【文献】
NORIO MIURA et al.,Cordless Solid-state Hydrogen Sensor Using Proton-conductor Thick Film,Sensors and Actuatoes B,1990年,Vol.B1, Nos.1-6, P.125-129
【文献】
Zhaoyun Tang et al.,Mixed potential hydrogen sensor using ZnWO4 sensing electrode,Sensors and Actuators B,2014年,Vol.195,p.520-525
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水素(H
2)等のガスを検出するためのガスセンサとしては、固体電解質と、検知極及び基準極を備え、空気、窒素、アルゴン等の標準ガスを用いずに、水素ガスの濃度を測定することが可能な混成電位型センサが知られている。
【0003】
特許文献1では、板状または筒状の絶縁基体の表面に対向して一方側に白金電極を設け、他方側に銀電極を設け、該両電極と接触するようにプロトン導電性固体電解質で上記両電極を覆う常温作動型ガスセンサーが開示されている。
【0004】
特許文献2では、安定化ジルコニアなどの酸素イオン伝導体を介して、ZnO、SnO
2、In
2O
3からなる少なくとも1つの金属酸化物半導体を含有した検知極と、ZnO、SnO
2、In
2O
3をいずれも含有しない基準極とを備えた混成電位型水素ガスセンサが開示されている。
【0005】
非特許文献1では、プロトン伝導体を介して、検知極となる白金電極、基準極となる金電極を使用した常温作動の混成電位型ガスセンサが開示されている。このとき、プロトン伝導体はアンチモン酸とポリビニルアルコールの混合物から構成され、被検知ガスは水素及び一酸化炭素である。
【0006】
非特許文献2では、安定化ジルコニアなどの酸素イオン伝導体を介して、ZnWO
4からなる検知極と、白金からなる基準極を使用した混成電位型水素ガスセンサが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に開示されたガスセンサは、室温付近での水素検出を目的としており、100℃以上での水素検出には適していない。また、水素及び一酸化炭素のどちらにも高感度で応答するため、水素のみを選択的に検知するのが困難であった。
【0010】
特許文献2においては、一酸化炭素の感度は低く、水素選択性に優れるが、高温で充分なイオン伝導性を示す安定化ジルコニアを用いているため、450〜600℃程度の高温域で作動させる必要がある。
【0011】
非特許文献2においては、一酸化炭素の感度は低く、水素選択性に優れるが、高温で充分なイオン伝導性を示す安定化ジルコニアを用いるため、550〜700℃程度の高温域で作動させる必要がある。
【0012】
本発明の一態様は、前記の従来技術が有する問題に鑑み、100℃以上の温度で水素ガスを検知することが可能なガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)基板上に、検知極及び基準極が、前記検知極の一端と前記基準極の一端が対向するように形成されており、前記検知極の他端及び前記基準極の他端を覆い、かつ、前記検知極の他端及び前記基準極
の他端の間の空間を充填するようにプロトン伝導体が形成されており、該プロトン伝導体は、リン酸塩ガラスと、プロトン伝導性有機物を混合することにより製造されて
おり、前記プロトン伝導性有機物は、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物であり、前記リン酸塩ガラスに対する前記プロトン伝導性有機物の質量比が1以上3以下であることを特徴とするガスセンサ。
(
2)前記リン酸塩ガラスに対する前記プロトン伝導性有機物の質量比が1以上2.5以下であることを特徴とする前記(
1)に記載のガスセンサ。
(
3)前記イミダゾール系化合物は、ベンゾイミダゾールであることを特徴とする前記(
1)又は(
2)に記載のガスセンサ。
(
4)前記検知極は、白金を含み、前記基準極は、金又は銀を含むことを特徴とする前記(1)乃至(
3)のいずれか一項に記載のガスセンサ。
(
5)水素ガスセンサであることを特徴とする前記(1)乃至(
4)のいずれか一項に記載のガスセンサ。
(
6)前記(1)乃至(
