特許第6566477号(P6566477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566477
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ベンゾアゾール類の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 235/18 20060101AFI20190819BHJP
   C07D 235/20 20060101ALI20190819BHJP
   C07D 263/57 20060101ALI20190819BHJP
   C07D 277/66 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C07D235/18
   C07D235/20
   C07D263/57
   C07D277/66
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-14505(P2016-14505)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-132722(P2017-132722A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 育弘
(72)【発明者】
【氏名】川波 肇
(72)【発明者】
【氏名】石坂 孝之
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 Green Chemistry,2015年,17(12),pp.5172-5181
【文献】 Synthetic Communications,2013年,43,pp.3083-3092
【文献】 RSC Adv.,2014年,4,pp.2974-2979
【文献】 RSC Adv.,2014年,4,pp.3768-3773
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学反応式(1)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行うベンゾアゾール類の合成方法。
【化28】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。Yは、H、OR7、ハロゲン、またはNR89を示す。R1からR9は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(R1からR6の2以上の置換基が連結していてもよく、R8とR9が連結していてもよく、R1からR9の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【請求項2】
ペプチドカップリング試薬の存在下で、下記化学反応式(2)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行うベンゾアゾール類の合成方法。
【化29】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。R1からR6は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(2以上の置換基が連結していてもよく、R1からR6の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【請求項3】
下記化学反応式(3)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行うベンゾアゾール類の合成方法。
【化30】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。R1からR6は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(2以上の置換基が連結していてもよく、R1からR6の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、
温度200〜550℃および圧力1.6〜60MPaで前記化学反応を行うベンゾアゾール類の合成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかにおいて、
フロー式で前記化学反応を行うベンゾアゾール類の合成方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかにおいて、
前記化学反応を無触媒で行うベンゾアゾール類の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜臨界水または超臨界水を用いて、短時間・高収率でベンゾアゾール類を合成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELや医薬品などの原料としてベンゾアゾール類が使用されている。ベンゾアゾール類は、バッチ式の反応器内で触媒を用いて合成されている。例えば、非特許文献1から7には、バッチ式の反応器内の水中で、置換アニリン誘導体およびカルボニル化合物誘導体(または類縁体化合物)からベンゾアゾール類化合物を合成することが記載されている。しかしながら、酸触媒、固体酸触媒、固体金属触媒をはじめとする触媒または反応剤を用いて、場合によってはマイクロ波を照射して反応を実施する必要がある。また、これらの合成方法は、温度が室温から150℃の比較的温和な条件下で、2分から15時間程度の時間がかかっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Eur. J. Org. Chem., 2009, 4926-4929.
【非特許文献2】J. Chil. Chem. Soc., 2011, 57, 1122-1125.
【非特許文献3】RSC Adv., 2014, 4, 2974-2979.
【非特許文献4】RSC Adv., 2014, 4, 3768-3773.
【非特許文献5】RSC Adv., 2015, 5, 29447-29455.
【非特許文献6】RSC Adv., 2015, 5, 46545-46551.
【非特許文献7】Synthetic Communications, 2013, 43, 3083-3092.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ベンゾアゾール類を水中で合成する場合に、副反応を抑えて、短時間に高収率でベンゾアゾール類を合成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様のベンゾアゾール類の合成方法は、下記化学反応式(1)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行う。
【化1】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。Yは、H、OR7、ハロゲン、またはNR89を示す。R1からR9は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(R1からR6の2以上の置換基が連結していてもよく、R8とR9が連結していてもよく、R1からR9の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【0006】
