特許第6565907号(P6565907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565907
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】複層フィルム及び巻回体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20190819BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20190819BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   B32B27/00 Z
   B32B7/023
   G02B5/30
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-523509(P2016-523509)
(86)(22)【出願日】2015年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2015065117
(87)【国際公開番号】WO2015182614
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-112927(P2014-112927)
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】須田 和哉
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−061712(JP,A)
【文献】 特開2011−112945(JP,A)
【文献】 特開2010−221625(JP,A)
【文献】 特開2013−075429(JP,A)
【文献】 特開2007−076046(JP,A)
【文献】 特開2014−012372(JP,A)
【文献】 特開2010−017932(JP,A)
【文献】 特開2013−060555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65H 18/00−18/28
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の光学フィルムと、前記長尺の光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムとを備える長尺の複層フィルムであって、
前記光学フィルムは、オレフィン重合体、ポリエステル重合体、ポリアリーレンサルファイド重合体、ポリビニルアルコール重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアリレート重合体、セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリスルホン重合体、ポリアリルスルホン重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ノルボルネン重合体、棒状液晶ポリマー、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体又は他のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体、ポリアクリロニトリル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体、及びこれらの多元共重合ポリマーのいずれか1種又は2種以上の重合体を含む樹脂からなる、1層のみからなる単層フィルム又は2層以上の層を備える多層フィルムであり、
前記保護フィルムは、前記光学フィルムに粘着する粘着層と、この粘着層における前記光学フィルムとは反対側に位置し、前記光学フィルムとは粘着しない背面層と、を備え、
前記光学フィルムの、前記保護フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さR1、前記保護フィルムの、前記光学フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さR2、前記光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1、及び前記保護フィルムの長手方向の引張弾性率M2が、下記式(1)〜(6)の関係を満たす、複層フィルム。
0.01μm≦R1≦0.05μm (1)
0.01μm≦R2≦0.2μm (2)
1,500MPa≦M1≦3,000MPa (3)
2,500MPa≦M2≦6,000MPa (4)
1.0≦R2/R1≦5.0 (5)
1.≦M2/M1≦3.0 (6)
【請求項2】
前記光学フィルムの厚さが15〜50μmである、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項3】
前記光学フィルムに含まれる前記重合体が、ノルボルネン重合体;スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体又は他のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;又はこれらの両方である、請求項1又は2に記載の複層フィルム。
【請求項4】
前記光学フィルムは、b層/a層/b層の層構成を有する多層フィルムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項5】
前記a層は、ポリスチレン系重合体を含む樹脂からなる層である、請求項4に記載の複層フィルム。
【請求項6】
前記b層は、ポリメチルメタクリレート重合体を含む樹脂からなる層である、請求項4又は5に記載の複層フィルム。
【請求項7】
前記背面層は、ポリエステル系重合体を含む樹脂からなる層である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項8】
前記背面層は、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂からなる層である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項9】
R2/R1が、1.5以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項10】
前記背面層は、重合体を含む樹脂からなる層であり、前記樹脂は粒子を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項11】
前記粒子が無機粒子である、請求項10に記載の複層フィルム。
【請求項12】
前記背面層を形成する前記樹脂全量中の前記粒子の割合は、0.05重量%以上1.0重量%以下である請求項10又は11に記載の複層フィルム。
【請求項13】
前記粒子の粒径が、0.01〜10μmである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項14】
前記背面層の厚さは、前記粘着層の厚さとの比(粘着層/背面層)で、1/40以上1/1以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の複層フィルムをロール状に巻回してなる巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層フィルム及び巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等の表示装置においては、位相差フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムを設けることが知られている。このような光学フィルムは、製造効率の観点から、ある程度の量をまとめて長尺状に製造し、この長尺のフィルムを巻回体として保存する。一定期間保存後に巻回体から長尺フィルムを引き出し、必要に応じて他の長尺フィルムとロールトゥロール法等により貼り合わせ、その後、打ち抜き等の成型を施した後で液晶表示装置等に組み込んで利用されている。
【0003】
長尺の光学フィルムを巻回する際、光学フィルムの保護やハンドリング性の向上のため、光学フィルムに保護フィルムを貼合する技術が知られている(特許文献1参照)。光学フィルムに保護フィルムを貼合して複層フィルムとし、この複層フィルムを巻回して巻回体とすることにより、有利な効果を得うる。例えば、巻回及び引き出しの際の取り扱い性を向上させたり、光学フィルム同士の貼り付き等による破損を防止したり、粉塵等から光学フィルムを保護したりすることができる。このような用途に用いる保護フィルムは、作業の便宜のため、多くの場合、光学フィルムとの貼合に先立ち長尺のフィルムとして調製される。かかる長尺のフィルムは、通常、巻回して巻回体とした状態で保存され、光学フィルムとの貼合に先立ち巻回体から引き出され、使用に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−112945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複層フィルムを巻回して巻回体とする場合、巻回体にゲージバンド(巻回体の幅方向の特定部分に発生した、帯状の凹部又は凸部)、巻きシワ等の不良が生じることがある。このような不良が生じた場合、光学フィルムの形状が変形し、光学的な欠陥をもたらす可能性がある。また、現実の商取引においては、例え性能上の損失が無くても、巻き姿の良好でないことを理由として製品価値を低く評価されることがある。このため、光学フィルムの巻回体においては、かかる不良を抑制して、巻き姿を良好に保つ技術が求められている。
【0006】
