特許第6564802号(P6564802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564802基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564802
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 27/11568 20170101ALI20190808BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20190808BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20190808BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20190808BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L21/31 C
   H01L27/11568
   H01L29/78 371
   H01L21/02 Z
   C23C16/42
   C23C16/505
   H01L21/316 M
   H01L21/318 M
   H05H1/46 M
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-55907(P2017-55907)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-160507(P2018-160507A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】島本 聡
(72)【発明者】
【氏名】芦原 洋司
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一行
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−143328(JP,A)
【文献】 特開2014−120564(JP,A)
【文献】 特開2003−077904(JP,A)
【文献】 特開2011−249626(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0075875(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/42
C23C 16/505
H01L 21/02
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/336
H01L 27/11568
H01L 29/788
H01L 29/792
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理モジュール内に設けられ、絶縁膜が形成された基板を処理する一周波処理室と、前記処理モジュール内で前記一周波処理室に隣接し、前記一周波処理室で処理された基板を処理する二周波処理室と、前記一周波処理室と前記二周波処理室それぞれに、少なくともシリコンと不純物とを含むシリコン含有ガスを供給するガス供給部と、前記一周波処理室と前記二周波処理室それぞれに接続されるプラズマ生成部と、前記二周波処理室に接続されるイオン制御部と、前記処理モジュール内に設けられ、前記一周波処理室と前記二周波処理室との間で基板を搬送する基板搬送部と、少なくとも前記ガス供給部と、前記プラズマ生成部と、前記イオン制御部と、前記基板搬送部とを制御する制御部とを有する基板処理装置。
【請求項2】
前記一周波処理室は複数設けられ、第一の前記一周波処理室は、前記二周波処理室から見て前記基板の移動方向の上流に設けられ、更に第二の前記一周波処理室は、前記二周波処理室から見て前記基板の移動方向の下流に設けられる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板搬送部は、回転軸と、複数の前記基板が円周状に載置される回転トレーとを有する請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記イオン制御部は低周波電源を有し、前記制御部は前記二周波処理室にパルス状の低周波を供給するよう前記低周波電源を制御する請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記二周波処理室には、更にアルゴンを供給する請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
絶縁膜が形成された基板を処理モジュール内に設けられた一周波処理室に搬送する工程と、前記一周波処理室に少なくともシリコンと不純物とを含むシリコン含有ガスを供給すると共に、プラズマ生成部が前記一周波処理室に高周波を供給し、前記絶縁膜上に第一シリコン窒化層を形成する工程と、前記処理モジュール内に設けられ、前記一周波処理室と前記二周波処理室との間で基板を搬送する基板搬送部によって、前記基板を、前記処理モジュール内で前記一周波処理室に隣接する二周波処理室に搬送する工程と、前記二周波処理室に前記シリコン含有ガスを供給すると共に、前記プラズマ生成部が前記二周波処理室に高周波を供給し、イオン制御部が低周波を供給して、前記第一シリコン窒化層上に、前記第一シリコン窒化層よりも応力が低く更に前記絶縁膜の応力に近い第二シリコン窒化層を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法。
【請求項7】
絶縁膜が形成された基板を処理モジュール内に設けられた一周波処理室に搬送する手順と、前記一周波処理室に少なくともシリコンと不純物とを含むシリコン含有ガスを供給すると共に、プラズマ生成部が前記一周波処理室に高周波を供給し、前記絶縁膜上に第一シリコン窒化層を形成する手順と、前記処理モジュール内に設けられ、前記一周波処理室と前記二周波処理室との間で基板を搬送する基板搬送部によって、前記基板を、前記処理モジュール内で前記一周波処理室に隣接する二周波処理室に搬送する手順と、前記二周波処理室に前記シリコン含有ガスを供給すると共に、前記プラズマ生成部が前記二周波処理室に高周波を供給し、イオン制御部が低周波を供給して、前記第一シリコン窒化層上に、前記第一シリコン窒化層よりも応力が低く更に前記絶縁膜の応力に近い第二シリコン窒化層を形成する手順とをコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は高集積化の傾向にある。それを実現する方法の一つとして、電極等を三次元的に配列する三次元構造が提案されている。このような半導体装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2015−50466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラッシュメモリの三次元構造を形成する過程では、絶縁膜と犠牲膜とを交互に積層する必要がある。ところが、絶縁膜と犠牲膜との熱膨張率の違い等の理由から、シリコンウエハにストレスがかかり、形成する過程において積層膜が破壊される現象がある。このような現象が半導体装置の特性の低下につながる恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、三次元構造のフラッシュメモリにおいても、良好な特性の半導体装置を形成可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、処理モジュール内に設けられ、絶縁膜が形成された基板を処理する第一周波処理室と、前記処理モジュール内で前記一周波処理室に隣接し、前記一周波処理室で処理された基板を処理する二周波処理室と、前記第一周波処理室と前記二周波処理室それぞれに、少なくともシリコンと不純物とを含むシリコン含有ガスを供給するガス供給部と、前記第一周波処理室と前記二周波処理室それぞれに接続されるプラズマ生成部と、前記二周波処理室に接続されるイオン制御部と、前記処理モジュール内に設けられ、前記一周波処理室と前記二周波処理室との間で基板を搬送する基板搬送部と、少なくとも前記ガス供給部と、前記プラズマ生成部と、前記イオン制御部と、前記基板搬送部とを制御する制御部とを有する技術を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る技術によれば、三次元構造のフラッシュメモリにおいても、良好な特性の半導体装置を形成可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る半導体装置の製造フローを説明する説明図である。
