(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の難燃剤組成物について説明する。
上記難燃剤組成物は、(ポリ)リン酸塩を含むリン酸塩系難燃剤であり、下記一般式(1)または下記一般式(3)で表される、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびトリリン酸塩からなる群のうち、トリリン酸塩と、オルソリン酸塩およびピロリン酸塩の少なくともいずれか一方と、を含む。
【0014】
上記一般式(1)中、nは1〜3の数、X
1は下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を表し、pは、0<p≦n+2の関係式を満たす数である。)
【0016】
上記一般式(2)中、Z
1及びZ
2は、同一でも異なっていてもよく、−NR
5R
6基、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基を表し、R
5およびR
6は各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1〜6のアルキル基、または、メチロール基を表す。
【0018】
上記一般式(3)中、rは1〜3の数、Y
1はピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、qは、関係式0<q≦r+2を満たす数である。
【0019】
本明細書において、上記一般式(1)で表される(ポリ)リン酸塩は、トリアジン(ポリ)リン酸塩((ポリ)リン酸とトリアジン誘導体との塩)と呼称し、上記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩は、ピペラジン(ポリ)リン酸塩((ポリ)リン酸とピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンとの塩)と呼称してもよい。
【0020】
上記トリアジン(ポリ)リン酸塩のうち、上記一般式(1)中、nが1の場合がオルソリン酸塩、nが2の場合がピロリン酸塩、nが3の場合がトリリン酸塩を指す。上記ピペラジン(ポリ)リン酸塩のうち、上記一般式(3)中、rが1の場合がオルソリン酸塩、rが2の場合がピロリン酸塩、rが3の場合がトリリン酸塩を指す。
【0021】
また、本明細書において、(ポリ)リン酸とは、リン酸およびポリリン酸のいずれか一方、あるいはリン酸およびポリリン酸の混合物を指す。低分子量のポリリン酸は、リン酸の縮合物であり、縮合度が2のピロリン酸、および縮合度が3のトリリン酸のいずれか一方、あるいはこれらの混合物を指す。
なお、(ポリ)リン酸塩は、重合度または塩の種類が異なる2以上を含んでもよい。
【0022】
上記一般式(2)におけるZ
1及びZ
2で表される炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等が挙げられ、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルコキシ基としては、これらアルキル基から誘導される基が挙げられる。また、Z
1及びZ
2がとり得る−NR
5R
6基におけるR
5及びR
6で表される炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基としては、上記に挙げたアルキル基のうちの炭素原子数1〜6のものが挙げられる。
【0023】
上記一般式(2)中、X
1で表されるトリアジン誘導体の具体的な例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ノニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−エトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−プロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0024】
上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)で表されるピロリン酸塩(ピロリン酸トリアジン)を含むことが好ましい。また、上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)中のX
1がメラミンであるピロリン酸塩(ピロリン酸トリアジン)を含むことが好ましい。これにより、安定的に耐熱性を向上できる。
【0025】
上記一般式(3)中、Y
1で表されるジアミンは、R
1R
2N(CH
2)
mNR
3R
4、ピペラジン又はピペラジン環を含むジアミン等が挙げられる。R
1〜R
4は同一でも異なってもよく、炭素原子数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。
【0026】
上記R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基としては、例えば、上記Z
1及びZ
2で表されるアルキル基の具体例として挙げたもののうちの炭素原子数1〜5のものが挙げられる。
上記ピペラジン環を含むジアミンとしては、例えば、ピペラジンの2、3、5、6位の1箇所以上をアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のもの)で置換した化合物;ピペラジンの1位及び/又は4位のアミノ基をアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のもの)で置換した化合物が挙げられる。
【0027】
上記一般式(3)におけるY
1で表されるジアミンとしては、具体的には、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−ジエチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1、7−ジアミノへプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、ピペラジン、trans−2,5−ジメチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
【0028】
また、上記難燃剤組成物は、上記一般式(3)中のY
1がピペラジンであるピロリン酸塩(ピロリン酸ピペラジン)を含むことが好ましい。これにより、安定的に耐熱性を向上できる。
【0029】
ここで、上記(ポリ)リン酸塩の製造工程について説明する。
