(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
耐熱性樹脂層と、該耐熱性樹脂層に接する含フッ素樹脂層と、該含フッ素樹脂層に接する金属箔層とを有する積層板を製造する方法であって、下記の工程(a)および工程(b)を有する、積層板の製造方法。
(a)カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する含フッ素樹脂(A)を含む含フッ素樹脂フィルムと、金属箔とを、前記含フッ素樹脂(A)の融点未満で熱ラミネートすることによって、含フッ素樹脂層付き金属箔を得る工程。
(b)耐熱性樹脂(B)を含む耐熱性樹脂フィルムと、前記含フッ素樹脂層付き金属箔とを、前記耐熱性樹脂フィルムと前記含フッ素樹脂層とが接するように、前記含フッ素樹脂(A)の融点以上で熱ラミネートすることによって、前記積層板を得る工程。
前記含フッ素樹脂(A)が、重合体の製造の際に用いた単量体、連鎖移動剤および重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する前記官能基を有する含フッ素重合体である、請求項1または2に記載の積層板の製造方法。
前記工程(a)における熱ラミネートおよび前記工程(b)における熱ラミネートが、一対以上の金属ロールまたは一対以上の金属ベルトを有する熱ラミネート装置によって連続的に行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層板の製造方法。
前記工程(a)において、前記含フッ素樹脂フィルムと前記金属箔とを、(前記含フッ素樹脂(A)の融点−20℃)以下の温度で熱ラミネートする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層板の製造方法。
前記含フッ素樹脂(A)の372℃、荷重49Nの条件下における溶融流れ速度が、0.5〜15g/10分である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層板の製造方法。
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法で積層板を製造した後、前記積層板の金属箔層の不要部分をエッチングによって除去してパターン回路を形成する、フレキシブルプリント基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「耐熱性樹脂」とは、融点が280℃以上の高分子化合物、またはJIS C 4003:2010(IEC 60085:2007)で規定される最高連続使用温度が121℃以上の高分子化合物を意味する。
「含フッ素樹脂」とは、分子中にフッ素原子を有する高分子化合物を意味する。
「融点」とは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度を意味する。
「熱ラミネート」とは、加熱によって2つ以上の部材を貼り合わせることを意味する。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1〜1000g/10分となる温度が存在することを意味する。
「溶融流れ速度」とは、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定されるメルトマスフローレート(MFR)を意味する。
「カルボニル基含有基」とは、構造中にカルボニル基(−C(=O)−)を有する基を意味する。
「酸無水物基」とは、−C(=O)−O−C(=O)−で表される基を意味する。
「単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「単量体」とは、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
【0014】
<積層板>
「本発明の積層板」とは、後述する本発明の積層板の製造方法によって得られたものを意味する。本発明の積層板としては、フレキシブルプリント基板の材料として用いられる、いわゆるフレキシブル金属張積層板が挙げられる。
本発明の積層板は、耐熱性樹脂層と、該耐熱性樹脂層に接する含フッ素樹脂層と、該含フッ素樹脂層に接する金属箔層とを有する。
【0015】
図1は、本発明の積層板の一例を示す模式断面図である。積層板10は、耐熱性樹脂層12と、耐熱性樹脂層12の第1の面に積層された含フッ素樹脂層14と、含フッ素樹脂層14の、耐熱性樹脂層12とは反対側の表面に積層された金属箔層16とを有する。
【0016】
図2は、本発明の積層板の他の例を示す模式断面図である。積層板10は、耐熱性樹脂層12と、耐熱性樹脂層12の第1の面および第2の面に積層された2つの含フッ素樹脂層14と、各含フッ素樹脂層14の、耐熱性樹脂層12とは反対側の表面に積層された2つの金属箔層16とを有する。
【0017】
本発明の積層板の厚さは、通常10〜2500μmであり、フレキシブルプリント基板に用いる観点からは、12〜300μmが好ましく、18〜150μmがより好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0018】
(耐熱性樹脂層)
耐熱性樹脂層は、後述する耐熱性樹脂フィルムからなる層であり、耐熱性樹脂(B)(ただし、含フッ素樹脂(A)を除く。)を含む。耐熱性樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲において、後述する添加剤等を含んでもよい。
耐熱性樹脂層は、単層構造であってもよく、2層以上の積層構造であってもよい。
【0019】
耐熱性樹脂層の厚さは、3〜500μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、6〜50μmがさらに好ましい。耐熱性樹脂層の厚さが前記下限値以上であれば、電気絶縁性に優れる。耐熱性樹脂層の厚さが前記上限値以下であれば、積層板の全体の厚さを薄くできる。
【0020】
耐熱性樹脂層に含まれる耐熱性樹脂(B)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。耐熱性樹脂層中の耐熱性樹脂(B)の含有量は、耐熱性樹脂層の耐熱性の点から、耐熱性樹脂層の100質量%のうち、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。この含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0021】
耐熱性樹脂(B)としては、ポリイミド(芳香族ポリイミド等)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル等が挙げられる。
【0022】
耐熱性樹脂(B)としては、ポリイミドが好ましい。ポリイミドは、熱硬化性ポリイミドであってもよく、熱可塑性ポリイミドであってもよい。ポリイミドとしては、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、芳香族多価カルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮重合で製造される全芳香族ポリイミドが好ましい。
【0023】
ポリイミドは、通常、多価カルボン酸二無水物(またはその誘導体)とジアミンとの反応(重縮合)によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。
ポリイミド、特に芳香族ポリイミドは、その剛直な主鎖構造によって、溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を有する。そのため、まず、多価カルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって、有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸またはポリアミド酸)を合成し、ポリアミック酸の段階で様々な方法で成形加工が行われる。その後ポリアミック酸を加熱または化学的方法によって脱水反応させて環化(イミド化)し、ポリイミドとされる。