本発明の第二の態様のベンゾアゾール類の合成方法は、ペプチドカップリング試薬の存在下で、下記化学反応式(2)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行う。
【化2】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。R1からR6は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(2以上の置換基が連結していてもよく、R1からR6の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【0007】
本発明の第三の態様のベンゾアゾール類の合成方法は、下記化学反応式(3)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行う。
【化3】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。R1からR6は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(2以上の置換基が連結していてもよく、R1からR6の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、短い反応時間でベンゾアゾール類が高収率で得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の各実施形態のベンゾアゾール類の合成方法に用いる反応装置の概要を示す図。
図2】本発明の各実施形態のベンゾアゾール類の合成方法に用いる他の反応装置の概要を示す図。
図3】実施例1で合成したベンゾアゾール類のガスクロマトグラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のベンゾアゾール類の合成方法について、図面を参照しながら実施形態と実施例に基づいて説明する。なお、重複説明は適宜省略する。また、本願では、2つの数値の間に「〜」を記載して数値範囲を表す場合、この2つの数値も数値範囲に含まれるものとする。
【0011】
本発明の第一実施形態に係るベンゾアゾール類の合成方法は、下記化学反応式(1)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行う。
【化4】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。Yは、H、OR7、ハロゲン、またはNR89を示す。R1からR9は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(R1からR6の2以上の置換基が連結していてもよく、R8とR9が連結していてもよく、R1からR9の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【0012】
本発明の第二実施形態に係るベンゾアゾール類の合成方法は、ペプチドカップリング試薬の存在下で、下記化学反応式(2)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行う。
【化5】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。R1からR6は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(2以上の置換基が連結していてもよく、R1からR6の2以上が同じであってもよい)またはHを示す。)
【0013】
ペプチドカップリング試薬としては、1,1'-carbonyldiimidazole、1,1'-carbonyl-di-(1,2,4-triazole)、oxalic acid diimidazolide、phosgene、N,N'-dicyclohexylcarbodiimide、N-(3-dimethylaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride、2-chloro-1,3-dimethylimidazolidinium chloride、N-cyclohexyl-N'-(2-morpholinoethyl)carbodiimide metho-p-toluenesulfonate、N,N,N',N'-tetramethyl-O-(N-succinimidyl)uronium hexafluorophosphate、O-(benzotriazol-1-yl)-N,N,N',N'-tetramethyluronium hexafluorophosphate、2-chloro-4,6-dimethoxy-1,3,5-triazine、1-chloro-N,N,2-trimethyl-1-propenylamine、chloro-N,N,N',N'-bis(tetramethylene)formamidinium tetrafluoroborateなどが挙げられる。
【0014】
本発明の第三実施形態に係るベンゾアゾール類の合成方法は、下記化学反応式(3)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行う。
【化6】
(Xは、NR6、O、またはSを示す。R1からR6は、O、N、S、B、Si、ハロゲン、もしくはPを含有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族の置換基(2以上の置換基が連結していてもよく、R1からR6の2以上の置換基が同じであってもよい)またはHを示す。)
【0015】
本願における「亜臨界水」とは、温度が200℃以上臨界温度未満で、液体状態の水を意味する。本発明の各実施形態のベンゾアゾール類の合成方法では、温度200〜550℃および圧力1.6〜60MPaで化学反応を行うことが好ましい。水の極性が低下して一般有機溶媒の極性と近くなるため、原料を水中に容易に溶解・拡散できるからである。また、高温条件による反応速度の加速効果や、水のイオン積増大による反応中間体の生成促進効果および転化促進効果を発揮するからである。
【0016】
また、本発明の各実施形態のベンゾアゾール類の合成方法では、バッチ式でもフロー式でも化学反応を行うことができるが、フロー式で化学反応を行うことが好ましい。フロー式反応法では高い温度・密度勾配がかけられるため、目的とする反応条件に素早くかつ精確に到達することができる。このため、加水分解等をはじめとする副反応が抑えられる。さらに、本発明の各実施形態のベンゾアゾール類の合成方法では、無触媒で、すなわち原料、ペプチドカップリング試薬、および生成物以外の触媒が亜臨界水中または超臨界水中に存在しなくても、化学反応を行うことができる。
【0017】
図1および図2は、本発明の各実施形態のベンゾアゾール類の合成方法に用いるフロー式の反応装置10の概要を模式的に示している。反応装置10は、ポンプ12,14と、ヒーター16と、反応器18と、オーブン20と、冷却装置22と、背圧弁装置24と、収集容器26とを備えている。ポンプ12は、反応管のヒーター16内の部分に水を導入する。ポンプ14は、反応管のヒーター16内の部分に原料溶液(Substrates Solution)、例えば原料をNMPやアルコール等の有機溶媒に溶解した溶液を運ぶ。ヒーター16は、反応管内の水を加熱して亜臨界水または超臨界水を発生させる。
