特許第6565487号(P6565487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565487
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20190819BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20190819BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190819BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20190819BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J175/04
   C09J11/06
   C09J7/38
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-166332(P2015-166332)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-47924(P2016-47924A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2018年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-172144(P2014-172144)
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅野 鉄也
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−047296(JP,A)
【文献】 特開2013−001761(JP,A)
【文献】 特開2012−246477(JP,A)
【文献】 特開平02−178378(JP,A)
【文献】 特開2011−148864(JP,A)
【文献】 特開2013−224374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を60重量%以上含有する重合成分を重合してなるアクリル系樹脂(A)、および架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物であり、架橋剤(B)が脂環構造およびイソシアヌレート骨格を含有する架橋剤であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
重合成分が水酸基含有モノマーを含有してなることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
重合成分がアミノ基含有モノマーを含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
架橋剤(B)が、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
架橋剤(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.001〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
酸価が5mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の粘着剤組成物が、硬化されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項8】
請求項7記載の粘着剤からなる粘着剤層を含有してなることを特徴とする粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤及び粘着シートに関し、更に詳しくは、水蒸気バリア性と粘着剤層の透明性とにバランスよく優れた粘着剤を形成する粘着剤組成物、それを用いてなる粘着剤、粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの前記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきた。また、有機デバイスで用いられる有機ELは、陽極と陰極との間に有機電荷輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けたものであり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されており、有機デバイスは、プラスチックフィルムを基板として用いることで、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するディスプレイとして期待されている。
【0003】
これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途に透明な粘着シートが使用されており、例えば、タッチパネルと各種表示装置や光学部材(保護板等)の貼り合わせには、透明な粘着シートが使用されている。また、有機EL素子内に酸素や水蒸気等が侵入してしまうと電極の酸化や有機物の変性を起こしてしまうため、これらを防止するために、有機EL素子を封止するための粘着シートが用いられている。
【0004】
上記のような目的で使用される粘着シートには透明性や、粘着シートとしての粘着特性に加え、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性の要求が高まっている。
【0005】
このようなガスバリア性を改善する粘着剤として、例えば、重量平均分子量50万のホモポリマーのカップ法で測定した40℃90%RHにおける水蒸気透過率が500g/m2・day以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50重量%、水酸基を有するモノマー、窒素含有モノマーを含むモノマーを共重合させて得られる酸性基を実質的に有しない重量平均分子量が5万以上40万未満であるアクリル系ポリマーと架橋剤を含有する粘着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−47296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示技術は、透湿度の低いモノマーを使用しているが、アクリル系樹脂としては、その他のモノマーとしてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアルキル基の炭素数が少ないモノマーや極性モノマーを多く共重合しているため、樹脂の透湿度は高いものになってしまい、技術の高度化に伴って要求されるバリア性を満足させるものではなく、まだまだ改良の余地が残るものであった。
