(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理体に形成された薄膜に不純物をドープするドープ処理および前記薄膜にドープされた不純物を拡散する拡散処理により被処理体に不純物ドープ薄膜を形成する熱処理システムであって、
前記ドープ処理および前記拡散処理に関する熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段と、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された前記ドープ処理に関する熱処理条件の変化と、前記ドープ処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示すドープ処理モデルと、前記熱処理条件記憶手段に記憶された前記拡散処理に関する熱処理条件の変化と、前記拡散処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す拡散処理モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件で前記不純物ドープ薄膜を形成する熱処理手段と、
前記熱処理手段により形成された不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるか否かを判別し、前記所望の範囲に含まれないと判別すると、当該不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度と前記モデル記憶手段により記憶された前記ドープ処理モデル及び前記拡散処理モデルとに基づいて、前記膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるような前記ドープ処理および前記拡散処理の熱処理条件を算出する算出手段と、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を前記算出手段により算出された熱処理条件に変更し、変更した熱処理条件でドープ処理および拡散処理を行うことにより、前記所望の範囲に含まれる不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度に調整する調整手段と、
を、備えることを特徴とする熱処理システム。
被処理体に形成された薄膜に不純物をドープするドープ処理および前記薄膜にドープされた不純物を拡散する拡散処理により被処理体に不純物ドープ薄膜を形成する熱処理方法であって、
前記ドープ処理および前記拡散処理に関する熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された前記ドープ処理に関する熱処理条件の変化と、前記ドープ処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示すドープ処理モデルと、前記熱処理条件記憶工程で記憶された前記拡散処理に関する熱処理条件の変化と、前記拡散処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す拡散処理モデルと、を記憶するモデル記憶工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された熱処理条件で前記不純物ドープ薄膜を形成する熱処理工程と、
前記熱処理工程により形成された不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるか否かを判別し、前記所望の範囲に含まれないと判別すると、当該不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度と前記モデル記憶工程で記憶された前記ドープ処理モデル及び前記拡散処理モデルとに基づいて、前記膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるような前記ドープ処理および前記拡散処理の熱処理条件を算出する算出工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された熱処理条件を前記算出工程で算出された熱処理条件に変更し、変更した熱処理条件でドープ処理および拡散処理を行うことにより、前記所望の範囲に含まれる不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度に調整する調整工程と、
を、備えることを特徴とする熱処理方法。
被処理体に形成された薄膜に不純物をドープするドープ処理および前記薄膜にドープされた不純物を拡散する拡散処理により被処理体に不純物ドープ薄膜を形成する熱処理システムとして機能させるプログラムであって、
コンピュータを、
前記ドープ処理および前記拡散処理に関する熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された前記ドープ処理に関する熱処理条件の変化と、前記ドープ処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示すドープ処理モデルと、前記熱処理条件記憶工程で記憶された前記拡散処理に関する熱処理条件の変化と、前記拡散処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す拡散処理モデルと、を記憶するモデル記憶手段、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件で前記不純物ドープ薄膜を形成する熱処理手段、
