特許第6568627号(P6568627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568627
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】イオンビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20190819BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20190819BHJP
   H01J 37/12 20060101ALI20190819BHJP
   H01J 37/248 20060101ALI20190819BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   H01J37/28 Z
   H01J37/08
   H01J37/12
   H01J37/248 B
   H01J37/248 C
   H01J37/317 D
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-130339(P2018-130339)
(22)【出願日】2018年7月10日
(62)【分割の表示】特願2014-82444(P2014-82444)の分割
【原出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-152365(P2018-152365A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】志知 広康
(72)【発明者】
【氏名】松原 信一
(72)【発明者】
【氏名】川浪 義実
(72)【発明者】
【氏名】武藤 博幸
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−254722(JP,A)
【文献】 特開平02−018848(JP,A)
【文献】 特開2013−084489(JP,A)
【文献】 特表2011−514633(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0327952(US,A1)
【文献】 特開2012−033467(JP,A)
【文献】 特開平11−329321(JP,A)
【文献】 特開平01−221848(JP,A)
【文献】 特開平10−021861(JP,A)
【文献】 特開2013−089514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/00−37/02
37/05
37/09−37/18
37/21
37/24−37/244
37/252−37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタティップを有し、前記エミッタティップから放出されるイオンビームを制御するガス電界電離イオン源と、前記ガス電界電離イオン源からの前記イオンビームを試料に照射する照射光学系と、前記イオンビームを前記試料に照射したことに起因する荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、少なくとも第一乃至第四の電極を有する、試料に最も近い静電レンズとを有するイオンビーム装置において、
前記4個の電極は、前記試料に最も近い第一の電極と前記試料に2番目に近い第二の電極との第1の間隔が、
前記試料に2番目に近い前記第二の電極と前記試料に3番目に近い第三の電極との第2間隔、及び前記試料に3番目に近い前記第三の電極と前記試料に4番目に近い第四の電極との第3間隔のいずれに比べて1/10以下に小さく、かつ前記第2間隔が前記第3間隔以下であることを特徴とするイオンビーム装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオンビーム装置において
前記静電レンズと前記試料との間に設けられ、第1の正電圧が印加される第五の電極と、
前記試料と前記第二の電極との間に電場勾配を生じさせるよう前記第1の正電圧とは異なる第2の正の電圧を前記試料または試料台に印加する第一の電源とを有することを特徴とするイオンビーム装置。
【請求項3】
請求項1記載のイオンビーム装置において、
前記第一乃至第四の電極のそれぞれに異なる電圧が印加できるように、第二乃至第四の電源を備えることを特徴とするイオンビーム装置。
【請求項4】
請求項1記載のイオンビーム装置において、
前記試料に最も近い静電レンズと前記試料との間に設けられ、第1の正の電圧が印加される第五の電極と、
第2の正の電圧を前記試料または試料台に印加する試料用電源と、
荷電粒子検出器における検出面の近傍に設けられ、第3の正の電圧が印加される第六の電極と、
前記第2の正の電圧よりも前記第1の正の電圧が高く、かつ前記第1の正の電圧よりも前記第3の正の電圧が高く設定された際に、前記試料に照射したことに起因する荷電粒子のうち、二次電子を検出して得られた第1の観察像と、前記第1の正の電圧よりも前記第2の正の電圧が高く、かつ前記第1の正の電圧よりも前記第3の正の電圧が高く設定された際に、前記試料に照射したことに起因する荷電粒子のうち、反射された荷電粒子を検出して得られた第2の観察像と、を表示する表示部と、を有することを特徴とするイオンビーム装置。
【請求項5】
請求項1記載のイオンビーム装置において、
前記第3間隔が、前記第四の電極の厚みに比べて小さいことを特徴とするイオンビーム装置。
【請求項6】
請求項1記載のイオンビーム装置において、
前記試料と前記試料に最も近い第一の電極との距離が、前記第2間隔に比べて小さいことを特徴とするイオンビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子を走査しながら試料に照射して、試料から放出される二次荷電粒子を検出すれば、試料表面の構造を観察することができる。これは走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope以下、SEMと略記)と呼ばれる。一方、イオンビームを走査しながら試料に照射して、試料から放出される二次電子、二次イオン、反射イオンなどを検出しても、試料表面の構造を観察することができる。これは走査イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope以下、SIMと略記)と呼ばれる。特に、水素、ヘリウム、などの質量の軽いイオン種を試料に照射すれば、相対的にスパッタ作用は小さくなり試料を観察するのに好適となる。また、試料で反射されたイオンのエネルギーや放出された角度を調べると試料の元素を分析することもできる。
【0003】
さらに、イオンビームは、電子ビームに比べて試料表面の情報に敏感である特徴を有する。これは、二次電子の励起領域が電子ビームの照射に比べて、試料表面により局在するからである。また、電子ビームでは、電子の波としての性質が無視できないため、回折効果により収差が発生する。一方、イオンビームでは、電子に比べて重いため、回折効果による収差は電子に比べて極めて小さい。特に、輝度の高いガス電界電離イオン源を用いた場合には、電子ビームに比べて、イオンビームは極微細に集束することが可能となる。すなわち、試料表面の超高分解能が可能になる。また、極微細イオンビームを用いて、試料上をライン走査あるいは面走査することによって、微細化された半導体試料の表面構造の寸法を高精度に計測することが可能になる。また、相対的に質量の重いイオン種を試料に照射すれば、スパッタ作用により試料を加工することも可能になる。
【0004】
ところで、ガス電界電離イオン源は先端曲率半径を100nm程度にした金属エミッタティップに水素あるいはヘリウムなどのガスを供給し、エミッタティップに数kV以上の高電圧を印加することにより、ガス分子を電界電離し、これをイオンビームとして引き出すものである。本イオン源の特徴は、イオンのエネルギー幅が狭く、さらにイオン発生源のサイズが小さいため、極微細なイオンビームを生成することができることにある。さらに、ガス電界電離イオン源のイオン放射角電流密度を大きくするには、エミッタティップを極低温に冷却し、エミッタティップ周辺のイオン化ガスの圧力を、例えば、10-2〜数Pa程度にする。
【0005】
イオンビーム装置において、極微細イオンビームを試料に照射して、試料から放出される二次電子(またはイオン)、反射電子(またはイオン)、透過電子(またはイオン)などを検出すれば、試料表面の構造を超高分解能で観察したり、微細化された半導体試料の表面構造の寸法を高精度に計測したり、あるいは、試料に起因する電子(イオン)のエネルギーや放出された角度を調べて試料の元素を分析が可能である。
【0006】
エネルギーを持ったイオンビームを試料に照射すると、イオンが試料原子を移動させる。いわゆるカスケードミキシング現象が発生する。例えば、試料分子の結合を切断して、その性質や密度を変化させる。また、試料原子の一部は真空中に飛び出す、いわゆるスパッタリング現象が発生する。このことを利用すれば、試料の微細加工ができる。また、試料が絶縁物の場合には試料の帯電現象が発生する。
【0007】
ガス電界電離イオン源を搭載したイオンビーム装置においては、ガス種を変えたとき、例えば質量数の小さい水素やヘリウムの場合と、相対的に質量数の大きいアルゴンやキセノンの場合には、先に述べたカスケードミキシング現象、スパッタリング現象、および帯電現象などは異なる。すなわち、水素やヘリウムなどを照射した場合には、試料構造を変化させる度合いは相対的に小さく、スパッタリングによって試料を削る割合も小さい。一方、アルゴンやキセノンを照射した場合には、試料構造を変化させる度合いは相対的に大きく、スパッタリングによって試料を削る割合も大きく、試料を加工する場合には速度が大きい。
【0008】
また、イオンビームのエネルギーによってもこれらの現象は異なる。一般的に、エネルギーが大きいほど、試料構造を変化させる度合いは相対的に大きい。ただし、水素やヘリウムを照射し時のスパッタリング率は、数keVから数10keVに最大の値になる。これは入射角度や材質によっても異なる。また、一方で、イオンビームのエネルギーを高くした方が、イオンビーム径を微細化するには有利になる。
【0009】
特許文献1には、荷電粒子線装置において、先端形状に特徴がある4個の電極(V2やV4など)を用いて荷電粒子の軌道半径や中心軸に対する軌道角度を制御し、例えば、50kVの電子をフォーカスするという一定条件化の場合において色収差を低減する技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、5枚以上の静電レンズの内部に、加速電極10,11,減速電極12を設けることで、荷電粒子線の進行速度を制御し、色収差を低減させる技術が開示されている。なお、加速・減速電極は進行速度を制御しており、収束条件を変えているわけではない。
【0011】
また、特許文献3には、集束荷電粒子カラムにおいて、4つの電極から構成される対物レンズで電極間のギャップについての条件が開示されている。しかし、従来型の集束荷電粒子カラムについての開示であり、電極ギャップと試料との関係や、電極の厚みと電極ギャップとの関係などについては考慮されておらず、ガス電界電離イオン源を搭載したイオンビーム装置を高性能・多機能で動作させることについては記載が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2009−119504号
【特許文献2】特開平10−241616号
【特許文献3】特開2013−254722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ガス電界電離イオン源を搭載したイオンビーム装置においては、極微細のイオンビームを形成できて、かつイオン種も異なる質量数から広く選ぶことができる。このイオンビーム装置によって、試料表面の構造の超高分解能観察、試料構造寸法の高精度計測、あるいは試料元素分析、極微細加工が可能であるが、ガス電界電離イオン源を搭載したイオンビーム装置には、従来のイオンビーム装置では顕在化しなかったよな、以下に述べるような課題がある。
【0014】
まず、試料表面を壊さないで超高分解能で観察することや、微細構造の寸法を変化させることなく超高精度で計測することを目的とする場合には、イオンのエネルギーを小さくする。例えばイオン加速電圧を、たとえば5kV以下の低加速にさせる。しかし、加速電圧の低下はイオンビーム集束する際の静電レンズの収差を増大させる。すなわちイオンビーム径が増大して、観察分解能が劣化する。この課題を克服するためには、イオンビーム装置を低加速電圧に適した構造にすれば、ある程度、この課題は克服できる。しかし、表面が壊れにくい場合には、例えば40kV以上の高加速電圧を印加して、イオンエネルギーを大きくした方が、より高分解能の観察や計測が可能になることがわかった。また、従来のイオンビーム装置とは異なり、電界電離イオン源を用いた水素ビームやヘリウムビームでは、高加速電圧でスパッタの効率が下がるという特徴が顕在化するということを発明者らは発見したのである。
【0015】