このような巻回体の不良を低減するために、複層フィルムを構成する保護フィルムとして、特定の性状を有するものが用いられる場合がある。例えば、複層フィルムにおいて光学フィルムと貼合される面と反対側の面においてある程度以上高い粗さを有し、且つ弾性率が低く従って変形し易い保護フィルムを用いうる。そのような保護フィルムを用いることにより、複層フィルムの巻回において巻き込まれる空気の量を低減し、ひいてはゲージバンド、巻きシワ等の不良を抑制できる可能性がある。
【0007】
しかしながら、そのような保護フィルムを用いた場合、保護フィルム表面の凹凸形状(表面の凹み、突起、又はこれらの両方)の転写等の現象に起因し、光学フィルムの表面に、不所望な凹凸形状を付与してしまうことがある。そのような凹凸形状は、光学的な欠陥をもたらす可能性がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、巻回体とした場合のゲージバンド、巻きシワ等の不良の発生が抑制され、且つ、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生が抑制される、複層フィルムを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、ゲージバンド、巻きシワ等の不良の発生が抑制され、且つ、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生が抑制された、複層フィルムの巻回体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題を解決するべく検討し、その結果、光学フィルム及び保護フィルムの表面粗さ及び弾性率、並びにこれらの比率を所定の範囲とすることにより、前記課題を解決しうることを見出した。特に、保護フィルムとして、従来適しているとされていた範囲よりも高い引張弾性率を有するものを用い、さらに光学フィルムの引張弾性率、光学フィルム及び保護フィルムの表面粗さ、及びこれら二者の引張弾性率の比及び表面粗さの比を所定の範囲とすることにより、ゲージバンド、巻きシワ等の不良の発生が抑制され、且つ、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下の〔1〕〜〔5〕が提供される。
【0010】
〔1〕 長尺の光学フィルムと、前記長尺の光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムとを備える長尺の複層フィルムであって、
前記光学フィルムの、前記保護フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さR1、前記保護フィルムの、前記光学フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さR2、前記光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1、及び前記保護フィルムの長手方向の引張弾性率M2が、下記式(1)〜(6)の関係を満たす、複層フィルム。
0.01μm≦R1≦0.05μm (1)
0.01μm≦R2≦0.2μm (2)
1,500MPa≦M1≦3,000MPa (3)
2,500MPa≦M2≦6,000MPa (4)
1.0≦R2/R1≦5.0 (5)
1.0≦M2/M1≦3.0 (6)
〔2〕 前記光学フィルムの厚さが15〜50μmである、〔1〕に記載の複層フィルム。
〔3〕 前記光学フィルムは、b層/a層/b層の層構成を有する多層フィルムであり、
前記a層は、ポリスチレン系重合体を含む樹脂からなる層であり、
前記b層は、ポリメチルメタクリレート重合体を含む樹脂からなる層である、〔1〕または〔2〕に記載の複層フィルム。
〔4〕 前記保護フィルムは、前記光学フィルムに粘着する粘着層と、この粘着層における前記光学フィルムとは反対側に位置し、前記光学フィルムとは粘着しない背面層と、を備える、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の複層フィルム。
〔5〕 前記背面層は、重合体を含む樹脂からなる層であり、前記樹脂は粒子を含む、〔4〕に記載の複層フィルム。
〔6〕 前記背面層を形成する前記樹脂全量中の前記粒子の割合は、0.05重量%以上1.0重量%以下である〔5〕に記載の複層フィルム。
〔7〕 前記粒子の粒径が、0.01〜10μmである、〔5〕又は〔6〕に記載の複層フィルム。
〔8〕 前記背面層の厚さは、前記粘着層の厚さとの比(粘着層/背面層)で、1/40以上1/1以下である、〔4〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の複層フィルム。
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の複層フィルムをロール状に巻回してなる巻回体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複層フィルムは、巻回体とした場合のゲージバンド、巻きシワ等の不良の発生が抑制され、且つ、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生が抑制されるので、巻回体としての保存及び運搬に適した複層フィルムとしうる。
本発明の巻回体は、ゲージバンド、巻きシワ等の不良の発生が抑制され、且つ、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生が抑制されるので、複層フィルムの保存及び運搬に適した巻回体としうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る、複層フィルムを巻回した巻回体を模式的に示す概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る複層フィルムの断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
本願において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、少なくとも200倍程度以上の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムは、幅に対して、好ましくは300倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有しうる。長さの上限は、特に限定されないが、例えば、幅の10000倍以下としうる。
【0015】
[1.1.複層フィルム:概要]
本発明の複層フィルムは、長尺の光学フィルムと、長尺の光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムとを備える。通常、本発明の複層フィルムは、長尺の光学フィルムと、長尺の保護フィルムとを1層ずつ備え、これらが貼合された構造を有する。
図1は、本発明の一実施形態に係る、複層フィルムを巻回した巻回体を模式的に示す概略図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る複層フィルムの断面を模式的に示す断面図である。
図1に示す通り、巻回体10は、複層フィルム100をロール状に巻回してなるものである。また、図2に示す通り、複層フィルム100は、長尺の光学フィルム120と、光学フィルム120に剥離可能に貼合された長尺の保護フィルム110とを備えるフィルムである。
【0016】
[1.2.複層フィルムの性状]
本発明の複層フィルムにおいては、光学フィルムの、保護フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さR1、保護フィルムの、光学フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さR2、光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1、及び保護フィルムの長手方向の引張弾性率M2が、下記式(1)〜(6)の関係を満たす。
0.01μm≦R1≦0.05μm (1)
0.01μm≦R2≦0.2μm (2)
1,500MPa≦M1≦3,000MPa (3)
2,500MPa≦M2≦6,000MPa (4)
1.0≦R2/R1≦5.0 (5)
1.0≦M2/M1≦3.0 (6)
【0017】
図2の例を参照して説明すると、R1は、光学フィルム120の、保護フィルム側の面120Yとは反対側の面120Xの三次元中心線平均粗さである。R2は、保護フィルム110の、光学フィルム側の面110Yとは反対側の面110Xの三次元中心線平均粗さである。
【0018】
以下においては、光学フィルムの保護フィルム側の面を光学フィルムの正面、光学フィルムの保護フィルム側の面とは反対側の面を光学フィルムの背面ということがある。また、保護フィルムの光学フィルム側の面を保護フィルムの正面、保護フィルムの光学フィルム側の面とは反対側の面を保護フィルムの背面ということがある。
【0019】
式(1)に示す通り、光学フィルムの背面の三次元中心線平均粗さR1は、0.01μm以上であり、0.05μm以下である。R1は、好ましくは0.04μm以下である。R1が0.01μm未満であると、複層フィルムを巻回して巻回体とする際に巻き込まれる空気の量が少なくなり、ゲージバンド等の不良が発生しやすくなる。R1が0.05μmを超えると、複層フィルムを巻回して巻回体とする際に巻き込まれる空気の量が多くなりすぎ、巻きずれが発生しやすくなる。
式(2)に示す通り、保護フィルムの背面の三次元中心線平均粗さR2は、0.01μm以上であり、0.20μm以下である。R2は、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.03μm以上であり、一方好ましくは0.18μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。R2が0.01μm未満であると、複層フィルムを巻回して巻回体とする際に巻き込まれる空気の量が少なくなり、ゲージバンド等の不良が発生しやすくなる。R2が0.20μmを超えると保護フィルムから光学フィルムに不所望な凹凸形状が転写されやすくなる。
