(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整レンズ群の前記正屈折力のレンズ群は、前記負レンズLnの像側に配置された正屈折力のレンズ群G3adjAと、前記負レンズLnの物体側に配置された正屈折力のレンズ群G3adjBとである請求項1に記載の光学系。
前記第3レンズ群中に、物体側から順に、前記負レンズLnと、物体側に凸面を向けた前記レンズ群G3adjAとが隣接して配置される請求項2、4、5、8から14の何れか一項に記載の光学系。
前記負レンズLnは第1の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjAは第2の保持部材によって保持されている請求項2、4、5、8から16の何れか一項に記載の光学系。
前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとの前記空気間隔は、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材との間に挟み込まれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整する請求項17に記載の光学系。
前記第3レンズ群中に、物体側から順に、像側に凸面を向けた前記レンズ群G3adjBと、前記負レンズLnとが隣接して配置される請求項3、4、6から8、19から24の何れか一項に記載の光学系。
前記負レンズLnは第1の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjBは第3の保持部材によって保持されている請求項3、4、6から8、19から25の何れか一項に記載の光学系。
前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjBとの前記空気間隔は、前記第1の保持部材と前記第3の保持部材との間に挟み込まれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整する請求項26に記載の光学系。
前記負レンズLnは第1の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjAは第2の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjBは第3の保持部材によって保持されている請求項4から16、19から25の何れか一項に記載の光学系。
前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとの前記空気間隔は、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に挟み込まれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整し、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjBとの前記空気間隔は、前記第1の保持部材と前記第3の保持部材との間に挟み込まれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整する請求項28に記載の光学系。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る光学系、光学装置、および光学系の調整方法について説明する。まず、実施形態に係る光学系から説明する。
【0009】
本実施形態に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と、負屈折力の第2レンズ群と、第3レンズ群とを有し、前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
この構成により、長焦点距離でありながら小型化と高い光学性能の両立を達成することができる。また、無限遠物体から近距離物体への合焦に際し、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより、小型のモータユニットで合焦レンズ群を駆動することができる。
【0010】
本実施形態に係る光学系は、このような構成のもと、第3レンズ群は、光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることによって像ブレ発生時の像面補正を行う防振レンズ群を有している。
この構成により、手ブレ等で振動した場合の光軸のずれを補正することができ、結像性能を向上させることができる。
【0011】
本実施形態に係る光学系は、このような構成のもと、第3レンズ群は、前記防振レンズ群よりも像側に配置され、負レンズLnと、前記負レンズLnと隣り合う正屈折力のレンズ群とからなり、前記負レンズLnと前記正屈折力のレンズ群との空気間隔を調整可能な調整レンズ群とを有している。
この構成により、光学系を組み立てた後に、製造誤差によって生じた諸収差を短い作業工程で容易に補正することができる。
【0012】
また、本実施形態に係る光学系は、前記調整レンズ群の前記正屈折力のレンズ群は、前記負レンズLnの像側に配置された正屈折力のレンズ群G3adjAであることが望ましい。
この構成により、光学系を組み立てた後に、製造誤差によって生じた諸収差を短い作業工程で容易に補正することができ、特に非点収差を良好に補正することができる。
【0013】
また、本実施形態に係る光学系は、前記調整レンズ群の前記正屈折力のレンズ群は、前記負レンズLnの物体側に配置された正屈折力のレンズ群G3adjBであることが望ましい。
この構成により、光学系を組み立てた後に、製造誤差によって生じた諸収差を短い作業工程で容易に補正することができ、特に球面収差を良好に補正することができる。
【0014】
また、本実施形態に係る光学系は、前記調整レンズ群の前記正屈折力のレンズ群は、前記負レンズLnの像側に配置された正屈折力のレンズ群G3adjAと、前記負レンズLnの物体側に配置された正屈折力のレンズ群G3adjBとであることが望ましい。
この構成により、光学系を組み立てた後に、製造誤差によって生じた諸収差を短い作業工程で容易に補正することができ、特に非点収差と球面収差とを良好に補正することができる。
【0015】
また、本実施形態に係る光学系は、前記レンズ群G3adjAは、1枚の正レンズであることが望ましい。
この構成により、製造誤差によって生じた非点収差を良好に補正することができるとともに、光学系の小型化を実現することができる。
【0016】
また、本実施形態に係る光学系は、前記レンズ群G3adjBは、2枚以下のレンズで構成されていることが望ましい。
この構成により、製造誤差によって生じた球面収差を良好に補正することができるとともに、光学系の小型化を実現することができる。
【0017】
また、本実施形態に係る光学系は、前記レンズ群G3adjBは、1枚の正レンズ、または1枚の正レンズと1枚の負レンズとの組み合わせで構成されていることが望ましい。
この構成により、製造誤差によって生じた球面収差を良好に補正することができるとともに、光学系の小型化を実現することができる。
【0018】
また、本実施形態に係る光学系は、前記負レンズLnは、両凹形状であることが望ましい。
この構成により、製造誤差によって生じた諸収差、特に非点収差と球面収差とを良好に補正することができる。
【0019】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)3.0 < f/fRA < 15.0
ただし、
f:前記光学系全系の焦点距離
fRA:前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの合成焦点距離
【0020】
条件式(1)は、光学系全系の焦点距離と、前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの合成焦点距離との比を規定するための条件式である。条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの合成焦点距離が小さくなり、軸外主光線の前記レンズ群G3adjAへの入射角が大きくなり、高次の非点収差が発生し、補正が困難になってしまう。また、空気間隔の非点収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって非点収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の上限値を13.0にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(1)の上限値を11.0にすることが好ましい。
【0021】
一方、条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの合成焦点距離が大きくなり、軸外主光線の前記レンズ群G3adjAへの入射角が小さくなり、空気間隔の非点収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した非点収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の下限値を4.0にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(1)の下限値を5.0にすることが好ましい。
【0022】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)2.0 < f/dR < 10.0
ただし、
f:前記光学系全系の焦点距離
dR:前記レンズ群G3adjAの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離
【0023】
条件式(2)は、光学系全系の焦点距離と、前記レンズ群G3adjAの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離との比を規定するための条件式である。条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、前記レンズ群G3adjAを通る軸外主光線の高さが低くなり、空気間隔の非点収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した非点収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の上限値を8.0にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(2)の上限値を7.0にすることが好ましい。
【0024】
一方、条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、前記レンズ群G3adjAを通る軸外主光線の高さが高くなり、高次の非点収差が発生し、補正が困難になってしまう。また、空気間隔の非点収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって非点収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の下限値を3.0にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(2)の下限値を4.0にすることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)0.10 < f/−fFA < 1.00
