特許第6567251号(P6567251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567251
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】可塑性油中水型乳化油脂組成物。
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20190819BHJP
   A21D 2/02 20060101ALI20190819BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20190819BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20190819BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20190819BHJP
【FI】
   A23D7/00 500
   A23D7/00 506
   A21D2/02
   A21D2/18
   A21D2/26
   A21D13/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-67219(P2014-67219)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188357(P2015-188357A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月22日
【審判番号】不服2018-11974(P2018-11974/J1)
【審判請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小中 隆太
(72)【発明者】
【氏名】加治屋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】廣川 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恵美
【合議体】
【審判長】 中島 庸子
【審判官】 菅原 洋平
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−240261号公報(JP,A)
【文献】 特開2012−125236号公報(JP,A)
【文献】 特開2003−189791号公報(JP,A)
【文献】 特開平3−216143号公報(JP,A)
【文献】 Milk Science,Vol.61,No.2,2012,pp.95−103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)成分を固形分として、20〜60:30〜70:2.5〜12の質量比(但し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の質量比の和を100とする)で含有し、カゼインたんぱく質を含有しないことを特徴とする可塑性油中水型乳化油脂組成物。
(A)ホエイたんぱく質
(B)乳糖
(C)乳清ミネラル
【請求項2】
上記(A)、(B)及び(C)成分を合計して、固形分として0.5〜7質量%含有することを特徴とする請求項1記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物。
【請求項3】
上記乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が2質量%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物を使用したベーカリー生地。
【請求項5】
請求項4記載のベーカリー生地を使用したベーカリー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、えぐ味のない優れたコクのある乳風味を有する可塑性油中水型乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりバターは、保存性が良好で、優れたコクのある乳風味を有し、さらにバターを使用したベーカリー食品も優れたコクのある乳風味を有することから、製菓・製パン業界では広く使用されている。
【0003】
しかし、バターは、その油脂特性により口溶けは良好であるが低温で硬く融点もやや低いため、夏場などは極度に軟化したり、油分分離したり溶解してしまうなど物性面において使いやすいものではなかった。そのため、乳脂に代えて各種動植物油を使用した油相と、脱脂粉乳等の粉乳類を溶解した水相を油中水型に乳化し、冷却可塑化することで得られる可塑性油中水型乳化油脂組成物が製菓・製パン用をはじめ様々な飲食品に使用されている。この可塑性油中水型乳化油脂組成物は、作業性が良好で、ベーカリー製品をはじめ、各種飲食品にある程度のバター風味を付与することもできることから、バターに代わり広く使用されている。
【0004】
ここで、上記可塑性油中水型乳化油脂組成物の水相に使用する粉乳類として、従来は牛乳を粉末化した全粉乳や、無脂乳固形分を粉末化した脱脂粉乳の使用が主流であった。全粉乳や脱脂粉乳は牛乳あるいは牛乳の水相成分をそのまま粉末化したものであるため、風味的にバター同様の優れたコクのある乳風味を付与することができるためである。
【0005】
しかし、近年は、より濃厚な風味を求める目的やコストダウン等の目的で、更に乳たんぱく質が濃縮された粉末状の乳製品が用いられる場面が増えてきている。具体的には、ホエイを粉末化したホエイパウダー、更にはホエイプロテインコンセントレート(WPC)・ホエイたんぱく質単離物(WPI)・トータルミルクプロテイン(TMP)・カゼインナトリウム・カゼインカリウム等の乳たんぱく質である。
【0006】
しかし、これらの粉末状の乳製品は、乳の中の好ましくない風味成分まで濃縮されているため、えぐ味が強く感じられてしまう問題があった。
そのため、可塑性油中水型乳化油脂組成物において、乳製品、特に乳たんぱく質の使用量を減じた場合であっても、バター同様のえぐ味のない優れたコクのある乳風味を付与する方法が各種研究され、提案されている。
【0007】
まず、一般的には、香料や乳脂分解物等の風味成分が使用される。しかし、この方法では乳風味は増強されるが、味に厚みがないため、優れたコクのある乳風味の可塑性油中水型乳化油脂組成物が得られないという問題があった。
また、発酵乳や醗酵バターを使用する方法も行われるが、この方法では、特有の発酵風味が付与されてしまう問題があった。
そのため、少量の乳製品に乳風味増強剤を併用する方法(たとえば特許文献1〜6参照)、バターに代えてアミノ酸組成物を使用する方法(例えば特許文献7参照)等が提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1〜6の乳風味増強剤を併用する方法は、実際には乳風味自体を増強しているのではなく、単にコク味を付与することにより乳風味を増強させている。そのため、コク味の強さの割りに乳風味は感じられないという問題があった。また、乳風味以外の成分の風味をも同様に増強してしまい、乳風味が目立って増強されたように感じられない、という問題もあった。また、これらの素材はコク味を付与するために素材自体の風味が強いものであるため、添加量を増やすとそれらの風味が感じられてしまうという問題もあった。
また、特許文献7に記載のアミノ酸組成物を使用する方法は、バター風味を強化するためにアミノ酸の添加量を増やすとえぐ味が出るおそれがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−202492号公報
【特許文献2】特開2010−057434号公報
【特許文献3】特開平07−236451号公報
【特許文献4】特開2000−135055号公報
【特許文献5】特開2008−259447号公報
【特許文献6】特開2000−004822号公報
【特許文献7】再表2009−101972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、えぐ味のない優れたコクのある乳風味を有する可塑性油中水型乳化油脂組成物、及び、該可塑性油中水型乳化油脂組成物を使用したえぐ味のない優れたコクのある乳風味を有するベーカリー製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討したところ、特定の乳成分を特定比で配合した場合上記問題を解決可能であることを見出した。
