【文献】
Y. Nakayama, et al.,HEPATOLOGY,2005年,Vol.42,p.915-924
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Okazaki A, Hiraga N, Imamura M, Hayes CN, Tsuge M, Takahashi S, Aikata H, Abe H, Miki D, Ochi H, Tateno C, Yoshizato K, Ohdan H, Chayama K., 「Severe necroinflammatory reaction caused by natural killer cell-mediated Fas/Fas ligand interaction and dendritic cells in human hepatocyte chimeric mouse.」, Hepatology. 2012 Aug;56(2):555-566.
【非特許文献2】Ando K, Moriyama T, Guidotti LG, Wirth S, Schreiber RD, Schlicht HJ, Huang SN, Chisari FV., 「Mechanisms of class I restricted immunopathology. A transgenic mouse model of fulminant hepatitis.」, J Exp Med. 1993 Nov 1;178(5):1541-1554
【非特許文献3】Cote PJ, Toshkov I, Bellezza C, Ascenzi M, Roneker C, Ann Graham L, Baldwin BH, Gaye K, Nakamura I, Korba BE, Tennant BC, Gerin JL., 「Temporal pathogenesis of experimental neonatal woodchuck hepatitis virus infection: increased initial viral load and decreased severity of acute hepatitis during the development of chronic viral infection.」, Hepatology. 2000 Oct;32(4 Pt 1):807-817
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について詳細に説明する。本実施の形態に係る急性重症肝炎モデル非ヒト動物の作製方法は、ヒト肝細胞を肝臓に生着させた超免疫不全非ヒト動物に、免疫刺激物質を投与する第1の投与工程と、免疫刺激物質を投与した超免疫不全非ヒト動物に、ヒト末梢血単核球を投与する第2の投与工程と、を含む。
【0023】
第1の投与工程で用いる超免疫不全非ヒト動物は、例えば、超免疫不全マウスである。本実施の形態では、非ヒト動物の例示としてマウスを用いた場合について説明する。ここで、「超免疫不全」とは、T細胞、B細胞、NK細胞および樹状細胞/マクロファージを欠損していることをいう。つまり、超免疫不全マウスは、T細胞、B細胞、NK細胞および樹状細胞/マクロファージを欠損したマウスである。超免疫不全マウスの一例として、NOGマウスが挙げられる。NOGマウスは、scid遺伝子が導入された自己免疫型糖尿病を自然発症する痩せ型糖尿病NOD(non−obese diabetic)マウス(NOD−scidマウス)に、IL−2受容体γ鎖(IL−2Rγ)ノックアウトマウスの免疫不全形質が付加されたマウスである。NOGマウスは、Prkdc遺伝子変異(scid)によってT細胞およびB細胞が欠損し、IL−2Rγ遺伝子ノックアウトによってNK細胞が欠損し、樹状細胞のIFN−γ産生障害を有している。
【0024】