ただし、
f:前記光学系全系の焦点距離
fFA:最も物体側のレンズから前記負レンズLnまでの合成焦点距離
【0026】
条件式(3)は、光学系全系の焦点距離と、最も物体側のレンズから前記負レンズLnまでの合成焦点距離との比を規定するための条件式である。条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、最も物体側のレンズから前記負レンズLnまでの合成焦点距離が小さくなり、fRAすなわち前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの合成焦点距離が大きくなる傾向となり、軸外主光線の前記レンズ群G3adjAへの入射角が小さくなり、空気間隔の非点収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した非点収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の上限値を0.90にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(3)の上限値を0.80にすることが好ましい。
【0027】
一方、条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、最も物体側のレンズから前記負レンズLnまでの合成焦点距離が大きくなり、前記レンズ群G3adjAに入射する軸上光線の高さが高くなり、製造誤差によって発生した非点収差を間隔調整で補正したときに、副次的に球面収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の下限値を0.20にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(3)の下限値を0.30にすることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(4)および(5)を同時に満足することが望ましい。
(4)|R1A−R2A|/f < 0.050
(5)0.010 < (R1A+R2A)/f <0.600
ただし、
R1A:前記負レンズLnの像側の面の曲率半径
R2A:前記レンズ群G3adjAの物体側の面の曲率半径
f:前記光学系全系の焦点距離
【0029】
条件式(4)は、光学系全系の焦点距離に対する、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとに挟まれる空気レンズの物体側の面の曲率半径と像側の面の曲率半径との差の比を規定するための条件式である。条件式(5)は、光学系全系の焦点距離に対する、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとに挟まれる空気レンズの物体側の面の曲率半径と像側の面の曲率半径との和の比を規定するための条件式である。
【0030】
条件式(4)を満足した上で、条件式(5)の対応値が上限値を上回ると、前記負レンズLnの像側の面の曲率半径も、前記レンズ群G3adjAの物体側の面の曲率半径も、ともに大きくなり、空気間隔の非点収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した非点収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の上限値を0.040にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(4)の上限値を0.035にすることが好ましい。また、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の上限値を0.500にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(5)の上限値を0.450にすることが好ましい。
【0031】
一方、条件式(4)を満足した上で、条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、前記負レンズLnの像側の面の曲率半径も、前記レンズ群G3adjAの物体側の面の曲率半径も、ともに小さくなり、高次の非点収差が発生し、補正が困難になってしまう。また、空気間隔の非点収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって非点収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の下限値を0.050にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(5)の下限値を0.100にすることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)0.005 < IIIA/IA・(y/f)
2
ただし、
IIIA:前記光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの、前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの3次非点収差係数の和
IA:前記光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの、前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの3次球面収差係数の和
y:前記光学系の最大像高
f:前記光学系全系の焦点距離
【0033】
条件式(6)は、光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの3次非点収差係数の和と、光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの3次球面収差係数の和と画角の2乗との積との比を規定するための条件式である。条件式(6)の対応値が下限値を下回ると、製造誤差によって発生した非点収差を間隔調整で補正したときに、副次的に球面収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(6)の下限値を0.015にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(6)の下限値を0.025にすることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)0.005 < IIIA・(y/f)
2 < 0.060
ただし、
IIIA:前記光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの、前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの3次非点収差係数の和
y:前記光学系の最大像高
f:前記光学系全系の焦点距離
【0035】
条件式(7)は、光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの前記レンズ群G3adjAから最も像側のレンズまでの3次非点収差係数の和と画角の2乗との積を規定するための条件式である。条件式(7)の対応値が上限値を上回ると、高次の非点収差が発生し、補正が困難となってしまう。また、空気間隔の非点収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって非点収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(7)の上限値を0.050にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(7)の上限値を0.040にすることが好ましい。
【0036】
一方、条件式(7)の対応値が下限値を下回ると、空気間隔の非点収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した非点収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(7)の下限値を0.010にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(7)の下限値を0.020にすることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態に係る光学系は、前記第3レンズ群中に、物体側から順に、前記負レンズLnと、物体側に凸面を向けた前記レンズ群G3adjAとが隣接して配置されることが望ましい。
この構成により、空気間隔に非点収差を調整するための感度を持たせつつ、高い光学性能を達成することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)0.001 < dM/f < 0.010
ただし、
dM:前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとの空気間隔の光軸上の距離
f:前記光学系全系の焦点距離
【0039】
条件式(8)は、光学系全系の焦点距離に対する、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとの空気間隔の光軸上の距離の比を規定するための条件式である。条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、高次の非点収差が発生し、補正が困難となってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(8)の上限値を0.008にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(8)の上限値を0.007にすることが好ましい。
【0040】
一方、条件式(8)の対応値が下限値を下回ると、安定したレンズ保持部材の構成が困難となり、製造誤差が増加し、非点収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(8)の下限値を0.002にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(8)の下限値を0.003にすることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態に係る光学系は、前記負レンズLnは第1の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjAは第2の保持部材によって保持されていることが望ましい。
この構成により、製造誤差によって発生した非点収差の補正をするための空気間隔の調整を容易に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る光学系は、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとの前記空気間隔は、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材との間に挟み込まれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整することが望ましい。
