特許第6566208号(P6566208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6566208スパッタリング装置とスパッタリング成膜法および積層体フィルムと電極基板フィルムの各製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566208
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置とスパッタリング成膜法および積層体フィルムと電極基板フィルムの各製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20190819BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20190819BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190819BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20190819BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C23C14/34 U
   C23C14/08 K
   H01B13/00 503D
   B32B15/08 A
   G06F3/041 660
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-10039(P2016-10039)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-128776(P2017-128776A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】大上 秀晴
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−008213(JP,A)
【文献】 特開2005−042129(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/023276(WO,A1)
【文献】 特開平08−311645(JP,A)
【文献】 特開2010−053382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 − 14/58
B32B 15/08
G06F 3/041
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールツーロールで長尺体を搬送する搬送手段と、長尺体が外周面に巻き付けられる冷却キャンロールと、冷却キャンロールの外周面に沿って設けられかつ成膜用のスパッタリングターゲットがそれぞれ装着される第一スパッタリングカソード並びに第二スパッタリングカソードと、反応性ガスを供給するガス供給手段を真空チャンバー内に備え、直流電源から各スパッタリングカソードに電力を供給してスパッタリングを行うと共に、異常放電時に、上記直流電源が、異常放電の持続を防ぐため電源を遮断する一方、瞬時に逆バイアスを印加してスパッタリングを復活させる機能を有するスパッタリング装置において、
上記長尺体に成膜された皮膜の成膜状態を検査する反射型レーザセンサが、冷却キャンロール外周面の近傍でかつ第一スパッタリングカソードおよび/または第二スパッタリングカソードの下流側位置に付設されていることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
銅の金属膜が成膜された長尺体の上記金属膜上に、第一スパッタリングカソードに装着されたスパッタリングターゲットと反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにより金属吸収膜を成膜し、かつ、当該金属吸収膜の成膜状態を上記反射型レーザセンサで検査することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
上記反射型レーザセンサのレーザ波長が600〜1550nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
真空チャンバー内に配置された冷却キャンロールの外周面にロールツーロールで搬送される長尺体を巻き付け、上記冷却キャンロールの外周面に沿って設けられたスパッタリングカソードに直流電源から電力を供給すると共に、真空チャンバー内に供給された反応性ガスとスパッタリングカソードに装着されたスパッタリングターゲットを用いた反応性スパッタリングにより長尺体への成膜を行い、かつ、異常放電時に、上記直流電源が、異常放電の持続を防ぐため電源を遮断する一方、瞬時に逆バイアスを印加してスパッタリングを復活させる機能を具備するスパッタリング成膜法において、
上記冷却キャンロール外周面の近傍でかつスパッタリングカソードの下流側位置に反射型レーザセンサを配設し、反応性スパッタリングにより長尺体に成膜された皮膜の成膜状態を検査するようにしたことを特徴とするスパッタリング成膜法。
【請求項5】
銅の金属膜が成膜された長尺体の上記金属膜上に、スパッタリングカソードに装着されたスパッタリングターゲットと反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにより金属吸収膜を成膜し、かつ、当該金属吸収膜の成膜状態を上記反射型レーザセンサで検査するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング成膜法。
【請求項6】
上記反射型レーザセンサのレーザ波長が600〜1550nmであることを特徴とする請求項4または5に記載のスパッタリング成膜法。
【請求項7】
反射型レーザセンサで検査される金属吸収膜の上記成膜状態が特定波長の反射率から計測される金属吸収膜の膜厚であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のスパッタリング成膜法。
【請求項8】
樹脂フィルムから成る透明基板と該基板の片面若しくは両面に設けられた積層膜とで構成され、かつ、上記積層膜が金属膜と反応性スパッタリングにより成膜された金属吸収膜を有する積層体フィルムの製造方法において、
上記金属吸収膜が請求項4〜7のいずれかに記載のスパッタリング成膜法で形成されていることを特徴とする積層体フィルムの製造方法。
【請求項9】
Ni単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Cuより選ばれる1種以上の元素が添加されたNi系合金、または、Cu単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Niより選ばれる1種以上の元素が添加されたCu系合金から成るスパッタリングターゲットを請求項4に記載のスパッタリングカソードに装着させて上記金属吸収膜が成膜されていることを特徴とする請求項8に記載の積層体フィルムの製造方法。
