特許第6565654号(P6565654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565654
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】コネクタ及び端子接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/15 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   H01R13/15 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-242470(P2015-242470)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-107815(P2017-107815A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】今堀 雅明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸二
(72)【発明者】
【氏名】山下 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】岡 太一
(72)【発明者】
【氏名】前田 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】梅津 潤
(72)【発明者】
【氏名】二ッ森 敬浩
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−275333(JP,A)
【文献】 実開平05−045964(JP,U)
【文献】 特開2012−164629(JP,A)
【文献】 特開平10−275646(JP,A)
【文献】 特開平07−135032(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0118916(US,A1)
【文献】 特開2017−107757(JP,A)
【文献】 特開平06−177624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/15
H01R 13/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン形状のオス端子が第1ハウジング内に収容されている第1コネクタ部と、
筒状のメス端子が第2ハウジングに収容されている第2コネクタ部と、を備え、
前記両ハウジングが嵌合された状態において、前記オス端子が前記メス端子に挿入され前記両端子が電気的に接続されているコネクタであって、
前記第1コネクタ部は、
前記オス端子の周囲を囲むように設けられており、前記両ハウジングが嵌合され前記オス端子が前記メス端子に挿入されている状態において、前記メス端子の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子の外周面に押し付ける押圧部材を有する、
コネクタ。
【請求項2】
前記メス端子は、筒状の基端部と、前記基端部から前記オス端子の挿入側に延出されている複数の接触片を有し前記複数の接触片が筒状に配置されている端子挿入部と、を有し、
前記押圧部材は、前記接触片の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子の外周面に押し付けるように構成されている、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記オス端子は、絶縁性の樹脂からなる第1インナーハウジングを介して前記第1ハウジングに固定されており、
前記オス端子は、前記第1インナーハウジングから前記両ハウジングの嵌合方向前方に突出する端子部を有し、
前記押圧部材は、前記端子部の前記第1インナーハウジング側の端部に配置されている、
請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記端子部の前記第1インナーハウジング側の端部には、径方向外方に突出するフランジ部が形成されており、
前記押圧部材は、前記フランジ部に係止され固定されている、
請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記押圧部材は、
筒状の前側筒状部と、
前記前側筒状部よりも前記嵌合方向において後方に配置されている後側筒状部と、
前記前側筒状部と前記後側筒状部とを連結し、中央部が前記前側筒状部及び前記後側筒状部よりも内方に突出させて形成されている複数の押圧片と、を備える、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
ピン形状のオス端子と、筒状のメス端子と、有し、
前記オス端子が前記メス端子に挿入され前記両端子が電気的に接続されている端子接続構造であって、
