特許第6568508号(P6568508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568508半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568508
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20190819BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20190819BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   H01L21/318 C
   H01L21/31 B
   C23C16/455
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-179183(P2016-179183)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-46129(P2018-46129A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良知
(72)【発明者】
【氏名】松岡 樹
(72)【発明者】
【氏名】永戸 雅也
(72)【発明者】
【氏名】笹島 亮太
(72)【発明者】
【氏名】小倉 慎太郎
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−138913(JP,A)
【文献】 特開2010−153795(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/110956(WO,A1)
【文献】 特開2014−067783(JP,A)
【文献】 特開2007−299776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312−21/32
H01L 21/365
H01L 21/469−21/475
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して第1ノズルより原料を供給し排気口より排気する工程と、
前記基板に対して前記第1ノズルよりも前記排気口から遠い側に配置された第2ノズルより第1反応体を供給し前記排気口より排気する工程と、
前記基板に対して前記第2ノズルよりも前記排気口に近い側に配置された第3ノズルより第2反応体を供給し前記排気口より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで前記基板上に膜を形成する工程を有し、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と、のバランスを制御することで、前記基板上に形成する前記膜の基板面内膜厚分布を制御する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量よりも大きくする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記原料供給時に、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量よりも大きくする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板に対して処理が行われる処理室と、
前記処理室内を排気口より排気する排気系と、
前記処理室内へ第1ノズルより原料を供給する原料供給系と、
前記処理室内へ前記第1ノズルよりも前記排気口から遠い側に配置された第2ノズルより第1反応体を供給する第1反応体供給系と、
前記処理室内へ前記第2ノズルよりも前記排気口に近い側に配置された第3ノズルより第2反応体を供給する第2反応体供給系と、
前記処理室内へ前記第1ノズル、前記第2ノズルおよび前記第3ノズルより不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理室内において、基板に対して前記第1ノズルより前記原料を供給し前記排気口より排気する処理と、前記基板に対して前記第2ノズルより前記第1反応体を供給し前記排気口より排気する処理と、前記基板に対して前記第3ノズルより前記第2反応体を供給し前記排気口より排気する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで前記基板上に膜を形成する処理を行わせ、前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と、のバランスを制御することで、前記基板上に形成する前記膜の基板面内膜厚分布を制御するように、前記原料供給系、前記第1反応体供給系、前記第2反応体供給系、前記不活性ガス供給系、および前記排気系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室内の基板に対して第1ノズルより原料を供給し排気口より排気する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して前記第1ノズルよりも前記排気口から遠い側に配置された第2ノズルより第1反応体を供給し前記排気口より排気する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して前記第2ノズルよりも前記排気口に近い側に配置された第3ノズルより第2反応体を供給し前記排気口より排気する手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで前記基板上に膜を形成する手順と、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と、のバランスを制御することで、前記基板上に形成する前記膜の基板面内膜厚分布を制御する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−118462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、基板上に形成する膜の基板面内膜厚分布を制御することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
基板に対して第1ノズルより原料を供給し排気口より排気する工程と、
前記基板に対して前記第1ノズルよりも前記排気口から遠い側に配置された第2ノズルより第1反応体を供給し前記排気口より排気する工程と、
前記基板に対して前記第2ノズルよりも前記排気口に近い側に配置された第3ノズルより第2反応体を供給し前記排気口より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで前記基板上に膜を形成する工程を有し、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と、のバランスを制御することで、前記基板上に形成する前記膜の基板面内膜厚分布を制御する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板上に形成する膜の基板面内膜厚分布を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の一部の概略構成図であり、処理炉の一部を図1のA−A線断面図で示す図である。
図3】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本発明の一実施形態の成膜シーケンスを示す図である。
図5】本発明の一実施形態の成膜シーケンスの変形例1を示す図である。
図6】本発明の一実施形態の成膜シーケンスの変形例2を示す図である。
図7】本発明の一実施形態の成膜シーケンスの変形例3を示す図である。
図8】基板上に形成した膜の基板面内膜厚分布の評価結果を示す図である。
図9】(a)〜(c)は、それぞれ、基板上に形成した膜の基板面内膜厚分布の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図1図3を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0011】