すなわち本発明は下記(A)、(B)及び(C)成分を固形分として、20〜60:30〜70:2.5〜12の質量比(但し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の質量比の和を100とする)で含有し、カゼインたんぱく質を含有しないことを特徴とする可塑性油中水型乳化油脂組成物を提供するものである。
(A)ホエイたんぱく質
(B)乳糖
(C)乳清ミネラル
また、本発明は該可塑性油中水型乳化油脂組成物を使用したベーカリー製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、乳たんぱく質、バターや乳脂の含有量が少ない場合であってもえぐ味のない優れたコクのある乳風味を有する。
また、本発明のベーカリー製品は、乳たんぱく質、バターや乳脂の含有量が少ない場合であってもえぐ味のない優れたコクのある乳風味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物について好ましい実施形態に基づき詳述する。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は(A)ホエイたんぱく質を含有する。
上記ホエイたんぱく質としては、ラクトアルブミン、βラクトグロブリンの各単体や、これらの混合物、もしくはこれらを含んだ食品素材、乳清たんぱく質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイたんぱく質濃縮物(ホエイプロテインコンセントレート)等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
なお、本発明では脱乳糖ホエイパウダー、及び/またはホエイたんぱく質濃縮物(ホエイプロテインコンセントレート)を使用することが好ましく、特にホエイたんぱく質濃縮物(ホエイプロテインコンセントレート)を使用することが好ましい。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記ホエイたんぱく質の含有量は、組成物基準で、固形分として、ホエイたんぱく質純分として0.1〜4質量%、好ましくは0.2〜4質量%、より好ましくは0.4〜2質量%である。上記ホエイたんぱく質の含有量が0.1質量%未満であると、本発明の効果が見られにくく、また、4質量%を超えると、えぐ味が顕在化するおそれがある。
【0014】
なお、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物はカゼインたんぱく質を含有しないことが必要である。可塑性油中水型乳化油脂組成物中にカゼインたんぱく質を含有すると良好な乳風味の発現を阻害し、全体的にぼやけた風味となってしまう。なお、本発明においてカゼインたんぱく質を含有しない、とはカゼインたんぱく質含量が組成物基準でカゼインたんぱく質純分として0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下であることをいう。
上記カゼインたんぱく質としては、αs1−カゼイン、αs2−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインの各単体や、これらの混合物、もしくはこれらを含んだ食品素材、アルカリカゼイン(カゼイネート)、酸カゼイン等が挙げられる。
【0015】
また、上記カゼインたんぱく質と上記ホエイたんぱく質の両方を含有する乳原料、例えば、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、バターミルク、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、脱脂粉乳、全粉乳、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、クリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等については、本発明では、得られる可塑性油中水型乳化油脂組成物中のカゼインたんぱく質の含有量が上述の範囲内である限りにおいて使用することができる。
【0016】
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は(B)乳糖を含有する。
上記乳糖としては、乳糖そのものを使用してもよく、また、乳糖を含有する乳製品や食品素材を使用することもできる。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記乳糖の含有量は、組成物基準で、固形分として0.1〜5質量%、好ましくは0.25〜5質量%、より好ましくは0.6〜2.5質量%である。上記乳糖の含有量が0.1質量%未満であると、本発明の効果が見られにくく、また、5質量%を超えると、コクのある乳風味が感じられなくなってしまう。
【0017】
本発明で使用する(C)乳清ミネラルについて詳述する。
乳清ミネラルとは、乳又はホエイ(乳清)から、可能な限りたんぱく質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。
【0018】
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、より良好な乳風味と口溶けを有する可塑性油中水型乳化油脂組成物が得られる点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。尚、該カルシウム含量は低いほど好ましい。
【0019】
牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が5質量%以上である。上記カルシウム含量が2質量%未満の乳清ミネラルは、乳又はホエイから、膜分離及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖及びたんぱく質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエイを用いる方法、或いは甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法が挙げられるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
【0020】
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記乳清ミネラルの含有量は、組成物基準で、固形分として0.03〜0.6質量%、好ましくは0.05〜0.4質量%、より好ましくは0.075〜0.25%である。上記乳清ミネラルの含有量が0.03質量%未満であると、本発明の効果が見られにくく、また、0.6質量%を超えると、苦味を感じるおそれがある。
【0021】
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、上記(A)ホエイたんぱく質、上記(B)乳糖及び上記(C)乳清ミネラルを固形分として、20〜60:30〜70:2.5〜12の質量比、好ましくは25〜50:40〜70:3〜9の質量比、より好ましくは35〜45:50〜60:4〜8の質量比(但し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の質量比の和を100とする)で含有する。
ここで(A)成分の含有比が20%未満であると良好な乳風味が感じられなくなり、60%超であると、えぐ味が顕在化する。
また(B)成分の含有比が30%未満であるとえぐ味が顕在となり、70%超であると、乳風味が弱い上に全体的にぼやけた風味となる。
さらに(C)成分の含有比が2.5%未満であると良好な乳風味が感じられなくなり、12%超であると、えぐ味が顕在化する。
【0022】
尚、(A)、(B)及び(C)の3成分の合計した含有量は、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物中、固形分として、好ましくは0.5〜7質量%、より好ましくは0.8〜5質量%であり、更に好ましくは1.1〜4質量%である。
【0023】