前記熱処理手段により形成された不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるか否かを判別し、前記所望の範囲に含まれないと判別すると、当該不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度と前記モデル記憶手段により記憶された前記ドープ処理モデル及び前記拡散処理モデルとに基づいて、前記膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるような前記ドープ処理および前記拡散処理の熱処理条件を算出する算出手段、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を前記算出手段により算出された熱処理条件に変更し、変更した熱処理条件でドープ処理および拡散処理を行うことにより、前記所望の範囲に含まれる不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度に調整する調整手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば、リン(P)のような不純物がドープ(Dope)された薄膜の製造方法では、薄膜に不純物をドープするドープ工程と、ドープされた不純物の膜中不純物濃度を均一にするアニール工程と、を備えるものがある。このような製造方法では、それぞれの工程毎に製造条件を定める必要があり、不純物濃度を均一に調整する作業が複雑になってしまう。さらに、これらの工程の製造条件は互いに干渉し合うことから、不純物濃度を均一に調整する作業の難易度が高くなってしまう。特に、薄膜の深さ方向の不純物濃度を均一に調整することは困難である。
【0008】
このため、不純物をドープした薄膜の製造工程では、熱処理システムやプロセスに関する知識や経験の豊富な操作者の経験や勘に基づいて行われており、熱処理システムやプロセスに関する知識や経験のない操作者であっても、膜中の不純物濃度が均一になるような製造条件に容易に調整することができる熱処理システム及び熱処理方法が求められている。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、製造条件を容易に調整することができる熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる熱処理システムは、
被処理体に形成された薄膜に不純物をドープするドープ処理および前記薄膜にドープされた不純物を拡散する拡散処理により被処理体に不純物ドープ薄膜を形成する熱処理システムであって、
前記ドープ処理および前記拡散処理に関する熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段と、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された
前記ドープ処理に関する熱処理条件の変化と、
前記ドープ処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す
ドープ処理モデル
と、前記熱処理条件記憶手段に記憶された前記拡散処理に関する熱処理条件の変化と、前記拡散処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す拡散処理モデルと、を記憶するモデル記憶手段と、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件で前記不純物ドープ薄膜を形成する熱処理手段と、
前記熱処理手段により形成された不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるか否かを判別し、前記所望の範囲に含まれないと判別すると、当該不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度と前記モデル記憶手段により記憶された
前記ドープ処理モデル及び前記拡散処理モデルとに基づいて、前記膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるような前記ドープ処理および前記拡散処理の熱処理条件を算出する算出手段と、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を前記算出手段により算出された熱処理条件に変更し、変更した熱処理条件でドープ処理および拡散処理を行うことにより、前記所望の範囲に含まれる不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度に調整する調整手段と、
を、備えることを特徴とする。
【0011】
複数枚の前記薄膜が形成された被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段と、
前記処理室内にドープ用ガスを供給する複数のガス供給手段と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御手段と、を、さらに備え、
