【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【0047】
小麦粉900g、澱粉100gを粉体混合し、これに食塩15g、かん水2.3g、重合リン酸塩0.4gを溶解した練り水340mlを加え、常圧の2軸ミキサーで3分混捏し、そぼろ状のドウを作製した。この時のドウの水分は35.0%であった。
【0048】
作製したドウを通常の整形ロールを用いて常圧下で、粗麺帯を作製し、粗麺帯2枚を再び整形ロールを用いて複合し、麺帯を作製した。このときの麺帯厚は12mmであった。
【0049】
圧延ロールによる圧延回数を6回とし、圧延した麺帯を20番角の切刃ロールを用いて麺線とした。
【0050】
切り出された麺線は直ちにわたって飽和水蒸気を240kg/hとなるように供給した蒸気庫内で2分間蒸煮した。
【0051】
蒸煮した麺線を1L当り食塩90g、グルタミン酸13.5g、醤油10ml、畜肉エキス30gを溶解した着味液に5秒浸漬した後、引き延ばして30cmとなるように麺線をカットした。これにより、麺塊12個を製造するのに必要な麺線が得られる。
【0052】
図1に示すように、麺線供給機構5よりカットした麺線群101gをリテーナ本体31の各カップ容器へ充填率85%で充填し、リテーナ本体31を搬送速度4m/分で搬送しながらハーフフライ及びディープフライを行った。ハーフフライ、およびディープフライのフライ時間はそれぞれ20秒、120秒とした。
【0053】
各カップ容器は、天面径が92mm、容器底面の口径が74.1mm、高さが50.7mmのカップ状で容器底面に穴径2.9mmの小孔が多数空いた容器より構成されるリテーナ本体を用いた。また、リテーナ蓋体41として、穴径2.9mmの小孔が多数空いた金属製の蓋を使用した。
【0054】
フライ油槽1には、
図1に示す第1噴出し口12〜第4噴出し口15より150℃に加熱したフライ油を供給し、フライ油槽全体へ供給されるフライ油の平均流量を250m
3/hとした。また、ハーフフライを実施する領域におけるフライ油の油面変動の許容範囲を±3mmとした。
【0055】
<試験区1>
試験区1では、良好なフライ効率(生産性)が得られるハーフフライにおけるリテーナの浸漬率(麺線群の浸漬率)を検証するため、リテーナの浸漬率15%、35%、55%、75%(麺線群の浸漬率で12.75%、29.75%、46.75%、63.75%)の各条件について麺塊を100個作製した。
(試験区1−1)
ハーフフライにおけるリテーナの浸漬率を15%(麺線群の浸漬率12.75%)とし、フライ油槽の上流に設けられた第1噴出し口、第2噴出し口から供給されるフライ油の平均流量を52m
3/h、フライ油槽の下流に設けられた第3噴出し口、第4噴出し口から供給されるフライ油の平均流量を73m
3/h(上流/下流の流量比71.2%)とした。
【0056】
(試験区1−2)
ハーフフライにおけるリテーナの浸漬率を35%(麺線群の浸漬率29.75%)とした以外は、試験区1−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。
【0057】
(試験区1−3)
ハーフフライにおけるリテーナの浸漬率を55%(麺線群の浸漬率46.75%に相当)とした以外は、試験区1−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。
【0058】
(試験区1−4)
ハーフフライにおけるリテーナの浸漬率を75%(麺線群の浸漬率63.75%に相当)とした以外は、試験区1−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。
【0059】
<試験区1の評価結果>
試験区1において試作した麺塊サンプルの状態を、(1)麺線の分布に疎密がなく均一、(2)麺線の分布に疎密あり、(3)麺塊中央部の麺線密度が低い、(4)麺塊の底面滑り(傾斜)あり、に区別し、その数を表1に示すようにカウントし、これを百分率で示した。
図5は、上記(1)〜(4)の状態にある麺塊のサンプル例である。
【0060】
【表1】
【0061】
浸漬率が低い試験区1−1では、麺線の分布に疎密がなく均一である(1)の状態にある麺塊が70%得られたものの、麺塊中央部の麺線密度が低い(3)の状態にある麺塊は25%と比較的多かった。これは、麺線群のフライ油への浸漬率が低いと、フライされる麺線群の層が薄いため、ディープフライ時に固形化されていない麺線群の層がフライ油の対流によって上方へ引き伸ばされるためと考えられる。
【0062】
一方、リテーナの浸漬率が35%、55%とした試験区1−2、1−3では、麺線の分布に疎密がなく均一である(1)の状態にある麺塊がそれぞれ90%、85%得られた。これは、(i)フライ油に浸漬した麺線群の一部がリテーナ底部に固着する、(ii)フライ油に浸漬した麺線の水分蒸発によってフライ油が吹き上がり、麺線群全体が上方へ膨張する、(iii)吹き上がるフライ油によって、上方へ膨張した麺線群も部分的にフライされる、(iv)上記(i)〜(iii)の工程の後、リテーナ全体をフライ油へ浸漬すると、膨張よって嵩高くなった麺塊形状が固定化され、麺線間へのフライ油の油回りが良くなる、という本願発明に特有のメカニズムが働くためと考えられる。