【請求項10】
上記積層膜が、透明基板側から数えて1層目の金属吸収膜、2層目の金属膜、および、3層目の第2金属吸収膜で構成されることを特徴とする請求項8または9に記載の積層体フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項5に記載の反射型レーザセンサで検査される金属吸収膜の成膜状態が特定波長の反射率から計測される上記第2金属吸収膜の膜厚であることを特徴とする請求項10に記載の積層体フィルムの製造方法。
【請求項12】
樹脂フィルムから成る透明基板と該基板の片面若しくは両面に設けられた積層細線から成るメッシュ構造の回路パターンを有する電極基板フィルムの製造方法において、
請求項8〜11のいずれかに記載の方法で製造された積層体フィルムの積層膜を化学エッチング処理して、線幅が20μm以下である上記積層細線に加工することを特徴とする電極基板フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常放電時における復旧機能を備えた直流電源からスパッタリングカソードに電力を供給してスパッタリング成膜を行うスパッタリング装置とその成膜法に係り、特に、スパッタリング成膜された皮膜の成膜状態を検査できるスパッタリング装置とスパッタリング成膜法およびこのスパッタリング成膜法を用いて積層体フィルムと電極基板フィルムを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯電子文書機器、自動販売機、カーナビゲーション等のフラットパネルディスプレイ(FPD)表面に設置する「タッチパネル」が普及し始めている。
【0003】
上記「タッチパネル」には、大きく分けて抵抗型と静電容量型が存在する。「抵抗型のタッチパネル」は、樹脂フィルムから成る透明基板と該基板上に設けられたX座標(またはY座標)検知電極シート並びにY座標(またはX座標)検知電極シートと、これ等シートの間に設けられた絶縁体スペーサーとで主要部が構成されている。そして、上記X座標検知電極シートとY座標検知電極シートは空間的に隔たっているが、ペン等で押さえられたときに両座標検知電極シートは電気的に接触してペンの触った位置(X座標、Y座標)が判るようになっており、ペンを移動させればその都度座標を認識して、最終的に文字の入力が行なえる仕組みとなっている。他方、「静電容量型のタッチパネル」は、絶縁シートを介してX座標(またはY座標)検知電極シートとY座標(またはX座標)検知電極シートが積層され、これ等の上にガラス等の絶縁体が配置された構造を有しており、上記絶縁体に指を近づけたとき、その近傍のX座標検知電極、Y座標検知電極の電気容量が変化するため位置検知を行なえる仕組みとなっている。
【0004】
そして、電極等の回路パターンを構成する導電性材料として、従来、ITO(酸化インジウム−酸化錫)等の透明導電膜が広く用いられていた(特許文献1参照)。また、タッチパネルの大型化に伴い、特許文献2や特許文献3等に開示されたメッシュ構造の金属製細線(金属膜)も使用され始めている。
【0005】
上記透明導電膜と金属製細線(金属膜)を較べた場合、透明導電膜は、可視波長領域における透過性に優れるため電極等の回路パターンが殆ど視認されない利点を有するが、金属製細線(金属膜)より電気抵抗値が高いためタッチパネルの大型化や応答速度の高速化には不向きな欠点を有する。他方、金属製細線(金属膜)は、電気抵抗値が低いためタッチパネルの大型化や応答速度の高速化に向いているが、可視波長領域における反射率が高いため、例え微細なメッシュ構造に加工されたとしても高輝度照明下において回路パターンが視認されることがあり、製品価値を低下させてしまう欠点を有する。
【0006】
そこで、電気抵抗値が低い金属製細線(金属膜)の特性を生かすため、樹脂フィルムから成る透明基板と金属製細線(金属膜)との間に金属酸化物から成る金属吸収膜(黒化膜と称される)を介在させると共に、上記金属製細線(金属膜)上に金属酸化物から成る第2金属吸収膜を成膜して金属製細線(金属膜)の反射を低減させる方法が提案されている(特許文献4、特許文献5参照)。尚、金属酸化物から成る上記金属吸収膜と第2金属吸収膜については、金属酸化物の成膜効率を図る観点から、通常、真空チャンバー内に供給された反応性ガス(酸素ガス)と金属ターゲットを用いた反応性スパッタリングにより長尺状樹脂フィルム(長尺体)に成膜する方法が採られている。
【0007】
そして、長尺状樹脂フィルムの片面若しくは両面に、樹脂フィルム側から数えて1層目の金属吸収膜、2層目の金属膜、3層目の第2金属吸収膜から成る積層膜が形成されて積層体フィルムが製造され、タッチパネル等に用いられる電極基板フィルムは、上記積層体フィルムの積層膜(金属吸収膜/金属膜/第2金属吸収膜)を積層細線(金属製細線)にエッチング加工して製造されている。
【0008】
ところで、金属ターゲットを装着するスパッタリングカソード用の電源に直流電源が適用されたスパッタリング装置を用いて、反応性ガス(酸素ガス)と上記金属ターゲットによる反応性スパッタリングを行った場合、反応性ガス(酸素ガス)による金属ターゲット表面の酸化あるいは金属ターゲット表面に生じた堆積物の落下等が原因となって、時折、成膜中に異常放電を生ずることがあった。このため、直流電源には、異常放電の持続等を防ぐため電源を遮断する一方、瞬時に逆バイアスを印加してスパッタリングを復活させるための復旧機能が備わっている(特許文献6参照)。
【0009】
しかし、異常放電時における上記復旧機能によりスパッタリング成膜が短時間停止することになるため、金属酸化物から成る金属吸収膜や第2金属吸収膜を反応性スパッタリングにより成膜する場合にその膜厚が目標値より薄くなってしまうことがあった。
【0010】
そして、金属吸収膜や第2金属吸収膜の膜厚が不足した場合、上記吸収膜から金属膜が透けて視認される等金属吸収膜や第2金属吸収膜の光吸収作用が低下してしまい、特に、金属膜上に成膜される第2金属吸収膜において顕著であった。
【0011】
このため、従来においては、積層膜(金属吸収膜/金属膜/第2金属吸収膜)が形成された全ての積層体フィルムについて合否検査を行い、金属膜が透けて視認される欠陥部分を個別に排除する作業を必要とする問題が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−151358号公報(請求項2参照)
【特許文献2】特開2011−018194号公報(請求項1参照)
【特許文献3】特開2013−069261号公報(段落0004参照)
【特許文献4】特開2014−142462号公報(請求項5、段落0038参照)
【特許文献5】特開2013−225276号公報(請求項1、段落0041参照)
