(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空層を介して対向し、スペーサーによって離隔された1対の透明部材からなる透明スクリーンであって、前記1対の透明部材の一方が片面に低放射膜を有する透明板であり、他方が下記反射型の映像表示透明部材からなり、下記第1の面および第2の面のいずれか一方が前記中空層に面している、透明スクリーン。
反射型の映像表示透明部材:
第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、
前記映像表示透明部材が透明基材と映像表示部を有し、前記映像表示部がホログラム構造、不規則な凹凸構造、マイクロアレイレンズ構造からなる群から選択されるいずれか1つの構造を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「第1の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、投影機から映像光が投射される側の表面を意味する。
「第2の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、第1の面とは反対側の表面を意味する。
「第1の面側(第2の面側)の光景」とは、映像表示透明部材の第2の面側(第1の面側)にいる観察者から見て、映像表示透明部材の向こう側に見える像(主要対象物(商品、美術品、人物等)およびその背景、ならびに風景等)を意味する。光景には、投影機から投射された映像光が映像表示透明部材において結像して表示される映像は含まれない。
「前方ヘーズ」とは、第1の面側から第2の面側に透過する透過光、または第2の面側から第1の面側に透過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率を意味する。すなわち、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に記載された方法によって測定される、通常のヘーズである。
「後方ヘーズ」とは、第1の面において反射する反射光のうち、散乱によって、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光の百分率を意味する。
「凹凸構造」とは、複数の凸部、複数の凹部、または複数の凸部および凹部からなる凹凸形状を意味する。
「不規則な凹凸構造」とは、凸部または凹部が周期的に出現せず、かつ凸部または凹部の大きさが不揃いである凹凸構造を意味する。
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
透過率は、入射した光に対し、前方方向へ透過、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
反射率は、入射した光に対し、後方方向へ反射、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
拡散反射率は、映像表示透明部材の第1の面側(または第2の面側)から入射角0?で入射した入射光に対する、第1の面側(または第2の面側)に反射した正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光の割合(百分率)を意味する。拡散反射率を測定する際には、測定対象の第1の面側(または第2の面側)とは反対側の第2の面側(または第1の面側)から映像表示透明部材に光が入射しないように反対側の面に暗幕を被せる。また、入射光の径と同程度のアパーチャーを測定対象に密着させてセットする。
透過率、反射率、およびヘーズは、JIS Z8720(2012)「測色用の標準イルミナント(標準の光)及び標準光源」で規定されるD65光源を用いて測定する。
【0011】
(本発明の形態)
本発明の透明スクリーンの形態は、中空層を介して対向し、スペーサーによって離隔された片面に低放射膜を有する透明板と、反射型の映像表示透明部材からなる透明スクリーンである。
反射型の映像表示透明部材とは、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する、反射型の映像表示透明部材である。前記第1の面および前記第2の面のいずれか一方が前記中空層に面しており、どちらが面していても作用効果は変わらない。
図1は、本発明の透明スクリーンの形態の一例および表示システムの一例を示す概略構成図である。
本発明の形態について
図1を用いて説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
本発明の透明スクリーン1は、片面に低放射膜を有する透明板4が、映像表示透明部材3と、中空層2を介して配置される。投影機200から投影された投影光Lは、映像表示透明部材3上で結像し、反射光L1として観察者Xに視認可能に表示される。一方投影光Lの一部は映像表示透明部材3を透過光L2として映像表示透明部材3を透過する。透明板4は低放射膜を有するので表面上で光を反射しやすく、透明板4に入射した透過光L2は、透明板4上で反射し、映像を見せたくない側の観察者Yまで透過光L2が透過しにくい。
さらに、観察者Y側の光景が透明板4上で反射し虚像が形成されるので、観察者Yは透過光L2をより視認しにくい。観察者Xに対しては、透明スクリーン1は中空層2を有するため、投影機200から投影された映像が透明板4上で反射しても二重像となりにくい。その結果、投影機200から投影された映像の視認性を落とさず観察者Xのプライバシーを保護しやすくなる。
【0013】