【0008】
また、アクリル系粘着剤の構成成分として透湿度の低いアクリル系樹脂を使用した場合においても、従来のアクリル系粘着剤で一般的に用いられるイソシアネート系架橋剤で粘着剤組成物を硬化させる場合には、樹脂と架橋剤の相溶性が悪いため、粘着剤層の透明性が著しく低下し、光学特性が悪化するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明ではこのような背景下において、粘着力に優れるうえ、ガスバリア性、とりわけ水蒸気バリア性と、粘着剤層の透明性にバランスよく優れた粘着剤を形成する粘着剤組成物、更には粘着剤及び粘着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、鎖長の長いアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを重合して得られるアクリル系樹脂に対して、疎水性の高い特定構造の架橋剤を使用することにより、水蒸気バリア性と粘着剤層の透明性に非常にバランスよく優れた粘着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、アルキル基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を60重量%以上含有する重合成分を重合してなるアクリル系樹脂(A)、および架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物であり、架橋剤(B)が脂環構造およびイソシアヌレート骨格を含有する架橋剤であることを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
【0012】
また、本発明では、前記粘着剤組成物が硬化されてなる粘着剤、およびそれを用いてなる粘着シートも提供するものである。
【0013】
なお、上記脂環構造およびイソシアヌレート骨格を含有する架橋剤は、一般的にペレット状のものであるため、使用時にあらかじめ溶解させて使用する必要があり、操作が煩雑となりアクリル系粘着剤の架橋剤としては通常用いないものであったが、本発明においては、あえてかかる特定構造の架橋剤を用いることにより、驚くべきことに、粘着力に優れるうえ、ガスバリア性と透明性にバランスよく優れた効果を有することを見出したのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、ガスバリア性と粘着剤層の透明性にバランスよく優れた粘着剤を形成することができるものであり、これを用いてなる粘着剤、更に粘着シートは、ディスプレイ用途、タッチパネル用途等に好適に用いられるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0016】
まず、本発明の粘着剤組成物が必須成分として含有するアクリル系樹脂(A)について説明する。
アクリル系樹脂(A)は、アルキル基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を含有する重合成分を重合して得られるものであり、好ましくは更に官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a2)を重合成分として含有するものであり、更には必要に応じて、その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)を重合成分として含んでもよいものである。
【0017】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、アルキル基の炭素数が12以上というように鎖長の長いものであることが必要であり、好ましくは15〜35、特に好ましくは16〜25、更に好ましくは17〜20である。
アルキル基の炭素数が少なすぎると透湿度が高くなり、本発明の効果を発揮しない。なお、かかる炭素数の上限は特に制限されないが、あまりにも多すぎると重合時の反応性が低下する傾向がある。
【0018】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の具体例としては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソテトラコシル(メタ)アクリレート、2−ドデシル−ヘキサデカニル(メタ)アクリレート、2−テトラデシル−オクタデカニル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーが挙げられる。
これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0019】
これらの中でも、水蒸気バリア性の点でヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましく、特には重合性及び水蒸気バリア性の点でステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
本発明において、アルキル基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の含有量は、重合成分全体に対して、60重量%以上であることが必要であり、60〜99.5重量%であることが好ましく、特には70〜99.5重量%、更には80〜99.5重量%、殊には85〜99重量%であることが好ましい。
かかる含有量が少なすぎると透湿度が高くなり、多すぎるとアクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなり、密着性が低下する傾向がある。
【0021】
本発明で用いる官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられ、これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマーが好ましく用いられ、更に架橋促進作用を付与する点でアミノ基含有モノマーを併用することが好ましい。
