(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コア部の重合体のガラス転移温度が、−50℃以上150℃以下であり、前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、請求項1に記載の非水系二次電池機能層用組成物。
前記シェル部の重合体が、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の少なくとも一方を含む、請求項1〜3の何れかに記載の非水系二次電池機能層用組成物。
前記コア部の重合体のガラス転移温度が、−50℃以上150℃以下であり、前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、請求項5に記載の非水系二次電池用セパレータ。
前記シェル部の重合体が、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の少なくとも一方を含む、請求項5〜7の何れかに記載の非水系二次電池用セパレータ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、セパレータや電極等の電池部材を構成する機能層を調製する際の材料として用いられる。なお、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成される機能層は、セパレータや電極等の電池部材の耐熱性および強度を向上させるための多孔膜層であってもよいし、電池部材同士を接着させるための接着層であってもよいし、多孔膜層と接着層との双方の機能を発揮する層であってもよい。
また、本発明の非水系二次電池用セパレータは、セパレータ基材と当該セパレータ基材上の機能層とを備えてなり、当該機能層は、例えば本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成される。そして、本発明の非水系二次電池は、少なくとも本発明の非水系二次電池用セパレータを備えるものである。
【0022】
(非水系二次電池機能層用組成物)
非水系二次電池機能層用組成物は、少なくとも特定構造の有機粒子および当該有機粒子以外の機能層用結着材を含有し、任意に、その他の成分を含有する、水などを分散媒としたスラリー組成物である。さらに、非水系二次電池機能層用組成物は、せん断速度100sec
−1での粘度η
0、およびせん断速度10000sec
−1での粘度η
1に対する前記η
0の比がそれぞれ特定の範囲内であることを特徴とする。
そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成される機能層は、上述の有機粒子の性状および機能層用組成物の粘性挙動などの寄与により、電解液浸漬後においても優れた接着性を発揮し、また、二次電池に優れた電池特性をもたらすことができる。具体的には、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成される機能層は、電解液中において優れた接着性を発揮する所定の有機粒子を含有しているので、電解液への浸漬後においても優れた接着性を発揮し、非水系二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。また、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、せん断速度100sec
−1での粘度η
0が特定の範囲内であり、かつ、せん断速度10000sec
−1での粘度η
1に対する前記η
0の比が特定の範囲内であるため、機能層用組成物の基材への塗布性を確保しつつ塗布後の粒子状成分の沈降を抑制することができ、二次電池の電池特性を向上させることができる。
【0023】
<有機粒子>
非水系二次電池機能層用組成物に含有される有機粒子は、非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成された機能層に優れた接着性を発揮させる機能を担う。
そして、有機粒子は、コア部と、前記コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しており、前記コア部は、電解液膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、前記シェル部は、電解液膨潤度が1倍超4倍以下の重合体からなることを特徴とする。
【0024】
ここで、上記構造および性状を有する有機粒子は、電解液中において優れた接着性を発揮し、しかも電解液への成分の溶出が少なく、優れた接着性を長期に亘り保持することができる。そして、機能層用組成物を用いて得られる機能層は、二次電池の電池特性を良好に向上させることができる。また、この機能層用組成物を用いて得られる機能層は、電解液への浸漬前には大きな接着力を発揮しないので、当該機能層自体および当該機能層を備える部材は、ブロッキング(機能層同士、或いは機能層を介した部材同士などの膠着)を生じ難く、ハンドリング性にも優れている。
【0025】
なお、上記有機粒子を使用することで上述したような優れた効果が得られる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、上記有機粒子のシェル部を構成する重合体は、電解液に対してある程度膨潤する。このとき、例えば膨潤したシェル部の重合体が有する官能基が活性化して、機能層が形成されるセパレータ基材または電極基材、或いは、機能層を有する電池部材と接着される電極またはセパレータ等の表面にある官能基と化学的または電気的な相互作用を生じるなどの要因により、シェル部は電池部材と強固に接着できる。一方、シェル部は、電解液に膨潤する前には大きな接着力を発揮しない。そのため、当該有機粒子を含む機能層では、ブロッキングの発生を抑制しつつ、電池部材同士(例えば、セパレータと電極)を電解液中において強力に接着することが可能となっているものと推察される。
また、シェル部の重合体およびコア部の重合体はいずれも電解液膨潤度が所定の値以下に設定されており、電解液に対して過度に膨潤することもない。そのため、例えば二次電池の長時間稼働後にも上述した優れた接着性を十分に発揮することができると推察される。
そして、上記有機粒子を含む機能層を使用した場合、上述したように電解液中において電池部材同士を強力に接着することができるので、当該機能層を備える二次電池では、機能層を介して接着された電池部材間(例えば、セパレータと電極との間)に空隙を生じ難い。そのため、当該有機粒子を含む機能層を使用した二次電池では、二次電池内において正極と負極との距離が大きくなり難く、二次電池の内部抵抗を小さくできると共に、電極における電気化学反応の反応場が不均一になり難い。さらに、当該二次電池では、充放電を繰り返してもセパレータと電極との間に空隙ができ難く、電池容量が低下しにくい。これにより、優れた高温サイクル特性などの電池特性を実現できるものと推察される。
さらに、上記有機粒子のコア部を構成する重合体は、電解液に対して大きく膨潤する。そして、重合体は、電解液に大きく膨潤した状態では、重合体の分子間の隙間が大きくなり、その分子間をイオンが通り易くなる。また、有機粒子のコア部の重合体は、シェル部によって完全に覆われてはいない。そのため、電解液中においてイオンがコア部を通りやすくなるので、有機粒子は高いイオン拡散性を発現できる。従って、上記有機粒子を使用すれば、機能層による抵抗の上昇を抑制し、低温出力特性などの電池特性の低下を抑制することも可能である。
なお、上述した通り、有機粒子は電解液に膨潤することで優れた接着性を発揮し、電解液への浸漬前には大きな接着力を発揮しない。しかし、有機粒子は、電解液に膨潤しない限りは接着性を全く発揮しないというものではなく、電解液に膨潤していない状態であっても、例えば一定温度以上(例えば50℃以上)に加熱されることにより、接着性を発現し得る。
【0026】
[有機粒子の構造]
ここで、有機粒子は、コア部と、コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有している。また、シェル部は、コア部の外表面を部分的に覆っている。即ち、有機粒子のシェル部は、コア部の外表面を覆っているが、コア部の外表面の全体を覆ってはいない。外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆うシェル部である。したがって、例えば、シェル部の外表面(即ち、有機粒子の周面)からコア部の外表面まで連通する細孔を有するシェル部を備える有機粒子は、上記有機粒子に含まれる。
【0027】
具体的には、有機粒子の一例の断面構造を
図1に示すように、有機粒子100は、コア部110およびシェル部120を備えるコアシェル構造を有する。ここで、コア部110は、この有機粒子100においてシェル部120よりも内側にある部分である。また、シェル部120は、コア部110の外表面110Sを覆う部分であり、通常は有機粒子100において最も外側にある部分である。そして、シェル部120は、コア部110の外表面110Sの全体を覆っているのではなく、コア部110の外表面110Sを部分的に覆っている。
【0028】
[[被覆率]]
ここで、有機粒子では、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。被覆率を前記範囲の下限値以上とすることにより、電池部材同士のブロッキングの発生を抑制するとともに、電解液中での電池部材同士の接着性を高め、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。また、被覆率を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層に高いイオン拡散性を発現させて二次電池の低温出力特性を向上させることができる。
【0029】
なお、有機粒子の「被覆率」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0030】
[[体積平均粒子径D50]]
また、有機粒子の体積平均粒子径D50は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.4μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。有機粒子の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の内部抵抗の上昇を抑制し、二次電池の低温出力特性をさらに向上させることができる。また、有機粒子の体積平均粒子径D50を前記範囲の上限値以下にすることにより、電解液中での電池部材同士の接着性を高め、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができるとともに、電解液浸漬前の機能層が加熱により発揮する接着性の向上をもたらすことができる。
なお、有機粒子の「体積平均粒子径D50」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0031】
[[コアシェル比率]]
さらに、シェル部は、有機粒子の体積平均粒子径D50に対して、所定の範囲に収まる平均厚みを有することが好ましい。具体的には、有機粒子の体積平均粒子径D50に対するシェル部の平均厚み(コアシェル比率)は、好ましくは1.5%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下、特に好ましくは15%以下である。コアシェル比率を前記範囲の下限値以上にすることにより、電解液中での機能層の接着性をさらに高め、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。また、コアシェル比率を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の低温出力特性をさらに高めることができる。
【0032】
ここで、有機粒子の「コアシェル比率」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0033】