上記トリアジン(ポリ)リン酸塩は、(ポリ)リン酸または(ポリ)リン酸塩と、上記トリアジン誘導体とを反応させることで得られる。例えば、(ポリ)リン酸とメラミンを任意の反応比率で反応させる、または、(ポリ)リン酸ナトリウムとメラミンを加えた後、塩酸で中和することで、トリアジン(ポリ)リン酸塩を得ることができる。
【0030】
また、上記ピペラジン(ポリ)リン酸塩は、(ポリ)リン酸または(ポリ)リン酸塩と、上記ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンとを反応させることで得られる。例えば、(ポリ)リン酸または(ポリ)リン酸ナトリウムと、ピペラジンまたは上記ピペラジン環を含むジアミンとを水中又はメタノール水溶液中で反応させて、水難溶性の沈殿として、ピペラジン(ポリ)リン酸塩を得ることができる。
【0031】
上記(ポリ)リン酸塩の製造工程において、(ポリ)リン酸または(ポリ)リン酸塩は、少なくとも一部にトリリン酸または、トリリン酸塩を含むものを使用できる。
また、反応工程後、さらに加熱処理を行ってもよい。加熱処理を適温で実施することで、オルトリン酸やトリリン酸の縮合反応を進めることができる。加熱処理の温度は、例えば、150℃〜280℃、好ましくは200℃〜250℃である。また、加熱時間は、例えば、1h〜30h程度としてもよい。加熱温度や加熱時間などの加熱処理はマイルドな条件が好ましい。加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎると脱水縮合反応が進行し、トリリン酸塩が、テトラリン酸塩やそれ以上に縮合したポリリン酸塩となる恐れがある。
また、反応工程後に洗浄や精製を行ってもよい。少量の水で洗浄することにより、比較的溶解度の高いオルトリン酸塩やピロリン酸塩を洗浄し、トリリン酸塩の比率を高めることができる。
また、減圧または真空等の乾燥処理によって水を十分に除去することができる。これにより、トリリン酸塩が加水分解されることを抑制できる。
また、塩や縮合度が異なる2種以上の化合物、あるいは、(ポリ)リン酸塩由来の(ポリ)リン酸の各ピーク面積比率が異なる2種以上の化合物を適当な比率で組み合わせてブレンドし、上記難燃剤組成物を得てもよい。
【0032】
以上により、上記トリアジン(ポリ)リン酸塩や上記ピペラジン(ポリ)リン酸塩が得られる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような(ポリ)リン酸塩を含む難燃剤組成物は、樹脂材料の難燃性を向上させることができる。
【0033】
本発明者の知見によれば、難燃剤成分として、トリリン酸塩を用いることで、低分子量のリン酸塩を含む難燃剤組成物の耐熱性を制御できることが見出された。このような知見に基づきさらに鋭意研究した結果、オルソリン酸塩またはピロリン酸塩を含む難燃剤組成物中のトリリン酸塩の含有割合について、所定値以上かつ所定値以下とすることで、難燃剤組成物の耐熱性を向上できることが判明した。
【0034】
このような難燃剤組成物を用いることで、加熱加工時において、その一部が分解・揮発されることを抑制できるため、揮発物によって引き起こされる加工機の内部の汚染を低減できる。加熱加工とは、難燃剤組成物を樹脂(熱可塑性樹脂)と混合する際、加熱して混合する一般的な加工方法を言う。
また、本実施形態の難燃剤組成物を用いることで、揮発物に起因する発泡等の成型不良を抑制することができる、あるいは、分解物・揮発物による作業環境の悪化を抑制することが可能になる。
【0035】
通常、(ポリ)リン酸塩の分子量が大きくなれば、加熱による揮発性も低くなると考えるものだが、本発明者の検討の結果、これとは反対の結果が示されることが分かった。すなわち、詳細なメカニズムは定かではないが、オルソリン酸塩またはピロリン酸塩よりも分子量が大きい、トリリン酸塩の含有量を過剰量とした場合、これらの混合物の揮発量が増大してしまうことが分かった。
【0036】
したがって、オルソリン酸塩またはピロリン酸塩を含む難燃剤組成物中において、トリリン酸塩の含有割合の下限値のみならず、前述のとおり、上限値を適切に設定することで、加熱による揮発量を低減でき、良好な耐熱性を有する難燃剤組成物を実現できることが見出された。
【0037】
本実施形態において、上記難燃剤組成物中のオルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびトリリン酸塩等の(ポリ)リン酸塩の含有量は、イオンクロマトグラフィー法を用いて測定された、対応する(ポリ)リン酸のピーク面積比率から算出することができる。
【0038】
上記イオンクロマトグラフィー法について説明する。
まず、下記の測定条件のイオンクロマトグラフィー法を用いて、難燃剤組成物中の、オルソリン酸塩由来のオルソリン酸、ピロリン酸塩由来のピロリン酸、およびトリリン酸塩由来のトリリン酸のピーク面積を測定する。
続いて、オルソリン酸のピーク面積をO、ピロリン酸のピーク面積をP、トリリン酸のピーク面積をTとし、O+P+Tの面積合計100%を基準として、O,P,Tの各ピーク面積比(%)を算出する。
【0039】
(測定条件)
・測定装置:イオンクロマトグラフICS−2100(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)
・カラム:Dionex IonPac AS−19(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)
・検出器:電気伝導度検出器
・溶出条件:1.0mmol/Lの水酸化カリウム水溶液(0分)→60.0mmol/Lの水酸化カリウム水溶液(42分)。水酸化カリウム水溶液(溶離液)の濃度は、以下のように変化させた。
0分〜1分まで:1.0mmol/Lから10.0mmol/Lまでグラジエント。
1分超〜10分まで:10.0mmol/Lで一定。
10分超〜15分まで:10.0mmol/Lから60.0mmol/Lまでグラジエント。
15分超〜42分まで:60.0mmol/Lで一定。
・流速:1.0mL/min
・試料注入量:25μL
・カラム温度:35℃
【0040】
また、標準物質として、オルソリン酸、ピロリン酸、およびトリリン酸、またはこれらの塩を使用する。標準物質について、上記難燃剤組成物に対するイオンクロマトグラフィー法と同じ測定条件を用いて、オルソリン酸、ピロリン酸、およびトリリン酸の3つのピークにおける保持時間(溶出時間)を測定する。測定された保持時間に基づいて、上記難燃剤組成物中の、オルソリン酸、ピロリン酸、およびトリリン酸の3つのピークを同定できる。
【0041】