式(5)に示す通り、R2とR1との比R2/R1は、1.0以上であり、5.0以下である。R2/R1は、好ましくは1.5以上であり、一方好ましくは4.5以下である。
【0020】
R1及びR2が前記範囲内である場合において、R2/R1の値が前記下限以上であると、複層フィルムを巻回して巻回体とする際に巻き込まれる空気の量を低減し、ひいてはゲージバンド、巻きシワ等の不良を抑制することができる。一方、R1及びR2が前記範囲内である場合において、R2/R1の値が前記上限以下であることにより、保護フィルムの凹凸形状が光学フィルムに転写することを抑制し、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生を抑制することができる。R1及びR2の値は、光学フィルムと保護フィルムとの貼合前後で変化しない場合は、貼合前の光学フィルム及び保護フィルムについて背面の三次元中心線平均粗さを測定し、それをR1及びR2とすることができる。三次元中心線平均粗さは、表面粗さ計(ミツトヨ社製、製品名「SJ400」)を用い、JIS B 0601:1994に基づき測定しうる。
【0021】
式(3)に示す通り、光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1は、1,500MPa以上であり、3,000MPa以下である。M1は、好ましくは1,600MPa以上、より好ましくは1,800MPa以上であり、一方好ましくは2,700MPa以下、より好ましくは2,500MPa以下である。前記M1が1500MPa未満であると、巻きシワ等の外観不良が発生する。M1が3000MPaを超えると、異物由来の不所望な押痕が発生しやすくなる。
式(4)に示す通り、保護フィルムの長手方向の引張弾性率M2は、2,500MPa以上であり、6,000MPa以下である。M2は、好ましくは3,000MPa以上、より好ましくは3,500MPa以上であり、一方好ましくは5,500MPa以下、より好ましくは5,000MPa以下である。前記M2が2500MPa未満であると、巻きシワ等の外観不良が発生する。M2が6000MPaを超えると、光学フィルムへの不所望な凹凸の転写が強くなるおそれがある。
式(6)に示す通り、M2とM1との比M2/M1は、1.0以上であり、3.0以下である。M2/M1は、好ましくは1.5以上であり、一方好ましくは2.5以下である。
【0022】
M1及びM2が前記範囲内である場合において、M2/M1の値が前記下限以上であることにより、複層フィルムのこしを適度な高い値とすることができ、その結果、良好な外観の巻回体を形成することができる。一方、M1及びM2が前記範囲内である場合において、M2/M1の値が前記上限以下であることにより、保護フィルムの凹凸形状が光学フィルムに転写することを抑制し、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生を抑制することができる。引張弾性率はJIS K 7113に則り、引張試験機(インストロン社製、5564型デジタル材料試験機)により測定しうる。光学フィルム及び保護フィルムの引張弾性率は、これらを貼合し複層フィルムとする前の時点において測定しうる。保護フィルムが、粘着面を保護する離型フィルムを備え、この離型フィルムを剥離した後に光学フィルムと貼合し複層フィルムを得る場合は、かかる離型フィルムを剥離した状態で引張弾性率を測定する。
【0023】
複層フィルムの幅及び長さは、特に限定されず、保護及び保存の対象である光学フィルムの幅及び長さに適合し、且つ巻回体を製造し巻回体の状態で保存するのに適した幅及び長さとしうる。例えば、複層フィルムの幅は、800mm以上が好ましく、1,000mm以上がより好ましい。一般に、幅が広いフィルムを巻回した巻回体はシワ又はゲージバンドが生じやすい。しかし、本発明の複層フィルムは、このように広い幅を有する場合であっても、巻回したときに良好な巻き姿を実現することができる。また、複層フィルムの幅の上限は、通常2500mm以下としうる。
【0024】
[1.3.光学フィルム]
複層フィルムを構成する光学フィルムは、光学用途に用いる任意の長尺のフィルムとしうる。光学フィルムの例としては、位相差フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、集光フィルム、及び反射フィルムが挙げられる。
【0025】
光学フィルムの材料は、通常は樹脂であり、好ましくは熱可塑性樹脂である。樹脂としては、各種の重合体を主成分として含むものを用いうる。かかる重合体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル重合体、ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド重合体、ポリビニルアルコール重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアリレート重合体、セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリスルホン重合体、ポリアリルスルホン重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ノルボルネン重合体、棒状液晶ポリマー、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体または他のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体、ポリアクリロニトリル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体、及びこれらの多元共重合ポリマーが挙げられる。スチレン誘導体の例としては、スチレンのベンゼン環またはα位に置換基が置換したものが挙げられる。この置換基の例としては、メチル基等のアルキル基、塩素等のハロゲン原子、メトキシキ等のアルコキシ基が挙げられる。スチレン誘導体の具体的な例としては、メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等のアルキルスチレン;クロロスチレン等のハロゲン化スチレン;クロロメチルスチレン等のハロゲン置換アルキルスチレン;及びメトキシスチレン等のアルコキシスチレンが挙げられる。スチレン及びスチレン誘導体のうちでは、置換基を有しないスチレンが好ましい。
これらの重合体としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0026】
光学フィルムの材料としての樹脂は、粒子を含みうる。粒子は、重合体からなるものであってもよく、重合体以外の成分からなるものであってもよい。重合体からなる粒子の例としては、アクリル系ゴム粒子等のゴム粒子が挙げられる。アクリル系ゴム粒子は、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸アルキルエステルを主成分とし、多官能モノマーの存在下に重合させて得られるゴム弾性を有する粒子である。樹脂(光学フィルムが複数種類の樹脂の層を有する場合、背面を形成する樹脂)全量中の粒子の割合は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、一方好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。また粒子の粒径は、数平均粒径として、50〜1,000nmであることが好ましい。この範囲内で粒子の割合及び粒径を調整することにより、光学フィルムの背面に、所望の三次元中心線平均粗さR1を付与することができる。
【0027】
光学フィルムの材料としての樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上に述べた成分以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、防曇剤、離型剤、顔料、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤等の公知の添加剤などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、任意成分の量は本発明の効果を損なわない範囲であり、重合体100重量部に対して、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下であり、下限はゼロである。
【0028】
光学フィルムの材料として、上に挙げた材料のいずれかを適宜選択することにより、所望の光学的特性と、所望の引張弾性率M1とを兼ね備える光学フィルムを得うる。
【0029】
光学フィルムは、1層のみからなる単層フィルムであってもよく、2層以上の層を備える多層フィルムであってもよい。光学フィルムが2層以上の層を備える場合、それぞれの層は、上で述べた樹脂からなる層としうる。光学フィルムが2層以上の層を備える場合、これらの層を構成する材料は同じであってもよく異なっていてもよい。特に好適な多層フィルムの例としては、1層以上の、ポリスチレン系重合体を含む樹脂からなるa層、及び1層以上の、ポリメチルメタクリレート重合体を含む樹脂からなるb層を含むものが挙げられる。a層及びb層を含む多層フィルムの好ましい例としては、b層/a層/b層の層構成を有する多層フィルム、即ち、a層と、そのおもて面及び裏面に接して設けられた一対のb層とを含む多層フィルムが挙げられる。
【0030】
図2の例を再び参照して説明すると、複層フィルム100の構成要素である光学フィルム120は、a層としての層122aと、層122aの正面側の面及び背面側の面に接して設けられた、b層としての層121b及び123bとを含む。この場合、層123bの材料として、上に述べた粒子を、割合を調整して添加することにより、光学フィルム120の背面120Xに所望の背面三次元中心線平均粗さR1を付与することができる。また、層121b、122a及び123bの厚さを適宜調整することにより、光学フィルムとしての所望の光学特性を得ることができる。特に、ポリスチレン系重合体が負の固有複屈折値を有することを利用し、位相差フィルム等の光学フィルムとしての所望の光学特性を得ることができる。さらに、層121b、122a及び123bの材料を適宜選択することにより、所望の引張弾性率M1を得ることができる。
