特許第6564669号(P6564669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564669
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L21/78 S
   H01L21/78 H
   H01L21/302 104C
   H01L21/78 Q
   H01L21/304 631
   H01L21/304 601Z
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-198403(P2015-198403)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-73438(P2017-73438A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 栄
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−149386(JP,A)
【文献】 特開2010−016188(JP,A)
【文献】 特開2009−283636(JP,A)
【文献】 特開2007−281526(JP,A)
【文献】 特開2015−147231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に格子状に形成されたストリートによって複数の領域が区画され、この区画された領域に複数のデバイスが形成されたウエーハを個々のデバイスに分割するデバイスの製造方法であって、
表面に複数のデバイスが形成された領域に対応する裏面側の領域を研削し凹部を形成することにより外周部にリング状補強部を形成するリング状補強部形成工程と、
前記凹部にイオンを注入するイオン注入工程と、
前記ウエーハの裏面側に各デバイスに対応する裏面電極を形成する裏面電極形成工程と、
前記ウエーハの表面または裏面に支持基板を貼り付ける支持基板貼着工程と、
前記支持基板が貼り付けられた前記ウエーハを保持して、前記ウエーハの表面または裏面にストリートに対応する開口を有するエッチングマスクを形成するエッチングマスク形成工程と、
前記エッチングマスクを介して、前記ストリートに沿ってプラズマエッチングして前記ウエーハを個々のデバイスに分割するプラズマエッチング工程と、
前記裏面電極に対して前記ストリートに沿って微粒子を吹きつけるブラスト処理により、前記裏面電極のうち前記ストリートに対応する部分を除去する金属膜除去工程と、
を含むデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記支持基板貼着工程において、前記ウエーハの裏面に前記支持基板を貼り付ける場合、前記凹部に支持基板を貼り付ける、請求項1に記載のデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記支持基板貼着工程において、前記リング状補強部を除去した後に前記支持基板を貼り付ける、請求項1に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチングによりウエーハを分割して個々のデバイスを製造するデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET等のパワーデバイスにおいては、デバイスが形成された所定厚さの基板の裏面に金属電極を形成する場合がある。金属電極は、通常、減圧環境下でスパッタリング等によってチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)等を成膜することによって形成される。
【0003】
ウエーハは、裏面研削によって所定厚さに形成された後に成膜チャンバに搬送されて裏面に金属電極が形成されるが、当該所定厚さは100μm以下程度であるため、搬送中に破損しやすい。そこで、デバイスが形成された領域に対応するウエーハの裏面側を研削し、ウエーハの外周部にリング状補強部を形成することにより、搬送時におけるウエーハの強度を保っている。
【0004】