上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)または上記一般式(3)で表される、トリリン酸塩とオルソリン酸塩とを少なくとも含む場合、T、Oが下記式(I)を満たすものである。
4.0×10
−2%≦T/(T+O)≦95.0% ・・・式(I)
【0042】
上記式(I)中、T/(T+O)の下限値は、4.0×10
−2%以上、好ましくは2.0×10
−1%以上、より好ましくは1.0%以上である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。一方、T/(T+O)の上限値は、95.0%以下、好ましくは94.0%以下、より好ましくは91.0%以下である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。
【0043】
上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)または上記一般式(3)で表される、トリリン酸塩とピロリン酸塩とを少なくとも含む場合、T、Pが下記式(II)を満たすものである。
1.3×10
−2%≦T/(T+P)≦25.0% ・・・式(II)
【0044】
上記式(II)中、T/(T+P)の下限値は、1.3×10
−2%以上、好ましくは3.0×10
−2%以上、より好ましくは6.0×10
−2%以上である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。一方、T/(T+O)の上限値は、25.0%以下、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。
【0045】
上記難燃剤組成物が、上記一般式(1)または上記一般式(3)で表される、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびトリリン酸塩を含んでもよい。この場合、難燃剤組成物は、O、P、Tが、下記式(III)を満たすことが好ましい。
1.0×10
−2%≦T/(O+P+T)≦25.0% ・・・式(III)
【0046】
上記式(III)中、T/(O+P+T)の下限値は、例えば、1.0×10
−2%以上、好ましくは3.0×10
−2%以上、より好ましくは6.0×10
−2%以上である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。一方、T/(O+P+T)の上限値は、例えば、25.0%以下、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。
【0047】
また、上記難燃剤組成物は、O、Tが、下記式(IV)を満たしてもよい。
4.0×10
−4≦T/O≦20.0 ・・・式(IV)
【0048】
上記式(IV)中、T/Oの下限値は、例えば、4.0×10
−4以上、好ましくは5.0×10
−3以上、より好ましくは1.0×10
−2以上である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。一方、T/Oの上限値は、例えば、20.0以下、好ましくは18.0以下、より好ましくは15.0以下である。これにより、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。
【0049】
また、上記難燃剤組成物は、O、P、Tが、下記一般式(V)を満たしてもよい。
75.0%≦P/(O+P+T)≦99.0% ・・・一般式(V)
【0050】
上記一般式(V)中、P/(O+P+T)の下限値は、例えば、75.0%以上、好ましくは76.0%以上、より好ましくは77.0%以上である。一方、P/(O+P+T)の上限値は、例えば、99.0%以下、好ましくは98.5%以下である。このような数値範囲内とすることで、難燃剤組成物の耐熱性を安定的に向上できる。
【0051】
本実施形態では、たとえば難燃剤組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、難燃剤組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記O、P、Tで表される比率を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、加熱温度、加熱時間、洗浄方法または乾燥方法を適切に調整すること、トリリン酸またはトリリン酸塩を含む原料を使用すること、2以上の化合物のブレンド条件を適切に選択すること等が、上記O、P、Tで表される比率を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0052】
また、上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)中のX
1がメラミンであるピロリン酸塩(ピロリン酸メラミン)と、上記一般式(3)中のY
1がピペラジンであるピロリン酸塩(ピロリン酸ピペラジン)とを含むことが好ましい。これにより、より一層難燃性を高めることが可能である。なお、両者の含有比率は適切に選択してよい。
【0053】
また、上記一般式(1)または上記一般式(3)で表される、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびトリリン酸塩の合計含有量の下限値は、上記難燃剤組成物100重量%に対して、例えば、20重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。これにより、樹脂材料の難燃性を高められる。また、難燃剤組成物の耐熱性を向上できる。一方、上記オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびトリリン酸塩の合計含有量の上限値は、特に限定されないが、上記難燃剤組成物100重量%に対して、例えば、100重量%以下でもよく、99重量%以下でもよく、95重量%以下でもよい。これにより、各種の用途に応じた特性とのバランスを図ることができる。
【0054】
上記難燃剤組成物は、上記一般式(1)または上記一般式(3)で表される(ポリ)リン酸塩の他に、その他の(ポリ)リン酸塩を含んでもよい。その他の(ポリ)リン酸塩としては、縮合度が4以上の高縮合度である高分子量のポリリン酸塩、公知の(ポリ)リン酸アンモニウムを用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、上記難燃剤組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、助剤、表面処理剤、粉塵抑制剤等の添加剤を含んでもよい。
