(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568051
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】レーザチャンバ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/038 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
H01S3/038 Z
【請求項の数】1
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-504032(P2016-504032)
(86)(22)【出願日】2015年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2015053371
(87)【国際公開番号】WO2015125631
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年1月10日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2014/054230
(32)【優先日】2014年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】池田 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 弘司
(72)【発明者】
【氏名】對馬 弘朗
(72)【発明者】
【氏名】勝海 久和
【審査官】
佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−060270(JP,A)
【文献】
特開2006−229137(JP,A)
【文献】
特開2013−141030(JP,A)
【文献】
特開2003−298155(JP,A)
【文献】
特表2004−503946(JP,A)
【文献】
特表2005−503027(JP,A)
【文献】
特表2005−502210(JP,A)
【文献】
特開平03−102884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/03 −3/038
3/097−3/0979
3/22 −3/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電励起式ガスレーザ装置のレーザチャンバであって、
前記レーザチャンバ内に配置された第1放電電極と、
前記レーザチャンバ内で前記第1放電電極に対向して配置された第2放電電極と、
前記第1放電電極と前記第2放電電極との間にレーザガスを流すファンと、
前記第1放電電極におけるレーザガス流の上流側及び下流側に配置された第1絶縁部材と、
前記第2放電電極における前記レーザガス流の下流側に配置された第1の金属ダンパ部材と、
前記第2放電電極における前記レーザガス流の上流側に配置された第2の金属ダンパ部材と、
前記第2放電電極における前記レーザガス流の下流側に配置された第2絶縁部材であって、前記第1の金属ダンパ部材に比べて音響波を吸収しにくい前記第2絶縁部材と、
を備え、
前記放電励起式ガスレーザ装置の繰り返し周波数をfとし、
前記第1放電電極と前記第2放電電極との間の放電に伴って発生する音響波の速度をcとし、
前記レーザガス流の流速をvとし、
前記レーザガス流の流れ方向における前記第2放電電極の幅の長さをLとし、
前記レーザガス流の流れ方向における前記第2絶縁部材の幅の長さをWとすると、
前記第2絶縁部材は、
(2v/f)−L≦W≦c/2f
の関係を満たすように形成されている
レーザチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電励起式ガスレーザ装置のレーザチャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィーとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350〜400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が設けられ、この狭帯域化モジュールによりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6914919号
【特許文献2】米国特許第6639929号
【0006】
本開示の
1つの観点に係るレーザチャンバは、放電励起式ガスレーザ装置のレーザチャンバであって、前記レーザチャンバ内に配置された第1放電電極と、前記レーザチャンバ内で前記第1放電電極に対向して配置された第2放電電極と、前記第1放電電極と前記第2放電電極との間にレーザガスを流すファンと、前記第1放電電極におけるレーザガス流の上流側及び下流側に配置された第1絶縁部材と、前記第2放電電極における前記レーザガス流の下流側に配置された第1の金属ダンパ部材と、前記第2放電電極における前記レーザガス流の上流側に配置された第2の金属ダンパ部材と、前記第2放電電極における前記レーザガス流の下流側に配置された第2絶縁部材であって、前記第1の金属ダンパ部材に比べて音響波を吸収しにくい前記第2絶縁部材と、を備え、前記放電励起式ガスレーザ装置の繰り返し周波数をfとし、前記第1放電電極と前記第2放電電極との間の放電に伴って発生する音響波の速度をcとし、前記レーザガス流の流速をvとし、前記レーザガス流の流れ方向における前記第2放電電極の幅の長さをLとし、前記レーザガス流の流れ方向における前記第2絶縁部材の幅の長さをWとすると、前記第2絶縁部材は、
(2v/f)−L≦W≦c/2f
の関係を満たすように形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、放電励起式ガスレーザ装置の構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、
図1に示されたレーザチャンバをZ軸方向から視た図を示す。
【
図3】
図3は、
図2に示されたレーザチャンバで発生するアーク放電の様子を説明するための図を示す。
【
図4】
図4は、第2絶縁部材を含む本実施形態のレーザチャンバを含む放電励起式ガスレーザ装置の構成を概略的に示す。
【
図5】
図5は、第2絶縁部材の第1実施形態を説明するための図を示す。
【
図6】
図6は、
図5に示された第2絶縁部材の大きさを説明するための図を示す。
【
図7】
図7は、第2絶縁部材の第2実施形態を説明するための図を示す。
【
図8】
図8は、第2絶縁部材の第3実施形態を説明するための図を示す。
【
図9】
図9は、第2絶縁部材の第4実施形態を説明するための図を示す。
【
図10】
図10は、第2絶縁部材の第5実施形態を説明するための図を示す。
【
図11】
図11は、第2絶縁部材の第6実施形態を説明するための図を示す。
【
図12A】
図12Aは、第2絶縁部材を含まない従来のレーザチャンバにおいてアーク放電が発生した場合において当該アーク放電の電流経路を説明するための図を示す。
【
図12B】
図12Bは、第2絶縁部材を含む本実施形態のレーザチャンバにおいてアーク放電が発生した場合において当該アーク放電の電流経路を説明するための図を示す。
【
図13】
図13は、ファンの回転数に応じたアーク絶縁距離の推移を、
図12Aに示された従来のレーザチャンバと
図12Bに示された本実施形態のレーザチャンバとで比較した図を示す。
【
図14】
図14は、放電励起式ガスレーザ装置に用いられる充放電回路の回路構成を説明するための図を示す。
【
図15】
図15は、各制御部のハードウェア環境におけるブロック図を示す。
【0008】
〜内容〜
1.概要
2.用語の説明
3.放電励起式ガスレーザ装置
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.第2絶縁部材を含む本実施形態のレーザチャンバ
4.1 第2絶縁部材の第1実施形態
4.2 第2絶縁部材の第2実施形態
4.3 第2絶縁部材の第3実施形態
4.4 第2絶縁部材の第4実施形態
4.5 第2絶縁部材の第5実施形態
4.6 第2絶縁部材の第6実施形態
4.7 第2絶縁部材及び金属ダンパ部材の具体例
4.8 主放電の安定性
5.その他
5.1 充放電回路
5.2 各制御部のハードウェア環境
5.3 その他の変形例
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
[1.概要]