本発明の油可塑性油中水型乳化油脂組成物で使用される食用油脂は、食用に適する油脂であればよく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴー脂、乳脂等の常温で固体の油脂も挙げられ、更に、これらの食用油脂の硬化油、分別油、エステル交換油等の物理的又は化学的処理を施した油脂を使用することもできる。
【0024】
尚、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記食用油脂の含有量は、油中水型乳化の安定化のためには、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜90質量%であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における水の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは2〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0026】
また、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物には、上記ホエイたんぱく質、乳糖、乳清ミネラル、食用油脂、水以外に、通常、マーガリン、ショートニング等の可塑性油中水型乳化油脂組成物に使用されることが知られているその他の原料を、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができる。
【0027】
上記その他の原料としては、乳化剤、澱粉類、繊維類、増粘多糖類等の安定剤、ホエイたんぱく質以外のたんぱく質、乳糖以外の糖類、乳たんぱく質を含有しない乳製品、卵類、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、茶、酒類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、調味料、酵素、着香料、着色料、食品保存料、日持ち向上剤、酸化防止剤、pH調整剤等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0028】
上記安定剤としては、リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、有機酸塩類(クエン酸塩、酒石酸塩等)、無機塩類(炭酸塩等)、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、澱粉、化工澱粉、結晶セルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記安定剤の含有量は、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
【0029】
上記の「ホエイたんぱく質以外のたんぱく質」としては、特に限定されないが、例えば、血清アルブミン、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦たんぱく質、大豆たんぱく質、エンドウたんぱく質、トウモロコシたんぱく質、その他の動物性及び植物性たんぱく質等のたんぱく質、並びにこれらの加水分解物、これらを含有する食品素材が挙げられる。なお、上述のとおりカゼインたんぱく質については使用することができない。
これらの「ホエイたんぱく質以外のたんぱく質」は、目的に応じて一種ないし二種以上のたんぱく質として、或いは一種ないし二種以上のたんぱく質を含有する食品素材の形で添加してもよい。
上記の「ホエイたんぱく質以外のたんぱく質」の含有量は、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
【0030】
上記乳糖以外の糖類としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム等の糖類が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記糖類の含有量は、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜30質量%である。
【0031】
次に、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物の好ましい製造方法について述べる。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、例えば、(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖及び(C)乳清ミネラルを(A)、(B)及び(C)成分を固形分として、20〜60:30〜70:2.5〜12の質量比(但し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の質量比の和を100とする)となるように含有し、且つ、カゼインたんぱく質を含有しない水相と、油脂を主体とする油相を油中水型に乳化し、急冷可塑化することにより得ることができる。
【0032】
具体的には、まず油脂に必要により乳化剤やその他の材料を添加した油相と、水に(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖及び(C)乳清ミネラルを(A)、(B)及び(C)成分を固形分として、20〜60:30〜70:2.5〜12の質量比(但し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の質量比の和を100とする)となるように、且つ、カゼインたんぱく質を含有しないように添加した水相を油中水型に乳化し、乳化物とする。
【0033】
上記の油相と水相との質量比(前者:後者)は、好ましくは油相:水相=50:50〜95:5、より好ましくは油相:水相は70:30〜90:10である。本発明において、油相が50質量%よりも少なく、水相が50質量%よりも多いと、乳化が不安定となりやすい。また、油相が95質量%よりも多く、水相が5質量%よりも少ないと、良好な可塑性が得られにくい。
【0034】
そして、次に、得られた乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、乳化物を冷却し、可塑化する。本発明において、上記の冷却は好ましくは−0.5℃/分以上、より好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急速冷却の方が好ましい。冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
【0035】
また、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
なお、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、シート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状としてもよい。
【0036】
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、各種食品に用いることができ、例えば食パン、菓子パン、デニッシュ・ペストリー、パイ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等のベーカリー製品に、練り込み用、ロールイン用、サンド・フィリング用、スプレー・コーティング用、フライ用として使用することができるが、なかでも本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、ベーカリー生地製造時に練り込み及び/又はロールイン使用することが好ましく、とくに好ましくはロールイン使用する。
なお、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、他にも、カレールウ用、バッター用、ソース用、フライ用等の調理・総菜用としてもまた使用することができる。
【0037】
次に本発明のベーカリー生地について説明する。