本発明の形態である透明スクリーン1において、映像表示透明部材3と透明板4とはスペーサー5により離隔される。スペーサー5は、透明板4と映像表示透明部材3の周縁の全周または一部に配置されていてよい。また、スペーサー5の外周部をシール剤でシールし、中空層2が封止された、いわゆる複層ガラスとしてもよい。
本発明の形態である透明スクリーン1において、スペーサー5は、通常二重窓や複層ガラスに用いられるものを用いることができる。中空層2を封止する場合はスペーサー5に乾燥剤が含まれていることが好ましい。
シール剤は、通常複層ガラスに用いられるものを用いることができ、シリコーン系シール剤、ブタジエン系シール剤などが用いられる。
本発明の透明スクリーン1の中空層がシール剤でシールされていると、断熱や防音性がより得られるため好ましい。
【0014】
(中空層)
本発明の形態において中空層2の厚さ、すなわち透明板4と映像表示透明部材3との間の距離は、4mm〜20mmが好ましい。前記下限値以上であると、遮熱や防音性能が向上するため好ましく、前記上限値以下であると、省スペースで配置できるため好ましい。
中空層2がシール材で封止されている場合は、中空層2に封入される気体は複層ガラスに用いられる公知の気体;空気、ヘリウム、アルゴン等、が使えるが、空気が好ましい。
【0015】
(透明板)
本発明の形態のおける透明板4は、片面に放射膜を有する。
本発明の形態における透明板4の材料としては、ガラス、透明樹脂等が挙げられる。また透明板4は、映像表示透明部材3で使われる透明基材と同じ材質であることが好ましい。また、透明板4の材料は前記材料のなかで、耐久性や、平坦性の確保の容易さから虚像の視認性が向上するためガラスが好ましい。
【0016】
透明板4に用いられるガラスとしては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。
【0017】
透明板4に用いられる透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、耐候性および透明性の観点から、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマーが好ましい。
【0018】
また透明板4としては、複屈折がないものが好ましい。
透明板4の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明板4の厚さは、たとえば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明板の厚さは、たとえば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
【0019】
(低放射膜)
低放射膜は、透明板4の片面の表面と空気との界面に形成されている。
低放射膜は、低放射膜に入射した光のうち、可視光線の少なくとも一部を透過し、赤外線の少なくとも一部を反射するものであればよい。
低放射膜としては、金属膜、半導体膜、誘電体単層膜、誘電体多層膜、これらの組み合わせた複層膜等が挙げられる。
【0020】
金属膜、半導体膜を構成する金属としては、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、タングステン、ケイ素等が挙げられ、アルミニウム、銀、または、それらが主成分である合金が好ましい。特に材料が銀であると投影映像が吸収による変色が起こりにくくなるため好ましい。
誘電体膜を構成する誘電体としては、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられる。
低放射膜としては、金属薄膜、または、酸化物膜、金属薄膜、酸化物膜の順に積層された膜構成のものが好ましい。
【0021】
低放射膜が金属膜である場合、金属膜の厚さは、可視光透過率を確保することと赤外線を効率よく反射することを両立させる点から、1〜100nmが好ましく、4〜60nmがより好ましい。また、映像を投影している観察者のプライバシー保護の観点から、金属膜の厚さは40〜100nmが好ましい。
低放射膜の厚さは、赤外線反射率と可視光透過率を両立させるために、(1〜5000nm程度が好ましく、10〜3000nm程度)がより好ましい。
低放射膜の可視光反射率は、背景の視認性を損なわないという観点から、第1の透明基材10の表面における可視光反射率と第2の透明基材20の表面における可視光反射率の合計よりも低いことが好ましく、具体的には20%以下、特には10%以下が好ましい。
このような低放射膜を有する透明板4としては、Low−Eガラスが好ましい。また、透明板4の低放射膜は中空層側に配置されることが好ましい。
【0023】
図2は、
図1における映像表示透明部材3を拡大したものである。
映像表示透明部材3は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、映像表示部30が配置され、第1の面A、および第2の面B有するものである。
映像表示部30は、第1の面または第2の面の側の光景を反対側に視認可能に透過し、かつ映像投射機からの映像を視認可能に表示できるものを使用することができる。
映像表示部30は、透明層32および透明層34との間に不規則な凹凸構造を有する反射膜33を有し、透明層32および透明層34(以下、まとめて透明層とも記す)の表面にそれぞれ透明フィルム31と、透明フィルム35が透明層の表面を覆うように設けられた光散乱シートからなる。反射膜33は透明層32および透明層34と密着している。したがって、透明層32と反射膜33とが接する面と、反射膜33が透明層34と接する面は、ほぼ同様の構造となっている。
透明基材の材料は、前記透明板の材料と同様のものを使うことができる。
映像表示部について以下に説明する。