本開示は、以下の実施形態を少なくとも開示し得る。
【0011】
レーザチャンバ10は、放電励起式ガスレーザ装置1のレーザチャンバであって、レーザチャンバ10内に配置された第1放電電極11aと、レーザチャンバ10内で第1放電電極11aに対向して配置された第2放電電極11bと、第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間にレーザガスを流すファン21と、第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側及び下流側に配置された第1絶縁部材20と、第2放電電極11bにおけるレーザガス流の上流側に配置された金属ダンパ部材50と、第2放電電極11bにおけるレーザガス流の下流側に配置された第2絶縁部材60と、を備えてもよい。
このような構成により、レーザチャンバ10は、安定した放電を行うことができる。
【0012】
[2.用語の説明]
「光路」とは、パルスレーザ光が通過する経路である。光路は、パルスレーザ光の進行方向に沿ってパルスレーザ光のビーム断面の中心を通る軸であってもよい。
【0013】
[3.放電励起式ガスレーザ装置]
[3.1 構成]
図1及び
図2を用いて、放電励起式ガスレーザ装置1の構成について説明する。
図1は、放電励起式ガスレーザ装置1の構成を概略的に示す。
図2は、
図1に示されたレーザチャンバ10をZ軸方向から視た図を示す。
図1では、放電励起式ガスレーザ装置1のレーザ発振方向をZ軸とする。すなわち、チャンバ10から露光装置110へパルスレーザ光が導出される方向をZ軸とする。X軸及びY軸は、Z軸に直交し、且つ、互いに直交する軸とする。以降の図面でも
図1の座標軸と同様とする。
【0014】
放電励起式ガスレーザ装置1は、エキシマレーザ装置であってもよい。レーザ媒質であるレーザガスは、レアガスとしてアルゴン又はクリプトン、ハロゲンガスとしてフッ素、バッファガスとしてネオン若しくはヘリウム又はこれらの混合ガスを用いて構成されてもよい。
【0015】
放電励起式ガスレーザ装置1は、レーザチャンバ10と、レーザ共振器と、充電器12と、パルスパワーモジュール(Pulse Power Module:PPM)13と、圧力センサ16と、パルスエネルギ計測器17と、モータ22と、レーザガス供給部23と、レーザガス排出部24と、制御部30と、を備えてもよい。
【0016】
レーザチャンバ10は、レーザガスが封入されていてもよい。
レーザチャンバ10は、主放電部11と、予備電離放電部40と、ウインドウ10a及びウインドウ10bと、プレート25と、配線27と、フィードスルー28と、第1絶縁部材20と、金属ダンパ部材50と、ファン21と、を含んでもよい。
【0017】
主放電部11は、第1放電電極11aと、第2放電電極11bと、を含んでもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、レーザガスを主放電により励起するための1対の電極であってもよい。主放電は、グロー放電であってもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、それぞれ板状の導電部材で形成されてもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、互いに所定距離だけ離隔し、且つ、互いの長手方向が略平行となるように対向して配置されてもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、互いの放電面が対向して配置されてもよい。
【0018】
本実施形態では、第1放電電極11aの放電面と第2放電電極11bの放電面との間の空間を、「放電空間」ともいう。放電空間には、レーザチャンバ10に封入されたレーザガスが存在し得る。放電空間には主放電が発生し得る。
【0019】
第1放電電極11aは、カソード電極であってもよい。
第1放電電極11aの放電面とは反対側の面は、フィードスルー28を介してパルスパワーモジュール13に接続されてもよい。第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間には、パルスパワーモジュール13からパルス電圧が印加され得る。
第1放電電極11aの側面は、レーザチャンバ10の壁10cに固定された第1絶縁部材20に囲まれてもよい。第1放電電極11aは、第1絶縁部材20によって壁10cと電気的に絶縁され得る。
【0020】
第2放電電極11bは、アノード電極であってもよい。
第2放電電極11bの放電面とは反対側の面は、プレート25に固定されてもよい。
第2放電電極11bの側面は、プレート25に固定された金属ダンパ部材50に囲まれてもよい。
【0021】
プレート25は、導電部材で形成されていてもよい。
プレート25は、レーザチャンバ10cの壁10cに固定されてもよい。
プレート25は、配線27を介して、接地された壁10cと接続されてもよい。プレート25は、接地電位に保たれ得る。
【0022】
予備電離放電部40は、主放電部11による主放電の前段階として、コロナ放電によりレーザガスを予備電離するための電極であってもよい。
予備電離放電部40は、プレート25に固定されてもよい。
予備電離放電部40は、第2放電電極11bに対してレーザガス流の上流側に配置されてもよい。
予備電離放電部40の周囲は、プレート25に固定された金属ダンパ部材50に囲まれてもよい。
【0023】
予備電離放電部40は、予備電離内電極41と、誘電体パイプ42と、予備電離外電極43と、を含んでもよい。
誘電体パイプ42は、円筒状に形成されてもよい。
誘電体パイプ42は、誘電体パイプ42の長手方向と主放電部11の長手方向とが略平行となるように配置されてもよい。
予備電離内電極41は、棒状に形成されてもよい。
予備電離内電極41は、誘電体パイプ42の内側に挿入され、誘電体パイプ42の内周面に固定されてもよい。
予備電離内電極41の端部は、フィードスルー28を介してパルスパワーモジュール13と接続されてもよい。
予備電離外電極43は、屈曲部を有する板状に形成されてもよい。
予備電離外電極43は、予備電離外電極43の長手方向と誘電体パイプ42の長手方向とが略平行となるように配置されてもよい。
予備電離外電極43の長手方向の側面は、誘電体パイプ42の外周面及びプレート25に固定されてもよい。
【0024】
第1絶縁部材20は、カソード電極である第1放電電極11aとレーザチャンバ10の壁10cとの間を電気的に絶縁してもよい。
第1絶縁部材20は、レーザガスとの反応性が低い絶縁材料を用いて形成されてもよい。レーザガスがフッ素であれば、第1絶縁部材20は、例えばアルミナセラミックスを用いて形成されてもよい。
第1絶縁部材20は、第1放電電極11a及びフィードスルー28の側面を囲むように設けられてもよい。第1絶縁部材20は、レーザチャンバ10の壁10cに固定されてもよい。
それにより、第1絶縁部材20は、第1放電電極11a及びフィードスルー28を壁10cに保持してもよい。
【0025】
第1絶縁部材20は、第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側及び下流側に配置されてもよい。
第1放電電極11aの上流側に位置する第1絶縁部材20の一部は、上流側から下流側に向かうに従って厚くなるようなテーパ面が形成されていてもよい。第1放電電極11aの下流側に位置する第1絶縁部材20の一部は、上流側から下流側に向かうに従って薄くなるようなテーパ面が形成されていてもよい。
それにより、レーザガスは、第1絶縁部材20のテーパ面に導かれて、第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間を効率よく流れ得る。
【0026】
金属ダンパ部材50は、主放電に伴って発生する音響波を吸収してもよい。
金属ダンパ部材50は、レーザガスとの反応性が低い多孔質金属材料を用いて形成されてもよい。レーザガスがフッ素であれば、金属ダンパ部材50は、例えばニッケルやニッケルクロム合金等の材料を用いて形成されてもよい。
それにより、金属ダンパ部材50は、主放電に伴って発生する音響波の大部分を吸収し得る。
【0027】
金属ダンパ部材50は、第2放電電極11b及び予備電離放電部40の側面を囲むように設けられてもよい。金属ダンパ部材50は、プレート25に固定されてもよい。
それにより、金属ダンパ部材50は、第2放電電極11b及び予備電離放電部40をプレート25に保持してもよい。
【0028】
金属ダンパ部材50は、多孔質金属材料を用いて形成されているため、音響波の衝撃によるデブリやダスト等の発生を抑制し得る。