上記難燃剤組成物は、上記(ポリ)リン酸塩と、上記添加剤とを混合することで得ることができる。混合する方法としては、一般に用いられる公知方法をそのまま適用することができる。
【0056】
上記難燃剤組成物における添加剤の含有量は、(ポリ)リン酸塩100重量部に対して、たとえば、0.001〜15重量部であり、好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部が好ましい。このような数値範囲とすることにより、添加剤の効果の向上が得られる。
【0057】
上記難燃剤組成物は、助剤を含んでもよい。
上記助剤としては、難燃助剤、ドリップ防止助剤、加工性助剤等が挙げられる。
【0058】
上記難燃助剤は、金属酸化物や多価アルコール化合物を含むことができる。これにより、樹脂の難燃性を向上できる。
【0059】
上記金属酸化物は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、二酸化錫、二酸化鉛、酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化カドミウム等が挙げられる。この中でも、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム及び酸化ケイ素を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これにより、樹脂の難燃性を向上できる。また、粉粒状の難燃剤組成物中において凝集が発生することを抑制できる。なお、難燃性の観点から、酸化亜鉛が好ましい。
【0060】
上記酸化亜鉛は、表面処理されていてもよく、表面処理されてなくてもよい。
上記酸化亜鉛としては、例えば、酸化亜鉛1種(三井金属工業(株)製)、部分被膜型酸化亜鉛(三井金属工業(株)製)、ナノファイン50(平均粒径0.02μmの超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)、ナノファインK(平均粒径0.02μmの珪酸亜鉛被膜した超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)等の市販品を使用してもよい。
【0061】
上記多価アルコールは、複数のヒドロキシル基が結合している化合物であり、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール 、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等である。これら多価アルコール化合物のうち、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等の、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物の群から選ばれる一種以上が好ましく、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物が特に好ましく、ジペンタエリスリトールが最も好ましい。また、THEIC及びソルビトールも好適に使用できる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記ドリップ防止助剤としては、層状ケイ酸塩、フッ素系ドリップ防止助剤、およびシリコンゴム類が挙げられる。これにより、樹脂の燃焼時におけるドリップを抑制できる。
【0063】
上記層状ケイ酸塩は、天然又は合成のいずれでもよく、特に限定されるものではない。
上記層状ケイ酸塩として、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ、タルク等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ドリップ防止の観点から、これらの中でもサポナイト又はタルクが好ましく、価格等の経済性の観点から、特にタルクが好ましい。
【0064】
上記層状のケイ酸塩とは、層状のケイ酸塩鉱物であり、層間にカチオンを有していてもよい。
上記カチオンは、金属イオンであっても良いし、その一部又は全部が、有機カチオン、(第4級)アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等の、金属イオン以外のカチオンであっても良い。
上記金属イオンとして、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン等が挙げられる。
上記有機カチオン又は第4級アンモニウムカチオンとして、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムカチオン、ステアリルトリメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、ジステアリルジメチルアンモニウムカチオン、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウムカチオン、ジステアリルジベンジルアンモニウムカチオン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記フッ素系ドリップ防止助剤の具体例として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−n−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ−t−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−2−エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物又はパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。中でも、ドリップ防止性の点から、ポリテトラフルオロエチレンを用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記加工助剤としては、公知の加工助剤の中から適宜選択することができるが、アクリル酸系加工助剤を含んでもよい。
【0067】
上記アクリル酸系加工助剤としては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;前記アルキルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとの共重合体;前記アルキルメタクリレートと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物との共重合体;前記アルキルメタクリレートと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等との共重合体等を挙げることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記難燃剤組成物は、表面処理剤を含んでもよい。