ヒト肝細胞は、公知の方法で超免疫不全マウスの肝臓に生着させることができる。超免疫不全マウスの肝臓にヒト肝細胞を生着させるために、肝傷害を発症する改良型の超免疫不全マウスを用いてもよい。改良型の超免疫不全マウスにヒト肝細胞を移植することで、ヒト肝細胞がマウスの肝臓に生着し、肝臓を再構築できる。改良型の超免疫不全マウスは、例えば、herpes simplex virus thymidine kinase(HSV−tk)を発現させたTK−NOGマウスである。TK−NOGマウスは、抗ウイルス薬であるガンシクロビル(GCV)を投与することで肝傷害を誘導できる。この他、改良型の超免疫不全マウスとして、マウスuPAを発現させた自然発症型の肝傷害uPA−NOGマウスを用いてもよい。NOGマウスおよびTK−NOGマウスは、例えば、公益財団法人実験動物中央研究所より入手できる。
【0025】
TK−NOGマウスにヒト肝細胞を生着させる場合、1×10
5〜1×10
7個、好適には1×10
6〜2×10
6個のヒト肝細胞を脾臓に注射すればよい。ヒト肝細胞は、公知の方法で単離したヒト肝細胞であればよい。例えば、ヒト肝細胞が移植されたuPA−SCIDキメラマウスからコラゲナーゼかん流法によって得たヒト肝細胞を用いるのが好ましい。
【0026】
ヒト肝細胞の超免疫不全マウスの肝臓への生着は、ヘマトキシリン−エオジン(HE)染色、Periodic Acid−Schiff(PAS)染色およびHSA抗体ならびに抗サイトケラチン8/18抗体などによる肝臓の免疫組織染色で確認できる。
【0027】
第1の投与工程で超免疫不全マウスに投与する免疫刺激物質は、ヒトを含む哺乳動物に投与した場合に体内において何らかの免疫反応を惹起、誘導または増強する任意の物質である。免疫刺激物質は、例えば、HBV、ヒトA型肝炎ウイルス、ヒトC型肝炎ウイルス、ヒトD型肝炎ウイルスおよびヒトE型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス、ならびに抗生物質、解熱剤、鎮痛剤、中枢神経作用薬、抗がん剤、抗アレルギー薬および免疫抑制剤などの薬物である。好適には、免疫刺激物質は、HBVである。
【0028】
第1の投与工程で超免疫不全マウスに投与する免疫刺激物質がHBVである場合を例に、より詳細に説明する。HBVは、超免疫不全マウスに接種することで投与される。超免疫不全マウスに接種するHBVは、例えば、肝炎患者から採取した血清中のHBVである。特に血清がHBeAg陽性である慢性肝炎患者由来のHBVが好ましい。HBVの遺伝子型は、特に限定されないが、例えばC型である。当該血清は、好ましくは、HBVのDNAを1×10
4〜1×10
8コピー/mLで含む。HBVは、肝炎患者から採取した血清から単離して、適切な溶媒に加えて使用してもよい。1匹あたり1×10
4〜1×10
7コピー、より好ましくは、1×10
5〜1×10
6コピーのHBVが超免疫不全マウスに接種される。
【0029】
HBVは、例えば、HBVを含むヒト血清を腹腔内に注射することで、超免疫不全マウスに接種することができる。ヒト肝細胞が生着してから所定期間経過後にHBVを接種するのが好ましい。HBVは、例えば、肝細胞の移植から6〜10週間経過後、好適には8週間経過後に接種される。
【0030】
免疫刺激物質が上記薬物の場合の投与量は、免疫反応を惹起、誘導または増強するように適宜設定されるが、例えば、マウスの体重1gあたり、1μg〜100mgである。
【0031】
次に第2の投与工程について説明する。ヒト末梢血単核球(PBMC)は、例えば、Ficoll−Paque密度勾配遠心分離法を用いてヒトの血液から単離できる。好ましくは、ヒトPBMCは、急性肝炎の治癒後患者から単離される。この場合、第1の投与工程で超免疫不全マウスに投与された免疫刺激物質に起因する急性肝炎の治癒後患者から単離されたヒトPBMCが好適である。例えば、免疫刺激物質がヒトB型肝炎ウイルスの場合、ヒトPBMCは、B型急性肝炎の治癒後患者から単離されたものが好ましい。
【0032】
ヒトPBMCの投与量は、マウス1匹あたり、例えば1×10
5〜1×10
7個である。好ましくは5×10
