(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)樹脂材料
本発明の第1は、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、ラジカル開始剤、及びエチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物を溶融混練して得られる結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物と、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物とを、〔(結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物):(結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物)の重量比で、100:0〜1:99の割合で含有する樹脂材料であって、前記エチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物由来の構造単位量が、前記結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物と結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物との合計100重量部に対して、0.05〜3.0重量部である樹脂材料である。
【0010】
1.結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物
本発明に用いる結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物は、ジシクロペンタジエンを開環重合し、次いで水素添加して得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を押出成形等により成形することで得られる高分子である。
用いるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物は結晶性であり、融点を有する。また、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加の際には、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。
【0011】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を得る方法は、特に限定されるものではないが、例えば特開2006−52333号公報に記載される方法が挙げられる。この方法によれば、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を得て、それを水素化することで、目的とするジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を効率よく得ることができる。
【0012】
また、ジシクロペンタジエンには、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体及びエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の結晶性を高め、耐熱性を特に良好なものとする観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましく、例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
【0013】
ジシクロペンタジエン開環重合体を得るにあたっては、結晶性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を与える範囲において、ジシクロペンタジエンの他に、ジシクロペンタジエン以外の極性基を有しない単量体を共重合させてもよい。
用いる極性基を有しない単量体としては、ジシクロペンタジエン以外の多環式ノルボルネン系単量体、ノルボルネン骨格に縮合した環構造を有しない2環のノルボルネン系化合物、モノ環状オレフィン、及び環状ジエン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。
【0014】
シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を得るためには、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を水素化反応に供する必要がある。
したがって、ジシクロペンタジエンを開環重合するにあたっては、ジシクロペンタジエン開環重合体にシンジオタクチック立体規則性を与えることができる開環重合触媒を用いる必要がある。このような開環重合触媒としては、下記式(3)で表される金属化合物(以下、「金属化合物(3)」ということがある。)を含んでなる開環重合触媒が好適である。
【0016】
式中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、R
8は3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、CH
2R
10で表される基であり、R
9は置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数である。R
10は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。
ここで、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換又は置換基を有する」という意味である(以下にて同じ)。
【0017】
金属化合物(3)を構成する金属原子(M)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデン又はタングステンが好適に用いられ、タングステンが特に好適に用いられる。
金属化合物(3)は、金属イミド結合を含んでなるものである。R
8は、金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基である。
3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられ、さらに、3,4,5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。
【0018】
3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;が挙げられる。
【0019】
金属化合物(3)において、窒素原子上の置換基(式(3)中のR
8)として用いられ得る、−CH
2R
10で表される基におけるR
10の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。また、このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。このアルキル基が有し得る置換基は、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;が挙げられる。
【0020】
R
10の、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。
R
10の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数が1〜20のアルキル基が好ましい。
【0021】
金属化合物(3)は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を3個又は4個有してなる。すなわち、式(3)において、Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を表す。なお、金属化合物(3)においてXで表される基が2以上あるとき、それらの基は互いに結合していてもよい。
【0022】
Xで表される基となり得るハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0023】
金属化合物(3)は、1個の金属アルコキシド結合又は1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合又は金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(3)中のR
9)は、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。このR
