(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の外部から前記反応容器に前記金属シリコン粉体を導く導入流路であり、
前記導入流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の下部から取り出される前記金属シリコン粉体が流通する導出流路であり、
前記導出流路は、前記反応容器と前記反応容器の下部から取り出される前記金属シリコン粉体を収容する収容槽との間にあり、
前記導出流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことを特徴とする請求項2または3に記載の製造方法。
前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の上部から排出される前記金属シリコン粉体が流通する排出流路であり、
前記排出流路は、前記反応容器と前記金属シリコン粉体を除去するフィルターとの間にあり、
前記排出流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の製造方法。
前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の上部から排出される前記金属シリコン粉体が流通する排出流路であり、
前記排出流路は、前記金属シリコン粉体を除去するフィルターと該フィルターで除去された前記金属シリコン粉体を収容する収容槽との間にあり、
前記排出流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
(製造装置1の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造装置1の構成の一例を示す模式図である。本明細書において、製造装置1は、金属シリコン粉体を用いてトリクロロシランを製造する装置であれば何ら限定されない。製造装置1として、例えば、流動床方式反応装置が挙げられる。流動床方式反応装置を用いることにより、連続的に金属シリコン粉体及び塩化水素ガスを供給して、連続的にトリクロロシランを合成することが可能である。金属シリコン粉体と塩化水素ガスとの反応では、金属シリコンの使用量が多いため、金属シリコン粉体が流通する流路に設けられたバルブに金属シリコン粉体が噛み込むことによってバルブシートに損傷が生じ易い。そこで、金属シリコン粉体が流通する流路に無摺動バルブを設けることにより、金属シリコン粉体と塩化水素ガスとの反応では、この損傷を抑制するという本発明の一態様による効果が特に顕著に発揮される。
【0012】
なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。また、以下では、一例として
図1に金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させてトリクロロシランを生成する装置を挙げて説明するが、その他に金属シリコン粉体を用いてトリクロロシランを生成する装置を用いてもよい。
【0013】
本明細書において、「金属シリコン粉体」とは、冶金製金属シリコン、珪素鉄、またはポリシリコン等の金属状態の珪素元素を含む固体物質を意図し、公知のものが何ら制限なく使用される。また、それら金属シリコン粉体には鉄化合物等の不純物が含まれていてもよく、その成分及び含有量において特に制限はない。かかる金属シリコン粉体は、通常、平均粒径が150〜350μm程度の微細な粉末の形態で使用される。
【0014】
製造装置1は、
図1に示すように、圧縮機2・11、反応容器3、冷却器4・7・9、フィルター5、収容槽6、熱媒ドラム8、凝縮器10、蒸留塔13、及び無摺動バルブb1〜b4を備えている。製造装置1が備えるこれらの構成要素は、互いに配管によって接続されている。
【0015】
また、製造装置1は、金属シリコン粉体が流通する配管を備え、トリクロロシランを製造する。金属シリコン粉体が流通する配管とは、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の配管である。金属シリコン粉体が流通する流路の配管とは、例えば、後述する導入流路f1、導出流路f2、排出流路f31、及び排出流路f32の配管である。トリクロロシランの製造系とは、トリクロロシランを製造する製造装置全体を示しており、例えば、製造装置1の全体を示している。
【0016】
製造装置1を用いたトリクロロシランの製造方法では、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の開閉を、無摺動バルブb1〜b4を用いて行う。トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路とは、例えば、後述する導入流路f1、導出流路f2、排出流路f31、及び排出流路f32である。
【0017】
圧縮機2は、塩化水素ガスが流通する配管に設けられており、その配管の内部を流通する塩化水素ガスを圧縮し、塩化水素ガスを反応容器3に供給する。反応容器3は、外部から供給された金属シリコン粉体及び塩化水素ガスを収容し、金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させてトリクロロシランを生成する。
【0018】