本発明のベーカリー生地は上述のように本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物を使用したものであり、好ましくはベーカリー生地製造時に練り込み及び/又はロールインしたものである。上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地等の菓子生地や、食パン生地、フランスパン生地、バラエティブレッド生地、ブリオッシュ生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地、マフィン生地、ピザ生地、スコーン生地、蒸しパン生地、ワッフル生地、イングリッシュマフィン生地、バンズ生地等のパン生地が挙げられるが、本発明のベーカリー生地は、良好なミルク風味が得られる点でパン生地であることが好ましい。
【0038】
上記のベーカリー生地における本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物の使用量は、ベーカリー生地の種類により異なるが、練り込み使用する場合で、菓子生地の場合は菓子生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜21質量部であり、パン生地の場合はパン生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜21質量部である。
なお、ロールイン使用する場合、菓子生地の場合は菓子生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは30〜150質量部、より好ましくは50〜100質量部であり、パン生地の場合はパン生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部である。
【0039】
上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉及び全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉及び米澱粉などの澱粉並びにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
本発明では、澱粉類中、好ましくは小麦粉類を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%使用することが望ましい。
【0040】
次に、本発明のベーカリー製品について述べる。
本発明のベーカリー製品は、上記の本発明のベーカリー生地を、適宜、分割、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レストをとった後、加熱処理することにより得ることができる。
上記成形は、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
上記加熱処理としては、例えば、焼成、フライ、蒸し、蒸し焼きが挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上の処理を行うことができるが焼成によることが好ましい。
また、得られた本発明のベーカリー製品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例により何等制限されるものではない。
【0042】
<乳清ミネラルの製造>
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
【0043】
<可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造>
〔実施例1〕
パームスーパーオレインのランダムエステル交換油95質量%とパームステアリン5質量%との混合油脂80.5質量部を60℃に加熱し、グリセリンモノステアリン酸エステル0.5質量部及びレシチン0.5質量部を添加・溶解した油相を用意した。一方、水17.55質量部を混合後60℃に加熱し、ホエイプロテインコンセントレート(たんぱく質含有量80質量%、たんぱく質中のホエイたんぱく質含量=100質量%、乳糖含量5質量%)0.4質量部、乳糖0.5質量部、乳清ミネラルA0.05質量部を添加・溶解した水相を用意した。上記油相と水相を油中水型の乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度―20℃/分)にかけ、これをシート状に成型し、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物1を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物1は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、36:58.4:5.6の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して0.89質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物1は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0044】
〔実施例2〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を16.4質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物2を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物2は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、41.0:53.9:5.1の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.95質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物2は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0045】
〔実施例3〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から2質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から2質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.2質量部に、更に水17.55質量部を14.3質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物3を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物3は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、41.0:53.9:5.1の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して3.9質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物3は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0046】
〔実施例4〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から3質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から3質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.3質量部に、更に水17.55質量部を12.2質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物4を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物4は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、41.0:53.9:5.1の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して5.85質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物4は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0047】