なお、有機粒子は、所期の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部およびシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。具体的には、例えば、有機粒子は、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、有機粒子をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。ただし、所期の効果を顕著に発揮する観点からは、有機粒子はコア部およびシェル部のみを備えることが好ましい。
【0034】
[コア部]
[[コア部の重合体の電解液膨潤度]]
有機粒子のコア部は、電解液に対して所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、コア部の重合体の電解液膨潤度は、5倍以上であることが必要であり、6倍以上であることが好ましく、7倍以上であることがより好ましく、9.6倍以上であることがさらに好ましく、また、30倍以下であることが必要であり、25倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。コア部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層に高いイオン拡散性を発現させて二次電池の低温出力特性を向上させることができる。くわえて電解液中で有機粒子がある程度膨潤することで機能層の接着性が確保され、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。また、コア部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲の上限値以下にすることにより、電解液中における機能層の接着性を高め、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0035】
なお、コア部の重合体の電解液膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該コア部の重合体を製造するための単量体の種類および量を適切に選択することが挙げられる。一般に、重合体のSP値が電解液のSP値に近い場合、その重合体はその電解液に膨潤しやすい傾向がある。他方、重合体のSP値が電解液のSP値から離れていると、その重合体はその電解液に膨潤し難い傾向がある。
【0036】
ここでSP値とは、溶解度パラメーターのことを意味する。
そして、SP値は、Hansen Solubility Parameters A User’s Handbook,2ndEd(CRCPress)で紹介される方法を用いて算出することができる。
また、有機化合物のSP値は、その有機化合物の分子構造から推算することも可能である。具体的には、SMILEの式からSP値を計算できるシミュレーションソフトウェア(例えば「HSPiP」(http=//www.hansen−solubility.com))を用いて計算しうる。このシミュレーションソフトウェアでは、Hansen SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook SecondEdition、Charles M.Hansenに記載の理論に基づき、SP値が求められている。
【0037】
[[コア部の重合体のガラス転移温度]]
また、有機粒子のコア部を構成する重合体のガラス転移温度は、−50℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましく、5℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましく、また、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがより好ましい。コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着性や耐ブロッキング性を一層向上させることができる。そして、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、コア部の重合体のガラス転移温度を上記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0038】
なお、コア部の重合体のガラス転移温度を調整する方法としては、例えば、コア部の重合体を調製するために用いる単量体の種類および量を、当該単量体の単独重合体のガラス転移温度を考慮して、適切に選択することが挙げられる。例えば、コア部の重合体の調製に(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用する場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体のアルコールに由来する部分の炭素数が多いほど、得られる重合体のガラス転移温度が低くなる傾向がある。ここで、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0039】
[[コア部の重合体の組成]]
コア部の重合体を調製するために用いる単量体としては、その重合体の電解液膨潤度が上記範囲となるものを適宜選択して用いうる。そのような単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを意味する。
【0040】
これらの単量体の中でも、コア部の重合体の調製に用いられる単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることがより好ましい。即ち、コア部の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位または(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことがより好ましく、メタクリル酸メチル由来の単量体単位を含むことが特に好ましい。これにより、重合体の膨潤度の制御が容易になると共に、有機粒子を用いた機能層のイオン拡散性を一層高めることができる。
【0041】
コア部の重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層のイオン拡散性を高め、二次電池の低温出力特性をさらに向上させることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、電解液中での機能層の接着性を高め、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0042】
また、コア部の重合体は、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。反応性界面活性剤単量体単位および/またはマクロモノマー構造単位が導入されたコア部の重合体を有する有機粒子は、機能層用組成物に適度な粘性を付与することができる。この原因は定かではないが、反応性界面活性剤単量体単位および/またはマクロモノマー構造単位が組み込まれることにより、これらの構造を備える重合体がグラフト鎖を備えることとなり、機能層用組成物中において、有機粒子から伸びたグラフト鎖の寄与により水との抵抗が高まるためと推察される。
そしてこれらの中でも、コア部の重合体は反応性界面活性剤単量体単位を含むことが好ましい。反応性界面活性剤単量体単位は有機粒子への導入が容易であり且つ有機粒子から脱離し難く、また有機粒子の電解液に対する濡れ性を高め、低温出力特性などの電池特性をさらに向上させうるからである。加えて、上記のように有機粒子への導入が容易であるため、マクロモノマーに比して未反応単量体の分解に起因する高温サイクルの低下も起こり難い。
なお、反応性界面活性剤単量体単位は、後述するようにシェル部の重合体に導入することも可能であるが、有機粒子の被覆率の過度な上昇を抑制し、二次電池の低温出力特性を確保する観点から、コア部の重合体に導入することが好ましい。
【0043】
ここで、反応性界面活性剤単量体単位を形成しうる反応性界面活性剤単量体とは、他の単量体と共重合しうる重合性の基を有し、且つ、界面活性基(即ち、親水性基および疎水性基)を有する単量体を表す。反応性界面活性剤単量体の重合により得られる反応性界面活性剤単量体単位は、有機粒子に含まれる重合体の一部を構成し、且つ界面活性剤として機能しうる。
【0044】
通常、反応性界面活性剤単量体は重合性不飽和基を有し、この重合性不飽和基が重合後に疎水性基としても作用しうる。重合性不飽和基の例としては、ビニル基、アリル基、ビニリデン基、プロペニル基、イソプロペニル基、およびイソブチリデン基が挙げられる。かかる重合性不飽和基の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0045】
また、反応性界面活性剤単量体は、親水性を発現する部分として、通常は親水性基を有する。反応性界面活性剤単量体は、親水性基の種類により、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に分類される。
なお、反応性界面活性剤単量体の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上であり、好ましくは4000以下、より好ましくは3500以下、さらに好ましくは3000以下である。反応性界面活性剤単量体の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であることで、反応性界面活性剤単量体単位を含む重合体を備える有機粒子が、機能層用組成物に良好に粘性を付与することができる。また、反応性界面活性剤単量体の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であることで、反応性界面活性剤単量体を用いた重合が容易となる。
なお、反応性界面活性剤単量体の「数平均分子量」は、標準物質にポリスチレンを用い、展開溶媒にジメチルホルムアミドの10体積%水溶液に0.85g/mlの硝酸ナトリウムを溶解させた溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
【0046】
反応性界面活性剤単量体の例としては、有機粒子への導入の容易さ、および二次電池の低温出力特性を向上させる観点から、好ましくはポリオキシアルキレン基を有する反応性界面活性剤単量体が挙げられ、より好ましくは下記の式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
式(I)において、Rは2価の結合基を表す。Rの例としては、−Si−O−基、メチレン基およびフェニレン基等が挙げられる。また、式(I)において、R
1は親水性基を表す。R
1の例としては、−SO
3NH
4が挙げられる。さらに、式(I)において、nは1以上100以下の整数を表す。なお、式(I)で表される化合物としては、特に限定されることなく、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムを挙げることができる。
また、反応性界面活性剤単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
ここで、コア部の重合体が反応性界面活性剤単量体単位を含む場合、コア部の重合体における反応性界面活性剤単量体単位の割合は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。反応性界面活性剤単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、有機粒子の機能層用組成物に対する粘性付与能が確保され、また有機粒子の分散性が向上する。加えて、有機粒子の電解液に対する濡れ性を高め、二次電池の低温出力特性をさらに向上させることができる。また、反応性界面活性剤単量体単位の割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0050】
マクロモノマー構造単位を形成しうるマクロモノマーとは、重合体でありながら他の単量体と共重合しうる重合性の基を有し、単量体として機能して重合反応により新たな重合体の一部を構成しうる化合物を表す。なお、他の単量体と共重合しうる重合性の基は、マクロモノマーを構成する高分子鎖の末端に存在することが好ましい。当該重合性の基は、例えば所定の重合体を得た後に当該重合体の末端に導入され、この導入により、高分子鎖の末端に重合性の基を有するマクロモノマーが得ることができる。なお、本発明において、上述した反応性界面活性剤単量体に含まれる化合物は、マクロモノマーには含まれないものとする。
