(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567897
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/70 20060101AFI20190819BHJP
F04D 29/18 20060101ALI20190819BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20190819BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
F04D29/70 G
F04D29/18 101Z
F04D29/60 E
F04D29/08 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-130012(P2015-130012)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-14937(P2017-14937A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 純貴
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅樹
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−146776(JP,A)
【文献】
特開2008−267314(JP,A)
【文献】
特開2010−025025(JP,A)
【文献】
米国特許第04417850(US,A)
【文献】
特公昭58−042074(JP,B2)
【文献】
特開2008−280904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/08
F04D 29/18
F04D 29/60
F04D 29/70
F04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸と共に回転するように構成されるインペラハブと、
前記インペラハブと共に前記軸受が配置される空間を形成する固定された内部ケーシングと、
前記内部ケーシングに対して固定される筒状体と、
吐出ケーシングに取り付けられた案内羽根と、
湾曲した管路を有する吸込ケーシングと、を有し、
前記内部ケーシングは、前記回転軸が通過する開口を形成する第1端部を有し、
前記インペラハブは、前記内部ケーシングの前記第1端部に対向する第2端部を有し、
前記内部ケーシングの前記第1端部と前記インペラハブの前記第2端部との間に第1隙間が形成され、
前記筒状体は、前記回転軸の径方向内側から前記第1隙間を覆うように構成され、
前記筒状体の外周面と前記インペラハブの前記第2端部の内周面との間に第2隙間が形成され、
前記内部ケーシングは、前記案内羽根を介して前記吐出ケーシングに固定され、
前記空間の内部と外部とが、前記第1隙間及び前記第2隙間によって互いに連通し、
前記空間に搬送液が満たされたとき、前記空間内の圧力は、前記案内羽根付近の圧力とほぼ同等であり、
前記内部ケーシング及び前記筒状体は、周方向に分割可能に構成される、横軸ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載された横軸ポンプにおいて、
前記筒状体の軸方向長さは、前記第1隙間の長さの1倍以上10倍以下である、横軸ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された横軸ポンプにおいて、
前記筒状体は、その外周面に突起部を有する、横軸ポンプ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載された横軸ポンプにおいて、
前記インペラハブは、前記回転軸が通過する開口を形成する第3端部を有し、
前記インペラハブの前記第3端部は、前記回転軸の外周部に対して固定される、横軸ポンプ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載された横軸ポンプにおいて、
前記内部ケーシングは、カップ状に形成され、前記回転軸の先端部をその内部に収容するように構成される、横軸ポンプ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載された横軸ポンプにおいて、
前記インペラハブの外周面に配置され、前記インペラハブと共に回転する羽根車を有する、横軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川水や排水などの液体を揚排水するポンプが知られている。