【0024】
(反射膜)
反射膜33は、透明層32と透明層34との間に配置されている。
反射膜33は、反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射するものであればよい。反射膜33としては、金属膜、半導体膜、誘電体単層膜、誘電体多層膜、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0025】
金属膜、半導体膜を構成する金属としては、Al、Ag、Ni、Cr、W、Si、Cu、Ti、Zr等が考えられ、特にAlやAg、または、それらが主成分である合金が好ましい。
誘電体膜を構成する誘電体としては、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられる。
反射膜33としては、金属薄膜、または、酸化物膜、金属薄膜、酸化物膜の順に積層された膜構成のものが好ましい。
【0026】
反射膜33が有する不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは、0.01〜20μmが好ましく、0.05〜10μmがより好ましい。算術平均粗さRaが該範囲内であれば、投射された映像の視野角が広く、正反射光を直接見ずに視認でき、凹凸構造による粒状感が抑えられる。算術平均粗さRaが10μm以下であれば、映像表示透明部材3の向こう側の光景を見るときに凹凸構造が邪魔にならずより好ましい。
【0027】
反射膜33の厚さは、1〜100nmが好ましく、4〜25nmがより好ましい。
反射膜33の反射率は、充分なスクリーンのゲインが得られる範囲としては、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。
反射膜33は、第1の透明層32または第2の透明層34に形成された不規則な凹凸構造の表面に、前記の膜材料を均一に成形することで、不規則な凹凸構造とすることができる。
【0028】
(透明層)
第1の透明層32および第2の透明層34は、透明樹脂層であることが好ましい。各透明層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよく、同じものが好ましい。
【0029】
透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂が好ましい。透明樹脂層を構成する透明樹脂のイエローインデックスは、映像表示透明部材における窓としての機能が損なわれないように透明感を維持する点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0030】
透明層の厚さ(凹凸構造を除く)は、ロールツーロールプロセスにて形成しやすい厚さであればよく、たとえば、0.5〜50μmが好ましい。前記厚さは、透明層に凹凸構造が形成されている場合は凹凸構造を除いた厚さを意味する。
透明層の透過率は、50〜100%が好ましく、75〜100%がより好ましく、90〜100%がさらに好ましい。
【0031】
透明層は片面が、反射膜33に対応した不規則な凹凸構造であることが好ましい。
透明層の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは、0.01〜20μmが好ましく、0.05〜10μmがより好ましい。算術平均粗さRaが該範囲内であれば、投射映像の視野角が広く、正反射光を直接見ずに視認でき、凹凸構造による粒状感が抑えられた映像表示透明部材3を得ることができる。算術平均粗さRaが10μm以下であれば、映像表示透明部材3の向こう側の光景を見るときに凹凸構造が邪魔にならずより好ましい。
【0032】
(透明フィルム)
第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0033】
透明樹脂フィルムを構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0034】
透明フィルムの厚さは、ロールツーロールプロセスを適用できる厚さが好ましく、たとえば、0.01〜0.5mmが好ましく、0.05〜0.3mmがより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
【0035】
(映像表示部の製造方法)
映像表示部30の製造方法の一例について
図3を参照しながら説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、第1の透明フィルム31の表面に、光硬化性樹脂36を塗布し、不規則な凹凸構造が表面に形成されたモールド61を、凹凸構造が光硬化性樹脂36に接するように、光硬化性樹脂36の上に重ねる。
【0037】
第1の透明フィルム31の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂36を硬化させて、モールド61の不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層32を形成した後、
図2(b)に示すように、モールド61を剥離する。
【0038】
図3(c)に示すように、第1の透明層32の表面に金属を物理蒸着し、金属薄膜からなる反射膜33を形成する。
【0039】
図3(d)に示すように、反射膜33の表面に光硬化性樹脂37を塗布し、光硬化性樹脂37の上に第2の透明フィルム35を重ねる。
第1の透明フィルム31の側または第2の透明フィルム35の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂37を硬化させて、第2の透明層34を形成することによって、映像表示部30を得る。なお、第1の透明層32および第2の透明層34のどちらが中空層側に配置されていてもよい。