反応容器3が有する形状(換言すれば、反応容器3が有する側壁の形状)については特に限定されない。例えば、反応容器3のうち流動層(図示せず)を囲む側壁は、反応容器3の高さ方向に直交する切断面の断面積が、一定であるような形状(図示せず)であってもよいし、上方に向かって大きくなるようなテーパー形状(図示せず)であってもよい。例えば、ガス供給口から流動層の上面までの高さの少なくとも80%以上の範囲で、側壁は、反応容器3の高さ方向に直交する切断面の断面積が、上方に向かって大きくなるようなテーパー形状であってもよい。エロージョンのリスクを低減できるとともに、局所的な温度上昇を防ぐことができるという観点から、反応容器3が有する形状は、テーパー形状であることが好ましい。
【0019】
反応容器3の外部から反応容器3に金属シリコン粉体を導く導入流路f1の配管には、無摺動バルブb1が設けられる。無摺動バルブb1は、
図2に示すように、ステム31・32、弁体33、バルブシート35・36、及び本体部40を備えている。無摺動バルブb1は、導入流路f1の開閉を行う。導入流路f1は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0020】
金属シリコン粉体の粒径は小さいので、従来のバルブの摺動部を可能な限り小さくしたとしても、バルブの摺動時に金属シリコン粉体が入り込み、バルブシートが金属シリコン粉体による損傷を受ける。このため、摺動部が存在しない無摺動バルブb1を用いることが好ましい。
【0021】
これにより、反応容器3の外部から反応容器3に金属シリコン粉体を導く導入流路f1で無摺動バルブb1を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシート35・36の損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb1の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb1の交換にかかるコストを下げることができる。特に、金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、金属シリコンの使用量が多いため、導入流路f1に設けられるバルブの開閉頻度は多くなる。そこで、導入流路f1に無摺動バルブb1を設けることにより、金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、バルブシート35・36の損傷を抑制するという本発明の一態様による効果が特に顕著に発揮される。なお、無摺動バルブb1の動作の詳細については後述する。
【0022】
反応容器3の内部には、熱媒体を流通させる熱媒管15が設けられている。熱媒管15は、冷却器7と熱媒ドラム8とを接続している。冷却器7は、熱媒管15の内部を流通する熱媒体の温度を下げ、熱媒ドラム8は、熱媒体を貯留する。
【0023】
反応容器3の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する導出流路f2の配管には、無摺動バルブb2が設けられる。無摺動バルブb2は、導出流路f2の開閉を行う。導出流路f2は、反応容器3と反応容器3の下部から取り出される金属シリコン粉体を収容する収容槽6との間にある。導出流路f2は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0024】
これにより、反応容器3の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する導出流路f2で無摺動バルブb2を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシートの損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb2の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb2の交換にかかるコストを下げることができる。特に、金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、金属シリコンの使用量が多いため、反応容器3の下部から取り出される金属シリコン粉体の量が多くなる。そこで、導出流路f2に無摺動バルブb2を設けることにより、金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させてトリクロロシランを生成する反応では、バルブシートの損傷を抑制するという本発明の一態様による効果が特に顕著に発揮される。
【0025】
反応容器3の上部から排出される金属シリコン粉体が流通する排出流路f3は、反応容器3から収容槽6に至るまでの流路である。排出流路f3のうちの排出流路f31の配管には、無摺動バルブb3が設けられる。無摺動バルブb3は、排出流路f31の開閉を行い、冷却器4とフィルター5との間にある。排出流路f31は、反応容器3と金属シリコン粉体を除去するフィルター5との間にある。排出流路f31は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。なお、無摺動バルブb3は、反応容器3と冷却器4との間にあってもよい。
【0026】