【0024】
芳香族多価カルボン酸二無水物の具体例としては、たとえば、特開2012−145676号公報の[0055]に記載したもの等が挙げられる。また、非芳香族系の多価カルボン酸二無水物であるエチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物も、芳香族系のものと遜色なく用いることができる。
多価カルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
芳香族ジアミンの具体例としては、たとえば、特開2012−145676号公報の[0057]に記載したもの等が挙げられる。芳香族ジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
耐熱性樹脂層には、添加剤が含まれていてもよい。かかる添加剤としては、誘電率や誘電正接が低い無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、炭素繊維、ガラスバルーン、炭素バーン、木粉、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
無機フィラーは、多孔質であってもよく、非多孔質であってもよく、誘電率や誘電正接がさらに低い点から、多孔質が好ましい。無機フィラーは、樹脂への分散性の向上の点から、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の表面処理剤による表面処理が施されてもよい。
耐熱性樹脂層中の無機フィラーなどの添加剤の含有量は、耐熱性樹脂(B)の100質量部に対して0.1〜100質量部が好ましく、0.1〜60質量部がより好ましい。
【0028】
(含フッ素樹脂層)
含フッ素樹脂層は、後述する含フッ素樹脂フィルムからなる層であり、特定の含フッ素樹脂(A)を含む。含フッ素樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲において他の樹脂、添加剤等を含んでもよい。含フッ素樹脂層は、単層構造であってもよく、2層以上の積層構造であってもよい。
【0029】
含フッ素樹脂層の厚さは、通常1〜1000μmであり、はんだこて等に対する耐熱性の観点からは、1〜20μmが好ましく、3〜20μmがより好ましく、3〜15μmがさらに好ましい。含フッ素樹脂層の厚さが前記上限値以下であれば、積層板の全体の厚さを薄くできる。含フッ素樹脂層の厚さが前記下限値以上であれば、耐熱性樹脂層が高温でのはんだリフローに対応する雰囲気に曝されたときに、熱による含フッ素樹脂層の膨れ(発泡)が生じにくく、また、電気絶縁性に優れる。
【0030】
含フッ素樹脂層は、耐熱性樹脂層の第1の面のみに積層してもよく、または耐熱性樹脂層の第1の面および第2の面に積層してもよい。積層板の反りを抑制する、電気的信頼性に優れる両面金属張積層板を得る等の点からは、耐熱性樹脂層の第1の面および第2の面に含フッ素樹脂層を積層することが好ましい。
耐熱性樹脂層の第1の面および第2の面に含フッ素樹脂層を積層する場合、各含フッ素樹脂層の組成(含フッ素樹脂(A)の種類、他の樹脂や添加剤の種類および、これらの含有量等)や厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。積層板の反りの抑制の点からは、各含フッ素樹脂層の組成や厚さは同じであることが好ましい。
【0031】
含フッ素樹脂層に含まれる含フッ素樹脂(A)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
含フッ素樹脂層中の含フッ素樹脂(A)の含有量は、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度の点から、含フッ素樹脂層の100質量%のうち、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。含フッ素樹脂(A)の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0032】
含フッ素樹脂(A)は、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基(以下、官能基(I)と記す。)を有する含フッ素樹脂である。官能基(I)を有することによって、含フッ素樹脂(A)を含む含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度が高くなる。
【0033】
官能基(I)は、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度の点から、含フッ素樹脂(A)の主鎖の末端基および主鎖のペンダント基のいずれか一方または両方として存在することが好ましい。
官能基(I)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0034】
含フッ素樹脂(A)は、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度の点から、官能基(I)として少なくともカルボニル基含有基を有することが好ましい。カルボニル基含有基としては、たとえば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基等が挙げられる。
【0035】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、たとえば、炭素数2〜8のアルキレン基等が挙げられる。なお、該アルキレン基の炭素数は、カルボニル基を含まない状態での炭素数である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ハロホルミル基は、−C(=O)−X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。すなわちハロホルミル基としてはフルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
【0036】
含フッ素樹脂(A)中の官能基(I)の含有量は、含フッ素樹脂(A)の主鎖炭素数1×10
6個に対し10〜60000個が好ましく、100〜50000個がより好ましく、100〜10000個がさらに好ましく、300〜5000個が特に好ましい。官能基(I)の含有量が前記下限値以上であれば、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度がさらに高くなる。官能基(I)の含有量が前記上限値以下であれば、熱ラミネートの温度を低くしても、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度を高くできる。
【0037】
官能基(I)の含有量は、核磁気共鳴(NMR)分析、赤外吸収スペクトル分析等の方法によって測定できる。たとえば、特開2007−314720号公報に記載のように赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、含フッ素樹脂(A)を構成する全単位中の官能基(I)を有する単位の割合(モル%)を求め、該割合から、官能基(I)の含有量を算出できる。
【0038】
含フッ素樹脂(A)の融点は、260〜320℃が好ましく、295〜315℃がより好ましく、295〜310℃がさらに好ましい。含フッ素樹脂(A)の融点が前記下限値以上であれば、含フッ素樹脂層の耐熱性に優れる。含フッ素樹脂(A)の融点が前記上限値以下であれば、含フッ素樹脂(A)の成形性に優れる。
含フッ素樹脂(A)の融点は、含フッ素樹脂(A)を構成する単位の種類や割合、含フッ素樹脂(A)の分子量等によって調整できる。たとえば、後述する単位(u1)の割合が多くなるほど、融点が上がる傾向がある。
【0039】