前記オス端子の周囲を囲むように前記オス端子に設けられており、前記オス端子が前記メス端子に挿入された状態において、前記メス端子の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子の外周面に押し付ける押圧部材を有する、
端子接続構造。
【請求項7】
前記オス端子は、前記メス端子に挿入される端子部と、前記端子部よりも外径が大きいフランジ部と、を有し、
前記押圧部材は、前記フランジ部に係止され固定されている、
請求項6に記載の端子接続構造。
【請求項8】
前記押圧部材は、
筒状の前側筒状部と、
前記前側筒状部よりも前記嵌合方向において後方に配置されている後側筒状部と、
前記前側筒状部と前記後側筒状部とを連結し、中央部が前記前側筒状部及び前記後側筒状部よりも内方に突出させて形成されている複数の押圧片と、を備える、
請求項6または7に記載の端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及び端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気自動車におけるモータとインバータとを接続する電路に設けられるコネクタとして、ピン形状のオス端子が第1ハウジング内に収容された第1コネクタ部と、筒状のメス端子が第2ハウジングに収容された第2コネクタ部と、を備え、両ハウジングを嵌合した際に、オス端子がメス端子に挿入され両端子が電気的に接続されるコネクタが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2では、メス端子が、略円筒状の基部と、基部から延出された接触片とを有し、メス端子の先端部に接触片を内方に弾性的に押圧するばね部材(外ばねリング、コネクタ端子用接触ばね)を設け、オス端子をメス端子に挿入した際に、接触片がオス端子の外周面に弾性接触される端子接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4971075号公報
【特許文献2】特開2013−187170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2では、メス端子の先端部にばね部材が設けられているため、オス端子をメス端子に挿入する際に、常にオス端子がメス端子側に押圧された状態で両端子の嵌合がなされることになり、端子の表面に摩耗が発生し、端子に施されたメッキが剥がれる等の不具合が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、端子の摩耗を抑制可能なコネクタ及び端子接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、ピン形状のオス端子が第1ハウジング内に収容されている第1コネクタ部と、筒状のメス端子が第2ハウジングに収容されている第2コネクタ部と、を備え、前記両ハウジングが嵌合された状態において、前記オス端子が前記メス端子に挿入され前記両端子が電気的に接続されているコネクタであって、前記第1コネクタ部は、前記オス端子の周囲を囲むように設けられており、前記両ハウジングが嵌合され前記オス端子が前記メス端子に挿入されている状態において、前記メス端子の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子の外周面に押し付ける押圧部材を有する、コネクタを提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、ピン形状のオス端子と、筒状のメス端子と、有し、前記オス端子が前記メス端子に挿入され前記両端子が電気的に接続されている端子接続構造であって、前記オス端子の周囲を囲むように前記オス端子に設けられており、前記オス端子が前記メス端子に挿入された状態において、前記メス端子の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子の外周面に押し付ける押圧部材を有する、端子接続構造を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、端子の摩耗を抑制可能なコネクタ及び端子接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るコネクタの嵌合前の図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図2図1のコネクタの嵌合後の図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図3】オス端子の斜視図である。
図4】(a)は押圧部材の斜視図、(b)は押圧部材をオス端子4に取り付けた際の斜視図である。
図5】第1コネクタ部の斜視図である。
図6】メス端子とケーブルの斜視図である。
図7】第2コネクタ部の第2ハウジングを省略した斜視図である。
図8】両コネクタ部を嵌合した際のオス端子、メス端子、および押圧部材の位置関係を説明する説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るコネクタの嵌合前の図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。図2は、本実施の形態に係るコネクタの嵌合後の図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【0013】