【特許文献6】特開平08−311647号公報(段落0002参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、異常放電時における復旧機能を有する直流電源が適用されかつ成膜された皮膜の成膜状態が成膜中に検査できるスパッタリング装置とスパッタリング成膜法を提供すると共に、該スパッタリング成膜法を用いて製造された積層体フィルムの製造後における合否検査を必要としない積層体フィルムと電極基板フィルムの各製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
ロールツーロールで長尺体を搬送する搬送手段と、長尺体が外周面に巻き付けられる冷却キャンロールと、冷却キャンロールの外周面に沿って設けられかつ成膜用のスパッタリングターゲットがそれぞれ装着される第一スパッタリングカソード並びに第二スパッタリングカソードと、反応性ガスを供給するガス供給手段を真空チャンバー内に備え、直流電源から各スパッタリングカソードに電力を供給してスパッタリングを行うと共に、異常放電時に、上記直流電源が、異常放電の持続を防ぐため電源を遮断する一方、瞬時に逆バイアスを印加してスパッタリングを復活させる機能を有するスパッタリング装置において、
上記長尺体に成膜された皮膜の成膜状態を検査する反射型レーザセンサが、冷却キャンロール外周面の近傍でかつ第一スパッタリングカソードおよび/または第二スパッタリングカソードの下流側位置に付設されていることを特徴とし、
第2の発明は、
第1の発明に記載のスパッタリング装置において、
銅の金属膜が成膜された長尺体の上記金属膜上に、第一スパッタリングカソードに装着されたスパッタリングターゲットと反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにより金属吸収膜を成膜し、かつ、当該金属吸収膜の成膜状態を上記反射型レーザセンサで検査することを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のスパッタリング装置において、
上記反射型レーザセンサのレーザ波長が600〜1550nmであることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る第4の発明は、
真空チャンバー内に配置された冷却キャンロールの外周面にロールツーロールで搬送される長尺体を巻き付け、上記冷却キャンロールの外周面に沿って設けられたスパッタリングカソードに直流電源から電力を供給すると共に、真空チャンバー内に供給された反応性ガスとスパッタリングカソードに装着されたスパッタリングターゲットを用いた反応性スパッタリングにより長尺体への成膜を行い、かつ、異常放電時に、上記直流電源が、異常放電の持続を防ぐため電源を遮断する一方、瞬時に逆バイアスを印加してスパッタリングを復活させる機能を具備するスパッタリング成膜法において、
上記冷却キャンロール外周面の近傍でかつスパッタリングカソードの下流側位置に反射型レーザセンサを配設し、反応性スパッタリングにより長尺体に成膜された皮膜の成膜状態を検査するようにしたことを特徴とし、
第5の発明は、
第4の発明に記載のスパッタリング成膜法において、
銅の金属膜が成膜された長尺体の上記金属膜上に、スパッタリングカソードに装着されたスパッタリングターゲットと反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにより金属吸収膜を成膜し、かつ、当該金属吸収膜の成膜状態を上記反射型レーザセンサで検査するようにしたことを特徴とし、
第6の発明は、
第4の発明または第5の発明に記載のスパッタリング成膜法において、
上記反射型レーザセンサのレーザ波長が600〜1550nmであることを特徴とし、
第7の発明は、
第4の発明〜第6の発明のいずれかに記載のスパッタリング成膜法において、
反射型レーザセンサで検査される金属吸収膜の上記成膜状態が特定波長の反射率から計測される金属吸収膜の膜厚であることを特徴とするものである。
【0016】
次に、本発明に係る第8の発明は、
樹脂フィルムから成る透明基板と該基板の片面若しくは両面に設けられた積層膜とで構成され、かつ、上記積層膜が金属膜と反応性スパッタリングにより成膜された金属吸収膜を有する積層体フィルムの製造方法において、
上記金属吸収膜が第4の発明〜第7の発明のいずれかに記載のスパッタリング成膜法で形成されていることを特徴とし、
第9の発明は、
第8の発明に記載の積層体フィルムの製造方法において、
Ni単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Cuより選ばれる1種以上の元素が添加されたNi系合金、または、Cu単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Niより選ばれる1種以上の元素が添加されたCu系合金から成るスパッタリングターゲットを第4の発明に記載のスパッタリングカソードに装着させて上記金属吸収膜が成膜されていることを特徴とし、
第10の発明は、
第8の発明または第9の発明に記載の積層体フィルムの製造方法において、
上記積層膜が、透明基板側から数えて1層目の金属吸収膜、2層目の金属膜、および、3層目の第2金属吸収膜で構成されることを特徴とし、
第11の発明は、
第10の発明に記載の積層体フィルムの製造方法において、
第5の発明に記載の反射型レーザセンサで検査される金属吸収膜の成膜状態が特定波長の反射率から計測される上記第2金属吸収膜の膜厚であることを特徴とし、
また、本発明に係る第12の発明は、
樹脂フィルムから成る透明基板と該基板の片面若しくは両面に設けられた積層細線から成るメッシュ構造の回路パターンを有する電極基板フィルムの製造方法において、
第8の発明〜第11の発明のいずれかに記載の方法で製造された積層体フィルムの積層膜を化学エッチング処理して、線幅が20μm以下である上記積層細線に加工することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスパッタリング装置とスパッタリング成膜法によれば、
冷却キャンロール外周面の近傍でかつスパッタリングカソードの下流側位置に配設された反射型レーザセンサを用いて長尺状樹脂フィルム等の長尺体にスパッタリング成膜された皮膜の成膜状態が検査され、かつ、長尺体の長さ方向に亘って検査された皮膜の成膜状態を記録することで長尺体の不合格箇所を成膜時に把握することが可能となる。
【0018】
従って、上記スパッタリング装置とスパッタリング成膜法を用いて製造された積層体フィルムの製造後における合否検査を行う必要がないため、積層体フィルムと該積層体フィルムを用いて得られる電極基板フィルムの製造効率が飛躍的に改善される効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板の両面に透明基板側から数えて1層目の金属吸収膜と2層目の金属膜がスパッタリングにより形成された製造途中における積層体フィルムの概略構成説明図。