処理室201内には、第1ノズルとしてのノズル249a、第2ノズルとしてのノズル249b、第3ノズルとしてのノズル249cが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a〜249cには、ガス供給管232a〜232cが、それぞれ接続されている。
【0012】
ガス供給管232a〜232cには、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241cおよび開閉弁であるバルブ243a〜243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a〜232cのバルブ243a〜243cよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232d〜232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d〜232fには、上流側から順に、MFC241d〜241fおよびバルブ243d〜243fがそれぞれ設けられている。
【0013】
ノズル249a〜249cは、図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a〜249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249bは、ノズル249aよりも、後述する排気口231aから遠い側に配置されており、ノズル249cは、ノズル249bよりも、排気口231aに近い側に配置されている。また、本実施形態では、ノズル249a,249bが、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a〜249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a〜250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a〜250cは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。これらのことから、ガス供給孔250a,250bは、上述のウエハ200の中心を挟んで一直線上に対向することになる。ガス供給孔250a〜250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、原料(原料ガス)として、例えば、所定元素(主元素)としてのSiおよびハロゲン元素を含むハロシラン系ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロシランとは、ハロゲン基を有するシランのことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む原料ガス、すなわち、クロロシラン系ガスを用いることができる。クロロシラン系ガスは、Siソースとして作用する。クロロシラン系ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管232bからは、原料とは化学構造(分子構造)が異なる第1反応体(リアクタント)として、例えば、CおよびNを含むアミン系ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。アミン系ガスは、Cソースとしても作用し、Nソースとしても作用する。アミン系ガスとしては、例えば、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)ガスを用いることができる。
【0016】
ガス供給管232cからは、原料とは化学構造(分子構造)が異なる第2反応体(リアクタント)として、例えば、O含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスは、酸化ガス、すなわち、Oソースとして作用する。O含有ガスとしては、例えば、酸素(O)ガスを用いることができる。
【0017】
ガス供給管232d〜232fからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N)ガスが、それぞれMFC241d〜241f、バルブ243d〜243f、ガス供給管232a〜232c、ノズル249a〜249cを介して処理室201内へ供給される。Nガスは、パージガス、キャリアガスとして作用し、さらに、ウエハ200上に形成する膜の面内膜厚分布を制御する膜厚分布制御ガスとして作用する。
【0018】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料供給系が構成される。また、主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第1反応体供給系が構成される。また、主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第2反応体供給系が構成される。また、主に、ガス供給管232d〜232f、MFC241d〜241f、バルブ243d〜243fにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0019】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a〜243fやMFC241a〜241f等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a〜232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a〜232f内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a〜243fの開閉動作やMFC241a〜241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a〜232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0020】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0021】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217すなわちウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0022】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。
【0023】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0024】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0025】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0026】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241f、バルブ243a〜243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0027】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御するように構成されている。
【0028】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0029】
(2)成膜処理
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上に膜を形成するシーケンス例について、図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0030】
図4に示す成膜シーケンスは、
ウエハ200対してノズル249aよりHCDSガスを供給し排気口231aより排気するステップ1と、
ウエハ200に対してノズル249aよりも排気口231aから遠い側に配置されたノズル249bよりTEAガスを供給し排気口231aより排気するステップ2と、