前記モデル記憶手段
に記憶された前記ドープ処理モデルは、前記ドープ処理における前記加熱手段により加熱される処理室内の温度、前記圧力制御手段により制御される処理室内の圧力、前記ガス供給手段により供給させるドープ用ガスの流量、
および前記ドープ処理の時間
の変化と、前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示すモデルであり、前記モデル記憶手段に記憶された前記拡散処理モデルは、前記拡散処理における前記加熱手段により加熱される処理室内の温度、および、前記拡散処理の時間の変化と、前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示すモデル
であり、
前記算出手段は、前記膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるような前記ドープ処理における前記加熱手段により加熱される処理室内の温度、前記圧力制御手段により制御される処理室内の圧力、前記ガス供給手段により供給させるドープ用ガスの流量、前記ドープ処理の時間、前記拡散処理における前記加熱手段により加熱される処理室内の温度、および、前記拡散処理の時間を算出してもよい。
【0012】
前記処理室は複数のゾーンに区分けされ、
前記モデル記憶手段に記憶された
前記ドープ処理モデルは、ゾーンごとの処理室内の温度およびドープ用ガスの流量の変化と、ゾーンごとの不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示し、
前記モデル記憶手段に記憶された前記拡散処理モデルは、ゾーンごとの処理室内の温度の変化と、ゾーンごとの不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示し、
前記加熱手段は、前記処理室内のゾーンごとに温度設定可能であり、
前記ガス供給手段は、前記処理室内のゾーンごとにドープ用ガスの流量を設定可能であってもよい。
【0013】
前記モデル記憶手段に記憶された
前記ドープ処理モデル及び前記拡散処理モデルは、例えば、前記薄膜の深さごとの膜中不純物濃度の変化と、前記熱処理条件の変化との関係を示すモデルが記憶されている。
前記算出手段は、前記膜中不純物濃度が、前記薄膜の深さ方向に均一となるように、前記ドープ処理および前記拡散処理の熱処理条件を算出してもよい。
【0014】
本発明の第2の観点にかかる熱処理方法は、
被処理体に形成された薄膜に不純物をドープするドープ処理および前記薄膜にドープされた不純物を拡散する拡散処理により被処理体に不純物ドープ薄膜を形成する熱処理方法であって、
前記ドープ処理および前記拡散処理に関する熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された
前記ドープ処理に関する熱処理条件の変化と、
前記ドープ処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す
ドープ処理モデル
と、前記熱処理条件記憶工程で記憶された前記拡散処理に関する熱処理条件の変化と、前記拡散処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す拡散処理モデルと、を記憶するモデル記憶工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された熱処理条件で前記不純物ドープ薄膜を形成する熱処理工程と、
前記熱処理工程により形成された不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるか否かを判別し、前記所望の範囲に含まれないと判別すると、当該不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度と前記モデル記憶工程で記憶された
前記ドープ処理モデル及び前記拡散処理モデルとに基づいて、前記膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるような前記ドープ処理および前記拡散処理の熱処理条件を算出する算出工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された熱処理条件を前記算出工程で算出された熱処理条件に変更し、変更した熱処理条件でドープ処理および拡散処理を行うことにより、前記所望の範囲に含まれる不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度に調整する調整工程と、
を、備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
被処理体に形成された薄膜に不純物をドープするドープ処理および前記薄膜にドープされた不純物を拡散する拡散処理により被処理体に不純物ドープ薄膜を形成する熱処理システムとして機能させるプログラムであって、
コンピュータを、
前記ドープ処理および前記拡散処理に関する熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された
前記ドープ処理に関する熱処理条件の変化と、
前記ドープ処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す
ドープ処理モデル