図2】長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板の両面に透明基板側から数えて1層目のスパッタリングにより形成された金属吸収膜と2層目のスパッタリングと湿式めっきにより形成された金属膜を有する製造途中における積層体フィルムの概略構成説明図。
図3】長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板の両面に透明基板側から数えて1層目のスパッタリングにより形成された金属吸収膜と2層目のスパッタリングと湿式めっきにより形成された金属膜と3層目のスパッタリングにより形成された第2金属吸収膜を有する本発明に係る積層体フィルムの概略構成説明図。
図4】透明基板の両面に金属製の積層細線がそれぞれ形成された本発明に係る電極基板フィルムの概略構成説明図。
図5】本発明に係るスパッタリング装置(スパッタリングウェブコータ)の説明図。
図6】スパッタリングにより形成された3層目の第2金属吸収膜における膜厚が目標値より薄く成膜された本発明に係る積層体フィルムの概略構成説明図。
図7】銅の金属膜上に7種類の膜厚(0nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm)でそれぞれスパッタリング成膜された各第2金属吸収膜における波長と反射率の関係を示すグラフ図。
図8】1層目の金属吸収膜と2層目の金属膜が形成された長尺状樹脂フィルム(長尺体)の上記金属膜上に成膜された3層目の第2金属吸収膜における成膜状態を反射型レーザセンサで検査して求められた長尺体の長さ方向における特定領域(0cm〜20cmに亘る領域)の距離と光量(反射光量)カウントとの関係を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
(1)積層体フィルムと電極基板フィルム
本発明に係る積層体フィルムは、長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板と該基板の片面若しくは両面に設けられた積層膜とで構成され、かつ、上記積層膜が金属膜と反応性スパッタリングにより成膜された金属吸収膜(透明基板側から数えて1層目の金属吸収膜と3層目の第2金属吸収膜とで構成される)を有することを特徴とし、本発明に係る電極基板フィルムは、長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板と該基板の片面若しくは両面に設けられた積層細線から成るメッシュ構造の回路パターンを有することを特徴とする。
【0022】
(1−1)製造途中における積層体フィルムと完成された積層体フィルム
製造途中における積層体フィルムは、図1に示すように長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板40と、該透明基板40の両面に反応性スパッタリング法により形成された1層目の金属吸収膜41、43とスパッタリング法により形成された2層目の金属膜42、44とで構成されている。
【0023】
尚、透明基板側から数えて2層目の金属膜については、乾式成膜法(スパッタリング法)と湿式成膜法(湿式めっき法)を組み合わせて形成してもよい。
【0024】
すなわち、図2に示すように長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板50と、該透明基板50の両面に反応性スパッタリング法により形成された1層目の金属吸収膜51、53と、スパッタリング法により形成された2層目の金属膜52、54と湿式めっき法により形成された2層目の金属膜55、56とで構成してもよい。
【0025】
また、完成された積層体フィルムは、図3に示すように長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板60と、該透明基板60の両面に反応性スパッタリング法により形成された1層目の金属吸収膜61、63と、スパッタリング法により形成された2層目の金属膜62、64と湿式めっき法により形成された2層目の金属膜65、66と、反応性スパッタリング法により形成された3層目の第2金属吸収膜67、68で構成されている。
【0026】
(1−2)電極基板フィルム
メッシュ構造の回路パターンを有する本発明に係る電極基板フィルムは、長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板と該基板の片面若しくは両面に設けられた積層膜とで構成される積層体フィルムの上記積層膜(1層目の金属吸収膜/2層目の金属膜/3層目の第2金属吸収膜)をエッチング処理して、金属製の積層細線(1層目の金属吸収膜/2層目の金属膜/3層目の第2金属吸収膜)に加工することにより製造できる。
【0027】
ここで、図4に示す長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板70と、該透明基板70の両面に設けられた金属製の積層細線(1層目の金属吸収膜71、73/2層目の金属膜72、75、74、76/3層目の第2金属吸収膜77、78)とで構成される本発明に係る電極基板フィルムにおいて、1層目の金属吸収膜71、73と3層目の第2金属吸収膜77、78を形成している理由は、積層体フィルムを用いて作製された電極基板フィルムをタッチパネルに組み込んだときに金属製積層細線から成るメッシュ構造の回路パターンが視認されないようにするためである。
【0028】
(1−3)金属吸収膜および第2金属吸収膜の構成材料
上記金属吸収膜および第2金属吸収膜は、Ni単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Cuより選ばれる1種以上の元素が添加されたNi系合金、または、Cu単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Niより選ばれる1種以上の元素が添加されたCu系合金から成るスパッタリングターゲットと酸素を含む反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにより形成される。尚、上記Ni系合金としては、Ni−Cu合金が好ましい。また、上記金属吸収膜および第2金属吸収膜を構成する金属酸化物の酸化が進み過ぎると透明になってしまうため、黒化膜になる程度の酸化レベルに設定することを要する。また、金属吸収膜の各波長における光学定数(屈折率、消衰係数)は、反応の度合い、すなわち、酸化度に大きく影響され、Ni系合金から成る金属材だけで決定されるものではない。
【0029】
(1−4)金属膜の構成材料