【0022】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0023】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0024】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、他のモノマーとの共重合性及び架橋促進効果に優れ、更には原材料としての入手しやすさの点で、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0026】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0027】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
これら官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a2)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0028】
官能基含有エチレン性不飽和モノマー(a2)の含有量は、重合成分全体に対して、0.01〜10重量%であることが好ましく、特には0.05〜7.5重量%、更には0.05〜5重量%、殊には0.1〜4重量%であることが好ましい。
かかる含有量が少なすぎると架橋剤との反応性が低下したり、架橋密度が低下し凝集力が低下する傾向があり、多すぎると透湿度が高くなり水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
【0029】
本発明においては、重合成分として、必要に応じて更に、その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)を含有してもよい。
【0030】
かかるエチレン性不飽和モノマー(a3)としては、例えば、
イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリル酸エステル;テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート等のピペリジル環含有(メタ)アクリル酸エステル;
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−(メタ)アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
【0031】
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能性モノマー等を併用することもできる。
【0032】
その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)の含有量は、重合成分全体に対して、0.1〜40重量%であることが好ましく、特には0.1〜20重量%、更には0.1〜10重量%、殊には0.1〜5重量%であることが好ましい。かかる含有量が多すぎると水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
【0033】
なお、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内で、アルキル基の炭素数が12未満の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合成分として含有してもよい。
【0034】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、上記重合成分を所定の割合で配合し、有機溶媒中でラジカル重合させる如き、当業者周知の方法によって製造される。
【0035】
かかる重合に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0036】
また、かかるラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
本発明において、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、通常、5万〜300万が好ましく、より好ましくは6万〜250万、更に好ましくは10万〜200万、特に好ましくは10万〜150万である。重量平均分子量が小さすぎると凝集力が低下する傾向があり、重量平均分子量が大きすぎると溶液粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0038】
アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、30以下であることが好ましく、特には15以下が好ましく、更には8以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下する傾向にある。なお、分散度の下限は通常2である。
【0039】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
【0040】
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−100〜0℃であることが好ましく、特に好ましくは−80〜−5℃、特に好ましくは−70〜−10℃である。かかるガラス転移温度が低すぎると耐熱性が低下する傾向があり、高すぎると密着性が低下する傾向がある。
【0041】
上記ガラス転移温度は、以下のFoxの式より算出されるものである。
1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2+・・・・・・・・・・・・Wk/Tgk
但し、Tgは共重合体のガラス転移温度であり、Tg1,Tg2,・・・・・・・・Tgkは各単量体成分の単独共重合体のTgであり、w1,w2,・・・・・・・・・・wkは各単量体成分のモル分率を表し、w1+w2+・・・・・・・・・wk=1である。
【0042】
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
【0043】
次に、本発明で用いられる架橋剤(B)について説明する。
かかる架橋剤(B)は、脂環構造およびイソシアヌレート骨格を含有するものであればよい。なお、以下、脂環構造およびイソシアヌレート骨格を含有する架橋剤を「架橋剤(B)」と記載することがある。
【0044】
上記脂環構造としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロノナン環、シクロオクタン環、ビシクロヘキサン環、トリシクロヘキサン環、トリシクロペンタン環等が挙げられるが、これらの中でも脂環骨格の化学的安定性、更には原材料としての入手しやすさの点でシクロヘキサン環が好ましい。