と、前記熱処理条件記憶工程で記憶された前記拡散処理に関する熱処理条件の変化と、前記拡散処理における前記不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す拡散処理モデルと、を記憶するモデル記憶手段、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件で前記不純物ドープ薄膜を形成する熱処理手段、
前記熱処理手段により形成された不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるか否かを判別し、前記所望の範囲に含まれないと判別すると、当該不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度と前記モデル記憶手段により記憶された
前記ドープ処理モデル及び前記拡散処理モデルとに基づいて、前記膜中不純物濃度が所望の範囲に含まれるような前記ドープ処理および前記拡散処理の熱処理条件を算出する算出手段、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を前記算出手段により算出された熱処理条件に変更し、変更した熱処理条件でドープ処理および拡散処理を行うことにより、前記所望の範囲に含まれる不純物ドープ薄膜の膜中不純物濃度に調整する調整手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造条件を容易に調整することができる熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを、
図1に示すバッチ式の縦型の熱処理装置1に適用した場合を例に本実施の形態を説明する。また、本実施の形態では、被処理体に形成されたポリシリコン(POLY)の薄膜に、ドープ用ガスとしてPH
3ガスを用いて、膜中リン(P)濃度が均一なリンドープポリシリコン膜(POLY膜)を形成する場合を例に本発明を説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態の熱処理装置1は、略円筒状で有天井の反応管2を備えている。反応管2は、その長手方向が垂直方向に向くように配置されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0020】
反応管2の下側には、略円筒状のマニホールド3が設けられている。マニホールド3は、その上端が反応管2の下端と気密に接合されている。マニホールド3には、反応管2内のガスを排気するための排気管4が気密に接続されている。排気管4には、バルブ、真空ポンプなどからなる圧力調整部5が設けられており、反応管2内を所望の圧力(真空度)に調整する。
【0021】
マニホールド3(反応管2)の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、ボートエレベータ7により上下動可能に構成され、ボートエレベータ7により蓋体6が上昇するとマニホールド3(反応管2)の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ7により蓋体6が下降すると反応管2の下方側(炉口部分)が開口されるように配置されている。
【0022】
蓋体6の上部には、保温筒(断熱体)8を介して、ウエハボート9が設けられている。ウエハボート9は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容(保持)するウエハ保持具であり、本実施の形態では、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚、例えば、150枚収容可能に構成されている。そして、ウエハボート9に半導体ウエハWを収容し、ボートエレベータ7により蓋体6を上昇させることにより、半導体ウエハWが反応管2内にロードされる。
【0023】
反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなるヒータ部10が設けられている。このヒータ部10により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。ヒータ部10は、例えば、3段に配置されたヒータ11〜13から構成され、ヒータ11〜13には、それぞれ電力コントローラ16〜18が接続されている。このため、この電力コントローラ16〜18にそれぞれ独立して電力を供給することにより、ヒータ11〜13をそれぞれ独立に所望の温度に加熱することができる。このように、反応管2内は、このヒータ11〜13により、
図3に示すような3つのゾーンに区分されている。例えば、反応管2内のTOP(ZONE)を加熱する場合には、電力コントローラ16を制御してヒータ11を所望の温度に加熱する。反応管2内のCENTER(CTR(ZONE))を加熱する場合には、電力コントローラ17を制御してヒータ12を所望の温度に加熱する。反応管2内のBOTTOM(BTM(ZONE))を加熱する場合には、電力コントローラ18を制御してヒータ13を所望の温度に加熱する。
【0024】
また、マニホールド3には、反応管2内に処理ガスを供給する複数の処理ガス供給管が設けられている。本例では、処理ガス供給管から供給される処理ガスとして、ドープ用ガスとしてのPH
3ガスなどがある。なお、