9で表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアリール基としては、前述のR
10で表される基におけるものと同様のものを用いることができる。
【0024】
金属化合物(3)は、1個又は2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(3)中のL)としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が特に好適に用いられる。
【0025】
シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を得るための開環重合触媒として、特に好適に用いられる金属化合物(3)としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物(式(3)中、Mがタングステン原子で、かつ、R
8がフェニル基である化合物)を挙げることができ、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)が特に好適である。
【0026】
金属化合物(3)は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類、又は一置換メチルイソシアナート類と、電子供与性の中性配位子(L)、及び必要に応じてアルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドを混合すること等(例えば、特開平5−345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された金属化合物(3)は、結晶化等により精製・単離したものを用いてもよいし、精製することなく、触媒合成溶液をそのまま開環重合触媒として使用することもできる。
【0027】
開環重合触媒として用いる金属化合物(3)の使用量は、(金属化合物(3):用いる単量体全体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1:1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000となる量である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
【0028】
金属化合物(3)を開環重合触媒として用いるにあたっては、金属化合物(3)を単独で使用することもできるが、重合活性を高くする観点から、金属化合物(3)に有機金属還元剤を併用することが好ましい。
用いる有機金属還元剤としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1、2、12、13、14族が挙げられる。なかでも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、又は有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウム又は有機スズが特に好ましく用いられる。
【0029】
有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等が挙げられる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等が挙げられる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
有機金属還元剤の使用量は、金属化合物(3)に対して、0.1〜100モル倍が好ましく、0.2〜50モル倍がより好ましく、0.5〜20モル倍が特に好ましい。使用量が少なすぎると重合活性が向上しない場合があり、多すぎると副反応が起こりやすくなるおそれがある。
【0030】
結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体を得るための重合反応は、通常、有機溶媒中で行う。用いる有機溶媒は、目的とする開環重合体やその水素添加物が所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、重合反応や水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。
有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類;又はこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく用いられる。
【0031】
開環重合反応は、単量体と、金属化合物(3)と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより開始させることができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。例えば、単量体に金属化合物(3)と有機金属還元剤との混合物を添加して混合してもよいし、有機金属還元剤に単量体と金属化合物(3)との混合物を添加して混合してもよく、また、単量体と有機金属還元剤との混合物に金属化合物(3)を添加して混合してもよい。
各成分を混合するにあたっては、それぞれの成分の全量を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよく、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に添加することもできる。なかでも、重合温度や得られる開環重合体の分子量を制御して、特に成形性に優れた樹脂組成物を得る観点からは、単量体又は金属化合物(3)を、複数回に分けて、又は連続的に、添加することが好ましく、単量体を、複数回に分けて、又は連続的に、添加することが特に好ましい。
【0032】
有機溶媒中の重合反応時における単量体の濃度は、特に限定されないが、1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎる場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる場合がある。
【0033】
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、開環重合触媒の安定化、重合反応の速度及び重合体の分子量分布を調整する目的で使用することができる。活性調整剤は、官能基を有する有機化合物であれば特に制限されないが、含酸素、含窒素、含リン有機化合物が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルアセテート等のエステル類;アセトニトリルベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;トリメチルホスフェ−ト、トリフェニルホスフェ−ト等のホスフェート類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。これらの活性調整剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。添加する活性調整剤の量は、特に限定されないが、通常、開環重合触媒として用いる金属化合物に対して0.01〜100モル%の間で選択すればよい。
【0034】
また、重合反応系には、開環重合体の分子量を調整するために分子量調整剤を添加してもよい。分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;が挙げられる。
添加する分子量調整剤の量は目的とする分子量に応じて決定すればよいが、通常、用いる単量体に対して、0.1〜50モル%の範囲で選択すればよい。
【0035】
重合温度は特に制限はないが、通常−78℃〜+200℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜+180℃の範囲である。重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、通常1分間から1000時間の範囲である。
【0036】
上述したような金属化合物(3)を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件でジシクロペンタジエンを含む単量体の開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を得ることができる。
水素添加反応に供するジシクロペンタジエン開環重合体におけるラセモ・ダイアッドの割合は、特に限定されないが、通常60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70〜99%である。ジシクロペンタジエン開環重合体のラセモ・ダイアッドの割合(シンジオタクチック立体規則性の度合い)は、開環重合触媒の種類を選択すること等により、調節することが可能である。