図1および図2に示すように、コネクタ1は、ピン形状のオス端子4が第1ハウジング6内に収容されている第1コネクタ部2と、筒状のメス端子5が第2ハウジング7に収容されている第2コネクタ部3と、を備えている。
【0014】
コネクタ1では、両ハウジング6,7を嵌合すると、オス端子4がメス端子5に挿入され両端子4,5が電気的に接続されるように構成されている。
【0015】
コネクタ1は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車において、モータとインバータとを接続する電路に設けられるものである。本実施の形態では、第1コネクタ部2がインバータに取り付けられると共に、第2コネクタ部3がモータ側から延出されたケーブル8の端部に取り付けられており、両コネクタ部2,3を嵌合させることで、インバータとモータとがコネクタ1を介して電気的に接続されるように構成されている。なお、これに限らず、例えば、第2コネクタ部3が機器側(インバータ側)、第1コネクタ部2がケーブル8側に設けられていてもよいし、第1コネクタ部2をケーブルの端部に設けケーブル同士を接続するようにコネクタ1を構成してもよい。
【0016】
(第1コネクタ部2の構成)
図3はオス端子4の斜視図である。図3に示すように、オス端子4は、一端にピン形状(円柱状)の端子部4aが形成されると共に、他端に板状の機器側接続部4bが形成されている。端子部4aの先端部は、メス端子5への挿入が容易となるように、丸みを帯びた形状に形成されている。オス端子4は、例えば、銅の表面に錫や銀等のめっきを施して構成される。本実施の形態では、モータとインバータ間で伝送される三相交流に対応して3つのオス端子4が備えられている。
【0017】
オス端子4の機器側接続部4bには、図示しないインバータ側の端子との接続の際にボルトを通すためのボルト穴4cが形成されている。また、端子部4aの機器側接続部4b側の端部(後述する第1インナーハウジング9側の端部)には、径方向外方に突出し、端子部4aよりも外径が大きいフランジ部4dが端子部4aと一体に形成されている。さらに、端子部4a(フランジ部4d)と機器側接続部4bとを連結する連結部4eの両側には、後述する第1インナーハウジング9に干渉してオス端子4の回転を抑制する回転抑制突起4fが側方に突出するように設けられている。
【0018】
図4(a)は押圧部材の斜視図、図4(b)は押圧部材をオス端子4に取り付けた際の斜視図である。また、図5は、オス端子と押圧部材とを含む第1コネクタ部2の斜視図である。
【0019】
図1,2および図4,5に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1では、第1コネクタ部2は、両ハウジング6,7が嵌合されオス端子4がメス端子5に挿入されている状態において、メス端子5の先端部を弾性的に内方に押圧してオス端子4の外周面に押し付ける押圧部材17を有している。押圧部材17は、オス端子4の周囲を囲むように設けられている。
【0020】
本実施の形態に係る端子接続構造は、コネクタ1においてオス端子4とメス端子5とを接続する構造であり、オス端子4の周囲を囲むようにオス端子4に設けられた押圧部材17により、メス端子5の先端部を弾性的に内方に押圧してオス端子4の外周面に押し付ける構造である。
【0021】
押圧部材17は、筒状に形成されており、オス端子4を外方から囲むようにして配置されている。押圧部材17は、嵌合方向前方に配置された略角筒状(角を丸めた角筒状)の前側筒状部17aと、嵌合方向後方に配置された略角筒状(角を丸めた角筒状)の後側筒状部17bと、両筒状部17a,17bを連結する4つの押圧片17cと、を有している。押圧片17cは、その中央部が両筒状部17a,17bよりも内方に突出するように形成されており、この押圧片17cが、両端子4,5を嵌合させた際にメス端子5(後述する接触片51)の先端部を内方に付勢し、メス端子5の先端部を内方に弾性的に押圧するように構成されている。つまり、押圧部材17は、筒状のばね部材からなる。
【0022】
押圧部材17は、例えばステンレスからなる。押圧部材17は、1枚の金属板を加工して形成されてもよい。この場合、金属板の端部同士を係止させることで筒状の押圧部材17を形成するとよい。
【0023】
押圧部材17の前側筒状部17aには、対向位置から内方に突出する1対の係止突起17dが一体に形成されている。押圧部材17は、係止突起17dがオス端子4のフランジ部4dにおける連結部4e側の端部に形成された係止溝4gに係止されることで、オス端子4に係止され固定されている。本実施の形態では、押圧部材17は、フランジ部4dを含む端子部4aの基端部の外周を囲むように設けられている。
【0024】
図1,2および図5に示すように、3つのオス端子4は、一直線状かつ等間隔に整列配置された状態で第1インナーハウジング9に支持され、第1インナーハウジング9を介して第1ハウジング6に固定されている。第1インナーハウジング9は、ナイロンやPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の絶縁性の樹脂からなり、第1ハウジング6は、アルミニウム等の金属からなる。