リング状補強部を有するウエーハは、リング状補強部の内側を円形に切削してその外周側のリング状補強部を除去した後、切削ブレードによる切削又はレーザ光の照射によって分割され個片化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−141033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、切削ブレードによるウエーハの分割では、デバイスが機械的なダメージを受け、また、レーザ光の照射による分割では、デバイスが熱等によるダメージを受けてしまう。
【0007】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、リング状補強部が形成されたウエーハについて、搬送時の破損を抑制し搬送を容易化するとともに、ダメージを抑制して分割できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板の表面に格子状に形成されたストリートによって複数の領域が区画され、この区画された領域に複数のデバイスが形成されたウエーハを個々のデバイスに分割するデバイスの製造方法であって、表面に複数のデバイスが形成された領域に対応する裏面側の領域を研削し凹部を形成することにより外周部にリング状補強部を形成するリング状補強部形成工程と、前記凹部にイオンを注入するイオン注入工程と、前記ウエーハの裏面側に各デバイスに対応する裏面電極を形成する裏面電極形成工程と、前記ウエーハの表面または裏面に支持基板を貼り付ける支持基板貼着工程と、前記支持基板が貼り付けられた前記ウエーハを保持して、前記ウエーハの表面または裏面にストリートに対応する開口を有するエッチングマスクを形成するエッチングマスク形成工程と、前記エッチングマスクを介して、前記ストリートに沿ってプラズマエッチングして前記ウエーハを個々のデバイスに分割するプラズマエッチング工程と、前記裏面電極に対して前記ストリートに沿って微粒子を吹きつけるブラスト処理により、前記裏面電極のうち前記ストリートに対応する部分を除去する金属膜除去工程と、を含む。
【0009】
上記デバイスの製造方法では、前記支持基板貼着工程において、前記ウエーハの裏面に前記支持基板を貼り付ける場合は、前記凹部に支持基板を貼り付けることが好ましい。また、前記支持基板貼着工程において、前記リング状補強部を除去した後に前記支持基板を貼り付けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るデバイスの製造方法では、ウエーハにリング状補強部を形成して搬送するので、搬送時の破損を抑制できる。例えば、裏面電極を形成するため、裏面電極を形成する工程へ、または裏面電極を形成する工程からのウエーハの搬送時は、ウエーハの強度が高く保たれており、搬送時にウエーハが破損するのを抑制することができる。
また、イオン注入のため搬送する場合も同様である。
さらに、プラズマエッチングにより個片化するので、デバイスへのダメージを抑制した分割ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態を示す工程図である。
図2】デバイスの例を示す模式図である。
図3】デバイスの別の例を示す模式図である。
図4】ウエーハの例を示す斜視図である。
図5】ウエーハの例を示す拡大断面図である。
図6】リング状補強部形成工程の例を示す斜視図である。
図7】減圧成膜装置の例を示す断面図である。
図8】プラズマエッチング装置の例を示す断面図である。
図9】エッチング工程終了後のウエーハを示す拡大断面図である。
図10】ストリートにTEGが形成されたウエーハの例を示す拡大断面図である。
図11】TEGの両側にエッチング側溝を形成したウエーハを示す拡大断面図である。
図12】TEGの両側にエッチング側溝を形成したウエーハのTEGを除去する状態を示す拡大断面図である。
図13】TEGが除去されたストリートをプラズマエッチングしてエッチング溝を形成する状態を示す拡大断面図である。
図14】本発明の第2実施形態を示す工程図である。
図15】本発明の第3実施形態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1 第1実施形態
(a)デバイス形成工程