この構成により、製造誤差によって発生した非点収差の補正をするための空気間隔の調整を容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)1.00 < f/fFB < 2.70
ただし、
f:前記光学系全系の焦点距離
fFB:最も物体側のレンズから前記レンズ群G3adjBまでの合成焦点距離
【0044】
条件式(9)は、光学系全系の焦点距離と、最も物体側のレンズから前記レンズ群G3adjBまでの合成焦点距離との比を規定するための条件式である。条件式(9)の対応値が上限値を上回ると、最も物体側のレンズから前記レンズ群G3adjBまでの合成焦点距離が小さくなり、軸上光線の前記負レンズLnへの入射角が小さくなり、空気間隔の球面収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した球面収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(9)の上限値を2.55にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(9)の上限値を2.45にすることが好ましい。
【0045】
一方、条件式(9)の対応値が下限値を下回ると、最も物体側のレンズから前記レンズ群G3adjBまでの合成焦点距離が大きくなり、軸上光線の前記負レンズLnへの入射角が大きくなり、空気間隔の球面収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって球面収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(9)の下限値を1.20にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(9)の下限値を1.30にすることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)0.0050 < dSA/f < 0.0500
ただし、
dSA:前記レンズ群G3adjBと前記負レンズLnとの空気間隔の光軸上の距離
f:前記光学系全系の焦点距離
【0047】
条件式(10)は、光学系全系の焦点距離に対する、前記レンズ群G3adjBと前記負レンズLnとの空気間隔の光軸上の距離の比を規定するための条件式である。条件式(10)の対応値が上限値を上回ると、高次の球面収差が発生し、補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(10)の上限値を0.0300にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(10)の上限値を0.0265にすることが好ましい。
【0048】
一方、条件式(10)の対応値が下限値を下回ると、安定したレンズ保持部材の構成が困難となり、製造誤差が増加し、球面収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(10)の下限値を0.0070にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(10)の下限値を0.0085にすることが好ましい。
【0049】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)1.3 < f/−fRB < 6.5
ただし、
f:前記光学系全系の焦点距離
fRB:前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの合成焦点距離
【0050】
条件式(11)は、光学系全系の焦点距離と、前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの合成焦点距離との比を規定するための条件式である。条件式(11)の対応値が上限値を上回ると、前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの合成焦点距離が小さくなり、前記負レンズLnを通る軸上光線の高さが低くなり、空気間隔の球面収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した球面収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(11)の上限値を6.3にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(11)の上限値を6.1にすることが好ましい。
【0051】
一方、条件式(11)の対応値が下限値を下回ると、前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの合成焦点距離が大きくなり、前記負レンズLnを通る軸上光線の高さが高くなり、空気間隔の球面収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって球面収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(11)の下限値を1.5にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(11)の下限値を1.6にすることが好ましい。
【0052】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(12)および(13)を同時に満足することが望ましい。
(12)|R1B−R2B|/f < 0.150
(13)0.150 < (R1B+R2B)/f <0.500
ただし、
R1B:前記レンズ群G3adjBの像側の面の曲率半径
R2A:前記負レンズLnの物体側の面の曲率半径
f:前記光学系全系の焦点距離
【0053】
条件式(12)は、光学系全系の焦点距離に対する、前記レンズ群G3adjBと前記負レンズLnとに挟まれる空気レンズの物体側の面の曲率半径と像側の面の曲率半径との差の比を規定するための条件式である。条件式(13)は、光学系全系の焦点距離に対する、前記レンズ群G3adjBと前記負レンズLnとに挟まれる空気レンズの物体側の面の曲率半径と像側の面の曲率半径との和の比を規定するための条件式である。
【0054】
条件式(12)を満足した上で、条件式(13)の対応値が上限値を上回ると、前記レンズ群G3adjBの像側の面の曲率半径も、前記負レンズLnの物体側の面の曲率半径も、ともに大きくなり、空気間隔の球面収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した球面収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(12)の上限値を0.120にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(12)の上限値を0.110にすることが好ましい。また、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(13)の上限値を0.470にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(13)の上限値を0.455にすることが好ましい。
【0055】
一方、条件式(12)を満足した上で、条件式(13)の対応値が下限値を下回ると、前記レンズ群G3adjBの像側の面の曲率半径も、前記負レンズLnの物体側の面の曲率半径も、ともに小さくなり、高次の球面収差が発生し、補正が困難となってしまう。また、空気間隔の球面収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって球面収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(13)の下限値を0.200にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(13)の下限値を0.225にすることが好ましい。
【0056】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
(14)IIIB/IB・(y/f)
2 < 0.010
ただし、
IIIB:前記光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの、前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの3次非点収差係数の和
IB:前記光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの、前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの3次球面収差係数の和
y:前記光学系の最大像高
f:前記光学系全系の焦点距離
【0057】
条件式(14)は、光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの3次非点収差係数の和と、光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの3次球面収差係数の和と画角の2乗との積との比を規定するための条件式である。条件式(14)の対応値が上限値を上回ると、製造誤差によって発生した球面収差を間隔調整で補正したときに、副次的に非点収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(14)の上限値を0.007にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(14)の上限値を0.004にすることが好ましい。
【0058】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(15)を満足することが望ましい。
(15)1.20 < −IB < 4.70
ただし、
IB:前記光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの、前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの3次球面収差係数の和
【0059】
条件式(15)は、光学系全系の焦点距離を1に規格化したときの、前記負レンズLnから最も像側のレンズまでの3次球面収差係数の和を規定するための条件式である。条件式(15)の対応値が上限値を上回ると、高次の球面収差が発生し、補正が困難となってしまう。また、空気間隔の球面収差に対する感度が高くなり、空気間隔調整の制御誤差によって球面収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(15)の上限値を4.5にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(15)の上限値を4.4にすることが好ましい。
【0060】
一方、条件式(15)の対応値が下限値を下回ると、空気間隔の球面収差に対する感度が低くなり、製造誤差によって発生した球面収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(15)の下限値を1.4にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(15)の下限値を1.45にすることが好ましい。