これにより、反応容器3の上部から排出される金属シリコン粉体が流通する排出流路f31で無摺動バルブb3を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシートの損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb3の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb3の交換にかかるコストを下げることができる。
【0027】
排出流路f3のうちの排出流路f32には、フィルター5によって除去された金属シリコン粉体が流通する。排出流路f32の配管には、無摺動バルブb4が設けられる。無摺動バルブb4は、排出流路f32の開閉を行う。排出流路f32は、フィルター5と収容槽6との間にある。排出流路f32は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0028】
これにより、金属シリコン粉体が流通する排出流路f32で無摺動バルブb4を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシートの損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb4の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb4の交換にかかるコストを下げることができる。
【0029】
なお、排出流路f31には、水素ガス、並びに反応容器3によって生成されたトリクロロシラン及びテトラクロロシラン等が流通する。また、排出流路f31の配管には、冷却器4が設けられる。冷却器4は、排出流路f31を流通する金属シリコン粉体、水素ガス、トリクロロシラン、及びテトラクロロシラン等を冷却する。
【0030】
フィルター5は、冷却器4によって冷却された金属シリコン粉体、水素ガス、トリクロロシラン、及びテトラクロロシラン等から、金属シリコン粉体を除去する。フィルター5は、除去した金属シリコン粉体を収容槽6に排出し、水素ガス、トリクロロシラン、及びテトラクロロシラン等を冷却器9に供給する。冷却器9は、水素ガス、トリクロロシラン、及びテトラクロロシラン等を冷却水により冷却し、冷却した水素ガス、トリクロロシラン、及びテトラクロロシラン等を凝縮器10に供給する。
【0031】
凝縮器10は、水素ガス、トリクロロシラン、及びテトラクロロシラン等を気液分離させ、水素ガスを圧縮機11に供給し、トリクロロシラン及びテトラクロロシラン等を蒸留塔13に供給する。蒸留塔13は、トリクロロシラン及びテトラクロロシランを蒸留によって回収する。
【0032】
(無摺動バルブの動作)
図2の(a)〜(d)は、製造装置1が備える無摺動バルブb1が閉じる場合の無摺動バルブb1の動作を示す図である。
図3の(a)〜(d)は、製造装置1が備える無摺動バルブb1が開く場合の無摺動バルブb1の動作を示す図である。
【0033】
配管34は、無摺動バルブb1が設けられた導入流路f1の配管である。
図2の(a)は、無摺動バルブb1が完全に開いている状態を示している。弁体33には、開口部37が形成されている。配管34の内部を流通する金属シリコン粉体は、開口部37に囲まれた空間を通過する。金属シリコン粉体の流れる方向は、無摺動バルブb1の入口部38から出口部39に向かう方向である。
【0034】
弁体33の上端にはステム31が取り付けられており、弁体33の下端にはステム32が取り付けられている。本体部40に形成された上側の凹部41と入口部38との境界には、バルブシート35が設けられ、本体部40に形成された下側の凹部42と入口部38との境界には、バルブシート36が設けられている。バルブシート35・36は、無摺動バルブb1の気密性を保つためのものである。バルブシート35・36の材料は、例えば、カーボン、テフロン(登録商標)、その他の樹脂製品、または金属であってもよい。
【0035】
図2の(a)に示すように、無摺動バルブb1の下から見て、ステム32を右回りに回転させると、弁体33が閉方向に回転する。弁体33が回転するとき、弁体33は、バルブシート35・36とは接触せずに回転する。ステム32を右回りに90°回転させると、
図2の(b)に示すように、弁体33が閉じている状態になる。ただし、無摺動バルブb1が完全に閉じている状態ではない。ステム32を右回りに90°回転させるだけでは、弁体33は、バルブシート35・36とは接触しない。
【0036】
ステム32を右回りに90°回転させた後、
図2の(c)に示すように、無摺動バルブb1の上から見て、ステム31を右回りに回転させると、ステム31を支点に弁体33が傾く。そして、
図2の(d)に示すように、弁体33は、バルブシート35・36と接触する。ステム31を右回りに回転させ終えると、弁体33がバルブシート35・36に押し付けられ、無摺動バルブb1は完全に閉じている状態になる。つまり、配管34の内部にある金属シリコン粉体の流れを止める。
【0037】
また、
図3の(a)は、無摺動バルブb1が完全に閉じている状態を示している。
図3の(b)に示すように、無摺動バルブb1の上から見て、ステム31を左回りに回転させると、ステム31を支点に弁体33がバルブシート35・36から離れる方向に移動する。