【0063】
他方、リテーナの浸漬率を75%とした試験区1−4では麺線の分布に疎密がなく均一である(1)の状態にある麺塊の比率は60%まで低下し、麺線の分布に疎密がある(2)の状態の麺塊の比率が25%、麺塊の底面滑り(傾斜)がある(4)の状態の麺塊の比率が15%まで上昇した。これは、浸漬率が高くなると、麺線群がリテーナ底部に固着することなく浮上する可能性が高まるためと考えられる。麺塊が固定化されていない状態で浮上すると上記(2)の状態となり、麺塊の固定化が中途半端な状態で浮上すると上記(4)の状態に至ると考えられる。
【0064】
<試験区2>
試験区2では、試験区1で最もフライ効率(生産性)が高くなる、ハーフフライにおけるリテーナの浸漬率35%(麺線群の浸漬率29.75%)の条件下において、フライ油槽の上流及び下流に供給されるフライ油の流量比を45.3%〜100%まで変えながら、各流量比の条件において麺塊を100個作製した。
【0065】
(試験区2−1)
試験区2−1では、フライ油槽の上流に設けられた第1噴出し口、第2噴出し口から供給されるフライ油の平均流量を39m
3/h、フライ油槽の下流に設けられた第3噴出し口、第4噴出し口から供給されるフライ油の平均流量を86m
3/h(上流/下流の流量比45.3%)となるように各バルブ89の制御を行った。
【0066】
(試験区2−2)
試験区2−2では、フライ油槽の上流に設けられた第1噴出し口、第2噴出し口から供給されるフライ油の平均流量を52m
3/h、フライ油槽の下流に設けられた第3噴出し口、第4噴出し口から供給されるフライ油の平均流量を73m
3/h(上流/下流の流量比71.2%)とした以外は、試験区2−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。なお、試験区2−2の条件は、試験区1−2の条件と同一である。
【0067】
(試験区2−3)
フライ油槽の上流に設けられた第1噴出し口、第2噴出し口から供給されるフライ油の流量を57m
3/h、フライ油槽の下流に設けられた第3噴出し口、第4噴出し口から供給されるフライ油の流量を68m
3/h(上流/下流の流量比83.8%)とした以外は、試験区2−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。
(試験区2−4)
フライ油槽の上流に設けられた第1噴出し口、第2噴出し口から供給されるフライ油の流量を60m
3/h、フライ油槽の下流に設けられた第3噴出し口、第4噴出し口から供給されるフライ油の流量を65m
3/h(上流/下流の流量比92.3%)とした以外は、試験区2−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。
(試験区2−5)
フライ油槽の上流に設けられた第1噴出し口、第2噴出し口から供給されるフライ油の流量を62m
3/h、フライ油槽の下流に設けられた第3噴出し口、第4噴出し口から供給されるフライ油の流量を63m
3/h(上流/下流の流量比98.4%)とした以外は、試験区2−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。
(試験区2−6)
フライ油槽の第1噴出し口〜第4噴出し口から供給されるフライ油の流量をすべて62.5m
3/h(上流/下流の流量比100%)となるように、フライ油槽へ供給されるフライ油の供給量を制御した以外は、試験区2−1と同じ条件でフライ麺塊を作製した。
【0068】
<試験区2の評価結果>
試験区2において試作した麺塊サンプルの状態を、試験区1と同様に、(1)麺線の分布に疎密がなく均一、(2)麺線の分布に疎密あり、(3)麺塊中央部の麺線密度が低い、(4)麺塊の底面滑り(傾斜)あり、に区別し、その数を表2に示すようにカウントし、これを百分率で示した。
【0069】
【表2】
【0070】
麺線の分布に疎密がなく均一な(1)の状態の麺塊は、試験区2−2で最も多く得られ、その比率は90%であった。一方、フライ油槽の上流と下流に供給されるフライ油の流量比(上流に供給されるフライ油の流量の合計/下流に供給されるフライ油の流量の合計)が大きくなるほど(1)の状態の麺塊の比率は減少し、流量比が95%を超える試験区2−5、2−6では0%となり、麺塊の底面に滑り(傾斜)を有する(4)の状態の麺塊が80%以上となった。これは、フライ油槽の上流に供給されるフライ油の流量が大きくなると、フライ油の流れによる抵抗によって、形状が固定化する前に麺塊がカップ容器底部から剥離して浮上し、リテーナ蓋体に衝突するためと考えられる。そのため、フライ油槽の上流と下流に供給されるフライ油の流量比は90%以下、好ましくは85%以下とすることが望ましいことがわかる。