ここで、重合体であるマクロモノマーの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは650以上であり、好ましくは9000以下、より好ましくは8000以下、さらに好ましくは7000以下である。マクロモノマーの数平均分子量が前記範囲の下限値以上であることで、マクロモノマー構造単位を含む重合体を備える有機粒子が、機能層用組成物に良好に粘性を付与することができる。また、マクロモノマーの数平均分子量が前記範囲の上限値以下であることで、マクロモノマーを用いた重合が容易となる。
なお、マクロモノマーの「数平均分子量」は、標準物質にポリスチレンを用い、展開溶媒にジメチルホルムアミドの10体積%水溶液に0.85g/mlの硝酸ナトリウムを溶解させた溶液を用いたGPCで測定することができる。
【0051】
マクロモノマーの種類は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を(例えば50質量%以上)含む(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー、芳香族ビニル単量体単位を(例えば50質量%以上)含む芳香族ビニルマクロモノマー、およびヒドロキシアルキルアクリレートとポリカプロラクトンを反応させて得られるポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、有機粒子と水との抵抗を高めて機能層用組成物の粘度を高める観点から、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートが好ましい。また、マクロモノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ここで、コア部の重合体がマクロモノマー構造単位を含む場合、コア部の重合体におけるマクロモノマー構造単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。マクロモノマー構造単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、有機粒子の機能層用組成物に対する粘性付与能が確保され、また有機粒子の分散性が向上する。一方、マクロモノマー構造単位の割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0053】
なお、コア部の重合体は、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の何れか一方を含んでいてもよく、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の双方を含んでいてもよい。
コア部の重合体における反応性界面活性剤単量体単位の割合とマクロモノマー構造単位の割合の合計は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。反応性界面活性剤単量体単位の割合とマクロモノマー構造単位の割合の合計を前記範囲の下限値以上にすることにより、有機粒子の機能層用組成物に対する粘性付与能が確保され、また有機粒子の分散性が向上する。一方、反応性界面活性剤単量体単位の割合とマクロモノマー構造単位の割合の合計を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0054】
また、コア部の重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0055】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
さらに、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アリルとは、アリルおよび/またはメタリルを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
【0056】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0057】
また、コア部の重合体における酸基含有量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。酸基含有量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、有機粒子の調製時に、コア部の重合体の分散性を高め、コア部の重合体の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を形成し易くすることができる。
【0058】
また、コア部の重合体は、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、重合体の膨潤度を、前記の範囲に容易に収めることができる。
【0059】
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。これらの中でも、コア部の重合体の電解液膨潤度を容易に制御する観点から、エチレングリコールジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートがより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ここで、一般に、重合体において架橋性単量体単位の割合が増えると、その重合体の電解液に対する膨潤度は小さくなる傾向がある。従って、架橋性単量体単位の割合は、使用する単量体の種類および量を考慮して決定することが好ましい。コア部の重合体における架橋性単量体単位の具体的な割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着性を高めることができる。また、架橋性単量体単位の割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、非水系二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0061】
[シェル部]
[[シェル部の重合体の電解液膨潤度]]
有機粒子のシェル部は、コア部の電解液膨潤度よりも小さい所定の電解液膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、シェル部の重合体の電解液膨潤度は、1倍超であることが必要であり、1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましく、また、4倍以下であることが必要であり、3.5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。シェル部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲の下限値超にすることにより、有機粒子の電解液中での接着性が確保され、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。加えて機能層に高いイオン拡散性を発現させて二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、シェル部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲の上限値以下にすることにより、電解液中での機能層を介した電池部材同士の接着性を高め、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0062】
なお、シェル部の重合体の電解液膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該シェル部の重合体を製造するための単量体の種類および量を適切に選択することが挙げられる。
【0063】
[[シェル部の重合体のガラス転移温度]]
また、有機粒子のシェル部を構成する重合体のガラス転移温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、また、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、電池部材同士のブロッキングの発生を抑制できることに加え、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。また、ガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、電解液中における機能層の接着性をさらに高めることができる。
【0064】
なお、シェル部の重合体のガラス転移温度を調整する方法としては、例えば、シェル部の重合体を調製するために用いる単量体の種類および量を、当該単量体の単独重合体のガラス転移温度を考慮して、適切に選択することが挙げられる。
【0065】
シェル部の重合体を調製するために用いる単量体としては、その重合体の電解液膨潤度が前記範囲となるものを適宜選択して用いうる。そのような単量体としては、例えば、コア部の重合体を製造するために用いうる単量体として例示した単量体と同様の単量体が挙げられる。また、このような単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0066】
これらの単量体の中でも、シェル部の重合体の調製に用いられる単量体としては、芳香族ビニル単量体が好ましい。即ち、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。また、芳香族ビニル単量体の中でも、スチレンおよびスチレンスルホン酸等のスチレン誘導体がより好ましい。芳香族ビニル単量体を用いれば、重合体の電解液膨潤度を制御し易い。また、機能層の接着性を一層高めることができる。
【0067】
そして、シェル部の重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、より一層好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上 であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、シェル部の重合体の電解液膨潤度およびガラス転移温度を所望の範囲に制御しやすい。また、電解液中における機能層の接着性をより高めることができる。
【0068】
また、シェル部の重合体は、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。反応性界面活性剤単量体単位および/またはマクロモノマー構造単位が導入されたシェル部の重合体を有する有機粒子は、機能層用組成物に適度な粘性を付与することができる。
そして、これらの中でも、有機粒子の被覆率の過度な上昇を抑制し、二次電池の低温出力特性を確保する観点から、シェル部の重合体は、マクロモノマー構造単位を含むことが好ましい。
【0069】
ここで、反応性界面活性剤単量体単位を形成しうる反応性界面活性剤単量体としては、「コア部」の項で上述した反応性界面活性剤単量体と同様の単量体が挙げられる。反応性界面活性剤単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中でも、反応性界面活性剤単量体としては、有機粒子への導入の容易さ、および二次電池の低温出力特性を向上させる観点から、ポリオキシアルキレン基を有する反応性界面活性剤単量体が好ましく、上述の式(I)で表される化合物がより好ましい。
【0070】
シェル部の重合体が反応性界面活性剤単量体単位を含む場合、シェル部の重合体における反応性界面活性剤単量体単位の割合は、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。反応性界面活性剤単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、有機粒子の機能層用組成物に対する粘性付与能が確保され、また有機粒子の分散性が向上する。加えて、有機粒子の電解液に対する濡れ性を高め、二次電池の低温出力特性をさらに向上させることができる。また、反応性界面活性剤単量体単位の割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0071】