図7は、従来の横軸軸流ポンプの断面図である。
図7に示すように、従来の横軸軸流ポンプ100は、吸込ケーシング102と、吸込ケーシング102の下流側にフランジ接続される吐出ケーシング104とを有する。また、横軸軸流ポンプ100は、略水平方向に延在する主軸101(回転軸)を有する。主軸101は、吸込ケーシング102を貫通し、吐出ケーシング104の内部まで延在する。主軸101と吸込ケーシング102との隙間は、軸封部103により液密に封止される。
【0003】
主軸101の一端側は、吐出ケーシング104内に配置される水中軸受111によって回転可能に支持され、水中軸受111は、複数の案内羽根108を介して吐出ケーシング104に固定された内部ケーシング(内筒)121内に固定される。また、主軸101の他端側は、主軸101を回転させるためのエンジンやモータ等の原動機の軸継手110に接続される。主軸101には、インペラハブ120がキー105によって固定される。これにより、主軸101の回転に伴ってインペラハブ120が回転する。インペラハブ120と内部ケーシング121とにより、水中軸受111を収容する空間である水中軸受室109が形成される。
【0004】
インペラハブ120の外周には、ナット106により羽根車107が固定される。これにより、主軸101及びインペラハブ120の回転に伴い、羽根車107が回転する。羽根車107の回転により、搬送液は吸込ケーシング102から吐出ケーシング104へ向かう方向に流れる。
【0005】
羽根車107が固定されるインペラハブ120は、主軸101と共に回転する回転体である。一方で、内部ケーシング121は吐出ケーシング104に固定される固定体である。このため、インペラハブ120が内部ケーシング121に接触しないように、インペラハブ120と内部ケーシング121との間には隙間hが形成される。
【0006】
隙間hは、ポンプ100の運転による振動、経年劣化による主軸101のたわみ、及びその他の外乱によっても、インペラハブ120と内部ケーシング121が接触しないように、十分な大きさを有するように設計される。したがって、隙間hは例えば5mm程度に設計される。
【0007】
横軸軸流ポンプ100のようなポンプ設備においては、搬送液に想定外の異物が混入することがある。異物には、例えば髪の毛やPP(ポリプロピレン)バンド、ビニール紐、PE(ポリエチレン)テープ等のひも状の浮遊物が含まれていることがある。このようなひも状の浮遊物が、隙間hから水中軸受室109に入り込むと、主軸101に巻き付き、主軸101を拘束し、最悪の場合はポンプが運転できなくなってしまう虞がある。
【0008】
上述したように、隙間hは、インペラハブ120と内部ケーシング121との接触を防止するために、所定の大きさが必要である。したがって、ひも状の浮遊物が水中軸受室109に入り込むことを防止するために、隙間hを小さくするように設計変更することはできない。
【0009】
これに対して、ワイヤやひも等のごみ屑が回転軸に巻きつくことを防止するために、回転軸の周囲に巻き付き防止板を設けた水中形回転機が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、内部ケーシングと羽根ボスとの間の隙間から異物が入り込むことは防止することができず、内部ケーシングと羽根ボスとにより形成される空間に異物が滞留する。この空間内に異物が滞留し続けると、水中軸受の周りに異物が滞留し、水中軸受の温度が上昇し、水中軸受が破損してしまう虞もある。そのため、滞留する異物を除去するために内部ケーシングと羽根ボスとを分解しなければならないという問題がある。
【0010】
また、静止体である巻き付き防止板の回転軸より内側に、回転体である羽根ボスが隣接して配置されている。この場合は、羽根ボスと巻き付き防止板の隣接部分にビニール紐のような軽いひも状の浮遊物の一端が接触してしまうと、回転作用により回転軸側に浮遊物が軸部に吸い込まれてしまい、結果として回転軸への浮遊物の巻き付きを防止できなくなる虞がある。
【0011】
また、ポンプ軸に設けられた羽根車と吐出ボウルとの間の隙間から、ビニール紐や毛髪などが中空部に侵入することを防止するために、羽根車に環状部を形成した立軸ポンプが知られている(特許文献2参照)。この立軸ポンプでは、羽根車に形成された環状部が吐出ボウルの開口部の内側に位置し、環状部と吐出ボウルとの隙間から中空部に異物が侵入することを防止している。しかしながら、環状部は羽根車と共に回転するので、比重が軽いひも状の浮遊物が環状部に接触した場合、ひも状の浮遊物が回転する環状部に巻き込まれる虞がある。
【0012】