ウエハ200に対してノズル249bよりも排気口231aに近い側に配置されたノズル249cよりOガスを供給し排気口231aより排気するステップ3と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に、Si、O、CおよびNを含む膜、すなわち、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)を形成する。
【0031】
また、図4に示す成膜シーケンスでは、HCDSガス供給時に、ノズル249bより供給するNガスの流量と、ノズル249cより供給するNガスの流量と、ノズル249aより供給するNガスの流量と、のバランスを制御することで、ウエハ200上に形成するSiOCN膜のウエハ面内膜厚分布(以下、単に面内膜厚分布ともいう)を制御する。
【0032】
ここでは一例として、HCDSガス供給時に、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量よりも大きくすることで、SiOCN膜の面内膜厚分布を、図4の右側に示すような、ウエハ200の中央部で最も厚く、周縁部に近づくにつれて徐々に薄くなる分布(以下、中央凸分布とも称する)とする例について説明する。なお、表面に凹凸構造が作り込まれていない表面積の小さなベアウエハ上に中央凸分布の膜を形成することができれば、表面に微細な凹凸構造が作り込まれた表面積の大きなパターンウエハ上に、中央から周縁にわたって膜厚変化の少ない平坦な膜厚分布(以下、フラット分布とも称する)を有する膜を形成することが可能となる。
【0033】
本明細書では、図4に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0034】
(HCDS→TEA→O)×n ⇒ SiOCN
【0035】
なお、図4に示す成膜シーケンスを行う場合、処理条件によっては、ウエハ200上に、Si、OおよびCを含むN非含有の膜、すなわち、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)を形成することもできる。以下では、ウエハ200としてベアウエハを用い、この上にSiOCN膜を形成する例について説明するが、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0036】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0037】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0038】
(圧力・温度調整ステップ)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって処理室201内が真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって処理室201内が加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、加熱、ウエハ200の回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0039】
(成膜ステップ)
その後、次のステップ1〜3を順次実行する。
【0040】
[ステップ1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスを供給し排気口231aより排気する。
【0041】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へHCDSガスを流す。HCDSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給される。このとき同時にバルブ243d〜243fを開き、ガス供給管232d〜232f内へNガスを流す。Nガスは、MFC241d〜241fにより流量調整され、ノズル249a〜249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。
【0042】
このとき、ノズル249aより供給するHCDSガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の所定の流量とする。ノズル249aより供給するNガスの供給流量は、例えば500〜2000sccmの範囲内の所定の流量とする。HCDSガスの供給時間は、例えば1〜120秒、好ましくは1〜60秒の範囲内の所定の時間とする。処理室201内の圧力は、例えば1〜2666Pa、好ましくは67〜1333Paの範囲内の所定の圧力とする。ウエハ200の温度(成膜温度)は、例えば250〜800℃、好ましくは400〜750℃、より好ましくは550〜700℃の範囲内の所定の温度とする。
【0043】
成膜温度が250℃未満となると、ウエハ200上にHCDSが化学吸着しにくくなり、実用的な成膜速度が得られなくなることがある。成膜温度を250℃以上とすることで、これを解消することが可能となる。成膜温度を400℃以上、さらには550℃以上とすることで、ウエハ200上にHCDSをより充分に吸着させることが可能となり、より充分な成膜速度が得られるようになる。
【0044】
成膜温度が800℃を超えると、過剰な気相反応が生じ、膜厚均一性が悪化しやすくなり、その制御が困難となってしまう。成膜温度を800℃以下とすることで、適正な気相反応を生じさせ、膜厚均一性の悪化を抑制でき、その制御が可能となる。特に成膜温度を750℃以下、さらには700℃以下とすることで、気相反応よりも表面反応が優勢になり、膜厚均一性を確保しやすくなり、その制御が容易となる。
【0045】
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、ウエハ200の最表面上に、第1層(初期層)として、例えば1原子層未満から数原子層(1分子層未満から数分子層)程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層であってもよいし、HCDSの吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0046】
Clを含むSi層とは、Siにより構成されClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるClを含むSi薄膜をも含む総称である。Clを含むSi層を構成するSiは、Clとの結合が完全に切れていないものの他、Clとの結合が完全に切れているものも含む。
【0047】
HCDSの吸着層は、HCDS分子で構成される連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。HCDSの吸着層を構成するHCDS分子は、SiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、HCDSの吸着層は、HCDSの物理吸着層であってもよいし、HCDSの化学吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0048】
ここで、1原子層(分子層)未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層(分子層)のことを意味しており、1原子層(分子層)の厚さの層とは連続的に形成される原子層(分子層)のことを意味している。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層とHCDSの吸着層との両方を含み得る。但し、便宜上、Clを含むSi含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いて表すこととし、「原子層」を「分子層」と同義で用いる場合もある。
【0049】
HCDSガスが自己分解(熱分解)する条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでClを含むSi層が形成される。HCDSガスが自己分解(熱分解)しない条件下では、ウエハ200上にHCDSが吸着することでHCDSの吸着層が形成される。ウエハ200上にHCDSの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にClを含むSi層を形成する方が、成膜レートを高くすることができる点では、好ましい。以下、Clを含むSi含有層を、便宜上、単に、Si含有層とも称する。