また、マクロモノマー構造単位を形成しうるマクロモノマーとしては、「コア部」の項で上述したマクロモノマーと同様の単量体が挙げられる。マクロモノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中でも、有機粒子と水との抵抗を高めて機能層用組成物の粘度を高める観点から、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマー、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレートが好ましい。
【0072】
ここで、シェル部の重合体がマクロモノマー構造単位を含む場合、シェル部の重合体におけるマクロモノマー構造単位の割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。マクロモノマー構造単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、有機粒子の機能層用組成物に対する粘性付与能が確保され、また有機粒子の分散性が向上する。また、マクロモノマー構造単位の割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0073】
なお、シェル部の重合体は、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の何れかを含んでいてもよいし、反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の双方を含んでいてもよい。
シェル部の重合体における反応性界面活性剤単量体単位の割合とマクロモノマー構造単位の割合の合計は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。反応性界面活性剤単量体単位の割合とマクロモノマー構造単位の割合の合計を前記範囲の下限値以上にすることにより、有機粒子の機能層用組成物に対する粘性付与能が確保され、また有機粒子の分散性が向上する。一方、反応性界面活性剤単量体単位の割合とマクロモノマー構造単位の割合の合計を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の高温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0074】
また、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位、反応性界面活性剤単量体単位、マクロモノマー構造単位以外に、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。具体的には、酸基含有単量体としては、コア部に含み得る酸基含有単量体単位を構成しうる単量体と同様の単量体が挙げられる。
【0075】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸がさらに好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0076】
シェル部の重合体中の酸基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。酸基含有単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、機能層中での有機粒子の分散性を向上させ、機能層全面に渡って良好な接着性を発現させることができる。
【0077】
また、シェル部の重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体としては、例えば、コア部の重合体に用いうる架橋性単量体として例示したものと同様の単量体が挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0078】
そして、シェル部の重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0079】
[[シェル部の形態]]
また、シェル部の形態は特に制限されないが、シェル部は、重合体の粒子によって構成されていることが好ましい。シェル部が重合体の粒子によって構成されている場合、有機粒子の径方向にシェル部を構成する粒子が複数重なり合っていてもよい。ただし、有機粒子の径方向では、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成していることが好ましい。
【0080】
[有機粒子の調製方法]
そして、上述したコアシェル構造を有する有機粒子は、例えば、コア部の重合体の単量体と、シェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、調製することができる。具体的には、有機粒子は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって調製することができる。
【0081】
そこで、以下に、多段階乳化重合法により上記コアシェル構造を有する有機粒子を得る場合の一例を示す。
【0082】
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0083】
そして、重合手順としては、まず、コア部を形成する単量体および乳化剤を混合し、一括で乳化重合することによってコア部を構成する粒子状の重合体を得る。さらに、このコア部を構成する粒子状の重合体の存在下にシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、上述したコアシェル構造を有する有機粒子を得ることができる。
【0084】
この際、コア部の外表面をシェル部によって部分的に覆う観点から、シェル部の重合体を形成する単量体は、複数回に分割して、もしくは、連続して重合系に供給することが好ましい。シェル部の重合体を形成する単量体を重合系に分割して、もしくは、連続で供給することにより、シェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、この粒子がコア部と結合することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0085】
なお、シェル部の重合体を形成する単量体を複数回に分割して供給する場合には、単量体を分割する割合に応じてシェル部の平均厚みを制御することが可能である。また、シェル部の重合体を形成する単量体を連続で供給する場合には、単位時間あたりの単量体の供給量を調整することで、シェル部の平均厚みを制御することが可能である。
【0086】
また、シェル部を形成した後の有機粒子の体積平均粒子径D50は、例えば、乳化剤の量、単量体の量などを調整することで、所望の範囲にすることができる。さらに、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)は、例えば、乳化剤の量、および、シェル部の重合体を形成する単量体の量を調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0087】
<機能層用結着材>
本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、機能層用結着材(上述した有機粒子を除く)を含むことを必要とする。
【0088】
ここで、上述した通り、有機粒子は、電解液に膨潤しておらず、且つ、加熱されていない状態では、通常、接着性を発現しない。そのため、機能層の形成直後(加熱前または電解液への浸漬前)に有機粒子が機能層から脱落するのを抑制する観点からは、機能層用組成物は、電解液に膨潤しておらず、且つ、加熱されていない状態においても接着性を発揮する機能層用結着材を含むことが好ましい。機能層用結着材を用いることにより、電解液に膨潤しておらず、且つ、加熱されていない状態においても有機粒子等の成分が機能層から脱落するのを抑制することができる。
【0089】
そして、上記有機粒子と併用し得る機能層用結着材としては、非水溶性で、水などの分散媒中に分散可能な既知の結着材、例えば、熱可塑性エラストマーが挙げられる。そして、熱可塑性エラストマーとしては、共役ジエン系重合体およびアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。
ここで、共役ジエン系重合体とは、共役ジエン単量体単位を含む重合体を指し、共役ジエン系重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)などの、芳香族ビニル単量体単位および脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体や、アクリルゴム(NBR)(アクリロニトリル単位およびブタジエン単位を含む重合体)などが挙げられる。また、アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体を指す。ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、有機粒子のコア部の重合体を調製するために用いる単量体と同様のものを用いることができる。
なお、これらの機能層用結着材は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、2種類以上を組み合わせた機能層用結着材を用いる場合、かかる機能層用結着材としての重合体は、上述した所定の重合体からなるコアシェル構造を有する有機粒子とは異なるものである。
【0090】
さらに、機能層用結着材としてのアクリル系重合体は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことがさらに好ましい。これにより、機能層の強度を高めることができる。
【0091】
ここで、機能層用結着材としてのアクリル系重合体において、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する(メタ)アクリロニトリル単量体単位の量の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。前記割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層用結着材としてのアクリル系重合体の強度を高め、当該アクリル系重合体を用いた機能層の強度をより高くすることができる。また、前記割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層用結着材としてのアクリル系重合体が電解液に対して適度に膨潤するため、機能層のイオン拡散性の低下および二次電池の低温出力特性の低下を抑制することができる。
【0092】
また、機能層用結着材のガラス転移温度は、好ましくは−100℃以上であり、より好ましくは−90℃以上であり、さらに好ましくは−80℃以上であり、特に好ましくは−50℃以上であり、また、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは5℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下である。機能層用結着材のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層用結着材の接着性および強度を高めることができる。また、機能層用結着材のガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の柔軟性を高めることができる。
なお、機能層用結着材の「ガラス転移温度」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0093】
さらに、機能層用結着材の体積平均粒子径D50は、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。機能層用結着材の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層用結着材の分散性を高めることができる。また、体積平均粒子径D50を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層用結着材の接着性を高めることができる。