【0037】
水素添加反応に供するジシクロペンタジエン開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算で10,000〜100,000であることが好ましく、15,000〜80,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量を有するジシクロペンタジエン開環重合体から得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いると、成形性に優れ、得られた成形体の耐熱性に優れる点で好ましい。ジシクロペンタジエン開環重合体の重量平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量等を調節することにより、調節することができる。
水素添加反応に供するジシクロペンタジエン開環重合体の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)〕は、特に限定されないが、通常1.5〜4.0であり、好ましくは1.6〜3.5である。このような分子量分布を有するジシクロペンタジエン開環重合体から得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いると、成形性に優れる点で好ましい。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の分子量分布は、開環重合反応時における単量体の添加方法や単量体の濃度により、調節することができる。
ジシクロペンタジエン開環重合体の水素添加反応(主鎖二重結合の水素化)は、水素化触媒の存在下で、反応系内に水素を供給することにより行うことができる。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素添加反応に際して一般に使用されているものであれば使用可能であり、特に制限されないが、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0038】
均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせが挙げられる。さらに、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒が挙げられる。
不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の触媒系が挙げられる。
【0039】
水素添加反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。このような不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、通常は、重合反応に用いる溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
【0040】
水素添加反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜10時間である。
ジシクロペンタジエン開環重合体の水素添加反応における水素添加率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高くなるほど、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の耐熱性が良好なものとなる。
【0041】
以上のようにして得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物では、水素添加反応に供した開環重合体が有するシンジオタクチック立体規則性が維持される。したがって、得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物は、シンジオタクチック立体規則性を有する。本発明に用いるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物におけるラセモ・ダイアッドの割合は、その水素添加物が結晶性を有する限りにおいて特に限定されないが、通常60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70〜99%である。
【0042】
水素化反応で重合体のタクチシチーが変化することはないので、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を水素添加反応に供することにより、シンジオタクチック立体規則性を有することに基づいて結晶性を有する、ジシクロペンタジエン由来の繰返し単位を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を得ることができる。
【0043】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合は、
13C−NMRスペクトルを測定し、該スペクトルデータに基づいて定量することができる。ジシクロペンタジエンの開環重合体水素添加物の場合、1,3,5−トリクロロベンゼン−d3/オルトジクロロベンゼン−d4の混合溶媒(混合割合:2/1)を溶媒として、200℃で
13C−NMR測定を行い、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比からラセモ・ダイアッドの割合を決定できる。
【0044】
本発明に係わるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物は、結晶性を有するものである限りにおいて、その融点は特に限定されないが、260〜275℃の融点を有することが好ましい。このような融点を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いることによって、特に成形性と耐熱性とのバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点は、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を調節したり、用いる単量体の種類を選択したりすること等により、調節することができる。
【0045】
2.ラジカル開始剤
本発明に用いられるラジカル開始剤は、熱によりラジカルを発生させる化合物であり、過酸化物が好適に用いられる。
過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用され、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−(2−t一ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。
【0046】
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100重量部に対して、通常0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量部である。
【0047】
3.エチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物
本発明に用いられるエチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物は、シランカップリング剤やオレフィン含有カルボン酸誘導体が挙げられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等の、有機官能基がビニル基を含むものであるアルコキシシラン化合物;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の、有機官能基がエポキシ基を含むものであるアルコキシシラン化合物;p−スチリルトリメトキシシラン等の、有機官能基がスチリル基を含むものであるアルコキシシラン化合物;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の、有機官能基が(メタ)アクリル基を含むものであるアルコキシシラン化合物;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等の、有機官能基がアミノ基を含むものであるアルコキシシラン化合物;トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等の、有機官能基がイソシアヌレート基を含むものであるアルコキシシラン化合物;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等の、有機官能基がウレイド基を含むものであるアルコキシシラン化合物;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の、有機官能基がメルカプト基を含むものであるアルコキシシラン化合物;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の、有機官能基がスルフィド基を含むものであるアルコキシシラン化合物;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の、有機官能基がイソシアネート基を含むものであるアルコキシシラン化合物;等が挙げられる。