図1(a)に示すシリコン等からなる基板10を準備し、その表面10aにデバイスを形成していく。図1(a)には示されていないが、デバイス(デバイスの一部を含む)は、基板10の表面10aにフォトリソグラフィー等によるパターン形成工程、成膜工程、イオン注入工程、アニール工程等を経て形成される。各デバイスとしては、例えば図2に示すパワーMOSFET101や、図3に示すIGBT102等があり、表裏面に電極を備えるデバイスを含む。本工程では、デバイスのP型領域、N型領域となる領域へのイオン注入・アニール、デバイス表面側に表面側電極を形成するためのメッキ、エッチング等が行われ、ゲート端子となる部分には、酸化膜104及び金属膜103が形成される。図2に示すパワーMOSFET101の酸化膜104の間にはソース電極105が形成され、裏面側には裏面電極106が形成される。一方、図3に示すIGBT102のエミッタ端子となる部分にはエミッタ電極107が形成され、裏面側には裏面電極108が形成される。また、IGBT102のゲート端子となる部分には酸化膜109とゲート電極109aとが積層される。
【0013】
例えば図4に示すように、このようなデバイスDが多数形成されたウエーハWは、基板10の表面10aにストリートSが格子状に形成され、ストリートSによって複数の領域が区画され、この区画された領域に複数のデバイスDが形成されて構成されている。デバイスDが形成された領域をデバイス領域W1、その周囲のリング状の領域を外周余剰領域W2と称する。
【0014】
(b)絶縁膜成膜・電極形成工程
図1(b)に示すように、基板10の表面10aの上に絶縁膜11を形成し、各デバイスの上方に、各デバイスに対応する表面電極12を形成する。絶縁膜11は、図5に示すように、例えばLow−k膜11a、11bとパッシベーション膜11cとから構成され、Low−k膜11a、11b及びパッシベーション膜11cを部分的に厚さ方向にエッチングし、エッチングにより除去した部分に、図1(b)に示した表面電極12が埋め込まれる。Low−k膜11a、11bは、例えばSiOFやフロロカーボン(C)により形成される。また、パッシベーション11cは、例えばシリコン窒化(SiN)膜やSiO2膜により形成される。なお、図5においては、デバイスDの上方に形成される表面電極12及び表面電極12とデバイスDとを導通させる金属配線の図示を省略している。
【0015】
図5に示すウエーハWにおけるLow−k膜11a、11bは、ストリートSの上方には形成されていない。したがって、ストリートSの上方にはパッシベーション膜11cのみが被覆されている。ストリートSの上方にLow−k膜11a、11bが存在しないため、パッシベーション膜11cのうちストリートSの上方に位置する部分には凹部110cが形成されている。また、Low-k膜11bの側面110bは、Low-k膜11aの側面110aよりもデバイスDから離れた位置に形成されている。すなわち、Low-k膜11aの側方にはLow-k膜11bによる壁が形成されている。
ただし、図5に示す積層構成には限定されない。Low−k膜がストリート上にも連続して積層されている構成でもよい。
【0016】
(c)リング状補強部形成工程
次に、図6に示すように、ウエーハWの表面側に保護部材1を貼着し、保護テープ1側を研削装置2のチャックテーブル20において保持し、ウエーハWの裏面Wbが露出した状態とする。チャックテーブル20の上方には、研削手段21を備えている。研削手段21は、回転軸22と、回転軸22の下端に装着されたホイール23と、ホイール23の下面に固着された砥石24とから構成される。
【0017】
研削装置2においては、チャックテーブル20が回転すると共に、回転軸22が回転しながら研削手段21が下降することにより、回転する砥石24がウエーハWの裏面Wbに接触して研削が行われる。このとき砥石24は、ウエーハWの表面Waに形成されたデバイス領域W1(図4参照)の裏側に接触させ、その外周側は研削しないようにする。そして、デバイス領域W1の裏側が所望量研削されると、研削を終了する。こうして、裏面Wbのうちデバイス領域W1に相当する領域のみを研削することにより、裏面Wbに凹部W3が形成され、凹部W3の周囲の外周部には、研削前と同様の厚さを有するリング状補強部W4が残存する。例えば、リング状補強部W4の幅は2〜3mm程度あればよい。また、リング状補強部W4の厚さは数百μmあることが望ましい。一方、デバイス領域W1の厚さは30−100μm程度にまで薄くすることができる。リング状補強部W4は、デバイス領域W1よりも厚く形成されているため、ウエーハW全体の強度が低下するのを防ぐことができる。なお、具体的な研削条件としては、例えば特許第5613792号公報に記載されたものを採用することができる。