上記金属膜の構成材料としては、電気抵抗値が低い金属であれば特に限定されず、例えば、Cu単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Agより選ばれる1種以上の元素が添加されたCu系合金、または、Ag単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Cuより選ばれる1種以上の元素が添加されたAg系合金が挙げられ、特に、Cu単体が、回路パターンの加工性や抵抗値の観点から望ましい。また、金属膜の膜厚は電気特性に依存するものであり、光学的な要素から決定されるものではないが、通常、透過光が測定不能なレベルの膜厚に設定される。
【0030】
(1−5)透明基板を構成する長尺状樹脂フィルム(長尺体)
上記積層体フィルムに適用される長尺状樹脂フィルム(長尺体)の材質としては特に限定されることはなく、その具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)、トリアセチルセルロース(TAC)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂フィルムの単体、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂フィルム単体とこの単体の片面または両面を覆うアクリル系有機膜との複合体が挙げられる。特に、ノルボルネン樹脂材料については、代表的なものとして、日本ゼオン社のゼオノア(商品名)やJSR社のアートン(商品名)等が挙げられる。
【0031】
尚、本発明に係る積層体フィルムを用いて作製される電極基板フィルムは「タッチパネル」等に使用するため、上記樹脂フィルムの中でも可視波長領域での透明性に優れるものが望ましい。
【0032】
(2)スパッタリング装置とスパッタリング成膜法
(2−1)スパッタリング装置
ロールツーロールで搬送される長尺状樹脂フィルム(長尺体)に対し連続成膜するスパッタリング装置はスパッタリングウェブコータと称され、図5に示すように真空チャンバー10内に設けられており、巻き出しロール11から巻き出された長尺体12に対して所定の成膜処理を行った後、巻き取りロール24で巻き取るようになっている。これ等巻き出しロール11から巻き取りロール24までの搬送経路の途中に、モータで回転駆動される冷却キャンロール16が配置されている。この冷却キャンロール16の内部には、真空チャンバー10の外部で温調された冷媒が循環している。
【0033】
真空チャンバー10内では、スパッタリング成膜のため、到達圧力10-4Pa程度までの減圧と、その後のプロセスガス(スパッタリングガス)の導入による0.1〜10Pa程度の圧力調整が行われる。プロセスガスにはアルゴン等公知のガスが使用され、更に、酸素等の反応性ガスが添加される。真空チャンバー10の形状や材質は、このような減圧状態に耐え得るものであれば特に限定はなく種々のものを使用することができる。また、真空チャンバー10内を減圧してその状態を維持するため、真空チャンバー10にはドライポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオコイル等種々の装置(図示せず)が組み込まれている。
【0034】
巻き出しロール11から冷却キャンロール16までの搬送経路には、長尺体ム12を案内するフリーロール13と、長尺体12の張力の測定を行う張力センサロール14がこの順で配置されている。また、張力センサロール14から送り出されて冷却キャンロール16に向かう長尺体12は、冷却キャンロール16の近傍に設けられたモータ駆動の前フィードロール15によって冷却キャンロール16の周速度に対する調整が行われ、これにより冷却キャンロール16の外周面に長尺体12を密着させることができる。
【0035】
冷却キャンロール16から巻き取りロール24までの搬送経路も、上記同様に、冷却キャンロール16の周速度に対する調整を行うモータ駆動の後フィードロール21、長尺体12の張力の測定を行う張力センサロール22および長尺体12を案内するフリーロール23がこの順に配置されている。
【0036】
上記巻き出しロール11および巻き取りロール24では、パウダークラッチ等によるトルク制御によって長尺体12の張力バランスが保たれている。また、冷却キャンロール16の回転とこれに連動して回転するモータ駆動の前フィードロール15、後フィードロール21により、巻き出しロール11から長尺体12が巻き出されて巻き取りロール24に巻き取られるようになっている。
【0037】
冷却キャンロール16の近傍には、冷却キャンロール16の外周面上に画定される搬送経路(すなわち、冷却キャンロール16外周面内の長尺体12が巻き付けられる領域)に対向する位置に、スパッタリングターゲットがそれぞれ装着される第一スパッタリングカソード17、18と第二スパッタリングカソード19、20が組み込まれ、第一スパッタリングカソード17、18と第二スパッタリングカソード19、20の近傍に反応性ガスを放出するガス放出パイプ25、26、27、28、29、30、31、32が設置されている。
【0038】
尚、図5に示すスパッタリング装置において、第一スパッタリングカソード17、18と第二スパッタリングカソード19、20にそれぞれ装着されるスパッタリングターゲットとして板状ターゲットが用いられているが、板状ターゲットを用いた場合、ターゲット上にノジュール(異物の成長)を生ずることがある。これが問題になる場合は、ノジュールの発生がなくかつターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用することが好ましい。
【0039】
(2−2)反応性スパッタリング成膜法
金属酸化物から成る金属吸収膜(第2金属吸収膜)を成膜する目的で酸化物ターゲットを適用した場合、成膜速度が遅く量産に適さない。このため、高速成膜が可能なNi系等の金属ターゲットを用い、かつ、酸素を含む反応性ガスを制御しながら導入する反応性スパッタリング成膜法が採られている。
【0040】
そして、反応性ガスを制御する方法として以下の4つの方法が知られている。
(2-2-1)一定流量の反応性ガスを放出する方法。
(2-2-2)一定圧力を保つように反応性ガスを放出する方法。
(2-2-3)スパッタリングカソードのインピーダンスが一定になるように反応性ガスを放出する(インピーダンス制御)方法。
(2-2-4)スパッタリングのプラズマ強度が一定になるように反応性ガスを放出する(プラズマエミッション制御)方法。
【0041】
(2−3)異常放電時における復旧機能を有する直流電源
金属ターゲットを装着するスパッタリングカソード用の電源に直流電源が適用されたスパッタリング装置を用いて反応性スパッタリングを行った場合、上述したように反応性ガス(酸素ガス)による金属ターゲット表面の酸化あるいは金属ターゲット表面に生じた堆積物の落下等が原因となって、時折、成膜中に異常放電を生ずることがある。このため、直流電源には、異常放電の持続等を防ぐため電源を遮断する一方、瞬時に逆バイアスを印加してスパッタリングを復活させる復旧機能が備わっている。