【0050】
第1層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ2,3での改質の作用が第1層の全体に届かなくなる。また、第1層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、第1層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。第1層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、後述するステップ2,3での改質の作用を相対的に高めることができ、ステップ2,3での改質に要する時間を短縮することができる。ステップ1での第1層の形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、第1層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
【0051】
なお、本実施形態では、HCDSガス供給時に、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量よりも大きくする。
【0052】
ノズル249b,249aより供給するNガスの流量バランスをこのように設定することで、反応管203の内壁とウエハ200との間の平面視において円環状の空間(以下、単に「円環状の空間」とも称する)の圧力を、ウエハ配列領域内の圧力、すなわち、ウエハ200間の空間における圧力よりも大きくすることができる。結果として、円環状の空間へのHCDSガスの流出を抑制するとともに、ウエハ200間の空間へのHCDSガスの供給を促進させ、ウエハ200の中心部へのHCDSガスの供給量を増加させることが可能となる。また、円環状の空間におけるHCDSガスの分圧(濃度)を低下させ、ウエハ200の周縁部へのHCDSガスの供給量を減少させることも可能となる。結果として、ウエハ200の面内における第1層の厚さ分布、ひいては、ウエハ200上に形成されるSiOCN膜の面内膜厚分布を、上述の中央凸分布とすることが可能となる。以後、このような膜厚分布制御を、中央凸分布制御とも称する。
【0053】
なお、この効果は、ノズル249bより供給するNガスの流量を大きくするほど強くなる。例えば、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するHCDSガスの流量とNガスの流量との合計流量よりも大きくすることで、上述の中央凸分布を確実に実現することが可能となる。また、この効果は、ノズル249bの位置を排気口231aの位置から遠ざけるほど強くなり、ノズル249bと排気口231aとがウエハ200の中心を挟んで一直線上に対向する場合に極大となる。なお、この効果は、ノズル249bの位置をノズル249aの位置から遠ざけるほど効果的に得られ、例えば、図2に示すように、ノズル249bを、ウエハ200の中心を挟んでノズル249aと対向する位置に配置する場合に、より効果的に得られることとなる。
【0054】
図4に示す成膜シーケンスでは、HCDSガス供給時に、ノズル249bからだけでなく、ノズル249cからも、ノズル249aより供給するNガスの流量よりも大きな流量でNガスを供給する。これにより、上述の円環状の空間の圧力をさらに高めることができる。また、複数本のノズルを用いて周方向において異なる複数箇所から大きな流量でNガスを供給することにより、上述の円環状の空間の圧力を、周方向にわたってより均一に上昇させることが可能となる。これらの結果、上述の中央凸分布の実現がさらに容易となる。図4は、ノズル249bから供給するNガスの流量と、ノズル249cから供給するNガスの流量と、を同等とする例を示している。
【0055】
但し、上述したように、ノズル249cは、ノズル249bよりも、排気口231aに近い位置に配置されている。ノズル249cより供給されたNガスは、ノズル249bより供給されるNガスに比べて処理室201内における滞留時間が短く、その多くが短時間のうちに排気口231aから排気されてしまう。ノズル249cより供給するNガスは、ノズル249bより供給するNガスと比べ、ウエハ200上に形成される膜の面内膜厚分布に対する影響力が弱いといえる。言い換えれば、ノズル249bより供給するNガスの流量をノズル249cより供給するNガスの流量以上の流量とする方が、これらの流量の大小関係を逆にするよりも、上述の中央凸分布制御を効率的に実現可能であるということでもある。ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249cより供給するNガスの流量と同等とするか、或いは大きくすることで、同様の中央凸分布制御を、少ないNガスの消費量で、低コストに実現することが可能となるのである。HCDSガス供給時に、ノズル249bからのNガスの供給を不実施とし、ノズル249cより供給するNガスの流量を非常に大きな流量とすることによって、上述の中央凸分布制御を実現することは、理論的には可能であるとも考えられる。しかしながら、ノズル249cより供給されたNガスは、その多くが、上述の面内膜厚分布制御に寄与する間もなく排気口231aから排気されてしまうことを考えると、この代替手法で中央凸分布の度合いを大きくしようとすること(中央部と周縁部とで膜厚差を大きくしようとすること)は、本実施形態の手法に比べて非常に高コストであって、現実性に欠けるといえる。
【0056】
ガスの流量バランスを本実施形態のように設定する場合、HCDS供給時にノズル249bより供給するNガスの流量は、HCDS非供給時にノズル249bより供給するNガスの流量よりも大きくなる。例えば、HCDS供給時にノズル249bより供給するNガスの流量は、ステップ2におけるTEAガス供給時にノズル249bより供給するNガスの流量よりも大きくなり、また、ステップ3におけるOガス供給時にノズル249bより供給するNガスの流量よりも大きくなる。なお、後述するように、ステップ1〜3のそれぞれにおいては、処理室201内からHCDSガス、TEAガス、Oガスを排気し、処理室201内へパージガスとしてのNガスを供給するパージステップを行う。Nガスの流量バランスを上述のように設定する場合、HCDS供給時にノズル249bより供給するNガスの流量は、処理室201内のパージ時にノズル249bより供給するNガス、すなわち、パージガスとしてのNガスの流量よりも大きくなる。
【0057】
ノズル249b,249cより供給するNガスの流量は、上述の流量バランスを満たすものとし、それぞれ、例えば3000〜6000sccmの範囲内の所定の流量とする。
【0058】
第1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1層の形成に寄与した後のHCDSガスを処理室201内から排除する。また、このとき、バルブ243d〜243fは開いたままとして、処理室201内へパージガスとしてのNガスを供給する(パージステップ)。各ガス供給管から供給するNガスの供給流量は、例えば500〜2000sccmの範囲内の流量とする。
【0059】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層に対してTEAガスを供給し排気口231aより排気する。
【0060】
このステップでは、バルブ243b,243d〜243fの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243d〜243fの開閉制御と同様の手順で行う。TEAガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTEAガスが供給される。
【0061】
TEAガスの供給流量は、例えば200〜10000sccmの範囲内の所定の流量とする。TEAガスの供給時間は、例えば1〜120秒、好ましくは1〜60秒の範囲内の所定の時間とする。各ガス供給管から供給するNガスの供給流量は、例えば500〜2000sccmの範囲内の所定の流量とする。処理室201内の圧力は、例えば1〜5000Pa、好ましくは1〜4000Paの範囲内の所定の圧力とする。処理室201内の圧力をこのような比較的高い圧力帯とすることで、TEAガスをノンプラズマで熱的に活性化させることが可能となる。TEAガスは熱で活性化させて供給した方が、比較的ソフトな反応を生じさせることができ、後述する第2層の形成が容易となる。他の処理条件は、ステップ1と同様な処理条件とする。
