(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565268
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】無機炭素含有水の処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/56 20060101AFI20190819BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20190819BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20190819BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20190819BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20190819BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20190819BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20190819BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20190819BHJP
C02F 9/02 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
C02F1/56 K
B01D61/02 500
B01D61/08
C02F1/44 E
C02F1/44 D
C02F1/44 A
B01D21/30 E
B01D61/58
B01D21/01 101A
C02F9/04
C02F9/02
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-69364(P2015-69364)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187790(P2016-187790A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】多田 景二郎
(72)【発明者】
【氏名】育野 望
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−187467(JP,A)
【文献】
特開昭52−025360(JP,A)
【文献】
特開2013−202452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
C02F 1/52− 1/56
C02F 9/00− 9/14
C02F 1/44
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機炭素50mg/L以上を含む被処理水に、無機凝集剤と、コロイド当量が1meq/g以上であるカチオン基を有する有機凝結剤とを添加して、pH5.5〜8.5で凝集処理した後、固液分離することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記被処理水に前記カチオン基を有する有機凝結剤を添加した後、無機凝集剤を添加して凝集処理することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記被処理水の無機炭素濃度に応じて、前記カチオン基を有する有機凝結剤の添加量を制御することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、更に、アニオン基を有する有機凝集剤を前記被処理水に添加して凝集処理することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記固液分離で得られた分離水を除濁膜または逆浸透膜分離処理することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【請求項6】
無機炭素50mg/L以上を含む被処理水に、無機凝集剤と、コロイド当量が1meq/g以上であるカチオン基を有する有機凝結剤を添加して、pH5.5〜8.5で凝集処理する凝集処理手段と、凝集処理水を固液分離する固液分離手段とを有する無機炭素含有水の処理装置であって、
前記被処理水の無機炭素濃度を測定する無機炭素濃度測定手段と、この測定値に基づいて、前記カチオン基を有する有機凝結剤の添加量を制御する制御手段とを有することを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【請求項7】
請求項6において、前記凝集処理手段は、前記被処理水に前記カチオン基を有する有機凝結剤を添加した後無機凝集剤を添加して凝集処理する手段であることを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、前記凝集処理手段は、前記被処理水に更にアニオン基を有する有機凝集剤を添加して凝集処理する手段であることを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1項において、前記固液分離手段で得られた分離水が導入される除濁膜または逆浸透膜分離手段を有することを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機炭素を50mg/L以上含み、無機炭素による凝集阻害の問題のある無機炭素含有水を効率的に凝集処理して固液分離する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水に含まれる有機炭素や濁質を除去するには、沈殿槽や濾過器、除濁膜で固液分離処理することが一般的である。また、この際、固液分離効率を高めるために、固液分離に先立ち凝集処理が一般的に行われる。