また、架橋剤(B)の含有する脂環構造の含有数としては、好ましくは1〜15個、特に好ましくは2〜10個、更に好ましくは3〜7個である。かかる含有数が多すぎるとポリマー中の官能基との反応性が下がり、エージングに時間を要する傾向がある。
【0045】
上記架橋剤(B)として具体的には、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(デグサ社製;商品名「VESTANATE T1890/100」)、水添キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(三井化学社製;商品名「タケネートD−127N」等が挙げられ、これらの中でも、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体が、凝集力、ポリマー(A)との相溶性が向上する傾向があり好ましく用いられる。
【0046】
これらの架橋剤(B)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記架橋剤(B)の分子量としては、好ましくは100〜5,000、更に好ましくは200〜3,000、特に好ましくは400〜1,500である。かかる分子量が大きすぎると反応性が落ち、エージングに時間を要する傾向があり、小さすぎると反応性が上がりすぎ、取扱いが難しくなる傾向がある。
【0048】
上記架橋剤(B)の含有量は、通常アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.005〜10重量部、更に好ましくは0.01〜5重量部である。
かかる架橋剤(B)の含有量が少なすぎると凝集力が低下する傾向があり、多すぎると粘着力が低下する傾向がある。
【0049】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、帯電防止剤、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を配合することができる。また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。これら添加量は所望する物性が得られるように適宜設定すればよい。
【0050】
なお、本発明の粘着剤組成物を、ITOフィルム、ITOガラス、Cuメッシュ、Ag等の透明電極膜に使用するためには、耐腐食性が必要性となるため、粘着剤組成物が実質的に酸を含まないことが好ましい。
実質的に酸を含まないとは、アクリル系樹脂(A)の共重合成分として酸性基を有するモノマーを使用せず、粘着剤組成物全体の酸価が好ましくは5mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/gであることを意味する。
【0051】
また、マイグレーションを引き起こしやすい金属を使用した透明電極、特にCuメッシュやAgに対しては、水分と接触しないことが好ましいため、粘着剤には水蒸気透過率が低いことが望まれる。
かかる水蒸気透過率(粘着組成物全体)としては、250g/m2・day(50μm)以下であることが好ましく、更に好ましくは200g/m2・day(50μm)以下である。
【0052】
本発明の粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤のゲル分率は、通常、20〜98%、好ましくは30〜95%、特に好ましくは50〜90%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下する傾向があり、高すぎると粘着力が低下する傾向がある。
【0053】
なお、粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、架橋剤の量を調整すること、組成物中の水酸基の組成比を調整すること等により達成される。また、かかる架橋剤と官能基量との割合は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが望まれる。
【0054】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0055】
本発明の粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤のヘイズは1.0%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.5%以下である。かかるヘイズ値が高すぎると、ディスプレイ用として使用したときに、画像が不鮮明になる傾向がある。なお、ヘイズ値の下限は通常0.00%である
【0056】
本発明の粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤の全光線透過率は80.0%以上であることが好ましく、特に好ましくは90.0%以上である。かかる全光線透過率が低すぎると、ディスプレイ用として使用したときに、画像が不鮮明になる傾向がある。なお、ヘイズ値の上限は通常99.90%である。
【0057】
ここで、上記の全線透過率およびヘイズ値はJIS K7361−1に準拠したヘイズメーターを使用して測定した値である。
【0058】
つぎに、上記の本発明の粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成することにより粘着シートを作製することができる。すなわち、上記粘着シートは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0059】
まず、所定の厚みとなるように支持基材の片面もしくは両面に上記粘着剤組成物を塗工し、加熱乾燥することにより粘着剤層を形成する。ついで、必要に応じて上記粘着剤層面に剥離シートを貼り合わせることにより粘着シートを作製することができる。また、得られた粘着シートには、必要に応じて、エージング処理を行なった後、使用時には、上記剥離シートを粘着剤層から剥離して使用に供される。このようにして、支持基材の片面もしくは両面に粘着剤層が形成され、さらにこの粘着剤層面に必要に応じて剥離シートが設けられた粘着シートが得られる。
【0060】
なお、本発明において、「シート」とは、特に「フィルム」や「テープ」と区別するものではなく、これらをも含めた意味として記載するものである。
【0061】