【0018】
(d)イオン注入・裏面電極形成工程
次に、凹部W3に図2に示すデバイス101を形成する場合は、ヒ素(As)やアンチモン(Sb)のイオンを注入し、図3に示すデバイス102を形成する場合は、ホウ素(B)のイオンを注入するとともに、アニールを行って基板10の導電率を高め、その後、図1(d)に示すように、イオンを注入した凹部W3の底面W5の一面に、銅などの金属からなる裏面電極13を形成する。裏面電極13は、例えば図7に示す減圧成膜装置3を用いて形成することができる。この減圧成膜装置3においては、チャンバ31の内部に静電式にてウエーハWを保持する保持部32を備えており、その上方の対向する位置には、金属からなるスパッタ源34が励磁部材33に支持された状態で配設されている。このスパッタ源34には、高周波電源35が連結されている。また、チャンバ31の一方の側部には、スパッタガスを導入する導入口36が設けられ、もう一方の側部には減圧源に連通する減圧口37が設けられている。
【0019】
保護部材1側が保持部32において静電チャック(ESC)にて吸着保持されることにより、ウエーハWの裏面がスパッタ源34に対向して保持される。そして、励磁部材33によって磁化されたスパッタ源34に高周波電源35から13.56MHz程度の高周波電力を印加し、減圧口37からチャンバ31の内部を10−2Pa〜10−4Pa程度に減圧して減圧環境にするとともに、導入口36からアルゴンガスを導入してプラズマを発生させると、プラズマ中のアルゴンイオンがスパッタ源34に衝突して金属粒子がはじき出されてウエーハWの凹部W3の底面W5に堆積し、図1(d)に示すように、裏面電極13が形成される。この裏面電極13は、Ti(50nm)/NiW(500nm)/Au(50nm)の順に積層された積層膜であってよい。この場合は、スパッタチャンバー中にそれぞれのターゲットを設置し、成膜しない材料のターゲットはシャッターでプラズマを遮蔽して行う。例えば、Tiターゲットをスパッタする際には、シャッター等でNiWおよびAuをプラズマから遮蔽する。なお、リング状補強部W4にマスキングを施した場合は、凹部W3の底面W5にのみ裏面電極13が形成される。本工程は、デバイス領域W1の裏側が研削により薄くなった状態で行われるが、ウエーハWにはリング状補強部W4が形成されているため、ウエーハWの取り扱いが容易となる。
【0020】
(e)支持基板貼着工程
次に、図1(e)に示すように、裏面電極13が形成されたウエーハWの凹部W3に支持基板14を接着剤を用いて貼り付ける。この支持基板14は、凹部W3の内径よりも若干小さい外径を有し、凹部W3に嵌まるようにする。また、支持基板14は、少なくとも裏面電極13とリング状補強部W4との段差分の厚さを有する。このように、支持基板14を凹部W3に貼り付けることにより、後の工程においてウエーハWを安定的に支持することができる。
【0021】
(f)エッチングマスク形成工程
支持基板貼着工程の後、レジスト材料を、絶縁膜11及び表面電極12を覆うように全面に塗布し、例えば、後のプラズマエッチング工程においてプラズマを遮蔽する部分に対応した形状のマスクを介して露光し、露光した部分を除去することにより、図1(f)に示すように、ストリートSに対応する開口15aを有するエッチングマスク15を形成する。
【0022】
エッチングマスク15としては、例えば、フェノールノボラック系のレジストを用いることができる。また、カーボン系のレジストを用いてもよい。レジストに対するエッチング対象膜のエッチング選択比を向上させるために多層レジストを用いてもよい。マスクを形成する場合には、水銀ランプのi線(λ=365nm)、h線(λ=405nm)、g線(λ=436nm)で露光してもよいし、LED光源を用いて露光してもよい。
【0023】
(g)プラズマエッチング工程
次に、例えば図8に示すプラズマエッチング装置9を用いて、図1(g)に示すように、エッチングマスク15を介してストリートSに沿ってプラズマエッチングしてエッチング溝16を形成し、ウエーハWを個々のデバイスDに分割する。
【0024】
プラズマエッチング装置9は、ウエーハWを保持する静電チャック(ESC)90と、ガスを噴出するガス噴出ヘッド91と、静電チャック(ESC)90及びガス噴出ヘッド91を内部に収容したチャンバ92とを備えている。