図1では、マニホールド3にPH
3ガスを供給する3つのPH
3ガス供給管21〜23を図示している。
【0025】
PH
3ガス供給管21は、マニホールド3の側方からウエハボート9の上部(TOP)付近まで延びるように形成されている。PH
3ガス供給管22は、マニホールド3の側方からウエハボート9の中央(CTR)付近まで延びるように形成されている。PH
3ガス供給管23は、マニホールド3の側方からウエハボート9の下部(BTM)付近まで延びるように形成されている。このため、反応管2内のTOP(ZONE)からPH
3ガスを供給する場合にはPH
3ガス供給管21を介して反応管2内に供給し、反応管2内のCTR(ZONE)からPH
3ガスを供給する場合にはPH
3ガス供給管22を介して反応管2内に供給し、反応管2内のBTM(ZONE)からPH
3ガスを供給する場合にはPH
3ガス供給管23を介して反応管2内に供給する。
【0026】
各PH
3ガス供給管21〜23には、それぞれ、流量調整部24〜26が設けられている。流量調整部24〜26は、PH
3ガス供給管21〜23内を流れるPH
3ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ(MFC)などから構成されている。このため、PH
3ガス供給管21〜23から供給されるPH
3ガスは、流量調整部24〜26により所望の流量に調整されて、それぞれ反応管2内に供給される。
【0027】
また、熱処理装置1は、反応管2内のガス流量、圧力、処理雰囲気の温度といった処理パラメータを制御するための制御部(コントローラ)50を備えている。制御部50は、流量調整部24〜26、圧力調整部5、ヒータ11〜13の電力コントローラ16〜18等に制御信号を出力する。
図2に制御部50の構成を示す。
【0028】
図2に示すように、制御部50は、モデル記憶部51と、レシピ記憶部52と、ROM(Read Only Memory)53と、RAM(Random Access Memory)54と、I/O(Input/Output Port)ポート55と、CPU(Central Processing Unit)56と、これらを相互に接続するバス57と、から構成されている。
【0029】
モデル記憶部51には、ドープ工程の時間、圧力、温度(TOP、CTR、BTM)、ガス(PH
3)の流量(TOP、CTR、BTM)、アニール(拡散)工程の温度(TOP、CTR、BTM)、時間の変化と、POLY膜(表層、中層、深層)の膜中P濃度との関係を示すモデルが記憶されている。なお、このモデルの詳細については後述する。
【0030】
レシピ記憶部52には、この熱処理装置1で実行される成膜処理の種類に応じて、制御手順を定めるプロセス用レシピが記憶されている。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みの半導体ウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、ガスの供給の開始及び停止のタイミング、供給量などを規定する。
【0031】
ROM53は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU56の動作プログラムなどを記憶する記録媒体である。
RAM54は、CPU56のワークエリアなどとして機能する。
【0032】
I/Oポート55は、温度、圧力、ガスの流量に関する測定信号をCPU56に供給すると共に、CPU56が出力する制御信号を各部(圧力調整部5、ヒータ11〜13の電力コントローラ16〜18、流量調整部24〜26等)へ出力する。また、I/Oポート55には、操作者が熱処理装置1を操作する操作パネル58が接続されている。
【0033】
CPU56は、制御部50の中枢を構成し、ROM53に記憶された動作プログラムを実行し、操作パネル58からの指示に従って、レシピ記憶部52に記憶されているプロセス用レシピに沿って、熱処理装置1の動作を制御する。
【0034】
また、CPU56は、モデル記憶部51に記憶されているモデルと、ゾーン毎に測定した薄膜の膜中P濃度とに基づいて、ドープ工程および拡散工程の製造条件を算出する。また、CPU56は、対応するレシピ記憶部52に記憶されているドープ工程および拡散工程の製造条件を、算出したドープ工程および拡散工程の製造条件に更新する。そして、CPU56は、更新したドープ工程および拡散工程の製造条件となるように、電力コントローラ等に制御信号を出力する。
バス57は、各部の間で情報を伝達する。
【0035】
次に、モデル記憶部51に記憶されているモデルについて説明する。前述のように、モデル記憶部51には、ドープ工程の時間、圧力、温度(TOP、CTR、BTM)、ガス(PH
3)の流量(TOP、CTR、BTM)、アニール(拡散)工程の温度(TOP、CTR、BTM)、時間の変化と、POLY膜(表層、中層、深層)の膜中P濃度との関係を示すモデルが記憶されている。
図4に、このモデルの一例を示す。
【0036】
図4に示すように、このモデルは、Dope工程の処理時間を1分(min)、圧力を1Pa、所定ZONEの温度を1℃、PH
3の流量を1sccm、拡散工程の所定ZONEの温度を1℃または処理時間を1min増やした、TOP、CTR、BTMのゾーン毎にPOLY膜の深さの異なる3箇所(表層、中層、深層)の膜中P濃度がどれだけ変化するかを示している。