金属ダンパ部材50が多孔質金属材料ではなく多孔質のセラミックス材料や樹脂材料を用いて形成されていると、音響波の衝撃によって当該セラミックス材料や樹脂材料からデブリやダスト等が発生し得る。デブリやダスト等がレーザチャンバ10内で発生すると、放電が不安定となり、パルスレーザ光のパルスエネルギが低下し得る。
よって、金属ダンパ部材50が多孔質金属材料を用いて形成されることは、好適である。
【0029】
特に、第2放電電極11bの周囲に配置される金属ダンパ部材50が多孔質金属材料を用いて形成されることは、好適である。
主放電の放電方向は、カソード電極である第1放電電極11aからアノード電極である第2放電電極11bに向かう方向である。主放電に伴って発生する音響波の衝撃力は、放電方向の基端側であるカソード電極側よりも放電方向の先端側であるアノード電極側の方が大きくなり得る。
このため、音響波の衝撃力が大きいアノード電極側にある第2放電電極11bの周囲に、金属ダンパ部材50に代えて、多孔質セラミックス材料や樹脂材料で形成されたダンパ部材が配置されると、デブリやダスト等が多く発生し得る。
これに対し、アノード電極である第2放電電極11bの周囲に、多孔質金属材料で形成された金属ダンパ部材50が配置されると、音響波の衝撃によるデブリやダスト等の発生が抑制され得る。
よって、金属ダンパ部材50が多孔質金属材料を用いて形成されることは、好適である。
【0030】
金属ダンパ部材50は、第2放電電極11bにおけるレーザガス流の上流側に少なくともに配置されてもよい。好適には、金属ダンパ部材50は、第2放電電極11bにおけるレーザガス流の上流側及び下流側に配置されてもよい。
第2放電電極11bの上流側に位置する金属ダンパ部材50の一部は、上流側から下流側に向かうに従って厚くなるようなテーパ面が形成されていてもよい。第2放電電極11bの下流側に位置する金属ダンパ部材50の一部は、上流側から下流側に向かうに従って薄くなるようなテーパ面が形成されていてもよい。
それにより、レーザガスは、金属ダンパ部材50のテーパ面に導かれて、第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間を効率よく流れ得る。
更に、主放電に伴って発生する音響波の一部は、金属ダンパ部材50のテーパ面によって、放電空間から遠ざかるように反射し得る。
【0031】
ファン21は、レーザガスをレーザチャンバ10内で循環させてもよい。
ファン21は、クロスフローファンであってもよい。
ファン21は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの長手方向とファン21の長手方向とが略平行となるように配置されてもよい。ファン21は、プレート25に対して放電空間の反対側に配置されてもよい。
ファン21は、モータ22の駆動によって回転してもよい。回転するファン21は、レーザガス流を発生させてもよい。
【0032】
ファン21が回転すると、レーザチャンバ10内のレーザガスは、ファン21の長手方向に垂直な方向に略一様に吹き出し得る。
ファン21から吹き出したレーザガスは、放電空間に流入し得る。放電空間に流入するレーザガス流の流れ方向は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの長手方向に垂直な方向であり得る。
放電空間に流入したレーザガスは、放電空間から流出し得る。放電空間から流出するレーザガス流の流れ方向は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの長手方向に垂直な方向であり得る。
放電空間から流出したレーザガスは、熱交換器26を介してファン21に吸い込まれ得る。
【0033】
熱交換器26は、熱交換器26の内部に供給された冷媒とレーザガスとの間で熱交換を行ってもよい。
熱交換器26の内部に供給される冷媒の供給量は、制御部30からの制御により変動してもよい。冷媒の供給量が変動すると、レーザガスから冷媒への伝熱量が変動し得る。
それにより、レーザチャンバ10内のレーザガス温度は調節され得る。
【0034】
モータ22は、ファン21を回転させてもよい。
モータ22は、ステッピングモータやサーボモータであってもよい。
モータ22は、制御部30からの制御によりファン21の回転数を変動させてもよい。
【0035】
充電器12は、図示しない電源装置に接続されたキャパシタ等によって構成されてもよい。充電器12は、主放電部11に電圧を印加するための電気エネルギを保持し得る。
充電器12は、制御部30からの制御により当該電気エネルギをパルスパワーモジュール13に出力してもよい。
【0036】
パルスパワーモジュール13は、主放電部11及び予備電離放電部40に電圧を印加してもよい。
パルスパワーモジュール13は、制御部30によって制御されるスイッチ13aを含んでもよい。スイッチ13aがOFFからONになると、パルスパワーモジュール13は、充電器12に保持されていた電気エネルギからパルス状の電圧を生成してもよい。パルスパワーモジュール13は、生成されたパルス電圧を主放電部11及び予備電離放電部40に印加してもよい。
【0037】
なお、主放電部11、予備電離放電部40、充電器12、及びパルスパワーモジュール13を含む放電励起式ガスレーザ装置1の充放電回路については、
図14を用いて後述する。
【0038】
レーザ共振器は、狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module:LNM)14及び出力結合ミラー(Output Coupler:OC)15によって構成されてもよい。
狭帯域化モジュール14は、プリズム14aと、グレーティング14bと、を含んでもよい。
【0039】
プリズム14aは、レーザチャンバ10からウインドウ10aを介して出射された光のビーム幅を拡大してもよい。プリズム14aは、拡大された光をグレーティング14b側に透過させてもよい。
グレーティング14bに向かってプリズム14aを透過する光は、光の波長に応じて異なった角度で屈折し得る。プリズム14aは、波長分散素子としても機能し得る。
【0040】
グレーティング14bは、表面に多数の溝が所定間隔で形成された波長分散素子であってもよい。
グレーティング14bは、入射角度と回折角度が同じ角度となるリトロー配置にしてもよい。
グレーティング14bは、高反射率の材料によって形成されてもよい。
グレーティング14bに形成された各溝は、例えば三角溝であってもよい。
プリズム14aからグレーティング14bに入射した光は、当該各溝の斜面において、各溝の延びる方向に垂直な多方向に向かって反射され得る。各溝の延びる方向は、
図1のY方向に相当し得る。
1つの溝における反射光と他の1つの溝における反射光とが重なり合うとき、それらの反射光同士の光路長差は、それらの反射光の反射角度に依存し得る。
当該光路長差に対応する波長の光は、それらの反射光同士で位相が一致して強め合い得る。一方、当該光路長差に対応しない波長の光は、それらの反射光同士で位相が一致せずに弱め合い得る。
この干渉作用の結果、グレーティング14bは、反射角度に応じて特定の波長付近の光を選択的に取り出し得る。当該特定の波長付近の光は、グレーティング14bからプリズム14a及びウインドウ10aを介して、レーザチャンバ10に戻り得る。
それにより、グレーティング14bからレーザチャンバ10に戻った光のスペクトル幅は、狭帯域化され得る。
【0041】
出力結合ミラー15は、レーザチャンバ10から出射された光の一部を透過し、他の一部を反射させてレーザチャンバ10に戻してもよい。
出力結合ミラー15の表面には、部分反射膜がコーティングされていてもよい。
出力結合ミラー15とグレーティング14bとの間の距離は、レーザチャンバ10から出射された光が定常波を形成する距離に定められてもよい。
それにより、出力結合ミラー15及び狭帯域化モジュール14は、レーザ共振器を構成し得る。
【0042】
レーザチャンバ10から出射された光は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15との間で往復し得る。このとき、レーザチャンバ10から出射された光は、レーザチャンバ10内の主放電部11を通過する度に増幅され得る。増幅された光の一部は、出力結合ミラー15を透過し得る。出力結合ミラー15を透過した光は、パルスレーザ光として、パルスエネルギ計測器17を介して露光装置110に出力され得る。
【0043】