上記表面処理剤としては、例えば、シリコーンオイルやシランカップリング剤等が挙げられる。
上記シリコーンオイルを用いることにより、樹脂中への難燃剤組成物の分散性を高められる。また、耐水性を改善できる。
【0069】
上記シリコーンオイルは、ポリシロキサン骨格を有する公知のシリコーンオイルであれば特に限定なく使用できる。上記シリコーンオイルは、直鎖のポリシロキサン骨格を有するポリマーでもよく、ポリシロキサンの側鎖が全てメチル基でもよく、側鎖の一部がフェニル基を有してもよく、側鎖の一部が水素を有してもよい。これらのシリコーンオイルは、エポキシ変性、アミノ変性、カルボキシ変性などによって、その一部が変性されていてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
上記表面処理剤の添加方法としては、例えば、粉粒状の難燃性組成と表面処理剤とを混合する方法、表面処理剤を、噴霧乾燥して添加・混合する方法等が挙げられる。また、上記表面処理剤は、難燃剤組成物を構成する成分の一部を表面処理することで、難燃剤組成物に添加してもよい。
【0071】
上記シランカップリング剤としては、例えば、アルケニル基を有するシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられ、アクリル基を有するシランカップリング剤として、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、メタクリル基を有するシランカップリング剤として、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられ、エポキシ基を有するシランカップリング剤として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられ、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等が挙げられ、イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤として、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられ、メルカプト基を有するシランカップリング剤として、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、ウレイド基を有するシランカップリング剤として、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、スルフィド基を有するシランカップリング剤として、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられ、チオエステル基を有するシランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランが挙げられ、イソシアネート基を有するシランカップリング剤として、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらシランカップリング剤の中でも、難燃性、ハンドリング性、さらには難燃剤粉末の凝集を防止し、保存安定性向上の点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましく、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシランがより好ましい
【0072】
上記難燃剤組成物は、粉塵抑制剤を含んでもよい。
上記粉塵抑制剤としては、脂肪族ジカルボン酸エーテルエステル化合物または上述のシランカップリング剤等が挙げられる。
【0073】
上記脂肪族ジカルボン酸エーテルエステル化合物は、下記一般式(4)で表される化合物を含んでもよい。これにより、粉粒状の難燃剤組成物の粉塵性を抑制できる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
上記一般式(4)中、nは2〜6の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、R
1は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。
上記一般式(4)において、炭素原子数1〜6のアルキル基としては、直鎖のアルキル基でも分岐のアルキル基でもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル基等が挙げられる。R
1は、難燃性と、特にハンドリング性と保存安定性の点から、ブチル基が好ましい。
上記一般式(4)において、難燃性と、特にハンドリング性と保存安定性の点から、nは4が好ましい。また上記一般式(4)において、難燃性と、特にハンドリング性と保存安定性の点から、mは2が好ましい。
【0076】
上記難燃剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、通常、熱可塑性樹脂を改質するために使用される添加剤が使用できるが、例えば、抗酸化剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、その他の難燃剤・難燃助剤、強化材、造核剤(透明化剤)、架橋剤、帯電防止剤、金属石鹸、充点剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
なお、上述の助剤、表面処理剤、粉塵抑制剤およびその他の成分の1または2以上については、上記難燃剤組成物に配合してもよいが、難燃剤組成物および熱可塑性樹脂を含む難燃性樹脂組成物に配合してもよい。
【0078】
次に、本実施形態の難燃性樹脂組成物について説明する。
上記難燃性樹脂組成物は、上述の難燃剤組成物と熱可塑性樹脂とを含む。
【0079】
上記難燃剤組成物の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常、10〜400重量部であり、好ましくは15〜200重量部であり、より好ましくは20〜70重量部の範囲内とすることができる。これにより、熱可塑性樹脂の改質効果を十分に得ることができる。
