【0013】
ペプチドカップリング試薬としては、1,1'-carbonyldiimidazole、1,1'-carbonyl-di-(1,2,4-triazole)、oxalic acid diimidazolide、phosgene、N,N'-dicyclohexylcarbodiimide、N-(3-dimethylaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride、2-chloro-1,3-dimethylimidazolidinium chloride、N-cyclohexyl-N'-(2-morpholinoethyl)carbodiimide metho-p-toluenesulfonate、N,N,N',N'-tetramethyl-O-(N-succinimidyl)uronium hexafluorophosphate、O-(benzotriazol-1-yl)-N,N,N',N'-tetramethyluronium hexafluorophosphate、2-chloro-4,6-dimethoxy-1,3,5-triazine、1-chloro-N,N,2-trimethyl-1-propenylamine、chloro-N,N,N',N'-bis(tetramethylene)formamidinium tetrafluoroborateなどが挙げられる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
反応装置10を用いて、以下の手順で、下記化学反応式(4)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行った。
【化8】
【0022】
・実施例1−1
N−メチルピロリドン(NMP、和光純薬工業株式会社製、ペプチド合成用)に、N-[2-(phenylamino)phenyl]benzamideを1.44g溶解して、濃度0.05Mの原料溶液を調製した。温度495℃、圧力45MPaで、水(オルガノ社製、超純水装置で精製)を超臨界状態にした。反応管で混合した原料溶液と超臨界水を容積0.88mLの反応器内に導入し、化学反応式(4)で示される化学反応を温度445℃、圧力45MPaで行い、ベンゾアゾール類である1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleを合成した。原料溶液と超臨界水の混合物が反応器を通過する時間(反応時間)、すなわち反応器内での滞在時間は10秒だった。また、反応器内中の原料のトータル濃度(原料の質量/水とNMPの質量の和×100)は1.44質量%であった。
【0023】
その後、温度15℃、圧力45MPaで、反応器を通過した生成物を冷却装置22で分留した。すなわち、生成物から水とNMPを除去して、N-[2-(phenylamino)phenyl]benzamideと1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleの混合物である試料を収集容器26で収集した。収集した試料の組成分をガスクロマトグラフィー(アジレントテクノロジー株式会社製カラムHP-5MS、ヘリウムキャリアガス、40℃から毎分10℃で230℃まで昇温した後230℃で20分以上維持)で分析したところ、N-[2-(phenylamino)phenyl]benzamideが含有されず、1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleが99%以上の収率で得られた(
図3参照)。
【0024】
また、原料溶液の溶媒の種類と濃度、反応器の容積、反応器内の温度、および反応器内の圧力を変化させて、化学反応式(4)で示される化学反応を行った結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
本実施例では、触媒を添加しなくても、反応時間が1分以下で合成反応が完結した。10秒以下の短時間で合成反応が完結した実施例も多数あった。また、加水分解等の副反応が観測されなかった。そして、温度および圧力が高いほど、反応時間が短く、原料の収率が低く、目的物の収率が高い、すなわち転化率が高い傾向があった。また、原料溶液に酸が含まれると、合成反応が加速する一方、原料の炭化および反応管の閉塞が生じやすくなった(実施例1−27)。温度250〜445℃および圧力30〜45MPaの亜臨界水中または超臨界水中で、1,2-diphenyl-1H-benzo[d]imidazoleが合成できた。
【0027】
(実施例2)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)およびBenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(5)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表2に示す。
【化9】
【0028】
【表2】
【0029】
本実施例では、反応途中で1当量の安息香酸が生じるが、特に反応の加速効果は観測されなかった。また、本実施例も実施例1と同様の傾向が見られた。すなわち、反応時間、転化率、収率の各種傾向は、実施例1と同等であった。温度400〜445℃および圧力30〜45MPaの超臨界水中で、目的物Bが合成できた。
【0030】
(実施例3)
原料としてo-Phenylenediamine(和光純薬工業株式会社製、和光一級)およびBenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(6)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表3に示す。温度400〜445℃および圧力30〜45MPaの超臨界水中で、目的物Dが合成できた。
【化10】
【0031】
【表3】
【0032】
(実施例4)
原料としてN-(2-hydroxyphenyl)benzamideを用いた点および原料を溶解する溶媒として2−プロパノールを用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(7)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表4に示す。温度400〜445℃および圧力40〜45MPaの超臨界水中で、目的物が合成できた。
【化11】
【0033】
【表4】
【0034】
(実施例5)
原料として2-aminophenol(東京化成工業株式会社製)を用いた点および原料を溶解する溶媒として2−プロパノールとエタノールも用いた点を除いて、実施例1と同様にして、下記化学反応式(8)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表5に示す。温度400〜445℃および圧力40〜45MPaの超臨界水中で、目的物Fが合成できた。
【化12】
【0035】
【表5】
【0036】
