(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)を反応させた後、イソシアヌレート化触媒(C)存在下でイソシアヌレート化し、必要とされるイソシアヌレート化後に、触媒を停止剤(D)で失活させることにより得られるポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物の製造方法であって、停止剤(D)が3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド、または6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシドであることを特徴とするポリイソシアヌレート変性イソシアネート組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
<脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート(A)>
脂肪族イソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0012】
脂環族ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0013】
<水酸基含有化合物(B)>
水酸基含有化合物(B)としては、特に限定されるものではなく、1価のアルコール(1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール、2−オクチルドデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等)、二価アルコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等)、三価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン等)、四価アルコール(エリスリトール、ペンタエリスリトール等)、五価アルコール(アラブット、キシリット等)、六価アルコール(ソルビット、マンニッヒ等)等が挙げられ、単独またはまたは2種以上を併用することができる。これらの中で、1価もしくは2価のアルコールを使用すると粘度を低く抑えることができるので好ましい。
【0014】
本発明に使用されるイソシアヌレート化触媒(C)としては、例えば一般に塩基性を有しているものが好ましく、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属の酢酸、ブタン酸、カプリン酸、カプリル酸、ミリスチン酸などのカルボン酸塩、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属の金属アルコラート、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウムのハイドロオキサイドや酢酸、ブタン酸、カプリン酸、カプリル酸、ミリスチン酸などのカルボン酸塩、ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、3級アミン、トリブチルフォスフィン等のリン系化合物などがある。
【0015】
これらの中で、イソシアヌレート化活性が良好であり、停止剤との反応物の溶解性が良好なため濁りや浮遊物となりにくいという観点から式2で示される第四級アンモニウム塩が好ましい。
[式2]
【0016】
本発明において、上記式2で示される第四級アンモニウム塩のR
3〜R
5は、各々独立した炭素数1〜12のアルキル基、ヒドロキシアルキル基からなり、R
6は炭素数1〜18の直鎖アルキル基、R
7は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜18のフェニル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は、R
3〜R
5は、炭素数1〜12のアルキル基を含み、且つR
3〜R
5のうちの何れか2個が炭素、酸素又は窒素原子を介したヘテロ環を形成しており、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、R
6は、炭素数1〜18の直鎖飽和炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘプタデシル基、又はヘキサデシル基であることが好ましい。R
5は水素原子、もしくは炭素数1〜18の直鎖飽和炭化水素基であり、具体的には、水素原子,メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘプタデシル基、又はヘキサデシル基であることが好ましい。
【0017】
最も好ましいイソシアヌレート化触媒(C)は、これら第四級アンモニウム塩の化合物のうち、イソシアヌレート化反応の触媒活性が高く、有機溶剤への希釈安定性に優れるポリイソシアネート組成物が得られる観点から、テトラメチルアンモニウムオクチル炭酸塩、トリメチルオクチルアンモニウムメチル炭酸塩、トリメチルデシルアンモニウムメチル炭酸塩、オクタン酸テトラメチルアンモニウム、酢酸トリメチルオクチルアンモニウム、酢酸トリメチルデシルアンモニウム、ギ酸トリメチルオクチルアンモニウム、ギ酸トリメチルデシルアンモニウム、オクタン酸−N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム、ギ酸−N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムである。
【0018】
触媒は、無溶剤又は溶液にて使用され得る。取扱いを容易にするために溶剤に希釈する場合、溶剤としては例えば、1価のアルコール(1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール、2−オクチルドデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等)、二価アルコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒などが挙げられる。
【0019】
本発明に使用される式1で示される停止剤(D)としては、R
1、R
2が各々独立した飽和又は不飽和アルキル基、アリール基、飽和又は不飽和アルコキシ基、フェノキシ基又はR
1とR
2は炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むヘテロ環を形成しており、官能基に置換されていても良い。
【0020】