【0080】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、含ハロゲン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
さらに上記熱可塑性樹脂の例を挙げると、例えば、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルフォン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂およびこれらのブレンド物を用いることができる。
【0082】
また、上記熱可塑性樹脂は、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ナイロン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーであってもよく、併用してもよい。
【0083】
上記熱可塑性樹脂の具体例としては、特に限定されないが、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ3−メチルペンテン、ポリ4−メチルペンテン、エチレン/プロピレンブロックまたはランダム共重合体などのα−オレフィン重合体等のポリオレフィン系高分子;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の熱可塑性直鎖ポリエステル系高分子;ポリフェニレンスルフィド等のポリスルフィド系高分子;ポリカプロラクトン等のポリ乳酸系高分子;ポリヘキサメチレンアジパミド等の直鎖ポリアミド系高分子;シンジオタクチックポリスチレン等の結晶性のポリスチレン系高分子等が挙げられる。
【0084】
上記難燃性樹脂組成物は、上記難燃剤組成物に加えて、必要に応じて、上述の助剤、表面処理剤、粉塵抑制剤およびその他の成分からなる添加剤から選ばれる一または二以上を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
上記難燃性樹脂組成物における添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、たとえば、0.001〜15重量部であり、好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部が好ましい。このような数値範囲とすることにより、添加剤の効果の向上が得られる。
【0086】
次に、上記難燃性樹脂組成物の製造方法について説明する。
上記難燃性樹脂組成物は、上述の難燃剤組成物と熱可塑性樹脂中とを混合することで得ることができる。必要に応じて、上記添加剤を混合してよい。添加剤は、難燃剤組成物中に混合してもよく、難燃剤組成物と熱可塑性樹脂との混合物中に混合してもよい。
【0087】
混合する方法としては、一般に用いられる公知方法をそのまま適用することができる。例えば、混練機を用いて、難燃剤組成物、熱可塑性樹脂、必要に応じて添加剤を混合する。混合機としては、例えば、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型混合機、W型混合機、スーパーミキサー、ナウターミキサーなどが挙げられる。
【0088】
上記難燃性樹脂組成物は、各種形態で使用することができるが、たとえば、ペレット状、顆粒状、粉末状のいずれでもよい。取り扱い性の観点から、ペレット状が好ましい。
【0089】
次に、上記難燃性樹脂組成物を用いて成形することで、成形品を製造することができる。
【0090】
上記成形方法としては、特に限定されるものではなく、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、回転成形、真空成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、スラッシュ成形法、ディップ成形法、発泡成形法等が挙げられる。この中でも、射出成形法、押出成形法、ブロー成型法が好ましい。
これにより、樹脂板、シート、フィルム、異形品等の種々の形状の成形体が製造できる。
【0091】
上記難燃性樹脂組成物を用いてなる成形品は、各種の用途に用いることができるが、例えば、電気・電子部品、機械部品、光学機器、建築部材、自動車部品及び日用品等、各種の用途に利用することができる。この中でも、難燃性の観点から、電気・電子部品に好適に用いることができる。
【0092】
上記難燃性樹脂組成物及びその成形体は、例えば、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。具体的には、本発明の難燃性合成樹脂組成物及びその成形体を、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器等に用いることができる。
【0093】
上記難燃性樹脂組成物及びその成形体は、例えば、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組及び繰形、窓及びドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の、自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅等の材料、建築用材料や土木材料、衣料、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の、生活用品、スポーツ用品等の各分野において使用することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 下記一般式(1)または下記一般式(3)で表される、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびトリリン酸塩からなる群のうち、
前記トリリン酸塩と、
前記オルソリン酸塩および前記ピロリン酸塩の少なくともいずれか一方と、
を含む、難燃剤組成物であって、
当該難燃剤組成物をイオンクロマトグラフィー法で測定し、
前記オルソリン酸塩由来のオルソリン酸のピーク面積をO、
前記ピロリン酸塩由来のピロリン酸のピーク面積をP、
前記トリリン酸塩由来のトリリン酸のピーク面積をTとしたとき、
T、Oが下記式(I)を満たす、または、
T、Pが下記式(II)を満たす、
難燃剤組成物。
4.0×10−2%≦T/(T+O)≦95.0% ・・・式(I)
1.3×10−2%≦T/(T+P)≦25.0% ・・・式(II)
【化1】
(上記一般式(1)中、nは1〜3の数、X1は下記一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を表し、pは、0<p≦n+2の関係式を満たす数である。)