【0018】
オーブン20は、反応器18内が反応温度になるように、反応器18を加熱する。冷却装置22は、反応生成物を冷却して分留する。背圧弁装置24は、反応器18内の圧力を制御する。収集容器26は、分留したベンゾアゾール類を収集する。ベンゾアゾール類の合成は以下の手順で行われる。まず、水を反応管に導入し、ヒーター16で例えば450℃に昇温して、亜臨界水または超臨界水を発生させる。これと並行して原料溶液を反応管に導入し、亜臨界水または超臨界水と合流させる。原料溶液と亜臨界水または超臨界水は均一に混ざりあう。
【0019】
つぎに、原料溶液と亜臨界水または超臨界水の混合物を反応器18に導入した後、オーブン20によって、反応器18内を反応温度、例えば400℃に昇温させる。原料溶液と亜臨界水または超臨界水の混合物が反応器18内を通過する間に、上記の化学反応式(1)から化学反応式(3)で示される化学反応が進行して、ベンゾアゾール類が合成される。ベンゾアゾール類を含む生成物は、冷却装置22に導入され分留される。こうして精製したベンゾアゾール類が収集容器26に収集される。
【0020】
また、本発明のベンゾアゾール類の合成方法によれば、下記の低分子化合物および高分子化合物が得られる。
【化7】
【実施例】
【0021】
(実施例1)
反応装置10を用いて、以下の手順で、下記化学反応式(4)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行った。
【化8】
【0022】
・実施例1−1
N−メチルピロリドン(NMP、和光純薬工業株式会社製、ペプチド合成用)に、N-[2-(phenylamino)phenyl]benzamideを1.44g溶解して、濃度0.05Mの原料溶液を調製した。温度495℃、圧力45MPaで、水(オルガノ社製、超純水装置で精製)を超臨界状態にした。反応管で混合した原料溶液と超臨界水を容積0.88mLの反応器内に導入し、化学反応式(4)で示される化学反応を温度445℃、圧力45MPaで行い、ベンゾアゾール類である1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleを合成した。原料溶液と超臨界水の混合物が反応器を通過する時間(反応時間)、すなわち反応器内での滞在時間は10秒だった。また、反応器内中の原料のトータル濃度(原料の質量/水とNMPの質量の和×100)は1.44質量%であった。
【0023】
その後、温度15℃、圧力45MPaで、反応器を通過した生成物を冷却装置22で分留した。すなわち、生成物から水とNMPを除去して、N-[2-(phenylamino)phenyl]benzamideと1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleの混合物である試料を収集容器26で収集した。収集した試料の組成分をガスクロマトグラフィー(アジレントテクノロジー株式会社製カラムHP-5MS、ヘリウムキャリアガス、40℃から毎分10℃で230℃まで昇温した後230℃で20分以上維持)で分析したところ、N-[2-(phenylamino)phenyl]benzamideが含有されず、1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleが99%以上の収率で得られた(図3参照)。
【0024】
また、原料溶液の溶媒の種類と濃度、反応器の容積、反応器内の温度、および反応器内の圧力を変化させて、化学反応式(4)で示される化学反応を行った結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
本実施例では、触媒を添加しなくても、反応時間が1分以下で合成反応が完結した。10秒以下の短時間で合成反応が完結した実施例も多数あった。また、加水分解等の副反応が観測されなかった。そして、温度および圧力が高いほど、反応時間が短く、原料の収率が低く、目的物の収率が高い、すなわち転化率が高い傾向があった。また、原料溶液に酸が含まれると、合成反応が加速する一方、原料の炭化および反応管の閉塞が生じやすくなった(実施例1−27)。温度250〜445℃および圧力30〜45MPaの亜臨界水中または超臨界水中で、1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleが合成できた。
【0027】
(実施例2)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)およびBenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(5)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表2に示す。
【化9】
【0028】
【表2】
【0029】
本実施例では、反応途中で1当量の安息香酸が生じるが、特に反応の加速効果は観測されなかった。また、本実施例も実施例1と同様の傾向が見られた。すなわち、反応時間、転化率、収率の各種傾向は、実施例1と同等であった。温度400〜445℃および圧力30〜45MPaの超臨界水中で、目的物Bが合成できた。
【0030】
(実施例3)
原料としてo-Phenylenediamine(和光純薬工業株式会社製、和光一級)およびBenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(6)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表3に示す。温度400〜445℃および圧力30〜45MPaの超臨界水中で、目的物Dが合成できた。
【化10】
【0031】
【表3】
【0032】
(実施例4)
原料としてN-(2-hydroxyphenyl)benzamideを用いた点および原料を溶解する溶媒として2−プロパノールを用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(7)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表4に示す。温度400〜445℃および圧力40〜45MPaの超臨界水中で、目的物が合成できた。
【化11】
【0033】
【表4】
【0034】
(実施例5)
原料として2-aminophenol(東京化成工業株式会社製)を用いた点および原料を溶解する溶媒として2−プロパノールとエタノールも用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(8)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表5に示す。温度400〜445℃および圧力40〜45MPaの超臨界水中で、目的物Fが合成できた。
【化12】
【0035】
【表5】
【0036】