ところで、上水道用ポンプ設備、都市排水用ポンプ設備、農地用揚排水用ポンプ設備、及び産業用ポンプ設備等におけるポンプを駆動する原動機として、主にエンジンと電動機とが知られている。電動機は、エンジンの場合に必要な燃料油を貯蔵及び供給するための設備が不要であるので、設置面積が削減されるとともに、維持管理が容易である。また、電動機は、エンジンのようなピストンの往復運動による振動及び騒音が無い等のメリットも有する。その反面、電動機は、災害や送電経路の事故等により停電時には、ポンプを駆動することができないというデメリットがあり、電源設備の信頼性が必須である。
【0013】
しかしながら、近年は、電源を安定して供給する技術、受電設備の技術、非常用電源の技術、及び電動機の効率等の向上により、ポンプを駆動する原動機として電動機が用いられるポンプ設備が増加している。
【0014】
ポンプ設備においては、原動機の出力が不足し、揚程や水量が不足することを回避するために、電動機駆動では出力が不足するかもしれないという懸念よりエンジン駆動が採用されている現場もある。それらのポンプ設備の経年による更新時には過去の使用実績に基づき設備計画を行うことが可能なため設備更新前よりも小さな出力の原動機でも揚程や水量が十分であると判断され、電動機を採用する現場もある。この場合、運転効率の良い電動機を採用することによって省エネルギーが達成される。これらの背景より、近年ではポンプ設備に電動機が採用される場合が多くなっている。
【0015】
しかしながら、搬送液にひも状の浮遊物が混入し、回転軸に巻き付き、電動機の負荷が想定される負荷よりも大きくなると、電動機の電流値が高効率点より大きくなり、電動機の効率が下がるため、エネルギーロスとなる。更に、回転軸に絡み付く異物の量が多くなると、エンジンに比べてトルクが小さい電動機では、ポンプの回転軸が拘束され、電動機が過負荷により停止しポンプが給水不能となる可能性が高くなる。
【0016】
ポンプ設備はライフラインであり、不測の給水不能の事態は絶対に避けなければならな
い。メンテナンスの軽減や省エネルギーを目的としてエンジン駆動から電動機に変更したにも関わらず、回転軸に巻き付いた浮遊物が原因で、エネルギーロスが発生したり頻繁に回転軸の清掃を行うメンテナンスが必要になったりする虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実開昭58−142398号公報
【特許文献2】特開2003−227489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、ポンプの搬送液に含まれるひも状の浮遊物が内部ケーシングの内部に侵入することを抑制することである。
【0019】
また、本発明の他の目的の一つは、ポンプの搬送液に含まれるひも状の浮遊物が、主軸等の回転体に巻き付くことを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一形態によれば、ポンプが提供される。このポンプは、回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、前記回転軸と共に回転するように構成されるインペラハブと、前記インペラハブと共に前記軸受が配置される空間を形成する固定された内部ケーシングと、前記内部ケーシングに対して固定される筒状体と、を有し、前記内部ケーシングは、前記回転軸が通過する開口を形成する第1端部を有し、前記インペラハブは、前記内部ケーシングの前記第1端部に対向する第2端部を有し、前記内部ケーシングの前記第1端部と前記インペラハブの前記第2端部との間に第1隙間が形成され、前記筒状体は、前記回転軸の径方向内側から前記第1隙間を覆うように構成され、前記筒状体の外周面と前記インペラハブの前記第2端部の内周面との間に第2隙間が形成される。
【0021】
上記ポンプの一形態において、前記第2隙間は、前記第1隙間の長さの0.1倍以上1倍以下の長さを有する。
【0022】
上記ポンプの一形態において、前記筒状体の軸方向長さは、前記第1隙間の長さの1倍以上10倍以下である。
【0023】
上記ポンプの一形態において、前記筒状体は、その外周面に突起部を有する。
【0024】
上記ポンプの一形態において、前記筒状体は、周方向に分割可能に構成される。
【0025】
上記ポンプの一形態において、前記インペラハブは、前記回転軸が通過する開口を形成する第3端部を有し、前記インペラハブの前記第3端部は、前記回転軸の外周部に対して固定される。
【0026】
上記ポンプの一形態において、前記内部ケーシングは、カップ状に形成され、前記回転軸の先端部をその内部に収容するように構成される。
【0027】