【0025】
静電チャック(ESC)90は、支持部材900によって下方から支持されている。静電チャック(ESC)90の内部には電極901が配設されており、この電極901は、整合器94a及びバイアス高周波電源95aに接続されている。
【0026】
ガス噴出ヘッド91の内部には、ガス拡散空間910が設けられており、ガス拡散空間910の上部にはガス導入口911が連通し、ガス拡散空間910の下部にはガス吐出口912が連通している。ガス吐出口912の下端は、保持テーブル90側に向けて開口している。
【0027】
ガス導入口911には、ガス配管913を介してガス供給部93が接続されている。ガス供給部93は、エッチングガスと希ガスとをそれぞれ蓄えている。
【0028】
ガス噴出ヘッド91には、整合器94を介して高周波電源95が接続されている。高周波電源95から整合器94を介してガス噴出ヘッド91に高周波電力を供給することにより、ガス吐出口912から吐出されたガスをプラズマ化することができる。
【0029】
チャンバ92の下部には排気管96が接続されており、この排気管96には排気装置97が接続されている。この排気装置97を作動させることにより、チャンバ92の内部を所定の真空度まで減圧することができる。
【0030】
チャンバ92の側部には、ウエーハWの搬入出を行うための搬入出口920と、この搬入出口920を開閉するゲートバルブ921とが設けられている。
【0031】
プラズマエッチング装置9は、制御部98を備えており、制御部98による制御の下で、各ガスの吐出量や時間、高周波電力等の条件がコントロールされる。
【0032】
本工程では、ゲートバルブ921を開け、搬入出口920からウエーハWを搬入し、ウエーハWに貼着された保護部材1側を保持テーブル90において静電保持する。そして、排気装置97によってチャンバ92内を排気し、チャンバ92内の圧力を、例えば0.10〜0.15Paとするとともに、ガス供給部93に蓄えられたエッチングガスを、ガス配管913及びガス導入口911を介してガス吐出部912から噴出させる。
【0033】
チャンバ92内にエッチングガスを導入するとともに、保持テーブル90の温度を、例えばテープTからガスが発生しない温度である70℃以下とし、高周波電源95からガス噴出ヘッド91に高周波電力(例えばRF高周波数:13.56MHz(平行平板型)、RF出力:1kW)を印加することにより、ガス噴出ヘッド91と保持テーブル90との間に高周波電界を生じさせ、エッチングガスをプラズマ化させる。また、エッチング対象が直径300mmのウエーハである場合は、バイアス高周波電源95aからバイアス電力(例えば2MHz、500W)を静電チャック(ESC)に印加する。
【0034】
SiOF、フロロカーボン等からなるLow−k膜11a,11bや、SiO、SiN等からなるパッシベーション膜11cからなる絶縁膜11をエッチングするときには、エッチングガスとして、ハロゲン元素を含むガスや塩基性ガス、これらの混合ガス、またはCxFy系ガス若しくはCxHyFz系ガスを用いるとよい。また、プラズマ生成支援ガスとして、Ar、He等の希ガスを用いてもよい。エッチング対象が直径300mmのウエーハである場合は、例えば、高周波電力の出力を3kW、高周波電力の周波数を13.56MHz、バイアス電力の出力を300W、バイアス電力の周波数を2MHzとするとよい。He等の希ガスは、エッチングガスのプラズマ化をアシストするため、エッチングガスのプラズマ化が促進される。なお、チャンバ92への希ガスの導入は、エッチングガスの導入前に行ってもよい。
【0035】
一方、絶縁膜11のエッチング後、シリコンからなる基板10をエッチングするときは、エッチングガスとして、例えばSF、CF、C、C等のフッ素系ガスを用いるとよい。基板10のエッチングは、以下の条件A,Bによるエッチング−堆積を交互に繰り返すことにより、条件Aではエッチングが進行し、条件Bではエッチング溝16の側壁に保護膜が形成され、高速かつ高アスペクト比でのエッチングが可能となる。基板10が直径300mmのシリコン基板である場合の条件A及びBは以下のとおりである。
(条件A)
エッチングガス: SFガス
プラズマ支援ガス: Arガス
エッチングガス供給量:1500cc/分
プラズマ支援ガス供給量:1000cc/分
高周波電力の出力: 3kW