パルスエネルギ計測器17は、出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光のパルスエネルギを計測し、計測結果を制御部30に出力してもよい。
パルスエネルギ計測器17は、ビームスプリッタ17aと、集光レンズ17bと、光センサ17cとを含んでもよい。
【0044】
ビームスプリッタ17aは、パルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光を高透過率で露光装置110に向けて透過させてもよい。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光の一部を、集光レンズ17bに向けて反射してもよい。
集光レンズ17bは、ビームスプリッタ17aによって反射されたパルスレーザ光を、光センサ17cの受光面に集光してもよい。
光センサ17cは、受光面に集光されたパルスレーザ光を検出してもよい。光センサ17cは、検出されたパルスレーザ光のパルスエネルギを計測してもよい。光センサ17cは、計測されたパルスエネルギに関する信号を制御部30に出力してもよい。
【0045】
圧力センサ16は、レーザチャンバ10内のガス圧を検出してもよい。圧力センサ16は、検出されたガス圧の検出信号を制御部30に出力してもよい。
【0046】
レーザガス供給部23は、レーザチャンバ10内にレーザガスを供給してもよい。
レーザガス供給部23は、図示しないガスボンベと、バルブと、流量制御弁とを含んでもよい。
【0047】
ガスボンベには、レーザガスが充填されてもよい。
バルブは、ガスボンベからレーザチャンバ10内へのレーザガスの流れを遮断してもよい。
流量制御弁は、ガスボンベからレーザチャンバ10内へのレーザガスの供給量を変動させてもよい。
【0048】
レーザガス供給部23は、制御部30からの制御によりバルブを開閉してもよい。
レーザガス供給部23は、制御部30からの制御により流量制御弁の開度を変動させてもよい。流量制御弁の開度が変動すると、レーザチャンバ10内へのレーザガスの供給量が変動し得る。
それにより、レーザチャンバ10内のガス圧は調節され得る。
【0049】
レーザガス排出部24は、レーザチャンバ10内のレーザガスをレーザチャンバ10外へ排出してもよい。
レーザガス排出部24は、図示しないバルブと、排気ポンプとを含んでもよい。
【0050】
バルブは、レーザチャンバ10内からレーザチャンバ10外へのレーザガスの流れを遮断してもよい。
排気ポンプは、レーザチャンバ10内のレーザガスを吸引してもよい。
【0051】
レーザガス排出部24は、制御部30からの制御によりバルブを開閉してもよい。
レーザガス排出部24は、制御部30からの制御により排気ポンプを作動させてもよい。排気ポンプが作動すると、レーザチャンバ10内のレーザガスは、排気ポンプ内に吸引され得る。
それにより、レーザチャンバ10内のレーザガスはレーザチャンバ10外へ排出され、レーザチャンバ10内のガス圧は減圧され得る。
【0052】
制御部30は、露光装置110に設けられた露光装置制御部111との間で各種信号を送受信してもよい。例えば、制御部30には、露光装置110に出力されるパルスレーザ光の目標パルスエネルギや目標発振タイミングに関する信号が、露光装置制御部111から送信されてもよい。
制御部30は、露光装置制御部111から送信された各種信号に基づいて、放電励起式ガスレーザ装置1の各構成要素の動作を統括的に制御してもよい。
【0053】
制御部30には、パルスエネルギ計測器17から出力されたパルスエネルギに関する信号が入力されてもよい。
制御部30は、当該パルスエネルギに関する信号及び露光装置制御部111からの目標パルスエネルギに関する信号に基づいて、充電器12の充電電圧を決定してもよい。制御部30は、決定された充電電圧に応じた制御信号を充電器12に出力してもよい。当該制御信号は、決定された充電電圧が充電器12に設定されるよう充電器12の動作を制御するための信号であってもよい。
制御部30は、パルスエネルギ計測器17からのパルスエネルギに関する信号及び露光装置制御部111からの目標発振タイミングに関する信号に基づいて、主放電部11にパルス電圧を印加するタイミングを決定してもよい。制御部30は、決定されたタイミングに応じた発振トリガ信号をパルスパワーモジュール13に出力してもよい。当該発振トリガ信号は、決定されたタイミングに応じてスイッチ13aがON又はOFFになるようパルスパワーモジュール13の動作を制御するための制御信号であってもよい。
【0054】
制御部30には、圧力センサ16から出力されたガス圧の検出信号が入力されてもよい。
制御部30は、当該ガス圧の検出信号及び充電器12の充電電圧に基づいて、レーザチャンバ10内におけるレーザガスのガス圧を決定してもよい。制御部30は、決定されたガス圧に応じた制御信号を、レーザガス供給部23又はレーザガス排出部24に出力してもよい。当該制御信号は、決定されたガス圧に応じてレーザチャンバ10内にレーザガスが供給又は排出されるようレーザガス供給部23又はレーザガス排出部24の動作を制御するための信号であってもよい。
なお、制御部30のハードウェア構成については、
図15を用いて後述する。
【0055】
[3.2 動作]
制御部30は、モータ22を駆動し、ファン21を回転させてもよい。それにより、レーザチャンバ10内のレーザガスが循環し得る。
制御部30は、露光装置制御部111から送信された目標パルスエネルギEt及び目標発振タイミングに関する信号を受信してもよい。
制御部30は、目標パルスエネルギEtに応じた充電電圧Vhvを充電器12に設定してもよい。制御部30は、充電器12に設定された充電電圧Vhvの値を記憶してもよい。
制御部30は、目標発振タイミングに同期させて、パルスパワーモジュール13のスイッチ13aを動作させてもよい。
【0056】
パルスパワーモジュール13のスイッチ13aがOFFからONになると、予備電離放電部40の予備電離内電極41と予備電離外電極43との間には、電圧が印加され得る。そして、主放電部11の第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間には、電圧が印加され得る。
それにより、予備電離放電部40においてコロナ放電が発生し、UV(Ultraviolet)光が生成され得る。主放電部11の放電空間にあるレーザガスに当該UV光が照射されると、当該レーザガスが予備電離され得る。その後、主放電部11の放電空間には、主放電が発生し得る。主放電の放電方向は、カソード電極である第1放電電極11aからアノード電極である第2放電電極11bに向かう方向である。主放電が発生すると、放電空間のレーザガスは励起されて光を放出し得る。
【0057】
レーザガスから放出された光は、レーザ共振器を構成する狭帯域化モジュール14及び出力結合ミラー15で反射され、レーザ共振器内を往復し得る。レーザ共振器内を往復する光は、狭帯域化モジュール14により狭帯域化され得る。レーザ共振器内を往復する光は、主放電部11を通過する度に増幅され得る。その後、増幅された光の一部は、出力結合ミラー15を透過し得る。出力結合ミラー15を透過した光は、パルスレーザ光として露光装置110に出力され得る。
【0058】
出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光の一部は、パルスエネルギ計測器17に入射してもよい。パルスエネルギ計測器17は、入射したパルスレーザ光のパルスエネルギEを計測し、制御部30に出力してもよい。
【0059】
制御部30は、パルスエネルギ計測器17によって計測されたパルスエネルギEを記憶してもよい。
制御部30は、計測値である当該パルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとの差分ΔEを計算してもよい。
制御部30は、差分ΔEに対応する充電電圧Vhvの増減量ΔVhvを計算してもよい。
制御部30は、計算されたΔVhvを、上記で記憶された充電電圧Vhvに加算して、新たに設定する充電電圧Vhvを計算してもよい。
このようにして、制御部30は、充電電圧Vhvをフィードバック制御し得る。
【0060】
制御部30は、新たに設定する充電電圧Vhvが許容範囲の最大値よりも大きくなった場合、レーザガス供給部23を制御して、所定のガス圧になるまでレーザチャンバ10内にレーザガスを供給してもよい。
一方、制御部30は、新たに設定する充電電圧Vhvが許容範囲の最小値よりも小さくなった場合、レーザガス排出部24を制御して、所定のガス圧になるまでレーザチャンバ10内からレーザガスを排出してもよい。
【0061】
[3.3 課題]