【0061】
また、本実施形態に係る光学系は、前記第3レンズ群中に、物体側から順に、像側に凸面を向けた前記レンズ群G3adjBと、前記負レンズLnとが隣接して配置されることが望ましい。
この構成により、空気間隔に球面収差を調整するための感度を持たせつつ、高い光学性能を達成することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る光学系は、前記負レンズLnは第1の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjBは第3の保持部材によって保持されていることが望ましい。
この構成により、製造誤差によって発生した球面収差の補正をするための空気間隔の調整を容易に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態に係る光学系は、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjBとの前記空気間隔は、前記第1の保持部材と前記第3の保持部材との間に挟み込まれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整することが望ましい。
この構成により、製造誤差によって発生した球面収差の補正をするための空気間隔の調整を容易に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態に係る光学系は、前記負レンズLnは第1の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjAは第2の保持部材によって保持され、前記レンズ群G3adjBは第3の保持部材によって保持されていることが望ましい。
この構成により、製造誤差によって発生した非点収差の補正をするための空気間隔の調整および球面収差の補正をするための空気間隔の調整を容易に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る光学系は、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjAとの前記空気間隔は、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に挟み込みまれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整し、前記負レンズLnと前記レンズ群G3adjBとの前記空気間隔は、前記第1の保持部材と前記第3の保持部材との間に挟み込まれた間隔調整用部材の数を変更することにより調整することが望ましい。
この構成により、製造誤差によって発生した非点収差の補正をするための空気間隔の調整および球面収差の補正をするための空気間隔の調整を容易に行うことができる。
【0066】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(16)を満足することが望ましい。
(16)0.20 < TL3/f1 < 0.50
ただし、
TL3:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
【0067】
条件式(16)は、第1レンズ群の焦点距離に対する、前記第3レンズ群の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離、すなわち第3レンズ群の光軸上の長さの比を規定するための条件式である。条件式(16)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群の焦点距離が小さくなり、第1レンズ群の焦点距離に係る倍率が大きくなり、2次色収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(16)の上限値を0.40にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(16)の上限値を0.36にすることが好ましい。
【0068】
一方、条件式(16)の対応値が下限値を下回ると、第3レンズ群の光軸上の長さが短くなり、安定したレンズ保持部材の構成が困難となり、製造誤差が増加し、非点収差が発生してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(16)の下限値を0.25にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(16)の下限値を0.28にすることが好ましい。
【0069】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(17)を満足することが望ましい。
(17)0.65 < TL/f < 1.15
ただし、
TL:前記光学系全系の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離
f:前記光学系全系の焦点距離
【0070】
条件式(17)は、光学系全系の焦点距離に対する、光学系全系の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離、すなわち光学系の全長の比を規定するための条件式である。条件式(17)の対応値が上限値を上回ると、周辺光量が低下し、それを補正するために入射瞳位置を前に出すと、歪曲収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(17)の上限値を1.10にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(17)の上限値を1.05にすることが好ましい。
【0071】
一方、条件式(17)の対応値が下限値を下回ると、軸上、軸外ともに2次色収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(17)の下限値を0.70にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(17)の下限値を0.75にすることが好ましい。
【0072】
また、本実施形態に係る光学系は、以下の条件式(18)を満足することが望ましい。
(18)0.30 < f/f12 < 1.00
ただし、
f:前記光学系全系の焦点距離
f12:前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との無限遠物体合焦状態における合成焦点距離
【0073】
条件式(18)は、光学系全系の焦点距離と、第1レンズ群と第2レンズ群との無限遠物体合焦状態における合成焦点距離との比を規定するための条件式である。条件式(18)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群と第2レンズ群との無限遠物体合焦状態における合成焦点距離が小さくなり、2次色収差の補正が困難になってしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(18)の上限値を0.90にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(18)の上限値を0.85にすることが好ましい。
【0074】
一方、条件式(18)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群と第2レンズ群との無限遠物体合焦状態における合成焦点距離が大きくなり、第2レンズ群の焦点距離が小さくなり、近距離物体合焦時の非点収差が悪化してしまう。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(18)の下限値を0.35にすることが好ましい。また、本実施形態の効果をさらに確実にするために、条件式(18)の下限値を0.40にすることが好ましい。
【0075】
また、本実施形態に係る光学系は、前記第2レンズ群を光軸に沿って像側へ移動させることにより無限遠物体から近距離物体への合焦を行うことが望ましい。
この構成により、光学系の小型化を実現するとともに、球面収差、色収差、非点収差の変動を良好に補正し、高い光学性能を実現することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る光学装置は、上述した構成の光学系を備えている。これにより、光学系を組み立てた後に、製造誤差によって生じた諸収差を短い作業工程で容易に補正することができる光学系を備えた光学装置を実現することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る光学系の調整方法は、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と、負屈折力の第2レンズ群と、第3レンズ群とを有し、前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより無限遠物体から近距離物体への合焦を行い、前記第3レンズ群は、光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることによって像ブレ発生時の像面補正を行う防振レンズ群を有する光学系の調整方法であって、前記第3レンズ群は、前記防振レンズ群よりも像側に、負レンズLnと、前記負レンズLnと隣り合う正屈折力のレンズ群とからなる調整レンズ群をさらに有し、前記負レンズLnと前記正屈折力のレンズ群との空気間隔の調整を行う。
【0078】
斯かる光学系の調整方法により、光学系を組み立てた後に、製造誤差によって生じた諸収差を短い作業工程で容易に補正することができる。
【0079】
(数値実施例)
以下、本実施形態の数値実施例に係る光学系を添付図面に基づいて説明する。
【0080】
(第1実施例)
図1は、第1実施例に係る光学系の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施例に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成されている。
【0081】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向け、屈折力が極めて弱い保護フィルタガラスHGと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11と、両凸レンズL12と、両凹レンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15との接合レンズとから構成されている。
【0082】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、両凸レンズL21と両凹レンズL22との接合レンズから構成されている。
【0083】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL31と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL32と両凹レンズL33との接合レンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL34と、両凸レンズL35と、両凹レンズL36と、両凸レンズL37とから構成されている。
【0084】