5)のいずれか一項に記載のガスセンサを用いて、ガスを検知する方法であって、該ガスを検知する際の前記プロトン伝導体の温度が100℃以上であることを特徴とするガスの検知方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一様態によれば、100℃以上の温度で水素ガスを検知することが可能なガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0017】
図1及び
図2に、ガスセンサの一例を示す。なお、
図2は、
図1のA−A’線における断面である。
【0018】
ガスセンサ10は、基板11上に、検知極12及び基準極13が対向するように形成されており、検知極12及び基準極13の端部を覆うようにプロトン伝導体14が形成されている。このとき、プロトン伝導体14は、検知極12及び基準極13の間の空間を充填するように形成されている。これにより、検知極12及び基準極13と、プロトン伝導体14の接触界面を充分に確保することができる。
【0019】
基板11としては、耐熱性を有する絶縁体であれば、特に限定されないが、電気絶縁性セラミック基板(例えば、アルミナ基板)、プラスチック基板、熱酸化膜付の基板(例えば、熱酸化膜付のシリコン基板)等が挙げられる。
【0020】
ガスセンサ10が水素ガス及び酸素ガスを含む雰囲気に曝露されると、検知極12/プロトン伝導体14/雰囲気、または、基準極13/プロトン伝導体14/雰囲気の三相界面において、電気化学反応が起こる。ガスセンサ10が雰囲気に含まれる水素ガスを検知する場合、酸素ガスの電気化学的還元反応(1/2O
2+2H
++2e
−→H
2O)と、水素ガスの電気化学的酸化反応(H
2→2H
++2e
−)による混成電位が発生すると考えられる。
【0021】
検知極12及び基準極13を構成する材料としては、上記のような電気化学反応が起こる材料であれば、特に限定されない。
【0022】
検知極12/プロトン伝導体14/雰囲気の界面で発生する電位をΔVs、基準極13/プロトン伝導体14/雰囲気の界面で発生する電位をΔVrとすると、検知極12と基準極13の間の電位ΔVは、式
ΔV=ΔVs−ΔVr
で表される。
【0023】
以上のようなガスセンサ10の作動原理から、検知極12及び基準極13を構成する材料は異なる。例えば、検知極12として、白金電極を用い、基準極13として、金電極又は銀電極を用いる。
【0024】
検知極12及び基準極13の間の距離は、通常、10μm〜1cmである。
【0025】
検知極12及び基準極13の形成方法としては、特に限定されないが、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0026】
なお、検知極12及び基準極13は、対向するように形成されていなくてもよい。
【0027】
プロトン伝導体14は、リン酸塩ガラスと、プロトン伝導性有機物を混合することにより製造されている。このため、100℃以上の温度で水素ガスを検知することができる。
【0028】
プロトン伝導性有機物は、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物であることが好ましい。これにより、ガスセンサ10の感度を向上させることができる。
【0029】
リン酸塩ガラスに対するプロトン伝導性有機物の質量比は、通常、1〜3であり、1.5〜2.5であることが好ましい。リン酸塩ガラスに対するプロトン伝導性有機物の質量比が1以上であることにより、均質なプロトン伝導体14を製造するとともに、ガスセンサ10の感度を向上させることができる。一方、リン酸塩ガラスに対するプロトン伝導性有機物の質量比が3以下であることにより、ガスセンサ10の100℃以上の温度における耐久性及び感度を向上させることができる。
【0030】
リン酸塩ガラスとしては、特に限定されないが、リン酸亜鉛ガラス、リン酸カルシウムガラス、リン酸マグネシウムガラス等が挙げられる。
【0031】
リン酸塩ガラスの原料は、P
2O
5を含む。ここで、P
2O
5は、リン酸塩ガラスと、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物を混合することにより、プロトン伝導体14を製造するために必須の成分である。
【0032】
リン酸塩ガラスの原料中のP
2O
5の含有量は、通常、40〜65mol%であり、45〜60mol%であることが好ましく、45〜55mol%であることがさらに好ましい。リン酸塩ガラスの原料中のP
2O
5の含有量が40mol%以上であることにより、リン酸塩ガラスの原料がガラス化しやすくなり、プロトン伝導体14のプロトン伝導性を向上させることができる。一方、リン酸塩ガラスの原料中のP