5〜8×10
6個、より好ましくは4×10
6〜6×10
6個のヒトPBMCを、マウスに投与してもよい。ヒトPBMCは、生理食塩水などの適切な溶媒とともにマウスの腹腔内に注射されることでマウスに投与されてもよい。
【0033】
ヒトPBMCは、上記第1の投与工程における免疫刺激物質の投与から6〜12週間経過後、好ましくは8、9または10週間経過後にマウスに投与される。
【0034】
マウスにおける免疫応答を効率よく誘導するため、マウスに生着させたヒト肝細胞のHLA型とヒトPBMCのHLA型とが同一であることが好ましい。例えば、マウスに生着させたヒト肝細胞のHLA型がHLA−A24の場合、HLA型がHLA−A24であるヒトPBMCを用いればよい。HLA型は、公知のDNAタイピング法で同定することができる。
【0035】
第2の投与工程では、免疫応答を増強するために、サイトカインをさらに投与してもよい。サイトカインとして、例えば、IL−1、IL−6、IL−8、IL−12およびTNF−αなどから1種あるいは複数種を選択して投与すればよい。サイトカインの投与量は、例えば、マウスの体重1gあたり、1〜100mgまたは1〜100μgである。
【0036】
免疫刺激物質としてHBVを用いた本実施の形態に係る方法で作製された急性重症肝炎モデルマウスでは、血清中のHSAの濃度およびHBVのDNA濃度が、ヒトPBMCの投与後に減少する。これは、HBV感染肝細胞の急激な傷害を示している。HBV感染肝細胞の傷害は、HE染色および免疫組織化学染色でも確認できる。急性重症肝炎モデルマウスの肝臓では、広範囲にわたってヒト肝細胞が消失する。さらに、ヒト肝細胞の領域に多くの単核球の集簇が見られる。
【0037】
急性重症肝炎モデルマウスは、ヒトPBMCの投与後に、血清中のALTの濃度が有意に増加した。ALTは主に肝細胞内に存在する酵素で、肝細胞が破壊されることによって血液中に放出される。このため、血清中のALTの濃度は、肝炎または肝傷害のマーカーである。よって、上記急性重症肝炎モデルマウスは、肝傷害を呈する。
【0038】
免疫刺激物質としてHBVを用いた場合、急性重症肝炎モデルマウスの血清中の免疫応答に関与するB型肝炎表面抗体(HBsAb)ならびにIFN−γおよび細胞傷害性T細胞に主に含まれるヒトグランザイムAの濃度が、ヒトPBMCの投与後に増加する。さらに当該急性重症肝炎モデルマウスの肝臓に浸潤した肝細胞のヒト細胞表面マーカーを、フローサイトメトリー法で解析すると、CD4
+CD8
−細胞の割合が減少し、CD25
+FOXP3
+である制御性T細胞も減少する。一方、CD4
−CD8
+細胞の割合が増加する。このため、当該急性重症肝炎モデルマウスでは、ヒトPBMCの投与によって、HBVに対する免疫応答が誘導され、HBVに感染した肝細胞に対する細胞傷害性T細胞が活性化することで、急性重症肝炎が引き起こされる。
【0039】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る急性重症肝炎モデルマウスは、ヒトPBMCを投与することで、免疫刺激物質に対する免疫応答が誘導されるため、細胞傷害性T細胞によるヒト肝細胞の急激な傷害を進行させることができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、免疫刺激物質は、HBVであってもよいこととした。こうすることで、上記急性重症肝炎モデルマウスは、劇症肝炎の原因の約40%を占めるHBV感染に起因する急激なヒト肝細胞の傷害をより忠実に再現することができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、急性肝炎の治癒後患者から単離されたヒトPBMCを用いてもよいこととした。当該ヒトPBMCには、急性肝炎に関与したT細胞およびメモリーT細胞などが含まれると考えられ、免疫刺激物質に対する細胞傷害性T細胞の免疫応答を、より確実に誘導することができる。特に、免疫刺激物質としてHBVを使用した場合、B型急性肝炎の治癒後患者から単離されたヒトPBMCを用いることで、HBV感染に対する細胞傷害性T細胞の免疫応答を、極めて確実に誘導することができる。