【0062】
上述の条件下でウエハ200に対してTEAガスを供給することにより、ステップ1でウエハ200上に形成された第1層と、TEAガスと、を反応させることができる。それにより、第1層に含まれる複数のClのうち少なくとも一部のClを第1層から引き抜く(分離させる)とともに、TEAガスに含まれる複数のエチル基のうち少なくとも一部のエチル基をTEAガスから分離させることができる。そして、少なくとも一部のエチル基が分離したTEAガスのNと、第1層に含まれるSiと、を結合させて、Si−N結合を形成することが可能となる。また、TEAガスから分離したエチル基に含まれるCと、第1層に含まれるSiと、を結合させて、Si−C結合を形成することも可能となる。これらの結果、第1層中からClが脱離すると共に、第1層中に、C成分およびN成分が新たに取り込まれる。このように、第1層が改質されることで、ウエハ200上に、第2層として、Si、CおよびNを含む層、すなわち、シリコン炭窒化層(SiCN層)が形成される。
【0063】
第2層を形成する際、第1層に含まれていたClや、TEAガスに含まれていたHは、TEAガスによる第1層の改質反応の過程において、ClおよびHの少なくともいずれかを含むガス状物質を構成し、排気管231を介して処理室201内から排出される。すなわち、第1層中のCl等の不純物は、第1層中から引き抜かれたり、脱離したりすることで、第1層から分離する。これにより、第2層は、第1層に比べてCl等の不純物が少ない層となる。
【0064】
第2層が形成された後、バルブ243bを閉じ、TEAガスの供給を停止する。そして、ステップ1のパージステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留する未反応もしくは第2層の形成に寄与した後のTEAガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0065】
[ステップ3]
ステップ2が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第2層に対してOガスを供給し排気口231aより排気する。
【0066】
このステップでは、バルブ243c,243d〜243fの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243d〜243fの開閉制御と同様の手順で行う。Oガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249cを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してOガスが供給される。
【0067】
ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の所定の流量とする。Oガスの供給時間は、例えば1〜120秒、好ましくは1〜60秒の範囲内の所定の時間とする。各ガス供給管から供給するNガスの供給流量は、例えば500〜2000sccmの範囲内の所定の流量とする。処理室201内の圧力は、例えば1〜4000Pa、好ましくは1〜3000Paの範囲内の所定の圧力とする。処理室201内の圧力をこのような比較的高い圧力帯とすることで、Oガスをノンプラズマで熱的に活性化させることが可能となる。Oガスは熱で活性化させて供給した方が、比較的ソフトな反応を生じさせることができ、後述する第3層の形成が容易となる。他の処理条件は、例えば、ステップ1と同様な処理条件とする。
【0068】
上述の条件下でウエハ200に対してOガスを供給することにより、第2層の少なくとも一部を改質(酸化)させることができる。すなわち、Oガスに含まれていたO成分の少なくとも一部を第2層に添加させ、第2層中にSi−O結合を形成することができる。第2層が改質されることで、ウエハ200上に、第3層として、Si、O、CおよびNを含む層、すなわち、シリコン酸炭窒化層(SiOCN層)が形成される。第3層を形成する際、第2層に含まれていたC成分やN成分の少なくとも一部は、第2層から脱離することなく第2層中に維持される。
【0069】
第3層を形成する際、第2層に含まれていたClは、Oガスによる改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。すなわち、第2層中のCl等の不純物は、第2層中から引き抜かれたり、脱離したりすることで、第2層から分離する。これにより、第3層は、第2層に比べてCl等の不純物が少ない層となる。
【0070】
第3層が形成された後、バルブ243cを閉じ、Oガスの供給を停止する。そして、ステップ1のパージステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留する未反応もしくは第3層の形成に寄与した後のOガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0071】
[所定回数実施]
ステップ1〜3を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを1回以上(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiOCN膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第3層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、第3層を積層することで形成されるSiOCN膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0072】
原料としては、HCDSガスの他、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン原料ガスを用いることができる。
【0073】
第1反応体としては、TEAガスの他、例えば、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)ガス、モノエチルアミン(CNH、略称:MEA)ガス等のエチルアミン系ガスや、トリメチルアミン((CHN、略称:TMeA)ガス、ジメチルアミン((CHNH、略称:DMeA)ガス、モノメチルアミン(CHNH、略称:MMeA)ガス等のメチルアミン系ガス等を用いることができる。また、第1反応体としては、トリメチルヒドラジン((CH(CH)H、略称:TMH)ガス等のような有機ヒドラジン系ガスを用いることもできる。
【0074】
第2反応体としては、Oガスの他、水蒸気(HOガス)、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス、オゾン(O)ガス、プラズマ励起させたO(O)ガス、Hガス+Oガス、Hガス+Oガス等のO含有ガスを用いることができる。
【0075】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0076】
(アフターパージ及び大気圧復帰)
ウエハ200上に所望組成、所望膜厚の膜が形成されたら、バルブ243a〜243cを閉じ、処理室201内への原料、反応体の供給をそれぞれ停止する。また、ガス供給管232d〜232fのそれぞれからパージガスとしてのNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0077】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。
【0078】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0079】
(a)HCDSガス供給時に、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量よりも大きくすることで、ベアウエハとして構成されたウエハ200上に形成されるSiOCN膜の面内膜厚分布を、中央凸分布とすることが可能となる。これにより、ウエハ200としてパターンウエハを用いる場合に、このウエハ200上に、フラット分布を有するSiOCN膜を形成することが可能となる。なお、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するHCDSガスの流量とNガスの流量との合計流量よりも大きくすることで、上述の中央凸分布をより確実に実現できるようになる。