上記支持基材としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄等の金属箔;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂フィルムまたはシート、上質紙、グラシン紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等から選択される単層体または複層体があげられる。かかる支持基材の厚みとしては、通常1〜500μmであり、好ましくは5〜300μmである。
【0062】
さらに、上記剥離シートとしては、例えば、上記支持基材で例示した各種合成樹脂シート、紙、布、不織布等に離型処理したものを使用することができる。
また、剥離シートに上記粘着剤組成物を塗工し、加熱乾燥することにより粘着剤層を形成し、粘着剤層に剥離シートを貼り合わせることにより、基材レスで粘着シートを作製することもできる。
【0063】
上記粘着剤組成物の塗工に際しては、この粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは5〜80重量%、特に好ましく10〜70重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであればよく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンが好適に用いられる。
【0064】
また、上記粘着剤組成物の塗工方法としては、一般的な塗工方法であれば特に限定されることなく、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法があげられる。
【0065】
そして、上記加熱乾燥条件としては、粘着剤組成物を乾燥させることが可能であればよく、例えば、通常50〜150℃、好ましくは60〜130℃で、通常1〜10分間程度、好ましくは1.5〜5分間程度の条件があげられる。
【0066】
上記エージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は、通常室温(25℃±5℃)〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0067】
さらに、得られる粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、通常1〜250μmが好ましく、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは10〜150μmである。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると乾燥が困難となり、発泡がおこりやすくなる傾向がある。
【0068】
このようにして得られる粘着シートの厚みは、用途に応じ適宜設定されるが、例えば、5〜300μmの範囲に設定することが好ましい。
【0069】
本発明における粘着シートの利用に際し、被着体の種類として、例えば、各種金属面を有する物品;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、シートまたは板があげられる。
【0070】
上記金属面を有する物品としては、金属面を有しており、この金属面に、直接、上記粘着シートが、少なくとも部分的にまたは全面的に貼り合わされる。このような金属面を有する物品において、上記粘着シートが貼り合わされる被着体(「金属面含有被着体」と称する場合がある)としては、少なくとも部分的に金属面を有していれば特に制限されない。このような金属面含有被着体において、金属面が形成されている部位は、上記粘着シートを直接貼付することが可能な部位であれば特に制限されず、外側の面であってもよく、また、内側の面等であってもよい。なお、1つの金属面含有被着体に金属面が複数形成されている場合、これらの複数の金属面は同一の金属材料により形成された面であってもよく、異なる金属材料により形成された面であってもよい。
【0071】
上記金属面含有被着体における金属面は、金属材料により形成された金属面含有被着体の表面であってもよく、また各種材料により形成された基材(または構造体)の表面に形成された金属層表面(特に、金属薄膜層表面)であってもよい。上記金属面は、いずれにせよ、金属材料による表面であればよい。
【0072】
上記金属薄膜層等の金属層は、各種材料により構成された基材(または構造体)の表面の所定の部位に形成することができる。このような金属層において、金属薄膜層の厚みとしては、金属面含有被着体の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm以上であってもよい。なお、金属薄膜層の厚みの上限としては、一般的に薄膜層とみなされる厚みであれば特に制限されない。
【0073】
上記金属面を形成するための金属材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、鉄、チタン、白金、ニッケル等の金属単体による金属材料;金合金(例えば、金−銅合金等)、銅合金〔例えば、銅−亜鉛合金(真鍮)、銅−アルミニウム合金等〕、アルミニウム合金(例えば、アルミニウム−モリブデン合金、アルミニウム−タンタル合金、アルミニウム−コバルト合金、アルミニウム−クロム合金、アルミニウム−チタン合金、アルミニウム−白金合金等)、ニッケル合金(例えば、ニッケル−クロム合金、銅−ニッケル合金、亜鉛−ニッケル合金等)、スズ合金、ステンレス等の各種合金による金属材料等があげられる。これら金属材料は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
なお、金属材料は、金属元素のみを含有する金属材料であってもよく、金属元素とともに非金属元素を含有する金属材料〔例えば、金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物等)、オキソ酸塩(硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等)等の金属系化合物〕であってもよく、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)、CTO(酸化カドミウムスズ)等が挙げられる。
【0075】
