特許第6564554号(P6564554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6564554
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】トリクロロシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20190808BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C01B33/107 Z
   B01J8/24
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-523129(P2019-523129)
(86)(22)【出願日】2018年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2018042555
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-223146(P2017-223146)
(32)【優先日】2017年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】弘田 賢次
(72)【発明者】
【氏名】荻原 克弥
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101279734(CN,A)
【文献】 特開昭63−170210(JP,A)
【文献】 特開昭48−047500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/107
B01J 8/24
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリクロロシランの製造方法であって、
前記トリクロロシランを生成する流動床方式反応装置から排出された、前記トリクロロシランを含む排出ガスを冷却する冷却工程を含み、
前記冷却工程では、
前記流動床方式反応装置から前記排出ガスを排出するための配管内において、流れる排出ガスと接する側壁の表面の温度が110℃以上となるように、前記側壁の内部に形成された空間に流体を流すことにより、前記排出ガスを冷却することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、前記側壁の、最も低い箇所の表面温度が125℃未満となるように、前記空間に前記流体を流すことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記流体は、30℃以上の空気であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記流体は、100℃以上の高温水であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリクロロシランの製造方法、および当該製造方法に用いられる配管に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の材料として用いられる多結晶シリコンは、原料としてトリクロロシランが用いられる。トリクロロシランを製造する手段の1つとして、流動床方式反応装置を用いる手段が挙げられる。具体的には、流動床方式反応装置を用いて金属シリコン粉体と塩化水素ガスとを反応させることによりトリクロロシランを生成する。流動床方式反応装置からは、生成されたトリクロロシランを含む排出ガスが排出され、この排出ガスからトリクロロシランを回収することにより、トリクロロシランを製造する。流動床方式反応装置から排出される排出ガスには、トリクロロシランの他、塩化アルミニウムなどが含まれている。
【0003】
ここで、排出ガスからトリクロロシランを回収するためには、当該排出ガスを冷却する必要がある。流動床方式反応装置から排出された排出ガスを冷却する手段として、例えば特許文献1では、図2の(a)に示すように、内空部102に排出ガスが流れている配管100の側壁101に、その外側から冷却水を当てる方法が開示されている。具体的には、側壁101に冷却水を当てることで内空部102を流れる排出ガスを凝縮し、凝縮後の排出ガスをコンプレッサを用いてさらに凝縮させることにより、トリクロロシランを回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101279734号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷却水の温度は塩化アルミニウムの昇華温度(約160℃)よりも大幅に低いことから、冷却水を配管100の側壁に当てることによって排出ガスを冷却すると、排出ガスに含まれる塩化アルミニウムが局所的に固化する現象が生じる。その結果、固化した塩化アルミニウムが配管100に固着・堆積し、配管100を閉塞させる原因となっていた。
【0006】
上述の配管100の閉塞を防止しつつ排出ガスを冷却する手段としては、図2の(b)に示すように、内空部102に排出ガスが流れている配管100の側壁101に、その外側から高温水を当てて当該高温水を蒸発させることにより、排出ガスを冷却する手段がある。しかしながら、高温水と接触した側壁101の表面上において、高温水の蒸発時に急激な温度差が生じ、この温度差が生じた配管100の箇所で応力腐食割れが生じるという問題点があった。