すなわち、試料表面構造の寸法計測する場合には特に、従来は低エネルギー照射のみが検討されていたが、高エネルギー照射の寸法計測は検討されていなかった。そして、試料の構造や材質によっては、イオン種を選択して、高エネルギー照射すると、高精度の寸法計測が実現し、試料の破壊を低減させることが分かったこれは従来はまったく考慮されてなかった特徴である。
【0016】
特に、微細なデバイスの寸法計測する場合には、試料ダメージを低減するためには、試料の深さ方向の構造に合わせて、イオン照射エネルギーを最適化することが必要であることがわかった。すなわち、複数のイオンエネルギーで照射できる機能が必要であり、さらに各イオンエネルギーにてビーム径を微細化する必要がある。また、一方で、加工を目的とする場合にも、イオンエネルギーを大きくした方が、加工速度を大きくする、すなわち加工の効率が良くなる。
【0017】
すなわち、ガス電界電離イオン源を備えたイオンビーム装置で、その性能を最大化するためには、複数のイオン種、複数のイオンエネルギーでイオンビームを極微細化するという課題が顕在化することが分かった。従来のGa液体金属イオン源を用いた集束イオンビームでは、高速・極微細加工に主な目的があったため、複数の目的に応じて、複数の照射条件を切り替えるといった課題はあまり顕在化せず、課題として認識されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明のイオンビーム装置は、少なくとも2種類のガスをイオン化できるガス電界電離イオン源と、ガス電界電離イオン源から放出されたイオンビームを静電レンズで集束して試料に照射するイオンビーム装置であって、試料に対向して、試料に最も近い静電レンズは4個の電極から構成され、2つの異なる電圧を印加可能な加速電源と、前記静電レンズの4個の電極の内の少なくとも2個の電極に異なる電圧を印加可能な第一の電源と、試料または試料台に電圧が印加可能な第二の電源とを備えており、第一種のガスイオンを照射するときの第一の加速電圧に対して、前記静電レンズの各々の電極への第一の印加電圧および第一の試料電圧と、第二種のガスイオンを照射するとき、第一の加速電圧とは異なる第二の加速電圧に対して、前記静電レンズの各々の電極への第二の印加電圧および第二の試料電圧と、を記憶する制御部を備えることを特徴とする。
【0019】
また、上記の課題を解決するため、本発明のイオンビーム装置は、エミッタティップを有し、前記エミッタティップから放出されるイオンビームを制御するガス電界電離イオン源と、前記ガス電界電離イオン源からの前記イオンビームを試料に照射する照射光学系と、前記イオンビームを前記試料に照射したことに起因する荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、少なくとも第一乃至第四の電極を有する、試料に最も近い静電レンズとを有するイオンビーム装置において、前記試料と前記試料に最も近い第一の電極との距離が、前記試料に最も近い第一の電極と、試料に2番目に近い第二の電極との第1の間隔と、試料に最も近い第一の電極の厚みとを加えた距離以下であることを特徴とする。
【0020】
また、上記の課題を解決するため、本発明のイオンビーム装置は、エミッタティップを有し、前記エミッタティップから放出されるイオンビームを制御するガス電界電離イオン源と、前記ガス電界電離イオン源からの前記イオンビームを試料に照射する照射光学系と、前記イオンビームを前記試料に照射したことに起因する荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、第一乃至第四の電極を有する、試料に最も近い静電レンズと、を有し、前記第一乃至第四の電極は、前記試料に最も近い第一の電極と前記試料に2番目に近い第二の電極との第1の間隔が、前記試料に2番目に近い前記第二の電極と前記試料に3番目に近い第三の電極との第2間隔、及び前記試料に3番目に近い前記第三の電極と前記試料に4番目に近い第四の電極との第3間隔のいずれに比べても1/10以下に小さく、かつ前記第2の間隔が前記第3間隔以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、イオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーの条件を変えてビーム照射することが可能で、様々な条件における適切な観察や加工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によるイオンビーム装置の一例の概略構成図である。
図2】本発明によるイオンビーム装置の制御系の一例の概略構成図である。
図3】本発明によるイオンビーム装置の試料室内部構造の一例である。
図4A】本発明によるイオンビーム装置の静電レンズ電極間隔の説明図である。
図4B】本発明によるイオンビーム装置の静電レンズ電極間隔の説明図である。
図4C】本発明によるイオンビーム装置の静電レンズ電極間隔の説明図である。
図5】本発明によるイオンビーム装置の一例の概略構成図である。
図6】本発明によるイオンビーム装置の試料室内部構造の一例である。
図7】本発明によるイオンビーム装置の一例の概略構成図である。
図8】本発明によるイオンビーム装置の試料室内部構造の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によると、イオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーを変えて照射することが可能で、各構成を用いることで、超高分解能観察、低損傷観察、高精度寸法計測、極微細高速加工を実現することができる。
【0024】
また、試料が絶縁物の場合には試料の帯電現象が発生するため試料表面の様子を変化させたり、構造寸法を変化させたりするが、本願発明を用いることで観察等に適切な条件を設定することができる。すなわち絶縁物観察や試料元素情報の取得も好適に得ることができる。
【0025】
(1)また、出願時の請求項1の構成のようにすると、電界電離イオン源から放出された、少なくとも2種類以上のガスイオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーの条件を変えて照射することが可能となる。そして、少なくとも2つの異なる加速電圧に対して、イオンビームを試料上で集束させたときに、4個の電極からなる静電レンズの焦点距離が異なるようにすることで、各々の加速電圧に対して静電レンズの収差を少なくすることが可能となる。
【0026】
すなわち、各加速電圧で、試料上のビーム径を小さくすることができる。このことにより、高加速電圧イオンビーム照射により、超高分解能観察を実現する一方で、低加速電圧イオンビーム照射により、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、加速電圧を変えてイオンビーム照射して、試料構造寸法を計測する場合にも、各々の加速電圧条件で、高精度の寸法計測を実現できる。
【0027】
また、試料材質によって加速電圧を変えてイオンビーム照射して微細加工する場合にも、各々の加速電圧条件で、極微細高速加工を実現できる。特に、4個の電極により対物静電レンズを構成することにより、各電極の光学軸を精度良く一致させることが可能となり、極微細ビームを形成することができるようになる。
【0028】
また、第一の加速電圧をエミッタティップに印加して、試料に正の電圧を印加する場合には、試料を照射するイオンエネルギーを低くでき、試料のダメージが少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。さらに、同じイオンエネルギーで試料に電圧を印加しない場合に比べて、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーが高いため、イオンレンズの収差が小さくなり、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。次に、第二の加速電圧を印加したときには、試料に負の高電圧を印加する場合には、試料を照射するイオンエネルギーを高くでき、試料を加工する速度を高くすることができる。すなわち、極微細高速加工を実現できる。
【0029】
(2)また、出願時の請求項2の構成のようにすると、(1)の効果に加え、
相対的に質量数の小さいガスイオンに、相対的に低い第一の加速電圧を印加した場合には、試料のダメージが相対的に少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。一方、相対的に質量数の大きいガスイオンに、相対的に高い第二の加速電圧を印加した場合には、試料のスパッタリング効率を相対的に高くでき、試料を加工する速度を高くすることができる。すなわち、極微細高速加工を実現できる。
【0030】
(3)また、出願時の請求項3の構成のようにすると、(1)の効果に加え、二次電子の捕集効率が高くなるため、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。これは、観察時間の短縮やスループットの向上をも可能とする。
【0031】
(4)また、出願時の請求項4の構成のようにすると、(1)の効果に加え、試料構造や試料材質によって、試料損傷が相対的に少ない条件で、あるいは寸法計測精度が相対的に高い条件で試料表面の構造寸法を計測できる。
【0032】
(5)また、出願時の請求項5の構成のようにすると、(1)の効果に加え、デバイス製造の歩留まりが向上する、あるいは、より微細デバイスを製造可能となる。
【0033】
(6)また、出願時の請求項6の構成のようにすると、(1)の効果に加え、
の効果に加え、試料からほぼ垂直方向に放出される二次電子はイオンレンズ方向に加速されることになり、これを効率よく検出することができる。
【0034】
(7)また、出願時の請求項7の構成のようにすると、(1)の効果に加え、0.5kVから2kVの加速電圧では、特に低損傷の観察が可能になり、40kVから100kVの加速電圧では、特に高加速加工が可能になる。さらに特筆するべきは、水素やヘリウムを用いた場合には、スパッタ率がさがるため特に表面の構造変化が少ない観察が可能になる。
【0035】
(8)また、出願時の請求項8の構成のようにすると、少なくとも2つの異なる加速電圧に対して、イオンビームを試料上で集束させたときに、4個の電極からなる静電レンズの各電極間の距離を上記に記載したようにすることで、各々の加速電圧に対して静電レンズの収差を少なくすることが可能となる。
【0036】
すなわち、レンズの収差を少なくすることができてビーム径を小さくすることができる。よって、水素イオンやヘリウムイオン種で高加速電圧イオンビーム照射により、超高分解能観察を実現する一方で、低加速電圧イオンビーム照射により、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、加速電圧を変えてイオンビーム照射して、試料構造寸法を計測する場合にも、各々の加速電圧条件で、高精度の寸法計測を実現できる。
【0037】
また、試料材質によって加速電圧を変えてイオンビーム照射して微細加工する場合にも、各々の加速電圧条件で、極微細高速加工を実現できる。例えば、アルゴン、クリプトン、キセノンイオン種では特に高加速の加工が実現される。また、4個の電極により対物静電レンズを構成することにより、各電極の光学軸を精度良く一致させることが可能となり、極微細ビームを形成することができるようになった。
【0038】
(9)また、出願時の請求項9の構成のようにすると、(8)の効果に加え、
二次電子の捕集効率が高くなるため、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。これは、観察時間の短縮やスループットの向上をも可能とする。
【0039】
(10)また、出願時の請求項10の構成のようにすると、(8)の効果に加え、異なった3種の電圧を印加可能な電源を設けることにより、少なくとも2種類の加速電圧に対して、安定した高電圧印加と収差を少なくすることを両立できる。また、2個の電源のみで構成する場合に比べて、装置コストは高くなるが、ビーム径を小さくする条件を最適化できる。
【0040】
(11)また、出願時の請求項11の構成のようにすると、(8)の効果に加え、試料から放出される主に二次電子を検出して得られた第1の観察像と、試料で反射される正のイオンを電子に変換してこれを検出して得られた第2の観察像との2種の観察像を表示することができるため、試料の表面元素情報や状態に関する情報を得るのに好適となる。
【0041】
(12)また、出願時の請求項12の構成のようにすると、(8)の効果に加え、特に低加速電圧イオンビーム照射する場合のイオンビーム径を最小にするのに好適となり、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、低い加速電圧でのイオンビーム照射にて試料構造寸法を計測する場合にも、高精度の寸法計測を実現できる。
【0042】
(13)また、出願時の請求項13の構成のようにすると、(8)の効果に加え、特に高加速電圧イオンビーム照射する場合のイオンビーム径を最小にするのに好適となり、超高分解能観察を実現できる。また、試料構造に依存して、高い加速電圧でのイオンビーム照射にて試料構造寸法を計測する場合にも、高精度の寸法計測を実現できる。
【0043】