図2】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図3】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図4】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図5】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図6】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図7】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図8】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図9】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図10】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図11】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図12】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図13】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図14】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図15】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図16】比較例に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図17】比較例に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図18】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図19】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一の実施形態)
以下に本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1を用いて、半導体装置の製造工程の一工程を説明する。この工程では、電極を三次元的に構成した三次元構造の半導体装置を形成する。この半導体装置は、図8に記載のように、基板としてのウエハ100上に絶縁膜102と電極112とを交互に積層する積層構造を有する。以下に具体的なフローを説明する。
【0011】
(S102)
第一絶縁膜形成工程S102について、図2を用いて説明する。図2は、ウエハ100に形成する絶縁膜102を説明した図である。ウエハ100は、共通ソースライン(CSL、Common Source Line)101が形成されている。絶縁膜102は第一絶縁膜とも呼ぶ。
【0012】
ここではウエハ100上に絶縁膜102を形成する。絶縁膜102はシリコン酸化(SiO)膜で構成される。絶縁膜102は、ウエハ100を所定温度に加熱すると共に、シリコン成分を主成分とするシリコン含有ガスと酸素成分を主成分とする酸素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。この処理は、一般的な装置で構成される酸化膜形成装置にて形成される。
【0013】
(S104)
犠牲膜形成工程S104について、図3を用いて説明する。ここでは絶縁膜102上に犠牲膜104を形成する。犠牲膜104は、後述する犠牲膜除去工程S114にて除去されるものであり、絶縁膜102に対してエッチングの選択性を有するものである。エッチングの選択性を有するとは、エッチング液に晒された際、犠牲膜はエッチングされやすく、絶縁膜はエッチングされにくい性質を示す。
【0014】
犠牲膜104は、例えばシリコン窒化(SiN)膜で構成される。犠牲膜104は、ウエハ100を所定温度に加熱すると共に、シリコン成分を主成分とするシリコン含有ガスと窒素成分を主成分とする窒素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。シリコン含有ガスは、後述するように例えば塩素等の不純物を含む。詳細は後述する。ところで、形成メカニズムの違いにより、犠牲膜形成工程S104におけるウエハ100の加熱温度は絶縁膜形成工程S102と異なる。本工程にて使用するシリコン含有ガスと窒素含有ガスとをまとめて犠牲膜形成ガス、もしくは単に処理ガスと呼ぶ。
【0015】
犠牲膜104を形成する際は、犠牲膜104の膜応力を絶縁膜102の膜応力に近づけるよう処理する。
【0016】
以下に、膜応力を近づける理由について、比較例である図17を用いて説明する。図17では、犠牲膜を犠牲膜120とし、膜応力を絶縁膜102に近づけない場合の例を示す。即ち、本工程を行わずに、絶縁膜102と犠牲膜120を交互に積層したものである。絶縁膜102は、下方から順に絶縁膜102(1)、絶縁膜102(2)、・・・、絶縁膜102(8)が構成されている。また、犠牲膜120は、下方から順に犠牲膜120(1)、犠牲膜120(2)、・・・、犠牲膜120(8)が構成されている。前述したように、絶縁膜102を形成する際は、ウエハ100を所定温度に加熱すると共に、シリコン含有ガスと酸素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。また、犠牲膜120を形成する際は、ウエハ100を、絶縁膜102とは異なる所定温度に加熱すると共に、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。
【0017】
ところで、一般的に、SiO膜は圧縮応力が高く、SiN膜は引張応力が高いことが知られている。即ち、SiO膜とSiN膜は、膜応力に関して逆の特性を有する。これらの応力の性質は、膜が加熱された場合に顕著となる。
【0018】
図17においては、SiO膜で構成される絶縁膜102の形成とSiN膜で構成される犠牲膜120の形成を繰り返すが、一部の膜では絶縁膜102と犠牲膜120が同時に存在した状態でウエハ100を加熱処理する。したがって絶縁膜102と犠牲膜120との間での応力差が顕著となり、例えば絶縁膜102と犠牲膜120との間で膜はがれ等が発生し、それが半導体装置の破壊や歩留まりの低下、特性の劣化につながる恐れがある。
【0019】
例えば犠牲膜120(5)を形成する際、ウエハ100を、SiN膜を形成する温度に加熱する。その際、犠牲膜120(5)よりも下方に設けられた絶縁膜102(1)から絶縁膜102(5)は圧縮応力が高くなり、犠牲膜120(1)から犠牲膜120(4)は引っ張り応力が高くなる。従って、絶縁膜102と犠牲膜120との間で応力差が発生する。その応力差は半導体装置の破壊等につながる恐れがある。
【0020】
このような応力差を低減するために、犠牲膜形成工程S104では犠牲膜104の膜応力を絶縁膜102の膜応力に近づけるよう処理する。この処理方法の詳細は後述する。
【0021】
(S106)
ここでは、上述の絶縁膜形成工程S102から犠牲膜形成工程S104の組み合わせが所定回数実施されたか否かを判断する。即ち、図4における絶縁膜102と犠牲膜104の組み合わせが所定数積層されたか否かを判断する。本実施形態においては、例えば8層とし、絶縁膜102を8層(絶縁膜102(1)から絶縁膜102(8))、犠牲膜104を8層(犠牲膜104(1)から犠牲膜104(8))を交互に形成する。なお、犠牲膜104は、下方から順に、犠牲膜104(1)、犠牲膜104(2)、・・・、犠牲膜104(8)が構成される。
【0022】
所定回数実施していないと判断されたら、「NO」を選択し、第一絶縁膜形成工程S102に移行する。所定回数実施したと判断されたら、即ち所定層数形成されたと判断されたら、「YES」を選択し、第二絶縁膜形成工程S108に移行する。なお、ここでは絶縁膜102と犠牲膜104を8層ずつ形成した例を説明したが、それに限るものではなく、9層以上であってもよい。
【0023】
(S108)
続いて第二絶縁膜形成工程S108について説明する。ここでは図4に記載の絶縁膜105を形成する。絶縁膜105は絶縁膜102と同様の方法で形成するものであり、最も上の犠牲膜104上に形成する。
【0024】
(S110)
続いて図5を用いて、ホール形成工程S110を説明する。図5(a)は、図4と同様側面から見た図であり、図5(b)は図5(a)の構成を上方から見た図である。なお、図5(b)におけるα−α’における断面図が図5(a)に相当する。
【0025】
ここでは、絶縁膜102、105と犠牲膜104の積層構造に対して、ホール106を形成する。図5(a)に記載のように、ホール106はCSL101を露出させるように形成される。ホール106は図5(b)に記載のように絶縁膜105の面内に複数設けられる。