【0025】
第1ハウジング6は、中空筒状の本体部6aと、本体部6aの嵌合方向後方の端部から側方に延出されたフランジ部6bと、を一体に構成してなる。第1コネクタ部2は、フランジ部6bをインバータ筐体に当接させた状態でインバータ筐体にボルト等で固定することで、インバータに取り付けられる。
【0026】
本体部6aのフランジ部6bと反対側(嵌合方向前方)の端部には、第1ハウジング6を第2ハウジング7内に収容し両ハウジング6,7を嵌合させた際に、第1ハウジング6(本体部6a)の外周面と第2ハウジング7の内周面との間を水密にシールするハウジング間シール部材6cが設けられている。
【0027】
また、本体部6aには、その両側面(オス端子4の配列方向における両側面)から側方に突出し、両ハウジング6,7を嵌合する際のガイドの役割を果たすガイド突起6dが一体に形成されている。
【0028】
第1インナーハウジング9は、第1ハウジング6のフランジ部6b側の開口を塞ぐように設けられる蓋部9aと、蓋部9aから第1ハウジング6の内周面に沿うように第1ハウジング6内に延出された筒状の本体部9bと、蓋部9aから本体部9bと反対側(嵌合方向後方)に突出する機器側突出部9cと、を一体に構成してなる。本体部9bの外周面には、本体部9bの外周面と第1ハウジング6の内周面との間を水密にシールするシール部材9dが設けられている。
【0029】
各オス端子4は、その端子部4aを第1ハウジング6内に収容し、かつ、機器側接続部4bを第1ハウジング6から嵌合方向後方に突出させた状態で第1インナーハウジング9に支持されている。各オス端子4の端子部4a(フランジ部4dを含む)は、第1インナーハウジング9の蓋部9aから両ハウジング6,7の嵌合方向前方(第1ハウジング6内)に突出するように配置されている。
【0030】
各オス端子4の機器側接続部4bの先端部の表面は、機器側突出部9cから露出されており、機器側接続部4bの先端部の背面が機器側突出部9cに支持されるように構成されている。第1インナーハウジング9の機器側突出部9cには、オス端子4のボルト穴4cと連通し機器側突出部9cを貫通するボルト穴9eが形成されている。
【0031】
各オス端子4と第1インナーハウジング9とは、インサート成形により一体に形成されている。各オス端子4は、その連結部4eおよび回転抑制突起4fが蓋部9aに覆われた構造となっており、回転抑制突起4fが周囲の第1インナーハウジング9に干渉することにより、オス端子4の回転が抑制されている。
【0032】
各オス端子4には、押圧部材17がそれぞれ取り付けられている。押圧部材17は、第1インナーハウジング9から嵌合方向前方(第1ハウジング6内)に突出するオス端子4(端子部4a、フランジ部4d)の第1インナーハウジング9側の端部に配置されている。
【0033】
(第2コネクタ部3の構成)
図6は、メス端子5とケーブル8の斜視図である。
【0034】
図6に示すように、メス端子5は、ケーブル8の端部に設けられている。本実施の形態では、モータとインバータ間で伝送される三相交流に対応して3つのメス端子5および3本のケーブル8が備えられる。各ケーブル8は、銅等の電気良導体からなる素線を撚り合わせた撚線からなる導体8aの外周を絶縁体からなるシース8bで被覆して構成されている。
【0035】
メス端子5は、ケーブル8の先端にてシース8bから露出された導体8aをかしめ固定するかしめ部5aと、かしめ部5aから前方に延出され下方に凸となるように湾曲して形成された板状の連結部5bと、連結部5bを介してかしめ部5aと連結された筒状(ここでは角を丸めた角筒状)の基端部5cと、基端部5cから前方(オス端子4の挿入側)に延出された複数の接触片51を有する端子挿入部5dと、を一体に構成してなる。メス端子5は、例えば、銅の表面に錫や銀等のめっきを施して構成される。
【0036】
本実施の形態では、接触片51を4つ有している場合を説明するが、接触片51の数はこれに限定されない。4つの接触片51は、嵌合方向前方から見て上下左右に互いに離間して配置され、全体として略角筒状となるように配置されている。
【0037】
本実施の形態では、各接触片51は、基端部5cから前方に延出された板状の第1平坦部51aと、第1平坦部51aの先端部から前方に延出されると共に斜め外方に延出されたテーパ部51bと、テーパ部51bの先端部から前方に延出され第1平坦部51aと平行な第2平坦部51cと、を有している。第1平坦部51aとテーパ部51bの連結部分、および、テーパ部51bと第2平坦部51cとの連結部分は、丸みを帯びた形状とされる。
【0038】
このように構成することで、端子挿入部5dの先端部(オス端子4の挿入側の端部)には、第2平坦部51cからなる大径部52が形成され、大径部52よりも基端部5c側には、大径部52よりも径が小さい第1平坦部51aからなる小径部53が形成される。
【0039】