図3に示すように、放電励起式ガスレーザ装置1では、主放電によって放電空間に放電生成物が発生し得る。
放電生成物は、主放電によりレーザガスが電離することで発生するイオンや活性種であり得る。放電空間に発生した放電生成物は、ファン21の回転により生じるレーザガス流によって、放電空間からレーザガス流の下流側に移動し得る。
【0062】
一方、放電励起式ガスレーザ装置1では、消費電力を抑制してファン21を回転させる際やファン21を起動又は停止する際、ファン21の回転数が定常時より低下することがあり得る。ファン21の回転数が低下すると、放電空間を通過するレーザガス流の流速は低下し得る。レーザガス流の流速が低下すると、放電生成物は、レーザガス流によって放電空間から十分に遠ざからずに主放電部11の近傍に滞留し得る。放電生成物は、電離していないレーザガスに比べて放電抵抗が小さい。
【0063】
このため、放電生成物が主放電部11の近傍に滞留していると、主放電部11に新たにパルス電圧が印加する場合、主放電部11の主放電は不安定になり得る。
具体的には、この場合において、主放電部11の主放電は、第1放電電極11aから放電生成物を介して第2放電電極11bに向かう放電となり得る。当該放電は、アーク放電であり、正常な主放電であるグロー放電と異なって、過度な電流が流れて不安定となり得る。更には、主放電部11の主放電は、第1放電電極11aから放電生成物を介して金属ダンパ部材50に向かう放電となり得る。
この結果、放電励起式ガスレーザ装置1から出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギは、不安定になり得る。特に、放電励起式ガスレーザ装置1の繰り返し周波数を高めると、主放電の不安定化に対する放電生成物の影響は増大し、パルスレーザ光のパルスエネルギは一層不安定になり得る。
よって、ファン21の回転数が低下しても安定した放電が可能な技術が望まれている。
【0064】
[4.第2絶縁部材を含む本実施形態のレーザチャンバ]
図4〜
図11を用いて、第2絶縁部材を含む本実施形態のレーザチャンバ10について説明する。
本実施形態のレーザチャンバ10は、
図1及び
図2に示されたレーザチャンバ10に対して第2絶縁部材60を追加した構成を備えてもよい。
本実施形態のレーザチャンバ10において第2絶縁部材60以外の構成は、
図1及び
図2に示されたレーザチャンバ10と同様であってもよい。
本実施形態のレーザチャンバ10の構成において、
図1及び
図2に示されたレーザチャンバ10と同様の構成については説明を省略する。
本実施形態のレーザチャンバ10に含まれる第2絶縁部材60の実施態様を、第1〜第6実施形態として説明する。
【0065】
[4.1 第2絶縁部材の第1実施形態]
図4〜
図6を用いて、第2絶縁部材60の第1実施形態について説明する。
図4は、第2絶縁部材を含む本実施形態のレーザチャンバ10を含む放電励起式ガスレーザ装置1の構成を概略的に示す。
図5は、第2絶縁部材60の第1実施形態を説明するための図を示す。
図5は、第2放電電極11bにおけるレーザガス流の下流側に配置された金属ダンパ部材50と第2絶縁部材60とを示す。
【0066】
第2絶縁部材60は、第1放電電極11aから放電生成物を介して第2放電電極11bに向かう放電を抑制してもよい。第2絶縁部材60は、第1放電電極11aから放電生成物を介して金属ダンパ部材50に向かう放電を抑制してもよい。
第2絶縁部材60は、レーザガスとの反応性が低い絶縁材料を用いて形成されてもよい。レーザガスがフッ素であれば、第1絶縁部材20は、例えばアルミナセラミックスを用いて形成されてもよい。
第2絶縁部材60は、第2放電電極11bにおけるレーザガス流の下流側に配置されてもよい。
第2絶縁部材60は、第2放電電極11bの側面であってレーザガス流の下流側の側面を基端として、先端がレーザガス流の下流側に向かって延びていてもよい。
第2絶縁部材60は、第2放電電極11bに対してレーザガス流の下流側にある金属ダンパ部材50のテーパ面上に、当該テーパ面の傾斜に沿って配置されてもよい。第2絶縁部材60は、上流側から下流側に向かうに従って薄くなるようなテーパ面を形成し得る。 第2絶縁部材60は、主放電部11の近傍に滞留する放電生成物に対向するように配置されてもよい。
【0067】
図6は、
図5に示された第2絶縁部材60の大きさを説明するための図を示す。
図6に示すように、レーザガス流の流れ方向における第2放電電極11bの幅の長さをLとする。
レーザガス流の流れ方向における第2絶縁部材60の幅の長さをWとする。第2絶縁部材60の幅の長さWの最小値及び最大値をW
min及びW
maxとする。
放電空間から移動された放電生成物のレーザガス流の流れ方向における移動距離をDとする。
第2放電電極11bの側面であってレーザガス流の下流側における側面から放電生成物の中心までの距離をAとする。
なお、第2放電電極11bの幅の長さL、放電生成物の移動距離D、第2絶縁部材60の幅の長さWは、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの長手方向並びに放電方向に対して、それぞれ直交する方向の長さであり得る。
レーザガス流の流速をvとする。流速vは、第1放電電極11a及び第2放電電極11bと放電生成物との間で絶縁破壊が生じないよう予め定められた速度であり得る。
音響波の速度をcとする。放電励起式ガスレーザ装置1の繰り返し周波数をfとする。
【0068】
放電生成物の移動距離Dは、次式から算出されてもよい。
D=v/f
第2放電電極11bの下流側側面から放電生成物までの距離Aは、次式から算出されてもよい。
A=D−L/2
【0069】
第2絶縁部材60は、上述のように、第1放電電極11aから放電生成物を介して第2放電電極11bに向かう放電と、第1放電電極11aから放電生成物を介して金属ダンパ部材50に向かう放電とを抑制してもよい。
第1放電電極11aから放電生成物を介して第2放電電極11bに向かう放電は、第2絶縁部材60の幅の長さWが、第2放電電極11bの下流側側面から放電生成物までの距離A以上であれば、抑制され得る。
また、第1放電電極11aから放電生成物を介して金属ダンパ部材50に向かう放電は、第2絶縁部材60の幅の長さWが、上記第2放電電極11bの下流側側面から放電生成物までの距離A以上であれば、抑制され得る。
よって、第2絶縁部材60の幅の長さWが、第2放電電極11bの下流側側面から放電生成物までの距離Aの2倍以上の長さであってもよい。
すなわち、第2絶縁部材60の幅の長さWの最小値W
minは、次式から算出されてもよい。
W
min=2A
【0070】
一方、第2絶縁部材60は、金属ダンパ部材50に比べて音響波を吸収し難くてもよい。そのため、音響波は、第2絶縁部材60で反射され再び放電空間に戻ることがあり得る。
第2絶縁部材60で反射された音響波が放電空間に戻ると、放電空間におけるレーザガスの密度は不均一になると共に、放電生成物が主放電部11の近傍に滞留し得る。特に、放電間隔内に音響波が放電空間に戻ると、レーザガスが偏在した状態や放電生成物が主放電部11の近傍に滞留した状態で放電が開始され得る。
このため、主放電部11の主放電は不安定となり、パルスレーザ光のパルスエネルギは不安定になり得る。
なお、「放電間隔」とは、一の放電が発生した後から次の新たな放電が開始するまでの時間的な間隔のことであり、繰り返し周波数の逆数に対応し得る。
よって、第2絶縁部材60の幅の長さWは、第2絶縁部材60で反射された音響波が放電間隔内に放電空間へ戻らないような長さであってもよい。
すなわち、第2絶縁部材60の幅の長さWの最大値W
maxは、次式から算出されてもよい。
W
max=c/2f
右辺の1/2fは、第2絶縁部材60で反射された音響波が、放電間隔内に放電空間へ戻らない時間の限度を示し得る。
【0071】
したがって、第2絶縁部材60の幅であってレーザガス流の流れ方向における幅の長さWは、次式の関係を満たしてもよい。
W
min≦W≦W
max ⇔ (2v/f)−L≦W≦c/2f
それにより、第1実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10は、音響波の衝撃によるデブリやダスト等の発生、音響波の反射によるレーザガスの偏在や放電生成物の滞留、放電生成物を介したアーク放電の諸問題を同時に解決し得る。
このため、第1実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10は、ファン21の回転数が低下しても安定した放電を行うことができる。