含フッ素樹脂(A)としては、後述する含フッ素樹脂フィルムを製造しやすい点から、溶融成形が可能なものが好ましい。
溶融成形が可能な含フッ素樹脂(A)としては、公知の溶融成形が可能な含フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン/フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体等)に官能基(I)を導入した含フッ素樹脂;後述する含フッ素重合体(α1)等が挙げられる。
【0040】
含フッ素樹脂(A)としては、荷重49Nの条件下、含フッ素樹脂(A)の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1〜1000g/10分(好ましくは0.5〜100g/10分、より好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは5〜20g/10分)となる温度が存在するものが好ましい。溶融流れ速度が前記下限値以上であれば、含フッ素樹脂(A)の成形性に優れ、含フッ素樹脂層の表面平滑性、外観に優れる。溶融流れ速度が前記上限値以下であれば、含フッ素樹脂層の機械的強度に優れる。
【0041】
含フッ素樹脂(A)の372℃、荷重49Nの条件下における溶融流れ速度は、0.5〜15g/10分が好ましく、1〜15g/10分がより好ましく、1〜12g/10分がさらに好ましい。溶融流れ速度が前記上限値以下であれば、はんだこて耐熱性が向上する傾向がある。溶融流れ速度が前記下限値以上であれば、含フッ素樹脂(A)の成形性に優れる。
【0042】
溶融流れ速度は、含フッ素樹脂(A)の分子量の目安であり、溶融流れ速度が大きいと分子量が小さく、溶融流れ速度が小さいと分子量が大きいことを示す。含フッ素樹脂(A)の分子量、ひいては溶融流れ速度は、含フッ素樹脂(A)の製造条件によって調整できる。たとえば、単量体の重合時に重合時間を短縮すると、溶融流れ速度が大きくなる傾向がある。溶融流れ速度を小さくするためには、含フッ素樹脂(A)を熱処理して架橋構造を形成し、分子量を上げる方法;含フッ素樹脂(A)を製造する際のラジカル重合開始剤の使用量を減らす方法;等が挙げられる。
【0043】
含フッ素樹脂(A)としては、製造方法の違いによって、たとえば、下記のものが挙げられる。
(α)重合体の製造の際に用いた単量体、連鎖移動剤および重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する官能基(I)を有する含フッ素重合体。
(β)コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理によって官能基(I)を有しない含フッ素樹脂に官能基(I)を導入した含フッ素樹脂。
(γ)官能基(I)を有しない含フッ素樹脂に、官能基(I)を有する単量体をグラフト重合して得られた含フッ素樹脂。
【0044】
含フッ素樹脂(A)としては、下記の理由から、含フッ素重合体(α)が好ましい。
・含フッ素重合体(α)においては、含フッ素重合体(α)の主鎖の末端基および主鎖のペンダント基のいずれか一方または両方に官能基(I)が存在するため、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度がさらに高くなる。
・含フッ素樹脂(β)における官能基(I)は、表面処理によって形成されたため不安定であり、時間とともに消失しやすい。
【0045】
含フッ素重合体(α)における官能基(I)が、含フッ素重合体(α)の製造に用いられた単量体に由来する場合、含フッ素重合体(α)は、下記方法(1)によって製造できる。この場合、官能基(I)は、製造時に単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位中に存在する。
方法(1):単量体の重合によって含フッ素重合体(α)を製造する際に、官能基(I)を有する単量体を用いる。
【0046】
含フッ素重合体(α)における官能基(I)が、含フッ素重合体(α)の製造に用いられた連鎖移動剤に由来する場合、含フッ素重合体(α)は、下記方法(2)によって製造できる。この場合、官能基(I)は、含フッ素重合体(α)の主鎖の末端基として存在する。
方法(2):官能基(I)を有する連鎖移動剤の存在下に、単量体の重合によって含フッ素重合体(α)を製造する。
官能基(I)を有する連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0047】
含フッ素重合体(α)における官能基(I)が、含フッ素重合体(α)の製造に用いられた重合開始剤に由来する場合、含フッ素重合体(α)は、下記方法(3)によって製造できる。この場合、官能基(I)は、含フッ素重合体(α)の主鎖の末端基として存在する。
方法(3):官能基(I)を有するラジカル重合開始剤等の重合開始剤の存在下に、単量体の重合によって含フッ素重合体(α)を製造する。
官能基(I)を有するラジカル重合開始剤としては、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0048】
含フッ素重合体(α)における官能基(I)が、含フッ素重合体(α)の製造に用いられた単量体、連鎖移動剤、重合開始剤のうちの2種以上に由来する場合、含フッ素重合体(α)は前記方法(1)〜(3)のうちの2種以上を併用することによって製造できる。
含フッ素重合体(α)としては、官能基(I)の含有量を容易に制御でき、そのため、金属箔層との接着強度を調整しやすい点から、方法(1)で製造された、単量体に由来する官能基(I)を有する含フッ素重合体(α)が好ましい。
【0049】
単量体に由来する官能基(I)を有する含フッ素重合体(α)としては、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度がさらに高くなる点から、下記の含フッ素重合体(α1)が特に好ましい。
テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に由来する単位(u1)と、酸無水物基を有する環状炭化水素単量体に由来する単位(u2)と、含フッ素単量体(ただし、TFEを除く。)に由来する単位(u3)とを有する含フッ素重合体(α1)。ここで、単位(u2)の有する酸無水物基が官能基(I)に相当する。
【0050】
単位(u2)を構成する単量体としては、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等が挙げられる。該単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
単位(u2)を構成する単量体としては、IAH、CAHおよびNAHからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。かかる場合、無水マレイン酸を用いたときに必要となる特殊な重合方法(特開平11−193312号公報参照)を用いることなく、酸無水物基を有する含フッ素重合体(α1)を容易に製造できる。また、単位(u2)を構成する単量体としては、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度がさらに高くなる点から、NAHが好ましい。
【0052】
単位(u3)を構成する含フッ素単量体としては、重合性炭素−炭素二重結合を1つ有する含フッ素化合物が好ましく、たとえば、フルオロオレフィン(フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」とも記す。)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」とも記す。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」とも記す。)等。ただし、TFEを除く。)、CF
2=CFOR
f1(ただし、R
f1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基である。)、CF