【0042】
また、上記第2の投与工程では、サイトカインをさらに投与してもよいこととした。こうすることで、免疫刺激物質に対する免疫応答を増強することができるので、急性重症肝炎を効率よく発症させることができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、超免疫不全非ヒト動物として超免疫不全マウスを用いた。マウスは飼育が容易であるうえに、免疫機能を欠く各種マウスが開発されているため、超免疫不全のマウスが入手しやすい。このため、急性重症肝炎モデル非ヒト動物をより簡便に作製することができる。なお、非ヒト動物は、マウスに限らない。非ヒト動物は、ヒトを除く哺乳動物が好ましく、特にラット、イヌ、モルモットなどであってもよい。
【0044】
なお、別の実施の形態では、急性重症肝炎モデル非ヒト動物が提供される。当該急性重症肝炎モデル非ヒト動物は、免疫刺激物質に対する細胞傷害性T細胞の免疫応答が誘導される。つまり、当該急性重症肝炎モデル非ヒト動物は、免疫刺激物質に特異的な細胞傷害性T細胞を有している。例えば、免疫刺激物質としてHBVを使用した場合、当該急性重症肝炎モデル非ヒト動物は、HBVの感染に特異的な細胞傷害性T細胞を有しているため、HBVの感染に対する細胞傷害性T細胞の免疫応答が誘導される。当該急性重症肝炎モデル非ヒト動物は、例えば、上記記載の急性重症肝炎モデル非ヒト動物の作製方法で作製される。
【0045】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る劇症肝炎治療薬のスクリーニング方法は、上記実施の形態1に記載の急性重症肝炎モデル非ヒト動物の作製方法で作製された急性重症肝炎モデル非ヒト動物を使用する。より詳細には、当該劇症肝炎治療薬のスクリーニング方法は、上記急性重症肝炎モデル非ヒト動物に、被験物質を投与する工程と、当該急性重症肝炎モデル非ヒト動物における肝炎関連マーカーを評価する工程と、肝炎関連マーカーを評価した結果に基づいて、上記被験物質を劇症肝炎治療薬として選択する工程と、を含む。
【0046】
被験物質は、化合物、抗体、融合タンパク質、ペプチド、DNAアプタマー、RNAアプタマー、siRNA、miRNAまたはアンチセンス核酸などである。急性重症肝炎モデル非ヒト動物への投与の方法は、特に限定されないが、被験物質に適切な方法を選択すればよい。例えば、被験物質が化合物の場合には、経口投与であってもよいし、腹腔内投与または静脈内投与であってもよい。また、被験物質が抗体、ペプチド、融合タンパク質、DNAアプタマー、RNAアプタマー、siRNA、miRNAまたはアンチセンス核酸等の場合は、静脈注射、皮下注射等であってもよい。被験物質の投与は、単回でもよいし、複数回であってもよい。被験物質の濃度は、被験物質の種類によって適宜決定すればよい。また、被験物質の濃度を段階希釈した複数の濃度の被験物質を投与してもよい。
【0047】
肝炎関連マーカーは、例えば、急性重症肝炎モデル非ヒト動物の血清中のHSAの濃度、ALTもしくはアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)の濃度である。この他、肝炎関連マーカーとして、HE染色およびHSAに対する抗体を用いた免疫組織化学染色などの結果を用いてもよい。特に、免疫刺激物質としてHBVを使用した場合、肝炎関連マーカーは、上記の他、HBVのDNA濃度およびB型肝炎コア抗原(HBc−Ag)に対する抗体を用いた免疫組織化学染色などの結果などである。
【0048】
肝炎関連マーカーを評価するには、例えば、HBV非感染の非ヒト動物を用いた予備実験の結果に基づいて、肝炎非発症時のHSAの濃度の値を設定し、当該値と、被験物質を投与した急性重症肝炎モデル非ヒト動物の血清中のHSAの濃度とを比較すればよい。肝炎非発症時の非ヒト動物および被験物質を投与した急性重症肝炎モデル非ヒト動物のHE染色または上記免疫組織化学染色の結果を比較してもよい。また、被験物質を投与された上記急性重症肝炎モデル非ヒト動物と被験物質を投与されなかった上記急性重症肝炎モデル非ヒト動物との間で、肝炎関連マーカーを定性的に、または定量的に比較してもよい。