【0026】
(S112)
続いて、図6を用いてホール充填工程S112を説明する。ここでは、S110で形成したホール106の内側を積層膜108等で充填する工程である。ホール106内には、外周側から順に保護膜107、ゲート電極間絶縁膜-電荷トラップ膜-トンネル絶縁膜の積層膜108、チャネルポリシリコン膜109、充填絶縁膜110が形成される。各膜は筒状に構成される。
【0027】
例えば、保護膜107はSiOやメタル酸化膜で構成され、ゲート電極間絶縁膜-電荷トラップ膜-トンネル絶縁膜の積層膜108はSiO-SiN-SiO膜で構成される。犠牲膜104を除去する際に積層膜108にダメージが入るのを避けるべく、ホール106の内壁表面に、保護膜107を設け保護している。
【0028】
(S114)
続いて、図7を用いて犠牲膜除去工程S114を説明する。犠牲膜除去工程S114では、犠牲膜104をウエットエッチングで除去する。除去した結果、犠牲膜104が形成されていた位置に空隙111が形成される。ここでは、下方から順に、空隙111(1)、空隙111(2)、・・・、空隙111(8)が形成される。
【0029】
(S116)
続いて図8を用いて導電膜形成工程S116を説明する。導電膜形成工程S116では、電極となる導電膜112を空隙111に形成する。導電膜は例えばタングステン等で構成される。ここでは、導電膜112は、下方から順に、導電膜112(1)、導電膜112(2)、・・・、導電膜112(8)が構成される。
【0030】
続いて、犠牲膜形成工程S104で使用する基板処理装置200および形成方法を説明する。基板処理装置200に関しては図9から図14を用いて説明する。犠牲膜の形成方法については、図15を用いて説明する。
【0031】
(基板処理装置)
(処理容器)
図例のように、基板処理装置200は、容器202を備えている。容器202は処理モジュールとも呼ぶ。容器202は、例えば横断面が角形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。容器202内には、シリコンウエハ等のウエハ100を処理する処理室201と、ウエハ100を処理室201に搬送する際にウエハ100が通過する搬送室206とが形成されている。処理室201は、後述するシャワーヘッド230、基板載置部210等で構成される。また、搬送空間206は回転トレー222と処理容器202の底部204とで構成される。
【0032】
容器202の側面には、ゲートバルブ208に隣接した基板搬入出口205が設けられており、ウエハ100は基板搬入出口205を介して図示しない搬送室との間を移動する。底部204には、リフトピン207が複数設けられている。
【0033】
処理室201には、ウエハ100を支持する基板載置部210が配される。基板載置部210は複数設けられる。複数の基板載置部210の配置について、図10を用いて説明する。図10は基板処理装置200であって、特に回転トレー222付近を上方から見た図である。アーム240は、処理容器202の外部に配され、ウエハ100を処理容器202の内外に移載する機能を有する。なお、B−B’における縦断面図が図9に相当する。
【0034】
基板載置部210の一構成である基板載置台212は少なくとも4個設けられる。具体的には、基板搬入出口205と対向する位置から時計回りに基板載置台212a、基板載置台212b、基板載置台212c、基板載置台212dが配置される。従って、容器202に搬入されたウエハ100は、基板載置台212a、基板載置台212b、基板載置台212c、基板載置台212dの順に移動される。
【0035】
基板載置部210は、それぞれウエハ100を載置する基板載置面211(基板載置面211aから基板載置面211d)と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212(基板載置台212aから基板載置台212d)、バイアス電極215(バイアス電極215aからバイアス電極215d)、基板載置台212を支持するシャフト217(シャフト217aからシャフト217b)を主に有する。更には、加熱源としてのヒータ213(213aから213d)を有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0036】
それぞれの基板載置台212(基板載置台212aから212d)は、シャフト217(シャフト217aから217d)によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部204を貫通しており、さらに処理容器202の外部でそれぞれ対応する昇降部218(昇降部218aから218d)に接続されている。シャフト217は処理容器202と絶縁されている。
【0037】
昇降部218はシャフト217および基板載置台212を昇降させることが可能である。なお、それぞれのシャフト217下端部の周囲はベローズ219(ベローズ219aから219d)により覆われており、これにより容器202内は気密に保持されている。
【0038】
ウエハ100を搬送する際には、基板載置面211、回転トレー222が基板搬入出口205に対向する位置となるよう、基板載置台212を下降させる。ウエハ100を処理する際には、図9で示されるように、ウエハ100が処理空間209内の処理位置となるまで基板載置台212を上昇させる。
【0039】
処理容器202の蓋部203であって、それぞれの基板載置面211と対向する位置には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド230(230aから230d)がそれぞれ設けられている。上方から見ると、図11に記載のように、複数のシャワーヘッド230が配される。シャワーヘッド230は、絶縁リング232(232aから232d)を介して蓋203に支持される。絶縁リング232によってシャワーヘッド230と処理容器202は絶縁される。それぞれのシャワーヘッド230(230aから230d)の蓋にはガス導入孔231(231aから231d)が設けられる。それぞれのガス導入孔231は後述する共通ガス供給管301と連通される。なお、図11におけるA−A’線における縦断面図が図9に相当する。
【0040】
後述するアシストガス供給部を接続する場合は、シャワーヘッド230b、シャワーヘッド203cそれぞれにガス導入孔233を設ける。具体的には図11に記載のように、シャワーヘッド230bにはガス導入孔233bを設け、シャワーヘッド230cにはガス導入孔233cを設ける。このような構造とすることで、後述する二周波処理室にアシストガスを供給可能とする。
【0041】
各シャワーヘッド230と各基板載置面211の間の空間を処理空間209と呼ぶ。本実施形態においては、シャワーヘッド230aと基板載置面211aの間の空間を処理空間209aと呼ぶ。シャワーヘッド230bと基板載置面211bの間の空間を処理空間209bと呼ぶ。シャワーヘッド230cと基板載置面211cの間の空間を処理空間209cと呼ぶ。シャワーヘッド230dと基板載置面211dの間の空間を処理空間209dと呼ぶ。
【0042】
また、処理空間209を構成する構造を処理室201と呼ぶ。本実施形態においては、処理空間209aを構成し、少なくともシャワーヘッド230aと基板載置面211aを有する構造を処理室201aと呼ぶ。処理空間209bを構成し、少なくともシャワーヘッド230bと基板載置面211bを有する構造を処理室201bと呼ぶ。処理空間209cを構成し、少なくともシャワーヘッド230cと基板載置面211cを有する構造を処理室201cと呼ぶ。処理空間209dを構成し、少なくともシャワーヘッド230dと基板載置面211dを有する構造を処理室201dと呼ぶ。
【0043】
なお、ここでは、処理室201は少なくともシャワーヘッド230aと基板載置面211aを有すると記載したが、ウエハ100を処理する処理空間209を構成する構造であればよく、装置構造によっては、シャワーヘッド230構造等にこだわらないことは言うまでもない。
【0044】
各基板載置部210は、図10に記載のように、基板回転部220の軸221を中心に配置される。軸221上には、回転トレー222が設けられる。また、軸221は処理容器202の底部204を貫通するよう構成され、処理容器202の外側であって、回転トレーと異なる側には回転昇降部223が設けられる。回転昇降部223は、軸221を昇降させたり、回転させたりする。回転昇降部223によって、各基板載置部210と独立した昇降が可能となる。軸221の下端の周囲であって、処理容器202の外側には、ベローズ224が設けられる。回転方向は、例えば図10における矢印225の方向(時計回り方向)に回転される。軸221、回転トレー222、回転昇降部223をまとめて基板回転部と呼ぶ。なお、基板回転部220は基板搬送部とも呼ぶ。
【0045】