シランカップリング剤を用いることで、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物に、各種の有機官能基を有するアルコキシシリル基が導入される。
【0048】
オレフィン含有カルボン酸誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸ジメチル、フマール酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、シトラコン酸ジメチル等のジカルボン酸ジエステル類;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、テトラヒドロフタル酸ジメチル、メチルテトラヒドロフタル酸ジエチル、エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸ジメチル、メチル−エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸ジメチル等の環状不飽和カルボン酸エステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物等の不飽和基含有無水物類;等が挙げられる。
オレフィン含有カルボン酸誘導体を用いることで、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物に、カルボン酸残基が導入される。
【0049】
エチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物の使用量は、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0050】
4.結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物は、上述の、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、ラジカル開始剤、及びエチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物を溶融混練することにより得られる。溶融混練に際しては、操作性の観点から有機溶媒を存在させることも可能であるが、フィルムの表面平滑性を高める為には、溶媒不存在下で行うのが好ましい。
【0051】
これらを溶融混練することにより、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物に極性基を導入することができる。
溶融混練する方法は特に限定されないが、例えば、二軸混練機等の軸混練機を用いて、通常260〜340℃、好ましくは265〜320℃、より好ましくは270〜300℃で、通常0.1〜10分、好ましくは0.2〜5分、より好ましくは0.3〜2分程度混練する。温度、滞留時間がこの範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0052】
極性基の導入量は、通常、前記結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物と、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物との合計100重量部に対し、0.05〜3重量部、好ましくは0.2〜3重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。極性基の導入量が多過ぎると、耐湿性が下がる上、例えばアルコキシシリル基を導入した場合には雰囲気中の水分によりアルコキシシリル基が分解され、架橋反応が進行するためゲルが発生したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下する等の問題を生じ易く好ましくない。極性基の導入量が少な過ぎると、金属薄膜との十分な接着力が得られないという不具合が生じるため好ましくない。極性基の導入はIRスペクトルで確認することができる。導入量はIRスペクトルからあらかじめ作成した検量線により算出することができる他、
1H−NMRスペクトル(導入量が少ない場合は積算回数を増やす)によっても算出することもできる。
【0053】
以上のようにして得られる結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の分子量は、導入される極性基の量が少ないため、原料として用いた非極性ジシクロペンタジエン開環重合体及び結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の分子量と実質的には変わらない。
【0054】
5.樹脂材料
本発明の樹脂材料は、前記結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、及び、前記結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含有するものである。
本発明の樹脂材料中における結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物と、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物との含有割合は、〔(結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物):(結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物)の重量比で、100:0〜1:99、好ましくは100:0〜97:3、より好ましくは100:0〜95:5である。結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物と、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物とをこのような割合で含有する樹脂材料は、金属等の極性物質との密着性に優れるため好ましい。
また、本発明において、樹脂材料に導入される極性基量は極性基含有化合物由来の構造単位量が、前記結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物と結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物との合計100重量部に対し、0.05〜3.0重量部と少量のため、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の電気特性を損なうこともない。
【0055】
更に本発明の樹脂材料には、その使用目的に応じた任意の添加剤を配合することができる。そのような配合剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックスやフィッシャートロプシュワックスやポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアゾール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー、及び、軟質重合体等のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物以外の高分子材料;等を例示することができる。
【0056】
これらの添加剤は、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、ラジカル開始剤、及びエチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物からなる混合物を溶融混練する際に、該混合物に添加してもよいし、後述するように、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、及び、所望により、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を混合して樹脂材料を製造する際に、添加してもよい。