【0031】
光学フィルムの厚さは、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、一方好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下である。本発明の複層フィルムを構成することにより、前記上限以下の厚みを有する薄い光学フィルムであっても、ゲージバンド、巻きシワ等の不良の発生が抑制された状態で、且つ、不所望な凹凸形状の発生が抑制された状態で、巻回体として保存することが可能となる。
【0032】
光学フィルムの厚さは、オンライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用いて測定しうる。具体的には、搬送中の光学フィルムを、幅方向2mm間隔で、搬送速度は10m/分で、フィルム幅方向に少なくとも10回以上測定した全測定結果(即ち、幅方向に分布する10以上の測定点において測定した全測定結果)の平均値からフィルム幅方向の平均厚みを算出し、この値を光学フィルムの厚さとしうる。
【0033】
光学フィルムの幅及び長さは、特に限定されず、所望の用途に用いうる幅及び長さとしうる。具体的には、上に述べた複層フィルムの幅及び長さと同様の幅及び長さとしうる。
【0034】
光学フィルムは、通常、高い透明性を有する。具体的には、光学フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。なお、上限は理想的には100%である。ここで、全光線透過率は、JIS K7361−1997に準拠して測定しうる。
また、光学フィルムは、用途にもよるが、通常はヘイズが小さい。具体的には、光学フィルムのヘイズは、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。なお、下限値は理想的にはゼロであるが、通常は0.1%以上である。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して測定しうる。
【0035】
光学フィルムは、任意の製造方法により製造しうる。製造方法の例としては、溶融成形法、及び溶液流延法が挙げられる。溶融成形法のより具体的な例としては、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れた光学フィルムを得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも位相差の発現をより確実に抑制しながらも効率よく簡単に光学フィルムを製造できる観点から、押出成形法が特に好ましい。
【0036】
また、光学フィルムを多層フィルムとして製造する場合、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形方法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法;ある層に対してそれ以外の層を構成する樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率が良く、光学フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形方法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0037】
さらに、光学フィルムの製造方法においては、必要に応じて、フィルムを延伸する延伸工程を行いうる。
【0038】
[1.4.保護フィルム]
保護フィルムは、光学フィルムを保護するため、光学フィルムに貼合され複層フィルムを構成する長尺のフィルムである。通常、保護フィルムは、他の層を介さずに、光学フィルムの表面に直接に貼り合わせられる。
保護フィルムとしては、光学フィルムから剥離可能なフィルムを用いる。即ち、保護フィルムは、光学フィルムと貼合して複層フィルムとすることができ、さらに、光学フィルムの使用時に光学フィルムから剥離することができるフィルムである。
【0039】
保護フィルムとしては、その背面側の三次元中心線平均粗さR2及びその長手方向の引張弾性率M2が、前記式(2)、(4)、(5)及び(6)を充足するものを用いる。このような引張弾性率M2及び背面三次元中心線平均粗さR2を有する保護フィルムは、例えば、その材料を適宜選択し、当該材料の成分を適宜調整することにより得うる。
【0040】
光学フィルムの正面と保護フィルムの正面とが接するようにこれらを貼合して複層フィルムとした後の、光学フィルムと保護フィルムとの剥離のし易さの程度は任意に設定しうる。光学フィルムと保護フィルムとの粘着力は、通常20mN/cm以上であり、通常800mN/cm以下、好ましくは400mN/cm以下とする。剥離が容易であるほど好ましいが、あまり容易に剥離できると複層フィルムの巻回時及び引き出し時の剥離を起こすおそれがある。光学フィルムと保護フィルムとの粘着力は、光学フィルムの表面粗さに影響され、一般に光学フィルムの表面粗さが粗いほど、粘着力は低下し得る。保護フィルムの、光学フィルム側の面の材料を適宜選択することにより、ある光学フィルムに対する粘着力を所望の範囲としうる。
【0041】
保護フィルムの厚みは、所望のレベルの光学フィルムの保護が達成されるよう、光学フィルムの厚みに適合させて適宜設定しうる。保護フィルムの厚みは、成形性及びハンドリング性の観点から、好ましくは20μm〜100μmである。
保護フィルムの幅及び長さは、特に限定されず、保護及び保存の対象である光学フィルムの幅及び長さに適合した幅及び長さとしうる。
【0042】
[1.5.多層保護フィルム]
保護フィルムは、1層のみからなる単層構造のフィルムであってもよいが、通常は2層以上の層を備える多層保護フィルムである。保護フィルムの好適な例としては、粘着層及び背面層を備え、さらに必要に応じて粘着層及び背面層の間に中間層を備える多層保護フィルムが挙げられる。
【0043】
図2の例を再び参照して説明すると、複層フィルム100の構成要素である保護フィルム110は、粘着層112と、背面層111とを備える多層保護フィルムである。保護フィルム110の粘着層112側の面は、保護フィルム110の正面側の面110Yを構成し、一方保護フィルム110の背面層側の面は、保護フィルム110の背面側の面110Xを構成する。したがって、粘着層112の材料を適宜選択することにより、保護フィルム110に、所望の、剥離可能な粘着性を付与することができる。また、背面層111の材料を適宜選択することにより、引張弾性率M2及び背面三次元中心線平均粗さR2を所望の値とすることができる。
【0044】
[1.6.多層保護フィルム:粘着層]
多層保護フィルムの粘着層は、粘着剤の層を、背面層等の他の層の表面上に設けることにより形成しうる。
粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを挙げることができる。粘着剤としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0045】
粘着剤の好ましい例としては、一般式A−B−Aもしくは一般式A−Bで表されるブロック共重合体(但し、これらの式中、Aはスチレン系重合体ブロックを表し、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、及びこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックからなる群より選ばれる重合体ブロックを表す。)を含有するゴム系粘着剤;及びアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0046】
前記の一般式A−B−Aもしくは一般式A−Bで表されるブロック共重合体において、スチレン系重合体ブロックAは、重量平均分子量が12,000〜100,000、ガラス転移温度が20℃以上のものが好ましい。また、ブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、及びこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックからなる群より選ばれる重合体ブロックBは、重量平均分子量が10,000〜300,000、ガラス転移温度が−20℃以下のものが好ましい。さらに、上記A成分とB成分の重量比としては、好ましくはA/B=5/95〜50/50であり、より好ましくはA/B=10/90〜30/70である。
【0047】
上記一般式A−B−Aで表されるブロック共重合体の例としては、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン、およびそれらの水素添加体を挙げることができ、一般式A−Bで表されるブロック共重合体の例としては、スチレン−エチレン/プロピレン、およびスチレン−エチレン/ブチレンおよびそれらの水素添加体を挙げることができる。
【0048】
アクリル系粘着剤に含まれるアクリル重合体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、等の単独重合体もしくは共重合体を挙げることができる。本願において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート又はこれらの組み合わせを意味し、(メタ)アクリルとはアクリル、メタクリル又はこれらの組み合わせを意味する。
【0049】