コネクタ1では、両ハウジング6,7を嵌合させた際には、オス端子4の端子部4aが、メス端子5の端子挿入部5dにおける大径部52に挿入される。大径部52における上下または左右に対向する接触片51(第2平坦部51c)の間隔は、オス端子4の端子部4a(フランジ部4dよりも先端側の部分)の外径よりも若干大きく構成されている。
【0040】
また、詳細は後述するが、コネクタ1では、両ハウジング6,7を嵌合させた際には、メス端子5の先端部(接触片51の先端部)がオス端子4と押圧部材17との間に挿入され、押圧部材17の押圧片17cにより接触片51の先端部が弾性的に内方に押圧されオス端子4(端子部4a)の外周面に押し付けられることで、両端子4,5が電気的に接続される。そのため、押圧部材17の上下または左右に対向する押圧片17cの間隔は、大径部52において上下又は左右に対向する接触片51(第2平坦部51c)の外面同士の間隔よりも小さくなるように調整されている。
【0041】
メス端子5の連結部5bには、連結部5bの両側部から上方に突出する突起54が形成されている。
【0042】
図1,2に戻り、第2ハウジング7は、中空筒状に形成されており、その嵌合方向前方の開口から第1ハウジング6が挿入されるように構成されている。第2ハウジング7は、アルミニウム等の金属からなる。
【0043】
第2ハウジング7の両側には、第1ハウジング6を嵌合する際にガイド突起6dをガイドするガイド溝7aが形成されている。ガイド溝7aは、両ハウジング6,7の嵌合方向に沿って形成されており、嵌合方向前方に開口するように形成されている。
【0044】
また、第2ハウジング7の両側には、側方に突出するレバー支持突起7bが形成されており、このレバー支持突起7bを回動軸として第2ハウジング7に対して回動自在にレバー部材11が設けられている。
【0045】
レバー部材11は、第2ハウジング7を両側から挟み込むように設けられる一対の側板11aと、側板11a同士を連結する操作部11bとを一体に構成してなる。レバー部材11は、ナイロンやPPS等の絶縁性の樹脂からなる。
【0046】
レバー部材11の側板11aには、第1ハウジング6のガイド突起6dをガイド溝7aとの間で保持し、レバー部材11の回動に伴ってガイド突起6dをガイド溝7aの奥側(第2ハウジング7の後方側)に引き寄せることで、両ハウジング6,7を互いに引き寄せて両ハウジング6,7を嵌合させるための円弧状のレバー側ガイド溝12が形成されている。
【0047】
レバー側ガイド溝12は、レバー部材11を開放位置(図1の位置)とした際にガイド溝7aと連通され、両ハウジング6,7の嵌合時にガイド溝7aを介してガイド突起6dが挿入される挿入部12aと、一端が挿入部12aと連通され、一端から他端かけて徐々に回動軸との距離が小さくなるように円弧状に形成された円弧部12bと、を有している。
【0048】
両ハウジング6,7の嵌合時には、ガイド突起6dがガイド溝7aを介してレバー側ガイド溝12に挿入され、ガイド突起6dが挿入部12aを介して円弧部12bの一端に挿入される。この状態でレバー部材11を開放位置から回動させると、ガイド突起6dがガイド溝7aと円弧部12bとに挟まれ保持された状態となる。さらに、レバー部材11を嵌合位置(図2の位置)まで回動させると、当該回動に伴って円弧部12bが回動され、ガイド突起6dが円弧部12bの一端から他端に円弧部12bに沿って移動し、ガイド突起6dがガイド溝7aの奥側へと引き寄せられる。これにより、両ハウジング6,7が互いに引き寄せられ、両ハウジング6,7が嵌合される。
【0049】
第2コネクタ部3では、第2ハウジング7の嵌合方向後方の開口から3本のケーブル8が延出されている。ケーブル8と第2ハウジング7との間には、ケーブル8と第2ハウジング7との間を水密にシールするワイヤシール14が設けられている。第2ハウジング7には、第2ハウジング7の内周面から内方に突出し、ワイヤシール14の前方(メス端子5側)への移動を規制する規制壁7dが一体に設けられている。また、図示していないが、第2ハウジング7の後方(ケーブル8の延出側)の開口を塞ぐように蓋部材が設けられ、この蓋部材により、ワイヤシール14の後方への移動が規制されている。
【0050】
図1,2および図7に示すように、3本のケーブル8は、等間隔で整列した状態で第2ハウジング7に支持されており、これにより、3つのメス端子5は、第2ハウジング7内に一直線状かつ等間隔に整列した状態で配置されている。各メス端子5は、両ハウジング6,7を嵌合させた際に対応するオス端子4が挿入されるように、各オス端子4に対応した位置に配置される。
【0051】
第2コネクタ部3は、各メス端子5を囲むように設けられた3連筒状の第2インナーハウジング16を備えている。第2インナーハウジング16は、ナイロンやPPS等の絶縁性の樹脂からなる。
【0052】
第2インナーハウジング16は、メス端子5を上下から挟み込む上壁16aおよび下壁16bと、メス端子5の配列方向の両側から挟み込むように配置される一対の側壁16cと、を有し、嵌合方向前方および後方が開口した略直方体形状に形成されている。また、第2インナーハウジング16は、その内部空間を仕切る側壁16cと平行な2つの仕切り壁16dを有し、両仕切り壁16dで仕切られた3つの空間に、それぞれメス端子5を収容して構成されている。仕切り壁16dの上端部は上壁16aに、下端部は下壁16bにそれぞれ連結されている。