なお、機能層用結着材の「体積平均粒子径D50」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0094】
そして、機能層用組成物中の機能層用結着材の含有量は、前述した有機粒子100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、また、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。機能層用結着材の含有量を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着性を向上させ、加熱前または電解液への浸漬前に有機粒子が機能層から脱落するのを十分に防止することができる。また、機能層用結着材の含有量を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の低温出力特性が低下することを抑制することができる。
【0095】
機能層用結着材の製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。中でも、水中で重合をすることができ、粒子状の機能層用結着材を含む水分散液をそのまま機能層用組成物の材料として好適に使用できるので、乳化重合法および懸濁重合法が好ましい。また、機能層用結着材としての重合体を製造する際、その反応系は分散剤を含むことが好ましい。機能層用結着材は、通常、実質的にそれを構成する重合体により形成されるが、重合に際して用いた添加剤等の任意の成分を同伴していてもよい。
【0096】
<その他の成分>
そして、非水系二次電池機能層用組成物は、上述した成分以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のものを使用することができる。また、これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記その他の成分としては、電解液添加剤などの既知の添加剤、並びに後述する水溶性重合体および非導電性粒子が挙げられる。
【0097】
[水溶性重合体]
水系のスラリー組成物である機能層用組成物に水溶性重合体を配合することで、機能層用組成物に粘性を付与することができる。加えて、水溶性重合体は接着性および耐電解液性を備えているため、二次電池中において、機能層中の各成分同士および電池部材同士の接着を補助する役割を果たすことができる。
ここで、本発明においてある物質が「水溶性」であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が1.0質量%未満であることをいう。なお、水のpHによって溶解性が変わる物質については、少なくともいずれかのpHにおいて上述した「水溶性」に該当するのであれば、その物質は「水溶性」であるとする。
そして水溶性重合体としては、例えば、天然高分子、半合成高分子および合成高分子を挙げることができる。
【0098】
−天然高分子−
天然高分子としては、例えば、植物または動物由来の多糖類および蛋白質、並びにこれらの微生物等による発酵処理物、これらの熱処理物が挙げられる。
そしてこれらの天然高分子は、植物系天然高分子、動物系天然高分子および微生物産出天然高分子等に分類することができる。
植物系天然高分子としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンナン、クインスシード(マルメロ)、アルケコロイド(ガッソウエキス)、澱粉(コメ、トウモロコシ、馬鈴薯、小麦等に由来するもの)、グリチルリチンが挙げられる。動物系天然高分子としては、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンが挙げられる。微生物産生天然高分子としては、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルランが挙げられる。
【0099】
−半合成高分子−
半合成高分子としては、セルロース系半合成高分子が挙げられる。そしてセルロース系半合成高分子は、ノニオン性セルロース系半合成高分子、アニオン性セルロース系半合成高分子およびカチオン性セルロース系半合成高分子に分類することができる。
【0100】
ノニオン性セルロース系半合成高分子としては、例えば、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、マイクロクリスタリンセルロース、等のアルキルセルロース類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、アルキルヒドロキシエチルセルロース、ノノキシニルヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類が挙げられる。
【0101】
アニオン性セルロース系半合成高分子としては、上記のノニオン性セルロース系半合成高分子を各種誘導基により置換した置換体およびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩など)が挙げられる。具体的には、セルロース硫酸ナトリウム、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびそれらの塩が挙げられる。
【0102】
カチオン性セルロース系半合成高分子としては、例えば、低窒素ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム−4)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−10)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−24)が挙げられる。
【0103】
−合成高分子−
合成系高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸またはアクリル酸塩とビニルアルコールとの共重合体、無水マレイン酸またはマレイン酸もしくはフマル酸と酢酸ビニルとの共重合体の完全または部分ケン化物、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル重合体、カルボン酸基が導入されたアクリルアミド重合体などが挙げられる。
【0104】
そしてこれらの水溶性重合体の中でも、カルボキシルメチルセルロースおよびその塩、カルボン酸基が導入されたアクリルアミド重合体が好ましい。
【0105】
ここで、水溶性重合体は、上述したように機能層用組成物に粘度を付与し、また機能層の接着性を向上させる性質を有する。しかしながら一方で、水溶性重合体の添加により、機能層の柔軟性およびイオン拡散性が損なわれ、機能層の接着性が低下したり、低温出力特性などの電池特性が損なわれたりする虞がある。
したがって、本発明においては、二次電池の電池特性を確保する観点からは、機能層用組成物中の水溶性重合体の含有量は、有機粒子100質量部当たり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。
なお、粘度調整を目的として水溶性重合体を添加する場合の機能層用組成物中の水溶性重合体の含有量の下限は、有機粒子100質量部当たり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。
【0106】
[非導電性粒子]
さらに、機能層が多孔膜層としても機能する場合には、機能層用組成物は、非導電性粒子を含んでいてもよい。機能層用組成物に配合される非導電性粒子としては、特に限定されることなく、非水系二次電池に用いられる既知の非導電性粒子を挙げることができる。
具体的には、非導電性粒子としては、無機微粒子と、上述した有機粒子および機能層用結着材以外の有機微粒子との双方を用いることができるが、通常は無機微粒子が用いられる。なかでも、非導電性粒子の材料としては、非水系二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的に安定である材料が好ましい。このような観点から非導電性粒子の材料の好ましい例を挙げると、酸化アルミニウム(アルミナ)、水和アルミニウム酸化物(ベーマイト)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO
3、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。また、これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。
なお、上述した非導電性粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
<非水系二次電池機能層用組成物の調製方法>
機能層用組成物の調製方法は、特に限定はされないが、通常は、有機粒子と、機能層用結着材と、分散媒としての水と、必要に応じて用いられるその他の成分とを混合して機能層用組成物を調製する。混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散させるため、通常は混合装置として分散機を用いて混合を行う。
分散機は、上記成分を均一に分散および混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。また、高い分散シェアを加えることができる観点から、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置も挙げられる。
【0108】
<非水系二次電池機能層用組成物の性状>
ここで、得られる非水系二次電池機能層用組成物のせん断速度100sec
−1での粘度η
0は、10mPa・s以上100mPa・s以下であることが必要であり、好ましくは15mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、さらに好ましくは31mPa・s以上であり、また好ましくは80mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。η
0が前記範囲の下限値以上であることで、基材上に塗布された機能層用組成物中における粒子状の成分の沈降が抑制され、基材の目詰まりを防ぐことができる。よって、得られるセパレータなどの電池部材の空隙を確保することができ、イオン拡散性が高まり、低温出力特性などの電池特性を向上させることができる。また、η
0が前記範囲の上限値以下であることで、得られる機能層における過度な空隙の増加を抑制することができ、電解液中での機能層の接着性が確保されるため、低温出力特性などの電池特性を向上させることができる。
【0109】
また、非水系二次電池機能層用組成物の、せん断速度10000sec
−1での粘度η
1に対するせん断速度100sec
−1での粘度η
0の比(η
0/η
1)は、1以上5以下である必要があり、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.3以下である。η
0/η
1が前記範囲の下限値以上であることで、高せん断条件における高粘度下が抑制され、基材上への機能層用組成物の塗布性が確保される。また、η
0/η
1が前記範囲の上限値以下であることで、得られる機能層における過度な空隙の増加を抑制することができ、電解液中での機能層の接着性が確保されるため、低温出力特性などの電池特性を向上させることができる。
【0110】
なおη
0、η
1およびη
0/η
1は、機能層用組成物中の有機粒子および水溶性重合体の含有量や、有機粒子中の反応性界面活性剤単量体単位およびマクロモノマー構造単位の含有量を調節することにより、適宜調整することができる。
【0111】
(非水系二次電池用機能層)
上述した非水系二次電池機能層用組成物を用い、適切な基材上に機能層を形成することができる。具体的には、非水系二次電池機能層用組成物を適切な基材上で乾燥することにより、非水系二次電池用機能層を形成することができる。即ち、本発明の非水系二次電池用機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物の乾燥物よりなり、通常、上記有機粒子および上記機能層用結着材を含有し、任意に、上記その他の成分を含有する。なお、上述した有機粒子中の重合体および/または機能層用結着材が架橋性単量体単位を含む場合には、有機粒子中の重合体および/または機能層用結着材は、スラリー組成物の乾燥時、または、乾燥後に任意に実施される熱処理時に架橋されていてもよい(即ち、非水系二次電池用機能層は、上述した有機粒子および/または機能層用結着材の架橋物を含んでいてもよい)。なお、非水系二次電池用機能層中に含まれている各成分の好適な存在比は、非水系二次電池機能層用組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