(14)また、出願時の請求項14の構成のようにすると、特に低加速電圧イオンビーム照射する場合のイオンビーム径を最小にするのに好適となり、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、低い加速電圧でのイオンビーム照射にて試料構造寸法を計測する場合にも、高精度の寸法計測を実現できる。
【0044】
(15)また、出願時の請求項15の構成のようにすると、(14)の効果に加え、試料から放出される主に二次電子を検出して得られた第1の観察像と、試料で反射される正のイオンを電子に変換してこれを検出して得られた第2の観察像との2種の観察像を表示することができるため、試料の表面元素情報や状態に関する情報を得るのに好適となる
【実施例1】
【0045】
図1を参照して本発明によるイオンンビーム装置の例を説明する。以下に、イオンビーム装置として、走査イオン顕微鏡装置の第1の例を説明する。本例の走査イオン顕微鏡は、ガス電界電離イオン源本体1、イオンビーム照射系カラム2、試料室3、及び、冷却機構4を有する。ここではガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3は真空容器内である。
【0046】
ガス電界電離イオン源1は、針状のエミッタティップ21、エミッタティップに対向して設けられ、イオンが通過する開口部27を有する引き出し電極24、細線状のフィラメント22、円柱状のフィラメントマウント23、及び、円柱状のエミッタベースマウント64を有する。さらに、真空容器15にはガス供給機構26先端のガス供給配管25が接続されエミッタティップ周辺にイオン化ガスを供給する。本実施例では、イオン化されるガス(イオン化ガス)は、ヘリウムで例示している。
【0047】
また、ガス電界電離イオン源1の真空容器15を真空排気するイオン源真空排気用ポンプ12が設けられている。真空容器15とイオン源真空排気用ポンプ12の間には真空遮断可能なバルブ29が配置されている。さらにガス電界電離イオン源1の真空容器15には非蒸発ゲッター材料70を内包する真空ポンプ71が接続されている。また、非蒸発ゲッター材料には真空容器の外に加熱機構72が備えられている。加熱機構は抵抗加熱、ランプ加熱などを原理としたものなどである。
【0048】
また、イオン源真空排気用ポンプ12と真空容器15および、非蒸発ゲッター材料70を内包する真空ポンプ71と真空容器15との間には真空遮断可能なバルブ74が配置されている。また、非蒸発ゲッター材料を内包する真空ポンプには真空遮断可能なバルブ77を介して真空ポンプ78が接続されている。
【0049】
さらにガス電界電離イオン源1は、エミッタティップ21の傾斜を変える傾斜機構61を含み、これはエミッタベースマウント64に固定されている。これは、エミッタティップ先端の方向をイオンビーム照射軸62に精度良く合わせるために用いる。この角度軸調整により、イオンビームの歪みを少なくするという効果を奏する。
【0050】
また、イオンビーム照射系は、上記ガス電界電離イオン源1から放出されたイオンを集束する集束レンズ5、該集束レンズを通過したイオンビーム14を制限する可動な第1アパーチャ6、該第1アパーチャを通過したイオンビームを走査あるいはアラインメントする第1偏向器35、該第1アパーチャを通過したイオンビームを偏向する第2偏向器7、該第1アパーチャを通過したイオンビーム14を制限する第2アパーチャ36、該第1アパーチャを通過したイオンビームを試料上に集束する静電型イオンレンズである対物レンズ8から構成される。本対物レンズ8は4個の電極から構成される。
また、試料室3内部については後で詳しく述べるが、試料9を載置する試料ステージ10、荷電粒子検出器11、およびイオンビームを照射したときの試料のチャージアップを中和するための電子銃16が設けられている。本例のイオン顕微鏡は、更に、試料室3を真空排気する試料室真空排気用ポンプ13を有する。また、試料室3には図示してないが試料近傍にエッチングやデポジションガスを供給するガス銃が設けられている。
【0051】
また、床20の上に配置された装置架台17の上には、防振機構19を介して、ベースプレート18が配置されている。電界電離イオン源1、カラム2、及び、試料室3は、ベースプレート18によって支持されている。
【0052】
冷却機構4は、電界電離イオン源1の内部、エミッタティップ21を冷却する。なお、冷却機構4は例えばギフォード・マクマホン型(GM型)冷凍機あるいは、パルス管冷凍機を用いる場合には、床20には、図示してないがヘリウムガスを作業ガスとする圧縮機ユニット(コンプレッサ)が設置される。圧縮機ユニット(コンプレッサ)の振動は、床20を経由して、装置架台17に伝達される。装置架台17とベースプレート18との間には除振機構19が配置されており、床の高周波数の振動は電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、真空試料室3などには伝達しにくいという特徴を持つ。
【0053】
従って、圧縮機ユニット(コンプレッサ)の振動が、床20を経由して、電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3に伝達しにくいという特徴を持つ。ここでは、床20の振動の原因として、冷凍機40及びコンプレッサを説明した。しかしながら、床20の振動の原因はこれに限定されるものではない。
【0054】
また、防振機構19は、防振ゴム、バネ、ダンパ、又は、これらの組合せによって構成されてよい。
【0055】
ここで、本実施例のガス電界電離イオン源のエミッタティップ21の構造及び作製方法を説明する。まず、直径が約100〜400μm、軸方位が<111>のタングステン線を用意し、その先端を鋭利に成形する。それによって、曲率半径が数10nmの先端を有するエミッタティップが得られる。このエミッタティップの先端に、別の真空容器でイリジウムを真空蒸着させる。次に、フィラメントに通電してエミッタティップを高温加熱して、イリジウム原子をエミッタティップの先端に移動させる。それによって、イリジウム原子によるナノメートルオーダのピラミッド型構造が形成される。以下、これをナノピラミッドと呼ぶことにする。ナノピラミッドは、典型的には、先端に1個の原子を有し、その下に3個又は6個の原子の層を有し、さらにその下に10個以上の原子の層を有する。
【0056】
なお、本例では、タングステンの細線を用いたがモリブデン細線を用いることもできる。また、本例では、イリジウムの被覆を用いたが、白金、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウム等の被覆を用いることもできる。ただし、本願は上述の例に限定されるわけでなく、他の作製方法も可能である。
【0057】
すなわち、エミッタティップの先端にナノピラミッドを形成する方法として、他に、真空中での電界蒸発、ガスエッチィング、イオンビーム照射、リモデリング法等を用いてもよい。このような方法によって、タングステン線、またはモリブデン線先端にタングステン原子、またはモリブデン原子のナノピラミッドを形成することができる。例えば<111>のタングステン線を用いた場合には、先端が1個または3個のタングステン原子で構成されるのが特徴となる。また、これとは別に、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウムなどの、細線の先端に真空中でのエッチング作用により同様なナノピラミッドを形成してもよい。これらの原子オーダの鋭利な先端構造をもつエミッタティップをナノティップと呼ぶことにする。
【0058】
上述のように、本実施例によるガス電界電離イオン源のエミッタティップ21の特徴は、ナノピラミッドにある。エミッタティップ21の先端に形成される電界強度を調整することによって、エミッタティップの先端の1個の原子の近傍でヘリウムイオンを生成させることができる。従って、イオンが放出される領域、即ち、イオン光源は極めて狭い領域であり、ナノメータ以下である。このように、非常に限定された領域からイオンを発生させることによって、ビーム径を1nm以下とすることができる。そのため、イオン源の単位面積及び単位立体角当たりの電流値は大きくなる。これは試料上で微細径・大電流のイオンビームを得るためには重要な特性である。
【0059】
なお、白金、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジュウム、ロジュウム、などを用いて、先端原子1個のナノピラミッドが形成された場合には、同様に単位面積・単位立体角から放出される電流すなわちイオン源輝度を大きくすることができ、イオン顕微鏡の試料上のビーム径を小さくしたり、電流を増大したりするのに好適となる。ただし、エミッタティップが十分冷却され、かつガス供給が十分な場合には、必ずしも先端を1個に形成する必要はなく、3個、6個、7個、10個などの原子数であっても十分な性能を発揮できる。特に、4個以上の10個未満の原子で先端を構成する場合には、イオン源輝度を高くでき、かつ先端原子が蒸発しにくく安定した動作が両立可能であることを本願発明者は見出した。
【0060】
図2は、図1に示した本発明によるイオン顕微鏡の制御装置の例を示す。本例の制御装置は、ガス電界電離イオン源1を制御する電界電離イオン源制御装置91、冷凍機4を制御する冷凍機制御装置92、非蒸発ゲッター材料の加熱機構および冷却機構などの温度制御装置191、集束レンズ5および対物レンズを制御するレンズ制御装置93、可動な第1アパーチャ6を制御する第1アパーチャ制御装置94、第1偏向器を制御する第1偏向器制御装置195、第2偏向器を制御する第2偏向器制御装置95、荷電粒子検出器11を制御する荷電粒子検出器制御装置96、試料ステージ10を制御する試料ステージ制御装置97、試料室真空排気用ポンプ13を制御する真空排気用ポンプ制御装置98、電子銃の制御装置192、試料台10、荷電粒子検出器11の電極等に電圧を印加する複数の電源194およびその制御装置193、および計算処理能力をもつ本体制御装置99を有する。本体制御装置99は演算処理部、記憶部、画像表示部等を備える。画像表示部は、荷電粒子検出器11の検出信号から生成された画像、及び、入力手段によって入力した情報を表示する。
【0061】
試料ステージ10は、試料9を試料載置面内にて直交2方向へ直線移動させる機構、試料9を試料載置面に垂直な方向への直線移動させる機構、及び、試料9を試料載置面内にて回転させる機構を有する。試料ステージ10は、更に、試料9を傾斜軸周りに回転させることによりイオンビーム14の試料9への照射角度を可変できる傾斜機能を備える。これらの制御は計算処理装置99からの指令によって、試料ステージ制御装置97によって実行される。
【0062】
図3に、図1に示した本発明によるイオン顕微鏡の試料室内部の様子を示す。対物レンズ8は、4個の電極201、202、203、204から構成されている。図4に静電レンズ電極間隔を模式的に示す。試料に最も近い電極201と、試料に2番目に近い電極202との第1の間隔s1が、試料に2番目に近い電極202と、試料に3番目に近い電極203との第2間隔s2、および 試料に3番目203に近い電極と、試料に4番目に近い電極204との第3間隔s3いずれに比べても1/10以下に小さく、さらに第2の間隔s2が第3間隔s3に比べて略同じまたは小さくなっている。ちなみに、略同じとは、後述する作用効果を奏する程度に近い値もしくは同じ値のことをいう。
【0063】
また、試料に最も近い電極201と試料との距離をWDとして、電極201の厚みをt1とすると、距離WDは第1の間隔s1と電極201の厚みt1を加えた距離よりも略同じまたは小さくなっている。
【0064】
また、WDは第2間隔s2に比べて、略同じまたは小さくなっている。さらには、第1の間隔s1は電極201の厚みt1よりも小さくなっている。
【0065】
ここで、図4Aでは各々の電極形状は、同じ穴径で平らなドーナッツ形円板となっており、電極間隔とは平行な円板距離である。しかし、レンズ電極形状は、同じ穴径を持つドーナッツ形円板でなくても、図4Bに示したように、各電極の穴径が異なっても良く、また、穴側面に図示の構造が形成されていても良い。
【0066】
また、平らなドーナッツ形円板でなくても図4Cに示したようなカップ型の形状でも良い。図4Cに示したような電極形状では、電極間隔としては、イオンビームが通過する穴の近傍の最も近い距離s2aと、レンズ電極の周辺での間隔s2bがある。静電レンズの収差を少なくして、さらに高電圧印加に対して放電を生じない安定した構造にするためには、s2aがs2bに比べて略同じか小さくすれば良いということが分かった。このため、本発明では、電極間の距離とは、電極間で最も接近する距離ではなく、イオンビームが通過する穴の近傍の最も近い距離とする。したがって、図4Cの電極202と電極203の間隔で、図示s2aとs2bを比べて、s2bが短くても、電極202と電極203の間隔はs2aとする。ただし、繰り返しになるがs2aはs2bに比べて、略同じか短いことが好ましい。同じく図4Cにおける電極203と電極204の間隔としては、s3aとs3bなどがあるが、電極203と電極204の間隔はs3aとする。
【0067】