アクリル重合体の好ましい例としては、上に例示したもの等の単量体と、官能基を有するアクリル系単量体とを含む単量体組成物の共重合体が挙げられる。官能基を有するアクリル系単量体の例としては、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸などを挙げることができる。官能基を有するアクリル系単量体としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0050】
アクリル系粘着剤は、必要に応じて架橋剤を含みうる。架橋剤は、共重合体が有する官能基と熱架橋反応し、最終的には三次元網状構造を形成する化合物である。架橋剤を含むことにより、保護フィルムにおける粘着層と他の層(中間層、背面層等)との密着性、保護フィルムの強靱性、耐溶剤性、耐水性等を向上させることができる。架橋剤の例としては、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物、エポキシ系化合物、アミノ系化合物、アミド系化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、及びそれらの変性体が挙げられる。架橋剤としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
粘着層の架橋性及び強靱性等の観点から、架橋剤としては、イソシアネート系化合物およびその変性体を使用することが好ましい。イソシアネート系化合物とは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、芳香族系と脂肪族系の化合物に大別される。芳香族系のイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、及びパラフェニレンジイソシアネートが挙げられる。また、脂肪族系のイソシアネート系化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートが挙げられる。さらに、これらのイソシアネート系化合物の変性体の例としては、イソシアネート系化合物のビゥレット体、イソシアヌレート体、及びトリメチロールプロパンアダクト体が挙げられる。
【0052】
粘着剤が架橋剤を含む場合、粘着剤は、架橋反応を促進させるために、ジブチルスズラウレート等の架橋触媒をさらに含んでもよい。
【0053】
粘着剤は、必要に応じて粘着付与性重合体を含みうる。粘着付与性重合体の例としては、芳香族炭化水素重合体、脂肪族炭化水素重合体、テルペン重合体、テルペンフェノール重合体、芳香族炭化水素変性テルペン重合体、クロマン・インデン重合体、スチレン系重合体、ロジン系重合体、フェノール系重合体、キシレン重合体等が挙げられ、中でも低密度ポリエチレン等の脂肪族炭化水素重合体が好ましい。ただし、具体的な粘着付与性重合体の種類は、前記のブロック共重合体との相溶性、樹脂の融点、および粘着層の粘着力の点から、適宜選択される。粘着付与性重合体としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
粘着付与性重合体の量は、例えば前記のブロック共重合体100重量部に対しては、好ましくは5重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。粘着付与性重合体の量が少なすぎると光学フィルムと貼り合わせた場合に保護フィルムの浮きや剥がれが発生する可能性があり、量が多すぎると繰り出し張力が高くなり、光学フィルムとの貼り合わせの際にしわや傷が生じたり、粘着付与重合体のブリードアウトが発生して粘着力が低下しやすくなったりする可能性がある。
【0055】
粘着剤は、必要に応じて、軟化剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(染料または顔料など)などの添加剤を含みうる。添加剤としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
軟化剤の例としては、プロセスオイル、液状ゴム、及び可塑剤が挙げられる。
充填剤の例としては、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、及び酸化チタンが挙げられる。
【0056】
粘着層の、保護フィルムにおける他の層(中間層、背面層等)に対する粘着力は、2mN/cm以上が好ましく、4mN/cm以上がより好ましく、200mN/cm以下が好ましく、160mN/cm以下がより好ましい。粘着力が低すぎると光学フィルムに貼り合わせた際に保護フィルムの浮きや剥がれが発生する可能性があり、粘着力が高すぎると繰り出し張力が高くなり、光学フィルムとの貼り合わせの際にしわや傷が生じやすくなる可能性がある。
【0057】
粘着層の厚みは、通常1.0μm以上、好ましくは2.0μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。粘着層が薄すぎると粘着力が低くなって保護フィルムの浮きや剥がれが発生する可能性がある。また、粘着層が厚すぎると粘着力が過度に高くなって繰り出し張力が高くなり、光学フィルムとの貼り合わせの際にしわや傷が生じやすくなる可能性がある。また、保護フィルムのコシが強くなって取り扱い性が悪くなる可能性がある。
【0058】
[1.7.多層保護フィルム:背面層]
多層保護フィルムの背面層は、保護フィルムの背面に位置し、光学フィルムとは粘着しない層である。通常、背面層は、重合体を含む樹脂からなる層としうる。背面層を形成する樹脂に含まれる重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。重合体の好適な例としては、ポリエステル系重合体、及びポリオレフィン系重合体が挙げられる。
【0059】
ポリエステル系重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。
【0060】
ポリオレフィン系重合体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。ここで、ポリエチレンの例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。また、エチレン−プロピレン共重合体の例としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。さらに、α−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ペンテン−1、及びヘプテン−1が挙げられる。
【0061】
上述したポリオレフィン系重合体の中でも、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンが、所望のM2等の値を得やすい等の観点から、特に好ましい。
【0062】
背面層を形成する樹脂は、粒子を含みうる。粒子は、重合体からなるものであってもよく、重合体以外の成分からなるものであってもよい。背面層用の粒子の例としては、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子等の無機粒子が挙げられる。背面層を形成する樹脂全量中の粒子の割合は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、一方好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下である。また粒子の粒径は、数平均粒径として、0.01〜10μmであることが好ましい。この範囲内で粒子の割合及び粒径を調整することにより、保護フィルムの背面に所望の三次元中心線平均粗さR2を付与することができる。
【0063】
背面層を形成する樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上に述べた成分以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分の例としては、タルク、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等の充填剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、核剤などの添加剤が挙げられる。任意成分としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
背面層の厚さは、粘着層の厚さとの比(粘着層/背面層)で、通常1/40以上、好ましくは1/20以上であり、通常1/1以下、好ましくは1/2以下である。背面層の厚さが粘着層に比較して薄すぎると成膜性が悪くなってフィッシュアイが多く生じる可能性があり、厚すぎると繰り出し張力が高くなり、保護フィルムを光学フィルムと貼り合わせる際にしわや傷が生じやすくなる可能性がある。
【0065】
[1.8.多層保護フィルム:中間層]
粘着層と背面層との間には、必要に応じて中間層を設けてもよい。中間層は通常は樹脂により形成されるが、中でも、ポリオレフィン系重合体を含む樹脂によって形成することが好ましい。
【0066】
中間層に含まれるポリオレフィン系重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(ランダム共重合体及び/又はブロック共重合体)、α−オレフィン−プロピレン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系重合体としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、中間層に含まれるポリオレフィン系重合体は、前記粘着層及び背面層に含まれる重合体とは異なる種類のポリオレフィン系重合体であることが好ましい。
【0067】
中間層は、必要に応じて、粘着層を形成する材料、及び、背面層を形成する材料を含みうる。通常、共押出成形法で保護フィルムを製造した場合には、端部の厚み不均一な部分はスリット工程等でスリットされ、除却されるが、このようにして除去された部分を中間層の原料として用いることで、使用原料の量を低減できる。
【0068】