【0007】
本発明の一態様は、上記の各問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、固化した塩化アルミニウムの配管への固着・堆積、および配管の応力腐食割れを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトリクロロシランの製造方法は、前記トリクロロシランを生成する流動床方式反応装置から排出された、前記トリクロロシランを含む排出ガスを冷却する冷却工程を含み、前記冷却工程では、前記流動床方式反応装置から前記排出ガスを排出するための配管内において、流れる排出ガスと接する側壁の表面の温度が110℃以上となるように、前記側壁の内部に形成された空間に流体を流すことにより、前記排出ガスを冷却する。
【0009】
また、本発明の一態様に係る配管は、トリクロロシランを生成する流動床方式反応装置から排出された、前記トリクロロシランを含む排出ガスを排出するための配管であって、前記配管の側壁は、表面が前記排出ガスと接触する第1壁と、前記第1壁よりも外側に配置された第2壁と、を備えており、前記第1壁と前記第2壁との間には、流体を流すための空間が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、固化した塩化アルミニウムの配管への固着・堆積、および配管の応力腐食割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】排出ガスの冷却に用いられる配管の概略構造を示す断面図である。
図2】排出ガスの冷却方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔1.トリクロロシランの製造方法〕
本実施形態に係るトリクロロシラン(SiHCl)の製造方法は、反応工程と冷却工程とを含む。なお、後述の流動床方式反応装置(不図示)に至るまでの金属シリコン粉体および塩化水素ガスの流れについては、例えば、特開2011−184242号公報に記載されているため、当該記載を必要に応じて援用することとし、説明を省略する。また、後述の配管10からトリクロロシランが排出された後のトリクロロシランの流れについては、例えば、特開2015−089859号公報に記載されているため、当該記載を必要に応じて援用することとし、説明を省略する。
【0013】
<1−1.反応工程>
まず、反応工程では、金属シリコン紛体と塩化水素(HCl)とを反応させることで、トリクロロシランを生成する。トリクロロシランの生成に用いられる金属シリコン紛体としては、冶金製金属シリコン、珪素鉄、あるいはポリシリコン(Si)等の金属状態のケイ素元素を含む固体物質が挙げられ、公知のものが何ら制限なく使用される。
【0014】
また、金属シリコン紛体には鉄化合物等の不純物が含まれていてもよく、その成分および含有量において特に制限はない。金属シリコン紛体は、通常、平均粒径が150〜350μm程度の微細な粉末の形態で使用される。
【0015】
さらに、トリクロロシランの生成に用いられる塩化水素としては、工業的に入手し得る種々の塩化水素を使用することができる。
【0016】
本実施形態において、トリクロロシランの生成には、流動床方式反応装置を用いる。流動床方式反応装置は、金属シリコン紛体と塩化水素とを反応させてトリクロロシランを生成するための反応装置であり、公知のものを特に制限なく用いることができる。流動床方式反応装置を用いることにより、連続的に金属シリコン紛体および塩化水素を供給し、連続的にトリクロロシランを製造することが可能となる。金属シリコン粉体および塩化水素の供給量は、流動層が形成可能な流量となるような速度にて金属シリコン粉体および塩化水素を供給することができれば、特に制限されない。
【0017】
前記反応における反応温度は、反応装置の材質および能力、ならびに触媒等を勘案して適宜決定されるが、一般には200〜500℃、好ましくは250〜450℃の範囲に設定される。
【0018】
反応工程において、流動床方式反応装置内で生じている主な反応は、下記の式1および式2で表される。
【0019】
[式1]
Si+3HCl→SiHCl+H
[式2]
Si+4HCl→SiCl+2H
流動床方式反応装置で生成されたトリクロロシランは、排出ガスとして排出される。この排出ガスには、トリクロロシランの他、水素や未反応のテトラクロロシラン・金属シリコン紛体、その他のクロロシラン化合物、塩化アルミニウムが含まれている。
【0020】
なお、本発明の一態様に係るトリクロロシランの製造方法(具体的には、反応工程)において、トリクロロシランの生成方法は、金属シリコン紛体と塩化水素とを反応させる方法に限定されない。例えば、ポリシリコンまたは乾式シリカゲルの製造におけるポリシリコンの析出工程で副生される四塩化ケイ素(SiCl)を、トリクロロシランに変換(STC還元反応(AX反応))して再利用する方法を採用してもよい。前記、トリクロロシランの変換は、下記の式3で表される。
[式3]
Si+3SiCl+2H→4SiHCl
<1−2.冷却工程>