なお、本実施例では、試料に最も近い電極201と、試料に2番目に近い電極202との第1の間隔は0.5mm、試料に2番目に近い電極202と、試料に3番目に近い電極203との第2間隔は5mm、および 試料に3番目203に近い電極と、試料に4番目に近い電極204との第3間隔は5mmとした。ただし、本発明は、これらの値に限定されるものではなく、後述する作用効果を奏する程度の値であればよい。本実施例のように、静電レンズの第一乃至第四の電極のうち、試料に最も近い第一の電極と、試料に2番目に近い第二の電極との第1の間隔が試料に2番目に近い前記第二の電極と、試料に3番目に近い第三の電極との第2間隔、及び試料に3番目に近い前記第三の電極と、試料に4番目に近い第四の電極との第3間隔のいずれに比べても1/10以下に小さくすると、特に低加速電圧イオンビーム照射する場合のイオンビーム径を最小にするのに好適となり、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、低い加速電圧でのイオンビーム照射にて試料構造寸法を計測する場合にも、高精度の寸法計測を実現できる。
【0068】
これは、従来の荷電粒子線カラムでは考慮されなかった条件で、ガス電界電離イオン源を用いる場合には、イオン源が高輝度であることおよび、イオンのエネルギー幅が小さいことから、電極の間隔を十分に考慮すれば極微小なビームを得ることを突き止めたのである。
【0069】
また、本実施例では、試料と試料に最も近い第一の電極との距離が、試料に最も近い第一の電極と、試料に2番目に近い第二の電極との第1の間隔と、試料に最も近い第一の電極の厚みを加えた距離以下となっている。このようにすると、特に、水素イオンやヘリウムイオン種で高加速電圧イオンビーム照射により、超高分解能観察を実現する一方で、低加速電圧イオンビーム照射により、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、加速電圧を変えてイオンビーム照射して、試料構造寸法を計測する場合にも、各々の加速電圧条件で、高精度の寸法計測を実現できる。
【0070】
また、試料材質によって加速電圧を変えてイオンビーム照射して微細加工する場合にも、各々の加速電圧条件で、極微細高速加工を実現できる。例えば、アルゴン、クリプトン、キセノンイオン種では特に高加速の加工が実現される。また、4個の電極により対物静電レンズを構成することにより、各電極の光学軸を精度良く一致させることが可能となり、極微細ビームを形成することができるようになった。
【0071】
また、本実施例では、試料と試料に最も近い第一の電極との距離が、試料から2番目に近い第二の電極と、試料に3番目に近い第三電極との第2の間隔に比べて小さくなっている。このようにすると、特に高加速電圧イオンビーム照射する場合にも、十分焦点距離を短くした上で、高電圧を印加して時の電圧安定性を確保することができる。すなわち、相対的に高い加速電圧でのイオンビーム径を最小にするのに好適となり、超高分解能観察を実現できる。また、試料構造に依存して、相対的に高い加速電圧でのイオンビーム照射にて試料構造寸法を計測する場合にも、高精度の寸法計測を実現できる。
【0072】
このように、試料と試料に最も近い第一の電極との距離との距離と、電極間の距離の関係については従来の荷電粒子線カラムでは考慮されなかった条件で、ガス電界電離イオン源を用いる場合には、イオン源が高輝度であることおよび、イオンのエネルギー幅が小さいことから、電極の間隔を十分に考慮すれば極微小なビームを得ることを、本願発明者はシミュレーション、ビーム径を評価する実験、および寸法計測実験などによって突き止めたのである。
【0073】
また、本実施例では、試料に3番目に近い第三の電極と、試料に4番目に近い第四の電極との第3間隔が、第四の電極の厚みに比べて小さくなっている。このようにすると、特に低加速電圧イオンビーム照射する場合のイオンビーム径を最小にするのに好適となり、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、低い加速電圧でのイオンビーム照射にて試料構造寸法を計測する場合にも、高精度の寸法計測を実現できる。
【0074】
従来の荷電粒子カラムおよびイオンビーム装置では、電極の厚みまで考慮してビーム性能を求めていなかったが、ガス電界電離イオン源の優れた性能に対応して考慮すると、特に第四の電極の厚みまで特徴づけると優れた性能が得られることを見出したのである。
【0075】
また、図3に図示するように、各々の電極は電気絶縁されており、各々、4個の高圧電源301、302、303、304から電圧を印加できる。ただし、4個の高圧電源のうち、高圧電源301と、高圧電源はない場合も本発明の効果は得られる。特に、静電レンズの2個の電極に異なる電圧を印加できる電源、あるいは2個の電源のみで構成する場合には、減らした電源分の装置コストを低減できるという効果を奏する。
【0076】
なお、荷電粒子検出器11は、その先端に電極206を備え、蛍光体207、および大気側に光電子増倍管208を備える。電子銃16は電子エミッタ209および電子照射電極210などから構成されている。電子エミッタ209および電子照射電極210も、各々電気絶縁されていて、2個の高圧電源309、310から電圧を印加できる。試料台10も電気絶縁されていて高圧電源305から電圧を印加できる。
【0077】
次に、図1等を用いて本例のガス電界電離イオン源の動作を説明する。ここでは、イオン化ガスは例えばヘリウムであるとして説明する。真空排気後、十分な時間が経過した後、冷凍機4を運転する。それによってエミッタティップ21が冷却される。まず、エミッタテフィップにイオンの加速電圧として、正の高電圧を印加する。次に、エミッタテフィップに対して負電位となるように引き出し電極24に高電圧を印加する。すると、エミッタティップの先端に強電界が形成される。ガス供給配管25から供給されたヘリウムが、強電界によってエミッタティップ面に引っ張られる。ヘリウムは、最も電界の強いエミッタティップ21の先端近傍に到達する。そこでヘリウムが電界電離し、ヘリウムイオンビームが生成される。ヘリウムイオンビームは、引き出し電極24の孔27を経由して、イオンビーム照射系に導かれる。
【0078】
次に、イオンビーム照射系の動作を説明する。イオンビーム照射系の動作は、本体制御装置99からの指令により制御される。ガス電界電離イオン源1によって生成されたイオンビーム14は、集束レンズ5、ビーム制限アパーチャ6、対物レンズ8、対物レンズと試料間の電極201を通過して、試料ステージ10上の試料9の上に照射される。まず、イオン光学条件は、イオン光源を試料上に結像する倍率を大電流が得られる条件(例えば0.5以上)とした。なお、荷電粒子検出器11からの信号は、輝度変調され、本体制御装置99に送られる。本体制御装置99は、走査イオン顕微鏡像を生成し、それを画像表示部に表示する。こうして、試料表面の観察が実現される。
【0079】
ここで、まず、試料のダメージを低減しつつ観察するため、イオン加速電圧は2kVとした。また、試料は、接地電位とした。そして、対物レンズの4個の電極の内、201、203、204は、接地電位とし、試料から2番目に近い電極202にイオンビームを試料上で集束するよう正の電圧を印加した。電極202の電圧値としては正の高電圧(1kV)となる。このときは、対物レンズの4個の電極の内、試料に最も近い電極201と、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203によって形成される電界によってイオンビームの軌道を制御して、試料上で集束させる作用を生じる。なお、試料に3番目に近い電極203に補助的に電圧を印加してイオンビームを試料上に集束すると、より高精度化することもできる。 ここで、試料に最も近い電極201と、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203との関係で、試料に2番目に近い電極202に対して、試料に最も近い電極201とが非対称位置に配置されていることが特徴となる。また、電極形状としては、電極201と電極202は略平坦となっており、電極202がより試料に近づくのに好適となっているとさらに良い。このときに、加速電圧を低加速(2kV程度)したときでも、対物レンズの主面を、試料に2番目に近い電極202付近に形成することができる。また、試料に2番目に近い電極202に印加する電圧も低いことから電極202を、電極201に近づけても十分信頼性を保つことができる。さらに、対物レンズの焦点距離を短くすることができるため、レンズの収差を少なくすることが可能である。すなわち、当該加速電圧2kVにおいても十分小さいビーム径(約1nm程度)が得られる。このことから、低加速電圧イオンビーム照射により、低損傷な観察を実現することができる。特には、加速電圧0.5kVにおいても十分小さいビーム径(約5nm程度)が得られが、さらに低い電圧では、ガス電界電離イオン源の調整が困難になることもわかった。
【0080】
次に、より詳細な観察をするために、高加速モード(イオン加速電圧50kV)の例を示す。試料は接地電位とした。そして、対物レンズの4個の電極の内、電極201、電極202、電極204は、接地電位とし、試料から3番目に近い電極203にイオンビームを試料上で集束するよう正の電圧を印加した。電極202の電圧値としては、低加速モードのときよりも相対的に高電圧な正の高電圧(40kV)となる。このときは、対物レンズの4個の電極の内、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203と、試料に4番目に近い電極204によって形成される電界によってイオンビームの軌道を制御して、試料上で集束させる。このときに、対物レンズの主面は、試料に3番目に近い電極203付近に形成される。すなわち、上記の加速電圧2kVのときの焦点距離に比べて長くなる。なお、試料に2番目に近い電極202に補助的に電圧を印加してイオンビームを試料上に集束すると、より高精度化することもできる。このときの焦点距離は若干変わるが、上記の効果を奏することができる。ここで、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203、試料に4番目に近い電極204との関係で、試料に2番目に近い電極202に対して、試料に4番目に近い電極204とが対称位置に配置されていることが特徴となる。また、電極形状としては、電極203は他の電極に比べて厚く、かつ、中心に向かって傾斜構造をもっており、いわゆるバトラー型レンズとすれば、球面収差が少なくするという効果をさらに有する。この構成は、特に大電流のイオンビームを照射するのにビームの制限開き角を大きくした時にレンズ収差を少なくするのに好適である。また、上記で述べたように電極201と電極202が平坦な構造を持ち、バトラー型の特徴を持つ電極203、電極204とすれば、本実施例の効果をもたらすのに非常に好適である。
【0081】
特に、前記第一の加速電圧が0.5kV以上で2kV以下であり、第二の加速電圧が40kV以上で100kV以下とすると、0.5kVから2kVの加速電圧では、特に低損傷の観察が可能になり、40kVから100kVの加速電圧では、特に高加速加工が可能になる。さらに特筆するべきは、水素やヘリウムを用いた場合には、スパッタ率がさがるため特に表面の構造変化が少ない観察が可能になることを見出したのである。
【0082】
また、電極202、電極203、電極204は、その間隔を十分にとっているため高電圧40kVの印加に対しても十分な信頼性を持ち、さらに、試料に3番目に近い電極203を、試料に2番目に近い電極202に十分近づけることによって、レンズの収差を少なくすることが可能となる。すなわち、高加速モード(加速電圧100kV)においても極小のビーム径として約0.1nmが得られる。このことから、高加速電圧イオンビーム照射により、超高分解能観察を実現できる。しかしながら、100kVを超えると、このような構造の静電レンズでは十分な信頼性を得られないこともわかった。 ここで、イオン加速電圧50kVとしたときの超高分解能を強調したが、イオン種として水素や、ヘリウムを用いた場合には、試料材質によっては、スパッタリング率が低下するという場合もある。また、試料中に入射したイオンの存在分布の広がりが大きく、局所的なダメージが少なくなるということがわかった。すなわち、高加速電圧にすると低損傷観察あるいは、低損傷で超高精度寸法計測が実現できる場合もあることがわかった。
【0083】
なお、本実施例では、ヘリウムガスについて述べたが、水素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど、その他のガスでも本発明は適用可能である。相対的に小さい質量数の水素、ヘリウムを用いるとイオンビームで試料極表面の観察に好適となり、相対的に大きい質量数のネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いるとイオンビームで試料を加工すること好適となる。
【0084】
ここで、特に相対的に大きい質量数のネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いたときに、例えば20kV以上の高加速電圧を印加して試料に照射した場合には、特にスパッタリング率が向上して高速の加工が実現できる。また、試料材質によっては、3kV程度の加速電圧を印加して試料に照射すれば、損傷を少なくして加工することができる。
【0085】