中間層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、タルク、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等の充填剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、造核剤等の添加剤を含みうる。添加剤としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0069】
中間層の厚みは、通常13μm〜70μmである。
【0070】
[1.9.保護フィルムの製造方法]
保護フィルムの製造方法に制限はなく、任意の方法を採用しうる。保護フィルムの製造方法の例としては、下記の製造方法(i)〜(iii)が挙げられる。
(i)粘着層の材料及び背面層の材料、並びに必要に応じて中間層の材料を共押し出しする方法。
(ii)背面層のフィルム(又は背面層と中間層とが積層されたフィルム)を用意し、その表面に粘着剤を塗布して粘着層を形成する方法。
(iii)粘着層及び背面層、並びに必要に応じて中間層を別々に用意し、用意した各層を貼り合わせて一体化する方法。
【0071】
製造方法(i)〜(iii)のうち、製造方法(i)は、粘着層と背面層又は中間層との強固な密着が達成しうる点、光学フィルムへの糊残りが起こり難い点、製造工程が簡素化されるためにコストが安価である点、などの点において好ましい。ここで「糊残り」とは、保護フィルムの剥離後に光学フィルムに粘着剤が残留する現象をいう。
【0072】
一方、製造方法(iii)は、均質な厚みの粘着層及び背面層等の層を、簡便に得られる等の点から好ましい。製造方法(iii)は、より具体的には、離型フィルム等の任意のフィルムの上に粘着層の材料となる粘着剤を塗布して粘着層を形成し、これを、背面層又は中間層の表面上に転写することにより行いうる。具体的には、離型フィルム/粘着層の層構成を有する多層フィルムを作成し、これを背面層(又は中間層/背面層の層構成を有する多層フィルム)と貼合して、離型フィルム/粘着層/背面層(又は離型フィルム/粘着層/中間層/背面層)の層構成を有する保護フィルムを調製することができる。さらにこれを光学フィルムと貼合する直前に、離型フィルムを剥離して、保護フィルムとして使用することができる(本願では、保護フィルムについては、離型フィルムを含む多層フィルムも、離型フィルムを剥離した後の多層フィルムも、文脈上明らかな場合は区別せずいずれも「保護フィルム」と呼ぶ場合がある)。
【0073】
保護フィルムの製造においては、必要に応じて、背面層の表面を変形させる操作を行いうる。これにより、保護フィルムの背面側の三次元中心線平均粗さR2を所望の範囲に調整しうる。背面層の表面を変形させる操作は、当該表面に、凹凸構造を有する賦型ロールで押圧する方法;当該表面に、凹凸構造を有する離型フィルムを重ねて加圧し、離型フィルムの凹凸構造を転写する方法;保護フィルムの背面に微粒子を噴射して保護フィルムの背面を切削する方法;などが挙げられる。また、背面層の表面を変形させる工程は、背面層と粘着層とを貼り合わせる前でもよく、後でもよい。
【0074】
保護フィルムの背面には、必要に応じて、表面改質処理を施してもよい。表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。
また、保護フィルムの背面には、必要に応じ印刷を行なってもよい。
【0075】
[1.10.複層フィルムの製造:貼合]
本発明の複層フィルムは、通常、光学フィルムと保護フィルムとを上に述べた方法等の方法により別々に製造し、これらを貼合することにより製造しうる。貼合に際しては、通常、光学フィルム及び保護フィルムの皺及び弛みをなくすため、所定の大きさの張力を光学フィルム及び保護フィルムにかけながら貼合の操作を行なう。貼合は、具体的には、光学フィルム及び保護フィルムを、その長手方向を揃えた状態で、光学フィルムの正面側の面と保護フィルムの正面側の面が接するよう重ね合わせ、光学フィルムの背面及び保護フィルムの背面から加圧することにより行いうる。加圧は、ニップロール等のロールを用いて連続的に行いうる。
【0076】
[2.巻回体]
本発明の巻回体は、前記の長尺の複層フィルムをロール状に巻回してなるものである。長尺の複層フィルムをロール状に巻回する際は、複層フィルムの光学フィルム側の面が内側、保護フィルム側の面が外側になるように巻回することが好ましい。本発明の巻回体においては、複層フィルムの一方の面と、その上に巻回された複層フィルムの別の一方の面とが接する状態となる。即ち、本発明の巻回体においては、保護フィルムの背面と、光学フィルムの背面とが接する状態となる。ここで、光学フィルムの背面三次元中心線平均粗さR1、保護フィルムの背面三次元中心線平均粗さR2、光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1、及び保護フィルムの長手方向の引張弾性率M2が、前記式(1)〜(6)の関係を満たすことにより、巻回体において、ゲージバンド、巻きシワ等の不良の発生が抑制され、且つ、光学フィルム表面における不所望な凹凸形状の発生が抑制される。
【0077】
巻回体の巻回数に制限は無いが、通常40回以上、好ましくは60回以上であり、通常27000回以下、好ましくは13000回以下である。
また、巻回体の外径に制限はないが、通常160mm以上、好ましくは190mm以上であり、通常2300mm以下、好ましくは1200mm以下である。
【0078】
本発明の巻回体は、複層フィルムをロール状に巻回することにより製造される。巻回に際しては必要に応じて適切な巻き芯を用い、当該巻き芯に複層フィルムを巻回することにより製造を行いうる。
複層フィルム10の巻回速度は、通常5m/分以上、好ましくは10m/分以上であり、通常50m/分以下、好ましくは45m/分以下、より好ましくは40m/分以下である。巻回速度を前記範囲の下限値以上とすることにより製造効率を高めることができ、上限値以下とすることにより空気の巻き込み量を抑制することができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。
【0080】
〔評価方法〕
(1)フィルムの厚みの測定方法
光学フィルムの膜厚は、オンライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用い、搬送中の光学フィルムを、幅方向2mm間隔で、搬送速度は10m/分で、フィルム幅方向に少なくとも10回以上測定した全測定結果(即ち、フィルム幅方向10点以上測定した全測定結果)の平均値から算出した。
【0081】
(2)フィルムの引張弾性率の測定方法
フィルムの引張弾性率(M1及びM2)は、JIS K7113に則り、引張試験機(インストロン社製、5564型デジタル材料試験機)にて測定した。測定条件は、引張速度を5m/分、試験回数を5回、室温を23℃、湿度を50%RHとした。
フィルムから、試験片を切り出した。試験片の形状は、フィルムの長手方向に平行な長辺を有する矩形(幅10mm×長辺長さ250mm)とした。この試験片を長辺方向に引っ張って歪ませる際の応力を測定した。測定は、JIS K7113に基づき、恒温恒湿槽付き引張試験機(インストロンジャパン社製の5564型デジタル材料試験機)を用いて行った。測定の条件は、温度23℃、湿度60±5%RH、チャック間距離115mm、引張速度100mm/minとした。このような測定を、3回行った。そして、測定された応力とその応力に対応した歪みの測定データから、試験片の歪が0.6%〜1.2%の範囲で0.2%毎に4点の測定データ(即ち、歪みが0.6%、0.8%、1.0%及び1.2%の時の測定データ)を選択した。3回の測定の4点の測定データ(合計12点)から最小二乗法を用いてフィルムの引張弾性率を計算した。
【0082】
(3)三次元中心線平均粗さの測定方法
光学フィルム及び保護フィルムの背面の三次元中心線平均粗さRa(R1及びR2)は、表面粗さ計(ミツトヨ社製、製品名「SJ400」)を用い、JIS B 0601:1994に基づき測定を行った。
【0083】
(4)外観の評価
巻き上がり後の巻回体の外観を、目視及び触診にて観察し、巻きシワ、ゲージバンド等の不良の有無を評価した。不良が見出されないものは「良好」と評価し、不良が見出されたものについては、どのような不良が見出されたかを記録した。
【0084】
(5)凹凸形状の評価
複層フィルムの巻回体から、複層フィルムを引き出し、保護フィルムを剥離した後、光学フィルムに蛍光灯の光を当て、反射光を観察することにより、光学フィルムの面上の凹凸形状の有無を検査した。観察範囲は、全幅×1mとした。凹凸形状が観察されなかった場合を凹凸形状転写なしとし、凹凸形状が1つ以上観察された場合を転写ありとした。
【0085】
〔製造例1〕
200℃に加熱したエステル化反応器に、テレフタル酸86.4部およびエチレングリコール64.6部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064部、トリエチルアミンを0.16部供給した。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応器を常圧に戻し、リン酸トリメチル0.014部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらに数平均粒子径2.50μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを粒子含有量を基準として0.03部添加した。このシリカ粒子は、シリカ粒子100部に対してナトリウム原子換算で、0.1部のトリポリリン酸ナトリウム水溶液を含む、シリカのエチレングリコールスラリーを予め調製し、これを遠心分離処理して粗粒部を35%カットし、その後、目開き5μmの金属フィルターでろ過処理を行って得られた粒子である。15分後に、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0086】
