddからxR (xeven)へ拡大される。なお、これまで、奇数行には電子シャッターをかけず、偶数行のみ電子シャッターをかけて、上記式(13)を満足するように露光時間を調整するとしたが、この場合も色温度が低い場合と同様に、奇数行と偶数行の両方に電子シャッターをかけて、式(13)を満足するように露光時間を調整しても、本発明のダイナミックレンジの拡大は実現できる。
【0084】
次に、式(13)の条件を満たした時の、G,R,B信号それぞれのデジタル信号処理について以下に示す。
【0085】
(2)G信号のデジタル信号処理について
色温度が低い場合と同様に、デジタル信号処理後のG信号をVG’として、次式(14)により求める。
【0086】
【数14】
【0087】
グラフ5からわかるように飽和光入力強度をxoddからxevenへとダイナミックレンジを拡大することができる。
【0088】
(3)B信号のデジタル信号処理について
色温度が低い場合のR信号(式(10)を参照。)との対称性から、ホワイトバランスの調整には、B信号の出力をVB’とすると、次式(15)の条件でVBを補正すれば良い。
【0089】
【数15】
【0090】
(4)R信号のデジタル信号処理について
電子シャッターを掛けられていない奇数行の画素(R)の出力は、色温度が低い場合のB信号(式(12)を参照。)との対称性から、ホワイトバランスの調整には、R信号の出力をVR’とすると、次式(16)の条件でVRを補正すれば良い。
【0091】
【数16】
【0092】
なお、上記において1>gB>0.5の場合はB信号が先に飽和に至るので、VB’の飽和電圧でホワイトクリップを行う必要があるが、G信号のダイナミックレンジは電子シャッター後のB信号の飽和露光量まで広げることができる。
【0093】
以上のようなホワイトバランス調整を行うことで電子シャッターを用いてダイナミックレンジを拡大しつつRGBの色信号のバランスを取ることが可能である。また、本方式ではダイナミックレンジ拡大をしてもG信号のSN比がほぼ劣化しないため、Y信号(輝度)の劣化を低減することが可能である。
【実施例2】
【0094】
実施例1では、Godd+Gevenは入力に対して完全な線形ではなく、knee処理のようなグラフ5となってしまう。そこで電子シャッター無しのG信号が飽和した場合、電子シャッター有りのG信号のみを補正した値を出力として取り出せば、G信号にSN比の劣化があるものの簡単に入出力を完全な線形にすることが可能である。
【0095】
実施例2では、G信号を完全に線形にした場合のダイナミックレンジ拡大プロセスを示す。実施例1と各色のデジタル信号処理プロセス以外はすべて共通であるので、色温度が低い場合と高い場合のR,G,Bの信号補正プロセスを中心に説明する。
【0096】
[1]色温度が低い(gR<gB)場合のデジタル信号処理
色温度が低い場合の信号補正プロセスを示す。色温度が低い場合は、図2のフローチャートに従って、奇数行(Godd,R)に電子シャッターをかける。
【0097】
(1)電子シャッター制御
色温度が低い場合の電子シャッター制御は、実施例1と同様に、G信号のダイナミックレンジが最大となるように、次式(17)の条件にすれば良い。なお、撮像条件によっては、奇数行と偶数行の両方に電子シャッターをかけて、式(17)を満足するように露光時間を調整してもよい。
【0098】
【数17】
【0099】
次に、式(17)の条件を満たした時の、G,R,B信号それぞれのデジタル信号処理について以下に示す。
【0100】
(2)G信号のデジタル処理プロセスについて
デジタル信号処理の後のG信号をVG’とすると、
【数18】
と定義することでVG’は完全な線形応答になる。このデジタル信号処理は、露光時間の短い行から得られた緑の映像信号(VGodd)を、所定のゲイン(1+gB)で補正するのと等価な信号処理である。この条件時の各センサー信号出力のグラフ1〜4と補正後の信号出力のグラフ7の関係の例を、図6に示す。
【0101】
(3)R信号のデジタル処理プロセスについて
ホワイトバランスの定義から、次式(19)が成立する。
【0102】
【数19】
【0103】