2=CFOR
f2SO
2X
1(ただし、R
f2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基であり、X
1はハロゲン原子または水酸基である。)、CF
2=CFOR
f3CO
2X
2(ただし、R
f3は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基であり、X
2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。)、CF
2=CF(CF
2)
pOCF=CF
2(ただし、pは1または2である。)、CH
2=CX
3(CF
2)
qX
4(ただし、X
3は水素原子またはフッ素原子であり、qは2〜10の整数であり、X
4は水素原子またはフッ素原子である。)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン)等が挙げられる。
【0053】
単位(u3)を構成する含フッ素単量体としては、VdF、CTFE、HFP、CF
2=CFOR
f1、およびCH
2=CX
3(CF
2)
qX
4からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、CF
2=CFOR
f1、HFPがより好ましい。
CF
2=CFOR
f1としては、CF
2=CFOCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
8F等が挙げられ、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましい。
CH
2=CX
3(CF
2)
qX
4としては、CH
2=CH(CF
2)
2F、CH
2=CH(CF
2)
3F、CH
2=CH(CF
2)
4F、CH
2=CF(CF
2)
3H、CH
2=CF(CF
2)
4H等が挙げられ、CH
2=CH(CF
2)
4F、またはCH
2=CH(CF
2)
2Fが好ましい。
【0054】
単位(u1)の割合は、単位(u1)と単位(u2)と単位(u3)との合計100モル%のうち、50〜99.89モル%が好ましく、50〜99.4モル%がより好ましく、50〜98.9モル%がさらに好ましい。
単位(u2)の割合は、単位(u1)と単位(u2)と単位(u3)との合計100モル%のうち、0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましく、0.1〜2モル%がさらに好ましい。
単位(u3)の割合は、単位(u1)と単位(u2)と単位(u3)との合計100モル%のうち、0.1〜49.99モル%が好ましく、0.5〜49.9モル%がより好ましく、1〜49.9モル%がさらに好ましい。
【0055】
各単位の割合が前記範囲内であれば、含フッ素樹脂層の耐熱性、耐薬品性、高温での弾性率に優れる。単位(u2)の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体(α1)における酸無水物基の量が適切になり、含フッ素樹脂層と、耐熱性樹脂層または金属箔層との界面における接着強度がさらに高くなる。単位(u3)の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体(α1)の成形性に優れ、含フッ素樹脂層の耐屈曲性等に優れる。各単位の割合は、含フッ素重合体(α1)の溶融NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により算出できる。
【0056】
含フッ素重合体(α1)が単位(u1)と単位(u2)と単位(u3)とからなる場合、単位(u2)の割合が0.01モル%であることは、含フッ素重合体(α1)中の酸無水物基の含有量が含フッ素重合体(α1)の主鎖炭素数1×10
6個に対して100個であることに相当する。単位(u2)の割合が5モル%であることは、含フッ素重合体(α1)中の酸無水物基の含有量が含フッ素重合体(α1)の主鎖炭素数1×10
6個に対して50000個であることに相当する。
含フッ素重合体(α1)には、単位(u2)における酸無水物基の一部が加水分解し、その結果、酸無水物基含有環状炭化水素単量体に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、マレイン酸等)に由来する単位が含まれる場合がある。該ジカルボン酸に由来する単位が含まれる場合、該単位の割合は、単位(u2)の割合に含まれるものとする。
【0057】
含フッ素重合体(α1)は、単位(u1)〜(u3)に加えて、非含フッ素単量体(ただし、酸無水物基含有環状炭化水素単量体を除く。)に由来する単位(u4)を有していてもよい。
非含フッ素単量体としては、重合性炭素−炭素二重結合を1つ有する非含フッ素化合物が好ましく、たとえば、炭素数3以下のオレフィン(エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(酢酸ビニル等)等が挙げられる。非含フッ素単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非含フッ素単量体としては、エチレン、プロピレン、または酢酸ビニルが好ましく、エチレンが特に好ましい。
含フッ素重合体(α1)が単位(u4)を有する場合、単位(u4)の割合は、単位(u1)と単位(u2)と単位(u3)との合計100モル%に対して、5〜90モル%が好ましく、5〜80モル%がより好ましく、10〜65モル%がさらに好ましい。
【0058】
含フッ素重合体(α1)の全単位の合計を100モル%としたとき、単位(u1)と単位(u2)と単位(u3)との合計は、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましく、68モル%以上がさらに好ましい。好ましい上限値は、100モル%である。
【0059】
含フッ素重合体(α1)の好ましい具体例としては、TFE/PPVE/NAH共重合体、TFE/PPVE/IAH共重合体、TFE/PPVE/CAH共重合体、TFE/HFP/IAH共重合体、TFE/HFP/CAH共重合体、TFE/VdF/IAH共重合体、TFE/VdF/CAH共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
4F/IAH/エチレン共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
4F/CAH/エチレン共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
2F/IAH/エチレン共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
2F/CAH/エチレン共重合体、等が挙げられる。
【0060】
含フッ素樹脂(A)の製造方法:
含フッ素樹脂(A)は、常法により製造できる。単量体の重合によって含フッ素樹脂(A)を製造する場合、重合方法としては、ラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましい。
重合方法としては、塊状重合法、有機溶媒(フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等)を用いる溶液重合法、水性媒体と必要に応じて適当な有機溶媒とを用いる懸濁重合法、水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられ、溶液重合法が好ましい。
【0061】
ラジカル重合開始剤としては、その半減期が10時間である温度が0〜100℃である開始剤が好ましく、20〜90℃である開始剤がより好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル等)、非フッ素系ジアシルペルオキシド(イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等)、ペルオキシジカーボネート(ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等)、ペルオキシエステル(tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等)、含フッ素ジアシルペルオキシド((Z(CF