【0042】
尚、スパッタリングカソード用の電源には、直流電源の他にパルス電源、kHz領域の周波数による中周波電源やMHz領域の周波数による高周波電源が知られているが、スパッタリング成膜速度等効率の観点から上記直流電源の適用が望ましい。
【0043】
そして、成膜基板が移動しないバッチ式のスパッタリングにおいては、異常放電時における復旧機能によりスパッタリング成膜が短時間停止されたとしても、復旧後の成膜時間を長くすれば目標とする膜厚を得ることは可能となる。
【0044】
しかし、成膜基板が移動するロールツーロール方式のスパッタリング成膜においては、異常放電時における復旧機能によりスパッタリング成膜が短時間停止した場合、上述したように金属酸化物から成る金属吸収膜や第2金属吸収膜の膜厚が目標値より薄くなってしまう弊害を生ずる。例えば、図6に示すように長尺状樹脂フィルム(長尺体)から成る透明基板80と、該透明基板80の両面に反応性スパッタリング法により形成された1層目の金属吸収膜81、83と、スパッタリング法により形成された2層目の金属膜82、84と湿式めっき法により形成された2層目の金属膜85、86と、反応性スパッタリング法により形成された3層目の第2金属吸収膜87、88とで積層体フィルムが構成されている場合、符号89で示すように第2金属吸収膜87の膜厚が目標値より薄くなってしまうことがあった。
【0045】
このため、従来においては、積層膜(金属吸収膜/金属膜/第2金属吸収膜)が形成された全ての積層体フィルムについて合否検査を行い、金属膜が透けて視認される欠陥部分を個別に排除する煩雑な作業を必要とする問題が存在した。
【0046】
(3)反射型レーザセンサとレーザ波長
(3−1)反射型レーザセンサ
そこで、本発明に係るスパッタリング装置においては、図5に示すように、冷却キャンロール16外周面の近傍でかつ第一スパッタリングカソード17、18、および/または、第二スパッタリングカソード19、20の下流側位置に反射型レーザセンサ33、34を付設し、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12に成膜された皮膜(金属吸収膜および/または第2金属吸収膜)の成膜状態を検査できるようになっている。
【0047】
そして、本発明に係るスパッタリング装置によれば、長尺体12に成膜された皮膜(金属吸収膜および/または第2金属吸収膜)の成膜状態が検査され、かつ、検査された皮膜(金属吸収膜および/または第2金属吸収膜)の成膜状態を長尺体12の長さ方向に亘って継続的に記録することで不合格箇所を成膜時に把握することが可能となる。
【0048】
従って、本発明に係るスパッタリング装置を用いて製造された積層体フィルムの製造後における合否検査を行う必要がなくなるため、積層体フィルムと該積層体フィルムを用いて得られる電極基板フィルムの製造効率が飛躍的に改善される顕著な効果を有する。
【0049】
(3−2)反射型レーザセンサのレーザ波長
(3-2-1)第2金属吸収膜
透明基板側から数えて3層目の第2金属吸収膜においては、異常放電時における復旧機能により第2金属吸収膜の膜厚が目標値より薄くなった場合、上述したようにその光吸収作用は顕著に低下する。
【0050】
そして、第2金属吸収膜の膜厚が不足すると、例えば、透明基板側から数えて2層目の金属膜が銅(Cu)で構成されている場合、反射型レーザセンサにより銅(Cu)で構成される金属膜からの反射光が検出されることになる。
【0051】
図7のグラフ図は、銅(Cu)で構成される金属膜上に、異なる膜厚条件(0nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm)でスパッタリング成膜された7種類の第2金属吸収膜(Ni−Cu合金ターゲットが適用されている)における波長と反射率との関係を示している。そして、図7のグラフ図に、第2金属吸収膜の膜厚が薄ければ薄い程、金属(Cu)膜からの波長600nmより長波長側における反射率が高くなり、第2金属吸収膜の膜厚が厚ければ厚い程、金属(Cu)膜からの波長600nmより長波長側における反射率が低くなることが示されている。また、図7のグラフ図から、透明基板側から数えて2層目の金属膜が銅(Cu)で構成されている場合、反射型レーザセンサのレーザ波長は600〜1550nmが望ましい。ところで、半導体レーザは、波長が1550nm以上の製品は一般的に普及していないため、レーザ波長の上限値は上記1550nmとなる。
【0052】
(3-2-2)金属吸収膜
透明基板側から数えて1層目の金属吸収膜における成膜状態を反射型レーザセンサで検査する場合、反射型レーザセンサで検出される光は、金属吸収膜と長尺体を介しレーザセンサに入射される冷却キャンロールからの反射光になる。このため、反射型レーザセンサのレーザ波長は、冷却キャンロールを構成する金属材料に適合した波長を選択することを要する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明に係る構成が以下の実施例により限定されるものではない。
【0054】
[実施例]
図5に示すスパッタリング装置(スパッタリングウェブコータ)を用い、反応性ガスには酸素ガスを用いると共に、冷却キャンロール16は、直径600mm、幅750mmのステンレス製で、ロール本体表面にハードクロムめっきが施されている。前フィードロール15と後フィードロール21は、直径150mm、幅750mmのステンレス製で、ロール本体表面にハードクロムめっきが施されている。また、下記ターゲットが装着される第一スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)17、18と第二スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)19、20の上流側と下流側にガス放出パイプ25、26、27、28、29、30、31、32を設置し、かつ、第一スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)17、18には金属吸収膜(第2金属吸収膜)用のNi−Cuターゲットを取付け、第二スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)19、20には金属膜用のCuターゲットを取り付けた。
【0055】
また、符号33、34で示される反射型レーザセンサには、金属銅(Cu)に適合した波長655nmの反射型デジタルレーザセンサ(キーエンス社製 LV−S41)を採用した。
【0056】
また、透明基板を構成する長尺状樹脂フィルム(長尺体)12には、厚さ50μm、幅600mm、長さ1200mのPETフィルムを用い、冷却キャンロール16は0℃に冷却制御した。また、真空チャンバー10を複数台のドライポンプにより5Paまで排気した後、更に、複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10-3Paまで排気した。