以上で述べた、相対的に高い加速電圧(高加速モード)を用いる場合の対物レンズに印加する電圧等の条件、および相対的に低い加速電圧(低加速モード)を用いる場合の対物レンズに印加する電圧等の条件は、本体制御装置99に記憶されており、イオンビーム照射の目的および試料構造・材質などに応じて、適した条件を呼び出して観察・加工・計測する。特に、一枚のウエハに対して異なる条件の2つ以上を記憶しておくと、短時間で高精度に切り替えて計測でき、計測のスループットを向上できるという効果を奏する。
【0086】
また、特に、本実施例では4個の電極により対物静電レンズを構成することにより、各電極の光学軸を精度良く一致させることが可能となった。すなわち、各電極の中心軸の違いを大きくても20マイクロメートル以内に調整して構成すると収差を少なくすることができた。このことにより、極微細ビームを形成することが可能になった。ただし、電極数を4個以上にしても、本発明の効果が得られるような電極構成とすれば、電極の数を補助的に加えても本発明の思想の範疇に含まれることはいうまでもない。
【0087】
なお、本実施例ではレンズ電極に正の高電圧を印加したが、負の高電圧を印加しても良い。このときには、印加する電圧の絶対値が高くなるが、収差をさらに少なくできるという効果を奏する。
【0088】
以上述べたように、本実施例では、ガスイオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーを変えて照射することが可能となる。そして、少なくとも2つの異なる加速電圧に対して、イオンビームを試料上で集束させたときに、4個の電極からなる静電レンズの焦点距離が異なるようにすることで、各々の加速電圧に対して静電レンズの収差を少なくすることが可能となる。すなわち、各加速電圧で、試料上のビーム径を小さくすることができる。
【0089】
このことにより、高加速電圧イオンビーム照射により、超高分解能観察を実現する一方で、低加速電圧イオンビーム照射により、低損傷観察を実現できる。
【0090】
また、試料構造に依存して、加速電圧を変えてイオンビーム照射して、試料構造寸法を計測する場合にも、各々の加速電圧条件で、高精度の寸法計測を実現できる。また、試料材質によって加速電圧を変えてイオンビーム照射して微細加工する場合にも、各々の加速電圧条件で、極微細高速加工を実現できる。本発明によると以上のような効果を奏する。
【0091】
また、本実施例では、少なくとも2つの異なる加速電圧に対して、イオンビームを試料上で集束させたときに、相対的に低い第一の加速電圧をエミッタティップに印加したときに静電レンズの4個の電極のうちで、試料に相対的に近い電極Aに、絶対値が最も高い電圧を印加して、相対的に高い第二の加速電圧を印加したときに、前記静電レンズの4個の電極のうちで、試料から相対的に遠い電極Bに、絶対値が最も高い電圧を印加すると、各々の加速電圧に対して静電レンズの収差を少なくすることが可能となる。すなわち、各加速電圧で、試料上のビーム径を小さくすることができる。
【0092】
以上述べたように、本実施例では、設定する条件ごとに高分解能観察、低損傷観察、高精度寸法計測や極微細高速加工を実現できるという効果を奏する。
【実施例2】
【0093】
次に図5および図6を参照して、本発明によるイオンビーム装置の一例を説明する。図5では、図1に示したイオンビーム装置の冷却機構4の一例について詳細に説明する。本例の冷却機構4は、ヘリウム循環方式を採用している。図6は、図5に示したイオンビーム装置の試料室内部の対物レンズおよび周辺の一例について詳細に説明する。本例では、試料に対向して、試料に最も近い静電レンズである対物レンズ8と試料の間に第1の電極211を設けた。また、ガスを供給するガス供給手段が、少なくとも2種類のガスを供給することが可能で、相対的に質量数の小さいガスと相対的に質量数の大きいガスを供給できる。
【0094】
次に図5を参照して、本発明によるイオンビーム装置の一例を説明する。本図では、図1に示したイオンビーム装置の冷却機構4の一例について詳細に説明する。本例の冷却機構4は、ヘリウム循環方式を採用している。
【0095】
本例の冷却機構4は、冷媒となるヘリウムガスをGM型冷凍機401および熱交換器402、406、407、408を用いて冷却して、これを圧縮機ユニット400により循環させる。コンプレッサ403で加圧された例えば0.9MPaの常温の温度300Kのヘリウムガスは配管409を通じて熱交換器402に流入し、後述する戻りの低温のヘリウムガスと熱交換して温度約60Kに冷却される。冷却されたヘリウムガスは断熱されたトランスファーチューブ404内の配管403を通じて輸送され、ガス電界電離イオン源1近くに配置された熱交換器405に流入する。
【0096】
ここで、熱交換器405に熱的に一体化された熱伝導体406を温度約65Kに冷却し、前記した輻射シールド等を冷却する。加温されたヘリウムガスは熱交換器405を流出し配管407を通じて、GM型冷凍機401の第1冷却ステージ408に熱的に一体化された熱交換器409に流入し、温度約50Kに冷却され、熱交換器410に流入する。後述する戻りの低温のヘリウムガスと熱交換して温度約15Kに冷却され、そののち、GM型冷凍機401の第2冷却ステージ411に熱的に一体化された熱交換器412に流入し、温度約9Kに冷却され、トランスファーチューブ404内の配管413を通じて輸送され、ガス電界電離イオン源1近くに配置された熱交換器414に流入し、熱交換器414で熱的に接続された良熱伝導体の冷却伝導棒53を温度約10Kに冷却する。
【0097】
熱交換器414で加温されたヘリウムガスは配管415を通じて熱交換器410、402に順次流入し、前述のヘリウムガスと熱交換してほぼ常温お温度約275Kになって、配管415を通じて圧縮機ユニット400に回収される。なお、前述した低音部は真空断熱容器416ないに収納され、トランスファーチューブ404とは、図示していないが断熱的に接続されている。また、真空断熱容器416内において、図示していないが低温部は輻射シールド板や、積層断熱材等により室温部からの輻射熱による熱侵入を防止している。
【0098】
また、トランスファーチューブ404は床20または床20に設置された支持体417に強固に固定支持されている。ここで、図示していないが熱伝導率が低い断熱材であるガラス繊維入りのプラスチック製に断熱体でトランスファーチューブ404の内部で固定支持された配管403、407、413、415も床20で固定支持されている。また、ガス電界電離イオン源1近くにおいて、トランスファーチューブ404は、ベースプレート18に支持固定されており、同様にここで、図示していないが熱伝導率が低い断熱材であるガラス繊維入りのプラスチック製に断熱体でトランスファーチューブ404の内部で固定支持された配管403、407、413、415もベースプレート18で固定支持されている。
【0099】
すなわち、本冷却機構は、圧縮機ユニット40で発生させた第1の高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、この寒冷発生手段の寒冷で冷却し、圧縮機ユニット400で循環する第2の移動する冷媒であるヘリウムガスで被冷却体を冷却する冷却機構である。
【0100】
冷却伝導棒53は変形可能な銅網線54およびサファイアベースを経てエミッタティップ21に接続される。これによりエミッタティップ21の冷却が実現する。この実施例では、GM型冷凍機は床を振動させる原因になるが、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、真空試料室3などはGM冷凍機とは隔離されて設置されており、さらにガス電界電離イオン源1近傍に設置した熱交換器405、414に連結された配管403、407、413、415は殆ど振動しない床20やベース18に強固に固定支持されて振動せず、さらに床から振動絶縁されているため機械振動の伝達の極めて少ないシステムとなることが特徴である。
【0101】
図6に、図5に示した本発明によるイオン顕微鏡の試料室内部の様子を示す。対物レンズ8は、4個の電極201、202、203、204から構成されている。各々の電極は電気絶縁されており、各々、4個の高圧電源301、302、303、304から電圧を印加できる。また、荷電粒子検出器11、電子銃16などを備える。また、対物レンズと試料の間に配置された電極211は、対物レンズの電極で最も試料に近い電極201の下部を包むような形状で、これも他の電極および接地電位とは電気絶縁されていて高圧電源306から電圧を印加できる。
【0102】
まず、ガス電界電離イオン源1およびイオンビーム照射系の動作は、実施例1で記述したイオンビーム装置と同じである。ただし、ガスを供給するガス供給手段が、少なくとも2種類のガスを供給することが可能で、相対的に質量数の小さいガスと相対的に質量数の大きいガスを供給できる。また、ガス電界電離イオン源、イオンビーム照射系、および試料から放出された信号検出・画像表示等も実施例1の装置と同じく本体制御装置99からの指令により制御される。次に、試料室内部の対物レンズ、電極、荷電粒子検出器などの動作について説明する。
【0103】
まず、試料への損傷を少なくして観察する場合について説明する。ガスは相対的に質量数の小さいヘリウムを選択した。試料に照射されるイオンエネルギーを低減するため、イオン加速電圧は8kVとするが、試料には、正の4kVを印加しておく。そして、対物レンズと試料の間に配置された電極211に試料と同じ電圧である正の4kVを印加する。また、レンズ電極201にも試料と同じ電圧である正の4kVを印加する。ここで、電極211とレンズ電極201は試料上部の空間を真空チャンバなどの接地電位からの電場をほぼ遮断する働きをしており、対物レンズと試料の間に配置された電極211の電位とレンズ電極201の電位でほぼ決定される。このようにすると、試料から放出された二次電子の多くを荷電粒子検出器11によって検出できるようになる。
【0104】
さらに、本発明では、対物レンズと試料の間の電極211および対物レンズ電極201に、試料電圧に比べて小なる電圧を印加して、荷電粒子検出器と反対方向に飛び出した二次電子を追い返して、そのほとんどを荷電粒子検出器で検出できるようにした。すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることに成功した。また、このときに荷電粒子検出器の先端の電極206には、試料に印加した正の電圧よりも大なる電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることができた。
【0105】
すなわち、試料から放出された二次電子が、荷電粒子検出器の先端の電極206が作る電場により荷電粒子検出器の方向に加速されるため、二次電子の捕集効率が特に高くなる。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。このとき、再度、対物レンズと試料の間の電極211および対物レンズ電極201の電圧を調整すると、二次電子捕集効率を増大できる場合もある。
【0106】
対物レンズの4個の電極の内、203、204は、接地電位とし、試料から2番目に近い202電極にイオンビームを試料上で集束するように正の高電圧を印加した。このときは、対物レンズの4個の電極の内、試料に最も近い電極201と、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203、電極211、および試料によって形成される電界によってイオンビームの軌道を制御して、試料上で集束させる。なお、試料に3番目に近い電極203に補助的に電圧を印加してイオンビームを試料上に集束しても良い。
【0107】
ここで、試料に最も近い電極201と、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203との関係で、試料に2番目に近い電極202に対して、試料に最も近い電極201とが非対称位置に配置されていることが特徴となる。加速電圧が8kVと低く、試料に2番目に近い電極202に印加する電圧も低い。このため、電極202を、電極201に近づけても十分信頼性を保つことができ、さらに対物レンズの焦点距離を短くすることができるため、レンズの収差を少なくすることが可能となる。すなわち、当該加速電圧8kV、イオンエネルギー4kVにおいても十分小さいビーム径として約0.5nmが得られる。このことから、低加速電圧イオンビーム照射により、低損傷観察を実現できる。
【0108】
以上、本実施例によると、前記試料に正の電圧を印加することにより試料を照射するイオンエネルギーを低くでき、試料のダメージが少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。さらに、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーが高いため、イオンレンズの収差が小さくなり、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。さらに、対物レンズと試料との間に電極211を設け、同電極211と対物レンズ電極201と、試料に印加する正の電圧とは異なる電圧を印加して二次電子の軌道を制御することにより二次電子の捕集効率が高くなるため、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。
【0109】