よって、デジタル信号処理の後のR信号をVR’とすると、次式(20)の条件でVRを補正すれば良い。
【0104】
【数20】
【0105】
(4)B信号のデジタル処理プロセスについて
デジタル信号処理の後のB信号をVB’とすると、次式(21)の条件でVBを補正すれば良い。
【0106】
【数21】
【0107】
なお、上記において1>gR>0.5の場合はR信号が先に飽和に至るので、VR’の飽和電圧でホワイトクリップを行う必要があるが、G信号のダイナミックレンジは電子シャッター後のR信号の飽和露光量まで広げることができる。
【0108】
[2]色温度が高い(gR>gB)場合のデジタル信号処理
色温度が高い場合の信号補正プロセスを示す。なお、中間(gR=gB)の場合の処理は、色温度が高い場合と低い場合のどちらに従ってもよい。色温度が高い場合は、図2のフローチャートに従って、偶数行(Geven,B)に電子シャッターをかける。
【0109】
(1)電子シャッター制御
電子シャッター制御は実施例1と同様に、G信号のダイナミックレンジが最大となるように、次式(22)の条件にすれば良い。なお、撮像条件によっては、奇数行と偶数行の両方に電子シャッターをかけて、式(22)を満足するように露光時間を調整してもよい。
【0110】
【数22】
【0111】
次に、式(22)の条件を満たした時の、G,R,B信号それぞれのデジタル信号処理について以下に示す。
【0112】
(2)G信号のデジタル処理プロセスについて
デジタル信号処理の後のG信号をVG’とすると、
【数23】
と定義することでVG’は完全な線形応答になる。この条件時の各センサー信号出力のグラフ1〜4と補正後の信号出力のグラフ7と関係の例を、図7に示す。
【0113】
(3)B信号のデジタル処理プロセスについて
色温度が低い場合のR信号(式(20)を参照。)との対称性から、デジタル信号処理の後のB信号をVB’とすると、次式(24)の条件でVBを補正すれば良い。
【0114】
【数24】
【0115】
(4)R信号のデジタル処理プロセスについて
色温度が低い場合のB信号(式(21)を参照。)との対称性から、デジタル信号処理の後のR信号をVR’とすると、次式(25)の条件でVRを補正すれば良い。
【0116】
【数25】
【0117】
なお、上記において1>gB>0.5の場合は、B信号が先に飽和に至るので、VB’の飽和電圧でホワイトクリップを行う必要があるが、G信号のダイナミックレンジは電子シャッター後のB信号の飽和露光量まで広げることができる。
【0118】
以上のようなホワイトバランス調整を行うことで、実施例2では、出力信号が完全な線形を保ったままダイナミックレンジを広げることが可能である。
【0119】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロック、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成ブロックやステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 偶数行の緑(Geven)の光入力強度とセンサー出力電圧のグラフ
2 奇数行の緑(Godd)の光入力強度とセンサー出力電圧のグラフ
3 青(B)の光入力強度とセンサー出力電圧のグラフ
4 赤(R)の光入力強度とセンサー出力電圧のグラフ
5 補正後のG信号(Godd+Geven)の光入力強度と出力電圧のグラフ
6 補正後のB信号の光入力強度と出力電圧のグラフ
7 線形補正後の各信号の光入力強度と出力電圧のグラフ
10 画素部
20 表示系1画素
21 緑(Godd)画素
22 赤(R)画素
23 青(B)画素
24 緑(Geven)画素
30 垂直走査回路
40 列並列アナログ/デジタル変換回路(ADC)
50 水平読み出し回路
100 撮像素子
200 画素回路
210 フォトダイオード
220 転送ゲート
230 増幅トランジスタ
240 リセットゲート
250 選択ゲート
260 バイアスゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9