回転トレー222は例えば円状に構成される。回転トレー222の外周端には、少なくとも基板載置面211と同程度の径を有する穴部224(224aから224d)が、基板載置部210と同数設けられる。更に、回転トレー222は、穴部224の内側に向かって突き出た爪を複数有する。爪はウエハ100裏面を支持するよう構成される。本実施形態において、ウエハ100を穴部224に載置するとは、爪に載置されることを示す。
【0046】
軸221が上昇することで、基板載置面211よりも高い位置に回転トレー222が位置され、このとき基板載置面211上に載置されたウエハ100が爪によりピックアップされる。更に、軸221が回転することで、回転トレー222が回転され、ピックアップされたウエハ100が次の基板載置面211上に移動される。例えば、基板載置面211bに載置されていたウエハ100は、基板載置面211c上に移動される。その後、軸221を下降させ回転トレー222を下降させる。この時、穴部224が基板載置面211よりも下方に位置するまで下降させ、基板載置面211上にウエハ100を載置する。
【0047】
(排気系)
容器202の雰囲気を排気する排気系260を説明する。容器202には、処理室201に連通するよう、排気管262が接続される。排気管262には、処理室201内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(AutoPressure Controller)266が設けられる。APC266は開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ280からの指示に応じて排気管262のコンダクタンスを調整する。また、排気管262においてAPC266の上流側にはバルブ267が設けられる。排気管262とバルブ267、APC266をまとめて排気系260と呼ぶ。
【0048】
更に、DP(Dry Pump。ドライポンプ)269が設けられる。DP269は、排気管262を介して処理室201の雰囲気を排気する。
【0049】
(ガス供給部)
(処理ガス供給部)
続いて、図12を用いて処理ガス供給部300を説明する。ここでは各ガス導入孔231に接続される処理ガス供給部300を説明する。なお、処理ガス供給部300のみ、あるいは処理ガス供給部300と後述するアシストガス供給部340をまとめてガス供給部と呼ぶ。
【0050】
ガス導入孔231と共通ガス供給管が連通するよう、シャワーヘッド320は、バルブ302(302aから302d)、マスフローコントローラ303(303aから303d)を介して、共通ガス供給管301に接続される。各処理室へのガス供給量は、バルブ302(302aから302d)、マスフローコントローラ303(303aから303d)を用いて調整される。共通ガス供給管301には、第一ガス供給管311、第二ガス供給管321、第三ガス供給管331が接続されている。
【0051】
(第一ガス供給系)
第一ガス供給管311には、上流方向から順に、第一ガス源312、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)313、及び開閉弁であるバルブ314が設けられている。
【0052】
第一ガス源312は第一元素を含有する第一ガス(「第一元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第一元素含有ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。ここで、第一元素は、シリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、シリコン含有ガスである。具体的には、シリコン含有ガスとして、ジクロロシラン(SiHCl。DCSとも呼ぶ)やヘキサクロロジシラン(SiCl。HCDSとも呼ぶ。)ガスが用いられる。
【0053】
主に、第一ガス供給管311、マスフローコントローラ313、バルブ314により、第一ガス供給系310(シリコン含有ガス供給系ともいう)が構成される。
【0054】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管321には、上流方向から順に、第二ガス源322、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)323、及び開閉弁であるバルブ324が設けられている。
【0055】
第二ガス源322は第二元素を含有する第二ガス(以下、「第二元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第二元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第二元素含有ガスは、反応ガスとして考えてもよい。
【0056】
ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素は、例えば、窒素(N)である。本実施形態では、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスである。具体的には、窒素含有ガスとして、アンモニア(NH)ガスが用いられる。
【0057】
主に、第二ガス供給管321、マスフローコントローラ323、バルブ324により、第二ガス供給系320(反応ガス供給系ともいう)が構成される。
【0058】
(第三ガス供給系)
第三ガス供給管331には、上流方向から順に、第三ガス源332、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)333、及び開閉弁であるバルブ334が設けられている。
【0059】
第三ガス源332は不活性ガス源である。不活性ガスは、例えば、窒素(N)ガスである。
【0060】
主に、第三ガス供給管331、マスフローコントローラ333、バルブ334により、第三ガス供給系330が構成される。
【0061】
第三ガス源332から供給される不活性ガスは、基板処理工程では、容器202やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。
【0062】
なお、第一ガス供給系、第二ガス供給系、第三ガス供給系のいずれか、もしくはその組み合わせを処理ガス供給部300と呼ぶ。
【0063】
(アシストガス供給部)
続いて、図13を用いてガス導入孔233b、233cに連通されるアシスト処理ガス供給部340を説明する。
【0064】
シャワーヘッド320には、ガス導入孔233b、ガス導入孔233cと連通するよう第四ガス供給管341が接続される。
【0065】
第四ガス供給管341には、上流からアシストガス源342、マスフローコントローラ343、バルブ344(344b、344c)を介して、が設けられる。アシストガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)等、分子サイズの大きいガスが用いられる。ガス供給管341、マスフローコントローラ343、バルブ344をまとめてアシストガス供給部340と呼ぶ。なお、アシストガス供給部340に、アシストガス源342を含めても良い。
【0066】
(プラズマ生成部)
続いて図9図10図11に戻って、プラズマ生成部400を説明する。
プラズマ生成部400は各処理空間209(209aから209d)中にプラズマを生成するものである。本実施形態においては、プラズマ生成部400は、処理空間209a中にプラズマを生成する第一プラズマ生成部400a、処理空間209b中にプラズマを生成する第二プラズマ生成部400b、処理空間209c中にプラズマを生成する第三プラズマ生成部400c、処理空間209d中にプラズマを生成する第四プラズマ生成部400dを有する。
【0067】
続いて、各プラズマ生成部400の具体的構成について説明する。なお、第一プラズマ生成部400a、第二プラズマ生成部400b、第三プラズマ生成部400c、第四プラズマ生成部400dは同様の構成であるので、ここではプラズマ生成部400として、その具体的構成を説明する。
【0068】
各プラズマ生成部400の一構成である高周波電力供給線401(401aから401d)はシャワーヘッド230(230aから230d)に接続される。高周波電力供給線401には、上流から順に高周波電源402(402aから402d)、整合器403(403aから403d)が設けられる。高周波電源402はアース404に接続される。
【0069】
シャワーヘッド230と対向する基板載置部210のバイアス電極215(215aから215d)には、高周波電力出力線405(405aから405d)が接続される。高周波電力出力線405には、ハイパスフィルタ(high pass filter、以下HPFと呼ぶ。)406(406aから406d)が設けられる。ハイパスフィルタ406はアース404に接続される。
【0070】