これは、観察時間の短縮やスループットの向上をも可能とする。特に、イオンの照射エネルギーを5kV以下にしても、寸法計測の精度を0.5nm以下にできることがわかった。なお、電極211と対物レンズ電極201には、必ずしも同じ電圧を印加する必要がなく、異なる電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化しても良い。また、電極211と対物レンズ電極201を一体化した構造としても良い。すなわち、一体化した電極に、試料電圧に比べて小なる電圧を印加して二次電子の捕集効率を最大化しても良い。
【0110】
また、対物レンズと試料の間の電極211の形状が、平な板状であるよりも、本実施例のように試料のイオンビーム照射位置を略囲う形状であることにより二次電子捕集効率を高められることを、本願発明者は見出したのである。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。すなわち、単純に平板を対物レンズと試料の間に配置して、試料と同じ電圧を印加しても、平板の脇から入り込む接地電位の影響により二次電子捕集効率は低下してしまうのである。
【0111】
また、対物レンズと試料の間の電極211と対物レンズ電極201の形状が、試料のイオンビーム照射位置を略囲う形状であり、少なくともどちらかの電極が、少なくとも透磁率100以上の材料により構成されることにより、試料近傍の磁場交流ノイズを低減することにより、イオンビームを微細化できることがわかった。
【0112】
また、試料ステージ10近傍に、磁場を発生するコイルまたは磁石を配置して、試料から放出される二次電子を前記荷電粒子検出器方向に加速するようにすると、二次電子捕集効率をさらに高められることがわかった。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
【0113】
また、荷電粒子検出器11の蛍光体207に印加する電圧、対物レンズ電極201、対物レンズと試料の間の電極211に印加する電圧と、荷電粒子検出器の前段に配置した電極206に印加する電圧とのいずれかが、試料9に印加する電圧に連動させて制御できるようにすると、試料電圧を変化させても最適な二次電子捕集条件を容易に再現できることとがわかった。特に、前記試料に印加する電圧を変化させて、イオンエネルギーを変える場合にも、二次電子の捕集効率を最適に保ったり、二次電子の検出感度を一定にできたりするという効果を奏する。
【0114】
また、電子銃16の電子エミッタ209に印加する電圧を試料9に印加する電圧に比べて小なる正の電圧を印加して、電子照射電極210には、電子エミッ209に印加する電圧よりも大とすることで、試料に電子ビームを照射することができ、試料が絶縁物で帯電した場合にはこれを中和することにより良好に試料観察が可能になることがわかった。さらに、対物レンズと試料の間の電極211に印加する電圧と比べておおよそ同じか、もしくは小なる正の電圧を電子照射電極210印加することによって、二次電子の捕集効率を高められることがわかった。すなわち、特に、試料が絶縁物の場合にも試料の帯電状態を電子ビーム照射によって制御できるため、絶縁物の観察や寸法計測が可能になるという効果を奏する。
【0115】
また、ガス電界電離イオン源、イオンビーム照射系および試料室などの真空チャンバ材質を磁性材料で構成させ外部磁気をシールドするとイオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。
【0116】
また、本実施例に示したように、ガス電界電離イオン源のエミッタティップをナノピラミッドで構成すると、極微小なビーム径で、電流が大きいというイオンビームが得られるため、高信号/ノイズ比で超高分解能の試料観察像が得られ、かつ試料観察像にゆれなどをなくすことができるという効果を奏する。
【0117】
さらに、前記ガス電界電離イオン源を搭載したイオンビーム装置において、イオン光源を試料に投影する倍率が少なくとも0.5以上であることを特徴とする荷電粒子線装置とすると、特に、イオンビーム電流が大きくなり、前記ガス電界電離イオン源から放出されたイオンビームを走査して試料に照射して、試料から放出される二次粒子を検出して試料観察像を得るイオンビーム装置とすると、高信号/ノイズ比で超高分解能の試料観察像が得られ、かつ試料観察像にゆれなどをなくすことができるという効果を奏する。
【0118】
さらに、別の真空装置でエミッタティップからのイオン放出パターンを観察して、エミッタティップの傾斜方向を精密に調整しておき、次に本実施例装置に導入すれば、エミッタティップの傾斜を変える傾斜機構を省略するか、あるいは、傾斜範囲を小さくすることができる。このことによりイオン源構造を単純化できる、ひいては低コストの装置を実現できるという効果を奏する。
【0119】
さらに、以上の実施例によると、上記したガス電界電離イオン源において、エミッタティップの先端を原子で構成されるナノピラミッドとすることにより、イオン化領域が制限されるため、より高輝度のイオン源が形成され、より高分解能の試料観察ができるという効果を奏する。また、このときには全イオン電流はより少なくなるので、イオン化ガスを循環利用することで、イオン化ガスの利用効率がより高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
【0120】
さらに、本発明のガス電界電離イオン源およびイオンビーム装置によれば、冷却機構からの振動は、エミッタティップに伝達されにくく、エミッタベースマウントの固定機構が備えられているためエミッタティップの振動が防止され高分解能観察が可能となる。
【0121】
更に、本願の発明者は、圧縮機ユニット40又は圧縮機ユニット400の音が電界電離イオン源1を振動させてその分解能を劣化させることを突き止めた。そのため、本例では、コンプレッサと電界電離イオン源を空間的に分離するカバー417を設けた。これにより、コンプレッサの音に起因した振動の影響を低減することができる。それによって、高分解能観察が可能となる。
【0122】
また、本実施例の場合、圧縮機ユニット400を用いて第2のヘリウムガスを循環させたが、図示しないが流量調整弁を介して、圧縮機ユニット40の配管111、112と、それぞれ流量調整弁を介して、配管409、416を連通し、配管409内に圧縮機ユニット40の一部のヘリウムガスを第2のヘリウムガスとして循環ヘリウムガスを供給し、配管416でガスを圧縮機ユニット40に回収しても、同様な効果を生じる。
【0123】
また、本例では、圧縮機ユニット40及び圧縮機ユニット400としてGM型冷凍機を用いたが、その代わりに、パルス管冷凍機、又はスターリング型冷凍機を用いてもよい。また、本例では、冷凍機は、2つの冷却ステージを有するが、単一の冷却ステージを有するものでもよく、冷却ステージの数は特に限定されるものではない。例えば、1段の冷却ステージを持つ小型のスターリング型冷凍を用いて、最低冷却温度を50Kとしたヘリウム循環冷凍機とすれば、コンパクトで低コストのイオンビーム装置を実現できる。また、この場合には、ヘリウムガスの代わりにネオンガスや水素ガスを用いてもよい。
【0124】
また、本実施例の場合に、走査イオン像取得時に、ヘリウム圧縮機400を停止させると、走査イオン像の振動ノイズが減少して、鮮明で分解能の高い画像がえられることを見出した。この場合に、イオンエミッタの温度が大きな電流変化をもたらさない間に、ヘリウム圧縮機400を駆動させてヘリウムを循環させて、温度を低下させる。この方法によれば、走査イオン像取得時に冷凍機の動作を停止させるよりも簡便にノイズ低減効果が生じることを見出した。さらに、ヘリウム圧縮機と、冷凍機の動作の両者を停止させる、さらにノイズが減少して、鮮明で分解能の高い画像がえられることを見出した。
【0125】
次に、本実施例において微細な加工をする場合について説明する。ガスは相対的に質量数の大きいキセノンを例として選択した。まず、イオン加速電圧は相対的に高加速(20kV)とした。また、試料は、負の高電圧5kVを印加した。すなわちイオンのエネルギーは25kVとなる。そして、対物レンズの4個の電極の内、202、204は、接地電位とし、試料から3番目に近い203電極にイオンビームを試料上で集束するように正の高電圧15kVを印加した。このときは、対物レンズの4個の電極の内、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203と、試料に4番目に近い電極204、電極211、および試料によって形成される電界によってイオンビームの軌道を制御して、試料上で集束させる。このときに、対物レンズの主面は、試料に3番目に近い電極203付近に形成される。すなわち、上記の加速電圧が相対的に低加速(8kV)のときの焦点距離に比べて長くなる。なお、試料に2番目に近い電極202に補助的に電圧を印加してイオンビームを試料上に集束すると、より高精度化することもできる。このときの焦点距離は若干変わるが、上記の効果を奏することができる。なお、このようにすることで、安定した高電圧印加と収差を少なくすることを両立できる。
【0126】
ここで、試料に2番目に近い電極202、試料に3番目に近い電極203、試料に4番目に近い電極204との関係で、試料に2番目に近い電極202に対して、試料に4番目に近い電極204とが対称位置に配置されていることが特徴となる。これらの電極は、その間隔を十分にとっているため高電圧15kVの印加に対しても十分な信頼性を持ち、さらに、試料に3番目に近い電極203を、試料に2番目に近い電極202に十分近づけることによって、レンズの収差を少なくすることが可能となる。すなわち、当該加速電圧20kVにおいても極小のビーム径(約0.4nm)が得られる。このことから、高加速電圧イオンビーム照射により、高速微細加工を実現できる。
【0127】
そして、対物レンズと試料の間に配置された電極211に試料と同じ電圧である負の高電圧5kVを印加する。また、レンズ電極201にも試料と同じ電圧である負の高電圧5kVを印加する。ここで、電極211とレンズ電極201は試料上部の空間を真空チャンバなどの接地電位からの電場をほぼ遮断する働きをしており、対物レンズと試料の間に配置された電極211の電位とレンズ電極201の電位でほぼ決定される。このようにすると、試料から放出された二次電子の多くを荷電粒子検出器11によって検出できるようになる。
【0128】
さらに、本発明では、対物レンズと試料の間の電極211および対物レンズ電極201に、試料電圧に比べて低い電圧を印加して、荷電粒子検出器と反対方向に飛び出した二次電子を追い返して荷電粒子検出器で検出できるようにした。これにより、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることに成功した。また、このときに荷電粒子検出器の先端の電極206には、正の電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることができた。すなわち、試料から放出された二次電子が、荷電粒子検出器の先端の電極206が作る電場により荷電粒子検出器の方向に加速されるため、二次電子の捕集効率が特に高くなる。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を更に高めて観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
【0129】
また、以上で述べた、相対的に質量数の小さいガスイオンに、相対的に低い加速電圧を印加する場合(低加速モード)の対物レンズに印加する電圧、および試料電圧等の条件、および相対的に質量数の大きいガスイオンに、相対的に高い加速電圧(高加速モード)を印加する場合の対物レンズに印加する電圧および試料電圧等の条件は、本体制御装置99に記憶されており、イオンビーム照射の目的および試料構造・材質などに応じて、適した条件を呼び出して観察・加工・計測する。
【0130】
このようにすると、ガスイオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーを変えて照射することが可能となり、上記実施例1で述べた効果と同じように、設定条件に応じて、超高分解能観察・低損傷観察・高精度寸法計測および極微細高速加工を実現できるという効果を奏する。さらに、相対的に質量数の小さいガスイオンに、相対的に低い第一の加速電圧を印加した場合には、試料のダメージが相対的に少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。一方、相対的に質量数の大きいガスイオンに、相対的に高い第二の加速電圧を印加した場合には、試料のスパッタリング効率を相対的に高くでき、試料を加工する速度を高くすることができる。すなわち、極微細高速加工を実現できるという効果を奏する。
【0131】
なお、相対的に質量数の小さいガスとしては、水素、ヘリウム、相対的に質量数の大きいガスとしては、ネオン、アルゴン、酸素、窒素、クリプトン、キセノンなどがあるが、これらの元素に限定されるものではない。
【0132】
また、特に、本実施例では4個の電極により対物レンズを構成することにより、各電極の光学軸を精度良く一致させることが可能となった。すなわち、各電極の中心軸の違いを10マイクロメートル以内に調整して構成して収差を少なくすることができた。このことにより、極微細ビームを形成することが可能になった。ただし、電極数を4個以上にしても、同様な電極構成とすれば、本発明の効果は得られる。電極の数を補助的に加えても本発明の権利範囲から逃れられることはない。