【0057】
そして、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の搬送速度を5.7cm/秒に設定した後、ガス放出パイプ25、26、27、28からアルゴンガスを500sccmと酸素ガスを50sccm混合した混合ガスを導入し、かつ、異常放電時における復旧機能を有する直流電源から、第一スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)17、18に対し膜厚30nmのNi−Cu酸化膜が得られる電力を制御しながら供給する一方、上記ガス放出パイプ29、30、31、32からアルゴンガスを500sccm導入し、かつ、異常放電時における復旧機能を有する直流電源から、第二スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)19、20に対し膜厚80nmのCu膜が得られる電力を制御しながら供給して、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の片面(第1面)に、反応性スパッタリングにより1層目の金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)とスパッタリング法により2層目の金属膜(Cu膜)を連続的に成膜した。
【0058】
次に、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の片面(第1面)の成膜が終了した後、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の他方の面(第2面)が被成膜面となるようにフィルムを巻き戻すと共に、巻き出しロール11に再セットし、上記片面(第1面)の成膜条件と同様にして長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の他方の面(第2面)に反応性スパッタリングにより1層目の金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)とスパッタリング法により2層目の金属膜(Cu膜)を連続的に成膜した。
【0059】
そして、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の両面に1層目の金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)と2層目の金属膜(Cu膜)がそれぞれ成膜された後、スパッタリング法により第1面と第2面にそれぞれ形成された膜厚80nmのCu膜上に湿式めっき法により2層目の金属膜(Cu膜)を300nm成膜した。
【0060】
次に、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の第1面と第2面に1層目の金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)と2層目の金属膜(スパッタリング法と湿式めっき法により形成された合計膜厚380nmのCu膜)がそれぞれ成膜された長尺状樹脂フィルム(長尺体)12を、図5に示すスパッタリング装置(スパッタリングウェブコータ)に戻して再セットし、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の第1面側に3層目の第2金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)を成膜した。この際、第二スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)19、20におけるCu膜のスパッタリングは停止している。
【0061】
更に、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の第1面における第2金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)の成膜が終了した後、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の第2面が被成膜面となるようにフィルムを巻き戻すと共に、巻き出しロール11に再セットし、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の第2面側に3層目の第2金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)を成膜して、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の両面に、積層膜[膜厚30nmの金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)/膜厚380nmの金属膜(Cu膜)/膜厚30nmの第2金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)]が形成された積層体フィルムを製造した。尚、この場合においても第二スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)19、20におけるCu膜のスパッタリングは停止している。
【0062】
[波長655nmの反射型デジタルレーザセンサ33による検査]
上記長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の第1面と第2面における3層目の第2金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)を反応性スパッタリングでそれぞれ連続成膜している間中、符号33で示された波長655nmの反射型デジタルレーザセンサを用いて第2金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)の成膜状態を連続的に検査し、かつ、検査データ[膜厚380nmの金属膜(Cu膜)からの反射光量]は、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の長さ方向に亘って(すなわち、PETフィルムの0m〜1200mに亘って)継続的に記録されている。
【0063】
図8は、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の第2面における3層目の第2金属吸収膜(Ni−Cu酸化膜)を反射型デジタルレーザセンサ33で検査して求められた長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の長さ方向における特定領域(長さ0m〜1200mのPETフィルム中における特定部位0cm〜20cmに亘る領域)の距離と光量(反射光量)カウントとの関係を示すグラフ図である。