【0049】
被験物質を劇症肝炎治療薬として選択する工程では、肝炎関連マーカーの評価した結果に基づいて、急性重症肝炎モデル非ヒト動物の病態の進行を抑制、遅延、停止、または病態を治療する被験物質が劇症肝炎治療薬として選択される。また、例えば、投与によって血清中のHSAの濃度の低下を抑制する被験物質が劇症肝炎治療薬として選択される。好ましくはヒト肝細胞の傷害で低下したHSAの濃度を回復させる被験物質が選択されてもよい。また、ヒト肝細胞の傷害で増加した血清中のALTまたはASTの濃度を抑制、低下あるいは回復させる被験物質が選択されてもよい。この他、HE染色および免疫組織化学染色によって、ヒト肝細胞の傷害とヒト肝組織への単核球の集簇とを抑制する被験物質が選択されてもよい。
【0050】
上記実施の形態1に係る急性重症肝炎モデル非ヒト動物は、ヒト肝細胞の急激な傷害を進行させる。このため、上記選択された被験物質は、ヒト肝細胞の急激な傷害が進行し、脳症が出現する劇症肝炎治療薬として好適である。
【0051】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る劇症肝炎治療薬のスクリーニング方法は、HBVなどの免疫誘導物質に対する細胞傷害性T細胞の免疫応答によってヒト肝細胞の急激な傷害を進行させることができる非ヒト動物を使用するため、劇症肝炎に対する被験物質の効果を評価することができる。
【0052】
なお、別の実施の形態では、本実施の形態に係る劇症肝炎治療薬のスクリーニング方法で選択された劇症肝炎治療薬が提供される。当該劇症肝炎治療薬は、劇症肝炎の主な原因である細胞傷害性T細胞によるヒト肝細胞の急激な傷害が進行する非ヒト動物を用いて選択されるため、劇症肝炎の治療に有効である。
【0053】
(実施の形態3)
実施の形態3について説明する。本実施の形態に係る劇症肝炎治療薬は、T細胞選択的共刺激調節剤を含む。T細胞選択的共刺激調節剤は、抗原提示細胞上のCD80、CD86からの共刺激シグナルを直接的または間接的に阻害する、T細胞活性化経路を標的とするものであれば任意である。例えば、T細胞選択的共刺激調節剤は、T細胞表面の分子であるCTLA4の細胞外ドメインとヒト免疫グロブリンIgG1のFc領域との融合タンパク質(Cytotoxic T Lymphocyte Antigen 4 Immunoglobulin:以下、単に「CTLA4Ig」とする)である。なお、CTLA4Igは、アバタセプトとしても知られる。
【0054】
本実施の形態に係る劇症肝炎治療薬の剤形は、限定されないが、注射剤が特に好ましい。当該劇症肝炎治療薬は、例えば、薬理的に許容される担体と配合された合剤であってもよい。薬理的に許容される担体は、製剤素材として用いられる各種の有機担体物質又は無機担体物質である。また、当該劇症肝炎治療薬には、白糖、緩衝剤などの薬理的に許容される添加剤が含まれてもよい。必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
【0055】
上記劇症肝炎治療薬の投与方法は任意であるが、好ましくは皮下注射または静脈内注射である。劇症肝炎治療として、CTLA4Igを投与する場合、劇症肝炎治療薬の投与量は、患者の体重、病態など患者の状態に応じて適宜調整されるが、1回の投与量として、ひとりあたり、500mg〜1gが好ましい。
【0056】
CTLA4Igを含む劇症肝炎治療薬は、特に急激に肝傷害が進行している劇症肝炎の治療に好適である。この場合、当該劇症肝炎治療薬を、単回、あるいは1、2、3または4週間の比較的短期間において数回投与するのが好ましい。もちろん、投与回数、投与間隔などの投与方法は、患者の状態を見ながら、適宜調整することができる。
【0057】