2O
5の含有量が65mol%以下であることにより、空気中の水分との反応を抑制して、リン酸塩ガラスの構造を安定化させることができる。
【0033】
リン酸塩ガラスの原料は、ZnOをさらに含むことが好ましい。これにより、リン酸塩ガラスの耐水性を向上させることができる。
【0034】
リン酸塩ガラスの原料中のZnOの含有量は、通常、35〜60mol%であり、40〜55mol%であることが好ましく、45〜55mol%であることがさらに好ましい。リン酸塩ガラスの原料中のZnOの含有量が35mol%以上であることにより、リン酸塩ガラスの耐水性を向上させることができ、60mol%以下であることにより、プロトン伝導体14のプロトン伝導性を向上させることができる。
【0035】
リン酸塩ガラスの原料は、中性成分をさらに含んでいてもよい。
【0036】
中性成分としては、特に限定されないが、Li
2O、Na
2O、K
2O、MgO、CaO、SrO、BaO、PbO、Bi
2O
3、Y
2O
3、Al
2O
3、La
2O
3、P
2O
5、TiO
2、ZrO
2等が挙げられる。
【0037】
リン酸塩ガラスの原料中の中性成分の含有量は、通常、5質量%以下である。
【0038】
リン酸塩ガラスの形状としては、特に限定されないが、粉末状、粒子状等が挙げられる。
【0039】
イミダゾール系化合物とは、イミダゾール又はイミダゾールの炭素原子に結合している水素原子が炭素水素基により置換されている化合物を意味する。
【0040】
イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール等が挙げられる。中でも、ガスセンサ10の感度の点で、ベンゾイミダゾールが好ましい。
【0041】
トリアゾール系化合物とは、トリアゾール又はトリアゾールの炭素原子に結合している水素原子が炭化水素基等により置換されている化合物を意味する。
【0042】
トリアゾール系化合物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
【0043】
プロトン伝導体14は、リン酸塩ガラスと、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物を混合した後、加熱することにより製造することができる。
【0044】
リン酸塩ガラスと、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物の混合物を加熱すると、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が液化し、リン酸塩ガラスの表面から反応が起こり、リン酸塩ガラスの構造が切断される。ここで、リン酸塩ガラスの構造が切断されて生成したP−O
−及び金属イオンと、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が反応し、クラスターを形成してプロトン伝導体14となる。
【0045】
リン酸塩ガラスと、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物の混合物を加熱する温度は、通常、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物の融点を基準にして、−5〜+20℃である。
【0046】
例えば、融点が170℃であるベンゾイミダゾールを用いる場合、混合物を加熱する温度は、通常、165〜190℃である。混合物を加熱する温度が165℃以上であることにより、ベンゾイミダゾールを十分に液化させることができ、190℃以下であることにより、ベンゾイミダゾールの揮発を抑制することができる。
【0047】
リン酸塩ガラスと、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物の混合物を加熱する時間は、通常、6〜30時間であり、8〜24時間であることが好ましく、10〜18時間であることがさらに好ましい。混合物を加熱する時間が6時間以上であることにより、プロトン伝導体14を十分に製造することができ、30時間以下であることにより、イミダゾール系化合物又はトリアゾール系化合物の揮発を抑制し、ガスセンサ10の感度を向上させることができる。
【0048】
なお、プロトン伝導体14は、検知極12及び基準極13に接触するように形成されていれば、検知極12及び基準極13の端部を覆うように形成されていなくてもよい。