第1実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の他の構成については、
図1及び
図2に示されたレーザチャンバ10の構成と同様であってもよい。
【0072】
[4.2 第2絶縁部材の第2実施形態]
図7を用いて、第2絶縁部材60の第2実施形態について説明する。
図7は、第2絶縁部材60の第2実施形態を説明するための図を示す。
図7は、第2放電電極11bにおけるレーザガス流の下流側に配置された金属ダンパ部材50と第2絶縁部材60とを示す。
図8〜
図11も同様である。
【0073】
第2実施形態の第2絶縁部材60は、
図4〜
図6に示された第1実施形態の第2絶縁部材60に対して凹部61を追加した構成を備えてもよい。
凹部61は、第2絶縁部材60の表面に形成されてもよい。
凹部61は、第2放電電極11bの長手方向に垂直な方向に対し、傾斜して延びるように形成されてもよい。この第2放電電極11bの長手方向に垂直な方向には、レーザガス流の流れ方向と放電方向とが含まれ得る。
具体的には、凹部61は、第2放電電極11bの長手方向に垂直な方向であるレーザガス流の流れ方向に対し、傾斜して延びるように形成されてもよい。
加えて、凹部61は、第2放電電極11bの長手方向に垂直な方向である放電方向に対し、傾斜して延びるように形成されてもよい。当該凹部61は、第2放電電極11bの下流側に位置する金属ダンパ部材50のテーパ面に沿って形成されてもよい。
凹部61が延びる方向から視た凹部61の断面形状は、矩形波形状に形成されてもよい。
【0074】
放電空間で発生した音響波は、第2絶縁部材60で反射される際、凹部61によって様々な方向に反射され得る。凹部61で様々な方向に反射された反射波は、様々な位相を有することとなり、互いに弱め合い得る。
特に、凹部61が第2放電電極11bの長手方向に垂直な方向に対し傾斜して延びるように形成されると、音響波は凹部61で更に複雑な方向に反射され、更に弱まり得る。
このため、放電空間で発生した音響波は、凹部61が形成された第2絶縁部材60で反射された後、再び放電空間に戻り難くなり得る。
よって、第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10は、第1実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10に比べて、更に安定した放電を行うことができる。
第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の他の構成については、第1実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の構成と同様であってもよい。
【0075】
[4.3 第2絶縁部材の第3実施形態]
図8を用いて、第2絶縁部材60の第3実施形態について説明する。
図8は、第2絶縁部材60の第3実施形態を説明するための図を示す。
【0076】
第3実施形態の第2絶縁部材60に含まれる凹部61の形状は、
図7に示された第2実施形態の第2絶縁部材60に含まれる凹部61の形状と異なる形状であってもよい。
第3実施形態の第2絶縁部材60において、凹部61が延びる方向から視た凹部61の断面形状は、三角波形状又は鋸波形状に形成されてもよい。
それにより、第3実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10は、第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10と同様に、安定した放電を行うことができる。
第3実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の他の構成については、第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の構成と同様であってもよい。
【0077】
[4.4 第2絶縁部材の第4実施形態]
図9を用いて、第2絶縁部材60の第4実施形態について説明する。
図9は、第2絶縁部材60の第4実施形態を説明するための図を示す。
【0078】
第4実施形態の第2絶縁部材60に含まれる凹部61の形状は、
図7に示された第2実施形態の第2絶縁部材60に含まれる凹部61の形状と異なる形状であってもよい。
第4実施形態の第2絶縁部材60において、凹部61が延びる方向から視た凹部61の断面形状は、半円波形状に形成されてもよい。半円波形状は、半円が周期的に連なった形状であってもよい。
それにより、第4実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10は、第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10と同様に、安定した放電を行うことができる。
第4実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の他の構成については、第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の構成と同様であってもよい。
【0079】
[4.5 第2絶縁部材の第5実施形態]
図10を用いて、第2絶縁部材60の第5実施形態について説明する。
図10は、第2絶縁部材60の第5実施形態を説明するための図を示す。
【0080】
第5実施形態の第2絶縁部材60に含まれる凹部61の形状は、
図7に示された第2実施形態の第2絶縁部材60に含まれる凹部61の形状と異なる形状であってもよい。
第5実施形態の第2絶縁部材60において、凹部61は、半球形状の1つのディンプルが多数個設けられた形状に形成されてもよい。
それにより、第5実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10は、第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10と同様に、安定した放電を行うことができる。
第5実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の他の構成については、第2実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の構成と同様であってもよい。
【0081】
[4.6 第2絶縁部材の第6実施形態]
図11を用いて、第2絶縁部材60の第6実施形態について説明する。
図11は、第2絶縁部材60の第6実施形態を説明するための図を示す。
【0082】
第6実施形態の第2絶縁部材60の構成材料は、
図4〜
図6に示された第1実施形態の第2絶縁部材60の構成材料と異なる材料であってもよい。
第6実施形態の第2絶縁部材60の構成材料は、レーザガスとの反応性が低い絶縁材料であり、且つ、金属ダンパ部材50と同様に多孔質構造を有する材料であってもよい。
第6実施形態の第2絶縁部材60は、第2絶縁部材60自身でも音響波を吸収し得る。
それにより、第6実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10は、第1実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10に比べて、更に安定した放電を行うことができる。
第6実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の他の構成については、第1実施形態の第2絶縁部材60を含むレーザチャンバ10の構成と同様であってもよい。
【0083】
[4.7 第2絶縁部材及び金属ダンパ部材の具体例]
本実施形態のレーザチャンバ10に含まれる第2絶縁部材60及び金属ダンパ部材50の具体例について説明する。
【0084】
放電励起式ガスレーザ装置1の繰り返し周波数は、例えば6kHz程度であってもよい。レーザガス流の流速vは、例えば40m/s〜45m/sであってもよい。このとき、
図6に示された放電生成物の移動距離Dは、例えば6.7〜7.5mmであってもよい。
このような場合において、第2絶縁部材60及び金属ダンパ部材50は、次のように形成されてもよい。
【0085】
第2絶縁部材60は、レーザガス流の流れ方向における幅の長さWが、例えば16mm程度となるように形成されてもよい。
なお、レーザガス流の流れ方向における第2絶縁部材60の幅の長さWは、
図6を用いて上述したように、(2v/f)−L≦W≦c/2fの関係を満たし得る。また、第2絶縁部材60の表面は、平面であってもよい。
【0086】