そして本発明の非水系二次電池用機能層は、電池部材に高い耐ブロッキング性をもたらすことができる上、電解液への浸漬後において優れた接着性を発揮することができ、そして、非水系二次電池に優れた電池特性(高温サイクル特性および低温出力特性)を発揮させることができる。
【0112】
<基材>
機能層を形成する基材としては、特に限定されず、例えばセパレータの一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としてはセパレータ基材を用いることができ、また、電極の一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としては集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材を用いることができる。また、基材上に形成した機能層の用法に特に制限は無く、例えばセパレータ基材等の上に機能層を形成してそのままセパレータ等の電池部材として使用してもよいし、電極基材上に機能層を形成して電極として使用してもよいし、離型基材上に形成した機能層を基材から一度剥離し、他の基材に貼り付けて電池部材として使用してもよい。
しかし、機能層から離型基材を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材としてセパレータ基材又は電極基材を用いることが好ましい。セパレータ基材又は電極基材に設けられた機能層は、セパレータ又は電極の耐熱性や強度を高める保護層としての機能と、特に電解液中においてセパレータと電極とを強固に接着させる接着剤層としての機能とを同時に発現させる単一の層として、好適に使用することができる。
【0113】
[セパレータ基材]
機能層を形成するセパレータ基材としては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
なお、セパレータ基材は、機能層以外の、所期の機能を発揮し得る任意の層をその一部に含んでいてもよい。
【0114】
[電極基材]
機能層を形成する電極基材(正極基材および負極基材)としては、特に限定されないが、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。
ここで、集電体、電極合材層中の成分(例えば、電極活物質(正極活物質、負極活物質)および電極合材層用結着材(正極合材層用結着材、負極合材層用結着材)など)、並びに、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものを用いることができる。
なお、電極基材は、機能層以外の、所期の機能を有する任意の層をその一部に含んでいてもよい。
【0115】
[離型基材]
機能層を形成する離型基材としては、特に限定されず、既知の離型基材を用いることができる。
【0116】
<非水系二次電池用機能層の形成方法>
上述したセパレータ基材、電極基材などの基材上に機能層を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。:
1)機能層用組成物をセパレータ基材または電極基材の表面(電極基材の場合は電極合材層側の表面、以下同じ)に塗布し、次いで乾燥する方法;
2)機能層用組成物にセパレータ基材または電極基材を浸漬後、これを乾燥する方法;
3)機能層用組成物を、離型基材上に塗布、乾燥して機能層を製造し、得られた機能層をセパレータ基材または電極基材の表面に転写する方法。
これらの中でも、前記1)の方法が、機能層の膜厚制御をしやすいことから特に好ましい。該1)の方法は、詳細には、機能層用組成物をセパレータ基材または電極基材上に塗布する工程(塗布工程)と、セパレータ基材または電極基材上に塗布された機能層用組成物を乾燥させて機能層を形成する工程(乾燥工程)を備える。
【0117】
塗布工程において、機能層用組成物をセパレータ基材または電極基材上に塗布する方法は、特に制限は無く、例えば、スプレーコート法、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。なかでも、より薄い機能層を形成する点から、グラビア法が好ましい。
また乾燥工程において、基材上の機能層用組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は好ましくは30〜80℃で、乾燥時間は好ましくは30秒〜10分である。
【0118】
なお、基材上に形成された機能層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。機能層の厚みが、前記範囲の下限値以上であることで、機能層の強度を十分に確保することができ、前記範囲の上限値以下であることで、機能層のイオン拡散性を確保し二次電池の低温出力特性をさらに向上させることができる。
【0119】
(非水系二次電池用セパレータ)
本発明の非水系二次電池用セパレータは、セパレータ基材と、前記セパレータ基材の少なくとも一方の表面上に、特定の有機粒子および機能層用結着材を含む機能層を備え、好ましくは機能層が上述した本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成された非水系二次電池用機能層である。
そして、本発明の非水系二次電池用セパレータは、セパレータ基材の空隙率M
0と、非水系二次電池用セパレータの空隙率M
1とから以下の式(1)で算出される空隙率変化割合M
Cが5%以上50%以下である。
M
C=(M
0−M
1)/M
0×100 ・・・(1)
【0120】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、上述の有機粒子などの寄与、そして、M
Cが特定の範囲内であることの寄与などにより、電解液中で機能層を介して電極と強固に密着しつつ、非水系二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
【0121】
<セパレータ基材>
セパレータ基材は、「非水系二次電池用機能層」の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。
そして、本発明の非水系二次電池用セパレータに用いるセパレータ基材の電解液浸漬後の空隙率M
0は、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上である。M
0が30%以上であることで、非水系二次電池用セパレータを備える二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、M
0の上限は特に限定されないが、セパレータ基材の強度を確保する観点から、通常60%以下である。
なお、電解液浸漬後の空隙率M
0は、セパレータ基材の製造条件を変更するなどの既知の方法で調節することができる。
【0122】
<セパレータ基材上の機能層>
セパレータ基材上に設けられる機能層は、少なくとも特定構造の有機粒子および機能層用結着材を含有し、任意にその他の成分を含有する。そして、機能層に含まれる有機粒子および機能層用結着材、並びにその他の成分は、「非水系二次電池機能層用組成物」の項で列挙したものと同様のものを用いることができ、それら各成分の好適な存在比は、非水系二次電池機能層用組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。そして機能層は、「非水系二次電池用機能層」の項で記載した方法を用いてセパレータ基材上に形成することができ、セパレータ基材上の機能層の好適な厚みの範囲も、「非水系二次電池用機能層」で開示した範囲と同様である。
【0123】
<非水系二次電池用セパレータの性状>
本発明の非水系二次電池用セパレータの電解液浸漬後の空隙率M
1は、好ましくは25%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは38%以上である。M
1が25%以上であることで、非水系二次電池用セパレータを備える二次電池の低温出力特性をさらに向上させることができる。また、M
1の上限は特に限定されないが、非水系二次電池用セパレータの強度を確保する観点から、通常50%以下である。
なお、電解液浸漬後の空隙率M
1は、機能層用組成物のη
0/η
1や、機能層用組成物の乾燥条件などを変更することで調節することができる。
【0124】
そして、セパレータ基材の空隙率M
0と、前記非水系二次電池用セパレータの空隙率M
1とから、式(1):M
C=(M
0−M
1)/M
0×100で算出される空隙率変化割合M
Cが、5%以上50%以下であることが必要であり、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは16%以上であり、好ましくは35%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは22%以下である。M
Cが前記範囲の下限値以上であると、電解液浸漬後における機能層のセパレータ基材への接着性が確保される。また、M
Cが前記範囲の上限値以下であると、機能層形成によるセパレータ基材の目詰まりが抑制される等して、非水系二次電池用セパレータのイオン拡散性が確保され、二次電池の低温出力特性が向上する。
【0125】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明の非水系二次電池用セパレータを備えるものである。より具体的には、本発明の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ、および電解液を備え、前記セパレータが、セパレータ基材と機能層を備える本発明の非水系二次電池用セパレータである。
本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用セパレータを備えているので、高温サイクル特性や低温出力特性などの電池特性に優れる。
【0126】
<正極および負極>
本発明の二次電池において、少なくともセパレータが機能層を有するが、正極および負極もそれぞれ機能層を有していてもよい。機能層を有する正極および負極としては、集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材の上に機能層を設けてなる電極を用いることができる。なお、電極基材およびセパレータ基材としては、「非水系二次電池用機能層」の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。
また、機能層を有さない正極および負極としては、特に限定されることなく、上述した電極基材よりなる電極を用いることができる。
【0127】
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウムイオン二次電池においてはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0128】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えばリチウムイオン二次電池においては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
【0129】
<非水系二次電池の製造方法>
非水系二次電池は、例えば、正極と負極とを本発明の非水系二次電池用セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することで製造し得る。ここで、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0130】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体(マクロモノマーを含む)を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、有機粒子を構成する重合体の電解液膨潤度、各重合体(コア部の重合体、シェル部の重合体および機能層用結着材)のガラス転移温度、各粒子(有機粒子および機能層用結着材)の体積平均粒子径D50、有機粒子のコアシェル比率、有機粒子の被覆率、機能層用組成物の粘度、セパレータ基材およびセパレータの電解液浸漬後の空隙率、反応性界面活性剤単量体およびマクロモノマーの数平均分子量、電解液浸漬後の機能層の接着性、並びに二次電池の高温サイクル特性および低温出力特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0131】