具体的には、上記金属面含有被着体としては、例えば、透明導電膜が設けられた透明導電膜積層体を有する光学的製品またはこの光学的製品を構成するための部材等があげられる。上記透明導電膜層を有する光学的製品としては、例えば、電子ディスプレイ(タッチパネル等)があげられる。金属薄膜層により形成された電磁波シールド層を有する光学的製品またはこの光学的製品を構成するための部材等があげられる。上記電磁波シールド層を有する光学的製品としては、例えば、電子ディスプレイ(プラズマディスプレイ等)等の光学機器や、デジタル万能ディスク等の光学的に記録可能なディスク(光学的記録ディスク)等があげられる。
【0076】
かくして、本発明の粘着剤並びに粘着シートは、コンピュータ、携帯電話、薄型テレビ等各種電子部材、精密電子部材に貼り合せて用いられる貼り合わせ用や情報ラベル、電子部材の固定用粘着剤、有機EL素子の封止用粘着剤等として有用である。
【0077】
また、本発明の粘着剤組成物は、とりわけ有機溶剤含有タイプの粘着剤組成物として使用し、架橋剤存在下、熱により硬化させて粘着剤とすることで、中程度〜高程度の粘着力(約3N/25mm以上)を示し、中〜長期間(数ヶ月〜数年間)にわたり被着体と貼り合せることができる粘着剤として好適に用いられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0079】
<アクリル系樹脂(A)の製造例>
<アクリル系樹脂(A−1)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソステアリルアクリレート(a1)81.6部、イソトリデシルメタクリレート(a1)15部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a2)3部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(a2)0.4部及びアセトン30部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(重量平均分子量123,000、分散度2.10、固形分濃度53.0%、粘度2,000mPa・s(25℃))を得た。
【0080】
<アクリル系樹脂(A−2)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソステアリルアクリレート(a1)98部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)2部、及びアセトン30部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A−2)溶液(重量平均分子量30,000、分散度2.50、ガラス転移温度−26℃、固形分濃度49.5%、粘度2,500mPa・s(25℃))を得た。
【0081】
<アクリル系樹脂(A−3)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソステアリルアクリレート(a1)71.4部、イソトリデシルメタクリレート(a1)25部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a2)1.8部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(a2)0.3部、アクリロイルモルフォリン(a3)1.5部及びアセトン30部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A−3)溶液(重量平均分子量219,000、分散度2.44、固形分濃度52.8%、粘度4,400mPa・s(25℃))を得た。
【0082】
<アクリル系樹脂(A−4)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソステアリルアクリレート(a1)15部、ラウリルメタクリレート(a1)82.9部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a2)1.8部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(a2)0.3部、及びアセトン33部、酢酸エチル13部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、トルエンにて希釈してアクリル系樹脂(A−4)溶液(ガラス転移温度−58.2℃、固形分濃度50.3%、粘度6,700mPa・s(25℃))を得た。
【0083】
<アクリル系樹脂(A'−1)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに2−エチルヘキシルアクリレート98部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)2部、及び酢酸エチル45部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A'−1)溶液(ガラス転移温度−69.1℃、固形分濃度56.0%、粘度2,500mPa・s(25℃))を得た。
【0084】
<アクリル系樹脂(A'−2)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコにイソステアリルアクリレート(a1)18部、ラウリルメタクリレート(a1)35部、2−エチルヘキシルアクリレート32部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)15部、酢酸エチル11部、アセトン20部及びメチルエチルケトン9部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.06部を仕込み、適宜AIBNを追加しながら還流温度で8時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A'−2)溶液(重量平均分子量791,000、分散度4.86、ガラス転移温度−53.0℃、固形分濃度52.4%、粘度12000mPa・s(25℃))を得た。
【0085】
<架橋剤>
架橋剤(B)として以下のものを用意した。
・(B−1)
イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(デグサ社製;商品名「ベスタネートT1890/100」)
・(B'−1)
イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製;商品名「タケネートD140」)
・(B'−2)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製;商品名「コロネートHX」)
・(B'−3)