第3レンズ群G3の像面I側には、ローパスフィルタ等のフィルタFLが配置されている。
【0085】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示省略)が配置されている。
【0086】
以上の構成のもと、本実施例に係る光学系は、第2レンズ群G2を合焦レンズ群として像面I側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦が行われる。また、正メニスカスレンズL32と両凹レンズL33との接合レンズと、負メニスカスレンズL34とを防振レンズ群Gvrとして光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることにより像面I上の像をシフトさせて、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行っている。
【0087】
また、本実施例に係る光学系は、両凸レンズL35と、両凹レンズL36と、両凸レンズL37とで、光学系の組み立て後に、製造誤差による結像性能の劣化を良好に補正するための調整レンズ群Gadjを構成している。
【0088】
次に、調整レンズ群Gadjについて説明する。
図2は調整レンズ群Gadjの調整機構を示す拡大断面図である。
図2に示すように、調整レンズ群Gadjは、両凹形状の負レンズLnと、負レンズLnの像面I側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjAと、負レンズLnの物体側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjBとから構成されている。本実施例においては、両凹レンズL36が負レンズLnに対応し、両凸レンズL37がレンズ群G3adjAに対応し、両凸レンズL35がレンズ群G3adjBに対応している。なお、調整レンズ群Gadjが両凹形状の負レンズLnと、負レンズLnの像面I側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjAと、負レンズLnの物体側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjBとから構成されていること、および次に説明する調整機構、調整方法は、以下の各実施例において共通である。
【0089】
図2に示すように、負レンズLnは環状の第1レンズ保持枠R1に保持され、レンズ群G3adjAは環状の第2レンズ保持枠R2に保持され、レンズ群G3adjBは環状の第3レンズ保持枠R3に保持されている。第2レンズ保持枠R2は、レンズ群G3adjAを保持する円筒部R2aと、円筒部R2aの物体側端部に形成され径方向外方に延在するフランジ部R2bとを有する。フランジ部R2bの外径寸法と第1レンズ保持枠R1の外径寸法とは同等に形成されている。第3レンズ保持枠R3は、レンズ群G3adjBを保持する円筒部R3aと、円筒部R3aの像面I側端部に形成され径方向外方に延在するフランジ部R3bとを有する。フランジ部R3bの外径寸法と第1レンズ保持枠R1の外径寸法とは同等に形成されている。
【0090】
第2レンズ保持枠R2のフランジ部R2bには、フランジ部R2bを光軸方向に貫通する3つのねじ穴R2cが周方向に略等間隔で形成されている。第3レンズ保持枠R3のフランジ部R3bには、フランジ部R3bを光軸方向に貫通する3つのねじ穴R3cが周方向に略等間隔で形成されている。第1レンズ保持枠R1には、像面I側の面すなわち第2レンズ保持枠R2のフランジ部R2bと対向する面に開口する光軸方向の3つのねじ穴R1dが、フランジ部R2bの3つのねじ穴R2cに対応するように、周方向に略等間隔で形成されている。第1レンズ保持枠R1にはさらに、物体側の面すなわち第3レンズ保持枠R3のフランジ部R3bと対向する面に開口する光軸方向の3つのねじ穴R1eが、フランジ部R3bの3つのねじ穴R3cに対応するように、周方向に略等間隔で形成されている。第1レンズ保持枠R1の3つのねじ穴R1dと3つのねじ穴R1eとは、光軸方向から見て、周方向に交互に略等間隔となるように形成されている。
【0091】
第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間隔は、第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間に挟み込まれた環状の板状部材である間隔調整部材S1の数を変更することにより調整できるようになっている。また、第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3との間隔は、第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3との間に挟み込まれた環状の板状部材である間隔調整部材S1の数を変更することにより調整できるようになっている。
【0092】
間隔調整部材S1は第1レンズ保持枠R1の外径寸法と同等の外径寸法を有している。間隔調整部材S1には、光軸方向に貫通する6つのねじ穴S1aが周方向に略等間隔で形成されている。したがって間隔調整部材S1は、第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間と、第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3との間との何れにも配置できる構成となっている。
【0093】
第1レンズ保持枠R1と、第2レンズ保持枠R2と、第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間に配置された間隔調整部材S1とは、3つのねじN1によって互いに固定されている。詳細には、像面I側から第2レンズ保持枠R2のフランジ部R2bの3つのねじ穴R2cにそれぞれ螺合された3つのねじN1が、各ねじ穴R2cと、各ねじ穴R2cに対応する間隔調整部材S1のねじ穴S1aとを貫通し、第1レンズ保持枠R1の対応するねじ穴R1dに螺合することにより、第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2と間隔調整部材S1とは互いに固定されている。本実施例においては、
図2に示すように、第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間には、2つの間隔調整部材S1が挟み込まれ、固定されている。
【0094】
同様に、物体側から第3レンズ保持枠R3のフランジ部R3bの3つのねじ穴R3cにそれぞれ螺合された3つのねじN1が、各ねじ穴R3cと、各ねじ穴R3cに対応する間隔調整部材S1のねじ穴S1aとを貫通し、第1レンズ保持枠R1の対応するねじ穴R1eに螺合することにより、第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3と間隔調整部材S1とは互いに固定されている。本実施例においては、
図2に示すように、第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3との間には、2つの間隔調整部材S1が挟み込まれ、固定されている。
【0095】
そして本実施例に係る光学系は、第2レンズ保持枠R2側の3つのねじN1を抜いて第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間に配置される間隔調整部材S1の数を変更することができる。そして間隔調整部材S1の数を変更した後、再度これら3つのねじN1を締め付けて、第1レンズ保持枠R1と、第2レンズ保持枠R2と、数が変更された間隔調整部材S1とを互いに固定することにより、第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間隔を調整することができる。このように第1レンズ保持枠R1と第2レンズ保持枠R2との間隔を調整することにより、負レンズLnとレンズ群G3adjAとの空気間隔を調整できるようになっている。すなわち本実施例においては、両凹レンズL36と両凸レンズL37との空気間隔を調整できるようになっている。
【0096】
同様に、第3レンズ保持枠R3側の3つのねじN1を抜いて第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3との間に配置される間隔調整部材S1の数を変更することができる。そして間隔調整部材S1の数を変更した後、再度これら3つのねじN1を締め付けて、第1レンズ保持枠R1と、第3レンズ保持枠R3と、数が変更された間隔調整部材S1とを互いに固定することにより、第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3との間隔を調整することができる。このように第1レンズ保持枠R1と第3レンズ保持枠R3との間隔を調整することにより、負レンズLnとレンズ群G3adjBとの空気間隔を調整できるようになっている。すなわち本実施例においては、両凹レンズL36と両凸レンズL35との空気間隔を調整できるようになっている。
【0097】
以下の表1に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
[全体諸元]において、fは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角(単位は「°」)、Yは最大像高、TLは撮影レンズの全長(無限遠物体合焦時の第1面から像面Iまでの光軸上の距離)、BFはバックフォーカス(最も像側のレンズ面と像面Iとの光軸上の距離)を示す。また、空気換算TLは無限遠物体合焦時の第1面から像面Iまでの光軸上の距離を、フィルタ等の光学ブロックを光路中から除去した状態で測ったときの値であり、空気換算BFは後側レンズ群GR中の最も像側のレンズ面から像面Iまでの光軸上の距離を、フィルタ等の光学ブロックを光路中から除去した状態で測ったときの値である。
【0098】
[面データ]において、面番号は物体側から数えた光学面の順番、rは曲率半径、dは面間隔(第n面(nは整数)と第(n+1)面との間隔)、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、可変は可変の面間隔、絞りSは開口絞りS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示している。空気の屈折率nd=1.000000の記載は省略している。
【0099】
[可変間隔データ]において、fは焦点距離を、βは撮影倍率をそれぞれ示し、di(iは整数)は第i面と第(i+1)面との面間隔を示す。また、d0は物体から最も物体側のレンズ面までの距離を示す。
【0100】
[レンズ群データ]には、各レンズ群の始面番号と焦点距離を示す。
[条件式対応値]には、各条件式の対応値をそれぞれ示す。
【0101】
ここで、表1に記載されている焦点距離fや曲率半径r、およびその他長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0102】
(表1)第1実施例
[全体諸元]
f 294.00
FNO 2.91
2ω 8.32
Y 21.60
TL 305.39
空気換算TL 304.88
BF 67.25
空気換算BF 66.74
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1) 1200.3704 5.00 1.51680 63.88
2) 1199.7897 1.00