【0040】
モールド61としては、不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルム、金属板等が挙げられる。不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルムとしては、微粒子を含む樹脂フィルム、サンドブラスト処理された樹脂フィルム等が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法としては、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。
物理蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0041】
(反射型の映像表示透明部材の光学特性)
映像表示透明部材3の透過率は、観察者側から見て映像表示透明部材3の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材3の透過率は、投影像のコントラストを適切に保つ点から、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、75%以下がさらに好ましい。
映像表示透明部材3の第1の面Aにおける正反射光の反射率は、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。そのようにすることで、周辺の物体、光源の映り込みを防止することができ好ましい。
【0042】
映像表示透明部材3の第1の面A側への拡散反射率は、5%以上が好ましく、15%以上がさらに好ましく、30%以上が特に好ましい。反射率が上記範囲である場合は、特に、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光において、このあたりの反射率が得られると人間の視感度的に変化が分かりにくくなるため、充分なスクリーンのゲインを得られるからである。
【0043】
映像表示透明部材3の前方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材3の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0044】
映像表示透明部材3の後方ヘーズは、スクリーンゲイン確保の点から、正規反射率を上げる平坦なミラーや平坦なハーフミラーの様な構造を映像表示透明部材3が含まない場合、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材3の後方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材3の向こう側に見える光景の視認性の点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0045】
前方ヘーズに対する後方ヘーズの比率(後方ヘーズ/前方ヘーズ)は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。後方ヘーズ/前方ヘーズが1以上であれば、映像表示透明部材3を見る観察者の視線が届く範囲に100ルクス以上の環境があっても、観察者側から見て映像表示透明部材3の向こう側に見える光景の視認性がよく、投射された映像と映像表示透明部材3の向こう側の光景とを見ることができる。このような映像表示透明部材3は、周囲に外光が存在する環境下で利用されることに適している。
【0046】
映像表示透明部材3における隣り合う各層間の屈折率差は、各層界面における反射率が0.5%以内に抑えられる点から、0.2以内が好ましく、各層界面での反射率が0.1%程度となる点から、0.1以内がより好ましい。
【0047】
<他の実施形態>
なお、本発明の透明スクリーンの形態は、
図1の透明スクリーンに限定されない。以下、
図1の透明スクリーンと同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
【0048】
透明スクリーン1における反射型の映像表示透明部材3は、
図4に示すように、第1の透明基材10を省略した映像表示透明部材4aであってもよい。複合透明表示部材4aの具体例としては、たとえば、第2の透明基材20が既存の複層ガラスのガラス板等である例、すなわち光散乱シートからなる映像表示部30を、接着層22を介して既存の複層ガラス等に貼り付けた例が挙げられる。
また、
図1の透明スクリーン1において、第2の透明基材20を省略したものであってもよい。
また、
図1の透明スクリーン1において、映像表示部3が光散乱材料を分散させた透明樹脂板からなっていてもよい。
【0049】
反射型の映像表示透明部材においては、反射膜33の凹凸構造が他の構造であっても良い。例えば、ホログラム、コレステリック液晶を用いて表面の配向を凹凸や界面活性剤等で不均一にしたもの、ルーバー構造やメッシュ等の散乱体、反射体をパターニングしたもの、微粒子や微細空孔等を用いたもの、蛍光体を用いたもの、不規則な凹凸構造を有するハーフミラー等の構造が挙げられる。
特にハーフミラーを用いたものが、透明性を向上しやすい構造となるため好ましい。
【0050】
(反射型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム)