主に高周波電力供給線401(401aから401d)、高周波電源402(402aから402d)、高周波電力出力線405(405aから405d)をまとめてプラズマ生成部400(400aから400d)と呼ぶ。また、高周波電力の供給側である高周波電力供給線401(401aから401d)、高周波電源402(402aから402d)をまとめて高周波電力供給部407(407aから407d)と呼び、出力側である高周波電力出力線405(405aから405d)を高周波電力出力部408(408aから408d)と呼ぶ。なお、高周波電力出力部408(408aから408d)にHPF406(406aから406d)を含めてもよい。
【0071】
(イオン制御部)
続いてイオン制御部410を説明する。イオン制御部410は後述する第二層103(n2)、第三層103(n3)を形成する処理空間209に低周波電力を供給可能なよう構成される。例えば、本実施形態においては、第二層103(n2)を形成する処理室201b、第三層103(n3)を形成する処理室201cに接続する。
【0072】
なお、プラズマ生成部400が接続され、イオン制御部410は接続されない処理室201(本実施形態では処理室201a、201d)は、一周波処理室とも呼ぶ。プラズマ生成部400、イオン制御部410の両方が接続された処理室(本実施形態では処理室201b、201c)を二周波処理室とも呼ぶ。
【0073】
以下に具体的例を説明する。二周波処理室(処理室201b、処理室201c)におけるバイアス電極215(215b、215c)には、イオン制御部410の一部を構成する低周波電力供給線411(411b、411c)が電気的に接続されている。本実施形態においては、バイアス電極215bにはイオン制御部410bの低周波電力供給線411bが接続され、バイアス電極215cにはイオン制御部410cの低周波電力供給線411cが接続される。
【0074】
低周波電力供給線411(411b、411c)には、上流から順に低周波電源412(412b、412c)、整合器413(413b、413c)が設けられる。低周波電源412(412b、412c)はアース414に接続される。低周波電力供給線411bの場合、上流から順に低周波電源412b、整合器413bが設けられる。低周波電源412bはアース414に接続される。また、低周波電力供給線411cの場合、上流から順に低周波電源412c、整合器413cが設けられる。低周波電源412cはアース414に接続される。
【0075】
シャワーヘッド230b、230cそれぞれには低周波電力出力線415(415b、415c)が接続される。低周波電力出力線415には、イオン制御部410の一部であるローパスフィルタ(low pass filter、以下LPFと呼ぶ。)416(416b、416c)が設けられる。LPF416は、アース414に接続される。
【0076】
主に低周波電力供給線411(411b、411c)、低周波電源412(412b、412c)、低周波電力出力線415(415b、415c)をまとめてイオン制御部410(410b、410c)と呼ぶ。また、低周波電力の供給側である低周波電力供給線411(411b、411c)、低周波電源412(412b、412c)をまとめて低周波電力供給部417(417b、417c)と呼び、出力側である低周波電力出力線415(415b、415c)を低周波電力出力部418(418b、418c)と呼ぶ。なお、低周波電力出力部418にLPF416(416b、416c)を含めてもよい。
【0077】
例えば低周波とは1から400KHz程度を示し、高周波とは13.56MHz程度を示す。
【0078】
(コントローラ)
基板処理装置200は、基板処理装置200の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、図14に記載のように、演算部(CPU)280a、一時記憶部(RAM)280b、記憶部280c、I/Oポート280dを少なくとも有する。コントローラ280は、I/Oポート280dを介して基板処理装置200の各構成に接続され、上位装置270や使用者の指示に応じて記憶部280cからプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じてイオン制御部410やプラズマ生成部400等の各構成の動作を制御する。送受信制御は、例えば演算部280a内の送受信指示部280eが行う。なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)282を用意し、外部記憶装置282を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置282を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いても良いし、上位装置280から受信部283を介して情報を受信し、外部記憶装置282を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。また、キーボードやタッチパネル等の入出力装置281を用いて、コントローラ280に指示をしても良い。
【0079】
なお、記憶部280cや外部記憶装置282は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部280c単体のみを含む場合、外部記憶装置282単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0080】
続いて、図1における犠牲膜形成工程S104の詳細について説明する。
【0081】
(犠牲膜形成工程S104)
以下、第一の処理ガスとしてHCDSガスを用い、第二の処理ガスとしてアンモニア(NH)ガスを用いて、犠牲膜104を形成する例について説明する。犠牲膜は、シリコン窒化膜(SiN膜)で構成される。
【0082】
ここで、本実施形態にて形成する犠牲膜104について、図15を用いて説明する。図15はウエハ100の処理状態を説明する図である。(a)は図3と同内容の図であり、(b)は(a)の一部分を拡大した図である。具体的には、絶縁膜102と犠牲膜104の一部を拡大した図である。なお、(b)におけるシリコン窒化層103(n1)、シリコン窒化層103(n2)、シリコン窒化層103(n3)、シリコン窒化層103(n4)は犠牲膜104を構成する層を示したものである。即ち、犠牲膜104は、複数のシリコン窒化層103で構成される。シリコン窒化層103(n1)は第一シリコン窒化層、シリコン窒化層103(n2)は第二シリコン窒化層、シリコン窒化層103(n3)は第三シリコン窒化層、シリコン窒化層103(n4)は第四シリコン窒化層とも呼ぶ。
【0083】
ところで、例えばHCDSガスとプラズマ状態のNHガスを用いて犠牲膜104を形成する場合、処理室201では、分解されたHCDSガスとプラズマ状態のNHガスが存在する。即ち、処理室201にはSi、塩素(Cl)、窒素(N)、水素(H)の各成分が混合した状態で存在する。この中で、主にSiと窒素が結合することで、SiN膜で構成される犠牲膜104が形成される。
【0084】
犠牲膜104を形成する際、処理室201内には主成分であるSiとNのほかに、不純物としての塩素(Cl)、水素(H)の各成分が同時に存在する。従って、SiN膜が形成される過程では、SiがClやHと結合したり、Siと結合したNがClやHと結合したりしてしまう。それらはSiN膜中に入り込む。発明者による鋭意研究の結果、不純物との結合が引張応力の一因であることを見出した。
【0085】
前述のように、犠牲膜104の引張応力は絶縁膜102との応力差につながるものである。そこで本実施形態においては、犠牲膜104を形成する際、引張応力を絶縁膜102の膜応力に近づけるようにする。具体的には、図15のように、少なくとも薄いシリコン窒化層103(n1)と厚いシリコン窒化層103(n2)を形成すると共に、応力に対して支配的なシリコン窒化層103(n2)の引張応力を絶縁膜102の膜応力に近づける。更には、シリコン窒化層103(n3)の引張応力を絶縁膜102の膜応力に近づける。
【0086】
(S201)
まずウエハ100を容器202内に搬入する基板搬入する工程S201を説明する。
なお、ウエハ100を搬入する前の状態は、穴部224aが基板搬入出口205に隣接した状態である。従って、穴部224aは基板載置面211a上に配されている。また、本実施形態においては、容器202内にて4枚のウエハ100を処理する例について説明する。説明においては、最初に容器202に投入されるウエハ100を第一のウエハ100、二回目に投入されるウエハ100を第二のウエハ100、三回目に投入されるウエハ100を第三のウエハ100、四回目に投入されるウエハ100を第四のウエハ100と表現する。
【0087】
以下詳細を説明する。
アーム240は基板搬入出口205から処理室201内に進入し、絶縁膜102が形成されたウエハ100を回転トレー220の穴部224に載置する。本実施形態では、第一のウエハ100を基板搬入出口205に隣接する穴部224aに載置する。