【0003】
従来、凝集処理薬品(凝集剤)としては、鉄塩やアルミニウム塩といった無機凝集剤が代表的である。
【0004】
しかしながら、水中に無機炭素を多く含む場合、凝集pH領域であるpH5.5〜8.5では、無機炭素由来の炭酸イオンが無機凝集剤と濁質ないしは有機物との反応を阻害し、凝集不良を引き起こす。
【0005】
一般的な日本国内の河川水、湖水の無機炭素濃度は10mg/L前後であり、無機凝集剤を阻害するには至らない。また、一般的な工場排水でも無機炭素濃度は50mg/Lを超えないため、上記の無機炭素による凝集不良が問題になることはない。
しかし、工場排水には、製造過程で添加される薬品や特有の工程によっては、無機炭素濃度が50mg/L以上に上昇したものがある。
【0006】
通常の排水処理では、凝集不良を改善するためには、凝集剤を大量に添加する方法が一般的だが、汚泥が大量に発生するなどの問題がある。また、無機炭素を多く含む排水に、このように凝集剤を大量に添加しても、本来除去すべき有機炭素や濁質の除去性が悪化し、例えば沈殿槽や濾過器で除去し得なくなる。
後段で除去できなかった濁質や有機炭素などは、これを系外に排出する際に環境汚染を引き起こす要因となる。また、例えば沈殿槽や濾過器の後段に除濁膜や逆浸透(RO)膜がある場合、それらの汚染にも繋がる。
後段の濾過器等で除去し得ない有機炭素などを低減する方法として、オゾン処理なども提案されているが、電力コストがかかるため、前段の凝集、固液分離処理で極力有機炭素濃度を低減することが効果的である。
【0007】
従来、排水中の有機炭素や濁質の除去効率を高めるために、無機凝集剤と共にカチオン性有機凝集剤と併用することは公知であり、例えば、特許文献1には、製紙工場排水等の排水に、水溶性カチオン系重合体を添加混合した後、無機凝集剤を添加混合し、次いで、アニオン系高分子凝集剤を添加して凝集処理する方法が提案されている。
特許文献2には、アニオン系染料廃水に、極限粘度が0.4〜1.4のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドと無機凝集剤を添加して所定のpHで凝集処理する方法が提案されている。
また、特許文献3には、カチオン性有機凝集剤と無機凝集剤とを混合してなる凝集剤組成物が提案されている。
【0008】
しかし、従来技術は、いずれも、排水中の有機炭素や濁質の除去率を向上させるために、無機凝集剤と共にカチオン性有機凝集剤を併用するものであり、無機炭素による凝集阻害に着目した凝集処理技術は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−131167号公報
【特許文献2】特開平6−126286号公報
【特許文献3】特開昭59−82911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、無機炭素を50mg/L以上含み、無機炭素による凝集阻害の問題のある無機炭素含有水を効率的に凝集処理して固液分離する方法と装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、無機炭素含有水に、無機凝集剤とカチオン基を有する有機凝結剤とを併用して添加することにより、好ましくは所定のコロイド当量のカチオン基を有する有機凝結剤を用いることにより、無機炭素含有水を効率的に凝集処理し、有機炭素や濁質を高度に除去することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0012】
[1] 無機炭素50mg/L以上を含む被処理水に、無機凝集剤とカチオン基を有する有機凝結剤とを添加して凝集処理した後、固液分離することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【0013】
[2] [1]において、前記被処理水にカチオン基を有する有機凝結剤を添加した後、無機凝集剤を添加して凝集処理することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【0014】
[3] [1]又は[2]において、前記カチオン基を有する有機凝結剤のコロイド当量が1meq/g以上であることを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【0015】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記被処理水の無機炭素濃度に応じて、前記カチオン基を有する有機凝結剤の添加量を制御することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【0016】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、更に、アニオン基を有する有機凝集剤を前記被処理水に添加して凝集処理することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【0017】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記固液分離で得られた分離水を除濁膜または逆浸透膜分離処理することを特徴とする無機炭素含有水の処理方法。
【0018】