3) 117.0888 15.00 1.43385 95.25
4) 1140.8744 50.00
5) 118.6010 15.00 1.43385 95.25
6) -219.4076 3.00
7) -195.8561 4.50 1.61266 44.46
8) 456.3056 37.52
9) 56.5844 2.50 1.61772 49.81
10) 31.2731 11.00 1.49782 82.57
11) 143.8239 (可変)
12) 1196.9976 3.00 1.84666 23.78
13) -223.3874 2.40 1.76684 46.78
14) 54.5722 (可変)
15) ∞ 3.50 (絞り)
16) 117.0936 3.00 1.88300 40.66
17) 337.7034 7.02
18) -106.4501 3.00 1.80100 34.92
19) -48.8669 1.90 1.49782 82.57
20) 70.8719 2.00
21) 265.8882 1.90 1.49782 82.57
22) 88.2775 2.77
23) 63.5637 5.50 1.62299 58.12
24) -67.1168 3.50
25) -63.8865 2.00 1.80100 34.92
26) 55.1040 2.00
27) 64.5295 5.00 1.81600 46.59
28) -109.1205 5.00
29) ∞ 1.50 1.51680 63.88
30) ∞ 60.75
像面 ∞
[可変間隔データ]
無限遠 至近撮影距離
forβ 293.997 -0.183
d 0 ∞ 1594.607
d11 6.441 22.206
d14 38.692 22.927
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 177.78
2 12 -73.17
3 16 187.92
[条件式対応値]
(1)f/fRA=5.8
(2)f/dR=4.1
(3)f/−fFA=0.36
(4)|R1A−R2A|/f=0.032
(5)(R1A+R2A)/f=0.41
(6)IIIA/IA・(y/f)
2=0.040
(7)IIIA・(y/f)
2=0.030
(8)dM/f=0.007
(9)f/fFB=1.5
(10)dSA/f=0.012
(11)f/−fRB=1.6
(12)|R1B−R2B|/f=0.011
(13)(R1B+R2B)/f=0.45
(14)IIIB/IB・(y/f)
2=0.001
(15)−IB=1.494
(16)TL3/f1=0.31
(17)TL/f=1.04
(18)f/f12=0.55
【0103】
図3(a)は第1実施例に係る光学系の無限遠物体合焦状態における諸収差図であり、
図3(b)は防振状態での横収差図である。
図4(a)は第1実施例に係る光学系において面間隔d26を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図であり、
図4(b)は面間隔d24を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図である。
【0104】
各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高をそれぞれ示している。また、図中のdはd線(波長λ=587.6nm)での収差曲線を示し、gはg線(波長λ=435.8nm)での収差曲線を示し、記載のないものはd線での収差曲線を示す。球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では像高の最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示している。コマ収差を示す収差図は、d線およびg線に対するメリディオナルコマ収差を表している。非点収差を示す収差図において実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。なお、以下に示す各実施例の諸収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
【0105】
図3(a)、(b)の各収差図から明らかなように、第1実施例に係る光学系は諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
また、
図4(a)から、非点収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
また、
図4(b)から、球面収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
【0106】
(第2実施例)
図5は、第2実施例に係る光学系の構成を示す断面図である。
図5に示すように、本実施例に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成されている。
【0107】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向け、屈折力が極めて弱い保護フィルタガラスHGと、両凸レンズL11と、両凸レンズL12と、両凹レンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15との接合レンズとから構成されている。
【0108】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、両凹レンズL21と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL22と両凹レンズL23との接合レンズとから構成されている。
【0109】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に、両凸レンズL31と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL32と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL33と両凹レンズL34との接合レンズと、両凹レンズL35と、両凸レンズL36と、両凹レンズL37と、両凸レンズL38とから構成されている。
【0110】
第3レンズ群G3の像面I側には、ローパスフィルタ等のフィルタFLが配置されている。
【0111】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示省略)が配置されている。
【0112】
以上の構成のもと、本実施例に係る光学系は、第2レンズ群G2を合焦レンズ群として像面I側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦が行われる。また、正メニスカスレンズL33と両凹レンズL34との接合レンズと、両凹レンズL35とを防振レンズ群Gvrとして光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることにより像面I上の像をシフトさせて、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行っている。
【0113】
また、本実施例に係る光学系は、両凸レンズL36と、両凹レンズL37と、両凸レンズL38とで、光学系の組み立て後に、製造誤差による結像性能の劣化を良好に補正するための調整レンズ群Gadjを構成している。
【0114】
調整レンズ群Gadjは、第1実施例と同様に、両凹形状の負レンズLnと、負レンズLnの像面I側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjAと、負レンズLnの物体側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjBとから構成されている(
図2参照)。本実施例においては、両凹レンズL37が負レンズLnに対応し、両凸レンズL38がレンズ群G3adjAに対応し、両凸レンズL36がレンズ群G3adjBに対応している。また、負レンズLnとレンズ群G3adjAとの空気間隔、および負レンズLnとレンズ群G3adjBとの空気間隔の調整機構も第1実施例と同様である。
【0115】
以下の表2に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0116】
(表2)第2実施例
[全体諸元]
f 391.99
FNO 2.88
2ω 6.27
Y 21.60
TL 398.99
空気換算TL 398.31
BF 75.99
空気換算BF 75.31
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1) 1200.3704 5.00 1.51680 63.88
2) 1199.7897 1.00
3) 206.0123 17.50 1.43385 95.25
4) -1124.1029 45.00
5) 162.1697 18.00 1.43385 95.25
6) -424.1506 3.00
7) -387.2326 6.00 1.61266 44.46
8) 341.3405 90.05
9) 66.3028 4.00 1.79500 45.31
10) 45.2667 15.50 1.49782 82.57
11) 852.5142 (可変)
12) -1364.8500 2.50 1.81600 46.59
13) 100.3113 3.45
14) -1478.6561 3.50 1.84666 23.80
15) -115.0000 2.40 1.51823 58.82
16) 70.0000 (可変)
17) ∞ 2.00 (絞り)
18) 94.2086 8.00 1.58313 59.42
19) -52.4800 1.20
20) -50.2830 1.90 1.90200 25.26
21) -107.9165 5.00
22) -308.3841 3.50 1.84666 23.80
23) -67.5239 1.90 1.59319 67.90
24) 63.3602 3.10
25) -502.9890 1.90 1.75500 52.34
26) 112.1269 6.26
27) 61.9176 5.80 1.79504 28.69
28) -93.9603 3.20
29) -91.9469 1.90 1.84666 23.80
30) 49.5642 2.00
31) 60.5211 5.50 1.79952 42.09
32) -162.0287 9.00
33) ∞ 2.00 1.51680 63.88
34) ∞ 64.99
像面 ∞
[可変間隔データ]
無限遠 至近撮影距離
forβ 391.990 -0.173
d 0 ∞ 2201.000
d11 14.478 29.909
d16 38.472 23.041
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 179.21
2 12 -70.56
3 18 165.78
[条件式対応値]
(1)f/fRA=7.0
(2)f/dR=4.8
(3)f/−fFA=0.39
(4)|R1A−R2A|/f=0.028
(5)(R1A+R2A)/f=0.27
(6)IIIA/IA・(y/f)
2=0.040
(7)IIIA・(y/f)
2=0.026