【0080】
ウエハ200上に形成される膜の面内膜厚分布がウエハ200の表面積に依存するのは、いわゆるローディング効果によるものと考えられる。成膜対象のウエハ200の表面積が大きくなるほど、HCDSガス等の原料がウエハ200の周縁部で多量に消費され、その中心部へ届きにくくなる。この場合、ウエハ200上に形成される膜の膜厚分布が、ウエハ200の周縁部が最も厚く、中心部に近づくにつれて徐々に薄くなる分布(以下、中央凹分布とも称する)となる。
【0081】
本実施形態によれば、ウエハ200として表面積の大きなパターンウエハを用いる場合であっても、ノズル249b,249aより供給するNガスの流量バランスを上述のように設定することで、ウエハ200上に形成される膜の面内膜厚分布を中央凹分布からフラット分布へと矯正したり、さらには、中央凸分布へと矯正したりする等、自在に制御することが可能となる。
【0082】
(b)HCDSガス供給時に、ノズル249cより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量よりも大きくすることで、上述の中央凸分布をより確実に実現できるようになる。
【0083】
(c)ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249cより供給するNガスの流量以上の流量とすることで、上述の膜厚分布制御を、効率的に、すなわち、少ないNガスの消費量で低コストに実現することが可能となる。これは上述したように、ノズル249bが、ノズル249cよりも、排気口231aから遠い位置に配置されているためである。
【0084】
(d)SiOCN膜の面内膜厚分布の制御を行う際、ノズル249a〜249cの他に新たなノズルを設ける必要がなく、TEAガスの供給やOガスの供給に用いる既存のノズル249b,249cを流用できることから、基板処理装置の製造コストやメンテナンスコストの増加を回避することができる。
【0085】
(e)上述の効果は、HCDSガス以外の原料ガスを用いる場合や、TEAガス以外のCおよびNを含むガスを用いる場合や、Oガス以外の酸化ガスを用いる場合や、Nガス以外の不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0086】
(4)変形例
本実施形態における成膜ステップは、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0087】
(変形例1)
図5に示すように、HCDSガス供給時に、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量よりも大きくした状態で、ノズル249cより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量以下としてもよい。図5は、ノズル249cより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量と同等とする例を示している。この場合、ウエハ200上に形成されるSiOCN膜の中央凸分布の度合いを、図4に示す成膜シーケンスの場合よりも和らげる方向に、すなわち、SiOCN膜の面内膜厚分布を中央凸分布からフラット分布に近づける方向に制御することが可能となる。ウエハ200として、比較的表面積の小さなパターンウエハ(但し、ベアウエハよりは表面積が大きい)を用いる場合には、本変形例の成膜シーケンスを採用することで、このウエハ200上に、フラット分布を有するSiOCN膜を形成することが可能となる。なお、HCDSガスのノズル249c内への侵入を抑制するには、HCDSガス供給時に、ノズル249cからのNガスの供給を不実施とすることなく、例えば、ノズル249aより供給するNガスの流量と同等の流量条件で実施するのが好ましい。
【0088】
(変形例2)
HCDSガス供給時に、ノズル249cより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量よりも大きくした状態で、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249cより供給するNガスの流量より小さくしてもよい。この場合、ウエハ200上に形成されるSiOCN膜の中央凸分布の度合いを、変形例1の場合よりも和らげる方向に、すなわち、SiOCN膜の面内膜厚分布をさらにフラット分布に近づける方向に、制御することが可能となる。
【0089】
この場合、図6に示すように、ノズル249bより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量以下とすることで、SiOCN膜の面内膜厚分布をさらにフラット分布に近づける方向に制御することが可能となる。ウエハ200として、ベアウエハと同程度、或いは、ベアウエハよりも僅かに大きな表面積を有するパターンウエハを用いる場合には、本変形例の成膜シーケンスを採用することで、このウエハ200上に、フラット分布を有するSiOCN膜を形成することが可能となる。なお、HCDSガスのノズル249b内への侵入を抑制するには、HCDSガス供給時に、ノズル249bからのNガスの供給を不実施とすることなく、例えば、ノズル249aより供給するNガスの流量と同等の流量条件で実施するのが好ましい。
【0090】
なお、本変形例では、HCDSガス供給時に、ノズル249cより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するHCDSガスの流量とNガスの流量との合計流量よりも大きくすることで、SiOCN膜の面内膜厚分布を、中央凹分布ではなく、フラット分布とすることが、より確実に行えるようになる。
【0091】
ガスの流量バランスを本変形例のように設定する場合、HCDS供給時にノズル249cより供給するNガスの流量は、HCDS非供給時にノズル249cより供給するNガスの流量よりも大きくなる。例えば、HCDS供給時にノズル249cより供給するNガスの流量は、ステップ2におけるTEAガス供給時にノズル249cより供給するNガスの流量よりも大きくなり、また、ステップ3におけるOガス供給時にノズル249cより供給するNガスの流量よりも大きくなる。また、Nガスの流量バランスを上述のように設定する場合、HCDS供給時にノズル249cより供給するNガスの流量は、処理室201内のパージ時にノズル249cより供給するNガスの流量よりも大きくなる。
【0092】
(変形例3)
図7に示すように、HCDSガス供給時に、ノズル249bおよびノズル249cのそれぞれより供給するNガスの流量を、ノズル249aより供給するNガスの流量と同等としてもよい。この場合、ウエハ200上に形成されるSiOCN膜の膜厚分布を、フラット分布から中央凹分布へと近づけることが可能となる。
【0093】
(変形例4)
原料として、例えば、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジメチルジシラン((CHSiCl、略称:TCDMDS)ガスのようなアルキルハロシラン原料ガスや、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガスやビス(ジエチルアミノ)シラン(SiH[N(C、略称:BDEAS)ガスのようなアミノシラン原料ガスを用いてもよい。また、モノシラン(SiH)ガス、ジシラン(Si)ガスのようなシラン原料ガスを用いてもよい。
【0094】
また、反応体として、例えば、プロピレン(C)ガスのようなC含有ガスや、アンモニア(NH)ガスのようなN含有ガス(窒化剤)を用いてもよい。また、酸化剤として、OガスやOガスを用いてもよい。
【0095】
そして、例えば以下の成膜シーケンスにより、ウエハ200上に、SiOCN膜、SiOC膜、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)を形成するようにしてもよい。
【0096】
(HCDS→TEA→O)×n ⇒ SiOC(N)
(HCDS→C→O→NH)×n ⇒ SiOCN
(HCDS→C→NH→O)×n ⇒ SiOCN
(C→HCDS→C→O→NH)×n ⇒ SiOCN