バイアス電力の出力: 500W
(条件B)
エッチングガス: Cガス
プラズマ支援ガス: Arガス
エッチングガス供給量:1000cc/分
プラズマ支援ガス供給量: 500cc/分
高周波電力の出力: 3kW
バイアス電力の出力: 0W
ここで、処理圧力を10Paとし、条件Aを0.6秒間、条件Bを0.4秒間、交互に繰り返して基板10をエッチングする。
【0036】
こうしてウエーハWが分割された後、アッシング等によりエッチングマスク15を除去する。図9に示すように、本工程において形成されたエッチング溝16は、パッシベーション膜11cのみを貫通する幅に形成され、エッチング溝16の側方にはパッシベーション膜11cが残存する。したがって、エッチング溝16の側壁には、パッシベーション膜11cが壁状に残存したパッシベーション壁110dが形成され、このパッシベーション壁110dは、水分などの侵入からデバイスDを守る役割を果たす。また、図9に示したような積層構造に限られず、それぞれの絶縁膜の端面がエッチング溝16に露出する構造であってもよい。
【0037】
本工程では、デバイス領域W1とリング状補強部W4との境界部分についても円形にエッチングし、裏面電極13を残してデバイス領域W1とリング状補強部W4とを分離してもよい。また、前述の支持基板貼着工程は、本工程の後に実施してもよい。なお、銅などの金属により構成される裏面電極13は、本工程ではエッチングされない。
【0038】
なお、図4に示したストリートSに、図10に示すように、テストエレメントグループ(TEG)50などの金属が形成されている場合であっても、TEG50がストリートの幅方向全域に形成されていなければ、プラズマエッチングによって開口16を形成することができる。このとき開口16を形成するには、一例として、プラズマエッチングによりLow−k膜を含む絶縁膜11を除去し、図1(g)に示したように表面10aを一部露出させた後、回転する切削ブレードをストリートSに形成されたTEG50に切り込ませてTEG50を切削して除去してよい。さらに、図11に示すように、基板10のストリートSにおいてTEG50が形成されていない領域を表面10aから切削ブレード41の切り込み深さよりも深い深さD(例えば、基板10の表面10aから5〜10μm程度)だけエッチングしてストリートSのTEG50の両側にそれぞれ加工(エッチング)側溝51を形成してから、図12に示すように切削ブレード41をTEG50に切り込ませて切削してTEG50を除去してもよい。このようにすれば、切削ブレード41が基板10に切り込んだ場合でも、発生するクラックがストリートSを越えてデバイスD領域に到達して生じることを抑制することができる。TEG50を切削ブレード41で除去した後、図13に示すようにプラズマエッチングしてエッチング溝52を形成することにより、ウエーハWを個片化することができる。なお、切削ブレード41に代えてレーザー光照射によりTEG50を除去してもよい。後述する第2実施形態にも同様に適用してよい。
【0039】
(h)貼り替え工程
次に、図1(h)に示すように、ウエーハWの絶縁膜11及び表面電極12が形成された側の面に保護部材17を貼着するとともに、凹部W3から支持基板14を剥離し、裏面電極13を露出させる。また、保護部材17の外周部にはリング状のフレーム18を貼着する。
【0040】
(i)金属膜除去工程
次に、保護部材17が貼着されたウエーハWの裏面電極13に対し、微粒子をストリートSに沿って吹きつけるブラスト処理により、図1(i)に示すように、裏面電極13のうち、ストリートSに対応する部分、すなわちストリートSの裏面側を部分的に除去する。なお、微粒子は、デバイスにダメージを与えないように樹脂性の微粒子を用いてよい。また、吹きつけた後に気化するもの(例えば、ドライアイス)を用いてよい。また、微粒子の吹きつけではなく、ウエーハWを面方向に平行な方向にエキスパンドすることにより、ストリートSに沿って裏面電極13を引きちぎってもよい。このようにして裏面電極13のうちストリートSに対応する部分を除去することにより、個々のチップCに分割される。また、リング状補強部W4がデバイス領域W1から分離される。
【0041】
なお、この後にチップCをピックアップするために、裏面電極13側にテープを貼着する。また、テープの外周部にはフレーム18が貼着される。一方、支持基板17は各チップCから剥離される。