2)
rCOO)
2(ただし、Zは水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、rは1〜10の整数である。)で表される化合物等)、無機過酸化物(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)等が挙げられる。
【0062】
単量体の重合時には、含フッ素樹脂(A)の溶融粘度を制御するために、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、アルコール(メタノール、エタノール等)、クロロフルオロハイドロカーボン(1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等)、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等)が挙げられる。
【0063】
溶液重合法で用いる有機溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、クロロヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル等が挙げられる。炭素数は、4〜12が好ましい。
ペルフルオロカーボンの具体例としては、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。
ヒドロフルオロカーボンの具体例としては、1−ヒドロペルフルオロヘキサン等が挙げられる。
クロロヒドロフルオロカーボンの具体例としては、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
ヒドロフルオロエーテルの具体例としては、メチルペルフルオロブチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチル2,2,1,1−テトラフルオロエチルエーテル等が挙げられる。
【0064】
重合温度は、0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は、0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は、1〜30時間が好ましい。
【0065】
含フッ素重合体(α1)を製造する場合、単位(u2)を構成する単量体の重合中の濃度は、全単量体に対して0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましく、0.1〜2モル%がさらに好ましい。該単量体の濃度が前記範囲内であれば、重合速度が適度なものになる。該単量体の濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向がある。
単位(u2)を構成する単量体が重合で消費されるにしたがって、消費された量を連続的または断続的に重合槽内に供給し、該単量体の濃度を前記範囲内に維持することが好ましい。
【0066】
耐熱性樹脂層に含有される他の樹脂は、電気的信頼性の特性を損なわない限り、特に限定されるものではない。他の樹脂としては、たとえば、含フッ素樹脂(A)以外の含フッ素樹脂、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。なかでも、電気的信頼性の点から、含フッ素樹脂(A)以外の含フッ素共重合体が好ましい。
【0067】
含フッ素樹脂(A)以外の含フッ素樹脂としては、たとえば、テトラフルオロエチレン/フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
含フッ素樹脂(A)以外の含フッ素樹脂の融点は、280〜320℃が好ましい。融点が前記範囲内であれば、はんだリフローに相当する雰囲気に曝されたときに、含フッ素樹脂層に熱による膨れ(発泡)が生じにくい。
【0068】
耐熱性樹脂層に含有される添加剤としては、耐熱性樹脂層に含まれるものと同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
【0069】
(金属箔層)
金属箔層は、金属箔からなる層である。金属箔は、特に限定されず、積層板の用途に応じて適宜選択すればよい。たとえば、電子機器、電気機器に積層板を用いる場合、金属箔の材質としては、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む。)、アルミニウムまたはアルミニウム合金が挙げられる。電子機器、電気機器に用いられる通常の積層板においては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が多用されており、本発明においても銅箔が好適である。
【0070】
金属箔の表面には、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜)や耐熱層が形成されていてもよい。また、含フッ素樹脂層との接着強度を高くするために、金属箔の表面にカップリング剤処理等を施してもよい。
金属箔の厚さは、特に限定されず、積層板の用途に応じて、充分な機能が発揮できる厚さであればよい。
【0071】
本発明の積層板にあっては、含フッ素樹脂層が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基(I)を有する含フッ素樹脂(A)を含むため、耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面、および含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度が充分に高い。
【0072】
<積層板の製造方法>
本発明の積層板の製造方法は、下記の工程(a)および工程(b)、さらに、必要に応じて実施されるる、工程(x)、工程(y)および工程(z)を有する。
(a)含フッ素樹脂(A)を含む含フッ素樹脂フィルムと、金属箔とを、含フッ素樹脂(A)の融点未満で熱ラミネートすることによって、含フッ素樹脂層付き金属箔を得る工程。
(x)含フッ素樹脂層付き金属箔の反りを矯正する工程。
(b)耐熱性樹脂(B)を含む耐熱性樹脂フィルムと、含フッ素樹脂層付き金属箔とを、耐熱性樹脂フィルムと含フッ素樹脂層とが接するように、含フッ素樹脂(A)の融点以上で熱ラミネートすることによって、積層板を得る工程。
(y)積層板の反りを矯正する工程。
(z)積層板に加熱処理を施す工程。
【0073】
(熱ラミネート装置)
工程(a)における熱ラミネートおよび工程(b)における熱ラミネートは、製造効率の点から、一対以上の金属ロールまたは一対以上の金属ベルトから構成される熱ラミネート手段を有する熱ラミネート装置によって連続的に行われることが好ましい。
一対以上の金属ロールを有する熱ラミネート装置としては、熱ロールラミネート装置等が挙げられる。一対以上の金属ベルトを有する熱ラミネート装置としては、ダブルベルトプレス等が挙げられる。
【0074】
熱ラミネート装置としては、装置構成が単純であり、保守コストの面で有利であるという点から、熱ロールラミネート装置が好ましい。
熱ロールラミネート装置は、2つの部材を加熱しながら圧着できる一対以上の金属ロールを有する装置であればよく、その具体的な装置構成は特に限定されるものではない。
【0075】
熱ラミネート手段における加熱方式は、特に限定されるものではなく、たとえば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱し得る従来公知の方式を採用できる。