〔実施例5〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から2質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を15.4質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物5を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物5は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、57.1:39.3:3.6の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して2.8質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物5は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0048】
〔実施例6〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から0.5質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を16.9質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物6を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物6は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、26.2:67.2:6.6の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.525質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物6は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0049】
〔実施例7〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から2質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を15.4質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物7を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物7は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、27.1:69.5:3.4の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して2.95質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物7は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0050】
〔実施例8〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を16.9質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物8を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物8は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを、固形分として、(A):(B):(C)を55.2:37.9:6.9の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.45質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物8は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0051】
〔実施例9〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.2質量部に、更に水17.55質量部を16.3質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物9を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物9は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを、固形分として、(A):(B):(C)を39.0:51.2:9.8の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して2.05質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物9は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0052】
〔実施例10〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.05質量部に、更に水17.55質量部を16.45質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物10を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物10は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、42.1:55.3:2.6の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.9質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物10は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0053】
〔比較例1〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から5質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を12.4質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物11を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物11は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、74.7:23.4:1.9の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して5.38質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物11は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0054】
〔比較例2〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から0.2質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を17.2質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物12を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物12は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、12.6:79.5:7.9の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.27質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物12は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0055】
〔比較例3〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から5質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を12.4質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物13を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物13は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、13.4:84.9:1.7の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して5.95質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物13は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0056】
〔比較例4〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から0.2質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.1質量部に、更に水17.55質量部を17.2質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物14を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物14は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、69.6:21.7:8.7の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.15質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物14は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0057】
〔比較例5〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.5質量部に、更に水17.55質量部を16質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物15を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物15は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、34:44.7:21.3の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して2.35質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物15は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0058】
〔比較例6〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートの含有量を0.4質量部から1質量部に、乳糖の含有量を0.5質量部から1質量部に、乳清ミネラルAの含有量を0.05質量部から0.02質量部に、更に水17.55質量部を16.48質量部に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物16を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物16は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、42.8:56.1:1.1の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.87質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物16は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0059】
〔比較例7〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートをホエイパウダー(たんぱく質含有量13質量%、たんぱく質中のホエイたんぱく質含量=100質量%、乳糖含量77質量%)に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物17を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物17は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、6.5:88.5:5.0の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して2.00質量%含有するものであった。また、可塑性油中水型乳化油脂組成物17は、カゼインたんぱく質を含有しないものであった。
【0060】
〔比較例8〕
実施例1におけるホエイプロテインコンセントレートを脱脂粉乳(たんぱく質含有量35質量%、たんぱく質中のホエイたんぱく質含量=20質量%、乳糖含量53質量%)に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、ロールイン用である比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物18を製造した。
なお、得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物18は(A)ホエイたんぱく質、(B)乳糖、及び(C)乳清ミネラルを(A):(B):(C)を、固形分として、4.1:90.0:5.9の質量比で含有し、(A)、(B)及び(C)を、固形分として、合計して1.70質量%含有するものであった。
またカゼインたんぱく質含量は組成物基準でカゼインたんぱく質純分として0.28質量%であった。
【0061】
<ベーカリー試験>
上記可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造により得られた可塑性油中水型乳化油脂組成物1〜18を使用し、下記配合・製法により、本発明のベーカリー生地、及び、ベーカリー製品(デニッシュ)を得た。
得られたデニッシュについて焼成1時間後に喫食し、下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を表1に示した。
【0062】
(デニッシュの配合・製法)
<配合>
強力粉 70質量部
薄力粉 30質量部
イーストフード 0.1質量部
イースト 4質量部
食塩 1.6質量部
砂糖 6質量部
脱脂粉乳 3質量部
練り込み油脂(ショートニング) 5質量部
水 58質量部
可塑性油中水型乳化油脂組成物 54質量部
【0063】
<製法>
可塑性油中水型乳化油脂組成物以外の原料を、たて型ミキサーにて低速3分及び中速5分ミキシングした小麦粉生地(捏ね上げ温度=24℃)を2℃の冷蔵庫内で一晩リタードした。この小麦粉生地に可塑性油中水型乳化油脂組成物をのせ、常法によりロールイン(4つ折1回、3つ折2回)し、36層に折り畳み、厚さ30mmのデニッシュ生地を得た。この生地を2℃の冷蔵庫内で30分レストを取った後、厚さ3mmに圧延し、直径100mmの型で生地を打ち抜き展板に載せ、32℃、相対湿度85%、60分のホイロを取った後、210℃の固定窯で11分焼成した。
【0064】
〔評価基準〕
・乳風味
○○○:優れたコクのある乳風味を強く感じる。
○○ :優れたコクのある乳風味を感じる。
○ :コクのある乳風味を感じる。
△ :乳風味が弱い。
× :乳風味が感じられない。
【0065】
・えぐ味
○○○:全く感じられない。
○○ :ごくわずかに感じるものの問題ないレベルである。
○ :わずかに感じるものの問題ないレベルである。
△ :若干感じられる。
× :はっきりと感じられる。
×× :強いえぐ味を感じる。
【0066】
【表1】