〔実施例1〕
(1−1.背面層フィルム)
製造例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂に、数平均粒径5.0μmのシリカ粒子を0.05重量%添加し、フィルム原料を調製した。フィルム原料を押出機に供給して溶融して、口金から押出し、冷却ドラム上にキャストして未延伸フィルムを作成した。得られた未延伸フィルムを、延伸温度120℃で、ロール延伸機を用いてMD方向(フィルムの長手方向)に3.5倍延伸し、その後テンター式延伸機を用いてTD方向(フィルムの幅方向)に3.6倍に逐次二軸延伸し、厚さ30μmの背面層フィルム1を得た。
【0087】
(1−2.粘着層)
アクリル酸n−ブチル97重量部とアクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部とを共重合した共重合体100重量部に対して、架橋剤としてポリイソシアネートを1重量部添加し、さらに溶媒としてトルエン200重量部を加え、粘着剤組成物を調製した。
厚さ38μmの離型フィルム(商品名「SP−PET」、三井化学東セロ社製)の離型処理面に、上記で得た粘着剤組成物を、ナイフ式塗工機により、乾燥厚さが20μmになるように塗布し、粘着剤組成物の層を90℃にて1分間加熱乾燥して、粘着層を形成し、離型フィルム/粘着層の層構成を有する複層物を得た。
【0088】
(1−3.保護フィルム)
(1−1)で得られた背面層フィルムの一方の面に、(1−2)で得られた複層物を、粘着層側の面が背面層フィルムに接するよう貼合して、離型フィルム/粘着層/背面層フィルムの層構成を有する保護フィルム(離型フィルム付き)を作製した。
得られた保護フィルムについて、背面層フィルム側の面の三次元中心線平均粗さR2を測定した。また、得られた保護フィルムから離型フィルムを剥離し、長手方向の引張弾性率M2を測定した。
【0089】
(1−4.光学フィルム)
樹脂Aとして、固有複屈折値が負の樹脂であるスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(ノヴァケミカルジャパン社製、品名ダイラークD332)を用意した。
また、樹脂Bとして、ゴム粒子を含むメタクリル樹脂組成物(スミペックスHT50Y:住友化学社製)を用意した。
樹脂A及び樹脂Bを、3種3層(3種類の樹脂により3層からなるフィルムを形成するタイプのもの)の共押出成形用のフィルム成形装置に供給し、マルチマニホールドダイから同時に押し出しフィルム状にした。このようにフィルム状に共押出しされた溶融樹脂を、表面が鏡面の冷却ロール(表面のRa=0.01μm)にキャストし、次いで2本の冷却ロール間に通して、樹脂Aからなるa層と、樹脂Bからなるb層とを、b層/a層/b層の順に有する未延伸の積層体cを得た。共押出の条件を制御することにより、b層/a層/b層の厚さはそれぞれ33μm/16μm/33μmとした。
得られた未延伸の積層体cを、延伸温度135℃で、MD方向に延伸倍率1.8倍及びTD方向に延伸倍率1.3倍に同時二軸延伸し、厚みが35μmの光学フィルム1を得た。
得られた光学フィルム1について、背面の三次元中心線平均粗さR1を測定した。また、得られた光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1を測定した。
【0090】
(1−5.複層フィルム及び巻回体)
(1−3)で得られた保護フィルム(離型フィルム付き)から離型フィルムを剥離し、粘着層側の面を、(1−4)で得られた光学フィルムの一方の面と貼合し、保護フィルム及び光学フィルムを備える複層フィルムを得た。貼合に際して、保護フィルムの繰り出し張力は250N、光学フィルムの搬送時の張力は150Nとした。貼合は、保護フィルムと光学フィルムの長手方向を一致させて行ない、得られた複層フィルムは、そのまま巻き取り、巻回体とした。得られた巻回体における複層フィルムは、長さ2000m、幅1490mmであった。巻回体の巻回数は、2089回であった。複層フィルムの巻き取りの際の巻き取り張力は120N〜140Nとし、巻き取り速度は10m/分とした。
得られた巻回体の外観、及び巻回体中の複層フィルムにおける凹凸形状を評価した。
【0091】
〔実施例2〕
(2−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム2を得た。
・ポリエチレンテレフタレート樹脂に代えて、ポリプロピレン樹脂(F113G:プライムポリマー社製)を用いた。
・数平均粒径5.0μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径1.5μmのシリカ粒子を用いた。
・得られた未延伸フィルムを、延伸温度160℃で、ロール延伸機を用いてMD方向に5倍、テンター延伸機を用いてTD方向に10倍に逐次二軸延伸し、厚さ30μmの背面層フィルム2を得た。
【0092】
(2−2.光学フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−4)と同様に操作を行い、光学フィルム2を得て、R1及びM1を測定した。
・ゴム粒子を含むメタクリル樹脂組成物(スミペックスHT50Y:住友化学社製)に代えて、別のゴム粒子を含むメタクリル樹脂組成物(スミペックスHT55X:住友化学社製)を用いた。
【0093】
(2−3.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(2−1)で得た背面層フィルム2を用いた点、及び光学フィルム1に代えて(2−2)で得た光学フィルム2を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0094】
〔実施例3〕
(3−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム3を得た。
・数平均粒径5.0μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径1.5μmのシリカ粒子を用いた。
・逐次二軸延伸の延伸倍率を、MD方向に3.7倍、TD方向に3.8倍とした。
【0095】
(3−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(3−1)で得た背面層フィルム3を用いた点以外は、実施例1の(1−2)〜(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、光学フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0096】
〔実施例4〕
(4−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例2の(2−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム4を得た。
・数平均粒径5.0μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径10.0μmのシリカ粒子を用いた。
【0097】
(4−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(4−1)で得た背面層フィルム4を用いた点、及び光学フィルム1に代えて実施例2で得た光学フィルム2を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0098】
〔実施例5〕
(5−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム5を得た。
・数平均粒径5.0μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径10.0μmのシリカ粒子を用いた。
【0099】
(5−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(5−1)で得た背面層フィルム5を用いた点以外は、実施例1の(1−2)〜(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、光学フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0100】
〔実施例6〕
(6−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム12を得た。
・数平均粒径5.0μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径16.0μmのシリカ粒子を用いた。
【0101】
(6−2.光学フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−4)と同様に操作を行い、光学フィルム5を得て、R1及びM1を測定した。
・フィルム状に共押出しされた溶融樹脂をキャストする冷却ロールとして、表面が鏡面の冷却ロールに代えて、表面に凹凸形状を賦型した冷却ロール(表面のRa=0.3μm)を用いた。
【0102】
(6−3.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(6−1)で得た背面層フィルム12を用いた点、及び光学フィルム1に代えて(6−2)で得た光学フィルム5を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0103】
〔比較例1〕
(C1−1.光学フィルム)
下記の変更点の他は、実施例2の(2−2)と同様に操作を行い、光学フィルム3を得て、R1及びM1を測定した。
・フィルム状に共押出しされた溶融樹脂をキャストする冷却ロールとして、表面が鏡面の冷却ロールに代えて、表面に凹凸形状を賦型した冷却ロール(表面のRa=0.3μm)を用いた。
【0104】