【0042】
このように、プラズマエッチングによって個々のチップCが形成されるため、個々のチップCは、切削ブレードによる切削時の機械的ダメージや、レーザ光による加工時の熱的ダメージを受けない。よって、チップCを構成するデバイスの品質を向上させることができる。
【0043】
また、裏面電極形成のために図7に示した減圧成膜装置3にウエーハWが搬送されるときには、ウエーハWにリング状補強部W4が形成されているため、ウエーハWの強度が高く、破損しにくい。
【0044】
2 第2実施形態
第2実施形態では、以下の4工程(a)−(d)は、図14(a)−(d)に示すように、第1実施形態と同様に実施される。
(a)デバイス形成工程
(b)絶縁膜成膜・電極形成工程
(c)リング状補強部形成工程
(d)イオン注入・裏面電極形成工程
【0045】
(e)リング状補強部除去工程
次に、図14(e)に示すように、裏面電極13側にテープ17aを貼着し、テープ17aの外周部にリング状のフレーム19を貼着する。そして、例えば切削装置のチャックテーブル40にテープ17a側を保持し、チャックテーブル40を回転させながらリング状補強部W4の内側に切削ブレード(不図示)を切り込ませることにより、デバイス領域W1(図4参照)とリング状補強部W4とを分離し、リング状補強部W4を除去する。
【0046】
(f)支持基板貼着工程
次に、図14(f)に示すように、裏面電極13からテープ17aを剥離し、裏面電極13に支持基板14aを貼着する。このようにして、裏面電極13が形成されリング状補強部W4が除去されたウエーハWが支持基板14aによって支持される。
【0047】
(g)エッチングマスク形成工程
次に、図14(g)に示すように、支持基板14aによって支持されたウエーハWの絶縁膜11及び表面電極12の上に、エッチングマスク15bを形成する。エッチングマスク15bの形成方法は、第1実施形態と同様であり、ストリートSに沿って開口15cを形成する。
【0048】
また、開口15cを形成した後、エッチングマスク15bを介して絶縁膜11をエッチングする。エッチング条件は、第1実施形態のプラズマエッチング工程における絶縁膜11のエッチング時と同様である。エッチングマスク15bを介して絶縁膜11をエッチングすることにより、基板10のうちストリートSの部分が露出する。
【0049】
(h)プラズマエッチング工程
次に、エッチングマスク15bを介してストリートSに沿って基板10をプラズマエッチングする。エッチング条件は、第1実施形態のプラズマエッチング工程における基板10のエッチング時と同様である。ストリートSに沿って基板10をエッチングすることにより、図14(h)に示すように、エッチング溝16が形成され、裏面電極13が露出する。
【0050】
(i)貼り替え工程
プラズマエッチング工程終了後、図14(i)に示すように、絶縁膜11及び表面電極12に保護部材17を貼着し、保護部材17の外周部にリング状のフレーム18を貼着する。また、裏面電極13から支持基板14aを剥離する。このようにして、裏面電極13が露出した状態とする。
【0051】
(j)金属膜除去工程
次に、裏面電極13のうちストリートSに対応する部分を除去する。具体的な除去方法は、第1実施形態と同様である。このようにして裏面電極13のうちストリートSに対応する部分を除去することにより、個々のチップCに分割される。
【0052】
3 第3実施形態
第3実施形態では、以下の4工程は、図15(a)−(d)に示すように、第1実施形態及び第2実施形態と同様に実施される。
(a)デバイス形成工程
(b)絶縁膜成膜・電極形成工程
(c)リング状補強部形成工程
(d)イオン注入・裏面電極形成工程
【0053】
(e)支持基板貼着・リング状補強部除去工程
図15(e)に示すように、絶縁膜11及び表面電極12に支持基板14aを貼着し、裏面電極13が露出した状態とする。そして、リング状補強部W4の内側を切削ブレードによって切削し、リング状補強部W4を除去する。
【0054】
(f)エッチングマスク形成工程
次に、図15(f)に示すように、裏面電極13の上にレジストを形成し、ストリートSに対応する部分を除去することにより、エッチングマスク15dを形成する。エッチングマスク15dの形成方法は、第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、ストリートSに沿って開口15eを形成する。例えば、アルゴンプラズマを用いて裏面電極となる金属膜を逆スパッタして金属膜を除去してよい。