第2放電電極11bの下流側に位置する金属ダンパ部材50は、レーザガス流の流れ方向における幅の長さが、例えば50mm程度となるように形成されてもよい。
なお、第2放電電極11bの下流側に位置する当該金属ダンパ部材50は、
図6に示されるように、レーザガス流の流れ方向において、第2絶縁部材60よりも更に下流側に至るまで延びるように形成されてもよい。それにより、当該金属ダンパ部材50は、主放電に伴って発生する音響波を吸収し、レーザガスの偏在や放電生成物の滞留といった音響波の悪影響を抑制し得る。
【0087】
[4.8 主放電の安定性]
図12A〜
図13を用いて、本実施形態のレーザチャンバ10における主放電の安定性について説明する。
具体的には、本実施形態のレーザチャンバ10が、レーザガス流の下流側で発生する異常なアーク放電をどの程度抑制し得るかについて説明する。
図12Aは、第2絶縁部材60を含まない従来のレーザチャンバ10においてアーク放電が発生した場合において当該アーク放電の電流経路を説明するための図を示す。
図12Bは、第2絶縁部材60を含む本実施形態のレーザチャンバ10においてアーク放電が発生した場合において当該アーク放電の電流経路を説明するための図を示す。
【0088】
レーザガス流の下流側で発生する異常なアーク放電は、上述のように、第1放電電極11aから放電生成物を介して第2放電電極11b側に向かう放電であり得る。当該アーク放電は、その電流経路における絶縁距離が長いほど抑制され得る。
本実施形態では、第1放電電極11aから放電生成物を介して第2放電電極11b側に向かうアーク放電の電流経路における絶縁距離を、「アーク絶縁距離」ともいう。
【0089】
従来のレーザチャンバ10は、第2絶縁部材60を含まない。このため、当該アーク放電の電流経路Pは、
図12Aに示されるように、第1放電電極11aから放電生成物を介して金属ダンパ部材50に向かうように形成され得る。
具体的には、当該アーク放電の電流経路Pは、第1放電電極11aから放電生成物までの電流経路P1と、放電生成物内の電流経路P2と、放電生成物から金属ダンパ部材50までの電流経路P3とを含むように形成され得る。
そのため、従来のレーザチャンバ10において、当該アーク放電の電流経路Pにおけるアーク絶縁距離pは、当該電流経路P1と当該電流経路P3との合計の長さに対応し得る。
【0090】
一方、本実施形態のレーザチャンバ10は、第2絶縁部材60を含んでもよい。このため、当該アーク放電の電流経路Qは、
図12Bに示されるように、第1放電電極11aから放電生成物を介して第2放電電極11bに向かうように形成され得る。
具体的には、当該アーク放電の電流経路Qは、第1放電電極11aから放電生成物までの電流経路Q1と、放電生成物内の電流経路Q2と、放電生成物から第2放電電極11bまでの電流経路Q3とを含むように形成され得る。
そのため、本実施形態のレーザチャンバ10において、当該アーク放電の電流経路Qにおけるアーク絶縁距離qは、当該電流経路Q1と当該電流経路Q3との合計の長さに対応し得る。
【0091】
図13は、ファン21の回転数に応じたアーク絶縁距離の推移を、
図12Aに示された従来のレーザチャンバ10と
図12Bに示された本実施形態のレーザチャンバ10とで比較した図を示す。
ファン21の回転数が増加すると、レーザガス流の流速vが増加するため、放電生成物の移動距離D(=v/f)が増加し得る。それにより、レーザガス流の下流側で発生するアーク放電の電流経路の長さは、従来及び本実施形態のレーザチャンバ10の両者ともに増加し得る。その結果、
図13に示されるように、アーク絶縁距離は、従来及び本実施形態のレーザチャンバ10の両者ともに増加し得る。
【0092】
但し、
図13に示されるように、従来及び本実施形態のレーザチャンバ10におけるファン21の回転数が同じ場合、本実施形態のレーザチャンバ10におけるアーク絶縁距離qは、従来のレーザチャンバ10におけるアーク絶縁距離pに比べて長くなり得る。
例えば、ファン21の回転数が4500rpm(revolutions per minute)である場合、本実施形態のレーザチャンバ10におけるアーク絶縁距離qは、従来のレーザチャンバ10におけるアーク絶縁距離pに比べて約2倍の長さになり得る。
よって、第2絶縁部材60を含む本実施形態のレーザチャンバ10は、従来のレーザチャンバ10に比べて、レーザガス流の下流側で発生する異常なアーク放電を大幅に抑制し得る。したがって、第2絶縁部材60を含む本実施形態のレーザチャンバ10は、従来のレーザチャンバ10に比べて、主放電の安定性が大幅に向上し得る。
【0093】
言い換えると、従来及び本実施形態のレーザチャンバ10において同じ長さのアーク絶縁距離を確保する場合、本実施形態のレーザチャンバ10におけるファン21の回転数は、従来のレーザチャンバ10に比べて格段に少なくて済み得る。
よって、第2絶縁部材60を含む本実施形態のレーザチャンバ10は、従来のレーザチャンバ10に比べて、ファン21を駆動するモータ22の消費電力を格段に低減させ得る。
【0094】
[5.その他]
[5.1 充放電回路]
図14を用いて、放電励起式ガスレーザ装置1の充放電回路について説明する。
図14は、放電励起式ガスレーザ装置1に用いられる充放電回路の回路構成を説明するための図を示す。
【0095】
パルスパワーモジュール13は、上述したスイッチ13aである半導体スイッチと、トランスTC
1と、磁気スイッチMS
1〜MS
3と、充電コンデンサC
0と、コンデンサC
1〜C
3と、を含んでもよい。
磁気スイッチMS
1〜MS
3に印加される電圧の時間積分値が閾値に達すると、磁気スイッチMS
1〜MS
3には電流が流れ易くなり得る。当該閾値は磁気スイッチ毎に異なる値であってもよい。
本実施形態では、磁気スイッチMS
1〜MS
3が電流を流し易い状態であることを、「磁気スイッチが閉じている」ともいう。
【0096】
スイッチ13aは、トランスTC
1の1次側と充電コンデンサC
0との間に設けられてもよい。
磁気スイッチMS
1は、トランスTC
1の2次側とコンデンサC
1との間に設けられてもよい。
磁気スイッチMS
2は、コンデンサC
1とコンデンサC
2との間に設けられてもよい。
磁気スイッチMS
3は、コンデンサC
2とコンデンサC
3との間に設けられてもよい。
トランスTC
1の1次側と2次側とは、電気的に絶縁されていてもよい。トランスTC
1の1次側の巻き線の方向と2次側の巻き線の方向とは、逆方向であってもよい。
【0097】
第2放電電極11b及び予備電離外電極43は、接地されていてもよい。
コンデンサC
11及びC
12並びにインダクタL
0を含む分圧回路は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bに対して並列に接続されてもよい。
コンデンサC
11及びC
12並びにインダクタL
0は、それぞれ直列に接続されてもよい。
【0098】
図14に示された充放電回路の動作について説明する。
充電器12には、制御部30により充電電圧Vhvが設定されてもよい。充電器12は、設定された充電電圧Vhvに基づいて、充電コンデンサC
0を充電してもよい。
パルスパワーモジュール13のスイッチ13aには、制御部30により発振トリガ信号が出力されてもよい。発振トリガ信号がスイッチ13aに入力されると、パルスパワーモジュール13は、スイッチ13aがONになってもよい。スイッチ13aがONになると、充電コンデンサC
0からトランスTC
1の1次側に電流が流れ得る。
【0099】
トランスTC
1の1次側に電流が流れると、電磁誘導によってトランスTC
1の2次側に逆方向の電流が流れ得る。トランスTC
1の2次側に電流が流れると、やがて磁気スイッチMS
1に印加される電圧の時間積分値が閾値に達し得る。
磁気スイッチMS
1に印加される電圧の時間積分値が閾値に達すると、磁気スイッチMS
1は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチMS
1は閉じ得る。
磁気スイッチMS
1が閉じると、トランスTC
2の2次側からコンデンサC
1に電流が流れ、コンデンサC
1が充電され得る。
【0100】
コンデンサC
1が充電されることにより、やがて磁気スイッチMS
2は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチMS
2は閉じ得る。
磁気スイッチMS
2が閉じると、コンデンサC
1からコンデンサC
2に電流が流れ、コンデンサC
2が充電され得る。このとき、コンデンサC
1を充電する際の電流のパルス幅よりも短いパルス幅で、コンデンサC
2が充電されてもよい。
【0101】