図3の(c)に示すように、ステム31を左回りに回転させ終えると、弁体33はバルブシート35・36から完全に離れる。
【0038】
ステム31を左回りに回転させ終えた後、
図3の(c)に示すように、無摺動バルブb1の下から見て、ステム32を左回りに回転させると、弁体33が開方向に回転する。弁体33が回転するとき、弁体33は、バルブシート35・36とは接触せずに回転する。ステム32を左回りに90°回転させると、
図3の(d)に示すように、無摺動バルブb1が完全に開いている状態になる。
【0039】
したがって、無摺動バルブb1は、バルブシート35・36に対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体33を有する。また、無摺動バルブb1は、配管34に設けられ、配管34の流路を開閉する。これにより、無摺動バルブb1のバルブシート35・36が金属シリコン粉体により傷つくことがなく、内漏れの発生を防ぐことができる。また、無摺動バルブb1では、弁体33がバルブシート35・36に対して非接触な状態で回転するので、無摺動バルブb1の耐久性を向上させることができる。よって、トリクロロシランの製造を連続して行い易くすることができる。
【0040】
また、無摺動バルブb1は、弁体33とバルブシート35・36とがメタルタッチする構造を有してもよい。メタルタッチとは、金属からなるもの同士が接触することである。つまり、弁体33及びバルブシート35・36は金属からなり、ステム31を右回りに回転させたとき、弁体33及びバルブシート35・36は互いに接触する。これにより、無摺動バルブb1を閉じたとき、弁体33とバルブシート35・36とがメタルタッチする。よって、無摺動バルブb1の耐熱温度が200℃を超えるので、無摺動バルブb1を、200℃を超える温度で使用することができる。なお、無摺動バルブb2〜b4及び後述する無摺動バルブb5〜b8は、無摺動バルブb1と同様の構造を有する。また、無摺動バルブb1〜b8の構造は、ここで説明した構造に限らず、弁体とバルブシートとが摺動しない構造であれば、特に限定されない。
【0041】
〔実施形態2〕
図4は、本発明の実施形態2に係る製造装置1の構成の一例を示す模式図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0042】
製造装置1は、
図1に示した構成に加え、
図4に示す熱交換器21、加熱器22、第2反応容器23、第2フィルター24、第2収容槽25、及び無摺動バルブb5〜b8を備えている。製造装置1が備えるこれらの構成要素は、互いに配管によって接続されている。なお、本実施形態では、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路とは、第2導入流路f5、第2排出流路f61、第2排出流路62、及び第2導出流路f8である。
【0043】
熱交換器21には、水素ガス及びテトラクロロシランが供給される。このテトラクロロシランは、例えば、前述した反応容器3によって副反応として生じたものであってもよい。熱交換器21は、第2反応容器23を経由した金属シリコン粉体、水素ガス、及びトリクロロシランを、水素ガス及びテトラクロロシランと熱交換する。熱交換器21は、水素ガス及びテトラクロロシランを加熱器22に供給する。
【0044】
加熱器22は、テトラクロロシラン及び水素ガスを加熱して、テトラクロロシラン及び水素ガスを第2反応容器23に供給する。第2反応容器23は、テトラクロロシラン、水素ガス、及び外部から供給された金属シリコン粉体を収容し、テトラクロロシランと水素ガスと金属シリコン粉体とを反応させてトリクロロシランを生成する。第2反応容器23は、金属シリコン粉体、水素ガス、トリクロロシラン、及び未反応のテトラクロロシランを、熱交換器21を介して第2フィルター24に供給する。
【0045】
第2フィルター24は、熱交換器21を介して第2反応容器23から供給された金属シリコン粉体、水素ガス、トリクロロシラン、及び未反応のテトラクロロシランから、金属シリコン粉体を除去する。第2フィルター24は、除去した金属シリコン粉体を第2収容槽25に供給する。
【0046】
第2反応容器23の外部から第2反応容器23に金属シリコン粉体を導く第2導入流路f5の配管には、無摺動バルブb5が設けられる。無摺動バルブb5は、第2導入流路f5の開閉を行う。第2導入流路f5は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。これにより、第2反応容器23の外部から第2反応容器23に金属シリコン粉体を導く第2導入流路f5で無摺動バルブb5を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシートの損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb5の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb5の交換にかかるコストを下げることができる。
【0047】