<有機粒子を構成する重合体の電解液膨潤度>
有機粒子のコア部およびシェル部の調製に使用した単量体組成物を使用し、コア部およびシェル部の重合条件と同様の重合条件で測定試料となる重合体(コア部の重合体およびシェル部の重合体)の水分散液をそれぞれ作製した。
次に、得られた水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、温度60℃で72時間乾燥した後、シャーレから取り出し100℃、20kg/cm
2の条件で5分間熱プレスして、厚み0.5mmのフィルムを製造した。そして、得られたフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得た。この試験片の重量を測定し、W0とした。また、前記試験片を電解液に温度60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬後の試験片の重量W1を測定した。そして、これらの重量W0およびW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算した。
なお、電解液としては、ECとDECとVCの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用いた。
<ガラス転移温度(Tg)>
コア部の重合体、シェル部の重合体のガラス転移温度の測定には、各重合体の調製に使用した単量体組成物を使用し、当該重合体の重合条件と同様の重合条件で、測定試料となる重合体を含む水分散液をそれぞれ作製し、当該水分散液を乾固させて得られる測定試料を使用した。
機能層用結着材のガラス転移温度の測定には、得られた機能層用結着材を含む水分散液を乾固させて得られる測定試料を使用した。
示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、製品名「EXSTAR DSC6220」)を用い、上述の測定試料10mgをアルミパンに計量し、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲−100℃〜500℃の間で、昇温速度10℃/分、常温常湿下で、DSC曲線を測定した。この昇温過程で、微分信号(DDSC)が0.05mW/分/mg以上となるDSC曲線の吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点でのDSC曲線の接線との交点から、ガラス転移温度を求めた。
<体積平均粒子径D50>
各粒子の体積平均粒子径D50は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD−3100」)により測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径とした。
<有機粒子のコアシェル比率>
有機粒子のコアシェル比率を、以下の手順で測定した。
調製した有機粒子を、可視光硬化性樹脂(日本電子株式会社製「D−800」)に十分分散させた後、包埋し、有機粒子を含有するブロック片を得た。次に、得られたブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ100nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製した。その後、四酸化ルテニウムを用いて測定用試料に染色処理を施した。
次に、染色処理を施した測定用試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEM−3100F」)にセットして、加速電圧80kVにて、有機粒子の断面構造を写真撮影した。電子顕微鏡の倍率は、視野に有機粒子1個の断面が入るように倍率を設定した。その後、撮影された有機粒子の断面構造を観察し、観察されたシェル部の構成に応じて、以下の手順で有機粒子のシェル部の平均厚みを測定した。そして、測定されたシェル部の平均厚みを有機粒子の体積平均粒子径D50で割ることにより、コアシェル比率を求めた。
<<シェル部が重合体の粒子により構成されている場合>>
有機粒子の断面構造から、シェル部を構成する重合体の粒子の最長径を測定した。シェル部を構成する重合体の粒子の最長径を、任意に選択した20個の有機粒子について測定し、その最長径の平均値をシェル部の平均厚みとした。
<<シェル部が粒子以外の形状を有している場合>>
有機粒子の断面構造から、シェル部の最大厚みを測定した。シェル部の最大厚みを、任意に選択した20個の有機粒子について測定し、その最大厚みの平均値をシェル部の平均厚みとした。
<有機粒子の被覆率>
有機粒子の被覆率を、以下の手順で測定した。
上記有機粒子のコアシェル比率の測定方法と同様にして、有機粒子の断面構造を写真撮影し、撮影された有機粒子の断面構造において、コア部の周の長さD1、および、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を計測し、その有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合(被覆割合)Rc(%)=(D2/D1)×100を算出した。
前記の被覆割合Rcを、任意に選択した20個の有機粒子について測定し、その平均値を、有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)とした。
なお、前記の被覆割合Rcは、断面構造からマニュアルで計算することもできるが、市販の画像解析ソフトを用いて計算することもできる。市販の画像解析ソフトとして、例えば「AnalySIS Pro」(オリンパス株式会社製)を用いることができる。
<機能層用組成物の粘度>
レオメーター(アントンパール社製、「MCR502」)を用いて、温度25℃におけるせん断速度100sec
−1での粘度η
0および温度25℃におけるせん断速度10000sec
−1での粘度η
1をそれぞれ測定した。そして得られたη
0、η
1の値を用いて、η
1に対するη
0の比(η
0/η
1)を算出した。
<セパレータ基材およびセパレータの電解液浸漬後の空隙率>
セパレータ基材、セパレータ基材と機能層とを備えるセパレータを準備し、それらをそれぞれ60℃の電解液に24時間浸漬した後、電解液から取り出し60℃で24時間乾燥させた。
なお、電解液としては、ECとDECとVCの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用いた。
その後、セパレータ基材の空隙率M
0およびセパレータの空隙率M
1を水銀圧入法により算出した。なお、水銀圧入法による空隙率測定は以下の条件で行った。
測定装置:マイクロメリティクス社製 オートポアIV 9510型
測定範囲:φ0.003μm〜400μm
水銀接触角:130°
水銀表面張力:0.485N/m
そして、空隙率変化割合M
C=(M
0−M
1)/M
0×100を算出した。
<反応性界面活性剤単量体およびマクロモノマーの数平均分子量>
反応性界面活性剤単量体およびマクロモノマーを、それぞれジメチルホルムアミドに溶解させて1%溶液を調製した。これを測定サンプルとして、標準物質にポリスチレンを用い、展開溶媒に、ジメチルホルムアミドの10体積%水溶液に0.85g/mlの硝酸ナトリウムを溶解させた溶液を用いたGPC測定を行った。
なお、GPC測定装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)、検出器は、HLC−8320GPCRI検出器(東ソー社製)、測定カラムは、TSKgeISuperHZM−M(東ソー社製)を用い、測定温度40℃、展開溶媒流速0.6mL/min、サンプル注入量20μlの条件で測定を行った。
<電解液浸漬後の機能層の接着性>
セパレータ基材と機能層とを備えるセパレータを準備し、幅10cm×長さ10cmの大きさで切り出し、試験片とした。この試験片を60℃の電解液に24時間浸漬した後、表面に付着した電解液を拭き取った。
なお、電解液としては、ECとDECとVCの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用いた。
その後、この試験片の機能層の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。ピール強度が大きいほど、電解液に膨潤した有機粒子の接着性が優れており、機能層が優れた接着性を発揮することを示す。
A:ピール強度が20N/m以上
B:ピール強度が15N/m以上20N/m未満
C:ピール強度が15N/m未満
<二次電池の高温サイクル特性>
製造した放電容量1000mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。次に、25℃の環境下で、4.4V、0.1Cの充電、2.75V、0.1Cの放電にて充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。その後、さらに、60℃の環境下で、同様の充放電の操作を繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。そして、サイクル前後での容量維持率ΔC(%)=C1/C0×100を算出し、下記の基準で評価した。容量維持率ΔCの値が大きいほど、高温サイクル特性に優れていることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが80%未満
<二次電池の低温出力特性>
製造した放電容量1000mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、4.4V、0.1C、5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、−10℃の環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。そして、ΔV=V0−V1で示す電圧変化を求め、下記の基準で評価した。この電圧変化が小さいほど、低温出力特性に優れていることを示す。
A:電圧変化ΔVが500mV以下
B:電圧変化ΔVが500mV超700mV以下
C:電圧変化ΔVが700mV超900mV以下
D:電圧変化ΔVが900mV超
【0132】
(実施例1)
<有機粒子の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、有機粒子のコア部形成用として、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのメタクリル酸メチル74部、酸基含有単量体としてのメタクリル酸4部、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート1部、反応性界面活性剤単量体としてのポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王社製、製品名「ラテムル(登録商標)PD−104」、数平均分子量2500)1部、イオン交換水150部、および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を添加し、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で、続いて、有機粒子のシェル部形成用として、芳香族ビニル単量体としてのスチレン19部と、酸基含有単量体としてのメタクリル酸1部との混合物を連続添加し、70℃に加温して重合を継続した。添加した全単量体の重合転化率が96%になった時点で、冷却し反応を停止して、有機粒子を含む水分散液を得た。
そして、得られた有機粒子の体積平均粒子径D50、コアシェル比率および被覆率を測定した。また、有機粒子を構成する重合体の電解液膨潤度およびガラス転移温度も測定した。結果を表1に示す。