次に、冷却工程では、流動床方式反応装置から排出された排出ガスを、図1に示す配管10を用いて冷却する。具体的には、配管10内において、流れる排出ガスと接する第1壁1(側壁の一部)の表面1aの温度が110℃以上となるように、側壁3の内部に形成された空間4に30℃以上の空気(流体)を流すことで、排出ガスを冷却する。特には、第1壁1(側壁の一部)の表面1aの温度は、120℃以上とするのがより好ましい。この冷却工程を経ることにより、排出ガスに含まれる未反応の金属シリコン紛体を、下流において焼結金属フィルタ(不図示)で除去することが可能となる。
【0021】
配管10は、流動床方式反応装置から排出ガスを排出するための設備であり、図1に示すように略円筒形状の側壁3によって形成されている。側壁3は、表面1aが排出ガスと接触する第1壁1、および第1壁1よりも外側に配置された第2壁2を備えている。また、第1壁1と第2壁2との間には、空気を流すための空間4が形成されている。
【0022】
一方の第2壁2には、空気を空間4に導くための第1開口部6が形成されており、第1開口部6と空間4とが連通している。他方の第2壁2には、空気を外部に排出するための第2開口部7が形成されており、第2開口部7と空間4とが連通している。
【0023】
排出ガスは、第1壁1の表面1aによって取り囲まれるように形成された、円筒形状の内空部5を流れる。内空部5における鉛直下側の区間には、直径が配管10の内径(内空部5の直径)よりも小さいインナーシェル20が配置されている。上記区間(内空部の少なくとも一部の区間)には、インナーシェル20の配置によって排出ガスの流路が狭められた狭路区間5aが形成されている。ここで、排出ガスの流路全体としては、上記鉛直下側の区間へのインナーシェル20の配置によって、内空部5の断面積が1〜10%、特には1〜5%狭められているのが好ましい。
【0024】
インナーシェル20の本体の外形は円柱形状となっている。また、当該本体と連なって形成され、内空部5における排出ガスの流入側の方を向くように配置される先端部は、外形が円錐形状となっている。先端部をこのように円錐形状とすることで、他の形状に比べて排出ガスの円滑な流通が可能となり、圧力の損失を抑えることができる。
【0025】
なお、配管10およびインナーシェル20の形状や大きさ、内空部5におけるインナーシェル20の配置等は、本実施形態の例に限定されない。例えば、第1・第2壁1・2の厚さ、空間4の広さ、内空部5の形状とそれに対応するインナーシェル20の外形、第1・第2開口部6・7の大きさや配置については、任意に設計変更してもよい。また、インナーシェル20は、内空部5に配置されていなくてもよい。
【0026】
配管10の各部分のうち、インナーシェル20が近傍に配置されている出口部分において塩化アルミニウムの析出条件が最も厳しくなる。すなわち、上記出口部分で排出ガスの温度が最も低くなる。したがって、配管10内に塩化アルミニウムを局所的に析出・固着させないためには、排出ガスが出口部分の内空部5を流れる際の当該排出ガスの温度が、塩化アルミニウムの昇華温度(約160℃)を上回っている必要がある。そのためには、出口部分の表面1aの温度を、排出ガス冷却時において110℃以上に保つ必要がある。
【0027】
その点、本実施形態に係る冷却工程では、第1壁1の表面1aの温度が110℃以上となるように配管10の空間4に空気を流すことから、排出ガス冷却時における出口部分の表面1aの温度も110℃以上に保たれることとなる。したがって、配管10内を流れる排出ガスが、少なくとも塩化アルミニウムの昇華温度より低い温度になるまで冷却されることはない。そのため、排出ガス中の塩化アルミニウムの局所的な固化を効果的に抑制でき、固化した塩化アルミニウムの配管への固着・堆積を防止することができる。
【0028】
ここで、本実施形態に係るトリクロロシランの製造方法において、第1壁1の表面1aの温度は、壁面にK熱電対等を設置することによって測定される。
【0029】
また、本実施形態に係る冷却工程では、配管10内に排出ガスが流れている状態において、側壁3の内部に形成された空間4に空気を流すことから、少なくとも第1壁1の表面1aには上下方向の急激な温度差が生じない。そのため、配管10の応力腐食割れを防止することができる。さらには、空間4に流れる空気の温度を30℃以上とすることから、例えば空間4に後述の高温水を流す場合に比べて、より確実に第1壁1の表面1aの温度を110℃以上とすることができる。そのため、上記応力腐食割れの発生がより低減される。
【0030】
なお、側壁3の内部に形成された空間4を流れる流体は空気に限定されず、例えば油や後述の高温水(100℃以上)であってもよい。言い換えれば、配管10内において、流れる排出ガスと接する第1壁1の表面1aの温度が110℃以上となるような流体であれば、どのような流体であってもよい。
【0031】
さらに、内空部5における鉛直下側の区間には狭路区間5aが形成されており、排出ガスがこの狭路区間5aを通過する際、排出ガスと第1壁1の表面1aとの距離が他の区間を通過するときよりも短くなる。そのため、排出ガスが狭路区間5aを通過する過程において、他の区間よりも効率的に冷却されることとなる。ここで、狭路区間5aは、内空部5における鉛直下側の区間、すなわち配管10の出口部分に形成されていることから、排出ガスが最も冷却された状態のまま焼結金属フィルタを通過することとなる。
【0032】
〔2.冷却工程のバリエーション〕
本実施形態に係る冷却工程においては、配管10の出口部分、具体的には側壁3の最も低い箇所の表面1aの温度(表面温度)が125℃未満となるように、側壁3の内部に形成された空間4に空気またはその他の流体を流すのが好ましい。