本実施の形態に係る劇症肝炎治療薬は、下記実施例2に示すように、例えば、HBVの感染に起因してヒト肝細胞の急激な傷害を抑制する。このため、当該肝炎治療薬は、B型劇症肝炎などの劇症肝炎の治療に使用されるのが好適である。
【0058】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る劇症肝炎治療薬は、肝炎の重症化に重要な細胞傷害性T細胞の活性化を抑制するため、劇症肝炎を治療することができる。
【0059】
また、別の実施の形態は、上記T細胞選択的共刺激調節剤を患者に投与することにより劇症肝炎を治療する方法である。さらに別の実施の形態は、劇症肝炎の治療薬として使用するためのT細胞選択的共刺激調節剤である。また、他の実施の形態は、劇症肝炎を治療するための医薬の製造のためのT細胞選択的共刺激調節剤の使用である。
【実施例】
【0060】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0061】
(実施例1:B型急性重症肝炎モデルマウスの作製)
ヒト肝細胞キメラマウスを用いて、次のようにB型急性重症肝炎モデルマウスを作製した。まず、TK−NOGマウス(公益財団法人実験動物中央研究所より入手)に、HLA−A24のヒト肝細胞を移植した。詳細には、8週齢のTK−NOGマウス(以下、単に「マウス」ともいう)の腹腔内に、1日2回、6mg/kgでGCVを注射した。注射の2日後、同量のGCVを再度、マウスに注射した。1回目のGCVの注射から7日後、1×10
6または2×10
6個のヒト肝細胞を脾臓に注射することでマウスに移植した。移植されたヒト肝細胞は、ヒト肝細胞が移植されたuPA−SCIDキメラマウスからコラゲナーゼかん流法によって得た。肝細胞の移植から8週間経過後、マウスの静脈内に5×10
5コピーのHBV陽性のヒト血清を注射した。なお、マウスの感染、血清試料の採取および安楽死はエーテル麻酔下で行った。上記ヒト血清は、提供に同意した慢性肝炎患者から採取され、HBeAg陽性で遺伝子型CのHBVのDNA(10.2×10
6コピー/mL)の高いタイターを有する。ヒト血清は、使用するまで液体窒素内で保管した。
【0062】
次に、HBVの接種から8〜10週間経過後、5×10
6個のヒトPBMCを腹腔内に注射することでマウスに移植した。ヒトPBMCは、HLA−A24を有する、B型急性重症肝炎が治癒した患者から、Ficoll−Paque密度勾配遠心分離法を用いて単離した。なお、対照として、HBVを接種していないマウスにも同様にヒトPBMCを注射した。
【0063】
HSAは移植されたヒト肝細胞で生成されるため、HSAの濃度は正常なヒト肝細胞のマーカーとなる。5μLの血液試料を所定期間ごとに尾静脈から採取した。血液試料のHSAの濃度を、Human Albumin ELISA Quantitation kit(Bethyl Laboratories Inc.製)で決定した。
【0064】
血清におけるHBVのDNA濃度は、COBAS AmpliPre/COBAS TaqMan HBV TEST,v2.0(Roche Diagnostics製)を用いて、製造者が提供するプロトコールに従って定量した。リアルタイムPCRにおけるHBVのDNAの検出下限は、4.4logコピー/mLであった。
【0065】
組織学的検査のために、ヒトPBMCの注射から2週間後に採取したマウスの肝臓標本を、10%の緩衝化パラホルムアルデヒドで固定化し、パラフィンブロックに組み込んだ。内在性ペルオキシダーゼの活性は、0.3%H
2O
2およびメタノールでブロックし、HE染色に加え、HSAに対する抗体(Bethyl Laboratories Inc.製)およびHBc−Agに対する抗体(DAKO Diagnostika社製)を用いた免疫組織化学染色を行った。免疫反応物質は、ストレプトアビジン−ビオチン染色キット(Histofine SABPOキット、ニチレイ社製)およびジアミノベンジジンを用いて可視化した。
【0066】