式1で表される停止剤(D)の具体例としては、N−アセチルメタンスルホンアミド、N−エタノイルメタンスルホンアミド、N−プロパノイルメタンスルホンアミド、N−ブタノイルメタンスルホンアミド、N−アセチルエタンスルホンアミド、N−アセチルプロパンスルホンアミド、N−アセチルブタンスルホンアミド、N−アセチルベンゼンスルホンアミド、N−エタノイルベンゼンスルホンアミド、N−プロパノイルベンゼンスルホンアミド、N−ブタノイルベンゼンスルホンアミド、N−トシルアセトアミド、N−トシルプロピオンアミド、N−トシルブタンアミド、N−トシル−4−メチルベンズアミド、N−(4−メチルフェニルスルホニル)ペンタンアミド、N−アセチルベンゼンエタンスルホンアミド、N−ベンゾイルベンゼンエタンスルホンアミド、N−ベンゾイルメタンスルホンアミド、N−ベンゾイルエタンスルホンアミド、N−ベンゾイルプロパンスルホンアミド、N−ベンゾイルブタンスルホンアミド、N−(フェニルスルホニル)アセトアミド、N−トシルカルバミド酸メチル、N−トシルカルバミド酸エチル、N−トシルカルバミド酸n−プロピル、N−トシルカルバミド酸イソプロピル、N−トシルカルバミド酸n−ブチル、N−トシルカルバミド酸イソブチル、N−トシルカルバミド酸n−ヘキシル、N−トシルカルバミド酸シクロヘキシル、3−オキソ−2,3−ジヒドロチエノ[3,2−d]イソチアゾール−1,1−ジオキシド、2,3−ジヒドロ−4−イソプロピル−3−オキソ−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシド、5,6,7,8−テトラヒドロ−4H−シクロヘプタ[d]イソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、6−メトキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、6−エトキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、6−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、6−エチル−1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、6−(アセチルアミノ)−1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、4−フェニル−5−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロイソチアゾール1,1−ジオキシド、5−フェニル−3−オキソ−2,3−ジヒドロイソチアゾール1,1−ジオキシド、4,5−ジメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロイソチアゾール1,1−ジオキシド、3−オキソ2,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシド、5−メチル−3−オキソ2,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシド、6−メチル−3−オキソ2,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシド、2−メチルスルホニル安息香酸イミン、2H−1,2−ベンゾチアジン−3(4H)−オン1,1−ジオキシド、3H−2,3−ベンゾチアジン−4(1H)−オン2,2−ジオキシド、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシド、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシドなどが挙げられる。最も好ましい停止剤(D)はポリイソシアヌレートに溶解しやすい3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシド、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシドである。
【0021】
添加剤として亜リン酸エステル系酸化防止剤を添加することは経時での変色を抑制するので好ましい。亜リン酸エステル系酸化防止剤の例としてはトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)、3、9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)‐2,4,8,10‐テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(商品名;アデカスタブPEP−36、アデカ社製)、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸(商品名;IRGAFOS 38、BASF社製)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4−ジイルビスホスフォナイト(商品名;IRGAFOS P−EPQ、BASF社製)等が挙げられ、単独またはまたは2種以上を併用することができる。亜リン酸エステル系酸化防止剤を添加しないことは経時で変色せしめる原因となるため添加することが好ましいが、リン原子に2−tert−ブチルフェニル基が結合していないものは、溶剤に微量含まれる水分との加水分解反応により不溶解物を発生し、溶剤希釈安定性が悪化する原因となる。
【0022】
少なくとも1種の立体障害型フェノールを添加することは亜リン酸エステル系酸化防止剤との相乗効果により経時で変色をさらに抑制するので好ましい。立体障害型フェノールの例としてはペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)、チオジエチルンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1035、BASF社製)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox 1076、BASF社製)、N、N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](Irganox 1098、BASF社製)、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9側鎖アルキルエステルIrganox 1135、BASF社製)、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(Irganox 1330、BASF社製)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](Irganox 245、BASF社製)、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 259、BASF社製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2−4−6(1H,3H,5H)−トリオン(Irganox 3114、BASF社製)などが挙げられる。
【0023】
次に、ポリイソシアネート組成物の具体的な製造方法について説明する。尚、ポリイソシアネート組成物の製造方法は、以下に代表されるような第1工程〜第4工程を経て製造される。
第1工程:有機ジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)を水酸基に対して、イソシアネート基が過剰量になる量を仕込んで、有機溶剤の存在下、又は非存在下、20〜120℃でウレタン化反応させてイソシアネート基末端プレポリマー(a)を製造する。
第2工程:イソシアネート基末端プレポリマー(a)にイソシアヌレート化触媒(C)を仕込み、50〜90℃にてイソシアヌレート化を行ってイソシアネート基末端プレポリマー(b)を製造する。
第3工程:イソシアネート基末端プレポリマー(b)に反応停止剤を添加することによって、反応の停止を行う。これら第1工程〜第3工程においては、窒素ガス、若しくは、乾燥空気気流下で反応を進行させる。
第4工程:第3工程にて反応を停止させたイソシアネート基末端プレポリマー(b)を薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離の有機ジイソシアネートの含有量を1質量%未満になるまで除去する。
【0024】
<第1工程:イソシアネート基末端プレポリマー(a)を製造する工程>