[7] 無機炭素50mg/L以上を含む被処理水を凝集処理した後固液分離する無機炭素含有水の処理装置であって、該被処理水に無機凝集剤とカチオン基を有する有機凝結剤を添加して凝集処理する凝集処理手段と、凝集処理水を固液分離する固液分離手段とを有することを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【0019】
[8] [7]において、前記凝集処理手段は、前記被処理水にカチオン基を有する有機凝結剤を添加した後無機凝集剤を添加して凝集処理する手段であることを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【0020】
[9] [7]又は[8]において、前記カチオン基を有する有機凝結剤のコロイド当量が1meq/g以上であることを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【0021】
[10] [7]ないし[9]のいずれかにおいて、前記被処理水の無機炭素濃度を測定する無機炭素濃度測定手段と、この測定値に基づいて、前記カチオン基を有する有機凝結剤の添加量を制御する制御手段とを有することを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【0022】
[11] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記凝集処理手段は、前記被処理水に更にアニオン基を有する有機凝集剤を添加して凝集処理する手段であることを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【0023】
[12] [7]ないし[11]のいずれかにおいて、前記固液分離手段で得られた分離水が導入される除濁膜または逆浸透膜分離手段を有することを特徴とする無機炭素含有水の処理装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無機炭素を50mg/L以上含み、無機炭素による凝集阻害の問題のある無機炭素含有水を効率的に凝集処理して水中の有機炭素や濁質を高度に固液分離することができる。
本発明によれば、無機炭素による凝集阻害を防止して濁質や有機炭素を高度に除去することができるため、固液分離水にこれらが残留することによる、後段の除濁膜やRO膜等の膜汚染を防止することができ、膜の洗浄頻度を低減することができる。また、オゾン処理等の後段の処理装置の負荷を軽減して処理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の無機炭素含有水の処理装置の実施の形態の一例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
<メカニズム>
カチオン基を有する有機凝結剤(以下、「カチオン性有機凝結剤」と称す場合がある。)と無機凝集剤とを併用添加する本発明による凝集性の向上効果のメカニズムは、以下の通りである。
【0028】
カチオン性有機凝結剤を添加するのみでは、被処理水中の濁質や有機炭素を十分に凝集処理することができない。
無機凝集剤を添加することで、濁質や有機炭素を凝集処理することができるが、前述の通り、無機炭素濃度の高い被処理水の場合、無機炭素由来の炭酸イオンが無機凝集剤と濁質や有機炭素との反応を阻害する。
このような被処理水にカチオン性有機凝結剤を添加すると、水中の無機炭素とカチオン性有機凝結剤とが反応することで、無機炭素による凝集阻害を抑制し、無機凝集剤と濁質や有機炭素との反応性を向上させることができる。
【0029】
本発明においては、カチオン性有機凝結剤と無機凝集剤との併用で良好な凝集効果を得ることができるが、更にアニオン基を有する有機凝集剤(以下、「アニオン性有機凝集剤」と称す場合がある。)を併用してもよく、アニオン性有機凝集剤の併用で、凝集フロックを粗大化させて、固液分離水の水質をより良好なものとすることができる。
【0030】
<被処理水>
本発明において処理する被処理水は、無機炭素濃度が50mg/L以上で、無機炭素による無機凝集剤の凝集阻害が起こり易い水である。
このような無機炭素濃度の多い被処理水が発生する要因は定かではないが、工場等に特有の工程が存在している場合が想定される。
これらの水のSS濃度は10mg/L以上である場合が多く、電気伝導率は100mS/m以上である。なお、通常河川水や湖水を水源として凝集、沈殿、濾過処理等をする場合、無機炭素濃度は10mg/L前後であり、2mg/L以下の場合もある。
【0031】
<カチオン性有機凝結剤>
カチオン性有機凝結剤としては、特に制限はなく、従来より使用されているものまたはこれらと類似のものが使用でき、例えばポリエチレンイミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、アルキレンポリアミン−アルキレンジハライド縮合物、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリアクリルアミドのホフマン分解物、エピハロヒドリシ−アミン縮合物、カチオン化デンプン、カチオン化グアガム、キトサン、アミノアルキル(メタ)アクリレート(三級、四級化物も含む)の単独重合体またはアクリルアミドもしくは他のモノマーとの共重合体などが例示できるが、特に、エピハロヒドリシ−アミン縮合物、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、アルキレンポリアミン−アルキレンジハライド縮合物、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