第2反応容器23から排出される金属シリコン粉体が流通する第2排出流路f6は、第2反応容器23から第2収容槽25に至るまでの流路である。第2排出流路f6のうちの第2排出流路f61の配管には、無摺動バルブb6が設けられる。無摺動バルブb6は、第2排出流路f61の開閉を行い、熱交換器21と第2フィルター24との間にある。第2排出流路f61は、第2反応容器23と金属シリコン粉体を除去する第2フィルター24との間にある。第2排出流路f61は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。なお、無摺動バルブb6は、第2反応容器23と熱交換器21との間にあってもよい。
【0048】
これにより、第2反応容器23から排出される金属シリコン粉体が流通する第2排出流路f61で無摺動バルブb6を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシートの損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb6の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb6の交換にかかるコストを下げることができる。
【0049】
第2排出流路f6のうちの第2排出流路f62には、第2フィルター24によって除去された金属シリコン粉体が流通する。第2排出流路f62の配管には、無摺動バルブb7が設けられる。無摺動バルブb7は、第2排出流路f62の開閉を行う。第2排出流路f62は、第2フィルター24と第2収容槽25との間にある。第2排出流路f62は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0050】
これにより、金属シリコン粉体が流通する第2排出流路f62で無摺動バルブb7を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシートの損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb7の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb7の交換にかかるコストを下げることができる。
【0051】
第2反応容器23の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する第2導出流路f8の配管には、無摺動バルブb8が設けられる。無摺動バルブb8は、第2導出流路f8の開閉を行う。第2導出流路f8は、第2反応容器23と第2反応容器23の下部から取り出される金属シリコン粉体を収容する第2収容槽25との間にある。第2導出流路f8は、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の一部である。
【0052】
これにより、第2反応容器23の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する第2導出流路f8で無摺動バルブb8を閉じたとき、金属シリコン粉体が噛み込むことによるバルブシートの損傷を低減することができる。よって、無摺動バルブb8の交換頻度を下げることができ、無摺動バルブb8の交換にかかるコストを下げることができる。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
(まとめ)
本発明の一態様に係る製造方法は、トリクロロシランの製造方法であって、前記トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する流路の開閉を、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブを用いて行う。
【0055】
上記構成によれば、無摺動バルブは、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する。これにより、無摺動バルブのバルブシートが金属シリコン粉体により傷つくことがなく、内漏れの発生を防ぐことができる。また、無摺動バルブでは、弁体がバルブシートに対して非接触な状態で回転するので、無摺動バルブの耐久性を向上させることができる。よって、トリクロロシランの製造を連続して行い易くすることができる。
【0056】
本発明の一態様に係る製造方法は、前記金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成することが好ましい。
【0057】
上記構成によれば、金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させてトリクロロシランを生成する場合においても、無摺動バルブのバルブシートが金属シリコン粉体により傷つくことがなく、内漏れの発生を防ぐことができる。また、無摺動バルブでは、弁体がバルブシートに対して非接触な状態で回転するので、無摺動バルブの耐久性を向上させることができる。よって、トリクロロシランの製造を連続して行い易くすることができる。
【0058】
本発明の一態様に係る製造方法は、前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の外部から前記反応容器に前記金属シリコン粉体を導く導入流路であり、前記導入流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことが好ましい。
【0059】