【0037】
例えば、
図4中の実線で囲まれた箇所は、Dope工程において、電力コントローラ18を制御することによりヒータ13を加熱して、BTMゾーンの温度設定値を1℃上げると、BTMゾーンのPOLY膜の表層の膜中P濃度が0.104(E+20)atoms/cm
3増加し、中層の膜中P濃度が0.148(E+20)atoms/cm
3増加し、深層の膜中P濃度が0.134(E+20)atoms/cm
3増加することを示している。
【0038】
また、
図4中の破線で囲まれた箇所は、拡散工程の処理時間を1min増やすと、BTMゾーンのPOLY膜の表層の膜中P濃度が0.06(E+20)atoms/cm
3増加し、中層の膜中P濃度が0.18(E+20)atoms/cm
3減少し、深層の膜中P濃度が0.06(E+20)atoms/cm
3増加することを示している。
【0039】
このようなモデルを用い、各ZONE、および、各深さについて、POLY膜にDope、拡散された膜中P濃度が均一となるDope工程および拡散工程の製造条件を最適化アルゴリズムを利用して算出、調整する。なお、このモデルは、Dope工程および拡散工程の製造条件を変化させたときに、各ZONEのPOLY膜(表層、中層、深層)の膜中P濃度がどれだけ変化するかを示すことができるものであればよく、これ以外の種々のモデルを用いてもよい。
【0040】
また、このモデルは、装置の状態等によってデフォルトの数値が最適でない場合も考えられることから、ソフトウエアに拡張カルマンフィルターなどを付加して学習機能を搭載することにより、モデルの学習を行うものであってもよい。このカルマンフィルターによる学習機能については、例えば、米国特許第5 ,991,525号公報などに開示されている手法を利用することができる。
【0041】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いて、POLY膜の膜中P濃度を調整する調整方法(調整処理)について説明する。本例では、POLY膜にリン(P)をドープ、拡散して、形成されたPOLY膜の各ゾーンおよび各深さの膜中P濃度を均一に調整する場合を例に説明する。
図5は、本例の調整処理を説明するためのフローチャートである。
【0042】
この調整処理においては、操作者は、操作パネル58を操作して、プロセス種別(本例では、PH
3ガスを用いたリンドープPOLY膜の形成)を選択するとともに、
図6に示すように、ターゲットとするPOLY膜の膜中P濃度をゾーンごとに入力する。
【0043】
制御部50(CPU56)は、プロセス種別等の必要な情報が入力されたか否かを判別する(ステップS1)。CPU56は、必要な情報が入力されていると判別すると(ステップS1;Yes)、入力されたプロセス種別に対応するプロセス用レシピをレシピ記憶部52から読み出す(ステップS2)。プロセス用レシピには、反応管2内の圧力、温度、PH
3ガスの流量などの製造条件が記憶されている。このプロセス用レシピには、
図7に示すように、反応管2内のZONEごとに、Dope工程の温度(
図7(a))、時間(
図7(b))、PH
3ガスの流量(
図7(c))、拡散工程の温度(
図7(d))、拡散時間(
図7(e))などが記憶されている。
【0044】
次に、CPU56は、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、少なくとも各ZONEに半導体ウエハW(モニターウエハ)を搭載したウエハボート9を蓋体6上に配置する。続いて、CPU56は、ボートエレベータ7(蓋体6)を上昇して、ウエハボート9(モニターウエハ)を反応管2内にロードする。そして、CPU56は、レシピ記憶部52から読み出したレシピに従って、圧力調整部5、ヒータ11〜13の電力コントローラ16〜18、流量調整部24〜26等を制御して、モニターウエハに形成されたPOLY膜にリン(P)をドープ、拡散する(ステップS3)。
【0045】
CPU56は、ドープ、拡散処理が終了すると、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、POLY膜にリンがドープされたモニターウエハをアンロードし、このモニターウエハを、例えば、図示しない測定装置に搬送し、POLY膜の膜中P濃度を測定させる(ステップS4)。測定装置では、POLY膜の膜中P濃度を測定すると、例えば、
図8に示すような測定したPOLY膜の膜中P濃度データを熱処理装置1(CPU56)に送信する。なお、操作者が操作パネル58を操作して、測定結果を入力してもよい。
【0046】
CPU56は、測定されたPOLY膜の膜中P濃度データを受信すると、受信した膜中P濃度データが、入力されたPOLY膜の膜中P濃度と一致するか否かを判別する(ステップS5)。なお、操作者がPOLY膜の膜中P濃度と一致するか否かを判別し、その結果を操作パネル58を操作して入力してもよい。
【0047】
CPU56は、両者が一致しないと判別すると(ステップS5;No)、製造条件、例えば、Dope工程の温度、時間、PH
3ガスの流量、拡散工程の温度、時間を算出(調整)する(ステップS6)。
【0048】
これらの製造条件の数値の算出は、例えば、
図4に示すドープ工程の時間、圧力、温度、PH
3の流量、拡散工程の温度、時間の変化と、POLY膜(表層、中層、深層)の膜中P濃度との関係を示すモデルから、目標の膜中P濃度となるような温度、PH