(C1−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて実施例2で得た背面層フィルム2を用いた点、及び光学フィルム1に代えて(C1−1)で得た光学フィルム3を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0105】
〔比較例2〕
(C2−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例2の(2−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム6を得た。
・逐次二軸延伸の延伸倍率を、MD方向に3倍、TD方向に4倍とした。
【0106】
(C2−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(C2−1)で得た背面層フィルム6を用いた点、及び光学フィルム1に代えて実施例2で得た光学フィルム2を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0107】
〔比較例3〕
(C3−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例2の(2−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム7を得た。
・数平均粒径1.5μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径16.0μmのシリカ粒子を用いた。
【0108】
(C3−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(C3−1)で得た背面層フィルム7を用いた点、及び光学フィルム1に代えて実施例2で得た光学フィルム2を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0109】
〔比較例4〕
(C4−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、比較例2の(C2−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム8を得た。
・数平均粒径1.5μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径10.0μmのシリカ粒子を用いた。
【0110】
(C4−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(C4−1)で得た背面層フィルム8を用いた点、及び光学フィルム1に代えて実施例2で得た光学フィルム2を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0111】
〔比較例5〕
(C5−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例3の(3−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム9を得た。
・逐次二軸延伸の延伸倍率を、MD方向に4.5倍、TD方向に4.2倍とした。
【0112】
(C5−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(C5−1)で得た背面層フィルム9を用いた点以外は、実施例1の(1−2)〜(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、光学フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0113】
〔比較例6〕
(C6−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例5の(5−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム10を得た。
・数平均粒径10.0μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径1.5μmのシリカ粒子を用いた。
【0114】
(C6−2.光学フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−4)と同様に操作を行い、光学フィルム4を得て、R1及びM1を測定した。
・フィルム状に共押出しされた溶融樹脂をキャストする冷却ロールとして、表面が鏡面の冷却ロールに代えて、表面に凹凸形状を賦型した冷却ロール(表面のRa=0.3μm)を用いた。
【0115】
(C6−3.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(C6−1)で得た背面層フィルム10を用いた点、及び光学フィルム1に代えて(C6−2)で得た光学フィルム4を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0116】
〔比較例7〕
(C7−1.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、比較例5の(C5−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム11を得た。
・数平均粒径1.5μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径16.0μmのシリカ粒子を用いた。
【0117】
(C7−2.複層フィルム及び巻回体等)
背面層フィルム1に代えて(C7−1)で得た背面層フィルム11を用いた点以外は、実施例1の(1−2)〜(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、光学フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0118】
〔比較例8〕
(C8−1.光学フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−4)と同様に操作を行い、光学フィルム6を得て、R1及びM1を測定した。
・フィルム状に共押出しされた溶融樹脂をキャストする冷却ロールとして、表面Ra0.01μmの鏡面の冷却ロールに代えて、さらに表面の平坦性が高い鏡面の冷却ロール(表面Ra0.005μm)を用いた。
【0119】
(C8−2.複層フィルム及び巻回体等)
光学フィルム1に代えて(C8−1)で得た光学フィルム6を用い、背面層フィルム1に代えて実施例3の(3−1)で得た背面層フィルム3を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、光学フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0120】
〔比較例9〕
(C9−1.光学フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−4)と同様に操作を行い、光学フィルム7を得て、R1及びM1を測定した。
・フィルム状に共押出しされた溶融樹脂をキャストする冷却ロールとして、表面が鏡面の冷却ロールに代えて、表面に凹凸形状を賦型した冷却ロール(表面のRa=0.5μm)を用いた。
【0121】
(C9−2.背面層フィルム)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)と同様に操作を行い、背面層フィルム13を得た。
・数平均粒径5.0μmのシリカ粒子に代えて数平均粒径30.0μmのシリカ粒子を用いた。
【0122】
(C9−3.複層フィルム及び巻回体等)
光学フィルム1に代えて(C9−1)で得た光学フィルム7を用い、背面層フィルム1に代えて(C9−2)で得た背面層フィルム13を用いた点以外は、実施例1の(1−2)、(1−3)及び(1−5)と同様に操作を行い、保護フィルム、光学フィルム、複層フィルム、及び複層フィルムの巻回体を得て、測定及び評価を行った。
【0123】
実施例及び比較例の測定及び評価の結果を表1〜表2に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
表1及び表2の結果から明らかな通り、R1、R2、M1及びM2の値が本発明に規定する関係を満たす複層フィルムは、巻回体にした場合の外観において不良が観察されず、且つ、光学フィルムの面上への凹凸形状の転写が観察されなかった。
これに対して、光学フィルム背面の三次元中心線平均粗さR1に対する保護フィルム背面の三次元中心線平均粗さR2の割合が本発明に規定する範囲より大きい場合(比較例3及び7)、光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1に対する保護フィルムの長手方向の引張弾性率M2が本発明に規定する範囲より大きい場合(比較例5及び7)、並びに保護フィルム背面の三次元中心線平均粗さR2の割合が本発明に規定する範囲外である場合(比較例9)では、光学フィルムの面上への凹凸形状の転写が観察された。光学フィルム背面の三次元中心線平均粗さR1に対する保護フィルム背面の三次元中心線平均粗さR2の割合が本発明に規定する範囲より小さい場合(比較例1及び6)及び光学フィルム背面の三次元中心線平均粗さR1が本発明に規定する範囲外である場合(比較例8)では、ゲージバンドが発生して巻回体外観が悪化した。さらに、光学フィルムの長手方向の引張弾性率M1に対する保護フィルムの長手方向の引張弾性率M2が本発明に規定する範囲より小さい場合(比較例2及び4)では、巻きシワが発生して巻回体外観が悪化した。
【符号の説明】
【0127】
10:巻回体
100:複層フィルム
120:光学フィルム
110:保護フィルム
120Y:光学フィルム正面側の面
120X:光学フィルム背面側の面
110Y:保護フィルム正面側の面
110X:保護フィルム背面側の面
122a:a層
121b:b層
123b:b層
112:粘着層
111:背面層
110Y:保護フィルム正面側の面
110X:保護フィルム背面側の面
図1
図2