【0053】
ここでは、各メス端子5の端子挿入部5dと基端部5cとを収容するように第2インナーハウジング16を形成しているが、第2インナーハウジング16をさらにケーブル8側に延長し、メス端子5の全体を収容できるように第2インナーハウジング16を構成し、隣り合うメス端子5間の縁面距離を確保するようにしてもよい。両ハウジング6,7を嵌合した際には、第2インナーハウジング16とメス端子5の先端部との間に押圧部材17が挿入されることになる。
【0054】
第2インナーハウジング16の上壁16aと下壁16bには、嵌合方向後方に延出されたランス16fが形成されており、このランス16fを、第2ハウジング7の内壁に内方に突出するように形成された内方突起7cに係止させることで、第2インナーハウジング16が第2ハウジング7に係止され固定されている。これにより、各メス端子5は、第2インナーハウジング16を介して第2ハウジング7に支持されている。
【0055】
また、図示していないが、コネクタ1では、3本のケーブル8の周囲を覆うようにシールド部材としての編組シールドが設けられている。編組シールドの端部は、第2ハウジング7の外周に帯状の締結部材により固定されている。
【0056】
(第1コネクタ部2と第2コネクタ部3の嵌合)
両コネクタ部2,3を嵌合させる際には、まず、図1(a),(b)に示すように、第2コネクタ部3において、レバー部材11を開放位置に回動させた状態とする。
【0057】
その後、第1ハウジング6を第2ハウジング7内に挿入する。このとき、第1ハウジング6のガイド突起6dが、第2ハウジング7のガイド溝7aにガイドされ、レバー部材11のレバー側ガイド溝12に収容される。なお、両ハウジング6,7の嵌合を容易とするため、レバー部材11を回動させない状態においては、押圧部材17によりメス端子5に押圧力が付与されないことが望ましい。押圧部材17は、ガイド突起6dがレバー側ガイド溝12の挿入部12aに挿入された状態において、押圧片17cがメス端子5を押圧しない位置に取り付けられている。
【0058】
その後、図2(a),(b)に示すように、レバー部材11を嵌合位置まで回動させると、両ハウジング6,7が互いに引き寄せられ、両ハウジング6,7が嵌合される。
【0059】
これにより、図8(a),(b)に示すように、メス端子5の先端部(接触片51の先端部)が、押圧部材17の押圧片17cとオス端子4の端子部4aとの間に挿入され、メス端子5の先端部(接触片51の先端部)が、押圧部材17の押圧片17cにより弾性的に内方に押圧されてオス端子4の外周面に押し付けられる。これにより、押圧部材17の押圧力により両端子4,5が固定され電気的に接続される。
【0060】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るコネクタ1では、第1コネクタ部2は、オス端子4の周囲を囲むように設けられており両ハウジング6,7が嵌合されオス端子4がメス端子5に挿入されている状態において、メス端子5の先端部を弾性的に内方に押圧してオス端子4の外周面に押し付ける押圧部材17を有している。
【0061】
オス端子4側に押圧部材17を設けることで、メス端子5の先端部のみに押圧力を作用させることが可能となり、従来のようにメス端子5側に押圧部材17を設ける場合と比較して、両端子4,5間に押圧力を作用させた状態で両端子4,5を摺動させる距離を短くすることが可能になり、端子4,5に生じる摩耗を抑制することが可能になる。
【0062】
なお、メス端子5の基端部に押圧部材17を設けることで、両端子4,5間に押圧力を作用させた状態で両端子4,5を摺動させる距離を短くすることも考えられる。しかし、メス端子5は、複数の接触片51が嵌合方向前方に延出されている構造となっているため、接触片51の基端部を内方に押圧しても接触片51が内方に撓みにくく、両端子4,5間に十分な押圧力を作用させることは困難である。本実施の形態では、押圧部材17によりメス端子5の先端部を内方に押圧しているため、接触片51を容易に内方に撓ませることが可能であり、押圧部材17による押圧力を抑えて両端子4,5の摩耗を抑えつつも、両端子4,5間に十分な押圧力を作用させ両端子4,5を確実に接触させることができる。
【0063】
つまり、本実施の形態によれば、押圧部材17による押圧力(ばね力)を小さく抑えつつも、両端子4,5間に付与される押圧力を十分に確保することが可能であり、両端子4,5の摩耗を抑制しつつも、車両の振動による端子4,5の位置ずれや接触抵抗の増加を抑制することが可能である。
【0064】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0065】