第1工程における「イソシアネート基が過剰量になる量」とは、原料仕込みの際、有機ジイソシアネート(A)のイソシアネート基と水酸基含有化合物(B)の水酸基とのモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で20〜7000になるように仕込むことが好ましく、更に好ましくは、R=25〜5000になるように仕込むことが好ましい。上限を超える場合には、反応性が低下することから反応時間が長くなり、着色等の不具合を生じる場合がある。下限未満の場合には、水酸基含有化合物(B)との反応物であるウレタン基含有ポリイソシアネートやアロファネートの生成量が多くなり、イソシアネート含有量の低下やポリイソシアヌレート含有量の低下による耐候性の低下を招く恐れがある。
【0025】
また、ウレタン化反応の反応温度は、20〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。尚、ウレタン化反応の際、公知のウレタン化触媒を用いることができる。
【0026】
<ウレタン化触媒>
ウレタン化に使用できる触媒の具体例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、第3工程で使用される反応停止剤と反応し、溶剤希釈安定性を悪化せしめるカルボン酸成分が生成しない範囲で、単独又は2種以上併用することができる。
【0027】
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無、種類、及び温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは0.1〜2時間で十分である。尚、反応時間が長くなるに従い着色等の不具合を生じる場合がある。
【0028】
<第2工程:イソシアネート基末端プレポリマー(b)を製造する工程>
第2工程におけるイソシアヌレート化触媒(C)の使用量は、有機ジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)との合計質量に対して0.001〜1.0質量%が好ましく、0.005〜0.1質量%がより好ましい。下限未満の場合には、イソシアヌレート化反応が速やかに進行せず、着色等の不具合を生じる場合がある。また、上限値を超える場合には、反応性の制御が困難になる恐れがあり局所的な反応による高分子量体が発生することによる溶剤希釈安定性の低下、反応熱による温度上昇によりイソシアヌレート化温度の上限値を超えることに起因する着色等の不具合や、必要とされるイソシアヌレート化反応にて反応を停止することが困難となり高粘度となる恐れがある。
【0029】
また、イソシアヌレート化反応の反応温度は40〜100℃、好ましくは50〜90℃で反応を行う。下限未満の場合には、アミド型重合体が多量に発生するため粘度の上昇を招く恐れがある。上限値を超える場合には、着色等の不具合を生じる場合がある。
【0030】
また、ポリイソシアネート組成物の製造においては、有機溶媒等を含まずに反応を行う方法や有機溶媒の存在下で反応を行う方法が適宜選ばれる。
有機溶媒の存在下で反応を行う場合には、反応に影響を与えない有機溶媒を用いることができる。
【0031】
<製造に使用する有機溶剤>
製造に使用する有機溶媒の具体例としては、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、反応で使用した有機溶媒は、第4工程における遊離の有機ジイソシアネート(B)の除去時に同時に除去される。
【0032】
<第3工程:反応停止工程>
第3工程におけるに反応停止剤としては、触媒の活性を失活させる作用があり、反応終了後、速やかに添加される。
【0033】
また、反応停止剤の添加量としては、反応停止剤や触媒の種類によって異なるが、触媒の0.5〜10当量となるのが好ましく、0.8〜5.0当量が特に好ましい。反応停止剤が少ない場合には、得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が低下しやすく、多すぎる場合は、ポリイソシアネート組成物が白濁する場合がある。
【0034】
<第4工程:精製工程>
第4工程の精製工程では、反応混合物中に存在している遊離の未反応の有機ジイソシアネート(A)を、例えば、10〜100Paの高真空下での120〜150℃における薄膜蒸留による除去法や有機溶剤による抽出法により、残留含有率を1.0質量%以下にされる。尚、有機ジイソシアネート(A)の残留含有率が上限値を超える場合は、臭気や貯蔵安定性の低下を招く恐れがある。
【0035】
本発明により得られたポリイソシアヌレートは、ポリウレタン及びポリウレタン塗料、例えば1成分型、2成分型、放射線硬化性、ブロックイソシアネートを製造するために使用させ得、それと共に製造される塗料は、種々の基板(例えば、木、紙、織布、不織布、皮革、プラスチック表面、ガラス、セラミック、金属をコーティングするために使用され得る。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<ポリイソシアネート組成物の合成>
<実施例1>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI、NCO含有量:49.9質量%)を990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒として2−エチルヘキサノールに固形分10%に溶解したギ酸トリメチルオクチルアンモニウムを0.109g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシド(東京化成製、商品名;サッカリン)をテトラヒドロフランで固形分10%に希釈した溶液を0.073g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−1を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−1はNCO含有量が22.0質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3000mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.13質量%であった。
【0038】
<実施例2>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを999gと、1,3−ブタンジオール(ダイセル工業社製)を1gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIIIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIIIにイソシアヌレート化触媒として2−エチルヘキサノールに固形分10%に溶解したギ酸トリメチルオクチルアンモニウムを0.109g添加し、60℃でNCO含有量が38.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行ったその後、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシド(東京化成製、商品名;アセサルファムKを塩酸水溶液に溶解させた後、ジエチルエーテルで抽出し、乾燥したものを使用)をテトラヒドロフランで固形分10%に希釈した溶液を0.653g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIVを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIVを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−2を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−2はNCO含有量が21.9質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は2950mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.12質量%であった。