【0057】
本発明の樹脂材料は、(α) 結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、ラジカル開始剤、及びエチレン性不飽和結合を有する極性基含有化合物を溶融混練することにより得られる結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、及び所望により添加剤を配合し、混合する方法、(β)結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物、及び、所望により添加剤を所定割合で混合する方法により得ることができる。
【0058】
樹脂材料が、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含有するものである場合、用いる結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物としては、上述の「1.結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物」の項で述べた結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を特に制限なく使用することができる。また、用いる結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物は、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の製造に使用したものと同じものであっても、別のもの(分子量、分子量分布が異なるもの)であってもよい。
【0059】
2)樹脂フィルム
本発明の第2は、本発明の樹脂材料からなるフィルムである。
本発明の樹脂材料を用いてフィルムを得る方法に格別な制限は無いが、溶融押出成形が、厚みの制御が容易であることや、本発明の優れた効果を得る観点から好適である。
溶融押出によるフィルム成形において、シリンダー温度(溶融樹脂温度)は通常250〜330℃、好ましくは260〜310℃;キャストロール温度は通常45〜160℃、好ましくは45〜130℃;冷却ロール温度は通常25〜150℃、好ましくは45〜120℃である。本発明の樹脂組成物を用いて押出成形すると厚さ1μmから1mmのフィルム状成形体(フィルム)を容易に得ることができる。
【0060】
こうして得られるフィルムは、必要に応じて延伸することができる。延伸方法に格別な制限は無く、公知の成型法を用いることができる。例えば、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法、テンター延伸機を用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法等の二軸延伸法;横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いてフィルムの幅方向に対して任意の角度θの方向に連続的に斜め延伸する方法;等が挙げられる。
また、延伸加工において、延伸温度は通常95〜135℃、好ましくは100〜130℃;延伸倍率は通常1.2〜10倍、好ましくは1.5〜5倍である。尚、二軸延伸法を使用した場合、延伸倍率は縦と横の延伸倍率の積によって規定される。
【0061】
延伸フィルムは、加熱処理することで寸法安定性を得ることができる。加熱処理方法に格別な制限は無く、熱処理オーブン内に熱風を吹き込んでもよく、赤外線ヒーターのような輻射熱によって加熱してもよい。
また加熱処理において、処理温度は通常150〜220℃、好ましくは160〜210℃;加熱時間は1〜600分間、好ましくは3〜300分間である。
【0062】
本発明のフィルムの厚みは、通常1μm〜1000μm、好ましくは5μm〜800μm、さらに好ましくは10μm〜500μmである。
【0063】
また、本発明の樹脂材料は、例えば、コネクター、リレー、コンデンサ、センサー、アンテナ、ICトレイ、シャーシ、コイル封止、モーターケース、電源ボックス等の電子部品;LED光反射体;車両用灯具のリフレクタ;自動車用モーターケース、センサケース、モジュール部品ケース等の自動車部品;光学レンズ鏡筒;フレキシブルプリント基板;プリント配線板積層用離型フィルム;太陽電池用基板;電子レンジ、炊飯器、電動ジャーポット、乾燥洗濯機、食器洗い機、エアコン等の家電部品;包装用、梱包用フィルム;食品用シート、トレイ;LEDモールド材;ポンプケーシング、インペラ、配管継ぎ手、浴室パネル等の住設部品等の成形材料としても好適に用いられる。
【0064】
3)積層フィルム
本発明の第3は、本発明のフィルムに金属薄膜が積層されてなる積層フィルムである。
本発明の積層フィルムは、上記のようにして得られる本発明のフィルムに、金属薄膜を積層することで得ることができる。金属薄膜の金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、銀、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
金属薄膜の積層方法に格別な制限はなく、例えば電解めっきにより積層する方法、金属薄膜と樹脂フィルムを重ね合わせて熱圧着する方法、金属薄膜を、ロールプレス機等を用いて積層する方法等が挙げられる。
積層する金属薄膜層の厚みは、特に制約はなく、用途に合わせて選択すればよいが、通常0.01〜500μm、好ましくは0.05〜300μm、さらに好ましくは0.1〜100μmである。
本発明の積層フィルムは、初期のピール強度が高く、また、150℃で200時間経過後においても、ピール強度がほとんど変化せず、金属薄膜との密着性に優れたフィルムである。
【0065】
本発明の積層フィルムは、例えば食品分野、医療分野、電子・電気分野、光学分野、民生分野、土木建築分野等の各種の用途に好適に用いることができる。なかでも、食品分野、医療分野、電子・電気分野、光学分野等の用途に好適である。すなわち、ラップフィルム、シュリンクフィルム、菓子や漬物等の食品包装袋等の食品包装材料;輸液用バッグ、点滴用バッグ、プレス・スルー・パッケージ用フィルム、ブリスター・パッケージ用フィルム等の医療用途向け各種部品;フレキシブルプリント基板用フィルム、フィルムコンデンサー、赤外線レンズ、高周波回路基板フィルム、アンテナ基板フィルム、電池セパレーター用フィルム、離型フィルム等の電気・電子部品;位相差フィルム、偏光フィルム、光拡散シート、集光シート、光カード、タッチパネル基板フィルム、フレキシブルディスプレイ基板フィルム等の光学フィルムとして使用できる。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
(1)ジシクロペンタジエン開環重合体の分子量(重量平均分子量及び数平均分子量)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC−8220(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物における水素化率
1H−NMR測定により求めた。
(3)ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点
示差走査熱量計を用いて、昇温温度:10℃/分で測定した。
【0067】
(4)ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合
1,3,5−トリクロロベンセン−d3/オルトジクロロベンゼン−d4の混合溶媒(混合割合:2/1)を溶媒として、200℃で
13C−NMR測定を行い、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて決定した。
(5)結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の極性基導入量
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物中の極性基の存在の確認は、FT−IR測定装置(製品名「AVATAR360」、サーモサイエンティフィック社製)により透過法で行った。例えば、ビニルトリメトキシシランを導入した場合は、FT−IRスペクトルで、825cm
−1及び739cm
−1に、Si−OCH
3基に基づく吸収帯が観察される。無水マレイン酸を導入した場合は、FT−IRスペクトルで、1790cm
−1にカルボニル基(C=O基)に基づく吸収帯が観察される。
また、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物に対する極性基の導入量もFT−IRにより定量した。導入量は、それぞれの極性基に基づく吸収帯のピーク高さと、結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の、1,2−C=Cに基づく920cm