ヒトPBMCの注射から2週間後のマウスから単離したヒトPBMCをフローサイトメトリー法で解析した。使用した抗体は、APC−H7抗ヒトCD3(クローンSK7)、APCコンジュゲーテッド抗CD4(クローンSK)、BD Horizaon(商標) V450 抗ヒトCD8(クローンRPA−T8)、HU HRZN V500 MABコンジュゲーテッド抗ヒトCD45(クローンH130)、Alexa Fluor 488コンジュゲーテッド抗ヒトCD56(クローンB159)、PerCP−Cy5.5抗ヒトFoxP3(クローン236a)、PEコンジュゲーテッド抗ヒトCD25(クローンM−A251)およびPE−Cy7コンジュゲーテッド抗マウスCD45(クローン30−F11)である(すべてBDバイオサイエンス社製)。PEコンジュゲーテッドHBV C117−126およびP756−763−誘導免疫優勢CTLエピトープは、医学生物学研究所から入手した。光散乱およびプロピジウムイオダイド染色で同定した死細胞は、解析から除外した。細胞内の染色では、細胞が透過処理され、BD Cytofix/Cytopermキット(BDバイオサイエンス社製)を用いて表面染色後に固定された。フローサイトメトリー法は、FACSAria(商標)II フローサイトメーター(BDバイオサイエンス社製)で行い、結果はFlowJo(TreeStar社製)で解析した。制御性T細胞およびヒトB細胞は、それぞれヒトCD45
+CD4
+CD25
+FoxP3
+の細胞およびCD45
+CD3
−CD19
+の細胞として定義した。
【0067】
ヒトPBMCの注射前および注射2週間後のマウスの血清中のB型肝炎表面抗原(HBsAg)およびHBsAbを、Abott Architect platforms(Abott社製)を用いて定量した。血清中のALT濃度は、Fuji DRI−CHEM(富士フィルム社製)を用いて、製造者によって提供された説明書に従って測定した。また、血清中のヒトのIFN−γおよびグランザイムAの濃度は、chemokine cytometric bead array(CBA)キット(BDバイオサイエンス社製)を用いて、製造者によって提供された説明書に従って測定した。検出上限および検出下限は、それぞれ10および2500pg/mLであった。
【0068】
マウスの血清中のHSAならびにHBVのDNAの濃度およびマウスの肝臓におけるヒトPBMCの割合は、マン−ホイットニーU検定および対応のないt検定で統計的に比較した。0.05未満のp値を有意なものと見なした。
【0069】
(結果)
図1は、マウスのHSAの濃度およびHBVのDNA濃度の経時変化を示す。ヒトPBMCを移植したHBV感染マウスでは、HSAの濃度およびHBVのDNA濃度の短時間かつ有意な減少が見られた。一方、ヒトPBMCを移植しなかったHBV感染マウスでは、HSAの濃度およびHBVのDNA濃度の減少は見られなかった。よって、ヒトPBMCが、HBV感染肝細胞を傷害することが示された。
【0070】
図2は、HE染色および免疫組織化学染色で得られた画像を示す。「H」はヒト肝細胞を示し、「M」はマウス肝細胞を示す。ヒトPBMCを移植したHBV感染マウスの肝臓では、広範囲にわたってヒト肝細胞が消失し、ヒト肝細胞の領域に多くの単核球の集簇が見られた。
【0071】
図3は、フローサイトメトリー法の結果を示す。ヒトPBMCを移植したHBV感染マウスでは、ヒトPBMCを移植したHBV非感染マウスと比較して、ヒトCD45陽性の単核球の割合が有意に増加していた。よって、ヒトPBMCを移植したHBV感染マウスでは、ヒトPBMCの生着率が上昇したことが示された。
【0072】
図4に示すように、ヒトPBMCの注射2週間後において、ヒトPBMCを移植したHBV感染マウスのみのALTの濃度が有意に増加した。このため、ヒトPBMCを移植したHBV感染マウスは、肝炎を呈していることが示された。
【0073】
また、
図5に示すように、IFN−γおよびヒトグランザイムAの濃度は、ヒトPBMCの注射2週間後において、ヒトPBMCを移植したHBV感染マウスのみで有意に増加した。