[1]ピン形状のオス端子(4)が第1ハウジング(6)内に収容されている第1コネクタ部(2)と、筒状のメス端子(5)が第2ハウジング(7)に収容されている第2コネクタ部(3)と、を備え、前記両ハウジング(6,7)が嵌合された状態において、前記オス端子(4)が前記メス端子(4)に挿入され前記両端子(4,5)が電気的に接続されているコネクタ(1)であって、前記第1コネクタ部(2)は、前記オス端子(4)の周囲を囲むように設けられており、前記両ハウジング(6,7)が嵌合され前記オス端子(4)が前記メス端子(5)に挿入されている状態において、前記メス端子(5)の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子(4)の外周面に押し付ける押圧部材(17)を有する、コネクタ(1)。
【0066】
[2]前記メス端子(5)は、筒状の基端部(5c)と、前記基端部(5c)から前記オス端子(4)の挿入側に延出されている複数の接触片(51)を有し前記複数の接触片(51)が筒状に配置されている端子挿入部(5d)と、を有し、前記押圧部材(17)は、前記接触片(51)の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子(4)の外周面に押し付けるように構成されている、[1]に記載のコネクタ(1)。
【0067】
[3]前記オス端子(4)は、絶縁性の樹脂からなる第1インナーハウジング(9)を介して前記第1ハウジング(6)に固定されており、前記オス端子(4)は、前記第1インナーハウジング(9)から前記両ハウジング(6,7)の嵌合方向前方に突出する端子部(4a)を有し、前記押圧部材(17)は、前記端子部(4a)の前記第1インナーハウジング(9)側の端部に配置されている、[1]または[2]に記載のコネクタ(1)。
【0068】
[4]前記端子部(4a)の前記第1インナーハウジング(9)側の端部には、径方向外方に突出するフランジ部(4d)が形成されており、前記押圧部材(17)は、前記フランジ部(4d)に係止され固定されている、[3]に記載のコネクタ(1)。
【0069】
[5]前記押圧部材(17)は、筒状の前側筒状部(17a)と、前記前側筒状部(17a)よりも前記嵌合方向において後方に配置されている後側筒状部(17b)と、前記前側筒状部(17a)と前記後側筒状部(17b)とを連結し、中央部が前記前側筒状部(17a)及び前記後側筒状部(17b)よりも内方に突出させて形成されている複数の押圧片(17c)と、を備える、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のコネクタ(1)。
【0070】
[6]ピン形状のオス端子(4)と、筒状のメス端子(5)と、有し、前記オス端子(4)が前記メス端子(5)に挿入され前記両端子(4,5)が電気的に接続されている端子接続構造であって、前記オス端子(4)の周囲を囲むように前記オス端子(4)に設けられており、前記オス端子(4)が前記メス端子(5)に挿入された状態において、前記メス端子(5)の先端部を弾性的に内方に押圧して前記オス端子(4)の外周面に押し付ける押圧部材(17)を有する、端子接続構造。
【0071】
[7]前記オス端子(4)は、前記メス端子(5)に挿入される端子部(4a)と、前記端子部(4a)よりも外径が大きいフランジ部(4d)と、を有し、前記押圧部材(17)は、前記フランジ部(4d)に係止され固定されている、[6]に記載の端子接続構造。
【0072】
[8]前記押圧部材(17)は、筒状の前側筒状部(17a)と、前記前側筒状部(17a)よりも前記嵌合方向において後方に配置されている後側筒状部(17b)と、前記前側筒状部(17a)と前記後側筒状部(17b)とを連結し、中央部が前記前側筒状部(17a)及び前記後側筒状部(17b)よりも内方に突出させて形成されている複数の押圧片(17c)と、を備える、[6]または[7]に記載の端子接続構造。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0074】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態では、押圧部材17をオス端子4(フランジ部4d)に係止し固定するように構成したが、これに限らず、例えば、押圧部材17を第1インナーハウジング9に固定するように構成してもよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、押圧部材17を、前側筒状部17aと後側筒状部17bと4つの押圧片17cとで構成したが、押圧部材17の形状等はこれに限定されるものではない。例えば、押圧片17cの数は、メス端子5の接触片51の数に応じて設定すればよい。また、後側筒状部17bを省略し、前側筒状部17aから嵌合方向前方に複数の押圧片17cが延出された片持ちの構造としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…コネクタ
2…第1コネクタ部
3…第2コネクタ部
4…オス端子
4a…端子部
4d…フランジ部
5…メス端子
5c…基端部
5d…端子挿入部
51…接触片
52…大径部
53…小径部
6…第1ハウジング
7…第2ハウジング
9…第1インナーハウジング
16…第2インナーハウジング
17…押圧部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8