カチオン性有機凝結剤としては、カチオン基による無機炭素との反応性の高いものが好ましく、コロイド当量が1meq/g以上、特に5meq/g以上であるものを用いることが、無機凝集剤にカチオン性有機凝結剤を併用することによる凝集性の向上効果に優れる点において好ましい。カチオン性有機凝結剤のコロイド当量の上限については特に制限はないが、通常20meq/g以下である。
【0033】
被処理水へのカチオン性有機凝結剤の添加量は、被処理水の水質、カチオン性有機凝結剤の種類等によっても異なるが、2〜30mg/L、特に5〜10mg/L程度とすることが好ましい。カチオン性有機凝結剤の添加量が少な過ぎると、カチオン性有機凝結剤を添加することによる凝集性の改善効果を十分に得ることができず、多過ぎると、例えば、後段に膜処理がある場合に、それ自体が汚染される可能性がある。
【0034】
カチオン性有機凝結剤は、特に、被処理水中の無機炭素濃度に応じてその添加量を制御することが、カチオン性有機凝結剤の過不足を防止して良好な凝集効果を得る上で好ましい。従って、被処理水の無機炭素濃度をGE製Sievers900などで測定し、その測定結果に基づいて、カチオン性有機凝結剤を薬注制御することが好ましい。この場合、カチオン性有機凝結剤は、被処理水の無機炭素濃度(mg/L)に対して、1〜5重量%程度の添加量(mg/L)となるように薬注制御することが好ましい。なお、被処理水の無機炭素濃度は、連続的に計測してもよく、間欠的に計測してもよい。
【0035】
<無機凝集剤>
無機凝集剤としては、アルミニウム系ないし鉄系の無機凝集剤を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。具体的には、アルミニウム系無機凝集剤としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウムが例示できる。また、鉄系無機凝集剤としては、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄等が例示できる。
【0036】
被処理水への無機凝集剤の添加量は、被処理水の水質、無機凝集剤の種類等によっても異なるが、50〜500mg/L、特に100〜300mg/L程度とすることが好ましい。無機凝集剤の添加量が少な過ぎると、被処理水中の濁質や有機炭素を十分に凝集処理して良好な水質の固液分離水を得ることができないが、本発明はカチオン性有機凝結剤を併用することで、無機凝集剤の必要添加量を低減するものであり、無機凝集剤の添加量を過度に多くすることは、汚泥発生量の増加につながり、また薬剤コストの面でも好ましくない。
【0037】
<アニオン性有機凝集剤>
アニオン性有機凝集剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド)−2−メチルプロパン硫酸塩などの1種又は2種以上を使用することができる。
【0038】
アニオン性有機凝集剤を併用する場合、その添加量は被処理水の水質や用いるアニオン性有機凝集剤の種類によっても異なるが、通常0.1〜5mg/L程度である。
【0039】
<凝集処理>
無機炭素を含有する被処理水にカチオン性有機凝結剤と無機凝集剤とを添加して凝集処理する際、カチオン性有機凝結剤と無機凝集剤とは同時に添加しても別々に添加してもよいが、カチオン性有機凝結剤の添加による無機炭素に起因する無機凝集剤の凝集阻害を防止する観点から、予めカチオン性有機凝結剤を添加した後、無機凝集剤を添加して凝集処理することが好ましい。この場合、被処理水にカチオン性有機凝結剤を添加して1〜20分程度撹拌して凝集処理した後、無機凝集剤を添加して3〜20分程度撹拌して凝集処理することが好ましい。
【0040】
アニオン性有機凝集剤を併用する場合、アニオン性有機凝集剤は、無機凝集剤添加後に添加することが好ましい。
【0041】
凝集処理時のpHは、用いる無機凝集剤に応じた好適なpHであることが好ましく、アルミニウム系無機凝集剤であれば、pH5.8〜7.0程度、鉄系無機凝集剤であればpH5.8〜7.5程度にそれぞれ必要に応じて酸又はアルカリを添加してpH調製することが好ましい。但し、本処理方法であれば、特段のpH調整を行うことなく処理をすることが可能である。
【0042】
<固液分離>
凝集処理後の固液分離手段としては特に制限はなく、沈殿槽、加圧浮上槽、膜分離装置、濾過器等を用いることができる。
【0043】
<後段処理>
固液分離手段の後段、特に、固液分離手段として沈殿槽を用いた場合は、固液分離水のSSをより高度に除去するために、後段に濾過器や除濁膜装置等を設けてもよい。また、逆浸透(RO)膜分離装置を設けて脱塩処理を行ったり、オゾン処理で残留有機物を処理してもよい。この場合において、本発明によれば、凝集性の改善で、濁質や有機炭素が十分に低減された良好な水質の固液分離水を得ることができるため、これらの後段の処理手段の処理コストを削減すると共に安定運転を行うことが可能となる。
【0044】
<無機炭素含有水の処理装置>
以下、
図1を参照して本発明の無機炭素含有水の処理装置を説明する。
図1は、本発明の無機炭素含有水の処理装置の実施の形態の一例を示す系統図である。
【0045】
原水槽1内の原水は、配管11より第1凝集槽2に送給される過程でカチオン性有機凝結剤が添加された後、第1凝集槽2で所定時間凝集処理される。
第1凝集槽2の凝集処理水は、配管12より第2凝集槽3に送給される過程で無機凝集剤が添加された後、第2凝集槽3で所定時間凝集処理される。
第2凝集槽3の凝集処理水は、配管13を経て沈殿槽3に送給される過程でアニオン性有機凝集剤が添加された後、沈殿槽4で固液分離される。