(C→HCDS→C→NH→O)×n ⇒ SiOCN
(TCDMDS→NH→O)×n ⇒ SiOCN
(HCDS→NH→O)×n ⇒ SiON
(HCDS→C→NH)×n ⇒ SiCN
(TCDMDS→NH)×n ⇒ SiCN
(HCDS→TEA)×n ⇒ SiCN
(HCDS→NH)×n ⇒ SiN
(3DMAS→O)×n ⇒ SiO
(BDEAS→O)×n ⇒ SiO
【0097】
これらの成膜シーケンスにおいても、原料供給時に、ノズル249a〜249cより供給するNガスの流量バランスの制御を、図4に示す成膜シーケンスや変形例1〜3と同様に行うことで、これらと同様の効果が得られる。なお、Cガスの供給は、例えばノズル249aから行うことができ、NHガスの供給は、例えばノズル249bから行うことができる。原料や反応体を供給する際の処理手順、処理条件は、図4に示す成膜シーケンスや変形例1〜3と同様とすることができる。
【0098】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。但し、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0099】
上述の実施形態では、ノズル249a〜249cからHCDSガス、TEAガス、Oガスをそれぞれ供給する例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、ノズル249a〜249cから、HCDSガス、Oガス、TEAガスをそれぞれ供給してもよく、TEAガス、Oガス、HCDSガスをそれぞれ供給してもよく、Oガス、TEAガス、HCDSガスをそれぞれ供給してもよい。これらの場合であっても、HCDSガス供給時に、ノズル249a〜249cより供給するNガスの流量バランスの制御を、図4に示す成膜シーケンスや変形例1〜3と同様に行うことで、これらと同様の効果が得られる。
【0100】
上述の実施形態では、HCDSガス供給時に、ノズル249a〜249cより供給するNガスの流量バランスの制御を行う例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、HCDSガス供給時ではなく、TEAガス供給時に、上述のNガスの流量バランスの制御を行うようにしてもよい。この場合、ウエハ200上に形成される膜の、ウエハ200面内におけるN濃度の分布やC濃度の分布を制御することが可能となる。また例えば、Oガス供給時に、上述のNガスの流量バランスの制御を行うようにしてもよい。この場合、ウエハ200上に形成される膜の、ウエハ200面内におけるO濃度の分布を制御することが可能となる。TEAガス供給時やOガス供給時におけるNガスの流量バランスの制御は、図4に示す成膜シーケンスや変形例1〜3と同様の処理条件、処理手順により行うことができる。
【0101】
上述の実施形態では、基板上に主元素としてSiを含む膜を形成する例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、本発明は、Siの他、ゲルマニウム(Ge)、ボロン(B)等の半金属元素を主元素として含む膜を基板上に形成する場合にも、好適に適用することができる。また、本発明は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、アルミニウム(Al)等の金属元素を主元素として含む膜を基板上に形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0102】
例えば、原料として、チタニウムテトラクロライド(TiCl)ガスやトリメチルアルミニウム(Al(CH、略称:TMA)ガスを用い、以下に示す成膜シーケンスにより、基板上に、チタン酸炭窒化膜(TiOCN膜)、チタン酸炭化膜(TiOC膜)、チタン酸窒化膜(TiON膜)、チタンアルミニウム炭窒化膜(TiAlCN膜)、チタンアルミニウム炭化膜(TiAlC膜)、チタン窒化膜(TiN膜)、チタン酸化膜(TiO膜)を形成する場合にも、本発明は好適に用いることができる。
【0103】
(TiCl→TEA→O)×n ⇒ TiOC(N)
(TiCl→NH→O)×n ⇒ TiON
(TiCl→TMA→NH)×n ⇒ TiAlCN
(TiCl→TMA)×n ⇒ TiAlC
(TiCl→TEA)×n ⇒ TiCN
(TiCl→NH)×n ⇒ TiN
(TiCl→HO)×n ⇒ TiO
【0104】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0105】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0106】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0107】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができ、これらと同様の効果が得られる。
【0108】
また、上述の実施形態や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の実施形態の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0109】
上述の実施形態や変形例の手法により形成されるSiOCN膜等は、低誘電率と高エッチング耐性を併せ持つことから、従来のSiO膜やSiN膜に代わり、絶縁膜、スペーサ膜、マスク膜、電荷蓄積膜、ストレス制御膜等として広く用いることが可能である。近年、半導体デバイスの微細化に伴い、ウエハ上に形成される膜に対して面内膜厚均一性の要求が厳しくなっている。高密度パターンが表面に形成されたパターンウエハ上へフラット分布を有する膜を形成することが可能な本発明は、この要求に答える技術として非常に有益であると考えられる。
【実施例】
【0110】
以下、上述の実施形態で得られる効果を裏付ける実験結果について説明する。
【0111】
(実施例1)
図1に示す基板処理装置を用い、ウエハに対してHCDSガス、TEAガス、Oガスをこの順に非同時に供給するサイクルを所定回数行う成膜シーケンスにより、ウエハ上にSiOCN膜が形成されたサンプル1〜3を作製した。ウエハとしては表面に凹凸構造が形成されていないベアウエハを用いた。サンプル1を作製する際、HCDSガス供給時における第2、第3ノズルからのNガスの供給流量を、それぞれ、2500〜3500sccmの範囲内の流量とした。サンプル2を作製する際、HCDSガス供給時における第2、第3ノズルからのNガスの供給流量を、それぞれ、1000〜2000sccmの範囲内の流量とした。サンプル3を作製する際、HCDSガス供給時における第2、第3ノズルからのNガスの供給流量を、それぞれ、400〜600sccmの範囲内の流量とした。いずれの場合も、HCDSガス供給時における第1ノズルからのNガスの供給流量を、400〜600sccmの範囲内の流量とした。他の処理条件は、上述の実施形態における処理条件と同様とした。
【0112】
そして、サンプル1〜3のSiOCN膜の面内膜厚分布をそれぞれ測定した。図8にその測定結果を示す。図8の縦軸は膜厚[Å]を、横軸は測定位置のウエハの中心からの距離[mm]をそれぞれ示している。横軸が0[mm]とはウエハの中心を意味している。図中□、●、△印はそれぞれサンプル1〜3の評価結果を示している。図8によれば、HCDSガス供給時における第2、第3ノズルからのNガスの供給流量を大きくするほど、SiOCN膜の面内膜厚分布がフラット分布から中央凸分布に近づき、その度合いが大きくなることが分かる。
【0113】
(実施例2)
図1に示す基板処理装置を用い、ウエハに対してHCDSガス、Cガス、NHガス、Oガスをこの順に非同時に供給するサイクルを所定回数行う成膜シーケンスにより、ウエハ上にSiOCN膜が形成されたサンプル4〜6を作製した。ウエハとしては表面に凹凸構造が形成されていないベアウエハを用いた。サンプル4を作製する際、HCDSガス供給時における第2ノズルからのNガスの供給流量を5000〜7000sccmの範囲内の流量とし、第3ノズルからのNガスの供給流量を400〜600sccmの範囲内の流量とした。サンプル5を作製する際、HCDSガス供給時における第2ノズルからのNガスの供給流量を400〜600sccmの範囲内の流量とし、第3ノズルからのNガスの供給流量を5000〜7000sccmの範囲内の流量とした。サンプル6を作製する際、HCDSガス供給時における第2、第3ノズルからのNガスの供給流量をそれぞれ400〜600sccmの範囲内の流量とした。いずれの場合も、HCDSガス供給時における第1ノズルからのNガスの供給流量を400〜600sccmの範囲内の流量とした。他の処理条件は、上述の実施形態における処理条件と同様とした。