上記ポンプの一形態において、前記インペラハブの外周面に配置され、前記インペラハブと共に回転する羽根車を有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ポンプの搬送液に含まれる異物が内部ケーシングの内部に侵入するこ
とを抑制することができる。
【0029】
また、本発明によれば、ポンプの搬送液に含まれるひも状の浮遊物が、主軸等の回転体に巻き付くことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る横軸軸流ポンプを示す側断面図である。
【
図3】
図1のA−A断面におけるインペラハブ及び筒状体の横断面図である。
【
図5】突起部を有する筒状体及びインペラハブの横断面図である
【
図6】周方向に分割可能に構成される筒状体を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明のポンプの一例として横軸軸流ポンプが説明される。
【0032】
図1は、本実施形態に係る横軸軸流ポンプを示す側断面図である。図示のように、横軸軸流ポンプ10は、湾曲した管路を有する吸込ケーシング12と、吸込ケーシング12の下流側にフランジ接続される管状の吐出ケーシング14とを有する。また、横軸軸流ポンプ10は、略水平方向に延在する主軸11(回転軸の一例に相当する)を有する。主軸11は、吸込ケーシング12を貫通し、吐出ケーシング14の内部まで延在する。主軸11と吸込ケーシング12との隙間は、軸封部13により液密に封止される。
【0033】
主軸11の先端側は、吐出ケーシング14内に配置される水中軸受21によって回転可能に支持され、水中軸受21は、複数の案内羽根18を介して吐出ケーシング14に固定された内部ケーシング(内筒)31内に固定される。主軸11の後端側は、主軸11を回転させるためのエンジンやモータ等の原動機の軸継手20に接続される。また、軸継手20と軸封部13との間には、吸込ケーシング12の外部において主軸11を回転可能に支持する外部軸受22が設けられる。主軸11には、インペラハブ30がキー15によって固定される。これにより、主軸11の回転に伴ってインペラハブ30が回転する。インペラハブ30と内部ケーシング31により、水中軸受21を収容する空間である水中軸受室19が形成される。
【0034】
インペラハブ30は、主軸11が通過する円筒状の開口を形成する端部30a(第2端部の一例に相当する)及び端部30b(第3端部の一例に相当する)を有し、略筒形状をなしている。上流側に位置する端部30bは、キー15によって主軸11の外周部に対して固定される。インペラハブ30の外周には、ナット16により羽根車17が固定される。これにより、主軸11及びインペラハブ30の回転に伴い、羽根車17が回転する。羽根車17の回転により、搬送液は吸込ケーシング12から吐出ケーシング14へ向かう方向に流れる。
【0035】
内部ケーシング31は、主軸11が通過する円筒状の開口を形成する端部31a(第1端部の一例に相当する)を有する。内部ケーシング31の端部31aは、インペラハブ30の端部30aと対向し、端部31aと端部30aとの間に隙間h1(
図2参照)が形成される。また、内部ケーシング31は、カップ状に形成され、端部31aが形成する開口を通過した主軸11の先端部をその内部に収容するように構成される。
【0036】
インペラハブ30の外周及び内部ケーシング31の外周を通過する流体の軸方向流れを阻害しないように、内部ケーシング31の端部31aの外周径とインペラハブ30の端部30aの外周径は、略等しい。内部ケーシング31の端部31aには、端部31aの内径よりも径の小さいリング状の筒状体40が固定される。内部ケーシング31の端部31aに設けられる筒状体40は、インペラハブ30の端部30aと接触しないように、端部30aの内側に差し込まれるように位置する。
【0037】
次に、筒状体40の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示した部分P1の拡大側断面図であり、
図3は、
図1に示したA−A断面におけるインペラハブ30及び筒状体40の横断面図である。
図2に示すように、インペラハブ30の端部30aと内部ケーシング31の端部31aは、互いに対向するように位置し、これらの間に隙間h1(第1隙間の一例に相当する)が形成される。端部31aの内周部には、略円盤状の取付部31bが設けられる。筒状体40は、この取付部31bを介して内部ケーシング31に対して固定される。
【0038】
図3に示すように、筒状体40は、全体としてリング状であり、インペラハブ30の端部30aよりも小さい径を有する。
図2に示すように、筒状体40は、取付部31bから上流側(図中左側)に延在するように構成される。言い換えれば、筒状体40は、取付部31bから