−1の吸収帯のピーク高さの比を算出し、あらかじめ作成した検量線を用いて算出した。測定時の積算回数は16回とした。
【0068】
(6)樹脂フィルムと金属層の初期ピール強度
引張試験機(製品名「AGS−10kNX」、島津製作所製)での剥離試験により測定した。積層フィルムを固定し、金属層と樹脂層の一部を物理的に引き剥がし、100mm/sの速度で90°に引っ張ることで、その時の剥離強度の測定を行った。
(7)樹脂フィルムと金属層の150℃×200時間の熱処理後のピール強度
オーブンを用いた150℃×200時間の熱処理を行った後、初期ピール強度の測定法と同様の方法により測定を行った。
【0069】
<製造例1>
〔結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の製造〕
内部を充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75%シクロヘキサン溶液40部(ジシクロペンタジエンの量として30部)を仕込み、さらに、シクロヘキサン738部及び1−ヘキセン2.0部を加え、50℃に加温した。一方、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体1.1部を56部のトルエンに溶解した溶液に、19重量%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液4.6部を加えて10分間攪拌し、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を反応器に加えて、開環重合反応を開始させた。その後、50℃を保ちながら、5分毎に75%ジシクロペンタジエン/シクロヘキサン溶液40部を9回添加した後、添加終了後、さらに2時間反応を継続した。
反応終了後、反応液に少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止させた後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ、開環重合体を凝固させた。凝固した重合体をろ過により回収した。得られた開環重合体を減圧下40℃で20時間乾燥した。
重合体の収量は296部(収率=99%)であった。また、この重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、14,200及び27,000であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は1.90であった。
【0070】
続いて、得られた開環重合体60部とシクロヘキサン261部を耐圧反応容器に加えて攪拌し、重合体をシクロヘキサンに溶解させた後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.039部をトルエン40部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、水素圧4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いでポリマ−を完全に析出させた。析出物を濾取し、濾過物を洗浄後、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を得た。
結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素化率は99%以上、ラセモ・ダイアッドの割合は85%であり、融点は265℃であった。
【0071】
<製造例2>
〔結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Aの製造〕
上記で得られた結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン(製品名「KBM−1003」」、信越シリコーン社製;表中では「VTMS」と表記)2.0部、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM35B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度270℃、スクリュー回転数100rpm、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、水冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、ビニルトリメトキシシランが導入された結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Aのペレット97部を得た。
得られたビニルトリメトキシシランが導入された結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物AのFT−IRスペクトルにおいて、Si−OCH
3基及びSi−CH
2基に由来する吸収帯が観察された。また、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100部に対するビニルトリメトキシシランの導入量は、1.5部であった。
【0072】
<製造例3>
〔結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Bの製造〕
ビニルトリメトキシシランの代わりに、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(製品名「KBM−5103」、信越シリコーン社製;表中では「APTMS」と表記)2.0部を用いたこと以外は、合成例2と同様にして、アルコキシシリル基が導入された結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Bのペレット97部を得た。
得られたアルコキシシリル基を有する結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物BのFT−IRスペクトルにおいて、Si−OCH
3基及びSi−CH
2基に由来する吸収帯が観察された。また、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100部に対するビニルトリメトキシシランの導入量は、1.7部であった。
【0073】
<製造例4>
〔結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Cの製造〕
ビニルトリメトキシシランを3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(製品名「KBM−503」、信越シリコーン社製;表中では「MPTMS」と表記)2.0部を用いたこと以外は、合成例2と同様にして、アルコキシシリル基が導入された結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Cのペレット97部を得た。
得られたアルコキシシリル基を有する結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物CのFT−IRスペクトルにおいて、Si−OCH
3基及びSi−CH
2基に由来する吸収帯が観察された。また、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100部に対するビニルトリメトキシシランの導入量は、1.5部であった。
【0074】
<製造例5>
〔結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Dの製造〕
上記で得られた結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のペレット100部に対して、無水マレイン酸(製品名「CRYSTAL MAN(登録商標)」、日油社製;表中では「MAH」と表記)2.0部、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM35B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度270℃、スクリュー回転数100rpm、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、水冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、無水マレイン酸が導入された結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物Dのペレット97部を得た。