(実施例6)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)および4-methoxybenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−1と同様にして、下記化学反応式(9)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は90%であった。
【化13】
【0037】
(実施例7)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)および3,4,5-trimethoxybenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、容積4.89mLの反応器内で、他は実施例1−1と同じ条件で、下記化学反応式(10)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は59秒で、収率は80%であった。
【化14】
【0038】
(実施例8)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)および4-trifluoromethylbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−1と同様にして、下記化学反応式(11)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化15】
【0039】
(実施例9)
原料としてo-phenylenediamine(和光純薬工業株式会社製、和光一級)、N,N'-carbonyldiimidazole(和光純薬工業株式会社製、ペプチド合成用)およびbenzoic acid(和光純薬工業株式会社製、和光特級)を用い、実施例1と同様にして、下記化学反応式(12)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表6に示す。温度400〜445℃および圧力25〜45MPaの超臨界水中で、目的物が合成できた。
【化16】
【0040】
【表6】
【0041】
(実施例10)
原料としてN-Methyl-1,2-phenylenediamine(シグマアルドリッチ社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、圧力25MPaで、他は実施例1−5と同じ条件で、下記化学反応式(13)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化17】
【0042】
(実施例11)
原料として3,4-Diaminotoluene(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−7と同様にして、下記化学反応式(14)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は95%であった。
【化18】
【0043】
(実施例12)
原料として4-bromo-1,2-phenylenediamine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例10と同様にして、下記化学反応式(15)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化19】
【0044】
(実施例13)
原料として4-fluoro-1,2-phenylenediamine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−6と同様にして、下記化学反応式(16)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化20】
【0045】
(実施例14)
原料として4-Nitro-1,2-phenylenediamine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1と同様にして、下記化学反応式(17)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行った。その結果を表7に示す。温度340〜445℃および圧力45MPaの亜臨界水中または超臨界水中で、目的物Hが合成できた。
【化21】
【0046】
【表7】
【0047】
(実施例15)
原料として3,3'-Diaminobenzidine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−6と同様にして、下記化学反応式(18)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は92%であった。
【化22】
【0048】
(実施例16)
原料として2-aminobenzenethiol(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1と同様にして、下記化学反応式(19)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表8に示す。温度400℃および圧力30〜40MPaの超臨界水中で、目的物が合成できた。
【化23】
【0049】
【表8】
【0050】
(実施例17)
原料として2-aminobenzenethiol(東京化成工業株式会社製)およびbenzaldehyde(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例10と同様にして、下記化学反応式(20)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は76%であった。
【化24】
【0051】
(比較例1)
表9に記載した溶媒に、N-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)72mgを溶解して原料溶液を調製した。この原料溶液を100mLフラスコに入れ、常圧で24時間還流させて、下記化学反応式(21)で示される化学反応を試みた。その結果を表9に示す。
【化25】
【0052】
【表9】
【0053】
(比較例2)
原料としてN-(2-hydroxyphenyl)benzamideを53mg用いた点を除いて、比較例1と同様にして、下記化学反応式(22)で示される化学反応を試みた。その結果を表10に示す。
【化26】
【0054】
【表10】
【0055】
(比較例3)
酢酸にN-benzoyl-2-amino-5-nitroanilineを64mg溶解して原料溶液を調製した。この原料溶液を100mLフラスコに入れ、常圧で24時間還流させて、下記化学反応式(23)で示される化学反応を試みた。その結果、目的物が得られなかった。
【化27】
【0056】
以上より、いずれの比較例でも、目的生成物であるベンゾアゾール類が十分に得られなかった。酸である酢酸を原料溶液に加えると、合成反応が完結する場合もあるが、反応開始から完結まで十数時間要した。酸を原料溶液に加えても、または酸中で原料を加熱撹拌しても、合成反応が全く進行しない場合もあった。
【符号の説明】
【0057】
10 反応装置
12,14 ポンプ
16 ヒーター
18 反応器
20 オーブン
22 冷却装置
24 背圧弁装置
26 収集容器
図1
図2
図3