【0114】
そして、サンプル4〜6のSiOCN膜の面内膜厚分布をそれぞれ測定した。図9(a)〜図9(c)にサンプル4〜6の測定結果をそれぞれ示す。これらの図の縦軸は膜厚[Å]を、横軸は測定位置のウエハの中心からの距離[mm]をそれぞれ示している。
【0115】
図9(a)によれば、HCDSガス供給時に、第2ノズルより供給するNガスの流量を、第1ノズルより供給するNガスの流量よりも大きくし、第3ノズルより供給するNガスの流量を、第1ノズルより供給するNガスの流量と同等とすることで作製したサンプル4では、SiOCN膜の面内膜厚分布が中央凸分布となっていることが分かる。
【0116】
図9(b)によれば、HCDSガス供給時に、第2ノズルより供給するNガスの流量を、第1ノズルより供給するNガスの流量と同等し、第3ノズルより供給するNガスの流量を、第1ノズルより供給するNガスの流量よりも大きくすることで作製したサンプル5では、SiOCN膜の面内膜厚分布がフラット分布となっていることが分かる。
【0117】
図9(c)によれば、HCDSガス供給時に、第2ノズルおよび第3ノズルのそれぞれより供給するNガスの流量を、第1ノズルより供給するNガスの流量と同等とすることで作製したサンプル6では、SiOCN膜の面内膜厚分布が中央凹分布となっていることが分かる。
【0118】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0119】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板に対して第1ノズルより原料を供給し排気口より排気する工程と、
前記基板に対して前記第1ノズルよりも前記排気口から遠い側に配置された第2ノズルより第1反応体を供給し前記排気口より排気する工程と、
前記基板に対して前記第2ノズルよりも前記排気口に近い側に配置された第3ノズルより第2反応体を供給し前記排気口より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで前記基板上に膜を形成する工程を有し、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と、のバランスを制御することで、前記基板上に形成する前記膜の基板面内膜厚分布を制御する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0120】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量よりも大きくする。
【0121】
(付記3)
付記2に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する原料の流量と不活性ガスの流量との合計流量よりも大きくする。
【0122】
(付記4)
付記2または3に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量よりも大きくする。
【0123】
(付記5)
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量以上とする。より好ましくは、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量より大きくする。
【0124】
(付記6)
付記2または3に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量以下とする。より好ましくは、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と同等とする。
【0125】
(付記7)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量より小さくし、
前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量よりも大きくする。
【0126】
(付記8)
付記7に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する原料の流量と不活性ガスの流量との合計流量よりも大きくする。
【0127】
(付記9)
付記7または8に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と同等とする。
【0128】
(付記10)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料供給時に、前記第2ノズルおよび前記第3ノズルのそれぞれより供給する不活性ガスの流量を、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と同等とする。
【0129】
(付記11)
本発明の他の態様によれば、
基板に対して処理が行われる処理室と、
前記処理室内を排気口より排気する排気系と、
前記処理室内へ第1ノズルより原料を供給する原料供給系と、
前記処理室内へ前記第1ノズルよりも前記排気口から遠い側に配置された第2ノズルより第1反応体を供給する第1反応体供給系と、
前記処理室内へ前記第2ノズルよりも前記排気口に近い側に配置された第3ノズルより第2反応体を供給する第2反応体供給系と、
前記処理室内へ前記第1ノズル、前記第2ノズルおよび前記第3ノズルより不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理室内において、基板に対して前記第1ノズルより前記原料を供給し前記排気口より排気する処理と、前記基板に対して前記第2ノズルより前記第1反応体を供給し前記排気口より排気する処理と、前記基板に対して前記第3ノズルより前記第2反応体を供給し前記排気口より排気する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで前記基板上に膜を形成する処理を行わせ、前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と、のバランスを制御することで、前記基板上に形成する前記膜の基板面内膜厚分布を制御するように、前記原料供給系、前記第1反応体供給系、前記第2反応体供給系、前記不活性ガス供給系、および前記排気系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0130】
(付記12)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板に対して第1ノズルより原料を供給し排気口より排気する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して前記第1ノズルよりも前記排気口から遠い側に配置された第2ノズルより第1反応体を供給し前記排気口より排気する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して前記第2ノズルよりも前記排気口に近い側に配置された第3ノズルより第2反応体を供給し前記排気口より排気する手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで前記基板上に膜を形成する手順と、
前記原料供給時に、前記第2ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第3ノズルより供給する不活性ガスの流量と、前記第1ノズルより供給する不活性ガスの流量と、のバランスを制御することで、前記基板上に形成する前記膜の基板面内膜厚分布を制御する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0131】
200 ウエハ(基板)
249a ノズル(第1ノズル)
249b ノズル(第2ノズル)
249c ノズル(第3ノズル)
231a 排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9