【0039】
<比較例1>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒として2−エチルヘキサノールに固形分10%に溶解したギ酸トリメチルオクチルアンモニウムを0.109g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、ジブチルホスフェート(商品名;DP−4,大八化学工業社製)をテトラヒドロフランで固形分10%に希釈した溶液を0.092g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーVを得た。このイソシアネート末端プレポリマーVを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−3を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−3はNCO含有量が21.9質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3030mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は5、遊離HDI含有量は0.12質量%であった。
【0040】
<比較例2>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒として2−エチルヘキサノールに固形分10%に溶解したギ酸トリメチルオクチルアンモニウムを0.109g添加し、60℃でNCO含有量が39.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、塩化ベンゾイル(東京化成製)をテトラヒドロフランで固形分10%に希釈した溶液を0.062g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーVIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーVIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−4を得た。ポリイソシアネート組成物の回収率は40%であった。
ポリイソシアネート組成物PI−4はNCO含有量が21.3質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3010mPa・s、色数は50(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.12質量%であった。
【0041】
<比較例3>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒として2−エチルヘキサノールに固形分10%に溶解したギ酸トリメチルドデシルアンモニウムを0.109g添加し、60℃でNCO含有量が38.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、パラトルエンスルホン酸メチル(日本ファインケミカル製)をテトラヒドロフランで固形分10%に希釈した溶液を0.082g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーVIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーVIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−5を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−5はNCO含有量が22.0質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3050mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は10、遊離HDI含有量は0.13質量%であった。
【0042】
<比較例4>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒として2−エチルヘキサノールに固形分10%に溶解したギ酸トリメチルオクチルアンモニウムを0.109g添加し、60℃でNCO含有量が38.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、シクロヘキシルスルファミン酸(アボット・ラボラトリーズ製)をテトラヒドロフランで固形分10%に希釈した溶液を0.072g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーVIIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーVIIIを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−6を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−6はNCO含有量が21.9質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は3000mPa・s、色数は50(APHA)、濁度は0、遊離HDI含有量は0.12質量%であった。
【0043】
<比較例5>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを990gと、2−エチルヘキサノール(KHネオケム社製)を10gと、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名;アデカスタブ2112、アデカ社製)を0.1gと、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF社製)を0.1gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら60℃に加熱し、1時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにイソシアヌレート化触媒として2−エチルヘキサノールに固形分10%に溶解したギ酸トリメチルオクチルアンモニウムを0.109g添加し、60℃でNCO含有量が38.5%になるまでイソシアヌレート化反応を行った。その後、リン酸(東京化成製)をテトラヒドロフランで固形分10%に希釈した溶液を0.039g添加し、停止反応を行ったところ、白色の浮遊物が発生した。その後反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIXを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIXを150℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−7を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−7はNCO含有量が22.0質量%、外観は透明液体、25℃での粘度は2950mPa・s、色数は20(APHA)、濁度は1、遊離HDI含有量は0.12質量%であった。