上記構成によれば、反応容器の外部から反応容器に金属シリコン粉体を導く導入流路の開閉を、無摺動バルブを用いて行う。金属シリコン粉体の粒径は小さいので、従来のバルブの摺動部を可能な限り小さくしたとしても、バルブの摺動時に金属シリコン粉体が入り込み、バルブシートが金属シリコン粉体による損傷を受ける。このため、摺動部が存在しない無摺動バルブを用いることが好ましい。
【0060】
これにより、反応容器の外部から反応容器に金属シリコン粉体を導く導入流路で無摺動バルブを閉じても、無摺動バルブでは、金属シリコン粉体の噛み込みによってバルブシートが傷つきにくい。よって、無摺動バルブの交換頻度を下げることができ、無摺動バルブの交換にかかるコストを下げることができる。
【0061】
本発明の一態様に係る製造方法は、前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の下部から取り出される前記金属シリコン粉体が流通する導出流路であり、前記導出流路は、前記反応容器と前記反応容器の下部から取り出される前記金属シリコン粉体を収容する収容槽との間にあり、前記導出流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことが好ましい。
【0062】
上記構成によれば、反応容器の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する導出流路の開閉を、無摺動バルブを用いて行う。これにより、反応容器の下部から取り出される金属シリコン粉体が流通する導出流路で無摺動バルブを閉じても、無摺動バルブでは、金属シリコン粉体の噛み込みによってバルブシートが傷つきにくい。よって、無摺動バルブの交換頻度を下げることができ、無摺動バルブの交換にかかるコストを下げることができる。
【0063】
本発明の一態様に係る製造方法は、前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の上部から排出される前記金属シリコン粉体が流通する排出流路であり、前記排出流路は、前記反応容器と前記金属シリコン粉体を除去するフィルターとの間にあり、前記排出流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことが好ましい。
【0064】
上記構成によれば、反応容器の上部から排出される金属シリコン粉体が流通する排出流路の開閉を、無摺動バルブを用いて行う。これにより、反応容器の上部から排出される金属シリコン粉体が流通する排出流路で無摺動バルブを閉じても、無摺動バルブでは、金属シリコン粉体の噛み込みによってバルブシートが傷つきにくい。よって、無摺動バルブの交換頻度を下げることができ、無摺動バルブの交換にかかるコストを下げることができる。
【0065】
本発明の一態様に係る製造方法は、前記流路の一部は、前記金属シリコン粉体と前記塩化水素ガスとを反応させて前記トリクロロシランを生成する反応容器の上部から排出される前記金属シリコン粉体が流通する排出流路であり、前記排出流路は、前記金属シリコン粉体を除去するフィルターと該フィルターで除去された前記金属シリコン粉体を収容する収容槽との間にあり、前記排出流路の開閉を、前記無摺動バルブを用いて行うことが好ましい。
【0066】
上記構成によれば、金属シリコン粉体を除去するフィルターと該フィルターで除去された金属シリコン粉体を収容する収容槽との間にある排出流路の開閉を、無摺動バルブを用いて行う。これにより、フィルターと収容槽との間にあり、かつ、金属シリコン粉体が流通する排出流路で無摺動バルブを閉じても、無摺動バルブでは、金属シリコン粉体の噛み込みによってバルブシートが傷つきにくい。よって、無摺動バルブの交換頻度を下げることができ、無摺動バルブの交換にかかるコストを下げることができる。
【0067】
本発明の一態様に係る製造装置は、トリクロロシランの製造装置であって、金属シリコン粉体が流通する配管と、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブとを備え、前記無摺動バルブは、前記トリクロロシランの製造系において前記配管に設けられ、前記配管の流路を開閉する。
【0068】
上記構成によれば、無摺動バルブは、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する。これにより、無摺動バルブのバルブシートが金属シリコン粉体により傷つくことがなく、内漏れの発生を防ぐことができる。また、無摺動バルブでは、弁体がバルブシートに対して非接触な状態で回転するので、無摺動バルブの耐久性を向上させることができる。よって、トリクロロシランの製造を連続して行い易くすることができる。
【0069】
本発明の一態様に係る製造装置は、前記無摺動バルブは、前記弁体と前記バルブシートとがメタルタッチする構造を有することが好ましい。
【0070】
上記構成によれば、無摺動バルブは、弁体とバルブシートとがメタルタッチする構造を有する。これにより、無摺動バルブの耐熱温度が200℃を超えるので、無摺動バルブを、200℃を超える温度で使用することができる。
製造方法は、トリクロロシランの製造方法であって、トリクロロシランの製造系において金属シリコン粉体が流通する導入流路(f1)、導出流路(f2)、排出流路(f31)、及び排出流路(f32)の開閉を、バルブシートに対して非接触な状態で回転可能に設けられる弁体を有する無摺動バルブ(b1〜b4)を用いて行う。