【0049】
ガスセンサ10を用いて、水素ガスを検知する際のプロトン伝導体14の温度は、通常、100℃以上である。
【0050】
プロトン伝導体14の温度を100℃以上に保持する方法としては、特に限定されないが、基板11の裏面にヒータを設置し、抵抗加熱により加熱する方法、電気炉を用いて、外部加熱により加熱する方法等が挙げられる。
【0051】
ガスセンサ10は、0.01〜50000ppmの水素ガスを検知させるのが好ましく、1〜10000ppmの水素ガスを検知させるのがさらに好ましい。
【0052】
ガスセンサ10は、水素ガスセンサ、呼気中に含まれる水素ガスを検知する検知器、固体酸化物形燃料電池やリン酸型燃料電池に供給する水素ガスを検知する検知器等に適用することができる。
【実施例】
【0053】
次に、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例により限定されない。
【0054】
[実施例1]
15.0mm×5.0mm×635μmのアルミナ製の基板11(鈴木理化学社製)の表面に、白金ペーストTR−7091T(田中貴金属工業社製)をスクリーン印刷した後、1400℃で2時間焼成し、検知極12を形成した。次に、基板11の表面に、金ペーストTR−1535(田中貴金属工業社製)をスクリーン印刷した後、850℃で2時間焼成し、基準極13を形成した(
図1参照)。
【0055】
リン酸亜鉛ガラスの原料として、ZnO(和光純薬工業社製)とH
3PO
4(シグマ アルドリッチ社製)の試薬を出発原料とし、酸化物換算で、ZnO:P
2O
5=50:50(mol%)となるように秤量し、これに水を加えて充分に撹拌混合した。次に、乾燥機を用いて、130℃で12時間以上乾燥させた後、白金製の坩堝に入れて、1200℃で30分間保持して融液を得た。さらに、アイロンプレス法により、融液を急冷した後、アルミナ乳鉢及びアルミナ乳棒を用いて、粒径が15μm程度になるまで粉砕し、粉末状のリン酸亜鉛ガラスを得た。
【0056】
リン酸亜鉛ガラス粉末とベンゾイミダゾール(シグマ アルドリッチ社製)を質量比が1:2となるように混合し、ガラス容器に入れた後、乾燥機を用いて、170℃で6時間乾燥させて、プロトン伝導体14を得た。
【0057】
検知極12及び基準極13の端部を覆うようにプロトン伝導体14を塗布し、ガスセンサ10を得た。
【0058】
[実施例2]
プロトン伝導体14を作製する際に、170℃で12時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、ガスセンサ10を得た。
【0059】
[実施例3]
プロトン伝導体14を作製する際に、170℃で24時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、ガスセンサ10を得た。
【0060】
[実施例4]
プロトン伝導体14を作製する際に、170℃で30時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、ガスセンサ10を得た。
【0061】
[実施例5]
プロトン伝導体14を作製する際に、リン酸亜鉛ガラスとベンゾイミダゾールを質量比が1:1となるように混合した以外は、実施例2と同様にして、ガスセンサ10を得た。
【0062】
[実施例6]
プロトン伝導体14を作製する際に、リン酸亜鉛ガラスとベンゾイミダゾールを質量比が1:3となるように混合した以外は、実施例2と同様にして、ガスセンサ10を得た。
【0063】
[実施例7]
基板11の表面に基準極13を形成する際に、銀ペーストNP−2910A2(ノリタケカンパニーリミテド社製)をスクリーン印刷した以外は、実施例2と同様にして、ガスセンサ10を得た。
【0064】
[比較例1]
プロトン伝導体14を作製する際に、リン酸亜鉛ガラスを添加せず、170℃で1時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、ガスセンサ10を得た。
【0065】
表1に、ガスセンサ10の製造条件を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
[ガスセンサの水素ガスに対する応答1]