(8)dM/f=0.005
(9)f/fFB=1.6
(10)dSA/f=0.009
(11)f/−fRB=2.7
(12)|R1B−R2B|/f=0.016
(13)(R1B+R2B)/f=0.45
(14)IIIB/IB・(y/f)
2=0.002
(15)−IB=1.464
(16)TL3/f1=0.35
(17)TL/f=1.02
(18)f/f12=0.43
【0117】
図6(a)は第2実施例に係る光学系の無限遠物体合焦状態における諸収差図であり、
図6(b)は防振状態での横収差図である。
図7(a)は第2実施例に係る光学系において面間隔d30を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図であり、
図7(b)は面間隔d28を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図である。
【0118】
図6(a)、(b)の各収差図から明らかなように、第2実施例に係る光学系は諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
また、
図7(a)から、非点収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
また、
図7(b)から、球面収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
【0119】
(第3実施例)
図8は、第3実施例に係る光学系の構成を示す断面図である。
図8に示すように、本実施例に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成されている。
【0120】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向け、屈折力が極めて弱い保護フィルタガラスHGと、両凸レンズL11と、両凸レンズL12と、両凹レンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15との接合レンズとから構成されている。
【0121】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、両凹レンズL21と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL22と両凹レンズL23との接合レンズとから構成されている。
【0122】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31と両凸レンズL32との接合レンズと、両凹レンズL33と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL34と両凹レンズL35との接合レンズと、両凸レンズL36と、両凹レンズL37と、両凸レンズL38とから構成されている。
【0123】
第3レンズ群G3の像面I側には、ローパスフィルタ等のフィルタFLが配置されている。
【0124】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示省略)が配置されている。
【0125】
以上の構成のもと、本実施例に係る光学系は、第2レンズ群G2を合焦レンズ群として像面I側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦が行われる。また、両凹レンズL33と、正メニスカスレンズL34と両凹レンズL35との接合レンズとを防振レンズ群Gvrとして光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることにより像面I上の像をシフトさせて、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行っている。
【0126】
また、本実施例に係る光学系は、両凸レンズL36と、両凹レンズL37と、両凸レンズL38とで、光学系の組み立て後に、製造誤差による結像性能の劣化を良好に補正するための調整レンズ群Gadjを構成している。
【0127】
調整レンズ群Gadjは、第1実施例と同様に、両凹形状の負レンズLnと、負レンズLnの像面I側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjAと、負レンズLnの物体側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjBとから構成されている(
図2参照)。本実施例においては、両凹レンズL37が負レンズLnに対応し、両凸レンズL38がレンズ群G3adjAに対応し、両凸レンズL36がレンズ群G3adjBに対応している。また、負レンズLnとレンズ群G3adjAとの空気間隔、および負レンズLnとレンズ群G3adjBとの空気間隔の調整機構も第1実施例と同様である。
【0128】
以下の表3に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0129】
(表3)第3実施例
[全体諸元]
f 490.00
FNO 4.08
2ω 5.02
Y 21.60
TL 423.32
空気換算TL 422.81
BF 87.50
空気換算BF 86.99
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1) 1200.3702 5.00 1.51680 63.88
2) 1199.7895 1.00
3) 210.8821 13.34 1.43385 95.25
4) -2487.4702 75.00
5) 130.9329 15.39 1.43385 95.25
6) -427.0712 2.02
7) -423.8689 5.20 1.61266 44.46
8) 390.3283 62.39
9) 82.6869 3.50 1.69680 55.52
10) 48.3676 11.00 1.49782 82.57
11) 392.6365 (可変)
12) -4350.1348 2.50 1.80610 40.97
13) 87.5905 3.78
14) -440.4557 3.80 1.80809 22.74
15) -104.1071 2.50 1.55298 55.07
16) 936.7350 (可変)
17) ∞ 15.00 (絞り)
18) 93.8232 2.00 1.80809 22.74
19) 43.1795 5.40 1.49782 82.57
20) -224.8650 4.50
21) -1117.7757 1.80 1.60300 65.44
22) 101.2201 1.91
23) -289.4739 4.50 1.61266 44.46
24) -44.1719 1.80 1.49782 82.57
25) 76.9868 5.33
26) 42.4858 7.00 1.61266 44.46
27) -103.0363 10.38
28) -61.4311 1.80 1.83481 42.73
29) 46.6607 1.77
30) 62.9569 4.80 1.80610 33.27
31) -147.1794 6.50
32) ∞ 1.50 1.51680 63.88
33) ∞ 79.50
像面 ∞
[可変間隔データ]
無限遠 至近撮影距離
forβ 490.000 -0.152
d 0 ∞ 3176.002
d11 14.048 27.486
d16 47.375 33.937
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 193.27
2 12 -107.20
3 18 736.10
[条件式対応値]
(1)f/fRA=8.9
(2)f/dR=5.3
(3)f/−fFA=0.61
(4)|R1A−R2A|/f=0.033
(5)(R1A+R2A)/f=0.22
(6)IIIA/IA・(y/f)
2=0.028
(7)IIIA・(y/f)
2=0.026
(8)dM/f=0.004
(9)f/fFB=2.2
(10)dSA/f=0.021
(11)f/−fRB=5.8
(12)|R1B−R2B|/f=0.085
(13)(R1B+R2B)/f=0.34
(14)IIIB/IB・(y/f)
2=0.002
(15)−IB=4.377
(16)TL3/f1=0.32
(17)TL/f=0.86
(18)f/f12=0.79
【0130】
図9(a)は第3実施例に係る光学系の無限遠物体合焦状態における諸収差図であり、
図9(b)は防振状態での横収差図である。
図10(a)は第3実施例に係る光学系において面間隔d29を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図であり、
図10(b)は面間隔d27を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図である。
【0131】
図9(a)、(b)の各収差図から明らかなように、第3実施例に係る光学系は諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
また、
図10(a)から、非点収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
また、
図10(b)から、球面収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
【0132】
(第4実施例)
図11は、第4実施例に係る光学系の構成を示す断面図である。
図11に示すように、本実施例に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成されている。
【0133】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向け、屈折力が極めて弱い保護フィルタガラスHGと、両凸レンズL11と、両凸レンズL12と、両凹レンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15との接合レンズとから構成されている。
【0134】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸レンズL21と両凹レンズL22との接合レンズとから構成されている。
【0135】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31と両凸レンズL32との接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL33と両凹レンズL34の接合レンズと、物体側に平面を向けた平凹負レンズL35と、両凸レンズL36と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL37と、両凹レンズL38と、両凸レンズL39とから構成されている。
【0136】
第3レンズ群G3の像面I側には、ローパスフィルタ等のフィルタFLが配置されている。
【0137】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示省略)が配置されている。
【0138】