熱ラミネート手段における加圧方式は、特に限定されるものではなく、たとえば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用できる。
【0076】
熱ラミネート装置には、熱ラミネート手段(一対以上の金属ロール等)の前段に、各部材を送り出す送出手段を設けてもよく、熱ラミネート手段の後段に、貼り合わされた部材を巻き取る巻取手段を設けてもよい。各部材の送出手段および巻取手段を設けることによって、生産性をより一層向上できる。各部材の送出手段および巻取手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、たとえば、各部材をロール状に巻き取ることのできる公知の巻取機等が挙げられる。
【0077】
熱ラミネート装置には、金属箔層の外観を良好なものとするために、熱ラミネート手段と金属箔との間に配置される保護材料を送り出す送出手段および保護材料を巻き取る巻取手段を設けてもよい。保護材料の送出手段および巻取手段を設けることによって、一度使用された保護材料を巻き取って送り出し側に再度設置することで保護材料を再利用できる。また、保護材料を巻き取る際に、保護材料の両端部を揃えるために、端部位置検出手段および巻取位置修正手段を設けてもよい。これによって、精度よく保護材料の端部を揃えて巻き取ることができ、再利用の効率を高めることができる。保護材料の送出手段、巻取手段、端部位置検出手段および巻取位置修正手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、たとえば、従来公知の各種装置が挙げられる。
【0078】
保護材料としては、熱ラミネートの際の加熱温度に耐え得るものであれば特に限定されず、耐熱性プラスチックフィルム(非熱可塑性ポリイミドフィルム等)、金属箔(銅箔、アルミニウム箔、SUS箔等)等が挙げられる。耐熱性、再利用性等のバランスが優れる点から、非熱可塑性ポリイミドフィルムが好ましい。
非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚さは、75μm以上が好ましい。非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚さが薄いと、熱ラミネートの際の緩衝および保護の役目を充分に果たさないおそれがある。保護材料は、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
【0079】
(工程(a))
含フッ素樹脂フィルムと金属箔とを熱ラミネートすることによって含フッ素樹脂層付き金属箔を得る。
含フッ素樹脂フィルムは含フッ素樹脂(A)を含むものであればよい。含フッ素樹脂フィルムは単層フィルムであってもよく、積層フィルムであってもよい。含フッ素樹脂フィルムの厚さは、通常1〜1000μmであり、1〜20μmが好ましく、3〜20μmがより好ましく、3〜15μmがさらに好ましい。
【0080】
含フッ素樹脂フィルムは、たとえば、下記の方法によって得られる。
・含フッ素樹脂(A)そのもの、または含フッ素樹脂(A)を含む樹脂組成物を、公知の成形方法(押出成形法、インフレーション成形法等)によってフィルム状に成形する方法。
・官能基(I)を有さない含フッ素樹脂を含む含フッ素樹脂フィルムに、コロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の表面処理を施し、官能基(I)を導入する方法。
【0081】
含フッ素樹脂フィルムには、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは180〜250℃、特に好ましくは熱ラミネートの温度以上250℃以下で加熱処理を予め施してもよい。加熱処理を予め施すことによって、工程(a)における含フッ素樹脂フィルムの収縮を小さくでき、その結果、含フッ素樹脂層付き金属箔の反りを低減できる。
【0082】
図3は、工程(a)に用いられる熱ロールラミネート装置の一例を示す概略構成図である。熱ロールラミネート装置20においては、ロール22から連続的に送り出された長尺の含フッ素樹脂フィルム14’と、ロール24から連続的に送り出された長尺の金属箔16’とが、一対の金属ロール26において重ねられた状態となり、一対の金属ロール26の間を連続的に通過する際に加熱、加圧されることによって熱ラミネートされ、含フッ素樹脂層付き金属箔18となる。一対の金属ロール26の間を通過した含フッ素樹脂層付き金属箔18は、ロール28に連続的に巻き取られる。
【0083】
金属ロールまたは金属ベルトの温度、すなわち熱ラミネートの温度は、含フッ素樹脂(A)の融点未満であり、(融点−20℃)以下が好ましく、(融点−50℃)以下がより好ましい。熱ラミネートの温度が前記上限値以下であれば、含フッ素樹脂フィルムが加熱された瞬間に幅方向に収縮しにくく、切れにくい。また、含フッ素樹脂フィルムが金属ロールまたは金属ベルトに付着しにくい。
熱ラミネートの温度は、(含フッ素樹脂(A)の融点−200℃)以上が好ましく、(融点−180℃)以上がより好ましく、(融点−150℃)以上がさらに好ましい。熱ラミネートの温度が前記下限値以上であれば、含フッ素樹脂フィルムと金属箔とが仮接着された状態となり、後工程において含フッ素樹脂層と金属箔との剥離が生じにくい。
【0084】
一対の金属ロール間の圧力または一対の金属ベルト間の圧力、すなわち熱ラミネートの圧力は、49〜1764N/cmが好ましく、98〜1470N/cmがより好ましい。熱ラミネートの圧力が前記範囲内であれば、熱ラミネートの温度、熱ラミネートの速度および熱ラミネートの圧力の3つの条件を良好なものにすることができ、生産性をより一層向上できる。
【0085】
熱ラミネートの速度は、0.5m/分以上が好ましく、1.0m/分以上がより好ましい。熱ラミネートの速度が0.5m/分以上であれば、充分な熱ラミネートが可能になる。熱ラミネートの速度が1.0m/分以上であれば、生産性をより一層向上できる。
【0086】
フッ素樹脂層付き金属箔における含フッ素樹脂層と金属箔との界面の接着強度は、0.1N/cm以上が好ましく、0.2N/cm以上がより好ましく、0.3N/cm以上がさらに好ましい。接着強度が前記下限値以上であれば、後工程において含フッ素樹脂層と金属箔との剥離が生じにくい。
【0087】
(工程(x))
工程(a)において、含フッ素樹脂フィルムの厚さを薄くする、熱ラミネートの温度を低くする等によって、含フッ素樹脂層付き金属箔の反りを抑えることができる。
それでもなお、工程(a)において含フッ素樹脂層付き金属箔に反りが生じた場合には、工程(b)の前に工程(x)を実施することにより含フッ素樹脂層付き金属箔の反りを矯正してもよい。
【0088】
工程(x)における含フッ素樹脂層付き金属箔の反りの矯正は、含フッ素樹脂層付き金属箔に、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは180〜250℃、特に好ましくは熱ラミネートの温度以上250℃以下で加熱処理を施すことによって行われる。
【0089】
(工程(b))
耐熱性樹脂フィルムと含フッ素樹脂層付き金属箔とを、耐熱性樹脂フィルムと含フッ素樹脂層とが接するように、熱ラミネートすることによって積層板を得る。熱ラミネートの際には、含フッ素樹脂層付き金属箔を、耐熱性樹脂フィルムの第1の面のみに配置してもよいし、耐熱性樹脂フィルムの第1の面および第2の面に配置してもよい。
【0090】
耐熱性樹脂フィルムは、耐熱性樹脂(B)を含むものであればよく、単層フィルムであってもよく、積層フィルムであってもよい。
耐熱性樹脂フィルムの厚さは、3〜500μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、6〜50μmがさらに好ましい。
【0091】
耐熱性樹脂フィルムは、たとえば、耐熱性樹脂(B)そのもの、または耐熱性樹脂(B)を含む樹脂組成物を、公知の成形方法(押出成形法、インフレーション成形法等)によってフィルム状に成形する方法によって得られる。
【0092】