【0088】
第一のウエハ100を載置後、回転トレー220を下降させる。このとき、回転トレー220表面よりも高い位置に、各基板載置面211を相対的に上昇させる。この動作によって第一のウエハ100は基板載置面211a上に載置される。第一のウエハ100を基板載置面211a上に載置したら、ゲートバルブ208を閉じて容器202内を密閉する。
【0089】
ウエハ100を各基板載置台212の上に載置する際は、基板載置台212の内部に埋め込まれた各ヒータ213に電力を供給し、ウエハ100の表面が所定の温度となるよう制御される。ウエハ100の温度は、例えば室温以上800℃以下であり、好ましくは、室温以上であって700℃以下である。この際、ヒータ213の温度は、図示しない温度センサにより検出された温度情報に基づいてコントローラ280が制御値を抽出し、図示しない温度制御部によってヒータ213への通電具合を制御することによって調整される。
【0090】
(S202)
ここでは、絶縁膜102表面に、シリコン窒化層103(n1)を形成する工程S202を説明する。ウエハ100が所定の温度に維持されたら、第一ガス供給系310から処理室201aにHCDSガスを供給するのと併行して、第二ガス供給系320からNHガスを供給する。
【0091】
次に、処理室201a内が所定の圧力に到達したら、プラズマ生成部400は処理室201a内に高周波を供給する。具体的には、高周波電源402aを稼動させ、電力を供給する。処理室201a内の処理ガスの一部が電離してプラズマ状態とされる。プラズマ状態となったHCDSガスとNHガスは互いに処理室201a内で反応し、絶縁膜102上に供給される。
【0092】
高周波の供給開始から所定時間経過したら、図15に記載のように、絶縁膜102上に反応物が堆積し、緻密なシリコン窒化層103(n1)が形成される。シリコン窒化層103(n1)は第一のシリコン窒化層とも呼ぶ。シリコン窒化層103(n1)は、犠牲膜の応力に影響が無い程度の厚みであり、少なくともシリコン窒化層103(n2)よりも薄い膜である。
【0093】
(S203)
ここでは第一のウエハ100を移動すると共に第二のウエハ100を搬入する工程S203について説明する。所定時間経過し、第一のウエハ100にシリコン窒化層103(n1)が形成されたら、処理ガスの供給を停止する。その後、回転トレー224を上昇させて基板載置面211aから第一のウエハ100を離間させる。離間させた後、穴部224aが基板載置面211b上に移動するよう、回転トレー224を時計回り方向に90度回転させる。回転が完了すると、基板載置面211b上に穴部224aが配され、基板載置面211a上に穴部224dが配される。回転が完了したら、ゲートバルブ208を開放し、第二のウエハ100を穴部224dに載置する。各ウエハ100を載置後、各基板載置面211を相対的に上昇させ、穴部224aのウエハ100を基板載置面211bに載置し、穴部224dのウエハ100を基板載置面211aに載置する。
【0094】
(S204)
ここでは、処理室201a、処理室201bでウエハ100を処理する工程S204について説明する。
(処理室201aでの処理)
処理室201aでは、S202と同様の処理を行い、第二のウエハ100の絶縁膜102上にシリコン窒化層103(n1)が形成される。
【0095】
(処理室201bでの処理)
処理室201bでは、第一のウエハ100に形成されたシリコン窒化層103(n1)上にシリコン窒化層103(n2)が形成される。
以下に、具体的な方法を説明する。
【0096】
第二のウエハ100が所定の温度に維持されたら、第一ガス供給系310から処理室201bにHCDSガスを供給すると共に、第二ガス供給系320からNHガスを供給する。
【0097】
次に、処理室201b内が所定の圧力に到達したら、プラズマ生成部400は処理室201内に高周波の供給を開始する。処理室201b内の処理ガスの一部が電離してプラズマ状態とされる。更に、コントローラ280はイオン制御部410の低周波電源412bを稼動させ、処理室201b内に低周波の供給を開始する。
【0098】
処理ガスは、高周波によって高密度のプラズマ状態にされると共に、低周波によってプラズマ中のイオンが基板載置面211b上のウエハ100に照射される。
【0099】
プラズマ状態とされたガスのうち、主にSiと窒素が結合して絶縁膜102上に供給されることで、シリコン窒化層103(n2)が形成される。それと並行して、不純物結合が、処理室201b内に発生する。この不純物結合は、シリコン窒化層103(n2)中に取り込まれる恐れがある。なお、不純物結合には、例えば、SiとClが結合したSi-Cl結合、SiとHが結合したSi-H結合、Si-NとClが結合したSi-NCl結合、Si-NとHが結合したSi-NH結合、等の少なくともいずれかを有する。
【0100】
本工程においては、低周波によって、窒素等のイオン成分が形成過程のシリコン窒化層103(n2)中の不純物結合等に供給され、結合を切断する。それらの結合が切断されることで、圧縮性の応力を有するシリコン窒化層103(n2)が形成される。
【0101】
更には、高周波によって高密度のプラズマ状態とされ、更には低周波によって窒素イオンがウエハ100に照射されるので、S202のような高周波のみに比べて膜形成レートを高めることができる。従って、シリコン窒化層103(n2)を早期に形成することが可能となる。
【0102】
また、より良くは、S204における処理室201bの処理では処理ガスにアルゴン(Ar)等の不純物結合の切断をアシストするアシストガスを含めてもよい。Arは窒素に比べ分子サイズが大きいため、シリコン窒化層103(n2)を形成する際に発生した不純物結合の結合部の切断を促進できる。このとき、応力を調整するために、アルゴンの供給量を調整してもよい。調整する際は、マスフローコントローラ343やバルブ344を制御する。例えば、応力を低くする場合はアルゴンの供給量を増やし、応力を高くする場合はアルゴンの供給量を減らすよう制御する。
【0103】
このようにして、不純物との結合を切断することで、シリコン窒化層103(n2)の膜応力である引張応力を低減させる。
【0104】
ところで、本工程では不純物との結合だけでなく、Si−N結合も切断する可能性がある。仮に切断されると、膜密度が低下したり、エッチングレートが高くなったりするなど、膜質が悪くなることが考えられる。しかしながら、図7に記載のように、犠牲膜104は後の犠牲膜除去工程S114にて除去されるので、膜質が悪くなっても問題ない。
【0105】
より良くは、低周波の供給は、パルス状に供給することが望ましい。これは、低周波をかけ続けることで窒素等の高エネルギーのイオンや電子がウエハ100に常に衝突して反応が起こるため、シリコン窒化層103(n2)の温度が急激に上昇し、他の膜に影響を及ぼす可能性があるためである。パルス状に供給することで、常に反応することを防止できるため、シリコン窒化層103(n2)の温度上昇を抑制できる。
【0106】
(S205)
ここでは第一のウエハ100、第二のウエハ100を移動すると共に、第三のウエハ100を搬入する工程S205について説明する。所定時間経過し、第一のウエハ100にシリコン窒化層103(n2)が形成され、第二のウエハ100にシリコン窒化層103(n1)が形成されたら、処理ガスの供給を停止する。その後、回転トレー224を上昇させて基板載置面211a、基板載置面211bから基板を離間させ、S203と同様の方法で第一のウエハ100を基板載置面211c上に載置し、第二のウエハ100を基板載置面211bに載置する。更には、第三のウエハ100を搬入して穴部224cに載置し、他のウエハ100と同様、基板載置面211a上に第三のウエハ100を載置する。
【0107】
(S206)
ここでは、ウエハ100が存在する処理室201a、処理室201b、処理室201cで基板を処理する工程S206について説明する。
(処理室201aでの処理)
処理室201aでは、S202と同様の処理を行い、第三のウエハ100の絶縁膜102上にシリコン窒化層103(n1)を形成する。
【0108】
(処理室201bでの処理)
処理室201bでは、S204と同様の処理を行い、第二のウエハ100のシリコン窒化層103(n1)上にシリコン窒化層103(n2)を形成する。
【0109】
(処理室201cでの処理)
処理室201cでは、S204における処理室201bでの処理と同様の処理を行い、第一のウエハ100のシリコン窒化層103(n2)上にシリコン窒化層103(n3)を形成する。ここでは高周波、低周波共に処理室201bと同様のレベルで供給し、シリコン窒化層103(n2)と同様に膜応力の低い膜が形成される。
【0110】
(S207)
ここでは第一のウエハ100、第二のウエハ100、第三のウエハ100を移動すると共に、第四のウエハ100を搬入する工程S207について説明する。