図1は、本発明の映像表示システムの例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、中空層側に低放射膜を有する透明板4、中空層2、および反射型の映像表示透明部材3とを備える透明スクリーン1と、反射型の映像表示透明部材3側(A側)に設置された投影機200とを備える。
投影機200は、低放射膜を有する透明板4側(B側)に設置されてもよいが、映像表示透明部材3を窓ガラスとして用いる場合、映像表示透明部材3が室内側になるように設置することが好ましい。
【0051】
(作用機序)
本発明の形態における反射型の透明スクリーン1、ならびにこれを用いた映像表示システムにあっては、中空層を介して対向する一対の透明部材の一方が低放射膜を有するので、低放射膜によって反射される。また低放射膜によって光が反射された分、透過率が低下する。そのため映像を表示させたい面とは反対側の面における投影映像の表示光の透過光量が抑制され、また反対側の光景が反射した虚像の方が視認しやすくなるため投影機とは反対側にいる観察者が、投影映像を視認しにくくでき、プライバシーの保護ができる。また、断熱性、防音性も良好となる。
本発明の形態における反射型の透明スクリーン1、ならびにこれを用いた映像表示システムにあっては、中空層を介して対向する一対の透明部材の一方が低放射膜を有するので、透明部材に入射した映像や光景が反射される。そのため透明スクリーンに対して投影機とは反対側へ、映像の透過しにくくる。また透明部材上には周囲の光景が反射した虚像が形成されるので、さらに透過映像が視認しにくくでき、投影機で映像を投影している観察者のプライバシーが保護できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
例1、例3は実施例、例2、例4は参考例である。
(製造例1)
透明なポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:0.1mm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA−F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布した。
不規則な凹凸構造が表面に形成された白色PETフィルム(東レ社製、E20、算術平均粗さRa:0.23μm)を、凹凸構造が紫外線硬化性樹脂に接するように、紫外線硬化性樹脂の上に重ねた。
【0053】
透明PETフィルムの側から1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、白色PETフィルムの不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層を形成した後、白色PETフィルムを剥離した。
第1の透明層の表面に、アルミニウムを真空蒸着法によって物理蒸着し、アルミニウム薄膜(厚さ:8nm)からなる反射膜を形成した。
【0054】
反射膜の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA−F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルム(厚さ:0.1mm)を重ねた。
1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、第2の透明層を形成することによって、製造例1の光散乱シートを得た。
【0055】
ソーダライムガラス板(松浪ガラス社製、厚さ:3mm)、ポリビニルブチラール(以下、PVBと記す。)フィルム(Solutia社製 Saflex RK11l、厚さ:375μm)、製造例1の光散乱シート、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着を行い、製造例1の反射型の映像表示透明部材を得た。
【0056】
(例1)
製造例1の映像表示透明部材と、低放射膜を有するガラス板(低放射膜の厚さ約400nm、低放射膜構造:Agと誘電体との多層膜)とを、低放射膜が映像表示透明部材と対向するようにして、スペーサーを介在させて、シール材(シリコーン系シール剤)でシールし、例1の透明スクリーンを得た。製造例1の反射型の映像表示透明部材の性能および、例1の透明スクリーンの評価結果を表1に示す。
【0057】
(例2)
例1の映像表示透明部材において、低放射膜を有するガラス板に換えて、低放射膜がないソーダライムガラス(厚さ5mm)を用いて、例2の反射型の透明スクリーンを得た。例2の透明スクリーンの評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表中の評価基準は、下記のとおりである。
(光景視認性)
観察者側(観察者X)から見て透明スクリーンの向こう側に見える光景の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:手前が暗い場合、または外光が小さい場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:光景を視認できない。
【0060】
(映像視認性)
観察者側(観察者X)から見て透明スクリーンに表示される映像の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:周囲が暗い場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:映像を視認できない。
【0061】
(背面からの視認性)
観察者側(観察者X)から見て透明スクリーンの反対側から観察される映像の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:映像が視認されない。
1:大まかな視認が可能なれべるである。