水添キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製;商品名「タケネートD120」)
・(B'−4)
ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製;商品名「タケネートD160」)
・(B'−5)
トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(日本ポリウレタン工業社製;商品名「コロネートL55E」)
【0086】
<実施例1〜3、比較例1〜9>
上記アクリル系樹脂(A)および架橋剤(B)を下記の表1に示す割合で配合し、トルエンを用いて固形分濃度を30%に調整することにより粘着剤組成物を調製した。
【0087】
上記実施例および比較例で得られた粘着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。これらの結果を下記の表1に併せて示した。
【0088】
上記粘着剤組成物溶液を軽剥離PETフィルム(三井化学東セロ社製:ルミラーSP01−38BU)に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、重剥離PET(三井化学東セロ社製:ルミラーSP03−38BU)を貼り合わせ40℃で3〜7日間エージングを行い、基材レス両面粘着シートを得た。
【0089】
〔水蒸気バリア性〕
上記基材レス両面粘着シートの軽剥離PETを剥がし、SUSメッシュ(400メッシュ)に貼合し、透湿度測定用サンプルとした。
透湿度測定に関しては、JIS Z 0208に準じたカップ法で行い、メッシュに貼り合わせた粘着剤層が外気側になるように設置して40℃、90%RH雰囲気下で評価した。評価基準は下記の通りである。
(評価)
○・・・250g/m2・day以下
×・・・250g/m2・dayより大きい
【0090】
〔透明性〕
[全光線透過率]及び[ヘイズ]
上記基材レス両面粘着シートの粘着剤層から一方の面の離型シートを剥がし、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に貼合した後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行ない、もう一方の離型シートを剥がし粘着剤層付き無アルカリガラス板を得た。
上記粘着剤層付き無アルカリガラス板の拡散透過率及び全光線透過率を、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。なお、本機はJISK7361−1に準拠している。
得られた拡散透過率と全光線透過率の値を下記式に代入して、ヘイズを算出し、下記の基準にて評価した。
・ヘイズ(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100
(評価)
○・・・1.0%以下
×・・・1.0%より大きい
【0091】
〔粘着力〕
上記粘着剤組成物溶液を重剥離PETフィルム(三井化学東セロ社製:ルミラーSP03−38BU)に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、軽剥離PETフィルム(三井化学東セロ社製:ルミラーSP01−38BU)に貼合し、40℃で3日間エージングすることで、基材レス両面粘着粘着シートを得た。
得られた基材レス両面粘着シートの粘着剤層から一方の面の軽離型シートを剥がし、厚み125μmの易接着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに押圧し、粘着剤層付きPETフィルムとし、この粘着シートを25mm×100mmに切断した後、重剥離PETフィルムを剥がし、これを被着体として無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」)に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラーを用いて2往復させることにより圧着し、試験片を作製した。この試験片を、同雰囲気下で、30分放置した後、剥離速度0.3m/分により、180度剥離試験を行い、粘着力を測定した(N/25mm)。評価基準は下記の通りである。
(評価)
○・・・5N/25mm以上
×・・・5N/25mm未満
【0092】
〔ゲル分率〕
上記粘着剤組成物溶液を重剥離PETフィルム(三井化学東セロ社製:ルミラーSP03−38BU)に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、軽剥離PETフィルム(三井化学東セロ社製:ルミラーSP01−38BU)に貼合し、40℃で3日間エージングすることで、粘着シートを得た。
得られた粘着シートを40×40mmに裁断した後、軽剥離PETフィルムを剥がし、粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、重剥離PETフィルムを剥がしSUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の、トルエン浸漬前後の粘着剤層の重量変化にてゲル分率(%)の測定を行なった。
【0093】
【表1】
【0094】
上記評価結果より、アルキル基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を60重量%以上含有する重合成分を重合してなるアクリル系樹脂(A)、および脂環骨格を有するイソシアヌレート体である架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物より得られる実施例1〜3の粘着剤では、粘着力に優れるうえ、ガスバリア性、とりわけ水蒸気バリア性と、粘着剤層の透明性にバランスよく優れた粘着剤であることがわかる。
一方、本発明の特定構造と異なる架橋剤を用いた比較例1〜6の粘着剤組成物から得られる粘着剤は透明性に劣るものであり、また、長鎖のモノマー成分の含有割合の低いアクリル系樹脂や長鎖のモノマー成分を含有しないアクリル系樹脂を用いた比較例7〜9の粘着剤組成物から得られる粘着剤は水蒸気バリア性に劣るものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の粘着組成物、およびそれを用いてなる粘着剤並びに粘着シートは、コンピュータ、携帯電話、薄型テレビ等各種電子部材、精密電子部材に貼り合せて用いられる貼り合わせ用や情報ラベル、電子部材の固定用粘着剤、有機EL素子の封止用粘着剤等として有用である。