【化2】
(上記一般式(2)中、Z1及びZ2は、同一でも異なっていてもよく、−NR5R6基、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基を表し、R5およびR6は各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1〜6のアルキル基、または、メチロール基を表す。)
【化3】
(上記一般式(3)中、rは1〜3の数、Y1はピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、qは、関係式0<q≦r+2を満たす数である。)
2. 1.に記載の難燃剤組成物であって、
当該難燃剤組成物が、前記オルソリン酸塩、前記ピロリン酸塩、および前記トリリン酸塩を含み、
O、P、Tが、下記式(III)を満たす、難燃剤組成物。
1.0×10−2%≦T/(O+P+T)≦25.0% ・・・式(III)
3. 2.に記載の難燃剤組成物であって、
O、Tが、下記式(IV)を満たす、難燃剤組成物。
4.0×10−4≦T/O≦20.0 ・・・式(IV)
4. 2.または3.に記載の難燃剤組成物であって、
O、P、Tが、下記一般式(V)を満たす、難燃剤組成物。
75.0%≦P/(O+P+T)≦99.0% ・・・一般式(V)
5. 1.〜4.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
上記一般式(1)で表される前記ピロリン酸塩を含む、難燃剤組成物。
6. 1.〜5.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
上記一般式(1)中のX1がメラミンである前記ピロリン酸塩を含む、難燃剤組成物。
7. 1.〜6.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
上記一般式(3)中のY1がピペラジンである前記ピロリン酸塩を含む、難燃剤組成物。
8. 1.〜7.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
上記一般式(1)中のX1がメラミンである前記ピロリン酸塩と、
上記一般式(3)中のY1がピペラジンである前記ピロリン酸塩と、
を含む、難燃剤組成物。
9. 1.〜8.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
前記オルソリン酸塩、前記ピロリン酸塩、および前記トリリン酸塩の合計含有量は、当該難燃剤組成物100重量%に対して、20重量%以上である、難燃剤組成物。
10. 1.〜9.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
助剤を含む、難燃剤組成物。
11. 1.〜10.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
表面処理剤を含む、難燃剤組成物。
12. 1.〜11.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物であって、
粉塵抑制剤を含む、難燃剤組成物。
13. 1.〜12.のいずれか一つに記載の難燃剤組成物と、
熱可塑性樹脂と、
を含む、難燃性樹脂組成物。
14. 13.に記載の難燃性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂を含む、難燃性樹脂組成物。
15. 13.または14.に記載の難燃性樹脂組成物を用いてなる成形品。
16. 13.または14.に記載の難燃性樹脂組成物を用いて成形品を製造する製造方法。
【実施例】
【0095】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない
【0096】
<(ポリ)リン酸塩Aの合成>
ジムロート冷却器を取り付けた5L五口フラスコに無水ピペラジン100.0g(1.16mol)、水2.5Lを入れ、100℃に加熱した。そこに75%リン酸水溶液304.0g(2.33mol)を4時間かけて滴下した後、100℃で5時間撹拌した。その後、ジムロート冷却器をリービッヒ冷却器に付け替え、水約2Lを留去した。氷浴で3℃に冷却し、析出した結晶をろ過により回収し、真空下110℃で4時間乾燥させて、(ポリ)リン酸塩A 247.2gを得た。
【0097】
<(ポリ)リン酸塩Bの合成>
(ポリ)リン酸塩A 1.2gを入れた試験管を、250℃に加熱したアルミブロックバスに入れ、120分保持し、(ポリ)リン酸塩B 1.1gを得た。
【0098】
<(ポリ)リン酸塩Cの合成>
2Lビーカーに超純水300mLと陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学、2.0meq/mL)150mLを入れ、氷浴で1℃以下に冷却した。そこに三リン酸五ナトリウム19.0gを加え、1.5時間撹拌した後、濾過により陽イオン交換樹脂を除いた。イオン交換を完結させるため、陽イオン交換樹脂100mLを充填したカラム管に溶液を通液し、800mLの超純水でカラム内の溶液を流出させた。通液させた溶液にピペラジン6.60gを加え、室温で3時間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、30℃以下で水を完全に留去し、白色固体を得た。得られた白色固体を水25mL、続いてアセトン100mLで洗浄し、真空下室温で乾燥させて、(ポリ)リン酸塩C 8.2gを得た。
【0099】
<(ポリ)リン酸塩Dの合成>
ジムロート冷却器を取り付けた5L五口フラスコにメラミン60.0g(0.47mol)、水2.5Lを入れ、100℃に加熱した。そこに75%リン酸水溶液68.3g(0.52mol)を3時間かけて滴下した後、100℃で5時間撹拌した。その後、ジムロート冷却器をリービッヒ冷却器に付け替え、水約2Lを留去した。室温まで冷却し、析出した結晶をろ過により回収し、真空下110℃で4時間乾燥させて、(ポリ)リン酸塩D 95.0gを得た。
【0100】
<(ポリ)リン酸塩Eの合成>
1Lフラスコにピロリン酸ナトリウム十水和物169.4g(純度99%<)、メラミン95.8g(0.76mol)、水600mLを入れ、35%塩酸158.3g(1.52mol)を3時間かけて滴下し、3時間撹拌した。固体をろ過により回収し、約1Lの水で洗浄した。得られた固体を真空下70℃で10時間乾燥させて、(ポリ)リン酸塩E 146.8gを得た。
【0101】
<(ポリ)リン酸塩Fの合成>
(ポリ)リン酸塩E 1.2gを入れた試験管を、230℃に加熱したアルミブロックバスに入れ、1500分保持し、(ポリ)リン酸塩F 1.1gを得た。