得られた無水マレイン酸が導入された結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物DのFT−IRスペクトルにおいて、C=O基に由来する吸収帯が観察された。また、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物に対する無水マレイン酸の導入量は、1.1部であった。
【0075】
<実施例1>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、商品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASFジャパン社製)0.5部を混合後、二軸押出機(製品名「TEM35B」、東芝機械社製)を用い、樹脂温度270℃、滞留時間30秒の条件で混練し、ストランド状に押出し、水冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、得られた混練物をペレット化した。その後、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(製品名(「Measuring Extruder Type Me−20/2800 V3」、Optical Control Systems社製)を用い、バレル温度280℃、Tダイ温度290℃、冷却ロール温度90℃、巻取速度2m/分の条件にて、厚み30μm、幅120mmのフィルムを2m/分の速度でロールに巻き取る方法にて、フィルム成形体を得た。
【0076】
ロールに巻き取った樹脂フィルムから100mm×100mmのフィルムを切り出し、同じ大きさに切断した厚さ12μmの電解銅箔商品名F3−WS−12、表面粗さ(十点平均粗さRz):2.4μm、古河金属社製)を積層した。この積層フィルムを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、雰囲気を200Paに減圧して、温度150℃、圧着圧力0.1MPaで60秒間、加熱圧着した(一次プレス)。さらに、金属製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、温度150℃、圧着圧力1.0MPaで90秒間、加熱圧着(二次プレス)し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの初期および熱処理後のピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0077】
<実施例2>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部の代わりに、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物30部、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B70部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。
得られた樹脂フィルムについて、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを作製し、そのピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0078】
<実施例3>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部の代わりに、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物70部、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B30部を用いた以外は、実施例2と同様の方法によりフィルム成形体を得た。
得られた樹脂フィルムについて、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを作製し、そのピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0079】
<実施例4>
実施例3で得られた樹脂フィルムに、特開2008−94923号で開示された方法及び条件により銅を積層させた。まず、グリオキシル酸浴と、次亜リン酸浴の2種類を用いて、厚さ0.5μmの無電解銅めっき薄膜を形成した。その後、この銅薄膜上に、硫酸酸性銅めっき液を用い、液温25℃、電流密度3.33A/dm
2で電解し、厚さ20μmの電解銅皮膜を形成した。
得られた積層フィルムについて、実施例と同様の方法により、ピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0080】
<実施例5>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部の代わりに、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物70部、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物A30部を用いた以外は、実施例2と同様の方法によりフィルム成形体を得た。
得られた樹脂フィルムについて、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを作製し、そのピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0081】
<実施例6>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部の代わりに、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物70部、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物C30部を用いた以外は、実施例2と同様の方法によりフィルム成形体を得た。
得られた樹脂フィルムについて、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを作製し、そのピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0082】
<実施例7>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部の代わりに、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物70部、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物D30部を用いた以外は、実施例2と同様の方法によりフィルム成形体を得た。
得られた樹脂フィルムについて、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを作製し、そのピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0083】
<実施例8>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部の代わりに、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物95部、結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B5部を用いた以外は、実施例2と同様の方法によりフィルム成形体を得た。
得られた樹脂フィルムについて、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを作製し、そのピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0084】
<比較例1>
結晶性極性基含有ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物B100部の代わりに、結晶性非極性ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100部を用いた以外は、実施例2と同様の方法によりフィルム成形体を得た。
得られた樹脂フィルムについて、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを作製し、そのピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1より、実施例1〜8の積層フィルムは、初期のピール強度が高く、また、150℃200時間経過後においても、ピール強度がほとんど変化せず、金属薄膜との密着性に優れたフィルムであることがわかる。