<機能層用結着材の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過硫酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N−メチロールアクリルアミド1部およびアリルグリシジルエーテル1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、機能層用結着材であるアクリル系重合体を含む水分散液を調製した。
得られたアクリル系重合体の体積平均粒子径D50は0.15μm、ガラス転移温度は−35℃であった
<機能層用組成物の調製>
有機粒子を含む水分散液を固形分相当で100部、機能層用結着材としてのアクリル系重合体を含む水分散液を固形分相当で15部、表面張力調整剤(サンノプコ社製、「SN366」)1部を混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が30%になるように添加して、機能層用組成物を得た。得られた機能層用組成物の粘度η
0、粘度η
1を測定し、η
0/η
1を算出した。結果を表1に示す。
<機能層を備えるセパレータの作製>
セパレータ基材として、ポリエチレン製の多孔材料からなるセパレータ基材(セルガード社製、「セルガード2500」)を用意した。このセパレータ基材の空隙率M
0を測定した。結果を表1に示す。
そして、用意したセパレータ基材上に、機能層用組成物をグラビア法で塗布し、50℃で1分間乾燥させた。この操作をセパレータ基材の両面に施し、セパレータ基材の両面にそれぞれ厚み0.5μmの機能層を備えるセパレータを得た。得られたセパレータを用いて、電解液浸漬後の機能層の接着性を評価した。そして得られたセパレータの空隙率M
1を測定し、空隙率変化割合M
Cを算出した。結果を表1に示す。
【0133】
<負極の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止して、負極合材層用の粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部、水溶性重合体としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、および、イオン交換水を混合して固形分濃度が68%となるように調整した後、25℃で60分間混合した。次いで、固形分濃度が62%となるようにイオン交換水で調整し、さらに25℃で15分間混合した。その後、得られた混合液に、前述の粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理し、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
そして、前述のようにして得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理してプレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚さが80μmのプレス後の負極を得た。
【0134】
<正極の調製>
正極活物質としてのLiCoO
2(体積平均粒子径D50:12μm)を100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、正極合材層用の粒子状結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部と、N−メチルピロリドンとを混合し、全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
前述のようにして得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚さが80μmのプレス後の正極を得た。
【0135】
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られたプレス後の正極を49cm×5cmに切り出して正極合材層側の表面が上側になるように置き、その上に55cm×5.5cmに切り出した両面に機能層を備えるセパレータを配置した。さらに、上記で得られたプレス後の負極を、50cm×5.2cmに切り出し、これをセパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機により、捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃、0.5MPaでプレスし、扁平体とし、電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC(体積混合比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミ包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装を閉口し、非水系二次電池として放電容量1000mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池を用いて、低温出力特性および高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
【0136】
(実施例2、3、10および11)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用として添加した単量体の割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0137】
(実施例4)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部およびシェル部形成用として添加した単量体の割合を表1に示すように変更し、コア部形成の際に乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリムを1部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
(実施例5、6)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のシェル部形成用として添加した反応性界面活性剤単量体としてのポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム1部に替えて、それぞれマクロモノマーとして、メチルメタクリレートマクロモノマー(東亞合成社製、「AA−6」、数平均分子量6000)1部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリレート(ダイセル社製、「プラクセル(登録商標)FA5」、分子量689)1部を使用したこと以外は、実施例4と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
(実施例7、8)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用として添加した単量体の割合を表1に示すように変更し、コア部形成の際に乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリムを1部使用し、そして機能層用組成物の調製時に、水溶性重合体としてカルボン酸基が導入されたアクリルアミド重合体(荒川化学社製、「ポリストロン(登録商標)117」)を含む水溶液を固形分相当でそれぞれ0.2部、3部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0140】
(実施例9)
機能層用組成物の調製時に、水溶性重合体として、カルボン酸基が導入されたアクリルアミド重合体に替えてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、「MAC800LC」)を含む水溶液を固形分相当で0.2部添加したこと以外は、実施例7と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0141】
(実施例12)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のシェル部形成用として添加した単量体の割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0142】
(比較例1)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のシェル部形成用として添加した単量体の割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0143】
(比較例2)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用として添加した単量体の割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0144】
(比較例3)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のシェル部形成用として添加した単量体の割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例5と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0145】
(比較例4)
機能層用組成物の調製時に、水溶性重合体としてカルボン酸基が導入されたアクリルアミド重合体を含む水溶液を固形分相当で7部添加したこと以外は、比較例3と同様にして、有機粒子、機能層用結着材、機能層用組成物、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0146】
なお、以下に示す表1中、
「MMA」は、メタクリル酸メチルを示し、
「MAA」は、メタクリル酸を示し、
「EDMA」は、エチレングリコールジメタクリレートを示し、
「PD−104」は、花王社製 ラテムルPD−104を示し、
「SDBS」は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを示し、
「ST」は、スチレンを示し、
「AN」は、アクリルニトリルを示し、
「AA−6」は、東亞合成社製 AA−6を示し、
「FA5」は、ダイセル社製 プラクセルFA5を示し、
「ACL」は、アクリル系重合体を示し、
「ポリストロン」は、荒川化学社製 ポリストロン117を示し、
「CMC」は、日本製紙社製 MAC800LCを示し、
「PE」はポリエチレンを示す。
【0147】
【表1】
【0148】
上述の表1の実施例1〜12および比較例1〜4より、所定の範囲内の電解液膨潤度を有する重合体によりそれぞれ形成されたコア部とシェル部とからなる、所定のコアシェル構造を有する有機粒子と機能層用結着材を含み、η
0およびη
0/η
1の値が所定の範囲内である機能層用組成物を使用し、また、所定の範囲内の電解液膨潤度を有する重合体によりそれぞれ形成されたコア部とシェル部とからなる、所定のコアシェル構造を有する有機粒子と機能層用結着材を含み、M
0およびM
Cが所定の範囲内である機能層をセパレータ基材上に備えるセパレータを使用した実施例1〜12では、電解液浸漬後において機能層が良好な接着性を発揮し、また、二次電池が優れた高温サイクル特性および低温出力特性を発揮できていることが分かる。
また、上述の表1の実施例1〜3、10、11より、有機粒子のコア部の組成を変更することで、機能層の接着性、並びに二次電池の高温サイクル特性および低温出力特性を向上させ得ることがわかる。
さらに、上述の表1の実施例1、4より、界面活性剤単量体単位を有機粒子のコア部に導入することにより、シェル部に導入した場合に比して二次電池の低温出力特性を向上させ得ることがわかる。
加えて、上述の表1の実施例1、5、6より、界面活性剤単量体単位を有機粒子のコア部に導入することにより、シェル部にマクロモノマー構造単位を導入した場合に比して二次電池の高温サイクル特性を向上させ得ることがわかる。
そして、上述の表1の実施例1、7、8、9より、水溶性重合体を用いることで、機能層の接着性、並びに二次電池の高温サイクル特性および低温出力特性を低下させる虞があることがわかる。
また、上述の表1の実施例1、12より、有機粒子のシェル部の組成を変更することで、機能層の接着性、並びに二次電池の高温サイクル特性および低温出力特性を向上させ得ることがわかる。