【0102】
得られた(ポリ)リン酸塩A〜Fについて、下記の測定条件のイオンクロマトグラフィー法を用いて、オルソリン酸、ピロリン酸、およびトリリン酸のピーク面積を測定した。
オルソリン酸塩由来のオルソリン酸のピーク面積をO、ピロリン酸塩由来のピロリン酸のピーク面積をP、トリリン酸塩由来のトリリン酸のピーク面積をTとした。
O+P+Tの面積合計を100%としたときの、O,P,Tの各ピーク面積比(%)を表1に示す。
【0103】
なお、下記の標準物質を使用して、上記と同じ測定条件でイオンクロマトグラフィー法を用いて、オルソリン酸、ピロリン酸、およびトリリン酸の3つのピークにおける保持時間(溶出時間)を測定した。測定された保持時間に基づいて、(ポリ)リン酸塩A〜Fを用いたときの、オルソリン酸、ピロリン酸、およびトリリン酸の3つのピークを同定した。
【0104】
<イオンクロマトグラフィー法>
(測定条件)
・測定装置:イオンクロマトグラフICS−2100(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)
・カラム:Dionex IonPac AS−19(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)
・検出器:電気伝導度検出器
・溶出条件:1.0mmol/Lの水酸化カリウム水溶液(0分)→60.0mmol/Lの水酸化カリウム水溶液(42分)。水酸化カリウム水溶液(溶離液)の濃度は、以下のように変化させた。
0分〜1分まで:1.0mmol/Lから10.0mmol/Lまでグラジエント。
1分超〜10分まで:10.0mmol/Lで一定。
10分超〜15分まで:10.0mmol/Lから60.0mmol/Lまでグラジエント。
15分超〜42分まで:60.0mmol/Lで一定。
・流速:1.0mL/min
・試料注入量:25μL
・カラム温度:35℃
【0105】
(標準物質)
・リン標準液(P:1000mg/l、KH
2PO
4 in H
2O)、和光純薬社製
・ピロリン酸ナトリウム十水和物(純度99%<)、和光純薬社製
・三リン酸五ナトリウム、和光純薬社製
【0106】
【表1】
【0107】
<難燃剤組成物の調製>
得られた(ポリ)リン酸塩A〜Fを用いて、下記の表2に示す配合比率(重量%)で混合して、難燃剤組成物(サンプル1〜19)を14g得た。
【0108】
【表2】
【0109】
得られたサンプル1〜19の難燃剤組成物について、上記の<イオンクロマトグラフィー法>を用いて、O,P,Tを測定し、O+P+Tの面積合計を100%としたときの、それぞれのピーク面積比(%)を算出した。結果を表3に示す。
【0110】
得られたO,P,Tの測定結果を踏まえ、サンプル1〜19の難燃剤組成物について、サンプル4〜16を実施例1〜13、サンプル1〜3および17〜19を比較例1〜6として使用した。
【0111】
【表3】
【0112】
各実施例、各比較例の難燃剤組成物について、下記の評価項目に基づいて評価を実施した。
【0113】
<耐熱性>
得られた各実施例・比較例の難燃剤組成物を5mg秤量し、測定試料とした。
株式会社リガク製サーモプラス2/(TG−DTAシリーズ)を用いて、窒素雰囲気下(流量:200ml/min)、測定試料:5mg、昇温速度:10℃/minの条件で、25℃から250℃に到達した後、250℃で30分間保持した(加熱処理)。このときの測定試料の重量(加熱処理後の測定試料の重量)を測定した。得られた加熱処理前後の測定試料の重量を用い、下記式により、熱重量分析(TGA)に基づく揮発量(%)を算出した。結果を表3に示す。
揮発量(%)=[1−(加熱処理後の測定試料の重量/(加熱処理前の測定試料の重量)]×100
【0114】
得られた揮発量を下記の評価基準に基づいて評価した。
○:揮発量が3.0%以下である
△:揮発量が3.0%超え4.0%以下である
×:揮発量が4.0%超である
【0115】
<難燃性>
ポリプロピレン(三井化学株式会社製、射出成形用グレード)100重量部にステアリン酸カルシウム(滑剤)0.1重量部、テトラキス[3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル]メタン(フェノール系酸化防止剤)0.1重量部、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト(リン系酸化防止剤)0.1重量部を配合して得られたポリプロピレン樹脂組成物に、得られた実施例1〜13の難燃剤組成物を43重量部配合して、200〜230℃でプレス成型し、厚さ1.6mmの試験片を得た。
得られた試験片を用いて、下記に準拠したUL−94V試験の測定を行った。
【0116】
(難燃性UL−94V試験)
UL−94規格:長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間開始し、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
【0117】
1回目と2回目の燃焼時間、綿着火の有無などから上述のUL−94規格にしたがって燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV−0が最高のものであり、以下にV−1、V−2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクの何れにも該当しないものはNRとする。
【0118】
上記難燃性UL−94V試験の結果、実施例5は、実施例1,2よりも良好な難燃性を示し、実施例3,4,6〜13は、実施例5よりも良好な難燃性(V−0)を示した。この結果から、(ポリ)リン酸塩の中でも、メラミン(ポリ)リン酸単独、ピペラジン(ポリ)リン酸単独、ピペラジン(ポリ)リン酸およびメラミン(ポリ)リン酸の混合品の順で、難燃性が向上することが分かった。
【0119】
実施例1〜13の難燃剤組成物は、比較例1〜6と比べて、耐熱性に優れる結果が示された。
このような難燃剤組成物は、熱可塑性樹脂の難燃性を向上できることから、難燃剤として好適に利用できることが分かった。
【解決手段】本発明の難燃剤組成物は、所定のオルソリン酸塩、ピロリン酸塩、およびトリリン酸塩からなる群のうち、トリリン酸塩と、オルソリン酸塩およびピロリン酸塩の少なくともいずれか一方と、を含むものであって、当該難燃剤組成物をイオンクロマトグラフィー法で測定し、オルソリン酸塩由来のオルソリン酸のピーク面積をO、ピロリン酸塩由来のピロリン酸のピーク面積をP、トリリン酸塩由来のトリリン酸のピーク面積をTとしたとき、T、Oが4.0×10