図4は、工程(b)に用いられる熱ロールラミネート装置の一例を示す概略構成図である。熱ロールラミネート装置30においては、ロール32から連続的に送り出された長尺の耐熱性樹脂フィルム12’と、工程(a)において含フッ素樹脂層付き金属箔18を巻き取ったロール28から連続的に送り出された長尺の含フッ素樹脂層付き金属箔18とが、一対の金属ロール36において重ねられた状態となり、一対の金属ロール36の間を連続的に通過する際に加熱、加圧されることによって熱ラミネートされ、積層板10となる。一対の金属ロール36の間を通過した積層板10は、ロール38に連続的に巻き取られる。
【0093】
金属ロールまたは金属ベルトの温度、すなわち熱ラミネートの温度は、含フッ素樹脂(A)の融点以上であり、(融点+10℃)以上が好ましく、(融点+20℃)以上がより好ましい。熱ラミネートの温度が前記上限値以下であれば、耐熱性樹脂フィルムと含フッ素樹脂層付き金属箔とを良好に熱ラミネートできる。熱ラミネートの温度が(融点+20℃)以上であれば、熱ラミネートの速度を上昇させて、生産性をより向上できる。
熱ラミネートの温度は、420℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。
【0094】
一対の金属ロール間の圧力または一対の金属ベルト間の圧力、すなわち熱ラミネートの圧力は、49〜1764N/cmが好ましく、98〜1600N/cmがより好ましい。熱ラミネートの圧力が前記範囲内であれば、熱ラミネートの温度、熱ラミネートの速度および熱ラミネートの圧力の3つの条件を良好なものにすることができ、生産性をより一層向上できる。
【0095】
熱ラミネートの速度は、0.5m/分以上が好ましく、1.0m/分以上がより好ましい。熱ラミネートの速度が0.5m/分以上であれば、充分な熱ラミネートが可能になる。熱ラミネートの速度が1.0m/分以上であれば、生産性をより一層向上できる。
【0096】
積層板における耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面の接着強度は、5N/cm以上が好ましく、6N/cm以上がより好ましく、7N/cm以上がさらに好ましい。
積層板における含フッ素樹脂層と金属箔との界面の接着強度は、7N/cm以上が好ましく、8N/cm以上がより好ましく、10N/cm以上がさらに好ましい。
【0097】
(工程(y))
工程(b)において積層板に反りが生じた場合には、工程(y)を実施することにより積層板の反りを矯正してもよい。
工程(y)における積層板の反りの矯正は、積層板に、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは180〜250℃、特に好ましくは熱ラミネートの温度以上250℃以下で加熱処理を施すことによって行われる。
【0098】
(工程(z))
積層板のはんだこて耐熱性の向上や、積層板の各層間の接着強度向上のために、工程(z)を実施し、積層板に加熱処理を施すことによって含フッ素樹脂(A)の溶融流れ速度を低下させてもよい。工程(z)における加熱処理は、たとえば、上述した熱ラミネート装置を用いて行う。加熱処理の温度は、370℃以上が好ましく、380℃以上がより好ましい。この場合の上限は、通常420℃以下、好ましくは400℃以下である。
【0099】
また、積層板に、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下の酸素濃度が低い環境下、または真空下で含フッ素樹脂(A)の融点以上で熱処理を施すことにより、後述するフレキシブルプリント基板を、はんだリフロー工程やその他の熱処理工程(カバーレイ装着等)に通した際の寸法安定性が向上する。熱処理条件として好ましくは、(含フッ素樹脂(A)の融点+10℃以上120℃以下)の温度で5秒〜48時間、より好ましくは(含フッ素樹脂(A)の融点+30℃以上100℃以下)の温度で30秒〜36時間、さらに好ましくは(含フッ素樹脂(A)の融点+40℃以上80℃以下)の温度で1分〜24時間である。
【0100】
また、かかる熱処理により金属箔と含フッ素樹脂層、および含フッ素樹脂層と耐熱性樹脂フィルムとの接着性が向上する。かかる熱処理を施す場合は、工程(a)および工程(b)の熱ラミネートの圧力を下げても界面の接着強度が充分に高い積層板を得ることができる。なお、熱ラミネート圧力を高くすると、積層板、さらには後述するフレキシブルプリント基板の寸法安定性が悪くなる傾向があるが、かかる熱処理を行う場合は熱ラミネート圧力を下げることができるため寸法安定性が向上する。
【0101】
本発明の積層板の製造方法にあっては、工程(a)において含フッ素樹脂フィルムと金属箔とを、含フッ素樹脂(A)の融点未満で熱ラミネートしているため、含フッ素樹脂フィルムが切れにくい。そして、工程(b)において耐熱性樹脂フィルムと含フッ素樹脂層付き金属箔とを含フッ素樹脂(A)の融点以上で熱ラミネートしているため、耐熱性樹脂フィルムと含フッ素樹脂フィルムとの界面、および含フッ素樹脂フィルムと金属箔との界面の接着強度が充分に高くなる。なお、工程(b)における熱ラミネートの際には、含フッ素樹脂フィルムが、金属箔と仮接着し、金属箔に支持されているため、含フッ素樹脂(A)の融点以上で熱ラミネートしても、含フッ素樹脂フィルムが幅方向に熱収縮しにくく、切れにくい。
以上のことから、耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面、および含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度が充分に高い積層板を、安定して製造できる。
【0102】
<フレキシブルプリント基板>
本発明のフレキシブルプリント基板は、本発明の積層板の金属箔層の不要部分をエッチングによって除去して形成されたパターン回路を備える。
本発明のフレキシブルプリント基板は、各種の小型化、高密度化された部品を実装していてもよい。
【0103】
本発明のフレキシブルプリント基板にあっては、含フッ素樹脂層が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基(I)を有する含フッ素樹脂(A)を含むため、耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面、および含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度が充分に高い。
【実施例】
【0104】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、例1、例2および例3は実施例であり、例4および例5は比較例である。
【0105】
(共重合組成)
含フッ素樹脂(A)の共重合組成は、溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析により求めた。
【0106】
(官能基(I)の含有量)
下記の赤外吸収スペクトル分析によって、含フッ素樹脂(A)における、官能基(I)を有するNAHに由来する単位の割合を求めた。
含フッ素樹脂(A)をプレス成形して200μmのフィルムを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素樹脂(A)中のNAHに由来する単位における吸収ピークは、1778cm
−1に現れる。該吸収ピークの吸光度を測定し、NAHのモル吸光係数20810mol
−1・l・cm
−1を用いて、NAHに由来する単位の割合(モル%)を求めた。
前記割合をa(モル%)とすると、主鎖炭素数1×10
6個に対する官能基(I)(酸無水物基)の個数は、[a×10
6/100]個と算出される。
【0107】
(融点)
示差走査熱量計(DSC装置、セイコーインスツル社製)を用い、含フッ素樹脂(A)を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点とした。
【0108】
(溶融流れ速度)