沈殿槽4の分離水は、配管14より除濁膜装置5に送給されて更に除濁処理された後、配管15よりRO膜分離装置6に送給されRO膜分離処理され、透過水が処理水として配管16より系外へ排出される。
【0046】
なお、
図1は本発明の無機炭素含有水の処理装置の一例を示すものであって、本発明は何ら図示のものに限定されるものではない。
カチオン性有機凝結剤や無機凝集剤は配管注入ではなく、凝集槽に添加してもよく、更にアニオン性有機凝集剤を添加して凝集処理するための凝集槽を設けてもよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0048】
[凝集処理剤]
以下の実施例及び比較例において用いた凝集処理剤は以下の通りである。
無機凝集剤:塩化第二鉄(昭和化学工業社製)
カチオン性有機凝結剤A:エピクロルヒドリン−ジメチルアミン縮合物、コロイド当量6.5meq/g
カチオン性有機凝結剤B:ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、コロイド当量0.5meq/g
アニオン性有機凝集剤:アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体
【0049】
[原水]
下記の実施例及び比較例で凝集処理に供した原水は、A工場の排水(無機炭素濃度55〜250mg/L)を生物処理して得られる下記水質のものである。生物処理を施しても無機炭素濃度は変化しない。
【0050】
[凝集性能の評価]
以下の実施例及び比較例においては、凝集槽と沈殿槽と除濁膜装置がこの順で連結された水処理装置を用い、7日間連続処理を行って、以下の評価項目で凝集性能を評価した。
【0051】
固液分離水の濁度:沈殿槽の分離水を採取して濁度(NTU)を濁度計で測定した。
沈殿汚泥量比:沈殿槽で分離された汚泥量を計量し、実施例1の場合を1として、相対評価した。
濾過水SDI:沈殿槽の分離水を採取し、No.5A濾紙で濾過して得られた濾過水のSDIをASTM D4189−95(2002)に則り測定した。
MF膜差圧上昇速度:沈殿槽の後段の除濁膜(旭化成社製 孔径0.1μmのPVDF製MF膜)装置に、沈殿槽の分離水を、流量2m
3/m
2/dayで連続通水したときの供給水側と処理水側の圧力を計測し、差圧の上昇速度(kPa/day)を算出した。
【0052】
[実施例1]
凝集槽にカチオン性有機凝結剤A5mg/Lと無機凝集剤200mg/Lを添加してpHを調整せず、10分間凝集処理した後、沈殿槽、除濁膜装置に通水した。
【0053】
[実施例2]
凝集槽を2槽設け、第1凝集槽でカチオン性有機凝結剤A5mg/Lを添加して5分間凝集処理した後、第2凝集槽で無機凝集剤を200mg/L添加して10分間凝集処理したこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0054】
[実施例3]
実施例2において、1時間に1回、原水の無機炭素濃度をGE製Sievers900により測定し、無機炭素濃度(mg/L)に対して10重量%となるように、カチオン性有機凝結剤Aの添加量(mg/L)を制御して添加したこと以外は実施例2と同様に行った。
【0055】
[実施例4]
実施例2において、第2凝集槽の流出水にアニオン性有機凝集剤を2mg/L添加したこと以外は実施例2と同様に行った。
【0056】
[実施例5]
実施例3において、カチオン性有機凝結剤Aの代りにカチオン性有機凝結剤Bを用いたこと以外は実施例3と同様に行った。
【0057】
[比較例1]
実施例1において、カチオン性有機凝結剤Aも無機凝集剤も添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
【0058】
[比較例2]
実施例1において、カチオン性有機凝結剤Aを添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
【0059】
[比較例3]
実施例1において、カチオン性有機凝結剤Aを添加せず、無機凝集剤添加量を2倍の400mg/Lとしたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0060】
実施例1〜5及び比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1より次のことが分かる。
凝集剤を用いていない比較例1や、無機凝集剤のみで凝集処理した比較例2では、固液分離水の濁度が高い。
無機凝集剤添加量を2倍とした比較例3では、固液分離水濁度や、濾過水のSDIは、良好な値であったが、汚泥量が実施例1の約1.89倍となった。
【0063】
これに対して、カチオン性有機凝結剤と無機凝集剤とを併用した実施例1〜5では良好な結果が得られた。
特に、カチオン性有機凝結剤を添加した後無機凝集剤を添加した実施例2では、実施例1に比べて固液分離水の濁度が低く、濾過水のSDI値も低い値を示し、MF膜の差圧上昇速度も低下した。
原水の無機炭素濃度に応じてカチオン性有機凝結剤添加量を制御した実施例3では、実施例2よりも更に固液分離水の濁度が低く、変動幅も小さくなり、濾過水のSDI、MF膜の差圧上昇速度も更に改善された。
更に、アニオン性有機凝集剤を添加した実施例4では、凝集フロックが大きくなり、固液分離水濁度が低減した。
実施例5は、コロイド当量が低いカチオン性有機凝結剤を用いたものであり、固液分離水の濁度や濾過水SDI、MF膜の差圧上昇速度が他の実施例に比べて劣るものの、比較例1,2に比べて良好な結果が得られ、比較例3に比べて汚泥量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 原水槽
2 第1凝集槽
3 第2凝集槽
4 沈殿槽
5 除濁膜装置
6 RO膜分離装置