3の流量等を最適化アルゴリズムを利用して算出する。例えば、
図8に示す測定結果の場合、Dope工程の温度、時間、PH
3ガスの流量、拡散工程の温度、時間は、
図9に示す値が算出される。
【0049】
次に、CPU56は、読み出したレシピの製造条件を算出した製造条件(Dope工程の温度、時間、PH
3ガスの流量、拡散工程の温度、時間)に更新し(ステップS7)、再び、ステップS3〜ステップS5を実行する。すなわち、CPU56は、Dope工程における反応管2内の温度について、ヒータ11の温度を399.3℃、ヒータ12の温度を397.7℃、ヒータ13の温度を397.4℃、Depo時間を31.1minとなるように、電力コントローラ16〜18を制御する。また、CPU56は、PH
3ガス供給管21から5.4sccm、PH
3ガス供給管22から8.6sccm、PH
3ガス供給管23から10.2sccmのPH
3ガスが供給できるように流量調整部24〜26を制御する。また、拡散工程における反応管2内の温度について、ヒータ11の温度を499.0℃、ヒータ12の温度を498.9℃、ヒータ13の温度を498.9℃、拡散時間を27.7minとなるように、電力コントローラ16〜18を制御する。そして、CPU56は、モニターウエハのPOLY膜にリン(P)をドープ、拡散し(ステップS3)、図示しない測定装置にPOLY膜の膜中P濃度を測定させた後(ステップS4)、入力されたPOLY膜の膜中P濃度と一致するか否かを判別する(ステップS5)。本例の場合、
図10に示すように、測定したPOLY膜の膜中P濃度と入力されたPOLY膜の膜中濃度とが一致した。このように、熱処理装置やプロセスに関する知識や経験のない操作者であってもPOLY膜の膜中P濃度が均一なるような製造条件に容易に調整することができた。なお、CPU56は、両者が一致しないと判別すると(ステップS5;No)、再び、ステップS6、ステップS7、ステップS3〜ステップS5を実行する。
【0050】
そして、CPU56は、両者が一致すると判別すると(ステップS5;Yes)、この処理を終了する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態によれば、プロセス種別と、ターゲットとするPOLY膜の目標P濃度を入力するだけで、POLY膜の膜中P濃度が均一なるような製造条件に容易に調整することができる。このため、熱処理装置やプロセスに関する知識や経験のない操作者であってもPOLY膜の膜中P濃度が均一となるような製造条件に容易に調整することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0053】
上記実施の形態では、測定したPOLY膜の膜厚中P濃度と、目標とするPOLY膜の膜中P濃度とを一致させる場合を例に本発明を説明したが、例えば、目標とするPOLY膜の膜中P濃度に許容可能な範囲、例えば、±1%程度の範囲を設け、この範囲内に測定したPOLY膜の膜中P濃度が含まれる場合に調整処理を終了させてもよい。
【0054】
上記実施の形態では、ドープ用ガスとしてPH
3ガスを用いてリンドープポリシリコン膜(POLY膜)を形成する場合を例に本発明を説明したが、ドープさせる不純物はリンに限定されるものではなく、例えば、ボロン(B)、炭素(C)、ヒ素(As)であってもよい。また、形成する薄膜はポリシリコン膜に限定されるものではなく、アモルファスシリコン膜(a−Si膜)、エピタキシャルSi膜(Epi−Si膜)、ゲルマニウム膜(Ge膜)、シリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)などの各種の成膜に本発明を適用可能である。
【0055】
また、ドープ用ガスとして、例えば、1%PH
3ガス、10%PH
3ガスのような不純物の濃度の異なる複数の不純物添加ガスを用い、これらを切り替えることにより膜中P濃度を調整するようにしてもよい。
【0056】
上記実施の形態では、熱処理装置1に3つのPH
3ガス供給管が設けられている場合を例に本発明を説明したが、PH
3ガス供給管の数は2つであっても、4つ以上であってもよく、任意に設定可能である。また、ヒータの段数(ゾーンの数)や、各ゾーンから抽出するモニターウエハの数などは任意に設定可能である。
【0057】
上記実施の形態では、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。また、本発明は、半導体ウエハの処理に限定されるものではなく、例えば、FPD(Flat Panel Display)基板、ガラス基板、PDP(Plasma Display Panel)基板などの処理にも適用可能である。
【0058】
本発明の実施の形態にかかる制御部50は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)など)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部50を構成することができる。
【0059】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS:Bulletin Board System)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。