【0133】
また、上記で述べたように対物レンズ4個の電極のうち少なくとも3個の電極に、異なった3種の電圧を印加可能な電源を設けることにより、少なくとも2種類の加速電圧に対して、安定した高電圧印加と収差を少なくすることを両立できる。また、2個の電源のみで構成する場合に比べて、装置コストは高くなるが、ビーム径を小さくする条件を最適化できるという効果を奏する。
【0134】
さらに、静電レンズ4個の電極のうち4個の全ての電極に、異なった4種の電圧を印加可能な電源を設ければ、少なくとも2種類の加速電圧に対して、安定した高電圧印加と収差を少なくすることを両立できる。また、2個の電源のみで構成する場合に比べて、装置コストは高くなるが、ビーム径を小さくする条件を最適化できるという効果を奏する。
【0135】
なお、本実施例ではレンズ電極に正の高電圧を印加したが、負の高電圧を印加しても良い。このときには、印加する電圧の絶対値が高くなるが、収差をさらに少なくできるという効果を奏する。
【0136】
以上述べたように、本実施例では、ガスイオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーを変えて照射することが可能となる。そして、少なくとも2つの異なる加速電圧に対して、イオンビームを試料上で集束させたときに、4個の電極からなる静電レンズの焦点距離が異なるようにすることで、各々の加速電圧に対して静電レンズの収差を少なくすることが可能となる。すなわち、各加速電圧で、試料上のビーム径を小さくすることができる。このことにより、高加速電圧イオンビーム照射により、超高分解能観察を実現する一方で、低加速電圧イオンビーム照射により、低損傷観察を実現できる。また、試料構造に依存して、加速電圧を変えてイオンビーム照射して、試料構造寸法を計測する場合にも、各々の加速電圧条件で、高精度の寸法計測を実現できる。また、試料材質によって加速電圧を変えてイオンビーム照射して微細加工する場合にも、各々の加速電圧条件で、極微細高速加工を実現できる。本発明によると以上のような効果を奏する。
【0137】
また、本実施例では、少なくとも2つの異なる加速電圧に対して、イオンビームを試料上で集束させたときに、相対的に低い第一の加速電圧をエミッタティップに印加したときに静電レンズの4個の電極のうちで、試料に相対的に近い電極Aに、絶対値が最も高い電圧を印加して、相対的に高い第二の加速電圧を印加したときに、前記静電レンズの4個の電極のうちで、試料から相対的に遠い電極Bに、絶対値が最も高い電圧を印加すると、各々の加速電圧に対して静電レンズの収差を少なくすることが可能となる。すなわち、各加速電圧で、試料上のビーム径を小さくすることができる。
【0138】
このようにすると、ガスイオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーを変えて照射することが可能となり、上記実施例1で述べた効果と同じように、設定条件に応じて、超高分解能観察・低損傷観察・高精度寸法計測および極微細高速加工を実現できるという効果を奏する。さらに、試料に対向して、試料に最も近い静電レンズと試料の間に第1の電極を設け、試料に印加する正の電圧とは異なる電圧を印加して二次電子の軌道を制御することにより二次電子の捕集効率が高くなるため、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。これは、観察時間の短縮やスループットの向上をも可能とする。本発明によると以上のような効果を奏する。
【0139】
また、本実施例に示したように、エミッタティップに少なくとも2つの異なる電圧を印加可能な加速電源、および引き出し電極に電圧を印加する電源、前記静電レンズに電圧を印加する電源、試料に電圧を印加する電源を備えており、異なる加速電圧に対して、前記引き出し電極電圧、前記静電レンズ電極電圧、試料電圧の少なくとも2種類の値を記憶する制御装置を備えて、試料に応じて制御装置に記憶された条件を呼び出して、試料表面の構造寸法を計測するイオンビーム装置とすると、ガスイオンビームにより試料表面の構造寸法を計測する際に、水素またはヘリウムのいずれかを含む2種類以上のガスから計測に適したガスを選択することができ、さらに加速電圧を変えて照射することが可能となる。試料構造や試料材質によって、試料損傷が相対的に少ない条件で、あるいは寸法計測精度が相対的に高い条件で試料表面の構造寸法を計測できるという効果を奏する。
【0140】
また、本実施例のイオンビーム装置で試料表面の構造寸法を計測した結果を用いて、デバイス製造プロセスを管理するシステムを構築すれば、デバイス製造の歩留まりが向上する、あるいは、より微細なデバイスを製造可能となるという効果を奏する。
【実施例3】
【0141】
次に、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源を用いて、試料表面、試料加工、および試料内部の観察を駆使した複合的な試料解析が可能なイオンビーム装置について、図7を用いて説明する。なお、実施例1、2と重複する内容についての説明は省略する。
【0142】
本実施例のイオンビーム装置は、エミッタティップ21の先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源501、ハイブリッド粒子源の冷却機構4、真空ポンプ12、電子ビームおよびイオンビームを試料に照射するハイブリッド照射系502、試料台503、試料9から放出される二次電子を検出する二次電子検出器304、および試料を透過した荷電粒子を結像する光学系505、検出器506、真空ポンプ13などからなる。なお、本装置で冷却機構4は液体窒素および固体窒素を冷媒とする冷却機構とした。
【0143】
ここでは、エミッタティップには、正の高電圧、および負の高電圧電源のいずれかを選択して接続可能である。すなわち、正の高電圧を印加した場合には正のイオンビーム、負の高電圧を印加した場合には、電子ビームをエミッタティップから引き出すことができる。また、ハイブリッド粒子源には、少なくとも2種類以上のガスが導入可能である。すなわち、水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つを加えた少なくとも2種類のガス種を導入可能である。
【0144】
本イオンビーム装置では、エミッタティップからネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームを引き出し、これを試料に照射して試料を加工できる。また、該針状のエミッタティップから水素、ヘリウムのいずれか一つのイオンビームを引き出し、試料表面を観察することができる。また、該針状のエミッタティップから電子を引き出し、これを試料に照射して試料を透過した電子を結像することにより試料内部情報を得ることができる。これにより、試料を大気に暴露することなく、試料の複合的な解析が可能になる。
【0145】
本実施例では、対物レンズ8は、4個の電極201、電極202、電極203、電極204から構成されている。各々の電極は電気絶縁されており、各々、4個の高圧電源301、302、303、304から電圧を印加できる。また、対物レンズと試料との間の電極211は試料9を内部に含む構造である。
【0146】
まず、試料に照射されるイオンエネルギーを低減するため、試料には、正の5kVを印加しておく。そして、対物レンズと試料の間に配置された電極211に試料と同じ電圧である正の5kVを印加する。ここで、電極211は試料周囲の空間を真空チャンバなどの接地電位からの電場をほぼ遮断する働きをしており、対物レンズと試料の間に配置された電極211の電位でほぼ決定される。このようにすると、試料から放出された二次電子の多くを荷電粒子検出器11によって検出できるようになる。さらに、本発明では、電極211に試料電圧に比べて低い電圧を印加して、荷電粒子検出器と反対方向に飛び出した二次電子を追い返して、そのほとんどを荷電粒子検出器で検出できるようにした。
【0147】
すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることに成功した。また、このときに荷電粒子検出器の先端の電極206には、試料に印加した正の電圧よりも大なる電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることができた。すなわち、試料から放出された二次電子が、荷電粒子検出器の先端の電極206が作る電場により荷電粒子検出器の方向に加速されるため、二次電子の捕集効率が特に高くなる。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。このとき、再度、対物レンズと試料の間の電極211および対物レンズ電極203の電圧を調整すると、二次電子捕集効率を増大できる場合もある。
【0148】
なお、以上のように二次電子捕集効率が最大の条件で、イオンビームが試料上で集束するように、言い換えるならば、像分解能が最も高くなるように対物レンズに印加する電圧を調整する。本実施例では、試料9が電極211に包まれるように配置されるため、特に二次電子捕集効率が大きくなるという効果を奏する。
【0149】
また、本実施例では、集束レンズと対物レンズの間に、荷電粒子変換板311を配置した。本荷電粒子変換板311は、試料から放出された荷電粒子が衝突したときに二次電子を放出する。このため、二次電子放出効率を高くするように、その表面は小さくとも原子番号50以上の元素で構成される。例えば、タンタルや、タングステンで構成されたり、金、白金などの薄膜を板材に貼り付けたりしたものである。
【0150】
ここで、イオンビームの加速電圧は10kVとして、試料には、正の5kVを印加する。すなわち、イオンエネルギーは5kVとなる。また、対物レンズの電極202には7kVを印加して試料に集束させる。そして、電極211に試料よりも低い電圧である正の3kVを印加する。こうすると、試料にから放出された二次電子のほとんどは試料に戻る。しかし、照射したイオンが、試料表面に衝突して、対物レンズ方向に反射されたイオンは、電極211および対物レンズ8を通過して、一部は荷電粒子変換板311に衝突する。ここで、発生した二次電子を上部荷電粒子検出器312で検出する。すると、反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、試料表面の元素種に係わる情報が含まれる。
【0151】
次に、そして、電極211に試料よりも高い電圧である正の5.1kVを印加する。こうすると、試料にから放出された二次電子の一部は、電極211および対物レンズ8を通過する。通過した二次電子を上部荷電粒子検出器312で検出する。すると、今度は二次電子強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、主に試料表面の立体構造に係わる情報が含まれる。これら2種類の像、すなわち反射イオン像と二次電子像を本体制御装置99に記憶させて、2種類の像を演算した像を表示させることもできる。例えば、反射イオン像を二次電子像で除した像は、試料表面元素種の違いに敏感な像となる。これら2種類の像は、主に電極211に印加する電圧で選択することができる。また、交互に取得することもできる。なお、二次電子像は、荷電粒子検出器11で取得した像であっても良いことは言うまでも無い。
【0152】
次に、イオンビームの加速電圧は30kVとして、試料には、正の5kVを印加する。すなわち、イオンエネルギーは5kVとなる。また、対物レンズの電極203には20kVを印加して試料に集束させる。そして、電極211に試料よりも低い電圧である正の3kVを印加して、上記と同様に反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得る。この像には、イオンエネルギー25kVで照射したときの、試料表面の元素種に係わる情報が含まれる。
【0153】
次に、そして、電極211に試料よりも高い電圧である正の5.1kVを印加する。これにより二次電子を上部荷電粒子検出器312で検出して二次電子強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、イオンエネルギー25kVで照射したときの、主に試料表面の立体構造に係わる情報が含まれる。これら2種類の像、すなわち反射イオン像と二次電子像を本体制御装置99に記憶させて、2種類の像を演算した像を表示させることもできる。例えば、反射イオン像を二次電子像で除した像は、試料表面元素種の違いに敏感な像となる。これら2種類の像は、主に電極211に印加する電圧で選択することができる。また、交互に像を取得することもできる。なお、二次電子像は、荷電粒子検出器11で取得した像であっても良いことは言うまでも無い。
【0154】