コンデンサC
2が充電されることにより、やがて磁気スイッチMS
3は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチMS
3は閉じ得る。
磁気スイッチMS
3が閉じると、コンデンサC
2からコンデンサC
3に電流が流れ、コンデンサC
3が充電され得る。このとき、コンデンサC
2を充電する際の電流のパルス幅よりも短いパルス幅で、コンデンサC
3が充電されてもよい。
【0102】
このように、コンデンサC
1からコンデンサC
2、コンデンサC
2からコンデンサC
3へと電流が順次流れることにより、当該電流のパルス幅は圧縮され得る。
【0103】
コンデンサC
3が充電されることにより、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間には、コンデンサC
3によってパルス電圧が印加され得る。第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間に印加されたパルス電圧がレーザガスの絶縁耐圧より大きいと、レーザガスは絶縁破壊され得る。レーザガスが絶縁破壊されると、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間には主放電が発生し得る。このとき、第1放電電極11aには、負の電位が印加されてもよい。
【0104】
第1放電電極11a及び第2放電電極11bに対して並列に接続された分圧回路は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間に印加されるパルス電圧を分圧してもよい。
分圧される範囲は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間に印加されるパルス電圧の25%〜75%の範囲であってもよい。分圧されたパルス電圧は、予備電離内電極41及び予備電離外電極43の間に印加されてもよい。
分圧回路における分圧比、コンデンサC
11及びC
12の容量、並びにインダクタL
0のインダクタンスを調節することにより、分圧回路の時定数は所望の値に調節され得る。それにより、主放電に対する予備電離放電のタイミングは調節され得る。分圧回路における合成容量は、コンデンサC
3の容量の10%以下に調節されてもよい。
【0105】
[5.2 各制御部のハードウェア環境]
当業者は、汎用コンピュータまたはプログラマブルコントローラにプログラムモジュールまたはソフトウェアアプリケーションを組み合わせて、ここに述べられる主題が実行されることを理解するだろう。一般的に、プログラムモジュールは、本開示に記載されるプロセスを実行できるルーチン、プログラム、コンポーネント、データストラクチャー等を含む。
【0106】
図15は、開示される主題の様々な側面が実行され得る例示的なハードウェア環境を示すブロック図である。
図15の例示的なハードウェア環境100は、処理ユニット1000と、ストレージユニット1005と、ユーザインターフェイス1010と、パラレルI/Oコントローラ1020と、シリアルI/Oコントローラ1030と、A/D、D/Aコンバータ1040とを含んでもよいが、ハードウェア環境100の構成は、これに限定されない。
【0107】
処理ユニット1000は、中央処理ユニット(CPU)1001と、メモリ1002と、タイマ1003と、画像処理ユニット(GPU)1004とを含んでもよい。メモリ1002は、ランダムアクセスメモリ(RAM)とリードオンリーメモリ(ROM)とを含んでもよい。CPU1001は、市販のプロセッサのいずれでもよい。デュアルマイクロプロセッサや他のマルチプロセッサアーキテクチャが、CPU1001として使用されてもよい。
【0108】
図15におけるこれらの構成物は、本開示において記載されるプロセスを実行するために、相互に接続されていてもよい。
【0109】
動作において、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005に保存されたプログラムを読み込んで、実行してもよい、また、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005からプログラムと一緒にデータを読み込んでもよい、また、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005にデータを書き込んでもよい。CPU1001は、ストレージユニット1005から読み込んだプログラムを実行してもよい。メモリ1002は、CPU1001によって実行されるプログラムおよびCPU1001の動作に使用されるデータを、一時的に保管する作業領域であってもよい。タイマ1003は、時間間隔を計測して、プログラムの実行に従ってCPU1001に計測結果を出力してもよい。GPU1004は、ストレージユニット1005から読み込まれるプログラムに従って、画像データを処理し、処理結果をCPU1001に出力してもよい。
【0110】
パラレルI/Oコントローラ1020は、制御部30等の、処理ユニット1000と通信可能なパラレルI/Oデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらパラレルI/Oデバイスとの間の通信を制御してもよい。シリアルI/Oコントローラ1030は、充電器12、パルスパワーモジュール13、モータ22、レーザガス供給部23、レーザガス排気部24、及び熱交換器26等の、処理ユニット1000と通信可能なシリアルI/Oデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらシリアルI/Oデバイスとの間の通信を制御してもよい。A/D、D/Aコンバータ1040は、アナログポートを介して、温度センサ、圧力センサ16、真空計各種センサ、及び光センサ17c等のアナログデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらアナログデバイスとの間の通信を制御したり、通信内容のA/D、D/A変換を行ってもよい。
【0111】
ユーザインターフェイス1010は、操作者が処理ユニット1000にプログラムの停止や、割込みルーチンの実行を指示できるように、処理ユニット1000によって実行されるプログラムの進捗を操作者に表示してもよい。
【0112】
例示的なハードウェア環境100は、本開示における制御部30の構成に適用されてもよい。当業者は、それらのコントローラが分散コンピューティング環境、すなわち、通信ネットワークを介して繋がっている処理ユニットによってタスクが実行される環境において実現されてもよいことを理解するだろう。本開示において、制御部30は、イーサネットやインターネットといった通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムモジュールは、ローカルおよびリモート両方のメモリストレージデバイスに保存されてもよい。
【0113】
[5.3 その他の変形例]
放電励起式ガスレーザ装置1は、狭帯域化モジュール14の代りに高反射ミラーを用いてもよい。当該放電励起式ガスレーザ装置1では、狭帯域化されていない自然励起光が、パルスレーザ光として露光装置110に出力され得る。
放電励起式ガスレーザ装置1は、エキシマレーザ装置ではなく、フッ素ガス及びバッファガスをレーザガスとするフッ素分子レーザ装置であってもよい。
【0114】
第1放電電極11aは、カソード電極ではなくアノード電極であってもよい。第2放電電極11bは、アノード電極ではなくカソード電極であってもよい。
【0115】
第1絶縁部材20のテーパ面は、金属ダンパ部材50で形成されてもよい。但し、当該金属ダンパ部材50とレーザチャンバ10の壁10cとの間は、放電しないよう電気的に絶縁されていることが必要であり得る。
【0116】
上記で説明した実施形態は、変形例を含めて、各実施例同士や各実施形態同士で互いの技術を適用し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0117】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0118】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0119】
1 …放電励起式ガスレーザ装置
10 …レーザチャンバ
11 …主放電部
11a …第1放電電極
11b …第2放電電極
20 …第1絶縁部材
21 …ファン
30 …制御部
50 …金属ダンパ部材
60 …第2絶縁部材
61 …凹部