メルトインデクサー(テクノセブン社製)を用い、融点より20℃以上高い温度である372℃、荷重49Nの条件下で直径2mm、長さ8mmのノズルから、10分間に流出する含フッ素樹脂(A)の質量(g)を測定した。
【0109】
(接着強度)
含フッ素樹脂層と金属箔層との界面:
含フッ素樹脂層付き金属箔または積層板を長さ150mm、幅10mmの大きさに切断し、評価サンプルを作製した。評価サンプルの長さ方向の一端から50mmの位置まで含フッ素樹脂層と金属箔との間を剥離した。ついで、引張り試験機を用いて、引張り速度50mm/分で90度となるように剥離し、最大荷重を接着強度(N/cm)とした。
【0110】
耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面:
積層板を長さ150mm、幅10mmの大きさに切断し、評価サンプルを作製した。評価サンプルの長さ方向の一端から50mmの位置まで耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との間を剥離した。ついで、引張り試験機を用いて、引張り速度50mm/分で90度となるように剥離し、最大荷重を接着強度(N/cm)とした。
【0111】
(含フッ素樹脂(A−1))
単位(u2)を形成する単量体としてNAH(無水ハイミックス酸、日立化成社製)を、単位(u3)を形成する単量体としてPPVE(CF
2=CFO(CF
2)
3F、ペルフルオロプロピルビニルエーテルを用意した。
(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.36質量%の濃度で1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(以下、AK225cbともいう、旭硝子社製)に溶解した重合開始剤溶液を調製した。
NAHを0.3質量%の濃度でAK225cbに溶解したNAH溶液を調製した。
【0112】
369kgのAK225cbと、30kgのPPVEとを、予め脱気された内容積430Lの撹拌機付き重合槽に仕込んだ。重合槽内を加熟して50℃に昇温し、さらに50kgのTFEを仕込んだ後、重合槽内の圧力を0.89MPa[gage]まで昇圧した。
重合槽中に重合開始剤溶液の3リットル(L)を6.25mL/分の速度にて連続的に添加しながら重合を行った。また、重合反応中における重合槽内の圧力が0.89MPa[gage]を保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。また、NAH溶液を、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.1モル%に相当する量ずつ連続的に仕込んだ。
重合開始8時間を超えた後、32kgのTFEを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を室温まで降温するとともに、圧力を常圧までパージした。得られたスラリをAK225cbと固液分離した後、150℃で15時間乾燥することにより、33kgの含フッ素樹脂(A−1)を得た。
【0113】
含フッ素樹脂(A−1)の比重は、2.15であり、共重合組成は、TFEに由来する単位/NAHに由来する単位/PPVEに由来する単位=97.9/0.1/2.0(モル%)であった。
また、含フッ素樹脂(A−1)の融点は、305℃であり、溶融流れ速度は、11.0g/10分であった。
含フッ素樹脂(A−1)中の官能基(I)(酸無水物基)の含有量は、含フッ素樹脂(A−1)の主鎖炭素数1×10
6個に対して1000個であった。
【0114】
(他の含フッ素樹脂)
PFA:TFE/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(旭硝子社製、Fluon(登録商標) PFA 73PT、融点:305℃、溶融流れ速度13.6g/10分)。
【0115】
(含フッ素樹脂フィルム1)
含フッ素樹脂(A−1)を、750mm巾コートハンガーダイを有する30mmφ単軸押出機を用いてダイ温度340℃で押出成形し、厚さ25μmの含フッ素樹脂フィルム1を得た。
【0116】
(含フッ素樹脂フィルム2)
引取速度を変更した以外は、含フッ素樹脂フィルム1と同様にして、厚さ12.5μmの含フッ素樹脂フィルム2を得た。
【0117】
(含フッ素樹脂フィルム3)
PFAを、750mm巾コートハンガーダイを有する30mmφ単軸押出機を用いてダイ温度340℃で押出成形し、厚さ25μmの含フッ素樹脂フィルム3を得た。
【0118】
(耐熱性樹脂フィルム)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン(登録商標)100EN)を用意した。
【0119】
(金属箔)
厚さ12μmの電解銅箔(福田金属箔粉社製、CF−T4X−SVR−12、Rz:1.2μm)を用意した。
【0120】
(例1)
工程(a):
含フッ素樹脂フィルム1と金属箔とを一対の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いて温度230℃、圧力784N/cm、速度4m/分の条件にて熱ラミネートして、含フッ素樹脂層付き金属箔1を作製した。含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度は、0.3N/cmであった。
【0121】
工程(b):
ポリイミドフィルムと含フッ素樹脂層付き金属箔1とを一対の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いて温度400℃、圧力1470N/cm、速度1m/分の条件にて熱ラミネートして、積層板1を作製した。含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度は、11N/cmであり、耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面の接着強度は、8N/cmであった。
【0122】
(例2)
工程(a):
含フッ素樹脂フィルム1の代わりに、含フッ素樹脂フィルム2を用いた以外は、例1と同様にして含フッ素樹脂層付き金属箔2を作製した。含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度は、0.3N/cmであった。
【0123】
工程(b):
含フッ素樹脂層付き金属箔1の代わりに、含フッ素樹脂層付き金属箔2を用いた以外は、例1と同様にして積層板2を作製した。含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度は、10N/cmであり、耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面の接着強度は、7N/cmであった。
【0124】
(例3)
工程(z):
例2で得られた積層板2に加熱処理を行い積層板3を作製した。加熱処理は、温度380℃、圧力1470N/cm、速度1m/分の条件にて熱ラミネート装置を用いて行った。積層板3の含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度は、12N/cmであり、耐熱性樹脂層と含フッ素樹脂層との界面の接着強度は、10N/cmであった。
【0125】
(例4)
フッ素樹脂フィルム1の代わりに、含フッ素樹脂フィルム3を用いた以外は、例1と同様にして含フッ素樹脂層付き金属箔を作製しようとしたが、含フッ素樹脂層と金属箔層との界面の接着強度が不充分であり、含フッ素樹脂層付き金属箔を巻き取る際に、含フッ素樹脂フィルム3と金属箔との間で分離が生じた。
【0126】
(例5)
フッ素樹脂フィルム1と金属箔とポリイミドフィルムとを一対の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いて温度400℃、圧力784N/cm、速度4m/分の条件にて熱ラミネートしようとしたところ、金属ロール近傍でフッ素樹脂フィルム1の熱収縮が大きく、かつフッ素樹脂フィルム1の破断が生じたため、積層板を連続的に製造できなかった。