【0033】
上記出口部分の表面1aの温度を125℃未満とすることにより、排出ガスが出口部分の内空部5を流れる際、当該排出ガスの温度を約190℃まで確実に冷却することができる。そのため、排出ガスを焼結金属フィルタに備えられたテフロンガスケット(テフロン:登録商標)の耐熱温度以下まで確実に冷却できることから、焼結金属フィルタを、配管10の出口部分の直下に安定的に配置することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る冷却工程において、側壁3の内部に形成された空間4に、空気の代わりに100℃以上の高温水を流してもよい。100℃以上の高温水を流すことにより、例えば空気を流す場合に比べて配管10の長さを短くすることができる。そのため、固化した塩化アルミニウムの配管への堆積を防止できるとともに、トリクロロシランの製造設備をコンパクトにすることができる。
【0035】
<まとめ>
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトリクロロシランの製造方法は、前記トリクロロシランを生成する流動床方式反応装置から排出された、前記トリクロロシランを含む排出ガスを冷却する冷却工程を含み、前記冷却工程では、前記流動床方式反応装置から前記排出ガスを排出するための配管内において、流れる排出ガスと接する側壁の表面の温度が110℃以上となるように、前記側壁の内部に形成された空間に流体を流すことにより、前記排出ガスを冷却する。
【0036】
また、本発明の一態様に係るトリクロロシランの製造方法は、前記冷却工程において、前記側壁の、最も低い箇所の表面温度が125℃未満となるように、前記空間に前記流体を流してもよい。
【0037】
また、本発明の一態様に係るトリクロロシランの製造方法は、前記流体は、30℃以上の空気であってもよい。
【0038】
また、本発明の一態様に係るトリクロロシランの製造方法は、前記流体は、100℃以上の高温水であってもよい。
【0039】
また、本発明の一態様に係る配管は、トリクロロシランを生成する流動床方式反応装置から排出された、前記トリクロロシランを含む排出ガスを排出するための配管であって、前記配管の側壁は、表面が前記排出ガスと接触する第1壁と、前記第1壁よりも外側に配置された第2壁と、を備えており、前記第1壁と前記第2壁との間には、流体を流すための空間が形成されている。
【0040】
また、本発明の一態様に係る配管は、前記配管における前記排出ガスが流れる内空部には、直径が前記配管の内径よりも小さいインナーシェルが配置されており、前記内空部の少なくとも一部の区間には、前記インナーシェルの配置によって前記排出ガスの流路が狭められた狭路区間が形成されていてもよい。
【0041】
〔3.実施例〕
本実施例では、流動床方式反応装置において、金属シリコン紛体と塩化水素(HCl)とを反応させてトリクロロシランを生成した。トリクロロシラン生成後の流動床方式反応装置から排出された350℃の排出ガスを、図1に示す配管10の内空部5に流して冷却した。冷却は、配管10において、45℃の空気を第1開口部6から側壁3の空間4に供給し、143℃まで温度上昇した空気を第2開口部7から排出させることで行った。なお、内空部5におけるインナーシェル20が配置された部分において、排出ガスの流路は内空部断面積の2%に狭められている構造であった。
【0042】
この冷却において、側壁3の、空間4が設けられている下端部分(出口部分)における第1壁1の表面1aの温度を、壁面にK熱電対を設置することにより測定した。前記下端部分の周方向において、等間隔を空けて3カ所で温度測定したが、いずれも約120℃であり、110℃を上回るものであった。また、当該下端部分を通過した排出ガスの温度も熱電対温度計により測定したところ、測定された温度は、塩化アルミニウムの昇華温度(約160℃)を上回る約190℃であった。
【0043】
配管10を流れる排出ガスは、この空間4が設けられている下端部分(出口部分)で最も排出ガスの温度が低くなる。それ故、この箇所が前記110℃を上回っていることは、該箇所から上流において、排出ガスは塩化アルミニウムを昇華(固化)温度以上に保持されることを意味するものであった。このことから、熱交換で重要な伝熱面を、塩化アルミニウムの析出・固着により汚すことなく、運転を継続できることが分かった。
【0044】
〔4.付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、トリクロロシランの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 第1壁
1a 表面
2 第2壁
3 側壁
4 空間
5 内空部
5a 狭路区間
10 配管
20 インナーシェル
【要約】
固化した塩化アルミニウムの配管への固着・堆積、および配管の応力腐食割れを防止する。トリクロロシランの製造方法であって、流動床方式反応装置から排出された、トリクロロシランを含む排出ガスを冷却する冷却工程では、流動床方式反応装置から排出ガスを排出するための配管(10)内において、当該配管(10)の側壁(3)の表面(1a)の温度が110℃以上となるように側壁(3)の内部に形成された空間(4)に流体を流して、排出ガスを冷却する。
図1
図2