以上の実施例では、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源と、該ハイブリッド粒子源からの荷電粒子を試料上に導くための荷電粒子照射光学系と、前記試料から放出される荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、前記試料を透過した荷電粒子を結像する荷電粒子結像光学系と、前記エミッタティップの近傍にガスを供給するガス供給管と、を有し、前記ガスは水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つを加えた少なくとも2種類のガス種を選択可能であり、前記針状のエミッタティップには正の高電圧、および負の高電圧電源のいずれかを選択して接続可能であるハイブリッド荷電粒子顕微鏡とすることで、水素、ヘリウムのいずれか一つのビームで試料極表面の観察ができ、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームで試料を加工し、電子ビームを試料に照射して、試料を透過した電子を検出することにより試料内部の観察が可能であるイオンビーム装置が提供されるという効果を奏する。特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームが得られるため、サブナノメータオーダの試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡が提供されるという効果を奏する。
【0155】
さらに、以上の実施例では、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドである。また該針状のエミッタティップからネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームを引き出し、これを試料に照射して試料を加工する。そして、該針状のエミッタティップから水素、ヘリウムのいずれか一つのイオンビームを引き出し、試料表面を観察し、該針状のエミッタティップから電子を引き出し、これを試料に照射して試料を透過した電子を結像することにより試料内部情報を得る。このようなハイブリッド荷電粒子線顕微鏡法とすることにより、試料表面、試料加工、および試料内部の観察を駆使した複合的な試料解析が可能になるという効果を奏する。特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームを駆使した試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡法が提供されるという効果を奏する。
【0156】
また、少なくとも2種類以上エネルギーが異なるイオンビームを照射可能で、試料に、正の電圧を印加して、試料に最も近い前記静電レンズと前記試料の間に第1の電極を設け、荷電粒子検出器前方に、第1の電極とは異なる第2の電極を配置し、第1の電極には試料に印加する正の電圧より大なる第1の電圧を印加して、かつ、前記第2の電極に前記第1の電極に印加する電圧より大なる第3の正の電圧を印加して、試料から放出される主に二次電子を検出して得られた第1の観察像と、第1の電極には試料に印加する正の電圧より少なる第1の電圧を印加して、かつ、前記第2の電極に前記第1の電極に印加する電圧より大なる第3の正の電圧を印加して、試料で反射される正のイオンを電子に変換してこれを検出して得られた第2の観察像との2種類の画像を表示することが可能な制御装置を備えるイオンビーム装置とすると、イオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーを変えて照射することが可能となり、上記実施例1で述べた効果と同じように、設定条件によって、超高分解能観察・低損傷観察・高精度寸法計測および極微細高速加工を実現できるという効果を奏する。さらに、試料から放出される主に二次電子を検出して得られた第1の観察像と、試料で反射される正のイオンを電子に変換してこれを検出して得られた第2の観察像との2種の観察像を表示することができるため、試料の表面元素情報や状態に関する情報を得るのに好適となる効果を奏する。
【0157】
また、少なくとも2種類のガスをイオン化できるガス電界電離イオン源と、イオン源から放出されたイオンビームを静電レンズで集束して試料に照射するイオンビーム装置であって、試料に対向して、試料に最も近い静電レンズが、4個の電極から構成されて、2つの異なる電圧を印加可能な加速電源と、前記静電レンズの4個の電極の内の少なくとも2個の電極に異なる電圧を印加可能な電源と、試料に電圧が印加可能な電源を備えて、少なくとも2つの異なる加速電圧に対して、各々の電極に印加する電圧を記憶する制御装置を備え、さらに、試料に、正の電圧を印加して、試料に最も近い前記静電レンズと前記試料の間に第1の電極を設け、荷電粒子検出器を、静電レンズに対して、イオン源側に配置して、第1の電極には試料に印加する正の電圧より大なる第1の電圧を印加して、試料から放出された二次電子を、前記荷電粒子検出器で検出するイオンビーム装置とすると、イオンビームにより観察・加工・計測する際に、イオンエネルギーを変えて照射することが可能となる。上記実施例1で述べた効果と同じように、設定条件によって、超高分解能観察・低損傷観察・高精度寸法計測および極微細高速加工を実現できるという効果を奏する。さらに、第1の電極には試料に印加する正の電圧より大なる電圧を印加することにより、試料からほぼ垂直方向に放出される二次電子はイオンレンズ方向に加速されることになり、これを効率よく検出するのに好適となる効果を奏する。
【実施例4】
【0158】
図8は、本発明によるイオンビーム装置の試料室内部構造の一例を示す。本図に示す試料室内部構造は、実施例1で説明した図1の構成、実施例2で説明した図5の構成、実施例3で説明した図7の構成にも適用可能である。
【0159】
本実施例の試料室内部には、荷電粒子変換板311、上部荷電粒子検出器312、対物レンズ8、対物レンズと試料との間の電極211、試料9、試料台10、荷電粒子検出器11、電子銃16などが配置されている。ここで、上部荷電粒子検出器312には、二次電子捕集効率を向上させる電極226および、電子を光に変換する蛍光板227、および蛍光板の光を検出する光電子増倍管228などから構成され、電極226には電源317、蛍光板227には電源318が接続され電圧を印加できる。対物レンズ8、対物レンズと試料との間の電極211、試料9、試料台10、荷電粒子検出器11、および電子銃16などは、実施例1の図1と同じである。
【0160】
本実施例でも、対物レンズ8は、4個の電極201、202、203、204から構成されている。各々の電極は電気絶縁されており、各々、4個の高圧電源301、302、303、304から電圧を印加できる。また、対物レンズと試料との間の電極211は試料9を内部に含む構造である。
【0161】
また、イオンビームを試料に照射して、試料から放出される二次電子を検出する動作については、実施例1と同じである。また、上部荷電粒子検出器312を用いて、反射イオン強度による観察像および二次電子像を得る動作については、実施例3と同じである。
【0162】
本実施例では、試料で反射されたイオン強度を荷電粒子検出器11で計測する手法について説明する。
【0163】
ここで、水素イオンビームの加速電圧は10kVとして、試料には、正の5kVを印加する。すなわちイオンのエネルギーは5kVとなる。対物レンズ8の電極202には、7kVを印加する。そして、電極211に試料よりも低い電圧である正の3kVを印加する。そして、こうすると、試料にから放出された二次電子のほとんどは試料に戻る。しかし、照射したイオンが、試料表面に衝突して、対物レンズ方向に反射されたイオンの一部は電極211を通過するが、別の一部は電極211に衝突して電子を発生させる。ここで、発生した電子を荷電粒子検出器11で検出する。すると、試料から放出された二次電子強度情報がほとんど含まれない反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、特に試料表面の元素種に係わる情報が含まれる。また、電極211の内面は、電子放出効率を高くするように、その表面は小さくとも原子番号50以上の元素で構成される。例えば、タンタルや、タングステンで構成されたり、金、白金などの薄膜を板材に貼り付けたり、蒸着したものである。
【0164】
本実施例の構成では、対物レンズ穴を通過するような、試料表面法線からの角度の小さい反射イオンの強度と、法線からの角度が大きい反射イオンの強度が得られる。この2種の反射イオン強度の観察像を、本体制御装置99に記憶させて、2種類の像を演算した像を表示させることもできる。この演算結果を用いれば試料表面元素の種類に関する情報が得ることがわかった。
【0165】
また、本構成で、電極211の電圧を変化させると、反射イオンの軌道が変わり電子に変換される反射イオンのエネルギーが変わることが分かった。また、電極211の電圧によっては、観察像のコントラストが反転することが分かった。これは、試料表面に元素の種類による分布があり、質量の大きい元素が明るく観察される場合と、質量の小さい元素が明るく観察される場合とがあることがわかった。すなわち、電極211の電圧を変化させることによって、試料元素分析が可能であることが分かった。なお、電極211の電圧を変化させると、イオンビームの試料上での集束するための対物レンズ電極に印加する電圧が変化する。これをあらかじめ求めておき、元素分析する場合には、電極211の電圧変化に連動させて、対物レンズ電極に印加する電圧が変化するようにすると、高分解能で元素分析が可能であることがわかった。
【0166】
次に、水素イオンビームの加速電圧は40kVとして、試料には、正の5kVを印加する。すなわちイオンのエネルギーは35kVとなる。対物レンズ8の電極203には、30kVを印加する。そして、電極211に試料よりも低い電圧である正の3kVを印加する。そして上記と同様に、反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、特に試料表面の元素種に係わる情報が含まれる。
【0167】
また、実施例1で述べたように、本構成で、電極211の電圧を試料と同じ電圧にするか、わずかに低い電圧を印加すると試料から放出される二次電子を効率よく捕集することができる。すなわち、二次電子強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、主に試料表面の立体構造に係わる情報が含まれるが、2種の反射イオン強度の像と、この二次電子像を本体制御装置99に記憶させて、演算した像を表示させることもできる。
【0168】
以上、本実施例によると、前記試料に正の電圧を印加することにより試料を照射するイオンエネルギーを低くでき、試料のダメージが少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。さらに、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーが高いため、イオンレンズの収差が小さくなり、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。
【0169】
さらに、対物レンズと試料との間に電極211を設け、同電極211に印加する電圧を選択することによって、試料で反射されたイオンの強度による観察像を得ること、試料から放出された二次電子像を得ることを選択することが可能となる。また、集束レンズと対物レンズの間の上部荷電粒子検出器で反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得ることも可能になり、対物レンズ横の荷電粒子検出器で得た反射イオン強度像と演算することにより試料元素解析が可能となる。例えば、元素質量に関する情報を得られる。
【符号の説明】
【0170】
1…ガス電界電離イオン源、2…イオンビーム照射系カラム、3…試料室、4…冷却機構、5…集束レンズ、6…可動アパーチャ、7…偏向器、8…対物レンズ、9…試料、10…試料ステージ、11…荷電粒子検出器、12…イオン源真空排気用ポンプ、13…試料室真空排気用ポンプ、14…イオンビーム、15…真空容器、16…電子銃、17…装置架台、18…ベースプレート、19…防振機構、20…床、21…エミッタティップ、22…フィラメント、23…フィラメントマウント、24…引き出し電極、25…ガス供給配管、26…ガス供給機構、27…開口部、28…、29…真空遮断可能なバルブ、35
…第1偏向器、36…第2アパーチャ、圧縮機ユニット40、61…傾斜機構、62…光軸、64…エミッタベースマウント、67…差動排気孔、69…真空遮断可能なバルブ、70…非蒸発ゲッター材料、71…真空ポンプ、72…加熱機構、74…真空遮断可能なバルブ、77…真空遮断可能なバルブ、78…真空ポンプ、91…電界電離イオン源制御装置、92…冷凍機制御装置、93…レンズ制御装置、94…第一アパーチャ制御装置、95…イオンビーム走査制御装置、96…二次電子検出器制御装置、97…試料ステージ制御装置、98…真空排気用ポンプ制御装置、99…本体制御装置、191…非蒸発ゲッタポンプ制御装置、192…電子銃制御装置、193…対物レンズと試料間の電極制御装置、201、202、203、204…対物レンズの4個の電極、206…荷電粒子検出器先端の電極、207…蛍光体、208…光電子増倍管、209…電子エミッタ、210…電子照射電極、211…対物レンズと試料間の電極、301、302、303、304…対物レンズに電圧を印加する4個の電源、305…試料印加用電源、306…対物レンズと試料の間に配置された電極印加用電源、307…荷電粒子検出器先端の電極印加用電源、308…蛍光体印加用電源、309…電子エッタ印加用電源、310…電子照射電極印加用電源
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8