所定時間経過し、第一のウエハ100にシリコン窒化層103(n3)が形成され、第二のウエハ100にシリコン窒化層103(n2)が形成され、第三のウエハ100にシリコン含有層(n1)が形成されたら、処理ガスの供給を停止する。その後、回転トレー224を上昇させて基板載置面211a、基板載置面211b、基板載置面211cから基板を離間させ、S203、S205と同様の方法で第一のウエハ100を基板載置面211d上に載置し、第二のウエハ100を基板載置面211cに載置し、第三のウエハ100を基板載置面211bに載置する。更には、第四のウエハ100を搬入して穴部224bに載置し、他のウエハ100同様、基板載置面211a上に第三のウエハ100を載置する。
【0111】
(S208)
ここでは、ウエハ100が存在する処理室201a、処理室201b、処理室201c、処理室201dで基板を処理する工程S208について説明する。
(処理室201aでの処理)
処理室201aでは、S202と同様の処理を行い、第四のウエハ100の絶縁膜102上にシリコン窒化層103(n1)を形成する。
【0112】
(処理室201bでの処理)
処理室201bでは、S204と同様の処理を行い、第三のウエハ100のシリコン窒化層103(n1)上にシリコン窒化層103(n2)を形成する。
【0113】
(処理室201cでの処理)
処理室201cでは、S206と同様の処理を行い、第二のウエハ100のシリコン窒化層103(n2)上にシリコン窒化層103(n3)を形成する。
【0114】
(処理室201dでの処理)
処理室201dでは、処理室201aと同様の処理を行い、第一のウエハ100のシリコン窒化層103(n3)上にシリコン窒化層103(n4)を形成する。
【0115】
(S209)
ここでは第一のウエハ100、第二のウエハ100、第三のウエハ100、第四のウエハ100を移動すると共に、第一のウエハ100と新たに処理するウエハ100を入れ替える工程S209について説明する。
膜形成が終了したら、回転トレー222を相対的に上昇させて各ウエハ100を基板載置部211から離間させると共に、90度回転させる。ウエハ100が基板載置面100a上に移動したら、ゲートバルブ208を開放し、第一のウエハ100を新しいウエハ100と置き換える。以下、所定枚数の基板処理が完了するまでS202からS209の処理を繰り返す。
【0116】
このように、シリコン窒化層103(n2)、シリコン窒化層103(n3)の圧縮応力を低減させた犠牲膜104を形成することで、図4から図6のように絶縁膜102と犠牲膜104を交互に積層したとしても、応力差等に起因する半導体装置の破壊や歩留まりの低下を抑制することができる。
【0117】
ところで、シリコン窒化層(n1)、シリコン窒化層103(n2)、シリコン窒化層103(n3)、シリコン窒化層103(n4)で構成される犠牲膜104は、図4に記載のように、上下に絶縁膜102が構成される。
【0118】
絶縁膜102には酸素成分が混入しており、ウエハ100を加熱した場合、酸素成分が犠牲膜104に移動することが考えられる。特にシリコン窒化層103(n2)、103(n3)のように結合を切断した膜に対しては、移動した酸素成分が浸透しやすいことが考えられる。
【0119】
そこで、本実施形態においては、下方の絶縁膜102とシリコン窒化層103(n2)の間に、緻密な窒化層であるシリコン窒化層103(n1)を形成した。緻密な窒化層とは結合度が高い窒化層をいう。結合度が高いとは、主要成分であるSiとNの結合や、不純物結合の結合が多い状態を示す。即ち、シリコン窒化層103(n2)よりも結合度が高い状態を示す。このような場合、シリコン窒化層103(n1)が壁となるため、シリコン窒化層103(n1)下方に設けられた絶縁膜102の酸素成分がシリコン窒化層(n2)に移動することを防ぐ。
【0120】
また、本実施形態においては、上方の絶縁膜102とシリコン窒化層103(n3)の間に、緻密な窒化層であるシリコン窒化層103(n4)を形成した。シリコン窒化層103(n4)が壁となるため、シリコン窒化層103(n4)上方に設けられた絶縁膜102の酸素成分がシリコン窒化層103(n3)に移動することを防ぐ。
【0121】
このように積層膜全体の応力を低減する役割であるシリコン窒化層103(n2)、シリコン窒化層103(n3)の膜密度が低く酸化しやすい状態であることから、絶縁膜102とシリコン窒化層103(n2)の間に緻密なシリコン窒化層103(n1)やシリコン窒化層103(n4)を形成するのがよい。
【0122】
仮に、本実施形態と異なり、シリコン窒化層103(n1)やシリコン窒化層103(n4)を形成しない場合を考える。この場合、犠牲膜104に絶縁膜102の酸素成分が浸透し、犠牲膜104が酸化してしまう。この酸化は意図的ではないので、不均一に酸化することが考えられる。
【0123】
ところで、一般的に知られているように、シリコン窒化層が酸化するとエッチングレートが低くなったりしてしまう。このような状態でデバイスを製造した場合、例えば次のような問題が発生する。犠牲膜除去工程S114にて犠牲膜104をエッチングしようとしても、酸化された一部の犠牲膜104をエッチングできないため、エッチング量のばらつきが起きる恐れがある。
【0124】
これについて、比較例である図16を用いて説明する。図16(a)は、酸化された犠牲膜104をエッチングした後の状態の図である。図16(b)は図16(a)の一部を拡大した図であり、前述のエッチング量のばらつきを説明する図である。このように、エッチング量のばらつきが起きると、図16(b)に記載のように、絶縁膜102の上下に犠牲膜104の酸化部分が残留してしまう。
【0125】
犠牲膜104の酸化部分のばらつきとは、水平方向における高さのばらつきである。例えば絶縁膜102(4)(もしくは残留した犠牲膜104(4))と絶縁膜104(5)(もしくは残留した犠牲膜104(5))との間の距離h1、h2のばらつきをいう。もしくは、垂直方向におけるばらつきである。例えば絶縁膜102(4)(もしくは残留した犠牲膜104(4))との距離h1と、絶縁膜102(3)(もしくは残留した犠牲膜104(3))と絶縁膜102(4)(もしくは残留した犠牲膜104(4))との距離h3のばらつきをいう。このような状態でデバイスを製造した場合、導電膜112間で、電気的容量や抵抗値等の特性のばらつきが発生する。
【0126】
これに対して、本実施形態のように、絶縁膜102上に緻密なシリコン窒化層103(n1)を形成することで、シリコン窒化層103(n2)の酸化を抑制することができる。
【0127】
なお、本実施形態においては、犠牲膜104を4つの層に分けて形成したが、密度の低いシリコン窒化層を緻密なシリコン窒化層で挟めればよく、3層や、5層以上であってもよい。この場合、形成する層数に応じて処理室数や回転数を調整すればよい。
【0128】
(第二の実施形態)
続いて第二の実施形態について図18図19を用いて説明する。
図18図10に相当する構造である。図10との相違点は、基板搬入出口205の大きさが異なる点である。具体的には、図18に開示の構造は、基板搬入出口205が図10の構造に比べて水平方向に広く、ウエハ100を同時に二枚搬送可能なアーム241が進入可能な構造である。それに関連して、ゲートバルブ208の大きさやアーム241の構造が異なるが、他の構成は図10と同様である。
【0129】
続いて、第二の実施形態における基板処理方法について説明する。
(S301)
ここでは、アーム241に搭載された二枚のウエハ100(第一のウエハ100、第二のウエハ100)を搬入する工程S301について説明する。なお、ウエハ100を搬入する前の状態は、穴部224a、穴部224dが基板搬入出口205に隣接した状態である。従って、穴部224aは基板載置面211a上に配され、穴部224dは基板載置面211d上に配されている。
【0130】
アーム241は基板搬入出口205から処理室201内に進入し、絶縁膜102が形成された第一のウエハ100、第二のウエハ100を穴部224a、穴部224dに載置する。その後、前述のS201と同様の処理により、第一のウエハ100を基板載置面211a、基板載置面211dそれぞれにウエハ100を載置する。
【0131】
(S302)
ここでは、絶縁膜102表面に、シリコン窒化層103(n1)を形成する工程S302を説明する。S202の処理と同様に、ウエハ100が所定の温度に維持されたら、処理室201aに第一ガス供給系310からHCDSガスを供給すると共に、第二ガス供給系320からNHガスを供給する。更に、処理室201bも同様に、第一ガス供給系310からHCDSガスを供給すると共に、第二ガス供給系320からNHガスを供給する。
【0132】
次に、処理室201内が所定の圧力に到達したら、プラズマ生成部400は処理室201内に高周波の供給を開始し、処理室201a、処理室201dにプラズマを生成する。プラズマ状態となったHCDSガスとNHガスは互いに処理室201a内で反応し、絶縁膜102上に供給され、第一のウエハ100、第二のウエハ100それぞれに、緻密なシリコン窒化層103(n1)が形成される。