ガスセンサ10を試料ホルダーに設置した後、大気焼成炉を用いて、プロトン伝導体14の温度が120℃となるように加熱した。次に、窒素ガスと酸素ガスを体積比が80:20になるように混合した合成空気を200mL/minの流量で試料ホルダーに流し、検知極12及び基準極13を介したプロトン伝導体14の起電力を測定した。このとき、midi LOGGER GL220(グラフテック社製)を用いて、2端子法により5秒間隔でプロトン伝導体14の起電力を測定し、プロトン伝導体14の起電力が安定してから30分後の起電力をVaとした。さらに、水素標準ガス(大陽日酸社製)が所定量導入された窒素ガスと酸素ガスを体積比が80:20になるように混合した合成空気を、200mL/minの流量で試料ホルダーに流し、上記と同様にして、プロトン伝導体14の起電力を測定した。このとき、合成空気中の水素標準ガスの濃度を250ppmとし、試料ホルダーに10分間流した後のプロトン伝導体14の起電力をVgとした。次に、窒素ガスと酸素ガスを体積比が80:20になるように混合した合成空気を200mL/minの流量で試料ホルダーに流し、上記と同様にして、プロトン伝導体14の起電力を測定した。さらに、合成空気中の水素標準ガスの濃度を2000ppmに変更した以外は、上記と同様にして、プロトン伝導体14の起電力Vgを測定した。次に、窒素ガスと酸素ガスを体積比が80:20になるように混合した合成空気を200mL/minの流量で試料ホルダーに流し、上記と同様にして、プロトン伝導体14の起電力を測定した。さらに、合成空気中の水素標準ガスの濃度を5000ppmに変更した以外は、上記と同様にして、プロトン伝導体14の起電力Vgを測定した。
【0068】
ガスセンサ10の水素ガスに対する応答ΔVを、式
ΔV=Vg−Va
により、算出した。
【0069】
表2に、ガスセンサ10のΔVの測定結果を示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2から、実施例1〜7のガスセンサ10は、合成空気中の水素ガスの濃度が高くなると、ΔVの絶対値が大きくなり、水素ガスを検知できることがわかる。
【0072】
これに対して、比較例1のガスセンサ10は、プロトン伝導体14を作製する際に、リン酸亜鉛ガラスを添加していないため、合成空気中の水素ガスの濃度が高くなっても、ΔVが変化せず、水素ガスを検知することができない。
【0073】
図3、4に、それぞれ合成空気に曝露した場合の実施例2、6のガスセンサ10の起電力を示す。
図3、4から、実施例2、6のガスセンサ10を水素ガスを含む合成空気に曝露すると、プロトン伝導体14の起電力が減少し、実施例2、6のガスセンサ10を水素ガスを含まない合成空気に曝露すると、プロトン伝導体14の起電力が戻ることがわかる。
【0074】
図5に、合成空気に曝露した場合の比較例1のガスセンサ10の起電力を示す。
図5から、比較例1のガスセンサ10を水素ガスを含む合成空気に曝露しても、プロトン伝導体14の起電力が変化しないことがわかる。
【0075】
[ガスセンサの水素ガスに対する応答2]
プロトン伝導体14の温度が90℃、100℃、110℃、140℃、160℃となるように加熱した以外は、ガスセンサの水素ガスに対する応答1と同様にして、実施例1のガスセンサ10の水素ガスに対する応答ΔVを算出した。
【0076】
表3に、プロトン伝導体14の温度を変化させた場合の実施例1のガスセンサ10のΔVの測定結果を示す。
【0077】
【表3】
【0078】
表3から、実施例1のガスセンサ10は、プロトン伝導体14の温度が100〜160℃である場合に、合成空気中の水素ガスの濃度が高くなると、ΔVの絶対値が大きくなり、水素ガスを検知できることがわかる。
【0079】
これに対して、実施例1のガスセンサ10は、プロトン伝導体14の温度が90℃である場合に、合成空気中の水素ガスの濃度が高くなっても、ΔVが変化せず、水素ガスを検知することができない。
【0080】
図6に、合成空気に曝露した場合のプロトン伝導体14の温度が140℃である実施例1のガスセンサ10の起電力を示す。
【0081】
[ガスセンサの水素ガスに対する応答3]
合成空気における窒素ガス又は水素標準ガス(大陽日酸社製)が所定量導入された窒素ガスと酸素ガスの体積比80:20を、100:0、95:5、70:30、50:50に変更した以外は、ガスセンサの水素ガスに対する応答1と同様にして、実施例2のガスセンサ10の水素ガスに対する応答ΔVを算出した。
【0082】
表4に、窒素ガスと酸素ガスの体積比を変化させた場合の実施例2のガスセンサ10のΔVの測定結果を示す。
【0083】
【表4】
【0084】
表4から、実施例2のガスセンサ10は、窒素ガスと酸素ガスの体積比を変化させても、水素ガスの濃度が高くなると、ΔVの絶対値が大きくなり、水素ガスを検知できることがわかる。