【0064】
そして、図8のグラフ図は、光量カウントが設定しきい値(200)を越える区間が上記特定部位0cm〜20cm中に4cm存在していることを示しており、この検出しきい値は波長655nmにおける反射率が約1.5倍に増加する値で、3層目の第2金属吸収膜の膜厚が半分程度しか成膜されていないことを示すしきい値である。
【0065】
そこで、長尺状樹脂フィルム(長尺体)12の長さ方向に亘って記録された検査データに基づき上記光量カウントが設定しきい値(200)を越えた領域を選び出し、かつ、この領域を取り除いて積層体フィルムを出荷した。
【0066】
尚、出荷せずに取り除かれた積層体フィルムを目視により調べたところ、3層目の第2金属吸収膜から2層目のCu層が若干透けて視認されることが確認された。
【0067】
このように上記反射型デジタルレーザセンサが付設された実施例に係るスパッタリング装置(スパッタリングウェブコータ)を用いて製造された積層体フィルムにおいては、製造後における合否検査を行う必要がないため製造効率が飛躍的に改善され、かつ、不良品の流出を確実に防止できる顕著な効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
透明基板と積層膜(金属吸収膜/金属膜/第2金属吸収膜)とで構成される積層体フィルムを本発明に係るスパッタリング装置で製造した場合、第2金属吸収膜の膜厚が不足した不良品の流出を回避することができるため、FPD(フラットパネルディスプレイ)表面に設置する「タッチパネル」に利用される産業上の可能性を有している。
【符号の説明】
【0069】
10 真空チャンバー
11 巻き出しロール
12 長尺状樹脂フィルム(長尺体)
13 フリーロール
14 張力センサロール
15 前フィードロール
16 冷却キャンロール
17 第一スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)
18 第一スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)
19 第二スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)
20 第二スパッタリングカソード(マグネトロンスパッタリングカソード)
21 後フィードロール
22 張力センサロール
23 フリーロール
24 巻き取りロール
25 ガス放出パイプ
26 ガス放出パイプ
27 ガス放出パイプ
28 ガス放出パイプ
29 ガス放出パイプ
30 ガス放出パイプ
31 ガス放出パイプ
32 ガス放出パイプ
33 反射型レーザセンサ
34 反射型レーザセンサ
40 透明基板
41 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
42 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
43 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
44 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
50 透明基板
51 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
52 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
53 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
54 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
55 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
56 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
60 透明基板
61 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
62 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
63 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
64 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
65 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
66 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
67 反応性スパッタリング法で形成された第2金属吸収膜
68 反応性スパッタリング法で形成された第2金属吸収膜
70 透明基板
71 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
72 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
73 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
74 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
75 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
76 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
77 反応性スパッタリング法で形成された第2金属吸収膜
78 反応性スパッタリング法で形成された第2金属吸収膜
80 透明基板
81 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
82 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
83 反応性スパッタリング法で形成された金属吸収膜
84 スパッタリング法で形成された金属膜(銅層)
85 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
86 湿式めっき法で形成された金属膜(銅層)
87 反応性スパッタリング法で形成された第2金属吸収膜
88 反応性スパッタリング法で形成された第2属吸収膜
89 目標値より膜厚が薄い第2属吸収膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8