図6および
図7は、ヒトPBMCを注射したマウスにおける肝臓に浸潤した肝細胞のヒト細胞表面マーカーを解析したフローサイトメトリー法の結果を示す。ヒトPBMCの注射2週間後、CD4
+CD8
−細胞の割合がHBV感染マウスで有意に減少した。CD4
+CD8
−細胞において、CD25
+FOXP3
+である制御性T細胞がHBV感染マウスで有意に減少したことは、急性肝炎の発症と整合する。一方、CD4
−CD8
+細胞の割合がHBV感染マウスで有意に増加した。CD8陽性かつテトラマー陽性であるHBV特異的な細胞傷害性T細胞がヒトPBMCを注射したHBV感染マウスのみで検出された。
【0074】
ヒトPBMCを注射したHBV感染マウスの血清中のHBsAgおよびHBsAbの濃度を
図8に示す。ヒトPBMC注射前のHBsAgの濃度は、ヒトHBV感染患者と同様に高かった。一方、ヒトPBMC注射2週間後には、HBsAgの濃度は検出できないほどに減少した。HBsAbの濃度は、ヒトPBMCの注射2週間後に増加していた。
【0075】
以上により、ヒト肝細胞を生着させたTK−NOGマウスに、HBVを接種し、B型急性重症肝炎が治癒した患者由来のヒトPBMCを注射することで、肝傷害を起こすことができた。当該マウスでは、HBV感染に対する細胞傷害性T細胞の免疫応答が誘導されることが確認された。このように、本実施例のヒトPBMCを移植したHBV感染マウスは、HBV特異的な細胞傷害性T細胞による急激な肝傷害を示すため、B型急性重症肝炎を呈する。
【0076】
(実施例2:T細胞選択的共刺激調節剤の投与)
本実施例では、上記実施例1で作製したB型急性重症肝炎モデルマウスにT細胞選択的共刺激調節剤であるCTLA4Igを投与して、肝傷害への影響を調べた。なお、マウスのHSAの濃度、HBVのDNA濃度、ならびにALTなどの濃度の測定方法、組織学的検査、およびフローサイトメトリー法の方法は、上記実施例1と同じである。
【0077】
ヒトPBMCの注射1日前およびヒトPBMCの注射7日後に、マウスの腹腔内に1.5mg、1.2mgまたは0.2mgのCTLA4Ig(Bristol−Meyers Squibb社製)を注射した。CTLA4Igの溶媒として、生理食塩水を用いた。
【0078】
(結果)
図9に示すように、CTLA4Ig(1.5mgを2回投与)は、CTLA4Ig非投与のHBV感染マウス(コントロール)と比較して、HSAの濃度およびHBVのDNA濃度の減少を著しく阻害した。HE染色および免疫組織化学染色においても、CTLA4Igを投与したHBV感染マウスの肝臓では、HBV非感染マウスと同様に、ヒト肝細胞の傷害と、ヒト肝組織への単核球の集簇とが見られなかった(
図10)。すなわち、CTLA4Igの投与によって肝炎が抑制されたことが示された。
【0079】
組織学的検査における肝炎が抑制されたとの結果は、
図11に示すように、血清中のALT、IFN−γおよびヒトグランザイムAの各濃度にも反映されている。CTLA4Igを投与することで、ヒトPBMCの注射によるALT、IFN−γおよびヒトグランザイムAの各濃度の増加は、HBV非感染マウスと同程度に抑えられていた。また、
図12に示すように、HBV感染マウスの肝臓におけるヒトCD45陽性の単核球、CD4陽性、CD8陽性および制御性T細胞の割合は、CTLA4Igの投与によって非感染マウスと同程度になっていた。
【0080】
異なる用量のCTLA4Igを投与した結果を
図13に示す。なお、本実験では、ヒトPBMCの注射14日後にもCTLA4Igをさらに投与した。CTLA4Igは、濃度依存的にヒトPBMCを注射したHBV感染マウスにおけるHSAの濃度の減少を抑制した。また、CTLA4Igは、CTLA4Igの非投与群(0mg)と比べて、HBVのDNA濃度の減少を阻害した。
【0081】
以上の結果より、CTLA4Igは、B型劇症肝炎の治療に有効であることが示された。
【0082】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。