以上の構成のもと、本実施例に係る光学系は、第2レンズ群G2を合焦レンズ群として像面I側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦が行われる。また、正メニスカスレンズL33と両凹レンズL34の接合レンズと、平凹負レンズL35とを防振レンズ群Gvrとして光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることにより像面I上の像をシフトさせて、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行っている。
【0139】
また、本実施例に係る光学系は、両凸レンズL36と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL37と、両凹レンズL38と、両凸レンズL39とで、光学系の組み立て後に、製造誤差による結像性能の劣化を良好に補正するための調整レンズ群Gadjを構成している。
【0140】
調整レンズ群Gadjは、第1実施例と同様に、両凹形状の負レンズLnと、負レンズLnの像面I側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjAと、負レンズLnの物体側に隣接して配置された正の屈折力を有するレンズ群G3adjBとから構成されている(
図2参照)。本実施例においては、両凹レンズL38が負レンズLnに対応し、両凸レンズL39がレンズ群G3adjAに対応し、両凸レンズL36と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL37とがレンズ群G3adjBに対応している。また、負レンズLnとレンズ群G3adjAとの空気間隔、および負レンズLnとレンズ群G3adjBとの空気間隔の調整機構も第1実施例と同様である。
【0141】
以下の表4に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0142】
(表4)第4実施例
[全体諸元]
f 587.80
FNO 4.08
2ω 4.19
Y 21.60
TL 469.10
空気換算TL 468.59
BF 82.77
空気換算BF 82.26
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1) 1200.5127 5.00 1.51680 63.88
2) 1199.6476 1.00
3) 225.0000 16.40 1.43385 95.25
4) -1939.6468 80.00
5) 161.4252 16.60 1.43385 95.25
6) -625.3189 2.15
7) -566.2858 6.00 1.61266 44.46
8) 350.3515 104.80
9) 70.3762 3.50 1.77250 49.62
10) 47.5154 10.80 1.49782 82.57
11) 243.3331 (可変)
12) ∞ 3.00 1.92286 20.88
13) -206.7820 2.50 1.83481 42.73
14) 82.7523 (可変)
15) ∞ 13.20 (絞り)
16) 125.8462 1.80 1.90265 35.73
17) 46.6040 6.00 1.59319 67.90
18) -146.6583 10.00
19) -252.0989 3.20 1.78472 25.72
20) -68.0010 2.00 1.49782 82.57
21) 67.9727 1.70
22) ∞ 1.80 1.81600 46.59
23) 75.4444 4.50
24) 46.9590 7.40 1.61266 44.46
25) -46.9590 1.15
26) -46.2240 1.70 1.92286 20.88
27) -75.1558 7.40
28) -59.2874 2.45 1.59319 67.90
29) 42.6190 1.95
30) 51.7215 5.40 1.67003 47.14
31) -154.5582 6.15
32) ∞ 1.50 1.51680 63.88
33) ∞ 75.12
像面 ∞
[可変間隔データ]
無限遠 至近撮影距離
forβ 587.801 -0.145
d 0 ∞ 3930.900
d11 17.545 33.104
d14 45.385 29.826
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 230.74
2 12 -103.56
3 16 692.82
[条件式対応値]
(1)f/fRA=10.1
(2)f/dR=6.7
(3)f/−fFA=0.45
(4)|R1A−R2A|/f=0.015
(5)(R1A+R2A)/f=0.16
(6)IIIA/IA・(y/f)
2=0.034
(7)IIIA・(y/f)
2=0.023
(8)dM/f=0.003
(9)f/fFB=1.6
(10)dSA/f=0.013
(11)f/−fRB=3.3
(12)|R1B−R2B|/f=0.027
(13)(R1B+R2B)/f=0.23
(14)IIIB/IB・(y/f)
2=0.002
(15)−IB=1.565
(16)TL3/f1=0.29
(17)TL/f=0.80
(18)f/f12=0.84
【0143】
図12(a)は第4実施例に係る光学系の無限遠物体合焦状態における諸収差図であり、
図12(b)は防振状態での横収差図である。
図13(a)は第4実施例に係る光学系において面間隔d29を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図であり、
図13(b)は面間隔d27を設計値よりも0.2mm広げた時の諸収差図である。
【0144】
図12(a)、(b)の各収差図から明らかなように、第4実施例に係る光学系は諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
また、
図13(a)から、非点収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
また、
図13(b)から、球面収差がマイナスに変化し、製造誤差によって発生した収差を補正可能であることがわかる。
【0145】
以上説明したように、上記各実施例によれば、製造誤差によって発生した諸収差、特に非点収差と球面収差を、短い作業工程で容易に補正することができる。また、諸収差を補正するための調整機構も簡単な構造を採用しているので、小型で高い光学性能を備えた光学系を低コストで実現することができる。
なお、上記各実施例は本実施形態の一具体例を示しているものであり、本実施形態はこれらに限定されるものではない。以下の内容は、本実施形態の光学系の光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
【0146】
本実施形態の光学系の数値実施例として3群構成のものを示したが、例えば4群等の他の群構成にも適用可能である。また、最も物体側にレンズまたはレンズ群を追加した構成や、最も像側にレンズまたはレンズ群を追加した構成でも構わない。なお、レンズ群とは、空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。
【0147】
また、本実施形態の光学系において、単独または複数のレンズ群、または部分レンズ群を光軸方向に移動させて、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う合焦レンズ群としても良い。合焦レンズ群はオートフォーカスにも適用でき、オートフォーカス用のモータ、例えば超音波モータ等による駆動にも適している。特に第2レンズ群G2を合焦レンズ群とするのが好ましい。
【0148】
また、本実施形態の光学系において、レンズ群または部分レンズ群を光軸と垂直な成分を持つように移動させ、または光軸を含む方向に回転移動(揺動)させて、手ブレによって生じる像ブレを補正する防振レンズ群としても良い。特に第3レンズ群G3の少なくとも一部を防振レンズ群とするのが好ましい。
【0149】
また、本実施形態の光学系を構成するレンズのレンズ面は、球面又は平面としてもよく、或いは非球面としてもよい。レンズ面が球面又は平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、レンズ加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。レンズ面が非球面の場合、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に成型したガラスモールド非球面、又はガラス表面に設けた樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
【0150】
また、本実施形態の光学系において、開口絞りSは第3レンズ群G3近傍に配置されるのが好ましいが、開口絞りとして部材を設けずにレンズの枠でその役割を代用する構成としてもよい。
【0151】
また、本実施形態の光学系を構成するレンズのレンズ面には、フレアやゴーストを軽減し、高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。
【0152】
次に、本実施形態に係る光学系を備えたカメラを
図14に基づいて説明する。
図14は、本実施形態に係る光学系を備えたカメラの構成を示す図である。
図14に示すようにカメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係る光学系を備えたデジタル一眼レフカメラである。
図14に示すデジタル一眼レフカメラ1において、図示しない物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光されて、クイックリターンミラー3を介して集点板5に結像される。そして、集点板5に結像された光は、ペンタプリズム7中で複数回反射されて接眼レンズ9へと導かれる。これにより、撮影者は、物体(被写体)像を接眼レンズ9を介して正立像として観察することができる。
【0153】
撮影者によって図示しないレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、撮影レンズ2で集光された物体(被写体)の光は撮像素子11上に被写体像を形成する。これにより、物体からの光は、撮像素子11により撮像され、物体画像としてメモリ(図示省略)に記憶される。このようにして、撮影者はカメラ1による物体の撮影を行うことができる。
【0154】
ここで、本カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例に係る光学系は、光学系を組み立てた後に、製造誤差によって生じた諸収差を短い作業工程で容易に補正することができ、小型で高い光学性能を有する光学系である。したがって本カメラ1は、高い光学性能を備えたカメラである。なお、上記第2実施例〜第4実施例に係る光学系を撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。また、カメラ1は、撮影レンズ2を着脱可能に保持するものでも良く、撮影レンズ2と一体に成形されるものでも良い。また、カメラ1は、クイックリターンミラー等を有さないカメラでも良い。
【0155】
以上説明したように、本実施形態によれば、製造誤差によって発生した諸収差、特に非点収差と球面収差を短い作業工程で容易に補正することができ、小型で高い光学性能を備えた光学系、光学系を備えた光学装置、および光学系の調整方法を実現することができる。