このときの300mmウエーハを用いた場合の条件としては、図8の上部電極(ガス噴出ヘッド81)にRF周波数13.56MHz、2kWの高周波電力を印加し、下部電極(静電チャック90)に2MHz、500Wのバイアス電力を印加し、チャンバ92内圧力を1Pa、Arガスを100sccm供給して、逆スパッタする。
【0055】
また、開口15eを形成した後、エッチングマスク15dを介して絶縁膜11をエッチングする。エッチング条件は、第1実施形態及び第2実施形態のプラズマエッチング工程における絶縁膜11のエッチング時と同様である。エッチングマスク15bを介して絶縁膜11をエッチングすることにより、基板10のうちストリートSの部分が露出する。
【0056】
なお、開口15eの形成は、レーザ加工によって行うこともできる。すなわち、ストリートSに沿って、エッチングマスク15dに対して吸収性を有する波長のレーザ光を照射してアブレーション加工することにより、その部分のレジストを除去して開口15eを形成することもできる。また、裏面電極13を構成する金属に対して吸収性を有する波長のレーザ光を用いると、ストリートSに沿って裏面電極13を除去することもできる。
【0057】
エッチングマスク15bとして、薄膜や水溶性の保護膜を使用することもできる。この場合も、エッチングやレーザ加工によって開口15eを形成する。水溶性の保護膜としては、例えば株式会社ディスコが提供する「HogoMax」シリーズがある。エッチングマスク15bとして水溶性の保護膜を使用すると、プラズマエッチング後に、洗浄液を供給することによりエッチングマスクを除去することができ、効率的である。
【0058】
(g)プラズマエッチング工程
次に、エッチングマスク15dを介して、ウエーハWの裏面側からストリートSに沿って基板10をプラズマエッチングする。エッチング条件は、第1実施形態及び第2実施形態のプラズマエッチング工程における基板10のエッチング時と同様である。ストリートSに沿って基板10をエッチングすることにより、図11(g)に示すように、エッチング溝16aが形成され、個々のチップCに分割される。
【0059】
(h)貼り替え工程
次に、図11(h)に示すように、裏面電極13を保護部材17を貼着し、保護部材17の外周部にリング状のフレーム18を貼着する。また、絶縁膜11及び表面電極12から支持基板14aを剥離する。このようにして、絶縁膜11及び表面電極12が露出すると、その後、各チップCがピックアップされる。
【符号の説明】
【0060】
W:ウエーハ
W1:デバイス領域 D:デバイス S:ストリート
W2:外周余剰領域 W3:凹部 W4:リング状補強部 W5:底面
C:チップ
1:保護部材
10:基板 10a:表面
101:パワーMOSFET 102:IGBT 103:金属膜 104:酸化膜
105:ソース電極 106:裏面電極 107:エミッタ電極 108:裏面電極
109:酸化膜 109a:ゲート電極
11:絶縁膜 11a、11b:Low−k膜 11c:パッシベーション膜
110a、110b:側面 110c:凹部 110d:パッシベーション壁
12:表面電極 13:裏面電極 14,14a:支持基板
15,15b,15d:エッチングマスク 15a,15c,15e:開口
16:エッチング溝 17:保護部材 17a:テープ 18,19:フレーム
2:研削装置
20:チャックテーブル 21:研削手段 22:回転軸 23:ホイール 24:砥石
3:減圧成膜装置
31:チャンバ 32:保持部 33:励磁部材 34:スパッタ源 35:高周波電源
36:導入口 37:減圧口
40:チャックテーブル
50:TEG 51:エッチング側溝 52:エッチング溝
9:プラズマエッチング装置
90:静電チャック(ESC) 900:保持テーブル 901:電極
91:ガス噴出ヘッド 910:ガス拡散空間 911:ガス導入口
912:ガス吐出口 913:ガス配管
92:チャンバ 920:搬入出口 921:ゲートバルブ
93:ガス供給部 94:整合器 95:高周波電源 96:排気管
97:排気装置 98:制御部
図1
図2
図3
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