図1に示した主軸11の軸方向に延在するように、内部ケーシング31に対して固定される。これにより、筒状体40は、
図1に示した主軸11の径方向内側(
図1に示した水中軸受室19側)から、隙間h1を覆うように構成される。また、筒状体40の外周面40aとインペラハブ30の端部30aの内周面30cとの間には、隙間h2が形成される。言い換えれば、筒状体40の外径は、インペラハブ30の端部30aの内径よりも隙間h2の長さだけ小さく、筒状体40とインペラハブ30は同心円上に設置される。
【0039】
図1に示した横軸軸流ポンプ10において羽根車17を回転させるとき、インペラハブ30も回転する。このとき、
図2及び
図3に示したインペラハブ30の端部30aと筒状体40との隙間h2の長さは略一定に保たれる。また、
図1に示した横軸軸流ポンプ10の運転が停止している間は、水中軸受室19は搬送液で満たされていない。横軸軸流ポンプ10の運転を開始することで、搬送液が隙間h1及び隙間h2を通じて水中軸受室19内に侵入し、水中軸受室19が搬送液で満たされる。
【0040】
隙間h1及び隙間h2によって水中軸受室19の内側と外側とが連通するので、水中軸受室19が搬送液で満たされた後は、水中軸受室19内の圧力は案内羽根18付近の圧力とほぼ同等となる。したがって、水中軸受室19が搬送液で満たされた後は、搬送液は基本的には水中軸受室19内へ移動しない。また、横軸軸流ポンプ10の運転中は、搬送液に含まれる異物は、主軸11の回転に伴い主軸11から吸込みケーシング12に向かって遠心力が発生するため、隙間h1に接触することはない。しかしながら、搬送液に含まれる異物が搬送液よりも比重が軽いひも状の浮遊物である場合は、異物が搬送液内に浮遊した状態となり、ひも状の浮遊物の一端が隙間h1の近くを通過して、隙間h1へ接触する可能性がある。
【0041】
本実施形態に係る横軸軸流ポンプ10では、筒状体40が非回転体である内部ケーシング31に固定され、回転体であるインペラハブ30より軸側に配置されているので、隙間h1にひも状の浮遊物の一端が接触したとしても、ひも状の浮遊物の他端がインペラ17の回転による遠心力により搬送液と共に案内羽根18の方向に流されて、結果的に水中軸受室19内にひも状の浮遊物が入り込むことを抑制することができる。
【0042】
また、横軸軸流ポンプ10では、運転中のポンプが停止するとき、搬送液は重力にて落水する。落水する搬送液中に異物が混入していた場合、
図7に示した従来の横軸軸流ポンプ100では、インペラハブ120と内部ケーシング121の上方に位置する搬送液が下方に落水するときに、異物が隙間hを通過して、水中軸受室109に侵入する虞がある。一方で、本実施形態に係る横軸軸流ポンプ10では、インペラハブ30と内部ケーシング31の上方に位置する搬送液が落水するとき、搬送液に含まれる異物が隙間h1に接触しても筒状体40の外周面を伝って、水中軸受室19に入り込むことなく、下方に流れ落ちる。
【0043】
なお、
図2に示した隙間h1は、例えば約10mmであり、隙間h2は、例えば約5mmである。隙間h2の長さは、隙間h1の長さの0.1倍以上1倍以下であることが好ましい。隙間h2をこの範囲に設定することにより、異物が隙間h1及び隙間h2を通過して水中軸受室19内に入り込むことをより効率よく防止することができる。
【0044】
また、筒状体40の軸方向長さl1は、例えば約33mmである。筒状体40の軸方向長さl1は、隙間h1の長さの1倍以上10倍以下であることが好ましい。筒状体40の軸方向長さl1をこの範囲に設定することにより、異物が隙間h1及び隙間h2を通過して水中軸受室19内に入り込むことをより効率よく防止することができる。なお、ここでの筒状体40の軸方向長さl1は、
図2に示すように、筒状体40の内部ケーシング31の端部31aからインペラハブ30側に向かって突出した部分の軸方向長さをいう。
【0045】
図2に示した筒状体40は、内部ケーシング31に対して着脱可能に構成されてもよい。この場合、既設のポンプにも筒状体40を取り付けることができる。また、筒状体40は、内部ケーシング31の一部分を加工することにより、内部ケーシング31と一体に形成されてもよい。
【0046】
次に、
図2及び
図3に示した筒状体40の変形例について説明する。
図4は突起部を有する筒状体40の側断面図であり、
図5は突起部を有する筒状体40及びインペラハブ30の横断面図である。
図4は、
図2に示した側断面と同部分の側断面を示す。
図5の横断面図は、
図3に示した横断面と同部分の横断面を示す。
【0047】
図4及び