【0133】
シリコン窒化層103(n1)は、犠牲膜の応力に影響が無い程度の厚みであり、少なくとも後に形成されるシリコン窒化層103(n2)よりも薄い膜である。
【0134】
(S303)
ここでは第一のウエハ100、第二のウエハ100を移動すると共に第三のウエハ100、第四のウエハ100を搬入する工程S303について説明する。
第一のウエハ100、第二のウエハ100それぞれにシリコン窒化層103(n1)が形成されたら、処理ガスの供給を停止する。その後、S202と同様の方法でウエハ100を離間させる。離間させた後、穴部224aが基板載置面211c上に、穴部224dが基板載置面211b上になるよう、回転トレー224を時計回り方向に180°回転させる。回転が完了したら、ゲートバルブ208を開放し第三のウエハ100を穴部224cに、第四のウエハ100を穴部244bに載置する。各ウエハ100を対応する穴部224に載置後、各基板載置面211を相対的に上昇させ、穴部224aの第一のウエハ100を基板載置面211cに載置し、穴部224dの第二のウエハ100を基板載置面211bに載置し、穴部224cの第三のウエハ100を基板載置面211aに載置し、穴部224bの第四のウエハ100を基板載置面211dに載置する。
【0135】
(S304)
ここでは、処理室201a、処理室201b、処理室201c、処理室201dで基板を処理する工程S304について説明する。
(処理室201a、処理室201dでの処理)
処理室201aでは、S302と同様の処理を行い、第三のウエハ100、第四のウエハ100の絶縁膜102上にシリコン窒化層103(n1)を形成する。
【0136】
(処理室201b、処理室201cでの処理)
処理室201b、処理室201cでは、S206と同様の方法で高周波と低周波を供給し、第一のウエハ100のシリコン窒化層103(n1)上に、図19のようなシリコン窒化層103(n2’)を形成する。第二のウエハ100も同様に、処理室201bで高周波と低周波を供給し、シリコン窒化層103(n1)上にシリコン窒化層103(n2’)を形成する。低周波によって、窒素等のイオン成分が形成過程のシリコン窒化層103(n2)中の、不純物結合等に供給され、結合が切断されるので、圧縮性の応力を有するシリコン窒化層103(n2’)が形成される。
【0137】
(S305)
ここでは第一のウエハ100、第二のウエハ100、第三のウエハ100、第四のウエハ100を移動する工程S305について説明する。
各処理室で所望のシリコン窒化層103(n1)、103(n2’)が形成されたら、処理ガスの供給を停止する。その後、S302と同様の方法でウエハ100を離間させる。離間させた後、穴部224aが基板載置面211a上に、穴部224dが基板載置面211d上になるよう、回転トレー224を時計回り方向に180°回転させる。このとき、穴部224bは基板載置面211b上に、穴部224cは基板載置面211c上に配される。
【0138】
(S306)
ここでは、処理室201a、処理室201b、処理室201c、処理室201dで基板を処理する工程S306について説明する。
移動が完了したら、S305と同様の処理を行い、第一のウエハ100、第二のウエハ100上にシリコン窒化層103(n4)を形成する。更には、第三のウエハ100、第四のウエハ100上にシリコン窒化層103(n2’)を形成する。
【0139】
(S307)
ここでは第一のウエハ100、第二のウエハ100を搬出する工程S307について説明する。
S306の処理が完了したら、ゲートバルブ208を開放し、第一のウエハ100と第二のウエハ100を搬出する。このとき、次に処理するウエハ100があれば、それらのウエハ100を穴部224a、224dに載置する。以下、所定枚数の基板処理が完了するまでS302からS307の処理を繰り返す。
【0140】
このように、シリコン窒化層103(n2)の圧縮応力を低減させた犠牲膜104を形成することで、図4から図6のように絶縁膜102と犠牲膜104を交互に積層したとしても、応力差等に起因する半導体装置の破壊や歩留まりの低下を抑制することができる。
【0141】
なお、上記実施形態においては、二周波処理室では、高周波電源402(402b、402c)から供給する高周波の電力を、一周波処理室よりも大きくすることが望ましい。電力を大きくすることで、分解を促進することができるので、膜形成レートを更に向上させることができる。したがって、一周波処理室と同じ時間処理する場合であっても、一周波処理室で形成するシリコン窒化層よりも厚いシリコン窒化層を形成することができる。
【0142】
また、各シリコン窒化層103を形成する際は、各処理室へのシリコン含有ガスの供給量を調整してもよい。例えば、各バルブ302、マスフローコントローラ303を制御して、一周波処理室へのシリコン含有ガスの供給時間を二周波処理室への供給時間よりも短くして、供給量を調整する。このようにすることで、各シリコン窒化層の厚みをより正確に制御することができる。
【0143】
またより良くは、二周波処理室における処理では、処理ガスにアルゴン(Ar)等の不純物結合の切断をアシストするアシストガスを含めてもよい。Arは窒素に比べ分子サイズが大きいため、シリコン窒化層103(n2)やシリコン窒化層103(n3)を形成する際に発生した不純物結合の結合部の切断を促進できる。このとき、応力を調整するために、アルゴンの供給量を調整してもよい。調整する際は、マスフローコントローラ343やバルブ344を調整する。例えば、応力を低くする場合はアルゴンの供給量を増やし、応力を高くする場合はアルゴンの供給量を減らすよう調整する。
【0144】
このようにして、不純物との結合を切断することで、シリコン窒化層103(n2)やシリコン窒化層(n3)、シリコン窒化層103(n2’)の膜応力である引張応力を低減させる。
【0145】
より良くは、低周波の供給は、パルス状に供給することが望ましい。これは、低周波をかけ続けることで窒素等の高エネルギーのイオンや電子がウエハ100に常に衝突して反応が起こるため、シリコン窒化層103(n2)やシリコン窒化層(n3)の温度が急激に上昇し、他の膜に影響を及ぼす可能性があるためである。パルス状に供給することで、常に反応することを防止し、シリコン窒化層103(n2)やシリコン窒化層(n3)の温度上昇を抑制できる。
【0146】
また、上記実施形態においては、絶縁膜と犠牲膜の熱膨張率差により、半導体装置の破壊が起きる例について説明したが、それに限るものではない。例えば、図5に記載のホール106を形成した際に、絶縁膜または犠牲膜の膜応力の問題から、半導体装置の破壊が起きる恐れがある。しかしながら、上記実施形態のように、絶縁膜の膜応力を低減、あるいは犠牲膜の膜応力を低減することで、ホール106を形成した際の半導体装置の破壊を防ぐことができる。
【0147】
また、上記実施形態では、シャワーヘッド230にガス導入孔233を設けた構造を説明したが、二周波処理室にアシストガスを供給可能な構造であればそれに限るものではない。例えば、バルブ344bの下流側がバルブ302bの下流と連通され、バルブ344cの下流側がバルブ302cの下流側と連通するよう構成されてもよい。
【0148】
また、犠牲膜を形成する際、二つのガスを同時に処理室に供給して形成したが、それに限るものではなく、例えば交互にガスを供給する交互供給処理を行い、絶縁膜102上で膜を形成しても良い。具体的には、絶縁膜102上にHCDSガスを供給してシリコンを主とする層を形成し、その後アンモニアを供給して分解して、シリコンを主とする層と反応させ、SiN層を形成しても良い。より良くは、緻密な膜が求められているS201では上記の交互供給処理を行い、高い成膜レートが求められているS202では上記実施例のように同時に処理室に供給して形成しても良い。ここでは、HCDSガス、NHガスのいずれか、もしくは両方を活性化させ、反応を促進してもよい。
【0149】
また、本実施形態では、イオン制御部410の一構成として低周波電源を用いたが、イオン成分を引き寄せられればそれに限るものではなく、例えば高周波電源でもよい。ただし、各電源の性質上、高周波電源に比べ低周波電源のほうがイオンを大きく移動させるよう制御することが可能であるので、低周波を用いることが望ましい。
【0150】
なお、図4等では絶縁膜102と犠牲膜104を交互に8層形成したが、それに限るものではなく、8層よりも多くの層であっても良い。層が増えるほど応力の影響を受けやすいので、それに応じて本実施形態で説明した技術がより有効となる。
【符号の説明】
【0151】
100 ウエハ(基板)
102 絶縁膜
104 犠牲膜
200 基板処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19