(実施例6)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)および4-methoxybenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−1と同様にして、下記化学反応式(9)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は90%であった。
【化13】
【0037】
(実施例7)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)および3,4,5-trimethoxybenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、容積4.89mLの反応器内で、他は実施例1−1と同じ条件で、下記化学反応式(10)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は59秒で、収率は80%であった。
【化14】
【0038】
(実施例8)
原料としてN-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)および4-trifluoromethylbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−1と同様にして、下記化学反応式(11)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化15】
【0039】
(実施例9)
原料としてo-phenylenediamine(和光純薬工業株式会社製、和光一級)、N,N'-carbonyldiimidazole(和光純薬工業株式会社製、ペプチド合成用)およびbenzoic acid(和光純薬工業株式会社製、和光特級)を用い、実施例1と同様にして、下記化学反応式(12)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表6に示す。温度400〜445℃および圧力25〜45MPaの超臨界水中で、目的物が合成できた。
【化16】
【0040】
【表6】
【0041】
(実施例10)
原料としてN-Methyl-1,2-phenylenediamine(シグマアルドリッチ社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、圧力25MPaで、他は実施例1−5と同じ条件で、下記化学反応式(13)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化17】
【0042】
(実施例11)
原料として3,4-Diaminotoluene(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−7と同様にして、下記化学反応式(14)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は95%であった。
【化18】
【0043】
(実施例12)
原料として4-bromo-1,2-phenylenediamine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例10と同様にして、下記化学反応式(15)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化19】
【0044】
(実施例13)
原料として4-fluoro-1,2-phenylenediamine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−6と同様にして、下記化学反応式(16)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は99%であった。
【化20】
【0045】
(実施例14)
原料として4-Nitro-1,2-phenylenediamine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1と同様にして、下記化学反応式(17)で示される化学反応を、亜臨界水中または超臨界水中で行った。その結果を表7に示す。温度340〜445℃および圧力45MPaの亜臨界水中または超臨界水中で、目的物Hが合成できた。
【化21】
【0046】
【表7】
【0047】
(実施例15)
原料として3,3'-Diaminobenzidine(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1−6と同様にして、下記化学反応式(18)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は92%であった。
【化22】
【0048】
(実施例16)
原料として2-aminobenzenethiol(東京化成工業株式会社製)およびbenzoic anhydride(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例1と同様にして、下記化学反応式(19)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果を表8に示す。温度400℃および圧力30〜40MPaの超臨界水中で、目的物が合成できた。
【化23】
【0049】
【表8】
【0050】
(実施例17)
原料として2-aminobenzenethiol(東京化成工業株式会社製)およびbenzaldehyde(東京化成工業株式会社製)を用い、実施例10と同様にして、下記化学反応式(20)で示される化学反応を超臨界水中で行った。その結果、反応時間は10秒で、収率は76%であった。
【化24】
【0051】
(比較例1)
表9に記載した溶媒に、N-phenyl-1,2-benzenediamine(和光純薬工業株式会社製)72mgを溶解して原料溶液を調製した。この原料溶液を100mLフラスコに入れ、常圧で24時間還流させて、下記化学反応式(21)で示される化学反応を試みた。その結果を表9に示す。
【化25】
【0052】
【表9】
【0053】
(比較例2)
原料としてN-(2-hydroxyphenyl)benzamideを53mg用いた点を除いて、比較例1と同様にして、下記化学反応式(22)で示される化学反応を試みた。その結果を表10に示す。
【化26】
【0054】
【表10】
【0055】
(比較例3)
酢酸にN-benzoyl-2-amino-5-nitroanilineを64mg溶解して原料溶液を調製した。この原料溶液を100mLフラスコに入れ、常圧で24時間還流させて、下記化学反応式(23)で示される化学反応を試みた。その結果、目的物が得られなかった。
【化27】
【0056】
以上より、いずれの比較例でも、目的生成物であるベンゾアゾール類が十分に得られなかった。酸である酢酸を原料溶液に加えると、合成反応が完結する場合もあるが、反応開始から完結まで十数時間要した。酸を原料溶液に加えても、または酸中で原料を加熱撹拌しても、合成反応が全く進行しない場合もあった。