図5に示すように、この筒状体40は、その外周面40aに2つの突起部41を有する。突起部41は略三角柱状の材料であり、その側面の一つが筒状体40の外周面40aに取り付けられる。即ち、突起部41は、筒状体40の外周面40aから離れる方向に向かって薄くなるように形成された部材である。水中軸受室19内の主軸11に絡み付き主軸11を拘束し横軸軸流ポンプ10の運転を妨げる異物の多くはひも状の異物である。突起部41は、このようなひも状の異物を細かく切断するように構成される。筒状体40に突起部41が設けられることにより、横軸軸流ポンプ10は、例えば汚水など水質の悪い搬送液を扱うことが可能になる。したがって、横軸軸流ポンプ10が取り扱うことができる搬送液の種類が多くなる。なお、筒状体40に設けられる突起部41の数は2つに限らず、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0048】
続いて、
図2及び
図3に示した筒状体40の他の変形例について説明する。
図6は、周方向に分割可能に構成される筒状体40を示す横断面図である。なお、
図6は、
図3に示した横断面と同部分の横断面を示す。図示のように、筒状体40は、その軸方向に沿った複数(
図6では2つ)の分割部45を有する。これにより、筒状体40は、その周方向に分割される。言い換えれば、筒状体40は、上半部40bと下半部40cとから構成される。なお、分割部45の数を増加させることにより、筒状体40は3以上に分割されてもよい。
【0049】
筒状体40を上半部40b及び下半部40cに分割することにより、
図2に示した内部ケーシング31の取付部31bに、上半部40b及び下半部40cを別々に取り付けることができる。したがって、
図3に示したような完全なリング状の筒状体40を取付部31bに取り付ける場合に比べて、
図5に示した筒状体40は、容易に取付部31bに取り付けられ得る。以下、具体的に説明する。
【0050】
一般的には、
図7に示したような従来の横軸軸流ポンプ100の水中軸受室109内に異物が侵入して、異物が回転軸101に絡み付いたとしても、軸継手110の出力範囲内であれば警報等は発報されず、横軸軸流ポンプ100の運転を継続することができる。よって、水中軸受室109内に異物が侵入したか否かは、定期的なメンテナンスにおいて横軸軸流ポンプ100が分解されたときに発見される。
【0051】
通常、横軸軸流ポンプ100の内部ケーシング121は主軸101を含む平面において上部ケーシングと下部ケーシングの2つに分割可能に構成されている。このため、内部ケーシング121の上部ケーシング又は下部ケーシングを取り外すことで、主軸101を動かすことなく水中軸受111のメンテナンスをすることができる。
【0052】
図6に示したように、筒状体40が上半部40b及び下半部40cから構成される場合、このような従来の既設の横軸軸流ポンプ100をメンテナンスするときに、内部ケーシング121を構成する上部ケーシング及び下部ケーシングのそれぞれに、筒状体40の上半部40b及び下半部40cを取り付けることができる。したがって、主軸101等の他の部品を取り外すことなく、筒状体40を既設の横軸軸流ポンプ100に取り付けることができる。
【0053】
また、水中軸受111は、摺動部を有するので、定期的なメンテナンスの機会が多い部品の一つである。水中軸受111の定期メンテナンスにおいて水中軸受室109内に異物が発見されたときに、本実施形態における筒状体40を追加すれば、主軸101への異物の絡みつきを事前に防止することができる。このために、従来の既設の横軸軸流ポンプ100に容易に取り付けることができる、
図6に示す分割可能な筒状体40が有益である。特に、従来の既設の横軸軸流ポンプ100が大型である場合は、加工の手間や取り付けの観点から、3つ以上に分割可能な筒状体40が有益である。
【0054】
以上の実施形態においては、本発明のポンプの一例として横軸軸流ポンプを説明したが、これに限られない。即ち、本発明のポンプは、水中軸受及び水中軸受室を有する立軸ポンプや斜流ポンプ等も含む。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【0056】
例えば、以上で説明した実施形態における筒状体40は、
図3に示したような完全なリング状の筒状体だけでなく、
図6に示したような複数に分割された部材を組み合わせることでリング状となる筒状体も含む。また、筒状体40は、例えば、軸方向にスリットを有するような不完全なリング状の筒状体も含む。
【符号の説明】
【0057】
10 横軸軸流ポンプ
11 主軸
17 羽根車
19 水中軸受室
21 水中軸受
30 インペラハブ
30a 端部
30b 端部
31 内部ケーシング
31a 端部
40 筒状体
41 突起部